◎ MINOLTA (ミノルタ) MC TELE ROKKOR-PF 100mm/f2.5 《後期型》(MD)
MINOLTAのオールドレンズを7月より続けて5cm、58mm、85mmとオーバーホールし出品してきましたので、そろそろ中望遠になります。1973年発売の「MC TELE ROKKOR-PF 100mm/f2.5 《後期型》」です。この後期型までが光学系構成5群6枚の変形ガウス型で、後の1976年、1977年発売の「MD ROKKOR」シリーズからはレンズが1枚減らされて5群5枚になっています。
当レンズも光学系前玉の裏面に「アクロマチックコーティング (AC):2層」が施されており当時では世界初の複層コーティングでした。その後有名処では旭光学工業の「Super-Multi-Coating (SMC):7層」が登場し、各社マルチコーティング化が主流に変わっていきます。
今回の出品の個体はそのACコーティング面に前オーナーによる「拭きムラ」が縦断しており外周附近にもまちまった拭きムラがあります。順光目視でも角度によって明確に視認できるレベルです。前回同様、前玉裏面のACコーティング面のみ清掃は実施しておりません (容易にコーティングが剥がれてしまうため)。コーティング面の経年劣化が進んでおり浮きが生じ始めています。但し、カビの発生は無さそうです。
オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程の写真を解説を交えて掲載しています。
すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを実際に使って組み上げていく組立工程写真になります。
構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリスの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。
まずは絞りユニットと光学系前群を収納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) は独立しており別に存在しています。
この状態で鏡筒をひっくり返して「絞り連動パーツ」を撮影しました。
絞りユニットを組み付けた鏡筒をひっくり返すとこのようになっています。写真手前の「円筒状のピン (金属製の棒)」がながらかなカーブに沿って右側に進むと「絞り羽根」が開き、ピークのカーブの処で「開放」になります。もちろん「開放」になるように調整をしているからなのですが・・。
次の写真はヘリコイド (メス側) 用のベース環です。
真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた位置までネジ込んでいきます。このモデルでは「無限遠位置調整機能」が装備されているので大凡のアタリで構いません。
ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルではネジ込み位置が12箇所あるので、さすがにここをミスると調整幅を超えてしまい最後にバラしての再組み直しに陥ります。
上の写真はマウント部の内部を撮影しています。全ての連動系パーツを外して「磨き研磨」が終わっています。
マウント自体を組み付けてひっくり返して撮影しました。このマウント自体の固定ネジがマウント部内部で「隠しネジ」になっているので、後から最後にマウント自体を組み付けることができないので、一番最初にセットしてしまいます。
ようやく「絞り連動パーツ」類を組み付けられます。どのアームから出ているピンが何の役目だか理解していないと逆方向の動きにセットしてしまい正しく絞り連動が行われないことになります。
オーバーホールを始めた最初の頃は、写真を撮りまくったりメモしたりしていましたが(笑) 最近は「ねじりバネ」の向きもその「役目」が理解できていれば見ただけで「向き」や組み付け位置が判るので、だいぶ楽に作業を進められるようになりました。ネジの大きさや長さまでもほぼ見れば分かりますのでメモしなくて良くなり作業時間の短縮化ができています・・。
先に基台をベース環にセットしておきます。この基台とベース環の固定用ネジも「絞り環」の内部に位置する「隠しネジ」になっています。
鏡筒をヘリコイド (オス側) に4本のネジで固定してセットします。
再びひっくり返して、今度は絞り環を組み付けます。この時、絞り環の内側に直径「1mm」のマイクロ鋼球ボールと「マイクロスプリング」を組み付けます・・絞り環の操作時に「クリック感」がありますから。さらに先にセットした鏡筒から突出している「絞り連動アーム」なども「絞り環連係カム」に噛み合わせておきます。そのために先に鏡筒をセットしたワケですね・・。
マウント部をセットしてからでは光学系後群の組付けが面倒なので、ここで先に光学系後群を組み付けます。
ようやくマウント部をセットできました。梨地仕上げのマウント固定環もキレイに「磨き研磨」したので美しい色合いを放っています・・。
ここで光学系前群も組み付けてしまいます。
前玉裏面の「アクロマチックコーティング (AC)」は角度によってはこのようにキレイなのですが、実際には経年劣化でコーティング面の浮きが生じ始めています。MINOLTAのこの当時のオールドレンズを既に8本オーバーホールしましたが、程度の差こそあれ、すべてこのACコーティング層は経年劣化の症状が出ている個体ばかりでした。年数からして既に限界に到達しているのでしょうか・・。
光学系の状況:順光目視にて様々な角度から確認。カビ除去痕としての極微細な点キズ:前群内複数目立つ点キズ6点、後群内:7点、目立つキズ1点。コーティング経年劣化:前後群あり、カビ除去痕:あり、カビ:なし。ヘアラインキズ:後群1本。その他:順光目視で前玉裏面のACコーティング面に拭きムラが1本縦断しており、外周附近にもまたまった拭きムラが一部あります。光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れもありますが、いずれもすべて写真への影響はありませんでした。
上の写真2枚は前玉裏面のACコーティング層を縦断している「拭きムラ」です。
上の写真のように、前玉裏面のACコーティング層は経年劣化によるコーティング面の浮きがポツポツとほぼ全域に渡って生じています。
上の写真2枚は光学系後群を撮影しました。1枚目が外周附近の極微細な薄いヘアラインキズです。角度によっては視認できますが見つけるのは容易ではないかも知れません。2枚目は極微細な点キズを撮影しましたが微細すぎて写っていません。
距離環を仮止めして無限遠位置確認、光軸確認、絞り羽根開閉幅の確認を執り行えば完成間近です。
ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。この個体には純正の金属製専用フードが附属していました。ありがたいですね・・。
光学系内の第2群に「貼り合わせレンズ」が位置していますが、バルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) も進行しておらずとてもクリアな状態を維持した個体です。
ここからは鏡胴の写真になります。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所あります)。
描写性はどちらかと言うとミノルタの「優しい感じ」よりも端正さを前面に押し出したような印象を受けるモデルです。少々大柄ですが造りの良さもあり、なかなか使い出のあるレンズではないでしょうか・・。
光学系後群もとてもクリアです。
当レンズによる最短撮影距離1.2m附近での開放実写です。ピントはちゃんと合っているのですが (ヘッドライト) 盛大なハロが出ているので、絞り値を変えて続けて撮影しています。
最初は開放「f2.5」になります。
一段絞っただけで別モノの写真になりました・・。次はF値「f5.6」です。