◎ YASHICA (ヤシカ) AUTO YASHINON−DX 50mm/f1.7《前期型:富岡光学製》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルはヤシカ製標準レンズ
AUTO YASHINON-DX 50mm/f1.7《前期型:富岡光学製》(M42)」
です。


新調したパソコンによる環境構築がなかなか上手く進まず、4/3から続く悪戦苦闘は、やがて四苦八苦に近づき苦痛にさえなりつつあります。
そもそも10年前のソフトをそのまま使い続けようという魂胆にムリがあるワケで、然しアップグレードして新たな使い方を覚える脳細胞がもう既に壊死している身の上としては、藁にも縋る想いの日々を送っています・・誰か助けて(笑)

そう言えばパソコンコーナーで販売していた頃、ご年配のお客さんに「頭の活性化にもなりますから頑張って覚えましょう!」などと言っていたのを思い出し、今頃反省している始末。
この歳になると、何ごとも保守的な思考回路しか機能しておらず、平穏無事に今あるがままに毎日を過ごせることだけが幸せだったりします(笑) 高いパソコンを売りつけてしまったご年配のお客様、きっと苦痛だったことでしょう。スミマセンでしたね・・。

若かりし頃、某大手スーパーの家電売場で、当時流行りのベーシック言語を使って「あなたにお勧めのエアコンはこれ!」などと言う標題でプログラムして、お客さんがポチポチとボタンを押していくと結局は売りたいモデルが表示されて、そのまま販売できていたことを思い出しました(笑) むしろ年配者にはそのような環境が嬉しいのかも知れませんね・・(笑)

当時はまだビデオテープ全盛時代で、β方式とVHSが闘っていた時代。もちろんブラウン管のテレビですが、その頃は木目柄だったのです(笑) 木目柄で彫りが入った豪勢なテレビばかりでしたが、後に家具屋に勤めたらその木目柄は大鋸屑に接着剤を混ぜて固めたパーティクルボードに、印刷した木目柄を熱圧着していただけなのを知って「な〜んだョ」とガッカリしたのを覚えています。当時はPanasonicではなく、まだナショナルでしたから「魁 (さきがけ)」なんて言うモデルのシリーズを売っていたりしましたね。

その家具屋で職人から伝授された「家具磨き」は、やがてモノが変わって今はオールドレンズのパーツ磨きに至っているワケで、何処で何が後に有益になるのか、人生なんて分からないものですね(笑)

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1967年にヤシカから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「YASHICA TL SUPER」のセットレンズとして用意された標準レンズ『AUTO YASHINON-DX 50mm/f1.7《前期型:富岡光学製》(M42)』が今回扱うモデルです。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:1967年発売

光学系:5群6枚ウルトロン型
筐体色:シルバー/ブラック,ブラックの2色展開
絞り環ローレット (滑り止め):山谷あり (谷側にジャギー) 赤色矢印

後期型:

光学系:5群6枚ウルトロン型
筐体色:シルバー/ブラック,ブラックの2色展開
絞り環ローレット (滑り止め):山谷なし (全周ジャギー)

この当時のヤシカから発売された一眼レフ (フィルム) カメラの取扱説明書を調べてみると、セットされていた交換レンズ群は以下のようになっていました (発売年度時系列)。

YASHICA PENTA J-4 (1965年発売):YASHINON-R
YASHICA TL SUPER (1967年発売):AUTO YASHINON-DX
YASHICA PENTA J-7 (1968年発売):YASHINON-R
YASHICA TL (1968年発売):AUTO YASHINON-DX
YASHICA TL ELECTRO (1969年発売):AUTO YASHINON DS-M
YASHICA TL ELECTRO X (1969年発売):AUTO YASHINON-DX
YASHICA TL ELECTRO X ITS (1970年発売):AUTO YASHINON (AUTO YASHINON-DX)
YASHICA ELECTRO AX (1972年発売):AUTO YASHINON-DS
YASHICA FFT (1973年発売):AUTO YASHINON-DS

いずれもマウント種別が「M42」ですが、オモシロイのはの1969年にポツンとマルチコーティング化した「DS-M」をセットレンズとして設定している点と、その翌年発売のでAUTO YASHINONシリーズをセットしていることです。但しは取扱説明書の写真が開放f値「f1.2」のAUTO YASHINONと言うだけで、交換レンズ群一覧はAUTO YASHINON-DXばかりでしたから、フィルムカメラがフラグシップモデルだからと言うことなのでしょうか。

しかし、この時系列をみていくとマルチコーティングのオールドレンズは1969年に用意された「DS-M」だけで、他全てモノコーティングばかりと言うのも興味が湧きます。また鏡胴に自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) を装備していない「AUTO YASHINON-DS」モデルが今回扱うスイッチ装備の「AUTO YASHINON-DX」の後から中心的に供給されている点も見逃せません。

と言うのも、ネット上では「DX/DSの相違点」はA/Mスイッチの有無だけと案内されていることが多い (スイッチ付がDX) のですが、実は焦点距離24mmのモデルでA/Mスイッチを装備した「AUTO YASHINON-DS」が顕在していたりします。すると上記時系列からDSシリーズにA/Mスイッチが装備されていたとしても何ら設計のタイミングとして不自然さがありません。

しかし、この流れからすると当時の他社光学メーカーが採っていた製品戦略から、かけ離れていると言わざるを得ません。マルチコーティング化を進め、且つA/Mスイッチを装備した交換レンズ群を主力化している中でヤシカは逆の方向性を執っていたことになります。何故にモノコーティングを主力にして突き進んでいたのでしょうか?・・ロマンが広がります。

おそらくは、この後のC/Yマウントにヤシカの主要人物の頭の中は既に凝り固まっていたのでしょう(笑) 時代遅れ的な感覚のM42マウントは、そもそも数多く売れと言う命題だけを達するが如く、実に10年近くにまで及び低価格路線を邁進したのかも知れません。然し、はたしてイザC/Yマウントの登場となった時、既に母体のヤシカさえも経営難に陥っていたワケで、何だかやっていることが逆だったようにも思えてしまいますね(笑)

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
光学系がウルトロン型構成なのが影響して真円のキレイなシャボン玉ボケ表出が苦手だったりします。収差や口径食を受けて歪んだカタチの円形ボケが中心的に表出します。

二段目
発色性は基本的にコントラストが高めですが違和感を抱くほどの彩度ではないので (ギラギラの艶やかな色合いではない)、自然な写りです。開放f値が「f1.7」なのに「f1.4」に匹敵するほどにリアルな人肌表現をしてくれます。

光学系は5群6枚のウルトロン型構成で、曲率の高い第2群が第3群と貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) ではないかと言うほどに近接した独特な設計です。第2群と第3群の近接面の曲率 (間隔) は、中心部に近づくに従って広がっているので屈折率をここで採っていることが伺えますから、確かにピント面の鋭さが高いのも頷けます。

同じモノコーティングなので「AUTO YASHINON-DS」と同一の光学系と言えます。右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回扱うモデルも『富岡光学製』の判定をしているオールドレンズの一つですが、当方がそのように謳ってヤフオク! 出品するとあ〜だこ〜だと批判されるようです(笑)

確かに『富岡光学製』オールドレンズの描写性はピント面のエッジの線が繊細で豊かな (或いは極端な) 滲み方でボケていく様が好きではありますが、決して当方は「富岡光学が一番」みたいな「富岡狂」ではありません。いえむしろ内部構造に至っては「意味不明な設計をしている」と貶している立場でもあります。

その意味で「富岡狂」と揶揄されても甚だ現実味を感じていないのですが(笑)、別件でこのブログにアップしたコシナ製標準レンズ「COSINON AUTO 55mm/f1.4《富岡光学製》(M42)」で解説した「富岡光学製の根拠3点」に沿って、今回もオーバーホール工程を解説していきたいと思います。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑まずはここが『富岡光学製の根拠』の一つですが、絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) の微調整を「鏡筒の固定位置調整」で執り行う設計です。その「」が上の解説「絞り羽根開閉幅調整キー」の存在です (赤色矢印)。このキーが回ることで鏡筒の位置調整 (微調整) を実現しています。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側を撮影しました。簡素な構造で「開閉アーム」が1個あるだけで、スプリングのチカラで「常に絞り羽根を開放維持するチカラ」が及んでいますが、このスプリングは非常に線径が細く軟らかいので「絞り羽根の油染み放置」はこのモデルでは致命的だったりします。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでヘリコイド (オス側) をネジ込みます。このモデルでは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。当初バラした時は経年の揮発油成分でヒタヒタ状態でした (一部パーツに錆び発生)。

↑取り外していた各構成パーツも「磨き研磨」を施して組み付けます。絞り環との連係環の途中に「なだらかなカーブ」が用意されており、そこにカムが突き当たることで、その時の勾配により絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側で、登りつめた頂上が開放側になります。

マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると、その押し込まれた量の分量だけ「開閉レバー」が移動して、鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」を操作するので絞り羽根が閉じる原理です。

実は、今回のモデル「AUTO YASHINON-DX」を最後に扱ったのが2016年なので3年ぶりになります。普段敬遠しているモデルなので、当方にしては少々勇気がいるオーバーホールと言えます。

その理由が左写真で、特異なカタチ (S字型) の捻りバネのチカラで自動/手動の切り替えをする設計を採っており、この棒状の捻りバネのカタチがほんの僅かでも狂うと正しくA/Mスイッチが切り替わって絞り羽根が開閉してくれません。

例えば、自動(A)ならば問題無く正しく絞り羽根が開閉するが、手動(M)にセットした途端最小絞り値まで閉じない、みたいな不具合が絞り羽根の開閉で発生しますが、その根本原因を作っているのがこんな棒状の捻りバネだったりします。

どうしてこんな棒状のバネが戻る (反発する) チカラだけを使ってスイッチの切り替えにしてしまったのか、その設計意図を理解できませんが、現実的にこの捻りバネの不具合 (カタチが崩れている事) が多く、たったそれだけの理由で敬遠している次第です。これは今回のモデルだけに限らず、他のDXシリーズにも使われている設計概念なので同様敬遠してしまうワケです。

富岡光学製オールドレンズの「意味不明な設計」の一つですね・・。

↑完成したマウント部を基台にセットします。ここでネジ込んでいる締め付けネジは皿頭ネジです (赤色矢印)。今回の個体には一切プラスネジが存在しないので、製産されたタイミングとして初期の頃だと容易に推測できます (1970年代に入るとプラスネジが多用されるように変わるから)。

こんなネジひとつチェックするだけでも製産された大凡の年代を推測できます。同じマイナスネジでも真鍮製やニッケル製などならば (つまり磁性反応しない) 1960年代以前と言えますし、磁性反応してもマイナスネジばかりなら1970年代以前になるワケです。

それは家電製品や古いパソコン関連品などを見ていても同じで、要は時代と共に締め付けネジの技術革新も進んだことが業界全体的な流れだったので、オールドレンズをバラす際にもチェックすることで製産時点の適切な締め付けネジなのか、或いは後に施された過去メンテナンス時点で代替されてしまったネジなのかの判定にも繋がったりしますから「観察と考察」がやはり重要ですね(笑)

↑この工程も『富岡光学製』を現す根拠の一つです。絞り環操作時にクリック感を伴うのですが、それを実現する「絞り値キー ()」とベアリング+スプリングが別々のパーツに組み付けられるので、今回のモデルで言えば「スイッチ環」の固定位置調整が必須になり、従ってイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本で横方向から締め付け固定する方式を採っています。

この当時の他社光学メーカーで多く採用されていた固定方式は、絞り環の裏側 (マウント部側との接触面) にベアリングを仕込んでしまうので、絞り環をセットした時点でクリック感もクリック位置も適正になるよう設計されています。

純粋に考えても、この工程だけで数工程分 (調整が必要なので) 組み立て時に増えてしまうワケで、それがソックリそのまま人件費の無駄使い (非効率性) に繋がり企業利益をボディーブローの如く圧迫していくことが分かります。

バラさなければこの根拠は不明なままですが、これも富岡光学製オールドレンズとしての「意味不明な設計」の一つと言えます。

↑実際に絞り環にベアリング+スプリングを組み込んでから「スイッチ環」を被せて、横方向から均等配置のイモネジ (3本) で締め付け固定すると (グリーンの矢印) 適切なクリック感と共に絞り環に刻印されている絞り値との位置も整合性が執れて組み上がります。

そしてこれが『富岡光学製』の根拠の一つでもありますね。逆に言えば、イモネジの締め付けをミスるとクリック感もチグハグになり、必然的に絞り環刻印絞り値との位置も合致しなくなり違和感を感じます。

ところが、このモデルでは絞り環の刻印絞り値が限られたスペースなので、開放時の「f1.7」刻印位置が切迫してしまい「ほぼ1.7の1の位置」でしかクリックできません。こんな面倒な拘った設計にせず、もっと余裕のある高さで絞り環を用意していれば、ラインを引いて開放f値の位置をズラすことができたハズであり、余計な拘りに見えてしまいます(笑)

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

ところが、ここにも「意味不明な設計」が隠れています(笑)

距離環のローレット (滑り止め) ジャギー部分だけが環 (リング/輪っか) になっている別パーツなのですが、その直下にある「距離指標値環 (リング/輪っか)」部分は真鍮製のヘリコイド (メス側) に完全固定されます (位置調整機能を設計時点で考慮していない)。

つまり「∞」刻印位置の微調整ができないので、このモデルはヘリコイドのネジ込み位置をミスると無限遠位置がズレてしまいチグハグな仕上がりに至ります。距離環のローレット (滑り止め) ジャギー環に位置調整機能が付加されているのに、肝心な距離指標値環側の固定位置が決まってしまうので意味がありません。

これはどう考えても設計部署が分かれていて、互いに意思疎通していなかったとしか考えられません。富岡光学が経営難に陥りヤシカに吸収されていった背景を垣間見たような気がしてしまいますね(笑) それは経営者や役員達がイケナイのか? 或いは肝心な現場にイエスマンだけしか役職者が居なかったのか? ロマンが広がりますが、いずれにしても決して褒められる設計とは100%言えません。

オールドレンズの材料費などは光学硝子材を別とすればアルミ合金材ばかりがメインですからたかが知れているので設計を簡素化したところで資材コストには大きく影響しません。企業利益を食い続けた原因は、一にも二にも「人件費の嵩み/工程を省みない非効率性」であり、それは旧態依然の体制に甘んじ続けた企業風土に問題があったのではないでしょうか? その意味でいわゆる年功序列式の「昭和の会社」だったのかも知れません。

オールドレンズをバラしていると、日本国内にも数多くの整備者が居るのに誰一人「無限遠位置調整機能の有無」を案内している人が居ないことに、甚だ疑問を感じます。すると「シム環」で微調整するからいいと逃げ口上する人が必ず居ますが(笑)、そもそもこのモデルは無限遠位置を微調整する「シム環」が設計段階で存在しません (無限遠位置の微調整と適正な描写性確保の為とは同じシム環を使うとしても結果が違います)。「観察と考察」は、このように工程や組み立て手順の把握だけに限らず、微調整の有無やその範囲まで理解することを意味する重要な要素です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑3年ぶりに扱いましたが、今回扱った理由は市場でも珍しい「前期型」の個体だったからです。しかし、実際にバラしてオーバーホールを始めると、当初の予測どおり前述のA/M切り替えに関わる「S字型捻りバネ」のカタチでハマることになり、後悔先に立たずです(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い個体です。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。残念ながら後玉表面に経年のカビ除去痕がLED光照射でうっすらと浮かび上がりますが写真には影響しないレベルです (後玉表面以外にカビ除去痕無し)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群内も透明度が高く極薄いクモリは皆無です (後玉表面のカビ除去痕だけあり)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。ご覧のとおり拡大撮影しても後玉表面のカビ除去痕を撮影できません (LED光照射で薄く浮き上がる)。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:12点、目立つ点キズ:6点
後群内:19点、目立つ点キズ:16点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・後玉表面に微細なカビ除去痕がLED光照射で複数浮き上がりますが写真には影響しません。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑A/M切り替えスイッチの操作時、絞り羽根の挙動を正しく駆動するよう問題の「S字型捻りバネ」を適切なカタチに戻すのに苦労しました(笑) やはり扱うべきではなかったですね。また2〜3年して勇気が出てきたら扱ってみるつもりです (それまではやはり敬遠モデルですね)。

絞り羽根が閉じていく際はほぼ正六角形を維持します。

ここからは鏡胴の写真になりますが経年の使用感を僅かに感じるものの、当方による筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのでブライトブラックな箇所は、すぐに錆びが生じたりせずに光沢感を維持してくれます。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ)ツマミが欠落しており芯の金属板だけになっています。
ツマミが無いのでA/M切り替え時の操作把握が逆になります。A側にセットするとM手動操作でM側にセットするとA自動の設定です。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑絞り環のローレット (滑り止め) が山谷でジャギーの有無が分かれている、市場ではあまり出回らない「前期型」タイプです。開放f値「f1.7」と廉価版クラスなのに人物撮影が大変リアルに写り、富岡光学製オールドレンズの特徴たる被写体の素材感や材質感などを写し込む質感表現能力に優れ、距離感や空気感など立体的な表現性、現場の雰囲気や臨場感溢れる描写性にお勧めの逸本です。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑このモデルは全て共通ですが、後玉の格納筒がご覧のように突出しています。グリーンのライン部分が「約5.6mm」出ているので、装着するカメラボディ側のマウント部内部との干渉などご留意下さいませ。

↑またA/M切り替えスイッチ部分の「ツマミが欠損」しており、芯材の金属板だけの状態になっています。その金属板を操作すれば、ちゃんとA/M切り替え可能なので問題ありませんが、本来モールドされていたプラスティック製ツマミが存在しないので、スイッチの切り替えの「意味」が逆に見えてしまいます。

例えば、上の写真の状態は、仮にツマミが存在していたら左側の「A」が隠れており「手動 (M)」の設定です。逆に上の写真で芯材の金属板を「M」側にセットすると、その時ツマミがあれば隠れていることになるので設定は「自動 (A)」ですね (ブルー矢印)(笑)

つまりスイッチの設定方向がツマミが欠損してしまった為に逆方向に見えてしまうと言うワケですからご留意下さいませ。切り替え動作自体は確実に絞り羽根が駆動するようちゃんと調整済です (問題のS字型捻りバネとキッチリ2時間戯れたのでバッチリ仕上がっています)。

↑スイッチ部分を分かり易く斜め方向から撮影すると、こんな感じです。スイッチ操作時は、ちょっと指が痛いですかね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」に変わりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になっています。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。