◎ TAMRON (タムロン) BBAR MULTI C. 24mm/f2.5《アメリカ向け輸出仕様》(ADAPTALL)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、TAMRON製超広角レンズ『BBAR MULTI C. 24mm/f2.5《輸出仕様》(ADAPTALL)』です。


TAMRON製「SPシリーズ」の焦点距離24mm超広角レンズは2年前に一度だけオーバーホール済で出品しましたが、今回は敢えて「アメリカ向け輸出仕様タイプ」をチョイスしました。
というのも、前回の出品タイプは原型モデル「01B」から10年後にモデルチェンジした後期型「01BB」だったのですが、その時の記録データを見ても光学系コーティング層が放つ光彩に
違いが見られたからです。

TAMRONから1979年に発売されたのが「前期型」の「SP BBAR MC 24mm/f2.5 (01B)」ですが、その後10年後の1989年に「後期型:01BB」が登場します。しかしマルチコーティングながら光学系が放つ光彩は「パープルアンバー」主体で、微かに「薄いグリーン」を放つ角度がありました。

ところが今回扱ったタイプは「パープルアンバー/グリーン/ブル〜」の4色もの光彩 (ブル〜は微かに見える程度) を見る角度によって放ちますし、グリーンの光彩に至っては本格的に光り輝いています。そして実際にバラして光学硝子レンズを清掃してみると具体的なコーティングとして4色のコーティング層蒸着を確認しました。これは国内で販売されていた「01B/01BB」とは異なる仕様 (コーティング層の蒸着) と言わざるを得ません。

今までの経験値で考察すると「グリーンブル〜」のコーティング層を蒸着する目的は、描写性に「柔らかさを付け足す味付け」のような意味合いが強いと認識しています。

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「シャボン玉ボケ・リングボケ・円形ボケ・背景ボケ」で、下段左端に移って「発色性・被写界深度・動物毛・ゴースト」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

シャボン玉ボケ〜円形ボケまで自由自在に表出するようですが、ざわつくことがあるので背景には気を遣うシ〜ンもあったりします。
発色性は意外にもコッテリ系に誇張感を感じるほどの色乗りの良さは無く、原色に対する反応も非常に大人しめで違和感を特に感じません。
ところが、TAMRON製オールドレンズの特徴として「アンバー」に振れる色付きをするので、どうしてもその好みが分かれます。特に今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば、PanasonicやSONYのカメラボディには相通ずる傾向なので相性が良いのかも知れません。

その意味では旧西ドイツ側のSchneider-KreuznachやSteinheil、或いはA.Schacht Ulmなどの「シアン」に振れる傾向とは対極的な発色性です。どちらかと言うと旧東ドイツ側の Carl Zeiss JenaやPENTACON辺りが近しい色合いなのかも知れませんが、コッテリ系の誇張感無く原色にも反応しないと言う特性はまたキチョ〜な存在かも知れません。まさにTAMRONらしい色付けだと考えますね・・。

光学系は9群10枚の本格的なレトロフォーカス型で、今回バラしたところ第4群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) 成分に一部カタチの相違を発見しました
(つまり国内モデルの01B/01BB光学系設計と僅かに異なる)

また各群のコーティング層には一部に国内モデルと異なる蒸着を確認しました。

● 第1群:パープルアンバー (国内モデルと同一)
● 第2群:パープル (国内モデルと同一)
● 第3群:グリーン (国内モデルと相違)
● 第4群:アンバー (国内モデルと同一)
● 第5群:ブルー (国内モデルと相違)
● 第8群:グリーン (国内モデルと相違)
● 第9群:パーブルアンバー (国内モデルと同一)

国内モデルの「後期型 (01BB)」では第3群の表面だけにグリーンのコーティング層蒸着でしたが今回の個体は両面で濃いめの色合いでしたから、アメリカ向け輸出仕様として新たに光学系を設計し直していたように考えます。
そもそも鏡胴に自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) を装備している点も国内モデルとは大きく異なります。

ちなみにネット上の一部解説ではこのモデルを「初期型」と案内していますが、今回のモデル鏡胴に「USA. PAT. No.3500736」刻印があるので、初期型ではなくアメリカ向け輸出商品であったことは間違いありません。するとアメリカ現地法人が設立されたのが1979年ですから発売時期は1980年〜1981年辺りと踏んでいます。
不思議なのは例えば英国向けに「01B/01BB」がそのまま輸出されていたので、何故アメリカだけ特別仕様の製品を用意したのでしょうか?

なお、TAMRONの「SPシリーズ」は「Super Performance」の頭文字を採っています。

《価格の目安》
今回のヤフオク! 出品個体をオーバーホール/修理として整備した場合のご請求金額は以下の
ようになります。
※「オーバーホール/修理受付の概要と料金」に掲載の料金表を基に加算した金額です。

  • 単会員様の場合
    (2)着手料:2,000円+(3)オーバーホール:13,000円=ご請求額:15,000円
  • 本会員様の場合
    (3)オーバーホール:10,000円=ご請求額:10,000円

なので今回のヤフオク! 即決価格である「19,500円」は実質9,500円が個体単価になります (本会員様の場合)。
ヤフオク! に於ける 過去3カ月間の同型モデル単体落札価格は平均単価:6,850円 (20本)
なので、如何でしょうか?
(但し01B/01BBが含まれています)

まぁ安くはないけれど、そんなに高くもないと言うレベルでしょうか。
そうは言っても、やはり当方の整備となると敬遠される方が多いのも仕方ありません(笑)

取り敢えずの目安でした・・。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。一部を解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

残念ながらイモネジの固着が激しく鏡筒をバラすことができなかったので、フィルター枠から絞りユニットまでを解体できていません。しかしラッキ〜なことに絞り羽根には油染みが無かったので、そのまま組み上げています。

↑絞りユニットはバラしていないので既に鏡筒内に組み込まれています。

↑ヘリコイド (オス側) も外せていませんからこのまま使います。

↑後からでは面倒なので先に光学系前後群を組み付けてしまいます。

↑マウントが「ADAPTALL」ですから、この後群側がそっくりそのまま飛び出ています。

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。現物を触れば分かりますが距離環の駆動域 (∞〜25cm) が短いのでたいしてヘリコイドは回りません。ところが基台の深さは相当あり9群10枚の本格的なレトロフォーカス型に拘った故なのが窺えます。

↑基台にヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑指標値環をセットします。

↑指標値環に「絞り値窓」の切り込みが入っているので、そこに絞り環の絞り値が見えるようになっています。また国内モデルの「01B/01BB」には装備していない自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) を組み付けます。

↑基本構造は国内モデルと同一ですが自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) を装備している分、マウント面の「絞り連動ピン機構部」の設計が違います。

↑マウント部の爪などをセットします。

↑距離環を仮止めしてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (それぞれ解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑大変美しく神秘的なほどに光り輝くグリーンの光彩が素晴らしいモデルです。

↑光学系内の透明度が恐ろしく高い状態をキープした個体です。LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群も透明度が高くキレイに状態を維持しています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:6点、目立つ点キズ:2点
後群内:8点、目立つ点キズ:5点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:無し
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):皆無
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが実際はカビ除去痕としての極微細な点キズです (清掃しても除去できません)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑解体はできていませんが一応念のため絞り羽根は清掃してあります。
この写真がコーティング層が放つ光彩の成分として見ると「4色」であることが分かり易い
でしょうか。

ここからは鏡胴の写真ですが経年の使用感をほとんど感じさせない大変キレイな状態を維持した個体です。当方による筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布しています。距離環や絞り環の操作はとても滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は人によっては「普通」或いは「重め」に感じ、滑らかでトルクは全域に渡り「ほぼ均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・最短撮影距離25cm附近で僅かにピント合わせ時重く感じます。
・絞り環操作時は「AE (f22)」セット時のみ僅かに重めに感じます。
・距離環を回すと一部にヘリコイドネジ山が擦れる感触を感じる箇所があります。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑筐体の殆どが「プライトフィニッシュ・ブラック (金属製)」なのでとても美しい光沢です。
さらに距離環や絞り環のラバー製ローレット (滑り止め) も「エンボス加工」が施された独特な高級感漂う雰囲気を醸し出しています。ちゃんと業務用中性洗剤で洗浄したので経年の手垢や汚れも無く大変清潔でシットリ感もあります。

超広角レンズで、しかも距離環の駆動域が狭いのでピント面が掴みにくいこともあり、距離環を回す際のトルクはワザと「重め」に仕上げています。最短撮影距離附近の「0.4〜0.25m」辺りでトルクが僅かに重くなります。また絞り環の絞り値設定も「AE (f222)」のセットが僅かに重めです。

今回の個体は光学系の透明度が素晴らしく (極微細な点キズはある)、無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。距離環を回すトルク感も「全域に渡りほぼ均一」でトルクは「普通」或いは人によっては「重め」程度に仕上げておりピント合わせもし易く調整しています。

↑ヤフオク! 出品ページ記載のとおり、今回はデジカメ一眼/ミラーレス一眼への装着時に使うマウントアダプタを別途手配します。
※上写真のマウントアダプタは解説のために当方所有品を装着して撮影しています。

● マウントアダプタの商品名
K&F CONCEPT製ADAPTALL → カメラボディ側マウント (新品未使用品)
● 対応カメラボディ側マウント種別
「SONY E / 富士フイルム FX / マイクロフォーサーズ」のいずれか一つ。
(市場流通価格:2,500円相当)
● 加算金額
ヤフオク! かんたん決済支払い確認画面の送料欄に「1,500円」加算して下さい。
● ご指定方法
 ご落札後取引ナビで一番最初のメッセージでご申告下さいませ。
● リピーター割引
通常どおり「リピーター割引」を適用できます (送料800円割引)。
● マウントアダプタのリアキャップ
SONY Eマウントアダプタのみ上写真のリアキャップ (右手前) をサービス。
(在庫があるため)
● 商品発送について
ご落札後にご申告頂いてから具体的なマウント種別の商品を発注するので発送が
数日遅延します。
(マウントアダプタが必要ない方は送料のみのお取引です)

↑当レンズによる最短撮影距離25cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに絞り環を回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値は「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「AE (f22)」です。