〓 Nippon Kogaku (ニコン) NIKKOR-H・C 5cm/f2《黒帯》(L39)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
NIPPON KOGAKU製標準レンズ・・・・、
NIKKOR-H・C 5cm/f2《黒帯》(L39)』です。


今回の扱いが累計で僅か2本目にあたる、巷では俗に”黒帯”と呼ばれるニコンの標準レンズNIKKOR-H・C 5cm/f2《黒帯》(L39)』です。

Nikonの歴史から引用すると、創業は1917年 (大正6年) まで遡り、そもそも硝子の溶解設備が整ったのは1922年 (大正23年) との事なので,相当な昔から開発研究に努力し優れた光学硝子材精製技術の確立とその発展に努めていたのが分かります。戦前戦時中も既に民生向け製品の開発と生産に余念がなかったものの否応なく軍需産業に傾倒せざるを得ない状況になる中、NIKKOR (ニッコール) レンズの歴史は1933年 (昭和8年) に地図製作を目的とした航空写真機用レンズ「Aero-NIKKOR」の納入から始まっています (Nikkorの商標登録は1932年)。

戦後の民需生産への転換は早く、1946年 (昭和21年) には戦前戦中のそれまでの社名だった 日本光學工業株式會社を表す「ニッコー (Nikko)」を基に語尾に「」を付けてNikonを正式名称として登記すると、戦災を逃れていた大井第一工場 (現大井製作所) にて即座に量産体制の構築に取り掛かっています。

その中で今回扱ったモデルNIKKOR-H・C 5cm/f2《黒帯》(L39)』の光学系構成に着目して調べてみると、当初開発/特許申請した時点に使っていた光学硝子材の資料 (ここで言う資料は原材料の事) は、どうやら戦前戦中にドイツから輸入調達した資材/資料を基に設計/製産していたようで,戦後1948年時点で在庫が枯渇し (敗戦後の復興が進まない戦後ドイツからの輸入調達を断念し) 国内調達の資材/資料に頼る転換期を迎え、その時点で光学系の再設計が成されたようです。

右の光学系構成図はNikonのホームページにある「ニッコール千夜一夜物語」掲載構成図からトレースしたものです。

↑ところが今回オーバーホールの為に光学系をバラして清掃する際にチェックしてみると、Nikonのホームページ掲載の構成図とは異なるカタチである点に気が付きました。上の写真はその時に撮影した第1群〜第3群を並べたものです。

特に第2群と第3群のカタチが全く異なり、おそらく曲率も当初から極僅かに変化している (再設計している) とみています。

このような内容をアップすると、またウソを公然と載せているとSNSで批判の嵐なので証拠写真を撮っておきました(笑) 左写真の赤色矢印箇所を見れば一目瞭然で、あくまでもトレースした構成図から逆計算した厚みでの判断です。

例として挙げるなら3枚貼り合わせレンズ1枚目の厚みと曲率も僅かに違っているように見えます (真偽は不明)。そこで今回の個体をバラした際の光学系清掃時に、各群を逐一当方の手でデジタルノギスを 使って計測した計測値からトレースした構成図が右図になります。

そもそも第1群 (前玉) の厚みも曲率も僅かに違うのが分かります。

ことNikkorレンズの話となると、Canon製品の時と同じように下手すれば誹謗中傷メールが着信するので、あくまでも信憑性が極度に低い整備屋モドキたる『転売屋/転売ヤー』の話としてスル〜して頂けると助かります (勘弁してください!)。

一時期はさすがに頻繁に着信する誹謗中傷メールに精神面で耐えられなくなり、2020年からはネット保険に加入していつでも弁護士に依頼して被害の訴訟を起こせるよう待機しています。

そもそも当方扱い品の中でNikonとCanon製品が極端に少ない理由の一つにもなっていますがまるで専任整備会社様を差し置いて新参者が出しゃばるとは何様のつもりかの如く非常に手厳しい内容の誹謗中傷メールがコトバと内容を替えて着信し続けると参ってしまいました。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「NIKKOR-H・C 5cm/f2《黒帯》(L39)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑2017年以来なので4年ぶりの作業になり、ほぼほぼ内容を忘れているのでまるで初めての 扱いのような心持ちで臨みました(笑)

今回扱った個体はバラして際の内部状況から、おそらく10年以上前に一度だけメンテナンスを受けているとみています。当方が扱うオールドレンズとしては珍しく塗られていた古いグリースは「黄褐色系グリース」で、且つ内部パーツに刻まれたマーキングも非常に整合性の執れた納得できる刻み込みだったので、過去メンテナンス時の扱いはプロのカメラ店様や修理専門会社様だったように見受けます。

既に経年劣化進行に伴い塗布されていた古いグリースの揮発油成分も飛んでしまい、だいぶ重いトルク感に堕ちていた個体です。おそらく最後には (最近ですが) 潤滑油が僅かに注入されていた時期があり、そこからさらに数年経過している為に重いトルク感に至っていたと考えられます。但しいつもの「呉工業製CRC5-56」ではありません (あくまでも白色系グリースとの混用が拙いだけの話)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

残念ながら第1群 (前玉) と第2群3枚貼り合わせレンズの中央には経年並みの拭きキズやヘアラインキズが僅かに残っています (順光目視可能)。特に光に反射させつつ覗き込むと第2群の拭きキズが浮かび上がります (コーティング層のハガレと同時に物理的な微細で薄い拭きキズが残っている)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も2枚の貼り合わせレンズですが微細な点キズが多めながらも、そのほとんどはパッと見で微細な塵/埃に見えてしまう,実は「非常に微細な気泡」ですから、本当の微細な点キズは極僅か (数点) です。もちろんLED光照射でも極薄いクモリが皆無なのは同じです。

ある意味、いろいろネット上を調べると薄いクモリが生じている個体が多いようなので、ラッキ〜と言えばそうなのかも知れません。

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

最近のヤフオク! に出品されているオールドレンズの出品ページをチェックすると「貼り合わせレンズが存在しないモデルなのにバルサム切れ云々」を記載している出品者が多いですが(笑)、バルサム切れは光学硝子レンズを貼り合わせる時に使う接着剤 (定着剤) ですから、接着面を含まないオールドレンズにバルサム切れが生じるワケがありません(笑)

また一言に「薄いクモリ」と言っても、単に経年で内部のグリース揮発油成分が附着しているクモリなのか (つまり清掃で除去可能),或いは経年に伴うコーティング層の劣化なのか (清掃しても全く除去不可能) の違いがあり、必ずしも清掃でキレイになるとは限りません。特にコーティング層経年劣化に伴うクモリの場合は「光学硝子研磨」を処置しない限り除去できず,且つそのままではコーティング層が剥離したままなので再度コーティング層蒸着工程を経なければ曇っている当初よりも下手すればハレーションが多くなり、もっと最悪になる懸念も捨てきれません (光学設計に拠る)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前群内僅か)
(前群内に極微細な薄い7mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前玉/中玉に微細な拭きキズ/擦りキズあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑ニコン製オールドレンズの絞り羽根は本当に品質が良くて涙が出てきますね・・(笑) 10枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環のクリック感共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。もちろん筐体外装の多くが真鍮 (黄鋼) 製でクロームメッキ仕上げなので「光沢研磨」少しだけ実施しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・絞り環は設計無段階式(実絞り)でスカスカですが今回のオーバーホールで極僅かにトルクを与えてスカスカ感が低減するよう微調整済です。絞り環操作時はクリック感を感じる仕様です。
・距離環を回した時3.3feet刻印を越える位置で一度クリック感を感じますが、これは設計上の仕様として用意されているので正常です。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・絞り値刻印の俗の言う「黒帯」部分は経年並みにハガレが多めです。
・開放絞り値と基準「▲」マーカー位置とのズレはこの個体に限らず多くの同型モデルで同一であり設計上の仕様です。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『NIKKOR-H・C 5cm/f2《黒帯》(L39)』
汎用金属製ネジ込み式M39後キャップ (中古品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

↑上の写真では絞り環の絞り値刻印のスタート位置 (開放絞り値のf2) と、鏡胴側のマウント部直前に位置する基準「▲」マーカー位置との「ズレがある」のをグリーンのラインで示しています。

これはオーバーホール工程の中で一直線上に位置するようヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置を変更しましたが、すると距離計連動ヘリコイド側の無限遠位置まで一緒にズレていく為、或いはそもそも鏡胴「前部」の固定位置が決まっている設計から「この位置ズレは設計上の仕様」と判定しました。

実際ネット上の同一モデルの写真をチェックしてみるとほぼ90%以上の個体写真で同じ位置ズレが起きており、一部の個体だけさらにズレていたりしたので、そもそも同一線上に並ばないと判定しました (組み立て工程で試して物理的に不可能なのが分かったから)。

ちなみにこのモデルは鏡胴が「前部/後部」に分かれる二分割方式の設計ですが、一部の個体でズレ幅が大きいのは間にサンドイッチしなければイケナイ「シム環 (リング/輪っか)」と言う無限遠位置微調整用のリングを紛失したか何かの理由で、ヘリコイドのネジ込み位置自体を変更してしまった個体です (必然的に鏡筒固定位置を工夫しないと収差の影響が多くなりピント面の鋭さが堕ちてしまう)。

ある意味そういう「ごまかしの整備」もあったりするのがこの当時の鏡胴二分割方式の宿命だったりするので要注意です。

なお、今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品は、本来なら「Nikonのカテゴリー (マニュアルフォーカス)」に出品するのがルールですが、冒頭解説のとおり「オマエは何様だ!」との誹謗中傷メールが届くので,敢えて諸先輩方やニコンファンの方々皆様を刺激しないように
その他カテゴリー」にそッと大人しく出品します・・。

また当分手を出さないので、どうかご容赦下さいませ・・(涙)

NikonやCanon製オールドレンズは、何だかんだ言ってもプロのカメラ店様や修理専門会社様或いは専任の整備会社様が手掛けた個体こそが適切な整備と微調整を経ており,何はともあれ「一番安心で安全!」です。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはハレーション気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。そろそろだいぶ絞り羽根が閉じてきているので「回折現象」の影響が現れ始めて極僅かですが解像度が低下し始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。