♦ A. Schacht Ulm (シャハト・ウルム) S-Travegon 35mm/f2.8 R (zebra)(M42)
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今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
A. Schacht Ulm製広角レンズ・・・・
『S-Travegon 35mm/f2.8 R (zebra) (M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時の旧西ドイツA.Schacht Ulm製「広角レンズ:35mm」の括りで捉えると9本目にあたりますが「開放f値:f2.8」では僅か2本目、さらに今回扱った
個体「M42マウント規格」モデルだけでカウントすると初めての扱いです。
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り
ました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
当方の過去扱い品を調べると、同型モデルながら「exaktaマウント規格」だった個体を扱ったのは2016年だったので、なんと8年が経っていました!(驚)・・しかし、それよりもオドロキだったのは「よくもまぁ〜2016年などという初期の頃に、こんな超高難度なモデルを扱ったものだ!」と、我ながら関心を通り越してその気力の凄さに今更ながら恐れ入ったほどです (当時のオーバーホール状況ブログページはこちらです)(笑)
手前味噌な話になりますが(汗)、当方は2021年末に2回目の新型コロナウイルスワクチン
接種をしたところ、副反応が現れてしまいかかりつけ医師からドクターストップを受け、以降ワクチン接種していません。残念なことに今現在もなお極度の睡眠障害に見舞われ、合わせて「気力減退」が続き、それらの症状から作業量が半減したままの状況が続いています(涙)
そんな背景があることから今回のオーバーホール/修理に臨み、8年前の気力の凄さに改めて
恐れ入ってしまった次第です(笑)
その意味で今回のオーバーホール/修理は、当方にとり「まさに技術スキル認定試験」の如く
課題に至っていたワケですが・・はたしてその結果は・・「不合格スレスレの状況」と言わ
ざるを得ません(汗)
・・当時の旧西ドイツのメーカーは、何で超高難度なモデルばかり設計したのか???!!!
いつもの如く他人のせいにしたいタチなので、そんな事をブツブツ呟きながらオーバーホール/修理作業に臨みました(笑)
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先ず「A. Schacht Ulm (シャハト・ウルム)」社の当時の背景について、最もその詳細に迫っているサイトは「New Old Camera srlプロジェクトによるNOC SENSEI:le-ottiche-di-bertele-per-albert-schacht-retroscena」以外考えられません (本当に素晴らしいサイトです)(驚)・・サイトの原文はイタリア語ですが、ちゃんとページのちょっと下った所の右側に「翻訳言語の選択」が用意されている気配りがステキです!
創業者たる「Albert Schacht (アィルベルト・シャハト)」氏はネット上の解説ページの多くで「アルバート・シャハト」と解釈されていますが、ドイツ語発音を調べると「Albert」はゲルマン語の「Adalbrecht (アダルブレヒト)」に由来するドイツ語圏男性名を指し、adal (高貴な) とberath (光) の意味を持つようです (wiki:albert)。
そこから一般的なネイティブドイツ人の発音を聴くと「ア(ィ)ルベルト・シャハト」と聞こえますし、そもそもドイツ人男性名として「albertはアルベルトとの捉え方が多い」のもドイツ圏のサイト解説を見ていくと理解できます (ィは限りなく抑揚が少ない発音)。
今回のモデル『S-Travegon 35mm/f2.8 R (zebra) (M42)』の実装光学系を調べていくと
その開発/設計者は彼の有名な「Ludwig Jakob Bertele (ルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレ)」氏であり、前述サイトの背景解説を読んでいくとSchacht氏とBertele氏の二人が共にドイツはミュンヘン市の出身で、且つZeiss Ikonに在籍していた頃からの長い付き合いがあったことが伺えます。
先の大戦前夜の時点で既にSchacht氏がナチズムの国家主義に大きく傾倒していた中、Bertel氏はむしろそれら組織との距離を保ちつつも、Zeiss Ikon時代に特許申請してきた数多くの光学設計に伴う収入から、裕福に生活していた背景も知ることが適います。
そのような旧知の仲という二人の背景があるものの、確かに当時戦後のナチス戦犯者に対する厳しい現実の中にあって、Schacht氏が1948年にMünchenで起業した際に雇い入れた光学設計者に考案した光学硝子材を使い光学設計させて造り出した製品 (1948年〜1954年の期間に製産していた一連のシルバー鏡胴モデル) がなかなか市場の要求を満たせずにいた頃
1954年にUlm市に会社を移転させた後に、否応なしに世間が認知する実績を既に確固たるものにしていたBertele氏への光学設計依頼に望みを託したようです。
しかし今回扱ったモデルの光学設計も含め、当のBertele氏はSchacht氏への恩義から自ら進んで数多くの光学系を提供したようです。
↑上の図は左端が1931年にBertele氏による「Sonnar型光学系」の米国向け特許出願申請書
「US1998704」で、1931年に提出され1932年に受理し1935年の認可なのが分かります (そもそもこれらSonnar型光学系はBertele氏が考案した傑作光学系の一つ)。
この特許出願申請書の解説を読むと、上の図で中央に掲載した3群5枚Sonnar型構成が考案時の基本設計であり、合わせて3群6枚Sonnar型構成として右側の構成図がその収差改善と像面解像度の追求を仕上げた結果であることが示されています。
(いずれの光学系構成図もそれら特許出願申請書の掲載図から当方がトレースした構成図)
↑一方上の図は左端が同様Bertele氏による1954年時点の「レトロフォーカス型光学系」に関する米国向け特許出願申請書「US2772601」で、1954年提出の1955年受理されて
1956年の認可になります。
上の図で左から2つ目の構成図が特許出願申請書に掲載されている考案時の基本設計を指し、同様光学系第2群に接触半径を備えさせる事で歪の改善度合いを向上できる点を狙っていると示されています。
(いずれの光学系構成図もそれら特許出願申請書の掲載図から当方がトレースした構成図)
特にこれら2つの光学系構成図 (左から2つ目と3つ目) は当時のクィックリターンミラーを
内包したフィルムカメラの登場により、後部光学硝子レンズ (後玉) と像面 (フィルム印画紙面) との間のバックフォーカスを稼ぐ必要性から発案した光学設計である点を強調しています。
さらに左から2つ目の光学系構成図で明示した第2群と第3群との間に「空気層」を介在させる事で、反射面の色収差改善を狙える点として、まさに「空気レンズ」の要素を説明しているように受け取れますが、詰まる処コマ収差/色収差/像面収差/歪曲収差の諸収差改善に向けて
2つ目の発展系として3つ目の構成図を合わせて示しているのではないでしょうか。
ここの前段で「Sonnar型光学系」を掲載したのには理由があり、某有名処では今回のモデルの光学系設計が「Sonnar型光学系からの発展系」と解説されていますが、光学系知識皆無な当方の受け取り方は少々違います(笑)
確かにそれら解説を見るとSonnar型光学系の第2群と第3群の関係性が、今回のモデルの概念に非常に近似しているように観えますが、然し実際に特許出願申請書の記述にはその点が一切記載されていません(汗)
その根拠は、先ず特許出願申請書に現実にバックフォーカスが必要になる一眼 (レフ) フィルムカメラ向け広角レンズの光学設計として考案した点をちゃんと説明していること。さらに自ら考案した事前の発明については、そのどれそれをちゃんと申請書に明記しなければ認めてもらえない (実際に数多くの特許出願申請書の記述をチェックしていくと、従前特許からの関連性を示す時、必ずその根拠が付随して示されているから) ものの、肝心なSonnar型光学系の特許出願申請に関する記述が一つも無い点です。
合わせて、実はこれら2つの光学設計に関し「空気中に存在する2つの収束群だけで十分に
収差改善を狙えることが分かった」と自らBerteleが書き連ねている点です。
さらに、光学系第1群も貼り合わせレンズにする事で入射光の発散とバックフォーカスの確保を担保しつつも、収差改善も合わせて実施しているとの記載があります。これらの事から考えて、冒頭で紹介した「NOC SENSEI」サイト解説のとおり、あくまでも広角レンズ域のレトロフォーカス型光学系として考案し特許出願申請したのではないかと当方では受け取っています (Sonnar型からの発展系ではなく、レトロフォーカス型光学系に於ける独自の3群構成による全く以てゼロスタートの発明である事を意味する)。
・・だからこそBerteleって本当に凄いのです!(涙)
ちなみに「NOC SENSEI」サイトの解説では、今回のモデルの光学系内に「ランタン硝子が
使われている」と明示されていました(驚)・・そんな内容を明示しているサイトなど、ネット
上には何処にもありません(汗)
上に挙げた構成図の一番右端が、まさに今回のオーバーホール/修理で完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
この時、それぞれの貼り合わせレンズを一旦剥がして計測などできないのでそのままに「群のままで」放射線量を計測してみました・・すると第1群前玉の構成1枚目 (前玉/露出面側) は「0.15µSv/h」構成2枚目 (裏面側) が「0.22µSv/h」合わせて次の第2群「構成3枚目
:1.46µSv/h」に「構成4枚目:0.68µSv/h」合わせて「構成5枚目:0.54µSv/h」反対に後群側に移って第3群の「構成6枚目:0.19µSv/h」そして最後の後玉 (露出面側)「構成7枚目:0.19µSv/h」の計測結果でした (いずれも放射線量計測器の測定平均値)。
前述サイトでの明示ではクラウンガラスとして「crwon Lak9」を明示していましたが、計測値から捉えると当該ランタン材の含有を示しているように受け取れ、確かに間違いなく「光学系第2群貼り合わせレンズ (光学系内の構成では3枚目〜5枚目にあたる) にランタン材を光学硝子材に含有している計測値が示された」と言えます・・上に並べた光学系構成図の 色着色の部分がランタン材含有を示しています(驚)
ランタン材の光学硝子材への含有により、屈折率向上を狙える点から当時各国の光学メーカーが挙って採り入れていた手法ですが、含有する事で凡そ10%代の屈折率向上を期待できるようです (例:1.13)。さらにもう一つ「酸化トリウム」を光学硝子材に含有する技術も当時は採用されており、20%代の屈折率改善を狙えていたようです (例:1.22)。いずれも新種硝子の登場を待っていた時代の光学系の歴史に於ける一つの技術革新と受け取れますが、今現在もなお「ランタン材含有」については一部の化合物が使われているようです。
ちなみに光学硝子レンズに「酸化トリウム」を含有した俗に言うアトムレンズ (放射線レンズ) だったりすると、その放射線量を計測した時、今までの例では「凡そ4.68µSv/h〜12.58µSv/h」辺りに至る事もあるので、放射線量の違いが分かります (同型モデルでも原子核の放射性崩壊時間が個体別に異なるため同数を示さない)。
なお「放射線=被曝」と捉えて、アトムレンズ (放射線レンズ) で大騒ぎする人達/勢力が顕在しますが(笑)、例えば鉄筋コンクリート造の建物内で計測した時「0.10µSv/h」だったりするので (入口付近で計測した時) そもそもこのような外部被曝ではなく、普段食べている食品による内部被曝のほうがもっと深刻な話になると思いますね(笑)
いずれにしても、ネット上の何処にも掲示されていない「ランタン材の含有」について告知してくれた、前述のサイト「NOC SENSEI」に改めて感謝の意を評したいと思います。
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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
〇 一段目
前回扱った2016年時点では、まだ上のように実写をご案内していなかったので、今回改めて「このモデルの描写性の凄さ!」に迫ってみました(涙)
一段目では左端から順にシャボン玉ボケが破綻して滲みながら円形ボケへと変異する様をピックアップしていますが、ちゃんと円形ボケとして表出が適うものの、肝心なエッジ部分が輪郭を誇張的に残さない性格なので (残せないのではなく残さないと言う表現が一つの特徴を表しています)、すぐに円形ボケへと変わっていきます。
ワリと明確に近い状況でエッジ表現できているシャボン玉ボケもあれば、そこから滲み始めて玉ボケへと変わり、最後は微かな円形ボケへと変異しますが次の段がポイントです。
〇 二段目
さらに円形ボケは収差の影響を受けながら乱れていき被写体の背景に気を遣うくらいのレベルにまで到達すると思いきや (一般的に広角レンズの背景ボケは汚く現れる事が多いから)「なんとこのモデルの背景ボケには収差ボケの表出が驚異的に少ない!」(驚) ではありませんか。
収差ボケに至る前に先に滲んで溶けてしまうと言うよりも「おそらく光学設計の中でザワザワと煩い収差ボケを可能な限り抑制しているのではないか???」とも受け取れるほどに、限りなく整った自然で誇張感や違和感には一切至らない滑らかに滲み方/溶け方をしているように見えてなりません(汗)
〇 三段目
この段では被写体の発色性をチェックしています。光学系が僅か3群の塊でしかないものの、決してコッテリ系に堕ちずにあくまでもナチュラル派の印象の如く安心して観ていられる発色性を示します・・特に赤色でさえ極端に現れないので、或る意味この色付きの特徴は如実に「リアルに忠実そのモノ」的な印象しか残りません(笑)・・巷では「カラーバランスは正常」などとの表現が流行っていますが(笑)、そもそもそのバランスの基本前提が何なのか??? ナチュラルなのかコッテリ系なのか彩度の違いなのか何なのか、明示していない中で使われてばかりいるので、何の根拠にも至っていません(笑)
〇 四段目
この段では被写体の素材感や材質感をうと仕込む質感表現能力の高さを確認しています。もちろんオールドレンズなのでせいぜい解像感が鋭いと言ってもこの程度ですが、然しむしろピント面の解像度よりも「それに背中合わせで隣接するアウトフォーカス部のボケ具合こそが質感を表す要素にはとても重要」と言うのが当方の持論なので(笑)、ピント面の鋭さ感よりもこのように「周囲の雰囲気で見事に質感表現能力の高さを残している」素晴らしい光学系ではないかとみています(驚)
特に右端の白黒写真などは金属質から岩石質、或いは湿り方の表現性から空気感まで伝わってくるほどで鳥肌立ちます(笑)
〇 五段目
人物写真の人肌表現と動物毛をチェックしています。さすがに焦点距離からして人物撮影には人肌感の表現性が広角レンズには難しいのかも知れませんが、中には広角レンズでもオドロキの人肌感を写し込めるモデルがあったりしますから、チェックしてみるのも良いです。動物毛の表現性も違和感なく安心して見られます。
〇 六段目
一応広角レンズ域なので、この段ではパースペクティブの確認のためにピックアップしています。パッと見では極僅かな堤状にも見えがちですが、とても均整の取れた素晴らしい歪改善レベルを保っていると思います、何よりも光学系第1群がバックフォーカスを稼ぐ目的が強い要素なので「僅か残りの2つの群だけで達成している凄さ!」感が否めません(驚)・・下手すればそれこそ10枚構成のレトロフォーカス型光学系だってオールドレンズにはあるでしょうから、この脅威感はハンパないです(笑)
〇 七段目
一つ前の段のパースペクティブの確認時点である程度見えていますが、グラデーションレベルも非常に高く、とても滑らかな階調表現が得意のようにお見受けします(笑)
特に陰影での暗部に移る領域で「ちゃんとグラデーションを残せている要素」こそが、単にストンと黒潰れしてしまうのとは対極的でオドロキです(涙)・・一番右端の白黒写真では、おそらく相応に明暗のコントラストが激しいシ~ンたる「ピ〜カン撮影」にも推測できますが、これだけグラデーションをちゃんと保持できているのが流石です。
〇 八段目
やはり白黒写真のグレースケールで254階調表現での「明部に取り込むカラー成分の境界が広め」に働いているのは分かりますが、同じ性格がカラー写真でも起きている点に「これがBerteleなのか?!」とオドロキを隠せません(汗) 光源や逆光耐性でも十分に機能している、このたったの3つの群の光学系で創ってしまったレトロフォーカス型って・・いったい何なのでしょうか?!!!(驚)
そんなワケで、光学設計とその背景を深く知るにつけ「スッカリ描写性の虜に堕ちた」ので、当方のお気にのオールドレンズ10本に組み入れです!(笑)
・・Bertele、ステキ!(涙)
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なおネット上でも過去に騒がれていた時期がありますが(笑)、A.Schacht Ulm製オールドレンズのモデル銘に関する謎が問題になっています。
今回のモデル銘が解説するのにちょうど良いので説明していきます・・敢えてモデル銘のprefixとsuffixにそれぞれ色を付けて分かり易く解説します。
『S-Travegon 35mm/f2.8 R (zebra) (M42)』
このようにA.Schacht Ulm製オールドレンズのモデル銘に付随するprefix/suffixは、それぞれ「接頭語/接尾語」を意味しますが、今回のモデルのような「S-Travegon」の「S」や、他には「M-Travenar」或いはそもそも接頭語が付随しない「単なるTravegon」すら顕在していますし、一方suffixの接尾後なら今回のモデルで言う「R」刻印がモデル銘の後に必ず現れている点について、あ~だこ~だ騒がれている次第です (一部のモデル銘には付随せず)(怖)
この点についてもそれら騒いでいるネット上のサイトも含めいろいろ探索しましたが、確実な根拠を発見することはできませんでした(泣)・・然し有名処である「PHOTO BUT MORE」の
サイト”www.photobutmore.de“に掲載の当時のA.Schacht Ulm社広告が大きなヒントを与えてくれました!(涙)
左の広告は当時既に発売されていた旧東ドイツのIhagee Dresden社製一眼 (レフ) フィルムカメラ「EXAKTAシリーズ」向け交換レンズ群として
紹介している「Travenar 90mm/f2.8R」と「Travenar 135mm/f3.5R」の広告です (共にexaktaマウント規格)。
内容はドイツ語で・・・・、
『Wechse l objektiv
Zwei neue Drucklenden-Objektive der bewährten TRAVENAR-Reihe – speziell für das EXAKTA-System – erweitern das bekannte SCHACHT-Wechselobjektiv-Programm!
Prospekte erhalten Sie vom Fachhandel oder von uns.』
・・・・和訳すると「交換レンズ 実績があるTRVENARシリーズに2つのゼブラ柄モデルが
加わり、特にEXAKTAシステム向けSchacht製交換レンズがさらに充実します! パンフレットは専門店、または当社から手に入ります」
これこそがヒントです!(驚)「TRAVENAR–Reihe」の「Reihe (ドイツ語でライアと発音
しシリーズの訳になる)」であり「R」は「マウント規格別に括ったシリーズ製品」であることを表すsuffixなのが明白です!(驚)・・但し一部モデルで「EDIXA向け製品群のみAをsuffixとして使っている」のを確認しています (Aの意訳は不明)。
事実市場流通しているこれらA.Schacht Ulm製オールドレンズ群をチェックしていくと、多くのモデルに「R」がsuffixとして付随するものの、一部の単独モデルに限定して「Rがモデル銘に付随しない」点も確認できるので、確かに「シリーズを表す意味合いを明示させている」のが納得できますし、逆に言えばゼブラ柄ではないシルバー鏡胴モデルも一部が敢えて「exaktaマウント規格品」として存続させているのを以て「Rがモデル銘に付随」のも確認
できます (従って基準はあくまでもマウント規格を基にした括りと捉えられる/ゼブラ柄だけでシリーズ化した意味合いとしては決して使っていないのが明白な事実と明言できる)。
逆に言うなら「マウント規格別に括ったシリーズ製品」との考え方は、対象となる一眼 (レフ) フィルムカメラのマウント規格別にシステム化が適い、オプション交換レンズ群として拡販/紹介できるので「exaktaマウント規格はexakta製品だけでR刻印を付随」しつつも、例えば「M42マウント規格は対象となるM42マウント製品向けの意味合いでR刻印を付随させていた」との解釈になり、同じR刻印が付随するにしても「それがシリーズ化されている事を敢えてモデル銘に付随させて促し告知する手法」としてsuffixを採用していたのかも知れません。そう捉えると複数マウント規格対応ながら、対象モデル全てにR刻印がモデル名に付随する事になり、如何にも一眼 (レフ) フィルムカメラ側に対するシステム化に対応しているが如く印象操作が適うと言うものです(笑)
もっと言うなら、確かに様々なオールドレンズの製品群に於いて「カタログ内でそのシステム化のイメージ解説を試みているのは、今も昔も変わらず当時から既に一般的な手法だったのは自明の理」である点も、似たような顧客に対する告知/提案手法の概念とも言えそうです(笑)
一方prefixの「S」はこのような根拠として使える図や写真が発見できていませんが、そもそも「S」や「M」に「R」の3つの接頭語の存在、合わせてそれら接頭語が付随しない個体も間違いなく顕在している点の全てを勘案していくと「一つの特異性として括られる」点に行き着きます。
例えばそれは「M」が接頭語で付随するモデル「M-Travenar 50mm/f2.8 R」に於いて鏡胴「前部」を着脱式とした特異な設計のマクロレンズであり「MakroのM」を接頭語としているのが分かりますが、一方「R」のprefixについては根拠が掴めていません。参考になるモデルは唯一の存在ですが「R-TRAVENAR 85mm/f2.8 (exakta)」が顕在しており、後に再設計されて「R-TRAVENAR 90mm/f2.8 (exakta)」と変異します。このモデルだけが内部構造の顕著な相違として「前玉側方向にプリセット絞り機構を装備する」タイプであり、後に登場してきた自動絞り方式とは前後配置が全く別モノの内部構造概念を採っています。
そして一番問題となって巷を荒らし続けている(笑)「S」のprefixについての当方の答えは、
「ドイツ語の Spiegelung (シュピーグロン(グ)の発音)」の頭文字を採っており、その意味は「反射」転じて「モノコーティング (複層膜コーティングの蒸着)」を意味するとコトバと捉えています (やはり末尾「グ」の発音は発音していないようにも聞こえます)。
実際当時のドイツでは蒸着コーティング層のモノコーティングに対して「Spiegelung」や「Spiegelungen」と「反射を意味する」コトバを多用している書籍や解説、或いは広告を
目にしますし、何よりも冒頭でご紹介した「NOC SENSEI」のサイト解説でもそのように「Spiegelung」をドイツ人は多用すると紹介しています。
これは「S有無の違いで蒸着コーティング層が放つ光彩の色合いに違いが明白」だからです。明らかに「S無し」の蒸着コーティング層は「プルシアンブル〜系のシングルコーティング」と指摘できますし、逆に「S付」が放つコーティング層の光彩は「パープルアンバー或いは
アンバーパープル」だったりします(笑)
この「S無し」の蒸着コーティング層を採っていた時代の製品群となれば、それはまさにシルバー鏡胴の頃のA.Schacht Ulm製品群になり、そのレンズ銘板を確認すれば一目瞭然で「シングルコーティングを表す♢刻印が確認できる」点で明白です (一部モデルには刻印なし)。
この当方の捉え方を助けてくれた概念が既に分かっていて、当時のロシアンレンズに於いても同様「光反射」を表す口語 (当時のロシア人が多用する) としてロシア語キリル文字の「Просветления (プロスビィティリーニアと発音)」があり、これをラテン語/英語翻訳すると「enlightenment (啓発)」ですが、確かに「KMZ (クラスノゴルスク機械工廠)」製品解説ページたる「ZENIT CAMERA」の仕様諸元欄にちゃんと明記されています。このロシア語
キリル文字の頭文字「П」はそのまま単独でラテン語/英語翻訳すると「P」になる為「Pコーティング」などとネット上でもいまだに呼称され続けています(笑)・・そしてまさにリアルな現実として製品のレンズ銘板に「П刻印」を確認できる為、否応なしに認めざるを得ません。
従って「蒸着コーティング層の複層膜を表す捉え方」として当時の関係者が国の別を超えて「反射」と言うコトバに反応を示していた点を認めざるを得ません。これは入射光の反射率
向上/改善を狙った革新的技術として当然ながら歴史面から捉えようとしても如実に光学系の
歴史の中に捉えることが適います。
ここまでの解説で説明の便宜上「Sなど赤色文字やRとグリーン色の文字で表記」していますが、現実のA.Schacht Ulm社の製品群レンズ銘板刻印は決して色付きではありません。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回の扱いが凡そ8年ぶりになりますが(汗)「M42マウント規格品」個体では初めての扱いになるので、前回の「exaktaマウント規格」との相違分、一部内部構造に設計の違いが当然ながら認められます。
当初の予測では「M42マウント規格」のほうが自動絞り方式が完結している分、内部構造は
よりスマートではないかとみていましたが「浅はかな臆測」でした(汗)
「exaktaマウント規格」になるとシャッターボタン機構部を持つので、その分ギミックであり楽しいのですが、内部構造面から捉えると難しさが募る・・と受け取っていましたが、リアルな現実に完全解体してみるととんでもなくて(笑)、今回の複雑怪奇なレベルはおそらく当方の技術スキルでは「技術スキルがとても低い分」容易にMAXの難度レベルに到達していると
考えられます(笑)
もちろん既に2016年時点で完全解体しているので「内部構造の複雑さは周知の通り」であるものの、これらA.Schacht Ulm製ゼブラ柄モデルを完全解体してオーバーホールする難しさのポイントは「何よりも全ての箇所で100%微調整が必須作業になる」点であり、逆に言うなら「微調整を伴わない箇所は1つしか存在しなかった」とも言いかえられます(笑)
↑上の写真は凡そ全ての構成パーツに必ず介在する「締付ネジ」のセットを撮影していますが(笑)、ほぼ96%の構成パーツでこれら締付けネジによる締め付け固定時に「微調整が必須の作業」に至ります(汗)
これが例えば左写真のようなイモネジであれば、締め付け固定する先の「尖ったネジ部の先が突き当たる箇所には必ず製産時点の締め付け痕が残っている」点を以て、例え微調整が必須作業としてもその目安には使えます (製産時点のままの位置で締め付け固定して良いのか否かの判定を下せるという意味/当然ながら組立工程の状況如何で製産時点よりズラしたほうが良い場合も在る)。
◉ イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種でネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。
大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。
ところが今回のモデルのように「イモネジではない締付ネジ種による締め付け固定」の場合、何が大きく異なるのかと言えば「相手のネジ穴に必ずマチが備わるので微調整する範囲/レベルが大きい」点と合わせて、全体の96%で微調整作業が必須となれば「1箇所の微調整の
結果が即、他の箇所に直結で影響を来たす」道理になるので、とんでもなく大変なのです(汗)
アッチをイジッて、コッチをイジッたら、ソッチもイジる必要が生じ、そのとおり微調整したら何のことはなく、気づけば再び最初の場所に戻っていた・・なんて言うのが出てくる始末で「まさに同道巡りしている錯覚に陥る」のがリアルな現実です(笑)
しかし全ての箇所にその締め付け固定の位置は「観察と考察」により明確な違いが現れ、且つ「原理原則」から導き出される結果は恐れ多くも「必ず一つに収束してくる」からオドロキになるワケで・・だからこそ「本来在るべき姿=製産時点」が顕在するのだという、当方の持論でもあります(笑)
逆に言うなら「ごまかしのためのごまかしが必要になる」くらいに、1箇所を妥協したら次から次へとごまかす箇所が増えていく始末です(笑)・・まさにそれこそが「原理原則」しか介在
しない全ての道理とも言い替えられます。
今回のオーバーホール/修理に臨み、結果的に組み直し回数は29回に及びましたが (どんだけ技術スキルが低いのかを、まさに物語っている話)(笑)、当初7日前の火曜日の夜から作業を
スタートしたものの、完璧に仕上げられたのは次の週の昨夜、やはり火曜日だったワケで(笑)
さすがに今までの13年間で1本のオールドレンズを仕上げるのに7日間も費やしてしまった事は一度たりともありませんでしたから、これこそが「技術スキル認定試験合格ラインにスレスレ状態」である事を明示している次第です(汗)
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ オーバーインフ量が多めで、無限遠合焦は凡そ2目盛り分手前位置まで戻る。
❷ 無限遠合焦を調べるとピント面の鋭さ感がちょっと少な目な印象が残る。
❸ 距離環を回すと僅かにトルクムラを感じ、且つトルクにも擦れ感の印象が残る。
❹ 絞り環操作時のクリック感が硬めでぎこちない動きの印象が強い。
❺ インジケーターの開閉時に抵抗/負荷/摩擦が指に伝わってくるのが分かる。
❻ 光学系内に極薄いクモリがあり、一部の群に汚れのような箇所が残っている。
❼ A/M切替スイッチにガタつきがありツマミに僅かな遊び/ズレを感じる。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❽ レンズ銘板部分が着色されており、溶剤で溶けて流れてしまった!(驚)
❾ ヘリコイドオスメスやマウント部内部他、可動パーツに白色系グリースが塗布されている。
❿ 光学系のコバ端に反射防止黒色塗料が執拗に厚塗されている。
⓫ 光学硝子レンズ格納筒の内壁も一部に反射防止黒色塗料が着色されている。
⓬ 筐体外装パーツのフィルター枠/距離環/指標値環/絞り環全て光沢黒色に着色されている。
⓭ トルクの微調整をごまかす為に締付ネジを硬締めしていない箇所がある。
⓮ マウント部内部にも執拗に白色系グリースが塗布されていて濃いグレー状に変質している。
⓯ 各部位や各構成パーツからのチカラの伝達レベルを無視した組み立て方をしている。
⓰ A.Schacht Ulm製オールドレンズの組み立てに対する根本概念が全く違っている。
※上の箇所書きでグリーン色の文字の表記は、今回のオーバーホール/修理ご依頼内容。
・・とまぁ〜、挙げればそれこそきりがないくらいですが(笑)、そもそもこれら旧西ドイツ製のオールドレンズで、特に「Schneider-Kreuznach/Isco-Göttingen/A.Schacht Ulm/
ENNA WERK/Rodenstock/Steinheil München」と、これら6社の製品群に対して「全ての部位に微調整が伴う設計概念で造られている」点と合わせて、日本の光学メーカー品含め、他の国のモデルと比較しても内部構造面での最大の相違点は「懸垂式ヘリコイド駆動方式」をまるで一律のように採っている点に於いて、鏡筒の繰り出し/収納に際し「そのトルク管理が
とても難しくなる」事を、ちゃんと汲みしながら整備に臨まないと「本来在るべき姿」には
決して到達し得ません(笑)
・・間違いなく120%の勢いで、それだけは明言できます!(笑)
逆に言えば、ネット上でいまだに誰一人指摘しませんが、どうしてこれら光学メーカー品オールドレンズがこぞって内部構造面で同じ設計概念を採っていたのか、その説明ができません。
当然ながら実際の内部構造や各構成パーツは一つとして同じモノが存在しませんが (Isco-GöttingenだけはSchneider-Kreuznach傘下なので、現実に一部パーツに同一性が散見する)、その設計概念が非常に近似しており、まるで申し合わせていたかの如く勘ぐってしまう
ほどです(笑)
その際たる要素こそが「懸垂式ヘリコイド駆動方式」で、ブラブラとブラ下がったままの鏡筒にマウント部から、これでもかと制御系や操作系パーツがチカラを伝達してきますから、特にヘリコイドオスメスのトルク管理の難しさは相当なレベルです(怖)
簡単に申し上げるなら、日本製オールドレンズの多くは距離環を締め付け固定するヘリコイドメス側が「マウント側に近い位置に配置」されるので、極少ないチカラの伝達だけで距離環を回しますが、前述6社の旧西ドイツ製オールドレンズ達は、距離環の固定先ヘリコイドメス側が「前玉側に近い位置に配置」されるので、必然的に鏡筒がブラ下がり状態に陥り「懸垂式
ヘリコイド駆動方式」と言う話に到達します(笑)
この時、鏡筒には当然ながら光学系の前後群がネジ込まれるので、とても重いブラ下がっままの重量を引っ張り上げて繰り出すか、落とし込んで収納するかの動き方しかできず、だから
こそ「トルク管理がメチャクチャ大変!」なのだと指摘しているのです(涙)
逆に言うなら、そのブラ下がったままの鏡筒に限りなく常時伝達され続けている、マウント部からのチカラの微調整をヤラされるハメに陥るのが、これら6社の旧西ドイツ製オールドレンズ達なのだとも言い替えられます(笑)・・ブラ下がっているままの鏡筒を支えているヘリコイドメス側のトルク管理がタダでさえ大変なのに、そこにマウント部からこれでもかとチカラの伝達が続くなら、いったい自分は何の為にあ~だこ~だ微調整を続けているのか忸怩たる思いに至ります(笑)
↑衝撃的な写真を撮影しました!(涙)・・ハッキリ言って、今までの13年間でこのようなリアルな現実にブチ当たったのは初めての経験です(涙)
上の写真はこのモデルのフィルター枠を取り外した状態ですが、遮光環部分に1つだけ備わるイモネジ用のネジ穴にネジ込んであったイモネジが、当初外す際に確認すると「マイナスの
切込み部分がマイナス状ではなく三角形状に歪んでいた」のが判明し、このままイモネジを
回そうと試みれば破断する懸念が高いと考え「先ずは溶剤を注入してから少しだけ加熱して
みるか」と作業手順を考えた次第です。
・・それが仇となりました(涙)
上の写真のように傾けたまま溶剤を注入すると、流し込んだ溶剤が前玉のほうに流れるため、逆向きに傾けて溶剤を注入したのです。そしたら「なんと溶剤でレンズ銘板の黒色塗膜が溶けて流れ始めた!」ではありませんか!!!(驚)
ダラダラと溶剤が流れる筋が川のように残り、何ともキモイ溶け方としか言いようがありません (ちょうどA.Schacht Ulmの刻印辺りの塗装が溶けてしまった)(涙)
・・まさか溶剤で塗膜が溶けて流れるとは全くの想定外です!(怖)
仕方ないので溶剤で溶けて塗膜が除去できる箇所を全て拭って塗装を剥がしたのが上の写真です。見れば一目瞭然ですが、フィルター枠のネジ山部分や遮光環部分などの黒色塗装は、他の一般的なオールドレンズと同様に「製産時点のメッキ加工仕上げ」のままなので、溶剤如きで溶けて流れたりしません(汗)
つまり今回のこの個体は「レンズ銘板を研磨してキレイに仕上げてから、黒色で再着色した」その過去メンテナンス時の所為が一目瞭然です!(怖)・・注意深くよ〜く確認すると、確かにレンズ銘板の一部には少々深めの引っ掻きキズや打痕が数か所残っているのが分かります。
・・おそらくそれを隠すために研磨してから再着色して仕上げたのだと思います(涙)
ショックだったのはそのような過去メンテナンス時の事実ではなく「当方は塗装スキルが皆無なのに・・どうしよぉ〜ぉ〜!!!」と言う叫びに似た恐怖感です!!!(怖)(怖)(怖)
何しろ他人の所有物をこのようにしてしまったワケですから、その罪の重さに押し潰されそうです(怖)
仕方なく、急遽「塗装工具一式 (要はコンプレッサ式のハンドスプレー工具一式)」を買い入れて届けてもらい、再塗装に挑戦するしかありません(涙)・・ちゃんと塗装しなければイケナイので、少々お高い工具一式を敢えて手に入れました (2万円分)。
しかし現実に再塗装をスタートしても、今までヤッたことがないのにキレイに再塗装できる
ワケがありません(笑)・・10回ほど試しても塗料と薄め液の配分が相変わらず「???」なままですし、24時間乾燥させてから刻印してあるモデル銘をガシガシと引っ搔いてシルバー刻印に戻すにも「そもそも刻印自体の深さが浅すぎてキレイに引っ掻けない!」状況に陥り
ました(涙)
結局、この再塗装作業だけで火曜日夜〜水曜日丸一日、工具一式届いてからの3日間との・・合計4日間を費やすハメに陥り、仕方なくご依頼者様にお詫びメールを送信しました(怖)
そしたら、何とも良心的なご対応をして頂けるご依頼者様で(涙)、崖の上から飛び降りる覚悟だったものの、刻印を戻せなければ黒色着色だけでも良いと大幅に・・、本当に大幅に妥協を示して頂きました(涙)
・・ありがとう御座います!!!(涙)
当方がイケナイのに、なんとお優しい方なのか・・(涙)
↑上の写真も同じフィルター枠を横方向から撮影していますが、ヘリコイドオス側を取り付けて作業を進めているところです (持って保持できる場所を用意している)。
すると赤色矢印で指し示しているとおり、本来の製産時点メッキ塗色も同じブラックなのが当然ですが、グリーン色の矢印で指し示したとおり、その上からやはり黒色塗装を施しているのが分かります (上の写真は解説用に途中で一度撮影しています)。
・・何の理由があってメッキ加工の上から敢えて黒色塗装するのでしょうか???(涙)
↑こちらの写真も当初バラし始めている途中で撮影した光学系第1群〜第3群の光学硝子レンズです (左端が第1群前玉)。すると同様赤色矢印で指し示している箇所に反射防止黒色塗料が塗られています (既に一部は溶剤で除去が終わっています)(涙)
↑写真撮影するのを忘れていたので、途中で慌てて反射防止黒色塗料の「証拠写真」を撮影しています(笑) 赤色矢印で指し示している箇所に過去メンテナンス時に着色された反射防止黒色塗料が残っています。
左側に並べた光学系前群格納筒の内壁にまで塗装が流れ込んでいるのが判明します。当初バラす前の実写確認時点で「何となくピント面がちょっと甘いのかなぁ〜???」との印象に至った理由が、もしかしたらこれかも知れません・・つまり光路長が極々僅かにズレているのかも知れません。
↑とにかくフィルター枠のレンズ銘板が溶けて流れてしまった時点で「過呼吸」に陥り(笑)、
作業どころではなくなりイキナシ体調が悪くなってしまいました(汗) ご依頼者様からお許しのご返事を頂いたので、ようやく作業に戻ったところです (ご依頼者様は神様です!)(涙)
絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。ご覧のとおりブルー色の矢印で指し示しているように鏡筒内外は「鈍い光沢感がある黒色メッキ加工」なのが分かります (決してマット/艶消しではない)。またグリーン色の矢印で指し示しているとおり、鏡筒の後ろに備わる「光学系後群格納筒」の内壁もアルミ合金材剥き出しのままです (決してマット/艶消しではない)(笑)
それでも「迷光!迷光!」と大騒ぎして反射防止黒色塗料を着色する人達/勢力が居ます(涙) どうして製産時点に上の写真の状態に仕上げてあったのに、大騒ぎするのでしょうか (当方には全く以て理解できません)???
ちなみに赤色矢印で指し示している穴は「絞り羽根の位置決めキーが刺さる場所 (6個ある)」です。
詰まる処、A.Schacht Ulm製オールドレンズに実装している絞り羽根は「フッ素加工仕上げ」なので、表層面の平滑性は素晴らしいレベルで造られていますし、先ず以て経年劣化進行に
伴い絞り羽根は表裏面で酸化/腐食/サビが生じにくい状況です(涙)
逆に指摘するなら「だからこそ経年に於ける絞り羽根の油染み対策が既に講じてあるから微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工を施さなくても良い」からこそ、鏡筒内外は鈍い光沢感が在るメッキ加工だったのです(笑)
・・このような内容こそが「観察と考察」であり「原理原則」です(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑上の写真は、絞り羽根の上から被さる「開閉環」をひっくり返して、絞り羽根側の面を撮影しています。すると解説のとおり「絞り羽根の開閉キーが通る溝が用意されている (6個分ある)」のが分かります。
問題なのは「どうしてその溝が円弧を描いているのか???」です(笑) 実際絞り羽根の上に被せて回してみると「絞り羽根は位置決めキー側を軸として上の写真の開閉環を回すと一度は開いてから、その後にそのまま再び閉じてしまう」動き方をします(笑)
逆に言うなら、一般的なオールドレンズで採っている設計は「絞り羽根は閉じきるか、開き切るかで最後はその状態のまま停止する」のが普通で、A.Schacht Ulm製オールドレンズのように「開いて閉じて」と一連の開閉動作をしません!(笑)
・・どうしてそのような動き方をさせる必要があるのでしょうか???
↑上の写真は、❶ 鏡筒の最深部に組み込まれるべき絞りユニットの構成パーツを並べて撮影
しています。
❶ 鏡筒
❷ 開閉環
❸ 鋼球ボール格納環
❹ 鋼球ボール保持環
❺ 鋼球ボール締付環
❻ 絞りユニット固定環
↑そうなのです。このモデルの絞りユニットには「6個の鋼球ボール」が介在し、開閉環を鋼球ボールによって回転させる設計を採っています。
逆に指摘するなら「開閉環の内径は最も小径なので、鋼球ボールを入れてもストンと落下してしまう」構造で設計されており、鋼球ボールを「保持環で保持し続けない限り開閉環は回転し続けない」とも言い替えられ、完璧な仕上がりに至るなら「開閉環を指で勢いよく回した時に最低でも3〜4秒間は回り続ける」状態が適正と言えます。
(つまり鋼球ボールの半径だけで開閉環が保持される設計/中空に浮いている状態で回り続ける)
・・はたしてどれだけの整備者がこのような「原理原則」を理解しているでしょうか???
過去メンテナンス時の整備者は「❻ 絞りユニット締付環」を硬締めで締め付け固定するものの、肝心な「開閉環の平滑性 (回り続ける)」を蔑ろにしたまま仕上げていました(泣)
もっと言うなら、組み上げた後に「絞り羽根開閉が正常であれば問題ない」と考えていた事が明白になり、過去メンテナンス時の整備者の「レベルが伺える」と言うものです(笑)
何故なら、例え絞り羽根の開閉がこの時点で正常としても「他の部位に影響が現れるからこそ
こんな設計にしている」のを全く理解していません(笑)
何故鋼球ボールを介在させたのか??? 何故、開閉環は中空に浮く必要があるのか??? 何故回り続けなければイケナイのか???・・そう言う事柄が全く見えていません(笑)
今回のオーバーホール/修理で当方がこの絞りユニットを完全解体してチェックしたのは「鋼球ボールのサビ状況」を確認したかったのと、合わせてちゃんと開閉環が回り続けるよう組み
上げたのかを調べたかったからです(笑)・・理由があってヤッています(笑)
↑鏡筒最深部に絞りユニットがセットされたところです。絞り羽根がフッ素加工されているので、ご覧のように極僅かな光の射し込みだけで絞り羽根が光っています (決して絞り羽根が
変色しているワケではない/どうして迷光で大騒ぎする根拠が在るのでしょうか???)(笑)
A.Schacht Ulmの設計陣が、絞り羽根の加工処理で狙っていたのは経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビの防止であり、迷光などは意に介していなかった事が明白ではありませんか???(笑)
そもそもBerteleが光学設計する段階で「迷光のことなどは既に織り込み済みで光学設計しているハズ」なのでは・・ありませんかねぇ〜(笑)
もっと言うなら「迷光」で大騒ぎするのは人工衛星に搭載される光学機器製品の話であり、極々僅かな入射光の波長偏位だけで致命的だったりするからです。このような内容は以前取材した工業用光学硝子レンズ精製会社様でご教授頂きました (多くの場合で迷光は光学設計段階で既に織り込み済)。
↑完成した鏡筒をひっくり返して後玉側の方向を上に向けて撮影しています。すると赤色矢印
解説のとおり、鏡筒の側面に「制御系パーツ/駆動系パーツ」が飛び出てきます・・操作アーム (左) と制御アーム (右) です。
操作アーム (左) はマウント面から飛び出ている絞り連動ピンからのチカラ伝達により絞り羽根の開閉動作を伝達する役目です。一方制御アーム (右) は絞り環からの伝達により絞り羽根の
開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) を伝達する役目です。
↑さらに完成した鏡筒を回して反対側を撮影しました。同様写真の上側方向が後玉側方向に
あたります。
開閉環から飛び出ている「開閉アーム (右)」に捻りバネが介在するのが分かります。またラック (ギア状) の「制御キー (左)」が黄銅材で備わります (どうして黄銅材なのか???)(笑)
ちなみにブルー色の矢印で指し示している箇所に「開閉キーを停止させる位置を決めている
ストッパーが在る」ものの、その締め付け固定位置にはマチがあり停止位置を微調整するのが分かります。
↑同じように完成した鏡筒を後玉側方向から撮影していますが、ご覧のとおり「絞り羽根は
常に完全開放したまま」なのが分かります。一つ前の工程で解説しましたが、捻りバネのチカラにより「常に絞り羽根を開くチカラが及ぶ」設計なのがこれだけで明白です。
するとその時、もっと前で解説した「開閉環の弧を描いていた溝の理由」がそろそろ見えて
きたでしょうか???(笑)・・もしもいまだに理由が分からなければ、整備者としての資質がそもそもありません(涙)
↑工程を進めているところです。今度は鏡筒の周囲に「制御環」をネジ込みました (だから鏡筒の回りにネジ山が備わっていた)。「制御環」に「制限アーム (左)」を締付ネジで締め付け固定しています・・するとこの締め付けの際にもネジ穴にマチが備わるので、締め付け固定位置の微調整が必須になります(汗)
対して開閉環に固定されている「制御アーム (上)」も締付ネジによる締め付け固定の際にネジ穴にマチがあるので微調整しているのが一目瞭然です。
つまり絞り羽根をどの角度まで閉じさせるのか、その角度の微調整に関して「制御アームと
制限アームの2つの固定位置が大きく影響する」のが歴然です。
どんなに絞り環側の調整を頑張ったところで、ここのたった2つのパーツの固定位置をミスッ
ただけで「絞り羽根開閉異常が誘発される」のがお分かりでしょうか???(笑)
↑さらに反対側を撮影しています。同様制御環に「伝達ピニオン (歯車)」がセットされますが、やはり締め付け固定位置の微調整を伴います(汗)
つまり鏡筒側のラック (ギア状) とピニオン (歯車) の両方で締め付け固定位置の微調整が必須作業という設計です。
・・どうしてここまであらゆる構成パーツの微調整にこだわるのでしょうか???
↑ようやく工程を進められます(汗) 一般的なオールドレンズに比べて倍以上も長い/深い/厚みがある、距離環やマウント部を組み付けるための「基台」です。眼の前に写っている基台側面の「溝2本」にはちゃんとそのカタチの理由があります。
上の水平方向の溝は左右両端に勾配が確認できます。一方下側の円弧を描いたカタチの溝は
・・どうしてキレイな半円のカタチではないのでしょうか???(笑)
↑基台内側に組み込まれる黄銅材で造られた「直進キー環 (左)」と「絞り値キー環 (右)」です
・・どうしてワザワザ黄銅材で用意されたのでしょうか???
左側「直進キー環」にはグリーン色の矢印で指し示している「直進キー」が飛び出ていますが
片方だけに切り込み/溝/スリットが入っています。
右側の「絞り値キー環」にも赤色矢印で指し示している箇所に「絞り値キー」と言う絞り環に刻印してある「絞り値」の位置に見合う溝が刻まれていて、そこに鋼球ボールがハマるので
カチカチとクリック感を実現しています。
一方、反対側には「ラック (ギア状)」が備わりブルー色の矢印で指し示していますが・・どうしてこんなに長さのあるラックなのでしょうか???
たまには答えを示したほうが良いですョね?(笑)・・鏡筒の繰り出し量の分だけこのラックの溝が用意されているのです。
逆に指摘するなら、この長さの分だけ「鏡筒はブラ下がり状態にある」とも言い替えられるので (何故なら、この位置までヘリコイドが降りてこないから)、まさに「懸垂式ヘリコイド駆動方式」の驚異的な設計概念です(笑)
鏡筒の外周にネジ込んである「制御環」に備わるピニオン (歯車) が、このラックを左右方向に行ったり来たりするので、絞り環の設定絞り値が距離環のどの回転位置にあっても適切に絞りユニットに伝達されるワケです(笑)
・・つまり鏡筒周りの制御系パーツ/駆動系パーツから抵抗/負荷/摩擦が常時影響している。
すると前述した「直進キーの一つに切り欠き/溝/スリットが備わる理由は、ヘリコイド回転時のトルクムラ解消/相殺/低減」を目指している処置なのが分かります。
もっと言うなら「どうして黄銅材で用意したのか???」も、これら2つの環が組み込まれる先が「アルミ合金材の基台内側」なので、例え平滑処理が施されていても金属の材そのモノを変更しなければ「互いの応力反応から影響を受ける」とも指摘でき、全てには理由や根拠に
狙いがある為、それら総てが「原理原則」から導き出されるが故に理解できるのです(笑)
・・アルミ合金材/黄銅材の接触面を問題視するのではなく、あくまでも「応力」です(笑)
このような内容こそが「設計者の意図を汲みする」話を指し、それは設計図面の解説を受けずとも(笑)「原理原則」から導き出される為、ちゃんと締付ネジ一つに至るまで「観察と考察」する事で、製産時点の状況が透けて見えてきて「本来在るべき姿に可能な限り近づけられる=製産時点」と述べるのは・・『道理』なのだと言えませんかねぇ〜(笑)
↑指標値環のスリット (透明窓) から透けて見える「被写界深度を表すインジケーター」の機構部を構成するパーツを並べています。
❶ インジケーターベース板
❷ インジケーター右
❸ インジケーター左
❹ インジケーター開閉角度伝達カム
すると❶ インジケーターベース板はブルー色の矢印で指し示しているように・・どうしてアルミ合金材のアルマイト仕上げなのでしょうか???
或いはグリーン色の矢印で指し示している❷ インジケータ右と❸ インジケーター左のラック部分は黄銅材なのでしょうか???
もっと言うなら、❹ インジケーター開閉角度伝達カムは何故、鋼材で造られているのでしょうか???
こういう細かい事柄全てにちゃんと根拠と目的や役目が備わり、それをキッチリ汲みしつつ、
仕上げていかなければ「本来在るべき姿=製産時点」には到達し得ません(笑)
↑逆にショッキングな写真を載せるなら(笑)、上の写真のとおり絞り環は「単に2箇所の貫通したネジ穴 (赤色矢印) が備わるだけのとても質素なモノ」なのが一目瞭然ですが、然しよ〜く
観察すると「絞り環の内側は平滑処理されている」点に気づく必要があります(笑)
↑ヘリコイドのオスメスを無限遠位置の当たりをつけた正しいポジショニングでネジ込んでから、距離環をヘリコイドメス側に締め付け固定します。グリーン色の矢印で指し示している
箇所には、完成している鏡筒が格納されて「ブラ下がり状態に至る」次第です(笑)
整備者なら既に気づいている必要がありますが(笑)、ご覧のとおりヘリコイドオス側は何処にも保持されておらず「単にネジ山を回って繰り出しているだけ」です(笑) このヘリコイドオス側の先には冒頭で出てきたフィルター枠がネジ込まれるだけで、グリーン色の矢印で指し示している箇所に、相当な重量物に至っている (光学系前後群が格納されるから) 鏡筒が組み込まれます。
だからこそ「懸垂式ヘリコイド駆動方式」のトルク管理は大変なのだと指摘しているのです。
↑完成したヘリコイドオスメスをひっくり返して、今度は基台の内側を撮影しました・・既に絞り環が組み込まれていますし、当然ながら指標値環の内部には「インジケーター機構部」がセットされていて、絞り環操作に伴いインジケーターが左右に開いたり閉じたりの動き方を
します。
↑絞り環に赤色矢印で指し示している箇所から1本のネジが貫通して通っています。その先には「黄銅材の絞り値キー環」が組み込まれていて、グリーン色の矢印で指し示した位置のラック横にストッパーが備わります。
このストッパーの役目は「絞り値キー環の停止位置を決める役目」ですが、そもそも「絞り値キー環」は絞り環と直結しています。つまりこのストッパーは「絞り環の停止位置も確定させている」話なのが明白です。
↑完成している鏡筒を実際にセットしたところです。こんな感じでラック&ピニオンが噛み合います。
↑上の写真はマウント部内部を写していますが、各構成パーツをすべて取り外して、既に当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。
当初バラした直後は、このマウント部内部にまで「白色系グリース」が塗布されており、既に経年劣化進行に伴い「濃いグレー状」に変質し、相応の粘りを有する状況でしたからハッキリ言って潤滑性を担保できている状態とは言えません(汗)
なお赤色矢印で指し示している「A/M切替スイッチ」用の鋼球ボールは格納筒の中に埋め込まれている設計です (内部にはスプリングが収まっている)。
↑一部の構成パーツを残して組み込んだところですが、当然ながら個別に「磨き研磨」済なので、たかが絞り連動ピンとしても十分平滑性を取り戻しています(笑)
逆に言うなら、個別の構成パーツが全て平滑性を担保されたので「このマウント部内部にグリースを塗る必要性は100%無い」とも明言でき、その根拠は「各構成パーツのアルミ合金材自体に光沢仕上げが施されているから (つまり表層面の平滑性すらちゃんと確保されている)」と指摘でき、一般的な削り出し状態の素のままのアルミ合金材パーツではありません(笑)
このように「観察と考察」により、単に構成パーツを組み付けるだけに留まらず、そこに潤滑剤の類に必要性の有無まで明白に至ります(笑)
↑同じマウント部内部ですが「絞り連動ピン機構部」を拡大撮影しています。赤色矢印で指し示しているのが太めで大柄な「絞り連動ピン」です。
一般的な「M42マウント規格品」の絞り連動ピンは「単なる金属棒」である事が多いですが、A.Schacht Ulm製オールドレンズの多くのモデルは、このように立派な構造をしています(笑)
ここでのポイントはグリーン色の矢印で指し示している「1本の棒バネのチカラだけで絞り
連動ピンをマウント面から押し出し続けている」設計概念で、意外とここがオールドレンズとしての「製品寿命」に大きく影響してきます (つまり絞り連動ピン自体の平滑性よりも棒バネの反発力のほうがとっても重要)(怖)
↑こちらは「A/M切替スイッチ機構部」の拡大撮影です。右側にスイッチ部が集中的に収まっていますが「捻りバネを使って左側に連結している」のが明白です。
これは「A/M切替スイッチ」設定如何に限らず、このモデルは赤色矢印で指し示したレリーズソケットを装備している都合上、そこからの押し込み動作にも反応して「A/M切替スイッチとしての動きを再現させる必要がある」からこのように連携しています(笑)
然しここでのポイントはグリーン色の矢印で指し示している「捻りバネが固定されていない点」であり、これら捻りバネの左右端は互いにパーツと擦れ合いながら「適切な応力反応を
示す」必要性が高いので、固定しない設計になっているのが分かります。
・・こう言うのが「原理原則」だったりしますが説明前にちゃんと分かりましたか???(笑)
冒頭で明示した当初の問題点の中で「❼ A/M切替スイッチにガタつきがありツマミに僅かな遊び/ズレを感じる。」とのご依頼内容がありましたが、確かにその現象を確認できていたものの、このマウント部だけの状態では正常で全く問題を感じません・・適切なクリック感
(赤色矢印) の強さ (硬くもなく軽くもない) と共に正しく機能しています。
↑レリーズソケットはこんな感じでサイドに差込口が用意されているので、レリーズケーブルをネジ込んでレリーズ撮影がちゃんと機能するよう組み立ててあります (もちろん各部位の駆動
を確認済)(笑)
↑同じくマウント部を横方向から撮影していますが、今回のモデル「M42マウント規格品」も前回扱った「exaktaマウント仕様」と同様、赤色矢印で指し示している箇所に「絞り環を押し上げて適度なクッション性を与える膨らみが3つ備わる/テンションバネの役目」を解説して
います(笑)
従って、当初バラす前のチェック時点で、このマウント部を締め付け固定している締付ネジ
4本が緩めに締め付けされていたのは「硬締めすると絞り環がさらに重い/硬めの操作性に
変わってしまっていたから」とも指摘でき、当然ながら実際に硬締めしてみて、ちゃんと
その状況を再現し自分の目で確認しています (だから明言できる)(笑)
そこから指摘できるのは「過去メンテナンス時の組立工程に何かしらムリやごまかしが行われていた」為に、このような緩い締め付け方で仕上げています(笑)
・・ロクなことをしません(笑)
↑いよいよオーバーホール工程の最終段階に向かいます。「絞り連動ピン操作レバー」機構部を組み付けました。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピンが押し込まれると」そのチカラの分だけ (ブルー色の矢印❶)「操作レバーが移動」して反対側/右側に倒れます (ブルー色の
矢印❷)。
↑上の写真 (2枚) は、前述の動き方「カムに付随するレバーの傾き方」を明示する為に、実際にマウント部を押し込んで、擬似的に絞り連動ピンを押し込んだ状態を再現し、レバーの動作を試したところを撮っています・・右方向に勢いよく傾いているのが分かるでしょうか。
ここから見えてくるのは「歯車が介在する以上、このレバーの傾き角度の度合いによって絞り羽根の開閉動作が変化する」話に至り、要は「絞り羽根開閉異常」の因果関係にまで影響する機構部なのが明白だと指摘しているのです(笑)
逆に言うなら、冒頭で執拗に解説した「絞り羽根が常に開く方向にチカラが及んでいる」鏡筒に付随する捻りバネに対し、まさにここで「レバーのチカラで強制的に絞り羽根が閉じる方向にチカラを与えている」原理なのがハッキリしたのではないでしょうか(笑)
なお、このブログページ最後のほうに再び解説が登場しますが、このマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれる際の「最大限押し込まれた時の許容量が決まっている」点に着目する必要が現代の使用に際し非常に重要になってきます(汗)
逆に言うなら、もしも仮に「絞り連動ピンが必要以上に押し込まれすぎる」と、絞り連動ピンを保持しているパーツの存在により、結果的にこのマウント部全体が押し上げられている話に至り、そのチカラ/応力分は必ず基台側に伝わっていく点です!(怖)
これを無視したり放置すると「本来在るべき姿」には決して組み上がりません(汗)
↑マウント側方向から覗き込むと、こんなふうに見えています(笑)
↑完成したマウント部をセットして、いよいよ完成間近です!(笑)
・・が然し、しかしです!!!
ここで気に入らない要素を発見してしまいました!(笑) 上の写真で指標値環の基準「|」マーカー位置にピタリと「∞刻印」ド真ん中で一致しているのに「どうして絞り環の刻印絞り値の
2.8はド真ん中に来ていないのか???」ですです(泣)
実際、このままに絞り環操作していくと、ちゃんとインジケーターも適切に開閉動作し、且つクリック感も小気味良く、当初のぎこちなさは感じません。
然〜し!!!・・2.8から4→5.6→8→11と回していくに従い「どんどんズレ幅が広がっていく」為に、f値「11」の位置では隣の空白部分にクリック感を感じて停止します(驚)
当初バラす前の時点よりも、鏡筒周りの制御系パーツ/駆動系パーツの微調整位置を極僅かに
ズラしている分、当初よりもズレ幅が増大してしまうのは、実は納得済なのですが、それに
してもクリック感の位置と刻印絞り値が一致しないのは致命的です(汗)
・・これは決して正常とは言えません!!!(怒)
これに気づいたのが昨日の火曜日でしたので、本日水曜日に再びバラし始めた次第です(笑)
ついに8日目に至っても、まだ完成していなと言う「本当に技術スキルどんだけ低いのか?
!!!」と言う、マジッで恥ずかしい状況です(恥)
↑前のオーバーホール工程で一度掲載し解説した写真を再び載せていますが、総ての原因がパッと目の前に広がりました!(驚)
冒頭で指摘した問題点の「❷〜❺」そして「⓭〜⓰」と言う違和感や疑問点を生み出していた「張本人」は、上の写真❶のブルー色の矢印で指し示している「インジケーターベース板」だったのです!!!(驚)
このベース板の中心部には裏側にやはり「小さな歯車」が備わり、❷と❸のインジケーターの左右をガシガシとラックのギア部分を使い、開いたり閉じたりの動作を左右均等に処理して
くれます。
ところが「❶ インジケーターベース板」の向きを逆に組み込んでいたのです!(驚)
当初バラした際に、そういう事も頻繁に起きるので「必ず個別のパーツに向きのマーキングを施している」次第ですが、それで向きが逆だったのが判明したのです(笑)
マーキングした位置で組み付ける為に刻み込んでいるのではなく「疑念が湧いた際にその真偽を問うための証拠/根拠/因果としてマーキングしている」次第です・・それ故、今回助かり
ました(涙)
つまりこうです。過去メンテナンス時の整備者が「ド真ん中に小さな歯車が在る」のを見て、この「❶ インジケーターベース板」には左右の向きが存在しないと勝手に判断したのです。
それで組立工程の際に向きがひっくり返って取り付けられ、その影響から左右インジケーターの開閉動作が変化し、その変化は「❹ インジケーター開閉角度伝達カム」に当然ながら伝わるので、カムの傾きが変化してしまい (弧を描いた溝に対してのインジケーターの左右開き方が
違うので) それが「なんと絞り環にまで伝達された」からこそ、絞り環操作に違和感を感じていました。
それらの根拠がちゃんとあり「❶ インジケーターベース板」裏側のピニオン (小さな歯車) の
位置に対するベース板の「高さ/中心」を計測したら・・何と何と「上下の向きの違いだけで極僅か0.3㎜ほど歯車の位置が狂う」のが判明しました!(驚)
つまり「❷と❸のインジケーター左右」はその僅かな0.3㎜分の歯車のズレ/高低差を敏感に受けて(泣)、左右均等の開閉駆動に影響が現れたのです。それが結果的に絞り環操作にまで「違和感として指に伝わっていた」のが、ご依頼者はもちろんのこと、当方自身も感じ取っていた次第です (いわゆるガシガシした、ぎこちなさの印象)(泣)
実際当初バラした直後には、この左右のインジケーター機構部には「黄銅材の摩耗粉 (白色系グリースが塗布されていたので焦げ茶色に変質)」が付着していましたが、おそらく設定絞り値「f8〜f22」方向に向かってインジケーターのラック部分 (ギア部分) が摩耗してしまっていると推察されます。
実際オーバーホールが終わっても、絞り環操作に伴うインジケーターの開閉動作は、特に最小絞り値「f22」方向に向かい、極々僅かに擦れ感が増大していく印象を指が感じとっていると指摘できるので、一度削れてしまった金属 (黄銅材) は戻せないので、残念ながらどうにも対処できません(汗)
但し、そうは言っても左右のインジケーターに備わるラック部分の摩耗を、将来に渡り可能な限り「低減したい」ので(泣)、背後に位置するベース板の「弧を描くアール」と左右インジケーターのラック部分のアールを、互いに8回ほど組み合わせて「同じアールを描くようにカタチを整えた」結果、その結末としてオーバーホール後の絞り環操作が改善されています・・逆に言うなら、最小絞り値「f22」に向かってガシガシとの擦れ感が僅かながら指に伝わるのは「摩耗してしまった黄銅材のラック部分の感触」なのでどうにもなりませんと・・申し上げている次第です(泣)
・・このように当方のオーバーホールは全ての現象/事象に対し100%因果を説明できます。
さらにさらに。それをごまかすために鏡筒周囲の制御系パーツの微調整位置をズラしていたのです (今回のオーバーホール工程で当方が微調整して締め付け固定した位置とは微妙にズレが
生じているから判明する)・・もちろんそれらも当方が当初バラす際にちゃんと元の位置をマーキングしているからこそ「過去メンテナンス時の整備者の仕業」だと明確に指摘できているのです(笑)
すると今度は(笑)、鏡筒回りの制御系パーツの微調整をイジってしまった為にヘリコイドの
駆動にまで影響が現れ、結果的にトルクムラやマウント部の締め付け固定を緩く仕上げたりと、アレもこれものレベルで「ごまかしの整備三昧」だったのが総て判明しました!!!(笑)
ハッキリ言って、この当時のA.Schacht Ulm製オールドレンズをバラして組み上げられる技術スキルを有する整備者なので、決してシロウト整備ではありません(笑)・・おそらくは海外の
プロの整備会社ではないかとみています。
それは遥々海外の何処ぞの国から届いた個体だったからですが(笑)、そもそもまさか外装
パーツが着色されているとは120%の勢いで想定外でした(涙) そう言う事をヤラレてしまうと、信用性を何処に置けば良いのかまで崩れてしまい(泣)、溶剤を使うことすら怖くなってしまいます(怖)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑何とも痛ましい写真でしかありませんが(涙)、レンズ銘板のモデル銘などは、カリカリと引っ掻くとシルバーに剥がれるのですが、19回目をトライしても上手くできないので諦めました(涙)・・申し訳ございません!!!
・・お言葉に甘え黒色着色だけに仕上げています。申し訳ございません!(涙)
上の写真光学系を見ると分かりますが蒸着コーティング層が放つ光彩は「パープルアンバー」です・・だからこその「S-Travegon」表記ですね(涙)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化進行に伴う極薄いクモリすら皆無です。
当初の「❻ 光学系内に極薄いクモリがあり、一部の群に汚れのような箇所が残っている。」や「❿ 光学系のコバ端に反射防止黒色塗料が執拗に厚塗されている。」或いは「⓫ 光学硝子
レンズ格納筒の内壁も一部に反射防止黒色塗料が着色されている。」など全て改善が終わっており、何一つ瑕疵内容のご報告には至っていません(涙)
↑光学系後群もスカッとクリアで極薄いクモリすら皆無です。パッと見で中を覗くと数点の微細な塵/埃が残っているように見えますが、4回の清掃を試しても除去できなかった微細な
点キズです。
↑またマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込み動作は確実で、且つ「A/M切替スイッチ」の設定如何に関わらず絞り羽根開閉が適切で正常です。各絞り値での開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) も簡易検査具で確認済ですが、最小絞り値f22の際に「閉じ方が
多少歪になることが起きる」ものの「f2.8〜f11」は全く以て「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。
最小絞り値「f22」で歪になるのは再現性が50%みたいな感覚で、おそらく1〜2枚の絞り羽根のキーの角度が垂直を維持できていないと推察しますが、当方では調べる方法かありま
せん・・スミマセン(泣)
なお、当初バラす前の時点よりも絞り羽根の綴じ方は「より正六角形に適切化できた」と受け取っています。
↑筐体外装の「距離環」と「絞り環」の2つも塗膜をチェックすると微細なスレ痕が見えていたりするので、おそらく着色されているとみています。
そもそもA.Schacht Ulm製オールドレンズの「黒色メッキ塗色」は「鈍い光沢感の黒色」なのですが、この個体はどう言うワケか「光沢のある黒色」だったので、実は当初バラす前の時点から「???」だったのです(汗)
冒頭問題点の「❸〜❺」と「❼」及び「❾〜⓰」全てが改善済/解消済で、ご報告すべき瑕疵内容が一つもありません(汗) また❻の光学系は前述のとおりスカッとクリアに戻りました。
唯一❽のレンズ銘板の問題だけ・・本当に申し訳ございません!!!(涙)
どんなに❶〜⓰全ての項目がクリアされていても、たったの一つ肝心なレンズ銘板の問題だけで「総て台無し」です(涙)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑距離環を回す際のトルクは、いつものとおり「当方独特なヌメヌメっとしたシットリ感漂う全域に渡り均質なトルク感」に仕上げてあり、且つピント合わせの際は、掴んでいる指の腹に
極僅かなチカラを伝えただけで前後微動が適い、特にこのモデルのピント面のピーク/山がゆっくり訪れる分、軽めの操作性に仕上げてあります。
上の写真は最後昨日気づく前に撮影していた写真なので「2.8の位置がズレたまま」写って
いますが(汗)、お届けする個体はキッチリド真ん中に合わせてあります(汗)
もちろん絞り環操作もクリック感もインジケーターの開閉動作も、何もかも違和感なく小気味良く軽い操作性で絞り羽根開閉動作が適切に行われるのを確認済です (当たり前の話ですが)。
↑いつもどおり当方所有のマウントアダプタではありますが、ちゃんと事前に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 上の写真は中国製のK&F CONCEPT製「M42 → SONY Eマウントアダプタ」に装着し、合わせてマウントアダプタ内側のピン押し
底面を「凹面」にセットした状態で全く問題がない正常動作である事を確認しています。
赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合にそれが干渉しないよう、約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後までネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。
この「K&F CONCEPT製M42マウントアダプタ」に関する解説は、ちゃんと補足解説として『◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタピン押し底面について』で詳しく説明して
いるので、気になる方はご参照下さいませ (別に中国のK&F CONCEPT社からお金を貰って
いるワケではありませんが/皆様の利便性追求を以て解説すると、今度はそのような意味不明
な批判を言ってくる人が居るからウケます)(笑)。
話が前後しますが(汗)、上の写真を見て「絞り環の開放f値2.8のズレが結構気になる」のは
・・当方だけでしょうか???(笑) 気づいてもう一度バラして組み直したので、キッチリと
直せたのは本当に良かったですです (写真は直す前の撮影なので、お届けする個体はキッチリ
直っています)!(汗)
8日目にして再びヘリコイドオスメスにまでバラしている始末ですから・・本当に恥ずかしい
限りです!(恥)
↑この時、マウント内側のピン押し底面が「凹面」でセットされている時、上の写真のとおりマウント面から飛び出ている「絞り連動ピンのフチ部分がかろうじて接触しているだけ」に
なり、パッと見で「ちゃんと整備されていない!」と仰る方も居ましたが(笑)、そもそも絞り連動ピンの穴が空いている場所が決まっているので、整備も何もありません(汗)
むしろこのように僅かに干渉してくれるからこそ「適切なチカラの伝達が適っている」と明言でき、K&F CONCEPT製マウントアダプタに装着して (且つちゃんと凹面でセットして) 絞り
羽根開閉異常が起きるワケがありません(笑)
・・そう言い切る理由が次の写真です。
↑同様今度は日本製のRayqual製「M42 → SαE マウントアダプタ」に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合に、それが干渉しないよう約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後まで
ネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。
↑ところが、この日本製マウントアダプタになると「ピン押し底面の迫り出しが多め/内径が小さ目」である事が影響し、実は絞り連動ピンが最後まで押し込まれてしまい「距離環のトルクが突然重く変わる (全域に渡り重いトルクに変わります)」トラブルに見舞われます(汗)
当然ながらヘリコイドに影響が現れたと言うことは、構造上ブラ下がっている鏡筒回りまで
影響を受けるので「必然的に絞り環操作まで硬く変わる」次第です(涙)
この後に、試しに再びK&F CONCEPT製マウントアダプタのピン押し底面を凹面のまま装着
すると、とても軽いトルク感で絞り環操作も問題ありません(笑)
要は設計上この絞り連動ピンが「必要以上に押し込まれた時にチカラを逃がせない」設計に
なっているのが拙い、と言われれば返答するコトバがありませんが(汗)、そうは言ってもそもそも当時に「この絞り連動ピンの押し込み動作はシャッターボタン押し下げ時に瞬時に押されるだけ」だったのが「M42マウント規格」のフィルムカメラの動き方です。
もっと言うなら、このように最後まで絞り連動ピンを押し込み切ってしまう状況が「当時には起きていなかった (せいぜいプレビューボタンで押し込んで絞り込み測光するくらいの話)」点を鑑みれば、これを整備のせいにされても困ると言うものです(笑)
ちなみに前のほうで写真掲載していたマウント部内部を確認すれば一目瞭然ですが(笑)、この絞り連動ピンをガシッと掴んで抑え込んでいるパーツが居るので(笑)、そもそも必要以上に押し込まれることを想定した設計を採っていません(笑)
逆に言うなら、このように日本製マウントアダプタにムリにネジ込んで装着し使っていると、前述の絞り連動ピンを保持しているパーツが水平を保てなくなり、結果絞り連動ピンの挙動
異常を招き (垂直状態を維持できないから)、それは最終的に「絞り羽根開閉異常」へと繋がるので(笑)、たかが絞り連動ピンの押し込みの問題なのに、自分の整備の不始末をパーツのせいにしてごまかしていると言う人たちが居ますが、とんでもない話です(笑)
「日本製マウントアダプタ信者」が多いので(笑)、当方の整備のせいにしてくる人達/勢力が
一定程度居ますが、現実にこのような物理的な因果から起きている内容なので、どうしようも
ありません(笑)・・まぁ〜せいぜい誹謗中傷したい人はどうぞご勝手に(笑)
↑当レンズによる最近接撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f16」ですが、もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が極僅かに現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました! 素晴らしいオールドレンズをご依頼いただき、とても光栄に思っています(涙)