◆ Ernst Leitz Wetzlar (エルンスト・ライツ・ヴェッツラー) Summitar 50mm/f2《collapsible》(L39)

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今回オーバーホール/修理作業が終わってご案内するモデルは、
旧西ドイツはErnst Leitz Wetzlar製標準レンズ・・・・、
Summitar 50mm/f2《collapsible》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール/修理のご依頼を承ったモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた
12年前からの累計で当時のLeitz製標準レンズの括りで捉えても「初めての扱い」です。

厳密に言うと今回のご依頼内容は、オーバーホール作業ではなく「組み立て直し」と言うべきか、バラバラになっていた構成パーツを「本来の状態に組み戻す作業」と解説するのが適切
だと思います。

・・が然し、荷物を開梱し取り出してみると「あ゙ッ! 絞り羽根が!」と目が点に・・(笑)

↑ご覧のように上下左右全ての面が曲がっている「歪曲絞り羽根」だったのです・・!(汗)

以前、このタイプの「歪曲絞り羽根」が組み込まれていたオールドレンズを扱ったのは、一番最初が旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製標準レンズのBiotar 5.8cm/f2 T《初期型−II:戦時中》(exakta)」で初めて目にし/作業して「2時間がかり」だったのです。

次に扱ったまさにErnst Leitz Wetzlar製Summar 5cm/f2《collapsible》(L39)」の時が同じタイプの「歪曲絞り羽根」になります。しかしその時の作業時間はさらに大変で「4時間がかり」でした(笑)

さらに3度目の扱いも同様Leitz製標準レンズでしたが、同じ「Summar 5cm/f2《collapsible》(L39)」同一タイプの歪曲絞り羽根ながら「5時間がかり」と・・何だか扱う度にむしろ時間が増えている始末です(笑)

今回の作業が4度目なのですが、この歪曲絞り羽根を組み込む作業にかかったのは「6時間がかり」と再び1時間増えています(笑)

そもそも、おそらく過去メンテナンス時に鏡筒内部にグリースを塗布していたと推察でき、その痕跡が経年の酸化/腐食/錆びとして鏡筒内壁に残っていました。従って、これら歪曲絞り羽根の表裏面全てに「赤サビ」が出ていたので、そのサビを取り除く作業だけで2時間も掛かりました (どんだけ技術スキル低いのかと言う話です)(笑)

何故なら、この時代の絞り羽根は多くの光学メーカーでカーボン仕上げだったので、そもそも赤サビが出やすいのです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑荷物を開封して取り出した時に撮影した写真です・・はい、目が点になっていた時です(笑)

ッて言うか、そもそも歪曲絞り羽根が組み込まれている事を知らなかったので (何しろライカ製オールドレンズは全く知らないから)、もしも事前に分かっていたら作業すべきか悩んでいたと思いますし、少なくとも覚悟ができていたでしょう(笑)

・・まるでぶっつけ本番的に作業に臨んだ次第です(汗)

写真の撮影スキルがド下手なので(汗)、上の写真もちゃんと撮れていませんが、鏡筒内部の内壁部分が茶色く経年に伴う酸化/腐食/錆びが起きています。

確かにこの歪曲絞り羽根相手に絞り環操作を軽い操作性で行うと想定すれば、誰が考えても「グリースを塗りたい」と思うのが人情なのでしょうが・・はたして「鏡筒内部にグリースをマジッで塗るかぁ〜?!」と当方的には「???」です(笑)

何しろ絞りユニットを挟んでいるのが光学系前群と後群となれば、その蒸着コーティング層を経年で痛めつけるが為にグリースを塗るようなもので、正直当方的には「許せない行為」であり、その作業を平気で公然と執り行う整備者を「許されざる者」と認識してしまいます(笑)

何だかそんな題名の西部劇映画があったような気がしますが・・(笑)

然しそう格好良いコトバを呟きながらも3時間、4時間、5時間とひたすらに恍惚に没入して同じ作業を繰り返していると・・いや、これはグリース塗りたくなるのは人情以上だ!・・などと勝手な口実を作ってグリースの缶を横目で見ていたりします(笑)

・・そういう設計をしたのが悪いんだからグリースくらい仕方ない!

どんだけ、そのような欲求と葛藤に対峙しつつ時間が過ぎていくのがアホに見えるのか・・みたいなお話しですね(笑)

例えばそもそも国産のOLYMPUS製オールドレンズ達は、その多くのモデルが「鏡筒内部に絞り羽根の制御系機構部が組み込まれている設計」なので、まさに光学系前後群の中間地点にガチャガチャ駆動する機構部が入っています。すると過去メンテナンス時にそこに「白色系グリース」を塗ったくっている整備者 (なのか整備会社と言うべきか) が非常に多い現実を今も目の当たりにしています(笑)

逆に言うなら、だからこそ特にOLYMPUS製オールドレンズ達の光学系内部にカビが繁殖している率がとても高く、合わせて蒸着コーティング層の経年劣化も相応に酷い個体が多かったりします。

そんな状況が現状の市場流通品に起きているので、当然ながら当方のオーバーホール作業時は「鏡筒内部なんかにグリースなど絶対に塗らない!」ワケで・・当たり前の話と言えば当たり前なのですが、実際にバラすと違うのがリアルな現実です(笑)

↑今回は散けていたパーツの組み立て直しですから完全解体していません。従って光学系も計測せず (計測できない) 作業しながらも何ともウズウズしていて気持ち悪いです(笑)

決して潔癖症ではありませんが(笑)、下手に散けていると「完全解体したくなる」タチのようでそれでウズウズしまくりだったのです(笑)

しかしそもそも「collapsibleタイプ (要は沈胴式)」となれば、ライカ製オールドレンズの場合不織布がはだけてしまい鏡胴を再び入れ込むのが大変だったりしますから、気持的には勝手にウズウズしてろ!・・と諦めモードでした。

上の写真赤色矢印の箇所は「黄鋼材の接触面」であり、前述のとおり過去メンテナンス時にグリースが塗られていた分もあって「酸化/腐食/錆び状態」なので、当方のDOHを施した
次第です。

↑鏡筒内部を覗き込むと・・こんな感じです(笑) 「位置決め環」がそもそも最初ッから製産時点で、黄鋼材の鏡筒切削時に一体で削り出ししています (赤色矢印)。

おそらくこの「位置決め環」を取り出して歪曲絞り羽根をセットできていれば「赤サビ取りで2時間を要した後に組み込みで2時間」の合計4時間で作業が終わっていたのではないかと、こじつけて納得しています(笑)

ここに歪曲絞り羽根を1枚ずつ組み込んでいくのですから、さすがに「赤サビ取りの後の4時間」でそれを繰り返していると・・アッと言う間に恍惚モードに入ります(笑)

次第に自分がいったい何をしたいのかが「???」になってきて、まずはその意識改革からとりかからないと作業を続けられなかったりします(笑)

しかもこのライツ製歪曲絞り羽根は「2つのカタチで用意されている」から堪ったものではありません(涙) いったいこの歪曲絞り羽根を考案した設計者はどんな性格だったのか?・・確かめたくなりますね。

よくもまぁ〜閉じていく際にキモイ「まるでカメレオンの目のように見える」閉じ具合が、いまだに馴染めません(笑)

ちなみに既に「磨き研磨」が終わっているので、鏡筒内壁部分の平滑性が取り戻されている状況です。

↑こちらのパーツは絞りユニットを構成するパーツの一つで「開閉環」です。ご覧のように、ちゃんと数えれば明白ですが(笑)「全部で12箇所の溝が切削されている」ので、当然ながら実装すべき歪曲絞り羽根の枚数は「12枚」ですョね?(笑)

ネット上を確認すると、確かに整備者のサイトがあったりしてそこに解説が載っているのですが、どうしてこの歪曲絞り羽根の話を誰もしないのでしょうか?

しかもたいていのサイトで「絞り羽根は10枚、後に更新されたモデルで円形絞りに変更されて6枚」と詳説しながら、それでいて「正六角形の開口部」と締めくくっているので「???」ですョね?(笑)

何で10枚の絞り羽根で「正六角形」の開口部が生まれるのか、頭悪い当方にはどうにも理解できていません(笑) 少し穿った考え方をしても「10枚で何で5角形なの?」とならなければイケナイのに、この複雑なカタチの絞り羽根の話を誰もしません。

従って考えるに、おそらく過去メンテナンス時にこの歪曲絞り羽根を取り出して清掃していないと思います。パッと見で「ウッ!」と拒否反応が現れてバラさずにグリースを塗ったくって組み上げ完了にしていたのではないでしょうか・・(笑)

だとすれば「歪曲絞り羽根でしかも2種類のカタチが組み込まれている」ことを知らない整備者が多かったのかも知れません。

それをバカ正直に4時間もタダひたすらに取り組んでいるアホなヤツが居るので (当方のことです) きっと笑えるでしょう(笑)

上の写真のとおり、当然ながら「開閉環側も歪曲状態」です。さすがにこの歪曲面にダイレクトにグリースを塗るのは憚れたみたいで(笑)、開閉環の側面側に黄鋼材の経年酸化/腐食/錆びが起きていました (従って側面にグリース塗っていた)。

上の写真はド下手撮影なので分かりませんが、実はピッカピカに平滑性を取り戻して仕上げてあるのです。

↑「赤サビ取り」で2時間を要し、その後の歪曲絞り羽根組込作業で4時間を使い(笑)・・合計6時間後に撮影できた「恨めしい写真」です(笑)

当方がウソを言っているのではなくて「ちゃんと開口部は正六角形に至っている」のが分かると思います(笑) もちろん数えても歪曲絞り羽根は全部で「12枚」ですから、10枚とのネット上の解説は違うと思いますが、それは当方の信憑性が皆無なので仕方ありません(笑)

上の写真は「開閉環」をセットした状態で撮影していますが、グリグリと12枚の歪曲絞り羽根が迫り上がっていて「まるでカメレオンの目」状態なのです (キモイ!)(笑)

当然ながらこのような歪曲絞り羽根12枚の開閉動作なので「限りなく軽い操作性で仕上げる」ために、当方はここにグリースを一切塗っていませんし、そもそも光学系前後群に挟まれる場所なので塗りたくないのです!

ちなみに上の写真に写っている「開閉環」の両サイドに溝が1本ずつ在りますが、これは「カニ目溝」ではありません(笑) ここに絞り環にネジ込まれているブライトクロームメッキの化粧ネジ (両サイドに1本ずつ) の先端部分が刺さるのです。

従って絞り環を外して逆さまにした時点で「開閉環から歪曲絞り羽根までの全てがバラバラと落下してくる」ので(怖)、歪曲絞り羽根を触りたくなくてもヤラざるを得なくなる原理ですね(笑)

するとこの時に「観察と考察」が適うのですが、どうして化粧ネジは両サイドから締め付けているのでしょうか? 逆に言うなら、どうして1本で済ませなかったのでしょうか? それは数多くのオールドレンズがたいていの場合で1本だからです。

ここがポイントで「限りなく軽い操作性にするが為に両サイドから入れる設計にした」点に設計者の立場に身を置いて考えなければイケナイのですね(笑) 結果、このモデルの絞り環の操作性は「全周に渡り均等のチカラを帯びさせる」ことで滑らかで軽い操作性を生みますから、もちろん絞り環側にはグリースを塗布するのが良い話になります・・然し、鏡筒内部には塗布する必要が一切あり得ないワケですョ(笑)

それを「黄鋼材だから」とまるでフィルムカメラの当たり前の如くにグリースや潤滑油を塗ってしまう短絡的な思考回路のままだから、過去メンテナンス時に間違った整備をしてしまうのです(笑)

・・要は「観察と考察」が全くできていないのです(笑)

DOHヘッダー

ここからは組み立て作業が完了したオールドレンズの写真になります。

↑こうやって眺めると・・何とも美しい想いしか湧き上がらないから不思議です。とてもステキな「ズミター」です (当方はニッポン人なのでポルトガル語圏やロシア語圏の末尾アールを強調する発音はしません!)(笑)

そうです・・「ズミタール」とは当方は発音しないのです(笑) 日本には昔からポルトガル人やロシア人が好きな人達が多かったのでしょう(笑)

ッて言うか、これをドイツ語発音させると「スミター」に聞こえるのですが、どうして「」なのでしょうか? ドイツ語では、例えば「Schneider」もちゃんと「シュナイダー」なので「シュ」発音になっていることを考えると「ズミター」の「」と濁音発音になるのがよく分かりません。

・・と6時間も恍惚モードに入っているとどうでも良いことに拘ります(笑)

ちなみに、光学系のコーティング層蒸着は、ご覧のような光彩を放ちます。この放つ光彩から「前期型なのか後期型なのか?」の判定が下されるようですが、ライカ製オールドレンズの事を全く知らない当方はよく分かっていません(笑)

↑光学系はバラしていません。が然し、清掃できる箇所は清掃しました。もちろんガラス質が軟らかいので、注意深く清掃を終わらせています。

逆に言うなら、冒頭解説のとおり12枚もの歪曲絞り羽根が互いに擦れ合うので、グリースを塗布していない分「経年の赤サビを取るべき理由がここにある」点をご理解頂けるでしょうか・・。

そうしないと気がつけば (いい調子になって絞り環操作していると) 光学系内が粉だらけに堕ちていたりします!(怖)

そこにもしもグリースが塗布されていれば、数年で経年の揮発油成分に拠り「界面原理」から水分が留められ、アッと言う間に「また赤サビのお世話になる」と言うシステムなのは自明の理ではありませんか?

・・と考えているバカは当方だけですが(笑)

↑後群側もスカッとクリアな状態を維持している個体で・・本当に素晴らしいです!(涙)

なお光学系構成図はネット上をチェックするといろいろありますが、以前当方で計測した時の構成図では右図の状況ではないかと当方では捉えています。

特にグリーンの矢印赤色矢印の2箇所に隙間が備わり貼り合わせレンズになっていないと思いますが、今回完全解体して確認していないので仕様上はネット上の情報をそのまま踏襲しています。

右構成図は以前のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

当方の捉え方では「6群7枚の拡張ダブルガウス型構成」ではないかとみています・・。

↑マジッで恨めしい写真です(笑) 12枚の歪曲絞り羽根がグリグリ/ズリズリと動きまわって迫り出てくる様は「カメレオンの目」でキモイです(笑)

実は開放側に絞り環を回すと分かりますが「何と正六角形に全ての絞り羽根が集束してくる」ように見えています!(驚) ご依頼者様は自分の手でそれを試して確認できますが、このように12枚の歪曲絞り羽根が重なっていたのに「なんで最後は6枚に集束するの?」と言うお話です(笑)

実はここに設計者の頭の良さが現れていて「だから2種類のカタチの歪曲絞り羽根にしたのョ〜ぉ!」なのであって、せっかく6時間も恍惚モードに没入していたのならと、自分で至極納得しているところです(笑)

12枚の歪曲絞り羽根のうち「開放側に向かうにつれて消えゆく歪曲絞り羽根が半分在る」から最後は6枚に集束してキレイに完全開放する次第です。

・・実はせっかくなので最後に絞り環操作して愉しみつつ酒の肴だったのです!(笑)

ちなみに歪曲絞り羽根と戯れていた時間は6時間ですが、最初の2時間は「赤サビ取り」です。そんな2時間もどうして時間が掛かるのかと思われるかも知れませんが、歪曲絞り羽根の1枚につきせいぜい10分の計算です。

さらに上下左右に全体が歪曲しているのでサクッと磨けません(泣) 表裏面なので片面で5分しかありません。そう考えると5分で経年の (何十年分なのか知りませんが)「赤サビ取り」となればまだ時間が少ないのではないでしょうか?

ッて言うか、本気モードで磨ききってしまうと今度は逆効果で互いの歪曲絞り羽根が重なり合って擦れる際「むしろ抵抗/負荷/摩擦が増大する」のを当方は自らのDOHで知っているからサクッと5分で仕上げているのです (深追いしません)。

・・何でもかんでも磨きまくってツルツルピカピカに仕上げれば良いのではありませんね(笑)

つまり適材適所ではありませんが、対象となる構成パーツが (例えネジ1本でも) 互いに接触するなら「磨き研磨」するワケですが、その根拠は「製産時点の製産ラインでそれらパーツは決して錆びていなかったハズだから」との思考回路です(笑)

従って「磨き研磨」の最終目的は経年の酸化/腐食/錆びを可能な限り除去して「製産時点の状態に限りなく近づける/戻す」ためであって、決してピッカピカにしたいが為の作業ではありません(笑)

それを内部のパーツなのにピカピカに仕上げても意味がないと貶しているバカがネット上にも居ますが(笑)、まるで理解していません。

すると今度はあ〜言えばこう言うで(笑)「ではオマエはその製産ラインを自分の眼で見て知っているのか?」と来ます(笑) 当然ながらそんな事柄は知るワケもなく、いえもっと正しく申し上げるなら「知る必要すらない」のがそう言ってくる人達/勢力には理解できていません。

ではいったいどの程度磨けば良いのか・・それはその対象となるパーツとその周りを見れば
一目瞭然で、何のためにそのパーツがそこに居るのかさえ理解できていれば「どんだけ磨けば十分なのか」は自ずと明確に至ります。

・・それを当方では「原理原則」と呼称するのに相変わらず理解しないアホな輩が多い(笑)

話を進めると「赤サビ取り」が終わってから12枚の歪曲絞り羽根を位置決め環にセットしていく作業に入りますが、それが4時間掛かったワケです。どうしてそんなに長いのかと言えば「2種類のカタチを順に重ねていっても残り4枚の処で差し込めなくなる」からです。

つまり12枚の歪曲絞り羽根のうち8枚をセットするとほぼ一周に至るので、残りの4枚は「一番最初にセットした歪曲絞り羽根の下に滑り込ませなければセットできない」話に至ります。この時、その残りの4枚を差し込んでいるうちに「セットしていたハズの歪曲絞り羽根が浮き上がってズレてしまい意味がなくなる」ので、再び全部バラして最初からヤリ直しなのです。

しかしそうは言っても次のセット作業で同じ事を繰り返してもいつまで経ってもセットできません。従ってすぐに浮き上がってしまった歪曲絞り羽根の「歪曲度合いが拙い/適合していない」からこそ浮き上がるので、その1枚を特定してから取り出し「今一度歪曲度合いをチェックし必要があればカタチを整える」ことで、最終的に12枚全てをセットし終えたのが4時間後・・と言うお話しです(笑)

従ってどうして恍惚モードに入るのかと言えば、そういういつ終わるとも知れぬ作業を延々と続けているからで(笑)、気がつけば陽が墜ちてスッカリ暗くなっていたりするのです(笑)

↑当方は「collapsible (沈胴式)」好きですねぇ〜。そもそも距離環のツマミを回す操作方法だけでもギミック感タップリで楽しいのに、プラスして沈胴するなんて堪りません!(涙)

・・ライカ製オールドレンズを知らないので写りで感激できていないと言う恥ずかしさ!(恥)

最後の4枚目写真 (上の写真) を見れば分かりますが「絞り環の刻印絞り値は国際絞り値」です。他のオールドレンズも同じですが「開放f値f2の次がf2.8で、以降f4、f5.6、f8、f11、f16」になるのは国際絞り値 (一段での露光量が半分にあたる) ですね。

一方初期の個体では「大陸式絞り値」を採っていたらしいので「開放f値f2、f2.2、f3.2、f4.5、f6.3、f9、f12.5」の刻印です (wiki参照の事)。

なお、今回の組み立てでは前述のとおり絞りユニット内部には一切グリースを塗布していませんが、逆に絞り環側にはちゃんとトルクを与える分グリースを塗布しています。もちろんいつものとおり当方は「白色系グリース」を一切使わないので今回も「黄褐色系グリース」です。

従って次回経年で酸化/腐食/錆びが起きるのは相応に時間が経ってからの話なので、当分は整備の必要がありません(笑)

↑実は今回の組み立て直し作業ご依頼内容には含まれていませんでしたが、組み上げてみると「沈胴筒がアッチの方向を向いている!」(涙) だったので、上の写真のように「絞り値の基準●マーカーと鏡胴基準▲マーカーが同じ側に来ない」状況でした (赤色矢印)。ピタリと上下位置で合致しない設計 (グリーンのライン) にしても、当初組み上げた時に「絞り環の刻印絞り値はこの反対側に居た」ので「???」でした(笑)

しかし冒頭でお話したとおり「基台内側に不織布が張られているのが沈胴筒を抜くとバラけてしまい再び入れられない」ので作業したくなかったのですが、仕方なく位置合わせで沈胴筒を一旦抜いて位置合わせしました。

これは沈胴筒をスライドさせて繰り出して固定した時に「爪が噛み合う位置が決まっている」ので、単に沈胴筒を一度抜いて差し込めば良い話しではありません。問題だったのは「爪の環/リング/輪っかを締め付け固定するイモネジが1つ存在する」ので、その下穴の位置がヒックリ返る (向きが反対になるから) のでどうするかと悩みましたが、抜いてみれば何の事はなく「ちゃんと適切な位置に下穴が空いているではありませんか!」(驚) という状況でした。

つまり過去メンテナンス時に敢えてドリルを使って下穴を削って1箇所用意し、反対向きの位置にイモネジで爪を締め付け固定していたようです。今回の組み立て作業で製産時点の下穴位置でイモネジを締め付け固定した次第です。

・・何で反対位置にしたかったのでしょうか???

ライカ製オールドレンズの事を知らない上に、輪を掛けてライカ製フィルムカメラの事も知らない・・というか、別世界の話なので・・当然ながらそういう質問が沸き起こっても、ただただひたすらに消化不良になるだけです(笑)

↑沈胴式・・collapsible・・堪りませんね!(涙) この時、赤色矢印のように爪が内部で外れているので、その分互いの基準マーカー同士は、より離れた位置に変わります (これが正しい状態)。

逆に言うなら、沈胴筒を繰り出した時互いの基準マーカー同士は最も近い位置に揃ってくるのが適切ですし、その位置になるようちゃんと下穴が空いていました(笑)

  ●               

なお、最後にもう1本承り同梱していた「Tessar」についてご報告致します。再整備でしたが、実は当方のデータベース記録をチェックすると一言「摩耗」の文字が残っており、要は以前のオーバーホール時に「絞りユニット内部の開閉環が摩耗している」が為に抵抗/負荷/摩擦が増大し、開閉アームが左右に首振りして「絞り羽根を開いたいり閉じたりする」原理であるものの、その開閉アームの部位にセットされている「捻りバネ」を強めています。

今回絞り羽根が不動に陥っていた因果関係がそれで、前回以降その捻りバネが再び弱ってしまったようです。

残念ながら今回の再整備で再び強めにセットしましたが、もう次回は「製品寿命」に至ると考えられます。

今回の再整備で、再び完全解体してヘリコイドのトルク調整と共に (そうしないとヘリコイドの繰り出し/収納時にも開閉アームにチカラが及んでいるから) 問題の「絞りユニット内部開閉環と鏡筒内壁をさらに磨き研磨」施しました。

現状、正常に開閉動作するよう戻っていますが、希に絞り羽根が止まる事があります。特にオールドレンズ本体が上向きになった時に開閉アームの捻りバネが弱っている分、必要なチカラが及ばず絞り羽根が停止してしまうようです。

残念ながら改善できません。現状可能な限り開閉動作させていますが、次回はもうムリだと思います。

申し訳御座いません・・。

従って、当方整備の落ち度ではなく「個体固有の問題」なので、申し訳御座いませんが作業代金をご請求させて頂きます。

このように当方は一般的な整備会社の保証制度の如く「期限を決めて無償修理していない」のです(笑) その根底には皆様が指摘される「技術スキル低すぎでしょ?!」と言う問題もありますが、基本的に数年先 (基本的に7年間は大丈夫なのを検証済なので、最低でも5年くらいは問題が起きない) とみています。

すると世の中には「一度整備したら10年もつのは当然の話!」と豪語している整備会社があるようですが(怖)、当方はまだ整備作業を始めてから12年しか経過しておらず、しかも自ら過去に整備した個体を回収して検証できているのは「せいぜい7年前まで」と言うレベルです。

だとすれば「せめて5年くらいはもたなくてどうするのか?!」との想いが働くので、いつも再整備は無償扱いの心積もりです。しかしそうは言っても当方の落ち度ではない限り (つまり今回のように個体固有の問題) 再整備もご請求が発生します。

さらにそうは言っても「それで納得できなければ最後は無償扱いの申請が叶う」のが当方のポリシ〜なので(笑)、基本ヤフオク! の出品同様「気に入らなければ返品キャンセルできる/タダにすれば良い」というご依頼者様やご落札者様への「権利も認めている立場」です(笑)

・・実際12年間で6人無償扱いした人が居ます(笑)

それもこれも自らの戒めと考えれば・・決して高い勉強代ではありませんね(笑)

どうぞよろしくお願い申し上げます。