◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Flektogon 35mm/f2.8 silver(M42)

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今回の掲載は、オーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様や一般の方々へのご案内です。
(ヤフオク! に出品している商品ではありません)
写真付の解説のほうが分かり易いためもありますが、ご依頼者様のみならず一般の方でもこのモデルのことをご存知ない方のことも考え今回は無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


オーバーホール/修理で半年くらいに1本のご依頼を承っていますが、このブログに掲載したのは前回が2015年でしたので3年経ってしまいました。さらにオーバーホール済でのヤフオク! 出品に関しても、このモデルの光学系の問題から取り扱いを敬遠していることもあり最近は少々手にしなくなっています。

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戦前〜1950年代に於けるフィルムカメラの中心と言えば当時はレンジファインダーカメラで、人の目で見た自然な画角として焦点距離40mm〜45mm辺りが標準レンズ域として主力になっていました。従ってフィルムカメラ側のマウント部は撮像面 (フィルム面) とオールドレンズの後玉端との距離を表すバックフォーカスの関係から、標準レンズ域の光学系構成のまま広角域まで対応していた為に1950年まで一眼レフカメラ用の光学系が存在しませんでした。

1950年に世界で初めて一眼レフカメラ用の光学設計を実装して登場した広角レンズがフランス屈指の光学メーカーP.Angenieux Paris (アンジェニュー) 社より発売されます。「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」と言うモデル銘で5群6枚のレトロフォーカス型光学系を開発してきました (右構成図:左端が第1群前玉)。

このレトロフォーカス型光学系は当初Angenieux社の登録商標でしたが、1950年代以降になるとライカ判一眼レフ式フィルムカメラのフォーマットに於ける標準レンズ域を50mmに採ってきたことから世界規模で普及し標準レンズ域の概念が変化し、後に広角レンズ用の光学系としてモデル銘「RETROFOCUS」だけが一人歩きして呼称されるように変わりました。

このAngenieux社のレトロフォーカス型光学系は上記光学系構成図の第3群〜第5群までを含む 成分が3群4枚のTessar型光学系を基本としており、その前にバックフォーカスを稼ぐ必要から 成分 (2枚) を配置した逆望遠型光学系です。

一方、旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaでは遅れること3年後の1953年に初めてレトロフォーカス型光学系を実装した広角レンズが発売され、今回の扱いモデルである『Flektogon 35mm/f2.8 silver (M42)』が登場します (マウント種別は他にexaktaやPRAKTINA版が用意されました)。このレトロフォーカス型光学系は 成分がBiometar/Xenotar型光学系を基本としておりAngenieux社が開発してきたレトロフォーカス型光学系の欠点である収差 (特に合焦点のハレーション発生率問題など) 或いは最短撮影距離 (60cm) の改善を狙っています (第1群 成分は同様にバックフォーカスを稼ぐ目的で配置)。

しかし、最短撮影距離を短縮化させつつもAngenieux社の開放f値「f2.5」をクリアすることができなかった為に、その意地を見せつける次代の広角レンズが登場するのはさらに20年以上の歳月を要しました。1975年ようやく旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaより「MC Flektogon 35mm/f2.4」が発売され最短撮影距離20cmまで短縮化すると同時に念願の開放f値「f2.4」を採ってきました。

今回オーバーホール/修理ご依頼として扱うモデルは、その一番最初に登場した旧東ドイツCarl Zeiss Jena製広角レンズ『Flektogon 35mm/f2.8 silver (M42)』です。

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケのエッジが破綻してトロトロにボケていく様を集めています。

二段目
背景ボケがトロトロに滲むとご覧のようにまるで油絵の如くインパクトのある写り方をします (左の2枚)。またこのモデルの光学系成分 (Biometar/Xenotar成分) から本来のピント面は非常に鋭く被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力にも優れています。

今回のオーバーホール/修理ご依頼は「絞り環にトルクムラが多く引っ掛かりがある」との内容です。

【当初バラす前のチェック内容】
 距離環を回すトルク感は普通〜重め程度で白色系グリース独特な印象。
無限遠位置が適合しておらず無限遠が甘い。
 絞り環操作時にトルクムラが酷く引っ掛かる箇所がある。
光学系第2群の締め付け環を外した痕跡が視認できる。

【バラした後に確認できた内容】
過去メンテナンス時に白色系グリースが塗布され既に経年劣化が進行している。
 絞り環/プリセット絞り環機構部にも白色系グリースが塗られている。
 ヘリコイドのネジ込み位置が適合しておらず無限遠が出ていない。
光学系第2群を過去メンテナンス時に外している。

特にはご依頼の内容に含まれずご案内頂いていませんが、バラす前の実写確認で試して当方所有マウントアダプタ (3種類) 全てで無限遠合焦が甘い印象であることをチェックしました。また無限遠位置以外のピント面もカメラのピーキングに反応するギリギリなので全体的に甘い印象の合焦をしていると言えます。

↑バラしている最中に撮影した写真ですが、光学系第1群 (前玉) のみを取り外して第2群を撮っています。赤色矢印で指し示しているとおり光学系第2群の締め付け環周囲が擦れておりシルバーに見えています。これは過去メンテナンス時にこの光学系第2群を一度取り出していることを示す痕跡と言えます (カニ目レンチを回した時に接触して擦れてしまったからシルバーに削れている)。

このモデルを数多くチェックすると一目瞭然なのですが、5群ある光学系のうち締め付け環に唯一遮光塗料がビッチリ塗られているのはこの第2群だけです (工場出荷時点で第2群の締め付け環は真っ黒状態)。これは何を意味するのか? どうして他の群の締め付け環は遮光塗料を塗らずにこの第2群だけ着色しているのでしょうか?

この光学系第2群だけは工場出荷前の検査で適正な描写性能を確保した位置として調整済なので「外さないでほしい」と言う意思の表れではないかと当方は考察しています。もちろん過去メンテナンス時に他の群の締め付け環まで着色されてしまっている懸念は十分ありますし、実際今回の個体も後群側は着色されていました。

レトロフォーカス型光学系の仕組みを考えた時、第1群 (前玉) は純粋にバックフォーカスを稼ぐ意味合いが強い要素だと捉えられるので、すると第2群とその後に続く光学系を一括りでBiometar/Xenotar型光学系の要素としてみると、自ずと第2群は前玉の意味合いに近くなります。この時第2群は入射光収束の役目が強くなるのでここをイジると途端に描写性能が堕ちてしまうのも納得できます。

実際今回のオーバーホールではこの個体がモデル本来の描写性能を発揮していなかったが為にこの第2群を調整せざるを得ず、処置後の仕上がりをご覧頂ければ解像度が向上し本来の鋭いピント面に戻っているのが分かります (このページ一番下に実写を掲載しています)。

この第2群の調整はそんなに簡単な話ではなく、まさに0.1mm単位での調整に近いレベルなので相当な時間を要します (大抵は2〜3時間かかります)。理由は、無限遠位置のみならずその他の距離でもピント面の鋭さを確認する必要がありますから、第2群を調整した後に全て組み上げて実写確認しなければチェックできないワケであり、組み立てては実写確認し再びバラして第2群を調整してからまた組み上げる作業を延々と続けます。それはそれは気の遠くなるような作業です (想像してみて下さい)(笑)

確かに当方の料金はバカ高いのでしょうが(笑)、その分拘りを以て必要な処置は全て講じる「まさしくオーバーホール」なので、代替部品が無いとか製産後数十年の経年を経たオールドレンズだからなどと逃げ口上で埋め尽くさずに(笑)、何時間かかろうとできることはキッチリ執り行う方針の下で処理しています。但し、当方は個人なので0.1mm単位や10倍の精度で検査できる機械設備などはありませんし (簡易検査具による検査しかできない)、貶されるご指摘のとおり当方には設計諸元書なども手元に無いので、ヤフオク! で有名な出品様の仰るとおり「手による勘に頼った整備」ですから機械仕掛けの調整もできません。それらをひっくるめて「当方の技術スキルは相当低いレベル」であることは自明の理ですから、どうかこのブログをご覧頂いている皆様も決して買い被らぬよう切に切にお願い申し上げます。プロのカメラ店様や修理専門会社様宛にオーバーホール/修理のご依頼をされるのが最善であると改めて申し上げたいと思います。当方は修理専門業者ではなくヤフオク! の「転売屋/転売ヤー」ですし(笑)ましてプロではなく8年経過してもいまだに個人レベル止まりですョ(笑)

↑今回のご依頼内容の原因にもなりますが、過去メンテナンス時に塗られていたのは「白色系グリース」です (グリーンの矢印)。さらに上の写真をご覧頂くと写っていますが (写真下手クソでスミマセン) 赤色矢印のとおりさらに過去の黄褐色系グリースまでそのまま残っています。つまり過去メンテナンス時には古い黄褐色系グリース (おそらく製産時点のグリース) を除去しないままに新しく白色系グリースをその上から塗り足した処置だったことが判明します。

このように古いグリースを洗浄除去しないまま新たなグリースを上から塗り足す処置を「グリースの補充」などと都合の良い表現で処置している整備会社が今現在も居るから笑ってしまいます。グリース業界関係者の方にお話しを伺うと、さすがに成分/配合が異なるグリース種別を混在して使うことは考えられないとのお話でした(笑) それは至極ご尤もな話であり、同じ潤滑剤だから塗り足しても良いなどと言う考え方自体が使っている溶剤/薬剤の類をキッチリ調査して適時使っていないことの表れであり、恥ずかしい限りです(笑)

そして今回ご依頼の症状 (酷いトルクムラと引っ掛かり) に至っていた致命的な原因は「さらに潤滑油が注入されてしまった」事実です。白色系グリースが経年劣化の進行に拠り液化してくると成分中メインの油成分は揮発してしまうので、添加剤だけがネジ山に残ります。そこに潤滑油が注入されると化学反応してしまい今回の個体もネジ山は「指の腹にくっつくほどの粘着性を帯びていた」状況でした。

距離環側のヘリコイド (オスメス) には潤滑油が注入されていない (但し白色系グリースであることに変わりなし) ので絞り環/プリセット絞り環だけがこのような現象に至っていたと推測します。なおブルーの矢印で指し示しているのは過去メンテナンス時に塗られた固着剤/黒色着色塗料の類が締め付け環のネジ山に相当附着していたことを示す意味合いです。おそらくこの個体は過去に数回に渡って光学系の清掃だけが施されてきたように見えます。その際古い固着剤/黒色着色塗料を洗浄せず (除去せず) そのまま締め付けていたので、だんだん締め付けが甘くなっていたようです。実際今回の個体をバラしたところ光学系後群側の締め付けが緩い印象でした (それも影響してピント面の鋭さが足りなくなっていた)。

なお「潤滑油」はその方面の業界関係者の方にお聞きしたところ確かに潤滑剤の一つですが、オールドレンズのような極低トルクで操作する場合、特にアルミ材削り出しのヘリコイドネジ山に対しては潤滑成分が揮発してしまう懸念が高いのであまり向いていないとのご指摘でした。あくまでも「潤滑油を注入したその時点」は何某かの改善が期待できるものの、それはその時点だけの話であり粘性があるグリースの代用にはならないとのお話です。

そして特に「白色系グリース」との相性が悪く化学反応するのか粘着性を帯びてしまう結果に至る事例を数多く今までに見てきていますが、どう言うワケか製産時点で使われていたであろう「黄褐色系グリース」ではなく白色系グリースが昨今は流行ってしまったので、まず間違いなく過去メンテナンス時には白色系グリースが使われている率が非常に高いのが現実です (10本中9本が白色系グリースくらいの率)。従ってその場凌ぎで「潤滑油」を注入するのは確かに海外オークションebayや最近ではヤフオク! でも横行していますが「禁じ手」と言わざるを得ません (早ければ1年でトルクが急に重くなりいずれ固着してしまい製品寿命に至る)。

また「白色系グリース」をアルミ材削り出しのヘリコイドネジ山に塗布すると経年使用でアルミ合金材が摩耗して摩耗粉が混じる為に「濃いグレー状」に至ることを既に確認済です (こちらのページで検証しています)。但し、白色系グリースと言っても単に色を付けているだけなので中には黄褐色系グリースと同じ成分/配合の場合もありますから一概に白色系グリースは使ってはイケナイとも言えず難しい限りです。

↑ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真を掲載していきます。ご依頼者様にはこのオールドレンズに対する思い入れが強いとのお話でしたので、今回気合いを入れて整備しました。ハッキリ言って完璧なオーバーホールが終わっています (それこそ新品同様品と言われても信じてしまうくらいの仕上がりです)。

↑光学系内は当初バラす前のチェック時点で第2群に全面に渡るクモリが生じていました。第2群は凸平レンズなのですがその次の第3群に貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) が配置されている関係から、光学系内を覗き込んだ時に「第2群にクモリがある」ように見えると第3群のバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) の懸念が高くなります。さらに経年数からコーティング層の経年劣化進行に拠りクモリが生じていることもあるので、当方がこのモデルを敬遠している大きな理由に繋がっています (コーティング層経年劣化によるクモリは除去できないことが多い為)。

今回の個体は第2群のクモリは経年の揮発油成分でしたのでほぼ除去できていますが極僅かにコーティング層の経年劣化によるクモリが外周附近に生じ始めています (写真には一切影響なし)。また次の第3群の貼り合わせレンズはラッキ〜なことにバルサム切れは一切発生しておらず透明度を維持しています。

↑光学系後群側も透明度が高い状態を維持していますが当初バラした時点は完全に締め付けされていなかったので (古い固着剤などが影響して最後まで締め付けされていなかった) 結果的に甘いピント面に至っていたようです。

但し、光学系後群をキッチリ締めても当初の実写確認では無限遠位置が適合していませんし、且つピント面の甘い印象もカメラのピーキングにギリギリ反応する程度でしたから第2群を過去に外してしまったのが大きく影響していると判断し、オーバーホール工程では第2群の位置調整を執り行った次第です。

↑9枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。もちろんご依頼内容の問題点もキレイサッパリ改善し、まるでウソのように気持ちの良いトルク感で絞り環/プリセット絞り環共々操作して頂けます。もちろん黄褐色系グリースを塗布したので全域に渡りシットリ感漂う駆動に変わっています。

このモデルは絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) の調整機能を装備していないので当初バラす前と最小絞り値までの閉じ具合は変化していません (簡易検査具による開閉幅確認済)。

↑塗布したヘリコイドグリースは黄褐色系グリースの「粘性中程度軽め」を使い分けて塗りました。距離環を回すトルク感は「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」なトルクで仕上げてあります。もちろん当方のファンの方々が皆様気に入っていらっしゃる「シットリした操作性」も併せ持つのでピント合わせ時は極軽いチカラだけで微動でき、特にこのモデルはピントの山が掴みにくいのできッとご満足頂ける操作性に仕上がっていると思います。

筐体外装は当方による「磨きいれ」を施し、且つアルミ材削り出し部分は「光沢研磨」を施したので当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています。もちろん「エイジング処理済」ですからすぐに1年足らずで酸化が始まったりポツポツとサビが出てきたりすることもありません。そもそも当初から経年の使用感を感じないほどに光沢のあるアルミ鏡胴でしたが、そうは言っても直接筐体外装を洗浄するとうっすらと白っぽくなっていました (つまり経年で酸化が進行していた)。オーバーホール後の現状は触ると指の指紋が残るのが気になるほどにピッカピカです(笑)

可能な限り距離環や絞り環などのローレット (滑り止め) ジャギー部分もブラッシングしたので経年の手垢などもキレイに除去できていますから気持ち悪くありません(笑) 筐体外装の指標値刻印が洗浄時に一部褪色してしまったので当方による「着色」を施し視認性を向上させています。

↑当方が扱ったシルバー鏡胴のFlektogonとしては一二を争うくらいに完璧な仕上がりに至っています。久しぶりに気持ち良くオーバーホールできました(笑) なお、マウント面の突出部分の一部が過去に切削されていますが黒色着色がだいぶ剥がれていたのでこちらも着色しています (焼付塗装ではないので擦れると簡単に剥がれます)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

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このシルバー鏡胴モデルとなれば必ずご案内しなければイケナイのがマウント部の突出問題です。右写真はBiotarのマウント部を計測した時の写真を転載しています (今回の個体は一部切削されていたので撮影しませんでした)。

今回のモデルFlektogonの突出量とは異なるのであくまでも参考ですが、マウント部のネジ山の先に突出が存在する要素は同じです。するとマウントアダプタにネジ込む際にこの突出部分が当たってしまい最後までネジ込めないことがあります。

マウントアダプタ装着以外にも例えばフィルムカメラのミラーに干渉する懸念も捨てきれません。その意味でこの当時のシルバー鏡胴モデルは注意が必要です。

↑上の写真は今回のオーバーホールでチェックした当方所有マウントアダプタを並べています。

Rayqual製「M42→SONY Eマウントアダプタ (M42-SαE)」日本製
K&F CONCEPT製「M42→SONY Eマウントアダプタ (M42-NEX)」中国製
FOTGA製「M42→SONY Eマウントアダプタ (M42-NEX)」中国製

↑上の写真 (3枚) は、今回チェックするマウントアダプタの「ピン押し底面有無」を示しています (グリーンのライン)。

ピン押し底面」とはM42マウントのオールドレンズでマウント面に「絞り連動ピン」を備えている場合にオールドレンズをマウントアダプタにネジ込む時強制的に「絞り連動ピンを押し込んでしまう」ために用意されている棚ようなマウント部内部に迫り出している部分です。

今回チェックするマウントアダプタではの「FOTGA製のみ非ピン押し底面タイプ」です。

今回撮影するのを忘れてしまったので別モデル (Biotar) からの転載とします。

↑上の写真は別モデル (Biotar) のシルバー鏡胴を各マウントアダプタに装着した時に最後までちゃんとネジ込みできたか否かを示した写真を転載していますが、今回のFlektogonも全く同一でのK&F CONCEPT製マウントアダプタ装着時のみ最後までネジ込めません。

なおのFOTOGA製が問題無く最後までネジ込めているのは前述のとおり「ピン押し底面が存在しない」からです。つまりマウント面の突出でハス状にすぼまっているカタチの途中がマウントアダプタの「ピン押し底面の縁」に接触してしまい最後までネジ込めなくなっています。

結果、マウントアダプタとの間に隙間が生じるので必然的に無限遠が出ない (合焦しない) 懸念が強くなります。

ところが今回の個体は上の3つ全てのマウントアダプタ装着で無限遠が出ていなかったので (合焦しないので)、そもそも過去メンテナンス時にヘリコイドのネジ込み位置をミスっていたことになります (実際バラしたらネジ込み位置が適切ではなかった)。

この問題でもう一つ考慮しなければイケナイ点があります。マウントアダプタの商品全高 (高さ/厚み) です。M42マウント規格のフランジバックは「45.46mm」なので、マウントアダプタがその範囲内に収まる製品全高であれば適切な無限遠位置で合焦しますが、範囲を逸脱しているとアンダーインフに陥ります (オーバーインフの逆)。

この問題については「解説:M42マウントアダプタにみるフランジバックとの関係」のページで細かく解説しているので興味がある方はご参照下さいませ。

いずれにしてもいわゆる「マウントアダプタとの相性問題」が顕在するワケですが、今回のオーバーホールではのK&F CONCEPT製マウントアダプタ装着時でも問題無く無限遠が出るよう調整しました。

この当時のCarl Zeiss Jena製シルバー鏡胴モデルは「無限遠位置調整機能」を装備していないので調整できる範囲は限られていますから、残念ながらのFOTOGA製マウントアダプタには対応できません (何故なら一番製品全高が嵩んだマウントアダプタだから)。よくヤフオク! の出品者の中にこのFOTGA製マウントアダプタをシルバー鏡胴のオールドレンズに勧めている人が居ます (下手するとショップでも進めている) が、肝心な製品全高を基にしたフランジバックとの関係は蔑ろにしたままです(笑)

単に見た目だけで「最後までネジ込めるかどうか」しか気にしていない始末で(笑)、そもそも整備などしたことがない人達だから気がつかないのかも知れませんが、だとすれば「オールドレンズ使いとしての資質」が問われると思いますね(笑)

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以下の実写をご覧頂ければこのモデルのピント面が決して甘くなく鋭い描写性であることをご理解頂けると思います。今回の個体は当初バラす前の実写チェックでは、とてもここまで鋭いピント面に至っていませんでしたから、やはり過去メンテナンス時に光学系第2群を外して清掃してしまったことが悪影響だったと言わざるを得ません。

過去メンテナンス時から何年経過したのか分かりませんが、ようやく今頃になってこのモデル本来の素晴らしい描写性能を発揮できるまで改善されました。もちろんシットリ感漂う距離環や絞り環/プリセット絞り環の操作性なども含めピッカピカの筐体外装共々、是非ともこれからさらに数十年に及ぶ活躍を続け製品寿命までの道のりを歩んでいって欲しいと願うばかりです・・。

オールドレンズも今までに手にされた幾人ものご主人に想いを馳せているのかも知れません・・。

↑当レンズによる最短撮影距離35cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

なお、この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。