♦ Ernst Leitz Wetzlar (エルンスト・ライツ・ヴェツラー) Summaron 3.5cm/f3.5《前期型》(L39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
Ernst Leita Wetzlar製広角レンズ・・・・、
Summaron 3.5cm/f3.5《前期型》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のErnst Leitz Wetzlar製広角レンズ「3.5cm/f3.5」の括りで捉えると5本目になりますが、今回の個体「前期型のライカスクリューマウントL39規格」だけでカウントすると僅か2本目です。

先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜りました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!

  ●               

当方は極度のカメラ音痴で (フィルムカメラの事を、その歴史も踏まえて何も知らない)、しかも光学知識が皆無なのに合わせて写真スキルまで皆無なので、あ~だこ~だ語れる義理もありませんが(汗)、それでもこのブログを掲載するのにいろいろとネット上を漁って勉強していくと、少なからず見えてくるモノもあったりします(笑)

それは戦前〜戦後を通し当時主流だったのは、クィックリターンミラーを内包した一眼 (レフ) フィルムカメラではなくて、オールドレンズの後玉のすぐ背後に「レンズシャッター、或いはビハインドシャッター、一部にシャッター羽根の形状からリーフシャッターと呼ばれることもある」機構を装備したレンジファインダーカメラ、或いは一眼フィルムカメラが主流であり
続けていたという背景です。

もっと言えば、確かに戦前時点で既にクィックリターンミラー方式一眼 (レフ) フィルムカメラが発明され製品化に漕ぎ着けましたが、悲劇にもそれら発案と設計/製造をしたのがドイツ系ユダヤ人だった為に、ナチス政権からの迫害を逃れるが為、自身が創設した会社を売却し国外に逃れた事から、一般民生向け製品の市場流通には戦後を待たなければなりませんでした。

従って戦前〜戦後すぐの時期に主流だったのは、オールドレンズの後玉端からフィルム印画紙までの距離が短い=バックフォーカスが短い、光学設計の範疇で捉えなければイケナイと言う背景です(汗)

逆に言うなら、それらフィルムカメラ側の物理的な背景とは別に、当時標準レンズの焦点距離は「人の目で見たがままの自然な画角」として捉えられていた「焦点距離40㎜45㎜」辺りであった事も、当時のありのままの事実である点をちゃんと鑑みなければイケナイと思うのです(汗)・・今ドキの捉え方たる「焦点距離50㎜」辺りを標準レンズ域と捉えたのは、実は戦後まさにライカカメラと共に登場してきて広く世界中に受け入れられていった、ライカ製オールドレンズ達の存在から初めて「50㎜を標準レンズと呼ぶようになった」のが正しい変遷のようです。

このような捉え方に立った時、今回扱ったモデルも含めた戦後すぐに登場してきたライツ
オールドレンズ達の中で、特に広角レンズ域のモデルについて、まさに前述のフィルムカメラ側物理的背景から「標準レンズ域光学設計の延長線上で広角レンズ域光学設計を考案していた」点に着目する必要があると・・強く、本当に強く思ふので御座います(笑)

↑上の光学系構成図はいずれも当時のErnst Leitz Wetzlar製広角レンズで、左端から順に「Hektor 2.8cm/f6.3」左端から2つ目「Elmar 3.5cm/f3.5」そして今回扱ったモデル「Summaron 3.5cm/f3.5」の、それぞれネット上の構成図を当方の手によりトレースした
構成図です。

一方右端だけが今回扱った個体のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

するとご覧のようにいずれも製品としては広角レンズ域ながら、光学設計は前述のとおり標準レンズ域の既存光学系を踏襲しているのが分かります。

Hektor 2.8cm/f6.33群5枚ヘクトール型
Elmar 3.5cm/f3.5:3群4枚テッサー型
Summar 3.5cm/f3.5:4群6枚ダブルガウス型

この中で、例えば一番左端の「Hektor 2.8cm/f6.3」は、ネット上解説ではトリプレット型の変形版との解説が散見します。確かに3群3枚のトリプレット型光学系は空中に単独に3枚の光学硝子レンズを配し、それぞれ凸凹凸で配置する事でザイデルの5収差 (球面収差/コマ収差/非点収差/像面収差/歪曲収差) の改善を期待できる点で優れた光学設計です。然し「Hektor 2.8cm/f6.3」の光学系は第1群前玉と第3群の後玉が、互いに2枚の光学硝子レンズを接着した貼り合わせレンズとして設計しています。すると接着面 (半径境界面) が介在するとなれば収差改善も含め、反射率と屈折率双方の向上を狙えるのではないかと考え光学知識が皆無な当方はむしろ「Anastigmat (アナスティグマート)」光学系を変形してきた光学設計では
ないかとも捉えています(汗)

2つ目「Elmar 3.5cm/f3.5」は間違いなく3群4枚の典型的なテッサー型構成で、今回扱ったモデル「Summaron 3.5cm/f3.5」も典型的な4群6枚ダブルガウス型構成です。

特に一番右端の今回扱った個体をバラした際に計測したトレース図は、明らかに絞りユニットを挟んだ両側面の曲り率が違っていて、ネット上で掲載されている構成図に比べると「相当に緩やかな曲り率」でした(汗)・・それもダブルガウス型構成との捉え方を踏まえると、拡散方向への屈折率を稼ぐ必要があるとも考えているので納得できてしまいます(笑)

そもそも標準レンズ域の光学設計を流用して、ムリヤリ広角レンズ域まで延伸させているワケですから(笑)、その意味で本格的な広角レンズ域の光学設計は、1950年に世界初として登場したフランスは老舗の光学メーカーP. ANGENIEUX PARIS社製「RETROFOCUS TYOR R1 35mm/f2.5」の「レトロフォーカス型光学設計」を待たなければならず、相当苦労しながら設計していたのではないかとも捉えています(汗)

人の目で見た自然な焦点距離と画角で捉えた「焦点距離40㎜45㎜」と言う、それこそ準広角レンズ域と背中合わせの如く受け取ってしまいそうな要素と、合わせて「標準レンズ域の光学設計の流用」との厳しい環境下から見た時、例えばネット上でよく言われている「この頃の広角レンズは周辺減光が酷い」或いは「白黒写真では素晴らしい写真を残すがカラー写真だと独特な表現性になる」などとの評価も、まさに的を射ていると言うか、むしろ「それらはまるで必然的な結末でしかない」・・とも当方は捉えているので御座います(笑)

従って、例えば今回扱った「Summaron 3.5cm/f3.5」の写りを述べるなら、まさに白黒写真撮影でこそその真価を発揮しつつも、カラー撮影になると途端に「???」な発色性へと変化してしまう「確かに一種独特な表現性」と言うのは、実はカラー成分を254階調のグレースケール世界に置き換える時、その境界=カラー成分を振り分ける境界は、ある特定の波長で
コロッと変調してしまう事も十分考えられるので、例えば白黒写真ならとても滑らかで、然し確かにグラデーションを残しつつ写るのに、同じシ~ンなのにカラー写真になると途端に変な色合いに変わってしまい、それこそグラデーションすら違えてしまう・・などと言った現象も説明が付きそうです(汗)

従ってオールドレンズを語る時には「光学設計」を鑑みて捉えるクセを持つほうが、より楽しく語れそうな気がしますし(笑)、もっと言えばそのモデルが世に送り出された「当時の背景」などにまで気配りできれば、きっとさらに慈しみの想いも増して、それはそれでまた趣深く
ロマンに浸れるのではないかと思ったりもしますね(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はSummaron 3.5cm/f3.5《前期型》(L39)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。レンズ銘板の「Ernst Leitz Wetzlar」の刻印文字と「Summaron f=3.5cm 1:3.5」刻印の向きがひっくり返っている理由が「???」なのですが(笑)、きっとライカ製品に詳しい方々には意外とポピュラーなウンチクがあるのでしょう (ライカに関する情報量が多すぎてちょっと調べる気がしません)(笑)

ご依頼者様が一番気にしていらした「光学系第2群と第3群のどちらかに残る薄いクモリ」と言うのは、バラす前時点に光学系内をLEDしつつも覗き込むと「第3群の貼り合わせレンズ、外周から中心に向かって残っている薄いクモリ」である事が判明しました (実際にバラしてから第3群を単独で調べても同じだった)。

然し実際は第2群の貼り合わせレンズにも極々薄いクモリが残っており、さすがに単独で取り出してチェックしなければ判別できないレベルでした(汗)

はたしてその薄いクモリの原因とは・・何ぞや???!!!

↑上の写真は光学系第3群の光学硝子レンズコバ端から剥がれ落ちていた、過去メンテナンス時の「反射防止黒色塗料」の一部です。当方が剥がし取ったのではなく「光学系内で既に剥がれて落ちている状態だった」ので、その証拠写真も撮影したので後で解説します(汗)

逆に言うなら、既に光学硝子レンズのコバ端は「剥き出し状態」になっているとも言い替えられます (何故なら上の写真の如く塗料が丸ごと剥がれているから)。

↑上の写真は、当初バラし始めている途中で撮影していますが、光学系第1群を取り出してレンズ銘板を外した状態を撮っています (取り外したレンズ銘板の環/リング/輪っかは、左隣に
ヒックリ返して並べています
)。

すると赤色矢印で指し示している箇所を見ると、例えば左側のレンズ銘板裏側には「ドロドロっとした二重線が残っている」のが写っています。同様右側の鏡胴本体は距離環のトップ部分に赤色矢印で指し示しているとおり、やはり「ドロドロとした褐色系の油分が残っている」のも明白です。

・・実はこれらは全て過去メンテナンス時に塗布された「潤滑剤」です(涙)

決してグリースや「潤滑油」ではなくて「潤滑剤」なので、相応に粘性をもっていてヌルヌル
ドロドロです (潤滑油の場合はほぼ液体に近い状態まで粘性が低く流動化している状況)。

そしてグリーン色の矢印で指し示している箇所は、光学系の格納筒内部ですが、やはり過去
メンテナンス時に「反射防止黒色塗料」が厚塗されています。

↑同様当初バラし始めている途中の撮影です。今度は後群側方向から撮影していますが、光学系第4群後玉を取り出してから「直進キー環/リング/輪っか」を取り外した状態の撮影です。

同じように赤色矢印で指し示している箇所は「潤滑剤」が相応な量で残っている状況です。

もちろんグリーン色の矢印で指し示している箇所も光学系ですが「反射防止黒色塗料」が、
やはり厚塗りです(汗)

そして冒頭のほうで掲載した「剥がれ落ちた反射防止黒色塗料の塊」の一部がちゃんと見えて写っているのをブルー色の矢印で指し示しています。

当初バラす前のチェック時点で、後玉側方向から覗き込んだ時に「円形であるべき縁の一部が欠けている」と焦ったのですが、そう見えていたのがこの部分でした (当初バラす前時点でLED光照射して光学系内を覗き込んでいるので明確に見えるのです)(汗)

もっと言うなら、上の写真は後玉側方向から撮影しているので、この見えている剥がれ落ちた部分は「光に反射して写っている」とも言えますから、例え「反射防止黒色塗料」としても、このように光る時は光っているのです(笑)

よく「反射防止黒色塗料なら絶対に反射しないと信じ切っている人達/勢力が居ますが、確かに「99.98%の反射を防ぐ漆黒の黒色塗料」であれば、例え光の入射で反射してもこのように輝きませんが、一般的な「反射防止黒色塗料」はそんな高い率で反射を防いでいるワケでは決してありません (特に迷光迷光!と大騒ぎしている人達/勢力ほど反射防止黒色塗料信者が多い/オールドレンズの光学系内に塗ったくッて大満足している)(笑)

当方などは、むしろこのように「何でもかんでも反射防止黒色塗料を塗ったくれば良い」との概念と「その行為」自体は、オールドレンズ達の適正な光路長確保を阻害する要因と受け止めているので(怖)、当方のオーバーホール/修理工程に於いては「最低限レベルでしか反射防止
黒色塗料は塗らない
」のを、このブログでも何度も何度も、本当に執拗に告知しています(汗)

例えば、光学硝子レンズのコバ端に厚塗されてしまった「反射防止黒色塗料」のせいで、或いは光学硝子レンズ格納筒の内壁に着色されしまったが為に「結果としてそれら光学硝子レンズが必要な位置に格納されていない」状況に於いて、完全解体する前の実写確認の際に、何となく甘かったピント面がオーバーホール/修理完了後には「より鋭いピント面に変わった (本来の状況に戻った)」などと言う実証確認もちゃんと執っています。実の処、これら厚塗されていた「反射防止黒色塗料を除去しまくったからピント面の鋭さ感が改善できた」とも言い替えられるのです(汗)・・だからこそ「反射防止黒色塗料を塗ったくる行為」は、むしろ光学系光路長に対する「阻害要因」にしか、当方には受け取れないのです(汗)

特に当方などにすれば、それら「迷光」のレベルは、自身で確認する手立てがなく (検査
機械設備がない
)(汗)、或いは光学設計面でどうして設計者自らが考慮していないと指摘できるのか/断言できてしまうのか???・・その根拠すら全く以て思い浮かびません(汗)

その意味で「迷光の度合いをちゃんと確認できる能力を持つ人達が羨ましい」のが、実の処
光学知識皆無な当方には・・ホンネだったりしますね(笑)

人工衛星の光学製品内に使われている漆黒塗料は「99.9999%以下」と言う絶大な率を
示す特殊塗料ですから、それでも星の波長を捉えるデータは必ずコンピューター処理で補正が必要らしく、相当に厳密な波長成分の捉え方をしているのだとオドロキを隠せません(汗)

・・コントラスト低下を防ぐ意味合いと光路長が担保できない不始末との天秤状況!(笑)

なお、オレンジ色の矢印で指し示している「」のマーキングは、当方が刻み込んだものではありません(汗)

↑同様前の掲載写真で赤色矢印で指し示していた「潤滑剤」ですが、上の写真のパーツは「絞り環」です(笑)・・相当に「茶褐色に変質している状況」なのが分かります(汗)

↑当初バラしている途中の撮影です。ヘリコイド群を外しているところを撮っていますが、赤色矢印で指し示しているのは「潤滑剤」です。試しに指で拭って指の腹でズリズリ感触を確かめても分かりますが (昔は本当にヤッていたが)(笑)、相当劣化が進行している為「粘性が高い」のと合わせて、パーツ金属材の「黄鋼材摩耗粉」が相当混ざっているのがザリザリ感で分かります(汗)

またグリーン色の矢印で指し示している箇所には「反射防止黒色塗料」が、やはり厚塗して
あります。

これらの事実から、ご依頼者様からのご案内では「OH済品をオークション購入した」との事でしたが、その「OH (オーバーホール)」した時期とは「いったいいつの頃を指すのか?」と言う疑念が湧き上がりました(汗)

当方の経験上「おそらく10年以上前の話」と受け取れそうです(汗)・・と言うのも、当方がオーバーホール作業を始めてから既に13年が経ちましたが、ちゃんと自分が過去に整備した個体をヤフオク!で発見した際は、落札して手に入れて確認しているからです。

つまりこのブログで散々執拗にあ~だこ~だ当方のオーバーホール作業について喧伝している内容が(笑)、本当にその言説のとおりなのか否か、それは「まさに自分が整備した個体の経年劣化進行をチェックしない限り担保されない」とも明確に指摘でき、ならばヤフオク!で流通しているのを発見した「自身の整備個体」を入手すれば、大凡の経年劣化進行を確認できると言う理論です(汗)

今までの処「8年前までの整備個体について再入手し内部状況を確認済」なので、そのくらい時間経過すると内部がどのように変質しているのかを知っているのです。

もちろん当方が主体的に使っているのは「黄褐色系グリース」ばかりなので「潤滑油/潤滑剤」の類ではありませんが、特に金属材の磨耗状況は十分に経年劣化進行に伴い確認が適います。

それらにプラスして、当方が普段オーバーホール/修理しているオールドレンズ達を完全解体した際、それら個体が過去メンテナンスされていた証拠の一つとして「白色系グリース」の塗布を挙げているワケで(笑)、するととても10年間塗布したヘリコイドグリースが変質せずに残っている確証/査証を今までに自らの目と指の感触で知り得た事実が無いと述べている次第です。

端的に指摘するなら、凡そ早ければ1年〜長くても5年ほどで「濃いグレー状に変質」してしまっているのを、今までに数え切れないほど確認してきていますし、当初塗布した時は確かに「白色系グリースなのでホワイト色」だったグリースが、どうして「濃いグレー状に変質」してしまったのかと調べれば、無色透明の溶剤の中に浸した時「サラサラとアルミ合金材の微細な摩耗粉が底に沈殿するから (或いは黄鋼材パーツなら黄金色の微細な摩耗粉がやはり沈殿する)」事実を以て「ヘリコイドの金属材を経年で摩耗させている」と指摘しているワケです(笑)

それでも信用/信頼が皆無な当方が述べている内容なので(笑)・・ちゃんとした検証を示したらどうなんだ???・・と言われれば仕方ないので例えばアルミ板を使って「白色系グリース」と「黄褐色系グリース」を綿棒でグリグリやってみる実験なども行い検証しています (当方の
言説の信憑性を補強するようなレベルの検証には到底至っていない
)(笑)

検証白色系グリースはヘリコイドのネジ山を摩耗しているかにて実際の検証過程を載せています (実は幼稚な検証でとても恥ずかしい/もっと言えばそもそもヘリコイドのアルミ合金材とは検証に使っているアルミ板の合金配合レベルが、全くの別モノなのは歴然とした事実だし!/第一、グリースの成分や配合に添加剤なども全く信憑性が無いままだったりする)(汗)

話を戻すと、このような話からも考察を進めた時、オークションの出品ページなどを見るにつけ「整備済」とか「OH済」を謳う出品をよく見かけますが、その整備作業はいったい何時のタイミングなのかがとても不明瞭と感じるワケです(笑)

今回の個体を例にするなら「とてもこの内部状況を以てして、近年のOH済品とは受け入れられない」のは、普通一般的に捉えても人情ではないかと考えます。

当方がそう述べると、今度は「内部状況など確認のしようがない!」との反論が来るのでしょうが(笑)、そう言うなら「〇年前にOH済品をカメラ店から購入した」と具体的に記載すれば「出品者と落札者の齟齬が限りなく低減できる」と考えるのは・・自然な摂理ではありませんか???(笑)・・と言っているのです!

・・そう言う配慮が今ドキのオークションにはあまりにも欠如しすぎていますね(涙)

↑上の写真は完全解体した後に、溶剤で洗浄しただけの状態で「黄鋼材パーツだけを並べた」撮影です(笑)

黄鋼材」なので、本来製産時点の真新しい時は、冒頭で掲載した「完全解体の全景写真」に並んでいるピッカピカの黄金色だったりします(笑)

それら並んでいる「黄鋼材パーツ」は、いずれも当方の手によるDOHを経てピッカピカの黄金色に光り輝いていますが(笑)、決して光り輝かせる目的で処置している話ではありません(笑)・・実のところ、ネット上の一部サイトで、当方のこのような処置に対して「どうせ内部のパーツなんだからピカピカに磨いても意味がない」との批判が見られますが、な〜んにも
考えていないとしか言いようがありません(笑)

黄鋼材の表層面に生じてしまった経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビを可能な限り除去して「構成パーツの一つ一つを製産時点に限りなく近づける」のが最終目的です。そうする事で「鏡胴内部に必要外のグリースまで含めた潤滑剤の類を低減できる」ことが重要であり、それは結果として経年劣化進行に伴う揮発油成分により引き留められた「水分から酸化/腐食/サビが促される」事を避ける目的だからです(笑)

そのように述べると、今度は「油は水を引き寄せず弾くのも知らないのか???」と言って
きますが(笑)、とんでもありません。少しは調べて勉強するべきですね (原理です)(笑)

実際上の写真に並べた「黄鋼材パーツ」は溶剤洗浄する前「劣化した潤滑剤でドロドロ状態」だったにもかかわらず、ご覧のように既に「焦げ茶色」に酸化/腐食/サビが進行しています。

一部に黄金色の部分が残っているのは「その箇所に別の黄鋼材パーツが入っていて互いに接触していたから」とも指摘でき、特にヘリコイドのオスメス同士なら、皆様も理解できるのではないでしょうか???(笑)

なお赤色矢印で指し示している箇所には、既に溶剤による洗浄が終わっているもかかわらず残っている「おそらく製産時点に塗られていたオリジナルの純正グリース」が、既に硬質化してカピカピに固まっています(汗)

つまりこれらの事実から「過去メンテナンス時にグリースの上から潤滑剤を塗り足したために
グリースが端に追いやられていった
」と言う、経年の流れも見えてきます。

例えば「白色系グリース」を塗り足しても同じ状況に至るので「潤滑剤と一括りに捉えようとしても、そもそも成分も配合も添加剤も違う」ので「黄褐色系グリース/白色系グリース/潤滑剤/潤滑油」を一束に括って混入させて使い切ってしまう概念自体が「異常ではないか?!」とこのブログで執拗に、何度も何度も述べているのです。

ハッキリ言って、赤色矢印で指し示している箇所に残っているオリジナルであろうグリースの塊は、マイナスドライバーを使いガシガシと擦って削り取るしか手がありません (溶剤如きで
溶けない
)(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

ご依頼者様からご案内があった、ご依頼内容そのモノでもある「光学系内第2群と第3群の
薄いクモリ
」は、結局ところ「過去メンテナンス時に塗布された反射防止黒色塗料のインク
成分がコーティング層と反応してしまっていた
」ので、光学系の清掃だけでは完全除去できず
当方の手により「光学硝子研磨」処置を施してようやく除去が適いました(涙)

逆に言うなら「反射防止黒色塗料を塗ると言う事は、経年の中でそう言う懸念すら高めてしまっている」ことも、是非とも視野に入れつつ整備して頂きたいものだと・・強く、本当に強く申し上げる次第で御座いますです、ハイ!

もちろん当方でも最低限必要な箇所には「反射防止黒色塗料」を塗布しますが、それは限り
なく光学硝子レンズの蒸着コーティング層に影響を与えない塗膜を、薄膜で塗布しています。
(工業用光学硝子精製会社様での取材時にご教授頂いた薬剤を使用)

↑光学系後群側もスカッとクリアになり極薄いクモリすら皆無です。但し後玉裏面側にもインク成分が残っていたので (その直前の第3群裏面側に厚塗してあった分、さらに後玉裏面側の周りにも塗布されていた分の影響か???)、その除去作業時に微かなコーティング層のヘア
ラインキズ (微細な線状ハガレ) が数本残っています。

↑当初は「OH済品」と言いながら、どう言うワケか油染みがにじみ出ていた(笑)、10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環のクリック感共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、距離環を回す際は、当方独自のヌメヌメっとしたシットリ感漂うトルク感に仕上がっており、全域に渡り均質なトルク感を維持しています。特にこのモデルのピントのピーク/山は「まだかまだかとゆっくり訪れる」ので
その前後動も軽い操作性で微動できるよう配慮してあります。

また当初バラす前にチェックしたピント面の解像感よりも、極僅かですが解像感が増したような印象を抱きます(笑)

↑ご報告する瑕疵内容は、前述の後玉裏面側のコーティング層の微細なヘアラインキズ (コーティング層なのでLED光照射で視認できません) 数本が残っています。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最近接撮影距離1m付近での開放実写です。開放でもピント面の解像度は相当に明確に視認できると言う素晴らしい光学設計です!(驚)

ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しています。

↑f値「f8」に上がっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」での撮影です。もう既に絞り羽根が相当閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影ですが・・実は、この実写で一つオドロキを隠せないな事実が
ありました!(驚)

上の実写で、背景の模型のお城「左側下の穴の奥が、背景紙まで明確に写っている」ワケで、焦点距離:35㎜で、しかも「f3.5」で、さらに「開放時からハッキリと解像して凹凸すら
残している
」と言う・・まさに脅威としか言いようがない光学設計です!(驚)

それは確かに最近接撮影距離:1mである点が影響しているにしても、その明るさまで、或いは背景紙の凹凸までを開放実写から各絞り値で一貫して解像して残せるとは、必ずしもどんなオールドレンズでも該当しません!(驚)

・・ハッキリ言って、このレベルは本当に稀にしか見られないモデルであると言えます。

素晴らしい!(涙) 今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日
梱包し発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。