◎ ISCO-GÖTTINGEN (イスコ・ゲッチンゲン) TELE-WESTANAR 135mm/f3.5 (black)《後期型》(M42)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
ISCO-GÖTTINGEN製中望遠レンズ・・・・、
『TELE-WESTANAR 135mm/f3.5 (black)《後期型》(M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で捉えても僅か2本目です。
前回の扱いが何と2015年で、しかもその時はバラさずに「まんま転売屋」やっていたワケで(笑)、ヤッていることが低俗すぎて恥ずかしいったらありゃしません(恥)
然しそれもそのハズで、このモデルは相当整備に慣れている人でなければバラすことも、組み立てることも、ひいて言えばヘリコイドオスメスに塗布するヘリコイドグリースの種類などを見立てることも含め、先ず以て適切な状態に組み上げられません(怖)
さらに言うなら、製造メーカーが旧西ドイツはISCO-GÖTTINGEN (イスコ・ゲッチンゲン) ともなれば、内部構造は複雑怪奇、構成パーツ点数も非常に多く、イモネジで微調整を伴いつつ締め付け固定など120%の勢いで当たり前の世界です(怖)
今回本当に久しぶりに扱ったものの、取っ掛かりのバラす段階から「???」になり、相変わらず自分の技術スキルの低さと言うリアルな現実にガックシです(汗) 13年間も整備していてそれで技術スキル低いまんまとは、いったい何なのかッて言う話です(怒)
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ISCO-GÖTTINGEN (イスコ・ゲッチンゲン) 社は、当時のナチス政府要請により老舗光学メーカーのSchneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) 社による100%出資子会社として、戦前ドイツはラインラント=プファルツ州Bad Kreuznach (バート・クロイツナッハ) 市 (ベルリンの南西部550kmの位置) にて1936年に創設されています。
社名のISCO-GÖTTINGENは「Josef Schneider & Co., Optische Werke, Göttingen」から採っているらしく、ドイツ語の発音「Josef」はドイツ人男性名を指し「ヨーゼフ」に聞こえるものの、確かによ〜く聴き込むと「(ィ)ヨーゼフ」と発音しているようにも聞こえ、そこから転じてラテン語/英語「I」をもってきているのかよく分かりません(笑)
当初は1913年に設立されていた姉妹会社「Optische Anstalt Josef Schneider & Co.,」であったものの、フランス国境に130kmと近すぎたことから、主体的な軍需製産会社としての位置づけにより工場も含めGÖTTINGEN (ゲッチンゲン) 市に1941年移設したようです。創設翌年から具体的な工場建設/設備搬入が始まりますが、戦争捕虜を使っての作業はなかなか進捗せず、現実的な光学製品の供給は1942年初頭まで遅れています。
この当時の軍需生産品の中で最も知られ、今現在も市場流通し続けているのが初期に開発/設計された「航空撮影用手巻き式ハンドカメラ:Hk12.5cm/F2」です。このハンドカメラは実際に当時の白黒記録映画にもその使用状況が映され残っており、戦後の戦争映画などでも使われているシ~ンがあったりします (両手で掴んでグリグリっと
本体丸ごと90度2回ひねって手巻きする)(笑)
実装光学レンズは「Schneider-Göttingen Xenon 12.5cm/f2」であり、製版プレート刻印を見ると「gxn」との軍用暗号刻印が確認でき「Fritz Völk (フリッツ・フォルク)」社の製造品であったことが判ります。ドイツ航空銀行債務履歴から手繰ると確かに1937年〜1945年の期間に軍用製産主体としていた記録が残っています (こちらのページ)。
ちなみに「Hk」はバート・クロイツナッハを表す当時ドイツ国内で融通していた通称です。
さらにISCO-GÖTTINGEN社名として供給していた軍用品の一つが左写真で、軍用暗号は「kqc」を当てています。やはりドイツ空軍用航空撮影カメラで「Schneider Aero-Xenar 32cm/f3.5」を装備しています。
白黒記録フィルムなどでよく見かける「ガンカメラ (射撃中の撮影用
カメラ)」映像などがこれで撮られていたと推察できます (一部のみ)。
ドイツ敗戦に伴い旧西ドイツ側に属した為に私企業としての存続が認められつつも、連合国による占領統治法により1953年まで本来の社名を使うことが許されず「Optische Werke Göttingen」としていたとの解説がありますが、しかし現実には既に1951年時点でISCO-GÖTTINGEN銘がレンズ銘板に刻印されています (Vintage lens makers – ISCO-GÖTTINGEN Germanyより)(汗)
当時のフィルムカメラ「Apparate & Kamerabau/ Balda/ Bilora/ Franka/ Wirgin」など向けに供給が始まっていました。
今回扱うISCO-GÖTTINGEN製「WESTANAR 135mm/f3.5」が
登場するのは、1952年から始まったアルミ合金材アルマイト
仕上げ、シルバークロームメッキの筐体シリーズにみられます。
この時の実装光学系は3群4枚テッサー型構成として組み込んで
います (今回扱った光学系とは別モノです)。
ちなみに、このタイプには筐体がブラックにメッキ加工されたモデルも顕在しています。
今回扱ったモデルの「前期型」として確認できるのが左写真のモデルで1958年に登場したようです。
実装光学系は4群5枚の変形エルノスター型構成になり、最短撮影
距離:1.35m、フィルター径:⌀46㎜の仕様です。
この時点で採用されているのが「回転式ヘリコイド駆動方式」なので、絞り環は距離環の回転とともにグルクル一緒に回っていきます。
「中期型」になると親会社Schneider-Kreuznach製オールドレンズではお馴染みの/当たり前な「窓を伴う被写界深度インジケーター」を装備してきます(笑)
光学設計の変更有無についてはまだ扱いがないので不明なままですが、注目すべきは「直進式ヘリコイド駆動方式」に大きく変わった為、絞り環の位置がマウント側近くに移動しています。
この構造の変更から「懸垂式ヘリコイド駆動」を採ったことが窺え、内部構造は相当に複雑な設計変化を断行していることになり、この後に登場する (今回扱う)「中期型−II」との対比で
捉えると、この「中期型」は下手するとSchneider-Kreuznach製OEMの懸念すら遡上してくる話にもなりかねません(汗)
ちなみに最短撮影距離:2.5mと「前期型」に比べて大きく後退している為、必然的に同一の光学設計を執りません(汗)
今回扱う「後期型」は1961年に登場し、一つ前の「中期型」から再び「回転式ヘリコイド駆動方式」に舞い戻ってしまい、絞り環は距離環の回転に追従して一緒に回ってしまいます(汗)
実装光学系は「前期型」と同じ4群5枚変形エルノスター型構成で、最短撮影距離:1.3mはに極僅かな短縮を図っており、そこから見えてくるのは光学系の再設計になります。
するとこれらモデルバリエーションを手繰った時、やはりどう考えても「中期型」だけが浮いてしまい、最も本質的な疑念は「前期型〜中期型〜後期型の僅か9年足らずの期間内で、投資した工場設備の回収にはどう考えても至っていない」ハズとの憶測から、どう考えても「中期型」で相当複雑な内部設計に変更した痕跡が一切継承されない時点で「OEM」のコトバが、
首を擡げて顔出ししてきます(笑)
・・この点についてネット上では誰一人指摘しませんが、はたして真実は如何に?!(笑)
↑上の図4つは全て彼の有名な「Ludwig Jakob Bertele (ルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレ)」氏が手掛けた発明案件です。
1つめ (左端):DE401274 (1922-01-14)
2つめ:DE401275 (1922-02-19)
3つめ:DE458499 (1924-07-22)
4つめ (右端):DE428657 (1925-03-05)
4つ全て特許出願申請書の提出日時にて時系列に並べています。
・・如何ですか??? 気づかれたでしょうか???(笑)
Bertele氏が生まれたのが1900年なので、23歳の時にちょうど在籍していた「Ernemann Werk-AG (エルネマン)」での発案案件になりますが、1922年に立て続けに特許出願申請しています。
ところが「肝心な4群4枚のエルノスター型構成が特許出願申請されたのは1924年」なのです (3つめ)!(笑)
巷では、確かにネット上解説を見ても「どれもエルノスター型構成の変形」と解説されるのですが、その本家本元エルノスター型構成が特許出願申請される前に発案されている光学設計であるものの「エルノスター型を変形した光学系」と捉えるべき道理が、どうしても頭が悪い
当方には理解できないのです(汗)
・・理解する方法を誰か、是非ご教授下さいませ!(涙)
特許出願申請書の記述内容を読むと、確かにエルノスター型の内容に準ずるが如く受け取れるのですが、そもそも知識が皆無なので理解以前に、記述文章の流れすら把握できていなかったりします(笑)
これが特許出願申請書の申請後の認可公開公告日時の時系列なら納得できますが、出願日時の時系列で既に前後してしまっている時点で「どっちが変形でどっちが始祖なの???」と言う
どうでも良い事柄について、あ~だこ~だ言っている始末です(笑)・・こういう些細な事柄が
超絶に気になってしまう性格だったりします (特許出願申請書を両手に鷲掴みしながら、右往左往している夢を観そう)(恥)
↑結局その真偽はず〜ッとずっと掴めないままとしても(笑)、上の図左端は英国はTAYLOR TAYLOR & HOBSON LTD社に在籍する「ARTHUR COX (アーサー・コックス)」氏による特許出願申請書「US2449769 (1946-03-13)」であり、当方には「まるで変形エルノスター型のお仲間」にしか見えません(笑) 実際はパテントファミリーの参にBertele氏の案件が含まれる為、間違いないとみています(汗)
すると上の図2つめがBertele氏による発案であるものの、今回扱ったモデルの登場時期直前のタイミング1951年「GB696167 (1951-07-26)」であり、その中から「Fig.3」の構成図をピックアップして、当方の手でトレースしたのが3つめの構成図です。
どうしてこの特許出願申請書に目星をつけたのかと言えば「記述を読むとこれら4つの発案は全て開放f値:F3.5をとる」と明記されている点に於いて、今回扱ったモデルの登場時期に
とても近接していると受け取ったからです(汗)・・光学系第4群の色収差改善に課題が残っていることまで記述しています(汗)
なおオモシロイことに、一番右端を偶然発見してしまい(汗)、何とOLYMPUSの池田義継氏による特許出願申請書「US3838911 (1972-07-03)」と言う、まるで現代の発案なのが分かります(驚)・・この特許出願申請書は国内では「特公昭48-033180 (1969-11-10)」としてもちゃんと確認できます。
↑そしていよいよ今回扱った個体から取り出した光学系を、左から順に第1群〜第4群と並べて撮影しています。光学系内で中間に位置する「絞りユニット」を挟んで「光学系前群を赤色文字」で記述し「光学系後群がブルー色文字」としています。またグリーン色の矢印が指し
示す方向は「前玉の露出面側方向」を示します (つまり後群側は必然的に向きが反転します)。
当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)、「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければ
イケナイみたいです(笑)
↑同様ヒックリ返して裏面側を撮影しています。記載内容は同じです。特に光学系第2群の2枚貼り合わせレンズのカタチがハッキリ掴めるのではないでしょうか。
またネット上の一部掲載構成図との大きな違いが顕在し「後群側の第3群は両凸レンズではなく凸平レンズだった」ことが判明しています (上の写真の如くちゃんと前玉側方向に凸なのが分かる)(汗)
これら取り出した光学系を今回のオーバーホールで完全解体した際の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
以下でオーバーホール工程の写真掲載と解説を試みますが、鏡筒がとても深いことや、光学系格納筒の中に「スリーブ環」がセットされる「その距離までちゃんとデジタルノギスを使い計測している」ので、右図のような構成図になります(汗)
↑上の写真がその『証拠写真』で(笑)、前後群に組み込まれる「スリーブ環」になり、要はそれぞれの光学硝子レンズ間に入る「空間確保/適切な距離と光路長の確保」を確定させる役目の環/リング/輪っかです。
今回の個体は実は当初バラす前時点の実写確認時に「こんなに甘い無限遠位置になってしまうの???」と言う印象を抱くほど、非常にピントのピーク/山が伴わないピント面でした(汗)
その大きな原因を招いていたのが上の写真「スリーブ環」で、実は上の写真は「全面の反射
防止黒色塗料を全て完全除去して撮影している」ため、本来の製産時点たる黄銅材が露わに
なっています・・それでもご覧のとおり「光学系内にあたる箇所はメッキ加工されている」
のに、その上から「反射防止黒色塗料」を塗りまくっていました(汗)
問題だったのは「スリーブ環のフチまで厚塗りしていた為に、環/リング/輪っかの上下で
塗膜分の厚みが2倍に膨れていた」結果、光路長逸脱に至ったとみています(涙)
それはそうです・・当時の光学設計時の許容誤差範囲は光学メーカーによって異なるものの、
一般的に「±0.02」と捉えられることから、取り出した光学系の単純な4群全ての光学硝子レンズの厚み合計値「30.39㎜」に対し、その「±0.02=1.2156㎜」なので、前述
4箇所分の厚み許容値は「僅か0.3㎜」分しかありません(怖)
0.3㎜シャーペンの芯1本分の厚みとなれば相当な塗膜量になりますが(汗)、次の写真をご覧下さいませ。
↑今回の個体からマイナスドライバーを使い擦り剥ぎ取った「反射防止黒色塗料」の一部であり
おそらく過去メンテナンス時に「プライマー塗布後に反射防止黒色塗料を着色した」ようで、
相当頑固に固着していました (全体量はおそらくこの5倍)(汗)
従って「反射防止黒色塗料」完全除去後は、まるで別モノのように無限遠位置のピント面が
鋭く変わりました(笑)
剥がす前の実写確認時は「微かに薄〜くピーキングがチラチラと反応するくらい」だったのが
組み上がった現在は「同じ実距離の無限遠確認で真っ赤っ赤にピーキング反応」との激変で、
あまりの変わりようにビックリです(笑)
・・こういうのが整備者の「自己満足大会」と、当方では捉えています(汗)
今現在もネット上で「迷光!迷光!」と大騒ぎする人達/勢力のおかげで、相変わらずこのような整備が当たり前の如く流行っています(泣)・・いったいどうして「光路長を逸脱する方向へ導く処置が受け入れられるのか???」頭が悪い当方には皆目検討すらつきません(涙)
それでいて、挙句の果てには「そのように光路長を逸脱したオールドレンズを使って、画の隅々まで等倍検証してあ~だこ~だ良し悪しを決めつける輩」までまるでのさばっている為(涙)、全く以て悪循環にハマッており、小心者の当方にはオソロシイくらいです(怖)
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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
〇 一段目
左端から円形ボケが破綻して滲んで崩れていく様をピックアップしています。条件が整えば明確なエッジを伴うリングボケや玉ボケが表出するものの、真円を維持させるのは相当厳しいようです(汗) 但しピント面の鋭さ感の誇張的な印象とは裏腹に、円形ボケのエッジ表現はうるさく感じずおとなしめです。
また収差ボケへと変わっていく様もそれほど違和感に至らずそのまま観ていることができるでしょうか。総じて乱れ系の円形ボケにはならないようです(笑)
〇 二段目
さらに収差の影響を受けつつもトロットロボケへと変わっていく様を集めました。焦点距離:135㎜なので、こういった背景ボケでトロットロボケに到達できるものの、収差の影響を同様強めに感じない滲み方なので安心して撮影に臨めるようです。
〇 三段目
この段で明確にピント面の鋭さの凄さをご堪能頂けると思います。おそらくやはり個体差が多いように感じますが、鋭い場合の解像度は相当なレベルです(汗) おそらく人物撮影もポートレートレンズとしての素養を十分に有すると思いますが、このモデルの前提として「ブル~成分に特徴が残る写り具合」なので、それを魅せるチカラとして活用できる撮影シ~ンの選定がとても効果的なように思います。その意味で、特に白黒撮影時は成分の振り分けが転ぶので、少々このモデルの個性の把握が事前に必要なのかもしれません。
〇 四段目
ピント面の鋭さ感と発色性の鮮やかさ/色かぶりの無さを確認しています。色の偏重を全く感じないので、どんな色合いでも明暗でも問題なく対処できるのでしょうが、相変わらず「ブル~成分の特徴」が強いので、スッキリした写りに偏りがちです・・その意味でコントラストが欲しい時の工夫が必要なのかもしれません。
〇 五段目
このモデルの光学性能を最大限に効果的に示すライトトーンのグラデーション撮影です。こういうシ~ンでもノッペリした平面的な写りに堕ちないのがたいしたものです(汗) 陰影のバランスも良く、ひいて言えば距離感をもっと立体的に感じる背景ボケの活用があれば (つまり絞り値の活用) なおさら素晴らしい写真を残せそうです。
〇 六段目
この段では被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さについてピックアップしていますが、135㎜にしては今ひとつな印象で、前出の動物毛の解像度感に比べると、少々拍子抜けな印象です(汗) 個体差の問題が大きいのかもしれません。
〇 七段目
光源や光の反応についてチェックしているところですが、いわゆる今ドキの「ゴーストブーム」或いは「光輪張り」的な感動から捉えるなら、少々物足りない印象でしょうか???(笑)・・但し、当方がそういう類にオールドレンズの魅力として偏重しないので(笑)、単に感動しないだけの話なのかもしれませんが、せっかくならブル~成分の活用をもっと積極的に含むのが良いかもしれません。ブル~成分と言っても、なにも青色系だけが強調される話ではないので、その点を履き違えると上手く活用できません(汗)
なお蛇足ですが、このモデルのモデル銘呼称は「テレ・ヴェスタナー」が正しいドイツ語発音なので「テレ・ウェスタナー」とはドイツ語で発音しません。この発音はラテン語/英語発音の場合に限定されます(笑)・・例えばよく間違われるのが「狼」ですが、ドイツ語発音では「Wolf (ヴォルフ)」であり「ウルフ」はラテン語/英語発音です。逆にドイツ語の「Vögel (鳥)」発音は「フェーゲル」とラテン語/英語発音の「F (エフ/フ)」発音に近い印象に代わります (一部にはドイツ語でもV/ブイ発音の文字もある)。
ドイツ語はこの文字による発音の相違パターンを理解して囓ると(笑)、ワリとローマ字的な発音手法で当たっていたりするので親しみ易いと言えばそのように受け取っています(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。完全解体すると
ご覧のように内部構成パーツ点数はとても少ないです。そもそも親会社Schneider-Kreuznach製オールドレンズをバラすと、最低でもこの3倍の量にまでパーツ点数が増大します(笑) その意味で完全子会社であったハズのISCO-GÖTTINGEN社の立場からすれば、このような少ない構成パーツ点数の結果は、意外でしかありません(笑)
しかしパーツ点数が少ないからと言って「簡素な構造」と結論を直結させてしまうのはだいぶ乱暴な導き方です(汗) ハッキリ言ってこのモデルは「回転式ヘリコイド駆動方式」をその基本としつつも「設計概念」まで合わせて考察し、そこから導き出される「無限遠位置の微調整方法」まで発見を進めない限り「最終的な組み立て手順が掴みきれない」と言う、まるで逆算的な考察を強いられる「ハードルが高いモデルの一つ」と明言できます(汗)
かく言う当方も最後までバラして溶剤で洗浄した後に並べた時、初めて考察を進められたほどにバラしている最中は「何でこの部位はこう言う接続方法を執るのか???」まるで分からないまま、暗中模索の如く解体を進めていったほどです (要は技術スキルが低いからそうなるのですが)(恥)
逆に言うなら、確かに当時1950年代としても「もっと合理的で各部位の繋がりを明確に設計できたハズ」なのに、まるでムダなのが分かっていながら設計したかのような造り/構造に「???」でしかありません(笑)
冒頭解説で述べたように、確かに同じモデル銘「TELE-WESTANAR 135mm/f3.5」ながらも「中期型」の複雑怪奇さはまるで別世界の産物にしか見えないほど、このモデルの設計概念は反対側に位置しています(笑)
それなのにその「中期型」モデルの内部構造と構成パーツには明確な繋がり、部位別の連携が確認できる設計なのが明白であり (今まで一度もバラしていなくても、当時のSchneider-Kreuznach製懸垂式ヘリコイド駆動方式の構造は、一貫してどのモデルにも共通概念をもっていたから)、そこから見えてくる話は「内部構造/設計概念の複雑さは必ずしも互いに一致しない=組み立て手順はそれら構造と構成パーツ点数から一切影響を受けない」と断言できます。
だからこそそこに落とし穴が隠されていて「バラした時の逆手順で組み立てようとすると適切に組み上がらないオールドレンズが顕在する」のが、まさにその「証」です(笑)
↑上の写真はバラした後に溶剤洗浄してから「過去メンテナンス時にプライマーの上に着色された反射防止黒色塗料を擦って剥がしているところ」を撮影しており、このパーツは「光学系後群格納筒」です。
相当な気合の入れようで、ワザワザ「反射防止黒色塗料」の定着を促進すべく「下地としてのプライマー塗装」を施している状況なので、金属塗装のプロが手掛けていると窺えます(汗)
赤色矢印の箇所は既に擦り剥がし終わった箇所で、製産時点を示す金属メッキ加工がようやく現れている場所です(汗) 一方グリーン色の矢印で指し示している部分は、表層面の「反射防止黒色塗料」が剥がれたものの、下地の「ブライマー塗膜層」がまだ残っていて、さらに剥がす作業が必要な場所です。
そしてブルー色の矢印で指し示しているのが手つかずの「表層面たる反射防止黒色塗料」であるものの、ご覧のとおり「光学系後群格納筒の全ての面に渡り着色している」状況です (上の写真の裏面側までしっかり塗布してある)(汗)
・・執拗、且つ徹底的な塗布状況で、しかも非常に硬質です(汗)
↑擦って剥がし始めてから優に90分が過ぎましたが(涙)、ようやく全ての面について製産時点を示す「濃い紫色のメッキ加工」が露わになりました。白っぽい細かい傷が全面に付いているものの、平面側には一切キズが付いていないのが分かると思いますが、要は当方が付けたキズではなく「ブライマーを剥がし終わったら現れた白っぽい細かい傷」だったので、これを隠したいが為にワザワザ「プライマー下地塗装+反射防止黒色塗料」をヤッたのでしょうか???
・・金属塗装は全く知らないのでよく分かりません(笑)
これらの作業で擦って剥がし落とした塗膜分が、冒頭で掲載していた剥がした黒い粕の写真です(汗)・・冒頭の写真は「スリーブ環」の全面分の塗膜量ですから、全部で5倍になるのは、他に鏡筒内壁がまだ残っているからです (擦って剥がすだけでどんだけ大変なのか???)(涙)
・・ブライマーさえ無ければ、溶剤で簡単に溶けるのですが(涙)
↑ここからはオーバーホール/修理の工程から少し外れますが、どうしてこれら「反射防止黒色塗料」を塗布した所為が拙かったのかを解説していきます。
上の写真右側が前の工程で解説してきた「光学系後群格納筒の裏側」です。一方右側の長い
ヘリコイド筒が「鏡筒=ヘリコイドオス側」になります。すると右側ブルー色の矢印で指し示している箇所「光学系後群格納筒の裏面」が100%ダイレクトに接触する相手先を赤色矢印で指し示しています(汗)
この「光学系後群格納筒」が最後までヘリコイドオス側の赤色矢印箇所にネジ込まれることで「ヘリコイドオスメス端が確定する設計概念」なのです。
つまりこのモデルは、この後の1960年代以降に世界中で作られ一般的になった「制限壁やシリンダーネジなどを使った突き当て停止手法のヘリコイドオスメス駆動概念を採っていない→ヘリコイドオス側ネジ山端でメス側ネジ山端が進めなくなって詰まって停止する手法」なのです(涙)
↑上の写真は一つ前の「鏡筒=ヘリコイド筒オス側」にネジ込まれて移動する「ヘリコイドメス側」をマウント部側方向からの向きで撮影しています。
従って上の写真赤色矢印で指し示している箇所の「メス側ネジ山端」が一つ前のブルー色の
矢印で明示した「光学系後群格納筒の裏面側」にダイレクトに接触して停止します。
一方グリーン色の矢印で指し示した反対側も、同じようにヘリコイドメス側のネジ山端がオス側ネジ山端で詰まって停止するものの、リアルな現実は「鏡筒のフチ部分に接触して停止」するので、この時「カチンと音が聞こえて停止する」理由が分かります/判明します(笑)
要はこのモデルが組み上がってから、ゆっくりじっくり距離感を回しながら「掴んでいる指先から伝わってくる振動や感触を味わいながら回していく」だけで「ネジ山端で詰まって停止しているのか、何かに接触停止しているのかが分かる」からこそ「観察と考察」が必要なのだと
このブログで執拗に述べています(笑)
↑解説用に仮組みしていますが(笑)、実際に「鏡筒=ヘリコイドオス側筒」の終端に「光学系後群格納筒」をキッチリ最後までネジ込んで撮影しています。
手前左側に並んでいるのが「ヘリコイドメス側の環/リング/輪っか」ですが、見えている側は前玉側方向から覗いている時の向きになります。すると背後の「鏡筒=ヘリコイドオス側筒」にネジ込んで移動していった時に「最後に詰まって突き当て停止するのはグリーン色の矢印同士が互いに接触しあって停止する」ものの、背後の「鏡筒=ヘリコイドオス側筒」でグリーン色の矢印が指し示している箇所のとおり「ネジ山の終端ではなくて接触する台が迫り出している/突き当て停止の場所が用意されている」設計なのが分かります。
だからこのモデルの距離感を回して繰り出していった時に「最後最短撮影距離の位置でカチンと音が聞こえて小気味良く停止する (詰まって停止している感じがしない)」ものの、リアルな現実はヘリコイドグリースを塗布しているので、その感触は微妙だったりします (カチン音が
聞こえない)(笑)
反対側が問題でブルー色の矢印で指し示している箇所が互いに接触し合うものの「マジッで
ネジ山端で行き詰まって停止」するものの、実は「光学系後群格納筒のり面側出っ張りに先に
当たって停止している」為、これもカチンと音が聞こえて停止するハズですが、やはり塗布したグリースのせいでその感触と音は微妙です(笑)
ちなみに赤色矢印で指し示している位置が「マウント部の面を表す場所」を意味します。
仮組みでこのモデルのヘリコイドオスメスの終端について、どのように停止するのかを解説しましたが、これが100%理解できていないとこのモデルは「無限遠位置微調整」が適切にできません(笑)
逆に言うなら、前述した「光学系後群格納筒の裏面側まで反射防止黒色塗料を塗りまくった」所為は、このヘリコイドメス側の停止位置を狂わせる影響しか残さず、おそらくネジ込み位置を1山分ミスッてヘリコイドメス側の環/リング/輪っかが入っていたと推測しています(汗)
するとヘリコイドオスメスのネジ山端の突き当て停止位置が狂うので、当然ながら「無限遠
位置が微妙に狂ってくる」道理に至るのは、至極当然な話です(笑)
↑ようやくオーバーホール/修理工程の話に入れます(汗) 上の写真は絞りユニットや光学系
前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイドオス側筒を兼ねる) です。
最深部には穴が複数空いていて「絞り羽根の位置決めキーが刺さる穴」が見えています。
↑鏡筒の内壁の一部を拡大撮影していますが、過去メンテナンス時の整備者は「この斑点模様が気に入らず反射防止黒色塗料を塗布していた」次第ですが、この白っぽい円形状の斑点模様はメッキ加工時のメッキが被さっていない場所です (不純物が残っていたか適切に洗浄されていなかった/もちろん製産時点の話)(笑)
ここに「反射防止黒色塗料」を塗っても、そもそも中で「絞り羽根を開閉させる開閉環が入る箇所」だったりするので、やはりここもブライマーを使い定着を促進しつつ「反射防止黒色塗料」を着色していました(汗)
↑だいぶ長いですが「開閉環」の写真です(笑) 写真下側が前玉側方向の向きになります。すると赤色矢印で指し示している箇所に「絞り環との連携用シリンダーネジのネジ穴が備わる」ものの、もう一つのブルー色の矢印て指し示している箇所の穴は「鋼球ボールが入ってカチカチとクリック感を実現する為の穴」です。
つまりこのモデルは「鏡筒の内部で絞り環操作した時のクリック感を鋼球ボールを使い実現させている」ので「鏡筒内部にグリースを塗布する設計概念」であり、だからこそ「枠/出っ張りを設けて塗布したグリースが他に流れないよう配慮してある」のが判明します。
一方グリーン色の矢印で指し示している箇所には「凡そ開閉環の半分の領域に微細な凹凸を
伴うマットな梨地メッキ加工が施してある」ワケで、残りの半分は上の写真で出前側に見えて
写っているとおり「普通のメッキ加工」で特に艶消し処理ではありません(汗)
つまりこの「メッキ加工の違い (開閉環の側面に対するメッキ加工の相違)」が意味するところは「この開閉環の長い部分にはグリースを塗らないでね!」との設計者の意思表示であるのが分かります(笑)
それにもかかわらず、関係なく過去メンテナンス時の整備者はここに潤滑油を極々僅かに注入していたと推察します (何故ならそういう酸化/腐食/サビが鏡筒内壁に残っていたから)(汗)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
◉ シリンダーネジ
円柱の反対側にネジ部が備わり、ネジ部が締め付け固定される事で円柱部分が他のパーツと連携させる能力を持ち、互いにチカラの伝達が実現できる役目として使う特殊ネジ (単なる連結のみに限らず多くの
場合でチカラの伝達がその役目に含まれる)。
↑同じ「開閉環」の写真で赤色矢印のシリンダーネジ用ネジ穴と鋼球ボール用の穴 (ブルー色の矢印) ですが、その鋼球ボールに反発力を与えているのが右横に並べた「C型のハガネ」でありスプリングを使っていません (つまりクリック感の反発力は微調整できない)。
↑最深部に絞りユニットを組み込んで完成した「鏡筒=ヘリコイドオス側筒」を前玉側方向からの向きで撮影しています。
↑完成した「鏡筒=ヘリコイドオス側筒」を立てて撮影しました。ちゃんと側面に切り欠き/スリット/開口部が空いていて、そこから「シリンダーネジ (赤色矢印)」が僅かに顔出ししていて、絞り環との連携を可能にしています(笑)・・このシリンダーネジがブルー色の矢印の範囲で絞り環操作により回るのでカチカチと内部でクリック感が起きている原理です(笑)
↑ヒックリ返して「絞り環」をセットしたところです。もう既にカチカチとクリック感が実現
できています。
↑さらに赤色矢印で指し示している箇所に「絞り環用基準▲マーカー環/リング/輪っか」が
セットされます。しかしここで1つめの「???」になりますが、何とこの「基準▲マーカー
環/リング/輪っか」の内部に「鋼球ボール+スプリング」が入るのです(汗)
そもそもこの「基準▲マーカー環/リング/輪っか」自体がイモネジ3本により締め付け固定
するので、いったいこの「鋼球ボール+スプリング」は何の役目で組み込まれる必要がある
のでしょうか???(汗)
・・その理由が次の写真で分かります(汗)
↑既に「鋼球ボール+スプリング」も組み込み済みですが、赤色矢印で指し示している箇所に注目です(笑)・・絞り環との間を指し示しています。
↑実はシボ゛罹患がご覧のように「凡そ0.2㎜程度隙間が空く」のを赤色矢印で指し示しています。この隙間を確実ではないにしても「そういうチカラを与え続ける役目として鋼球ボール+スプリングを組み込んでいる」ものの、その位置が前述のシリンダーネジの反対側なので、特に「最小絞り値側の時に反発するチカラが必要」なのを補っているようです(笑)
これか今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つ「絞り環がガチャガチャした感じ」の一因であり、且つ合わせて前述の「鏡筒内部にまで反射防止黒色塗料を塗っていた分の抵抗/負荷/摩擦を考慮して緩めにセットしていた」のが影響していたようです(汗)
全て製産時点のとおり (との推定) の処置を施して組み込んだので、現状絞り環操作は「ガチャガチャが消えて適切な小気味良さのクリック感」に戻り、合わせて前述の「C型ハガネ」が反発するクンクンと指に伝わる感触も好きな人には好きだったりします (いわゆる鋼球ボール+スプリングだけの反発力とはまた違う感触)(笑)
↑距離感ローレット (滑り止め) をセットしたところですが、何とこのローレット (滑り止め) は「絞り環用基準▲マーカー環/リング/輪っか」に締付ネジ固定です(驚)
・・逆に言えば、だからこそ絞り環が距離環と一緒回るのは当然な話です(笑)
↑冒頭のほうでさんざん解説してきた「ヘリコイドメス側の環/リング/輪っか (赤色矢印)」の上に「指標値環 (グリーン色の矢印)」が被さり、イモネジ締め付け固定されます。
つまり「繰り出し/収納で動いているのはヘリコイドメス側の環/リング/輪っか」であり、これこそが前群繰り出し/収納方式の根本的な原理です(笑)
結果的にはどっちもどっちなのですが、無限遠位置の微調整の際にこの把握を取り違えていると間違った微調整を平気で行ってしまいます(笑)
↑マウント部のベース環セットしたところです。オレンジ色の矢印のネジ山にまだマウント部「M42マウント規格」がセットされます。こんなに幾つも介在させて用意している面倒くさい設計は「多くのマウント規格に対応させるつもりだった名残」でもありますね(笑)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。当初バラしている最中は幾つかの場所で「???」だったりして、正直な話、相当焦ったりしました (自らの技術スキルの低さをまたもや思い知らされた)(恥)
・・適切に組み上がってしまえば意外にもこのモデル、素晴らしいかも!(驚)
そういう描写性能を持つので、焦点距離:135㎜としても、下手な望遠レンズを使うよりも
むしろこのモデルのほうが半端なく解像度高くてお勧めです!(驚)
特にブル~に影響を及ぼす決して誇張的ではない (言われなければ分からない) スッキリ感に
プラスして「相変わらずのISCO-GÖTTINGENらしい繊細感」が漂っているのが好きです(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。覗き込むとその角度によってはご覧のように「開閉環のフチが見える」状況ですが、微調整のしようがありません (そういう設計だから)。
↑後群側もスカッとクリアになり極薄いクモリも皆無です。一度剥がした「反射防止黒色塗料」は最低限レベルで再着色していますが、当然ながら光路長に影響を来す箇所には再着色せず、光学系内の「スリーブ環」も剥がしたままなので、覗き込むと黄銅材の輝きが極々僅かに見える角度もあったりします(笑)
・・そんなのは光学設計時に織り込み済みです(笑)
↑15枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧な円形絞りを維持」したまま閉じていきます。
オーバーホール/修理ご依頼内容の絞り環のガチャガチャ感はほぼ解消しており、小気味良いクリック感も感じつつ快適に操作頂けます。但し、「鏡筒=ヘリコイドオス側筒」の設計仕様上
絞り環操作だけを軽く仕上げるのは「不可能」です。
ヤリ方として「ヘリコイドオスメス側を多少重いトルクに仕上げる」なら、この絞り環の操作性でもピント合わせ後にボケ具合をイジるのも実現可能になりそうですが、残念ながら今回の個体は「過去メンテナンス時にヘリコイドオスメスのネジ込みを何回も失敗していた=ネジ山端を一部削っている/摩耗している」のが確認され、逆に言えばそれ故に「当初バラした直後にはヘリコイドオスメスに潤滑油が注入されていた」のも納得でした(汗)
従って残念ながら「多少重くても良い」とのご要望でしたが、重いトルクに仕上げるつもりでヘリコイドグリースの性質を変更すると「ネジ山が噛みそうに変わる」ので怖くなり、諦め
ました(涙)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し「製品寿命の短命化を促す」結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない『磨き研磨』により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる『完全解体を前提とした製品寿命の延命化』が最終目的です(笑)
もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)
実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)
その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施す『DOH』そのものなのです(笑)
↑当初バラす前のトルク感よりは「極々僅かにトルクを与えた」ものの、プラスして当方のいつもどおりの(笑)・・当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)
残念ながらピント合わせ後の絞り環操作はムリですが、そうは言ってもヘリコイドのネジ山が相当深いので (オスメスの条ネジは山谷が相当深い峡谷レベル)、このネジ山で何回か噛んでしまうとこのようにどうにも処置できなくなります(涙)
バラして溶剤洗浄していれば「山谷の深さが凝視できる」ので、自ずとネジ込みの時に最新の注意を払えるものの、単にバラして洗浄してのレベルだとネジ山が噛んでしまいネジ込めなくなる現象を何回も繰り返し、結果的に条ネジを痛めてしまいます(涙)
↑無限遠位置の状態で距離感を回していくと (ブルー色の矢印) それにつられて絞り環まで一緒に回っていきます(笑)
↑途中まで回すとご覧のように「絞り環の位置が変化しているのが分かる」ものの、まだまだブルー色の矢印のように回り続けます(笑)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:135㎜、開放F値:f3.5、被写体までの距離:201m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:100m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、100m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の200m以降) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑当レンズによる最短撮影距離130cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。
また代用のフードを装着している為、開放側で僅かに周辺減光がありますが、外すとフレア
気味 (コントラスト低下) の写りになります。
↑f値「f16」ですが、まだまだ余裕で「回折現象」の影響を微塵も感じません(驚)
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。引き続き次の2本目作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。