♦ Sankyo Kohki (三協光機) KOMURA 105mm/f2.5《前期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク!出品するモデルは、国産は
三協光機製中望遠レンズ・・・・、
KOMURA 105mm/f2.5《前期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

ご落札頂きました!・・ありがとう御座います!(涙)
とても助かります・・。

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時の三協光機製中望遠レンズ「105mm」の括りで捉えると16本目にあたりますが、今回扱った開放f値「f2.5モデル」だけでカウントすると4本目になり、且つその中で「前期型」は初めてです。

前回の扱いが2019年でしたが、その時の個体は「後期型」でした。だいぶ時間が空いてしまいましたが、何しろ光学系の状態が良くて安心して手に入れられる個体の流通数は案外少なめで、今回扱った個体も「第2群貼り合わせレンズは完璧に全面に渡りクモリ状態」でした。

実は数年前に調達していたのですが、光学系のクモリが酷くそのままジャンク堕ちしてしまったままになっていました(泣) 今回たまたまジャンク箱を漁っていたら発見して(笑)、全面クモリ状態の光学系第2群が貼り合わせレンズである事を知り、試しに剥がしてみました。

大概の場合、バルサム切れしていた場合は「バルサム剤が剥がれて浮いてしまっている箇所/領域の蒸着コーティング層酸化は進んでしまい、そのまま変質してしまうのでクモリは除去できない」のですが、今回改めて試しに剥がしてみたら中心部のクモリが除去できた為にオーバーホールする気持ちになりました(笑)

また当時の三協光機製モデルの中で中望遠レンズの多くは「鏡胴二分割式」の設計を採っていることが多いものの、鏡胴「前部」と「後部」或いはヘリコイドオスメスとの関係性にムリがあったりする事が多く、実際今回の個体もバラしてみると「過去メンテナンス時に無限遠が出ていない (大幅なアンダーインフ状態) 個体だったようで、諦めて途中で整備を切り上げて誤魔化して仕上げていた」ようです(泣)

おそらく相当な技術スキルを持つ整備者でない限り、今回の個体をちゃんと適切に微調整を施して組み上げられるか否かは心もとないと思われます(泣)

  ●               

1958年に先に登場していた「105mm/f2.8」後継モデルとして1964年に発売されていますが、実は先代の「105mm/f2.8」の光学系設計を引き継がずに、上位格モデルとしてさらに後の1960年に発売された「105mm/f2」からの光学設計を採り入れています。

ここがポイントで、その描写性のポテンシャルには「105mm/f2.8」とは全く異なるダイナミックレンジの広さに、とても滑らかなアウトフォーカス部の滲み方の傾向に、単なる後継モデルとしての位置付けではなかった事が読み
取れると捉えています。

つまり中望遠レンズ105mm域の戦略として、フラグシップモデルの「105mm/f2」に対し、その下に今回のモデル「105mm/f2.5」を配して (f2.8モデルの生産をやめて) 廉価版モデル105mm/f3.5」へと繋げる三協光機の意図が汲み取れます。

↑上の写真は、今回せっかく光学系第2群の貼り合わせレンズを剥がして清掃したので、それらの計測をデジタルノギスを使って行い、より正確性の高い光学系構成図のトレースにトライしています。

その時に並べた光学硝子レンズ群で、上段左端から光学系第1群前玉~第2群、下段で第3群と第4群です。赤色矢印で指し示している方向が前玉の露出面を表しますが、下段右端の第4群後玉だけは赤色矢印で指し示している方向が「後玉の露出面方向」を意味しています。

↑同様、同じ順番のままですが、今度は各ガラスレンズをひっくり返して裏面側を写真上方向に向けて撮っています。従って赤色矢印で指し示している方向が前玉の露出面側の向きになりますが、同様最後の後玉だけは向きが違うので「後玉露出面方向を赤色矢印で指し示している」状況です。

何しろ、当方が光学系構成図をこのブログに載せると「公然と平気でウソを拡散させている」との誹謗中傷が某有名処サイトのコメント欄に載せられてしまうので、いちいちこのように「証拠写真」を撮らないとイケナイようです(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

偏心
光学系内で上下左右で同じように収差の影響が現れない傾いた入射光の収束状態を指す

迷光
光学系内で必要外の反射により適正な入射光に対して悪影響を及ぼす乱れた反射光

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

すると実際に光学系第2群の貼り合わせレンズまで剥がしてから、今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図が右構成図です。

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はKOMURA 105mm/f2.5《後期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。たいていの場合で市場流通品個体の多くに「絞り羽根の油染み」が現れている事が多いのですが、その最大の理由が「絞り羽根のキーの作り方」で、容易に取り外して清掃できないヤバイ設計なのが大きく影響しています。

↑冒頭の完全解体した時の全景写真でも中央の上の写真のカタチのまま「16枚の絞り羽根を広げたまま」置いて撮影しています(笑)・・もちろん外そうとすれば簡単に外せるのですが、実は外す際によほど注意しないと「キーとして使ってる微細な羽根が根本からポロッと折れてしまう」懸念が高く、よほど何か理由がない限りは上の写真のように各絞り羽根を広げて清掃するほうが無難です(怖)

左写真はその各絞り羽根の表裏に用意されている「キーの役目をする為にプレッシング時に折り曲げられている微細な羽根」を拡大撮影しています。

オールドレンズの絞り羽根は、戦前から多くの場合で「絞り羽根材の板金をプレッシングして、まるで枝豆状にブラブラとぶら下がった状態で制作している」手法を採っているので、そのプレッシングして
絞り羽根のカタチを切り抜く際にこの当時の三協光機では「キーの箇所に十字の切込みを入れて反対方向に折り曲げる事で4枚の微細な羽根を用意してキーの代用とした」設計を採っています。

さらにもっと正確に説明するなら「この絞り羽根を組立工程の中で差し込む際、反対側この微細な羽根自体をさらに折り曲げて容易に脱落しないよう配慮して組み込んでいた」為に、その「生産時点の状態を維持できていれば上の写真のように各絞り羽根が脱落せずに広げられる」次第です。

実はこれをちゃんと確認しつつオーバーホール工程を進めないと、例えば16枚の絞り羽根のうち数枚の絞り羽根に用意されている「キー代用の微細な羽根」が折れていた場合、4枚存在すべき微細な羽根のうち「3枚残っていればキーの代用として機能を果たせる」ものの、もしも「2枚しか残っていない場合は多くの個体でキーの役目を果たしていない」のを今までに数多く確認してきました(泣)

これは当初生産時点が微細な羽根は4枚ですから、例えば対向で2枚残っていれば「キーの代用として役目を果たせそう」と考えるのですが、問題なのは元々がプレッシング時に「十字の形に切り込みを入れてプレスしている」為に「対向で2枚残っていても三角形のカタチなので絞り羽根が角度を変更する際にズレが生じる」為に、正しく本来のキーとしての代役を務められていないのです(涙)

従って「本来理論上は対向の2枚さえ残っていれば機能するハズが3枚残っていなければ適切な絞り羽根の角度で制御できない」と言うのが、当方が今までの13年間で結論づけしたこのれ三協光機製モデルの「羽根をキーの代用とした設計の問題点」或いは「確認必須事項」と言い替えても良いほどです(泣)

従って、当方のオーバーホール工程では「必ず上の写真のように完全に16枚全てを広げて逐一絞り羽根の動きを確認する」のが必須作業として入っています(泣)

それを過去メンテナンス時の整備者は、上の写真のようにいちいち広げてまで確認しないので、経年で絞り羽根の傾く角度にズレが生じ始めて「キレイな真円の円形絞りで16枚の絞り羽根が閉じていかない」話に至ります(笑)

・・これが「原理原則」なのであって、気づくか否かは整備者の技術スキルにかかっている。

従って今回扱った個体も「無事にキレイに真円の円形絞りで閉じていく動き方を維持 (つまり生産時点の動き方を維持していると明言できる)」ワケですね(笑)

もしも今このブログを読んでいる人が「自らがオールドレンズの整備者」ならば、いったいどんだけの数の人がこの点について、ちゃんと気づけたのか自らに問い正して頂きたいですね(笑)・・単にバラして逆手順で組み立てれば良いと言う次元の話をしているのでは・・ありませんね!(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持している個体です。但し、残念ながら光学系第2群の貼り合わせレンズは、外周から内側に向かって「LED光照射で視認できる約4㎜幅くらいに非常に薄いクモリが残っている」状況です (但し写真への影響は皆無なレベルと推定する)。

これらの極薄いクモリは、そもそもバラす前の時点でバルサム切れでバルサム剤に浮きが生じていた領域と一致しており、浮いていた領域の蒸着コーティング層が経年劣化進行に伴い酸化が侵攻したものと判定を下しています (従って清掃では一切除去できない/今回のオーバーホール工程の中でガラス研磨して僅かに低減できている)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も透明度が高い状態を維持していますが、同様外周から内側方向に向かって「凡そ3㎜幅くらいに極薄いクモリの領域が残っている」状況です(但し写真への影響は皆無なレベルと推定する)。オーバーホール工程の中でガラス研磨を試していますが低減もできていません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:19点、目立つ点キズ:15点
後群内:16点、目立つ点キズ:15点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内極微細な薄い最大9mm長数本あり)
※但し実際はコーティング面の微細な線状ハガレの為物理的に光学ガラス面のキズは光に翳して透過させも視認できません(反射で視認できるレベル)。
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(光学系内に微細な気泡が複数あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(第2群貼り合わせレンズの外周に内側方向に向かって約4mmほどコーティング層経年劣化進行に伴う極薄いクモリがあり、同様第4群後玉外周にも約3mmほどの内側方向に向けた経年劣化進行に伴う極薄いクモリがありますが、言われて確認すれば気づくレベルで写真に影響しません。第2群貼り合わせレンズはバルサム切れが生じていた為、一旦剥がして再接着しています。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・開放f値で撮影すると多少ピント面の鋭さが甘い印象。

↑16枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り感や絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。パッと見で油染みが残っているように「絞り羽根の金属材の色が紫色っぽく見える場合がある」のは、清掃したために地が現れているからです。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。
距離環を回すとヘリコイドネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・基準「▲」マーカーと絞り環マーカー「●」が縦の方向で一直線上に並んでいません。またマウントアダプタにネジ込んだ時、基準「▲」マーカーの位置が真上に来ず、15時辺りの位置でネジ込みが止まりますが、この位置が最も鋭いピント面に至る為この位置で組み上げています(変更するとオーバーインフ量増大やアンダーインフに堕ちてしまいます)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『KOMURA 105mm/f2.5《前期型》(M42)』
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)

絞り羽根がメチャクチャにヤバい設計なのと、合わせて鏡胴「前部/後部」の設計上の問題も含んでいるので、基本的にめったに扱う気持ちがありません(笑) たまたまジャンク箱に転がっていたので扱いましたが、次回の予定はほぼ皆無です (それほど整備しにくいモデルだから)(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑このモデルはプリセット絞り方式を採り入れているので、その解説をします。よくプロの写真家でも「プリセット絞り環と絞り環の位置を間違えて認識」している場合があるので (それでプロの写真家かョ)(笑)、正しい捉え方を解説します。

基本的に「プリセット絞り方式のモデルは環/リング/輪っかが2種類装備している事が多い」為に、どちらがどの環/リング/輪っかなのかの認識を違えると「意味不明な話に堕ちる」次第です(笑)

上側の環/リング/輪っかが「プリセット絞り環」であり、下側が「絞り環」です・・どうしてそれが正しいと明言できるのかと言えば「一にも二にも撮影時の体の動きに適合しているから」であり、詰る処、いちいち覚える必要がないからです(笑)

プリセット絞り環/絞り環共用の基準「●」マーカーが刻印されています。

↑その基準「●」マーカーの位置に来ているのが「設定されている状況/現状」なのが大前提です。すると上の写真を見れば基準「●」マーカーの位置にプリセット絞り環の「f2.5」が来ているので「セットしているプリセット絞り値はf2.5」なのが分かります。

さらに下側「絞り環」の刻印絞り値も「f2.5が来ている」ので「現在絞り羽根は完全開放している状況」なのが、いちいち光学系内を覗かなくても分かります(笑)

ではここから「今回はプリセット絞り値をf5.6に設定して撮影に臨む場合」を解説していきます。まずはブルー色の矢印❶のように上側の「プリセット絞り環」を回します。

↑こんな感じで基準「●」マーカー位置に上側の「プリセット絞り環」がカチカチとクリック感を伴いつつ回って「設定絞り値f5.6」を合わせます (赤色矢印)。この時、下側の「絞り環」は触っていないので「無事f2.5にの完全開放のまま」であるのをグリーン色の矢印で指し示しています。

ここから距離環を回してピント合わせを行い、ピント合わせが終わったらいよいよ撮影なので絞り羽根を設定絞り値まで閉じます・・ブルー色の矢印❷方向に下側の「絞り環」だけを回します。

↑純粋に下側の「絞り環」は既に上側の「プリセット絞り環でプリセット絞り値を設定済 (赤色矢印) だからただ回し切るだけでOKですね(笑)

するとグリーン色の矢印で指し示したように回し切ると「f5.6で絞り環は停止する」ので純粋に回し切るだけで良い話になります(笑) ここがポイントで、ちゃんと正しく「どちらがプリセット絞り環なのか絞り環なのか」が理解できていれば一切覚える必要がありません。

・・撮影する時のカラダの動き方そのままに自然に操作すれば良いだけです(笑)

撮影が終わったら、ここでは最初の状態にプリセット絞り値を戻すとします。現在絞り羽根が閉じて基準「●」マーカー位置にf5.6が両方共来ているので、それを開放状態に戻す作業をします。

ブルー色の矢印❸のように先ずは「絞り環を回す」と絞り羽根は完全開放になりますね(笑)

↑基準「●」マーカーの位置に下側の「絞り環」刻印開放f値「f2.5」が来たので「光学系内を覗かずとも絞り羽根は完全開放状態」です (グリーン色の矢印)(笑)

しかし上側の「プリセット絞り環」はまだ設定プリセット絞り値が「f5.6」のまま (赤色矢印) なので、これを完全解法にセットします・・ブルー色の矢印❹の方向に「プリセット絞り環」を回せば設定プリセット絞り地が開放に戻ります。

↑結局一番最初の状態に戻っただけの話ですが、ちゃんと基準「●」マーカー位置に「プリセット絞り環も絞り環も両方共f2.5が来ている」ので、現在絞り羽根は完全開放状態にあり、且つ「絞り環は動かない状態」なのが「プリセット絞り環を見ただけで分かる」・・何故なら、プリセット絞り値が「f2.5」だから、動くハズがないのです(笑)

これが正しい「プリセット絞り方式の道理」てあり、いろいろあ~だこ~だ考えたり覚えたりせずとも(笑)、単に撮影時のカラダの動き方に沿えば良いだけの話です(笑)

それは例えロシアンレンズとしても全く同じなので、ロシアンレンズの場合は「反対の動き方をする」などと難しく捉えているプロの写真家が居ますが・・とんでもないです (そういうの恥ずかしいですね)。

↑上の写真は当方所有の中国製、K&F CONCEPT製M42 → SONY Eマウントアダプタ」に装着した写真ですが、ご覧のように「プリセット絞り環/絞り環用基準●マーカー」の位置 (赤色矢印) と、鏡胴指標値の基準「」マーカーの位置 (グリーン色の矢印) とが一致せずにズレています。

さらにそれら上下の基準マーカーの位置は「マウントアダプタの真上の位置からもズレている」のをブルー色の矢印で指し示しています。同一ライン状にまとめたかったのですが、今回扱った個体はそれができない設計を採っていました(泣)・・従ってこの点は事前告知しているのでクレーム対象としません。

この設計現場を例えば例を上げて解説するなら、距離環を締め付け固定している締付ネジは全部で3本あります。普通に考察すると「円周に対して均等配置で3本締付ネジ用の下穴を用意する」のが一般的ですが、この当時の三協光機製オールドレンズの多くのモデルで「均等配置ではない」下穴の位置で切削されているので「距離環刻印の∞の位置が1箇所に決まってしまう」と言う問題に突き当たります。

するとでは具体的に現実的な無限遠位置の描写調整はどうしていたのか???・・になりますが、そこで登場するのが「シム環」と言う、薄い厚みの環/リング/輪っかで

これを何枚か重ね合わせて鏡胴の「前部//後部」の間に挟むことで無限遠位置の合焦位置を描写調整しています。この手法は何も当時の三協光機だけが特殊な設計だったワケではなく、当時凡そ戦前から採用されていた (当時としてはむしろ一般的な) 手法の設計でした。

しかしこの手法ではいちいち「シム環」を破産では実写確認するしかなく面倒です(笑) そこで戦後には多くの光学メーカーで無限遠位置の描写調整機能を設計段階で確保した手法へと変化していきました。

或る意味、三協光機製オールドレンズの多くのモデルは、その端境期に登場して、そして消えていったモデルとの捉え方にも至ります(涙) それが鏡胴「前部/後部」での設計概念に一貫性をみられない結末に至っている最大の因果関係ではないかと、当方はみています。

逆に言えば、だからこそ、そう容易くサクッと調達して扱えない難しさでもあり、まさに整備者泣かせのモデルです(泣)

・・上手く仕上げられないだけで済ませずにこのように考察を進めるとまたロマンです(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。