◎ KONICA (コニカ) HEXANON AR 35mm/f2.8 AE《後期型−I》(AR)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
KONICA製準広角レンズ・・・・、
『HEXANON AR 35mm/f2.8 AE《後期型−I》(AR)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時のKONICA製準広角レンズ「35mm/f2.8」の括りで捉えても今回の扱いが初めてです。
ッて言うか、まるッきし死角に入っていて今まで扱いがなかった焦点距離だったのを、今回のオーバーホール/修理ご依頼でバラした際に、初めて知ったレベルで、何とも申し開きしようがありません(汗)
そもそもKONICA製の「HEXANON ARシリーズ」ともなれば、そのモデルバリエーションが多いのはどの焦点距離モデルも同じと考えますが、如何せん広角レンズ域の28㎜を片付けた時点で、35㎜までスッ飛んでいた (終わったつもりになっていた) ワケで、大失態です(笑)
逆に指摘するなら、それこそ今ドキの市場流通を眺めていても「KONICA製」のオールドレンズのみならず、合わせて「PETRI CAMERA製」或いは「RICOH製」も含め、どんだけでも溢れんばかりに流通しまくっている状況なのがこの数年の傾向でしょうか(笑)
然し乍ら、それはあくまでも国内の市場状況であって、海外オークションebayなどを念のために覗くと、意外にも今回扱ったモデルの流通レベルは決して「氾濫状態」とは言い切れない印象でした(笑)
当然ながらラバー製ローレット (滑り止め) が貼られれている「後期型モデル」が圧倒的に数多く流れていますが、ネット上を見てもこの「レトロフォーカス型光学系構成」に一目置く方が今も尽きないようで、なかなか嬉しい状況です(涙)
今回 (本当に意外にも) 初めての扱いになるので(笑)、改めて実写をチェックしようと試みたものの、肝心なモデルバリエーション上の「後期型−I」と最終モデルたる「後期型−II」を分け隔てて確認する術がない事に気づき、今回はネット上での実写確認は諦めました。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
コニカの歴史は相当古く、何と1873年 (明治6年) に東京麹町で米穀商「小西屋」を営んでいた6代目杉浦六右衛門が、25歳の時に当時の写真館で撮影した写真に感動し写真材料の扱いを始めたのが原点です。その後東京日本橋に写真材料と薬種を扱う「小西本店」を開業したのが創設になります。
それから30年後の1903年 (明治36年) 国産初ブランド付カメラ『チェリー手提用暗函 (6枚の乾板装填式)』国産初の印画紙「さくら白金タイプ紙」を発売しました (左写真)。
その後1923年 (大正12年) 現在の東京工芸大学の前身「小西写真専門学校」を創設し、1936年 (昭和11年) に株式会社小西六本店と社名変更しています (後のコニカ株式会社)。
当初登場したHEXANON銘のモデルシリーズは、当初マウント規格が異なる「Fマウント」にて1960年9月に発売された「KONICA FS」登場と同時に発売されました。wikiによるとモデル銘に付随する「FSのS」はStandardの頭文字「S」を表すようです。またこの時の「KONICA Fマウント規格のフランジバック:40.5㎜」である点も取扱説明書に記載があり、それ以降登場してきた「EE刻印タイプ」さらに今回扱ったモデルと同じ「AE刻印タイプ」共にフランジバックは同一で変化がない点もちゃんと確認できます (但しFマウントとは爪の仕様が異なる為に互換性はない)。
今回扱ったモデル「AE刻印タイプ」の登場は以下一眼 (レフ) フィルムカメラ変遷一覧から、1973年発売の「AUTOREFLEX A3 (海外輸出専用機)」取扱説明書記載のオプション交換レンズ群一覧に掲載されていました。ARマウントの名称は「AutoRex」の頭文字を採っており
前期は「EE (Electric Eye)」後期は「AE (Auto Exposure)」機能を装備しています (セットするとシャッター優先AE機能が自動で働く)。
これらの点からも初期の「Fマウント」とその後の「ARマウント」の互換性が図られていない点が納得できると言うものです(笑)
なお、特に一眼 (レフ) フィルムカメラではなくて、オールドレンズ側の「HEXANONシリーズ」モデルバリエーションについていろいろ探索していくと本当に複雑です(泣)
例えば、いの一番の1960年に発売されていた一眼 (レフ) フィルムカメラ「KONICA FS」取扱説明書のオプション交換レンズ群一覧を見ると、上から二行目に「35mm/f2.8 自動絞り」の記載が確認できます。
ところがその2年後、1962年登場の「KONICA FP」取扱説明書のオプション交換レンズ群一覧を確認すると、同じく「35mm/f2.8 自動絞り」であるものの「プリセット絞り方式」の但し書きがされています。
「カメラ音痴」な当方が普通に考えると「プリセット絞り→自動絞り」との変遷なのが正統進化系のように感じるのですが、並んでいる他の焦点距離モデル含め、確かに2列の絞り環でプリセット絞り方式を採っているのが分かります。
従って「EE刻印タイプ」になって初めて絞り環の配置自体もマウント側直前に移動しているので
その登場時期となれば当然ながら1965年の「AOTOREFLEX」からになります。
右の写真はその「AUTOREFLEX」取扱説明書に写っている上方向からの写真で、セットレンズの標準レンズの絞り環がマウント部直前に移動し、且つ「EE刻印」が確認できます。
さらにwikiにも記載がないので「???」ですが(泣)、おそらく1970年に登場した「AUTOREFLEX FTA」の海外向け輸出専用機「AUTOREFLEX A」或いは「AUTOREFLEX T」向けの「HEXANON LENS カタログ」(以下写真の左端がその表紙) を見ると、何と自動絞り方式とプリセット絞り方式の両方を併売していた事実まで記載がありました(汗)
こうなるといったいいつのタイミングで発売していたのかが限りなく不明瞭になります(笑)
そして右でご案内するオプション交換レンズ群
一覧が乗っている取扱説明書こそが、最後の方
1983年に登場した「KONICA FT-1」の
ページで、ここで初めて「最小絞り値がf22に
到達するモデル」が現れているのが分かります。
すると当然の話ですが、最小絞り値が「f16→f22」へと変わると言う事は「光学系を再設計した証拠」とも受け取られます。
このようにこの当時の「HEXANONシリーズ」はカメラボディ側変遷と合わせて見ていかなければならず、相当複雑です(泣)
【コニカ製一眼レフ (フィルム) カメラの変遷】(発売年度別時系列)
◉ KONICA AUTOREFLEX FS (1960年9月発売)
① AUTOREX/AUTOREFLEX (1965年12月発売)
② AUTOREX-P/AUTOREFLEX-P (1966年3月発売)
③ FTA (1968年4月発売)
④ AUTOREFLEX A (1970年発売:輸出専用機)
⑤ AUTOREFLEX T (1970年発売:FTAの輸出専用機)
⑥ New FTA/AUTOREFLEX T2 (1970年6月発売:輸出専用機)
⑦ AUTOREFLEX A2 (1971年発売:輸出専用機)
⑧ AUTOREFLEX A1000 (1972年発売:輸出専用機)
⑨ AUTOREFLEX A3 (1973年3月発売:New FTAの輸出専用機)
⑩ AUTOREFLEX T3 (1973年4月発売)
⑪ AUTOREFLEX T3N (1975年発売:輸出専用機)
⑫ ACOM-1/AUTOREFLEX TC (1976年11月発売)
⑬ AUTOREFLEX T4 (1977年1月発売:輸出専用機)
⑭ FS-1 (1979年4月発売)
⑮ FP-1 (1980年8月発売)
⑯ FC-1 (1980年10月発売)
⑰ FT-1 (1983年4月発売)
⑱ AUTOREFLEX TC-X (1985年4月発売)
上の列記で、オレンジ色①〜⑧は「EE」タイプでグリーン⑨〜⑱は「AE」タイプです。時系列で見ると1985年以降一眼レフ (フィルム) カメラの発売はなく、コンパクト (フィルム) カメラである「コニカカメラ」或いは「現場監督」ばかりを発売し、ついに2003年をもってフィルムカメラ事業から撤退してしまいます。
歴代のコニカ製一眼レフ (フィルム) カメラを以下に列挙します。
【モデルバリエーション】
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
前期型-II:1962年発売 (KONICA FP)
絞り環刻印優先機能:なし
開放f値刻印:有 (囲み有/●有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:無
距離指標値刻印:feet (赤字)/meter
前期型−III:1965年発売 (AUTOREFLEX)
絞り環刻印優先機能:EE刻印付
開放f値刻印:有 (囲み有/●有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:艶有りプラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠)
距離指標値刻印:feet (黄色)/meter
前期型−IV:(AUTOREFLEX P)
絞り環刻印優先機能:EE刻印付
開放f値刻印:無 (囲み無/縦棒)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠/距離環縁)
距離指標値刻印:feet (黄色)/meter
前期型−V:1968年発売 (FTA)
絞り環刻印優先機能:EE刻印付
開放f値刻印:無 (囲み無/縦棒)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠/距離環縁)
距離指標値刻印:feet (黄色)/meter
前期型−VI:1969年? (FTAブラックバージョン)
絞り環刻印優先機能:EE刻印付
開放f値刻印:無 (囲み無/縦棒)
指標値環:梨地プラック
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠有/距離環無)
距離指標値刻印:feet (黄色)/meter
後期型−I:1972年? (AUTOREFLEX A3)
絞り環刻印優先機能:AE刻印付
開放f値刻印:無 (囲み無/縦棒)
指標値環:梨地プラック
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠有/距離環無)
距離指標値刻印:feet (黄色)/meter
後期型−II:1983年 (KONICA FT-1)
絞り環刻印優先機能:AE刻印付
開放f値刻印:無 (囲み無/縦棒)
指標値環:梨地プラック
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠有/距離環無)
距離指標値刻印:feet (黄色)/meter
この他にもまだモデルバリエーションが転がっている懸念が残っています(笑)
なお、上記モデルバリエーションで先頭が「前期型−II」になっているのは、実はこの一つ前に「前期型−I」としてプリセット絞り方式ではない絞り環が前玉側に配置されているタイプが存在するようなのですが、今までに一度もネット上で写真を見た記憶がありません(泣)
さて、モデルバリエーションで捉えた時にその種類が多いのが分かりましたが、その一方で
光学系構成についてはネット上でも大きく2種類の構成図しか掲載されていません。
しかしこの点を考察する前に、大前提としてもっと重要な概念を知っているべきです。それは1950年と言う西暦が一つポイントになりますが、1949年までは「広角レンズ域専用の光学設計がまだ開発されていなかった点」です。
逆に言うなら、当然ながら1949年までにも数多くの広角レンズ域モデルが登場していましたが、それらの多くは「標準レンズ域の光学設計を延伸させて広角レンズ域まで対応できていた時代の話」である事を捉えるべきです。
これを考える時その大前提は、何だかんだ言って当時主流だったのは一眼フィルムカメラの括りの中でも、まだまだレンジファインダーカメラだった点です。レンジファインダーカメラはフィルム印画紙とオールドレンズ最終端レンズとの間に「ビハインドシャッター」が介在するだけで短い距離だった為に、広角レンズ域の光学設計は「標準レンズ域の光学設計を変更するだけで対応できていた」ようです。
ところが、戦後になりクィックリターンミラーを間に挟んだ一眼「レフ」フィルムカメラが主流になると、オールドレンズ側最終端の後玉からミラー部を超えてフィルム印画紙まで延伸させる必要性に迫られます。いわゆる「逆望遠型」光学設計が必要になり、正負パワーを光学系前群内に配置して、後群側焦点距離を短縮化させた設計の必要に至った次第です。
そこで1950年にフランス屈指の老舗光学メーカーP. ANGENIEUX PARIS社から世界で初めて発売された「広角レンズ域専用光学設計」として登場したのが「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」で、このモデルの登録商標だった「RETROFOCUS (レトロフォーカス)」こそがその広角レンズ域専用光学設計を意味しています。
するとここで言う処の「レトロフォーカス」と言う光学系のコトバで「レトロ」の部分について偏った認識で捉えている解説が、未だにネット上に散見する事から間違った捉え方が広まる懸念が残ります。
このコトバはフランス語の「RÉTRO (後退する)」と「FOCUS (焦点)」をくっつけた造語であり「レトロ(ホ)フォーキス」のようなフランス語の発音になりますが(笑)、焦点を後退させる、まさに逆望遠型の光学系概念を指します。
この時「レトロ」に一般的な意味合いとして「復古調」とか「古めかしさ/懐古趣味/ノスタルジー感」などを当てはめてしまうから話がおかしくなります(汗) さらに悪い事に古いオールドレンズの写りを指してそのようなイメージを植え付けるが如く語られてしまうから、堪ったものではありません(泣)
特に (自称) プロの写真家的な人達が、一時期好んで「インスタ映え」の時流を狙い、オールドレンズの描写性を指して極端な恣意的な写し方を広めてしまったが為に「ハイキーな写り (コントラストが低下した薄い色つき方の世界観)」や「霧の中で撮影したような写り方 (1枚の薄い
レースカーテン越しのような写り方)」など、偏った撮影手法で印象付けされたのも、当方からみれば本当に堪ったものではありませんでした(涙)
それこそ、今でも「bokeh (ボケ)」と表してまるで「玉ボケ」だけを指すが如くしこたま掲載し続けられるので、とうとう世界中で「bokeh=玉ボケ」の方程式で捉えられつつあり、非常に危惧しています(怖)
《当方で表現してる円形ボケの定義》
※左端のシャボン玉ボケから順に (右方向に) 滲んで溶けて消えていく様を表します。
◉ シャボン玉ボケ (左端)
真円で明確なエッジが細く繊細なまさにシャボン玉のような美しいボケ方
◉ リングボケ (2枚目)
ほぼ真円に近い円形状でエッジが明確ながらも太目で輪郭が誇張的なボケ方
◉ 玉ボケ (3枚目)
円形状のボケが均等に中心部まで滲んでノッペリしたイルミネーションのボケ方
◉ 円形ボケ (円形状のボケ方の総称の意味も含む) (右端)
その他歪んだりエッジが均一ではない、或いは一部が消えていく途中のボケ方
ちなみにこの「bokeh (ボケ)」が世界に広まった一番最初のキッカケ造りは、写真家のMike Johnston氏による写真雑誌の記事にみることができます。彼が世界で初めて「bokeの語尾にhを付随させた張本人」であり、そもそも「h」を付け足した理由が「できるだけ日本語の発音に近づけたかったから」と本人が述べており、もっと言うなら「日本と日本の文化、そして日本人に対する
リスペクト」すら述べているワケで、本当にありがたい人だと感謝の気持で
いっぱいです(涙)なお多くの英語圏外国人が「boke」を発音すると、まるで「ボーク」のように聞こえてしまう点に於いて、意識的な注意を払うべきとMike Johnston氏自身が述べています。
従って「レトロフォーカス型光学系」も決してそのような恣意的な写り方だけを狙っていません。それをちゃんと確認すべきと強く申し上げたい気持ちです。
↑上に示した4つの光学系構成図について解説していきます。一番左端が前述した1950年に世界で初めて発売されたフランスはP. ANGENIEUX PARIS社製「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」のモデルを、以前オーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
これを見た時に赤色で 色着色している要素 (光学系第3群~第5群まで) こそがこの光学系の基本成分で「3群4枚テッサー型光学系構成」を表しています。それら 色着色している群の前に光学系第1群の前玉として「凹メニスカス」そして第2群に「両凸レンズ」を配して「焦点を後退させている」からこそ「レトロフォーカス型光学系」の特許出願申請に至ります。
今回扱ったモデル『HEXANON AR 35mm/f2.8 AE《後期型−I》(AR)』の光学系を指して、
ネット上に数多く掲載されている構成図が左から2つめの構成図です・・同様当方が当時の
取扱説明書からトレースした構成図になります。
ここでよ~く注意してチェックして下さいませ。ネット上の多くの解説サイトで「Angenieux社のレトロフォーカス型光学系と同一の構成」と説明されることが非常に多いものの、実は「光学系第3群の裏面の曲り率」と、さらに最も分かり易い相違点は「第4群の両凹レンズの向き」です。
一番左端のAngenieux製は「後玉側方向に向かって曲り率が高い (多く湾曲している)」に対して、2つめの取扱説明書からトレースした構成図は「逆に前玉側方向に向かって曲り率が高い両凹レンズ」と明確に確認できます。
・・曲り率が高い面が間逆なのです!(驚)
この点をちゃんと解説してくれているサイトが見つからないので、光学知識が皆無な当方にはこれ以上の事実を考察できませんが、どう見ても明らかに向きが違う (曲り率が高い方向が異なる) としか考えられません。
そして問題になったのは今回扱った個体のほうで、3つめの構成図がオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、同じように当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
分かり易いように着色の色を変更して 色付けしている部分です。光学系第3群の裏面側には曲り率が消えて「平凸レンズ」に変わっていました(驚) さらにその次の後群側第4群に至っては「曲り率が高い側が逆転している=つまりAngenieux社製の光学系とまさに同一に変わった」点です!(驚)
当方がこのような指摘をすると「間違えて逆向きに組み込んでいるだけの話」と批判してくる人が居ますが(笑)、それも見越してワザと故意に逆向きに格納させて今回のオーバーホールを仕上げ、最後に実写確認したところ全く正常な写りになりませんでした (ピント面が合わない)(笑)
つまり上に載せた構成図の向きで第4群をちゃんと組み込まない限り (ッて言うか、そもそもこの向きでしか格納できないように格納筒が造られている) 鋭いピント面で撮影できませんでした(泣)
もっと言うなら、最後の光学系第5群後玉の貼り合わせレンズさえ、その外形サイズが2つめの構成図とは異なります。最後に掲載した右端の構成図は、ネット上でも数多くの載っている2つめの「後期型の構成図」との解説になりますが、正しくは上記モデルバリエーションで
言う処の、最後に登場した「後期型−II」の構成図です。
従ってこれらの事実から考察していくと、もしかしたらモデルバリエーションで言う処の「前期型−II~前期型−VI」の中で2つめに載せたネット上に数多く載っている光学系構成 (取扱説明書からトレースした構成図) だったのかも知れません。
ちなみに「最短撮影距離:30cm」であり、最小絞り値が「f16」のままなので、光学系を再設計する必要性には至りませんが、逆に言えば「後期型−II」では最小絞り値が「f22」に変わったので、必然的に光学系の再設計が成されている説明は納得できます。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回のオーバーホール/修理ご依頼者様からご依頼が来ない限り、全く以て死角に入っていた (既に扱っているつもりになっていた) 初めてのモデルバリエーションタイプになります(笑)
バラしてみると当然ながら内部構造はそれまでの「前期型−II~前期型−VI」辺りの要素を踏襲し続けた構造なのが何となく感じ取れます (扱ってないので良く分からないが標準レンズ域のモデルは知っているので察しがつく)(笑)
・・ところがKONICAらしからぬ行為に及んでいた事実が判明します (後で解説します)。
↑上の写真は、当初バラし始めて取り外したヘリコイド群の写真で、まだ溶剤で洗浄する前の状態をそのまま撮っています。見れば一目瞭然ですが過去メンテナンス時に塗られた「白色系グリース」にアルミ合金材の摩耗粉が混じって「濃いグレー状」に変質しています。
しかも実際には、おそらく当方とご同業たる『転売屋/転売ヤー』の手により「潤滑油」が注入されてしまっていると推測でき、もちろん必ずチェックしますが「臭いを嗅ぐと潤滑油の臭いがする」ので、先ず間違いなく注入していると考えられます(泣)
その結果、揮発油成分が飛んでしまったので潤滑性が失われつつあり、且つ塗布されていた「白色系グリース」の粘性が粘りを持ち始めている為に「重いトルクに堕ちていた」点こそが、今回のオーバーホール/修理ご依頼者様のご指摘事項です(涙)
・・当初バラす前のチェック時点で相当チカラが必要なピント合わせのトルクだった(涙)
それこそ、例えばネジ込み式のマウント規格たる「M42マウント」だったりすれば、ピント合わせしようとしてチカラを入れて回したら「マウントが回って外れてしまうくらいの重いトルク感」とでもご説明すれば、どんだけ重かったのか伝わるでしょうか???(笑)
このブログでもそれこそ執拗に何回も、本当に何回も述べていますが「白色系グリース+潤滑油はオールドレンズにとりまさに天敵!」です(涙) 今回の個体もこのまま放置プレイが続けば「おそらく数年内にヘリコイド融着による固着で製品寿命を迎えていた」事が容易に推測できます(怖)
当方がこのように述べると、またもや批判メールが着信しますが(笑)、誰も手に入れる際にヘリコイドに「白色系グリース」が塗られていることなど事前に知り由もない・・と(笑)
・・まさに仰る通りでございます!(笑)
当方が述べている「相手が違う」のをこういう批判メールを送信してくる人は全く理解できていません(笑) 当方が毎回貶している相手は「オールドレンズを使っているユーザー」ではなく「過去メンテナンス時の整備者」に対して、徹底的に述べているのです(笑)
どうして生産時点に使われていたであろう「黄褐色系グリース」を使おうとしないのか??? どうして「黄褐色系グリース」の塗布を前提として設計している「工業製品」に敢えて「白色系グリース」を塗ったくるのか???・・と述べているのです!!!(怒)
逆に言うなら、当方とご同業者たる『転売屋/転売ヤー』などは、あからさまに平気で自分達が販売した時点だけちゃんと動けば良い・・としかマジッで考えていないので、当たり前のように「潤滑油をプシュッとヤル」ワケです(笑)
すると当然の成り行きとして「白色系グリース+潤滑油の環境が完成!」するので、数年後~5年内にはヘリコイドのネジ山融着に伴う固着で「製品寿命」を迎えます(涙)
・・オールドレンズは『絶滅危惧種』である!!!
と真剣に述べているのはそういう意味合いです。まさに今現在の温暖化と同じで、人の手によって「絶滅へと追いやられているのがオールドレンズの現状」であり、おそらく (当方はもう
居ませんが) 50年後には、現在市場流通している個体数の半数も生き残っていないとすぐに理解できます(涙)
シロウト整備で「白色系グリース」を使ってしまうのは仕方ありません(泣)・・然しプロの
整備者や整備会社が公然と平気で「白色系グリース」を塗布し続けている現実に警鐘を鳴らしているのです!!!(怒)
・・そういうのってプロとして恥ずかしいと考えないのでしょうか???
当方は独学で今までの12年間ず〜ッと来ているので、プロに師事して伝統技術を伝播されておらず、まさに誹謗中傷されるが如く「プロの整備者は当然ながら、マニアにすらなれなかった落ちこぼれの整備者モドキ」と言う立場なのは、本人が最もよ~く自覚しています(笑)
・・だから何度も当方はプロではありません!!!と述べています。
そのプロが好んで「白色系グリース」を使い続けている現実について、逆に問い正します!
・・いったいどうしてなのでしょうか???・・誰か教えて下さいませ。
黙っていても、そもそもオールドレンズの光学系は、特に蒸着しているコーティング層の経年劣化は既に耐性を失いつつあり、とてもこれから先50年なんて保ちそうもありません(泣)
・・つまり放っておいてもオールドレンズの個体数はどんどん激減していくだけです(涙)
確かに50年先の時代には「平面レンズ」たる波長で記録できる撮影技術が発展しているのでしょうが (光学硝子レンズは潰えている時代)、そうは言っても必ずその時代その時代で、古き良き昔のクラシックな工業製品をこよなく愛する人達が居ると信じています(涙)
・・その時、スカッとクリアなTessarレンズが百万円で市場流通しているかも知れません(笑)
↑ヘリコイドオス側だけを拡大撮影していますが、ご覧のとおり「直進キーガイドの溝部分にビッチリと白色系グリースが塗られている」のが「そのまま残っているだけ」なのを上の写真で示しているのです。
もしもこの「直進キーガイドの溝部分」に、ちゃんと「板状のカタチをした直進キー」が底面に接触しつつスライドしていたのなら、ドロドロッと波を打っている古い「白色系グリース (濃いグレー状に既に変質している)」が残っているハズがないのです。
つまりここに「グリース」を塗る必要性が皆無である点を過去メンテナンス時の整備者は全く理解できていないのです(笑) 非常に多くの個体がバラすと必ず直進キーガイドにグリースを塗ったくッてあります(笑)
・・な~んにも考えずにグリースを塗れば滑らかに動くと信じてやまないのです(笑)
これがプロの整備者のレベルです(笑)・・恥ずかしいと思っていないのです(笑)
ちなみに上の写真でグリーン色の矢印で指し示している箇所は「カビの菌糸が繁殖している箇所」です(怖)・・それこそ、まるで「風の谷のナウシカ」に出てくる「ヒソクサリが午後の胞子を飛ばしている」如く、マジッでキモくて触りたくないです(泣)
オーバーホールの工程で仕方ないので洗浄しますが、マジッで掴んでいる指や手に痒みが現れて、キモいったらありゃしません!(泣)
↑上の写真はバラしたヘリコイド群と筐体外装パーツの一部を溶剤で洗浄した後に並べて撮影しています。
すると手前側に並んでいるヘリコイドオスメスのグリーン色の矢印で指し示している箇所には、前述の「カビ菌の菌糸が繁殖したまま残っている」状況です(涙)
さらに背後に並べた筐体外装パーツの一部は、グリーン色の矢印で指し示している箇所に「真っ白に塗膜が剥がれているように見える箇所」が確認できますが、これは被せてある艶消しブラックの微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工が剥がれたのではなく「メッキ面の塗膜層に侵食しているカビ菌」であり、塗膜層に繁殖するたぐいのカビ菌糸です(泣)
このようにカビ菌糸は「水分を糧にして金属面にも繁殖し続ける」ので(怖)、結果的に金属層を侵食していきます。逆に言うなら、それだけ繁殖に適した「水分」がこれら金属材に溜まっていた「証拠」でもあります(泣)
では、どうして油成分たる「グリース」が塗られていた箇所なのに「水分が溜まっていたのか
???」です。それは「界面原理」と「張力原理」による影響で、本来相反発し合う「油と水」のハズが、それら原理で吸い寄せられて水分が金属材に留まるので、それを糧としてカビ菌糸が繁殖できる環境が整います。
特に「黄褐色系グリース」に比べて「白色系グリース」の溶融性が高いので液化が進行するのが早く、このように水分を引き留める要素が強調されます(泣)・・だから「白色系グリースを塗るな!」と述べているのです。
・・もちろんこれらの要素は今回の「磨き研磨」で完全除去しています。
↑オーバーホール工程をスタートします。絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、今回扱ったモデルは準広角レンズ域のオールドレンズなので、この長さの鏡筒だけでは「光学系前群を格納しきれない」ので、実はここに入るのは「光学系第2群~第3群」だけで、光学系第1群の前玉は「延伸筒に格納されてこの鏡筒から飛び出る」設計です・・ちょうど朝顔の花のカタチのようにパッと開いて飛び出ているような形状でこの鏡筒にセットされるのが光学系第1群の大きな前玉です。
↑前述の鏡筒最深部に組み込まれる絞りユニットを構成しているパーツ群です。絞りユニットの格納環は黄銅材で切削され用意されています。そこには「位置決めキー用の穴」が開けられています。
また上の写真で手前に並べている「制御キー」の溝のカタチをよ~く覚えておいて下さいませ。「くの字」のカタチを少し崩したような切り欠きが備わります。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
このモデルでは「開閉キー側が開口部になっている設計」であり、絞り羽根の角度を変えて斜め状に傾く為に楕円に空いています。
↑6枚の絞り羽根を組み込んで絞りユニットを完成させました。上の写真では「前玉側方向から撮影している向き」になりますが、どう言うワケか締付ネジが1本欠品していたので、浮いてしまう為に1本締付ネジを後で調達しています。
↑今度は完成している絞りユニットをひっくり返して後玉側方向からの向きで撮影しました。するとこの当時の数多くのKONICA製オールドレンズに共通項として採用されている「ハの字型の捻りバネ」をグリーン色の矢印で指し示しています。この非常に細い捻りバネが「カムを押し広げて常に絞り羽根を開くチカラを及ぼし続けている」のがポイントで、且つ「この当時のKONICA製オールドレンズの絞り羽根開閉駆動の生命線!」でもあります!(泣)
・・つまりこの捻りバネが弱ると途端に絞り羽根開閉異常が発生する!(怖)
そういう「原理原則」として設計されています(泣) 三角のカタチをした「カム」の動き方を上の写真でブルー色の矢印で解説しています。❶の横方向に動いていたと思うと、途中から今度は❷の縦方向の動き方に突然変わります。
まさにこの「カム」の❶~❷の動き方こそが前出の「制御キーの崩れたくの字型のカタチ (の切り欠き)」のせいなのです。つまり絞り羽根の開閉動作時に「毎回必ず制御キーの切り欠きのカタチ通りに動きつつも捻りバネの反発力を常に受け続けている」のが、この当時のKONICA製オールドレンズ設計陣が「編み出した工夫の駆動制御設計」なのです!(涙)
非常に神経質で微細な動き方をする工夫であり、どんだけ苦心して編み出したのかを物語る素晴らしい部位です(涙)・・どんだけこの「捻りバネの存在」が素晴らしいのかはまたこの後の工程で判明します(涙)
・・重要なのは、こでは絞り羽根を常に開くチカラを及ぼしている捻りバネです!(涙)
逆に言えば、前述の「制御キー」の切り欠きや表裏面に経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びが生じていたら、或いは残っていたら「この非常に細い捻りバネは必要とされる適切なチカラを及ぼせなくなる」点こそが「原理原則」の賜である事に整備者は気づく必要があります(泣)
・・だから相当に神経質な捻りバネの設計なのです!(涙)
↑実際に完成した絞りユニットを鏡筒に組み込んでから、鏡筒をひっくり返して裏側たる後玉側方向から撮影してい写真です。まだ工程の途中ですが解説の為に敢えて撮影しています。
鋼球ボールが組み込まれるのを説明したかったのです。この環/リング/輪っかの間には「全部で58個の鋼球ボールが入る」必要がありますが、実はこのオールドレンズ内部の状況から「幾つかの鋼球ボールに赤サビが出ていた」が為に、この環/リング/輪っかの回転に抵抗/負荷/摩擦が生じていたのです(泣)
逆に言うなら、この環/リング/輪っかが滑らかに回転しない限り「最終的に絞り羽根の角度制御に影響を来すので捻りバネが弱ってしまう」と言うのが、この工程で敢えて/故意に/ワザとバラして58個の鋼球ボールの「赤サビを完全除去した」次第です(泣)
すると上の写真でチラっと写っていますが(笑)「カム」が「制御キーの横方向の切り欠きを動いている最中」なのが、ちょうど写っています。だからこそ最初に「カム」が横方向のブルー色の矢印❶の動き方をしていた事の「証拠」でもありますね (決してウソの解説をしているワケではない)(笑)
この後、切り欠き部分はくの字型の斜め状に傾くので、必然的に「カムの動きも縦方向のブルー色の矢印❷に変わる」次第です(笑)
実はこの「制御キー」の固定位置により「絞り羽根の開閉角度が変わる」設計なのを、やはり過去メンテナンス時の整備者は気づいていませんでした(笑)・・結果、当初バラす前の時点で「絞り羽根が閉じすぎていた」為に、最小絞り値は「f16を越して限りなくf22に近い状況」だったのです(涙)
・・単にバラして逆手順で組み立てようとするからこうなります(泣)
↑登場しました!(涙)・・当時のKONICA設計陣の創意工夫の賜物です!(涙)・・この鏡筒の環/リング/輪っかの外周をグルっと「長大なスプリングが周っている」のを赤色矢印で指し示しています。
逆に言うなら、このスプリングのチカラによって初めて「絞り羽根は常に閉じた状態を維持できる」ので、上の写真のとおり指を添えずとも絞り羽根は最小絞り値「f16」まで勝手に閉じきっています。
・・これがKONICA設計陣の非常に苦心惨憺した設計の要です(涙)
「制御キーの崩れたくの字型の切り欠き」を「カム」が行ったり来たりしながらも「カムの駆動方向を横方向と縦方向の2つの方向で確実に制御させる」のに「前出の非常に細い線径の捻りバネ」の存在こそが絶大だったのです!(涙)
何故なら「崩れたくの字型の切り欠きで駆動方向を横と縦方向に変える時、カムが無抵抗のまま方向を変更するには微細なチカラが必要だった」からです(涙)
そこでここに「細い線径で小さな捻りバネを介在させた発想」こそが、この方向を違えるカムの動き方を実現し、絶妙な絞り羽根の開閉動作を生み出し、且つそれに見合う「徹底的な光学設計の追求が適った」ワケで、全ては光学設計に総てを注ぎ込む当時の「KONICA設計陣の意志の堅さの表れ」と、当方は大きな感銘を受けております(涙)
・・皆さん、どんだけ素晴らしいのか分かりますか???
逆に解説するなら、僅か1cmにも満たない空間しか残っていないこの鏡筒裏側で「横方向と縦方向の向きを変更する仕組みを発想してしまった」のが凄いと言っているのです。そのくらいにこの「EE機能」と「AE機能」を実現させてしまった自動絞り方式の設計の要は「崩れたくの字型の切り欠きと細い線径の捻りバネ」だった点を、どうか少しでも多くの方々に褒め称えてあげてほしいのです!(涙)
どうしてそこまで言うのかと言えば、この仕組みに気づいて「試しに捻りバネを外したまま組み上げた」ら、何と絞り羽根は途中で閉じる角度を変えられなくなって固まってしまったからです!(驚)
さらにそれを確認しようとして「制御キー」が丸見えになるように絞り羽根を組み込まずに動き方を観察したら、まさに「途中でカムがくの字型に曲がる箇所で固まった」ワケで(泣)、この時初めて「あぁ~、この細いちっちゃな捻りバネの有難みに感じ入った」が為に感動し感銘を受けたのです(涙)
・・どうです??? KONICAの設計陣って凄くないですか???(涙)
と独りで熱くなっているだけですが(笑)、それくらい凄い部位だったのです。
↑オーバーホール工程を進めます。距離環やマウント部が組み付けられる基台と、その構成パーツを並べています。「伝達環」はフィルムカメラ本体側からの「EE機能」や、或いは「AE機能」の働きでチカラが伝達される際に必要な環/リング/輪っかです。
そこに介在するのもやはり鋼球ボールで「12個の鋼球ボールを均等配置で格納する格納環/リング/輪っかが介在する設計」であるのを説明しています。
↑実際に12個の鋼球ボールを組み込んで完成させた状態の基台を前玉側方向から撮影しています。しかしよ~く観察すると「伝達環」の外形サイズと基台側の内径サイズが大きくかけ離れている点が分かります。
つまり「伝達環」は鋼球ボールの直径だけで辛うじて支えられて「基台に留まっているだけ」なのです(驚)・・実際鋼球ボールを入れ込まずに「伝達環」だけをこのセット位置に置こうと試みると「ストンと貫通して落下してしまう」次第です(笑)
するとどういう話が言えるのかと言えば、この12個の鋼球ボールの平滑性も大変重要だと気づく必要があるので、前述同様経年劣化進行に伴う赤サビ除去をゴシゴシ、ゴシゴシと実施した次第です (ハッキリ言って鋼球ボール小さいのでチョ〜面倒くさいです)(笑)
↑完成した基台を今度はひつ繰り返してマウント部側方向から見た位置で撮影しています。するとグリーン色の矢印で指し示していますが「ネジ山がグルっと周りに備わる」のが分かります。実はこの当時はもう既にKONICAだけでしたが、絞り環にネジ山が備わり「ネジ込んでいく設計を採り続けた」のです(泣)
↑基台にヘリコイド群をネジ込んでいくところを撮影しています。オスメスでヘリコイドのネジ山が相当深い/長い/厚みがあるのが分かります。
従ってグリースの性質が適合していないと「重いトルクに堕ちるだけ」なのがこのネジ山の
長さを見ただけで分かります(泣)
↑こんな感じでヘリコイドオスメスを無限遠位置の当たりをつけた正しいポジションでネジ込みます。このネジ込み位置をミスると最後に無限遠位置が適合せずに再びバラしてネジ込み直すハメに陥ります(汗)
もう既にオーバーホール工程の中で「黄褐色系グリース」の塗布が終わっていますが (そうしないとここまで深くネジ込めて撮影できていない)、如何に少ない量で「黄褐色系グリース」を塗っているのかご理解頂けるでしょうか???(笑)
しかも今までの回収検査の結果から (当方は自信が整備したオールドレンズ個体をヤフオク!などを使い改めて市場流通したら落札して自ら回収検査している) 凡そ当方が整備後7年経過でも「黄褐色系グリースの液化進行は想定範囲内を保っていた」事実を検証結果として掴んでいるので、本格的に液化が進行してしまうのはおそらく整備後10年を目処として考察しています (今までの12年間で実際に回収できた個体数は僅か7本での検証結果の話でしかない)。
その意味でたったこれだけの微量でも、ヘリコイドネジ山の状態さえ生産時点に近似する状況まで戻してあげれば、ちゃんと機能してくれているのが十分分かっています。
ちなみに今回のオーバーホール/修理ご依頼者様お一人様だけが実際に自分の手にとって確認できますが、オーバーホール工程の中で「直進キーガイドの溝には一切グリースを塗っていない」にもかかわらず、相応にシッカリした重さのトルクで距離環を回せ、且つちゃんと軽い操作性でピントのピーク/山前後での微動が適います (ちゃんと組み立て後に実写確認して調べているからそう明言できている話)(笑)
・・直進キーガイドにグリースを塗る必要性は「原理原則」から以てして皆無なのです!(笑)
↑距離環を回した時に「回転するチカラを直進動に変換する直進キーの締め付け固定」がされてヘリコイド群が固定されます。合わせて「絞り値キー」と言う楕円状の穴が空いているプレートをネジ止め固定します。ここに絞り環に組み込んだ鋼球ボールがカチカチとハマるのでクリック感を実現する設計です。
↑実は、本来「前期型−II~前期型−VI」のモデルバリエーションでは「両サイドに絞り値キーを備えていた設計」なのです(泣)
これにはちゃんと理由があって「ネジ山を有する絞り環操作だったので鋼球ボールによる反発を片側に集中させるとネジ山が介在する分、絞り環を回す際のトルクに影響が現れれる」原理が影響しています。
ところがグリーン色の矢印で指し示しているとおり反対側の絞り値キーはついに外されてしまいました(泣)
ネジ山を有する絞り環で設計してきたが為に、敢えて/ワザと/故意に両サイドに鋼球ボールでカチカチやって絞り環の操作性を重視したのに、とうとう時流から「組立作業時の工程数削減」と言う波が、ついにKONICAにも押し寄せてきたのだと推察します(涙)
きっと、おそらく、経営陣からの鶴の一声で「工程数を削減しろ!」と神憑りな声が響き(怖)、仕方なく反対側の絞り値キー固定を省いたのでしょう。ところが、本来絞り環操作面で滑らかさを追求したが為に用意した反対側の絞り値キーだったハズなので、単に省けば良い話ではありません(泣)
推測の域を脱しませんが、おそらく設計陣は「ならば切削工程を変更させてくれ! (つまりネジ山を消滅させた筐体パーツ/基台と絞り環の設計変更)」と真正面から経営陣に問い正したのでしょうが・・認められず・・何とも不本意な結末ですが、単に省いただけで組立工程削減としてしまったのです(涙)
・・どんだけKONICAの設計人は忸怩たる思いだったでしょうか?!(涙)
細かい絞り値操作で、且つその操作性を追求したいが為に両サイドに用意した鋼球ボール用の絞り値キーだったのに・・片側だけ省いたら「ガチガチ感だけしか残らない」むしろ「悪い設計に堕ちてしまった」のは、本当は自分達のせいではなかったのでしょう(涙)
どうしてそこまで考えるのかと言えば、まさに前述した絞りユニットの部位の創意工夫で、絶妙なチカラバランスを実現させた設計陣なのに、単に省いてしまうだけで済ませるなどしないハズだからです(泣)
もはや筐体の設計変更などに利益を失うほど徹底させる意志は敵わない時流だったのかも知れません(涙)
↑その痕跡は当然ながら鋼球ボールを落とし込むほうの絞り環側にも残っています。赤色矢印で指し示したようにネジ山が備わりますが、鋼球ボールを落とし込む穴は両サイドにちゃんと用意してあります (グリーン色の矢印)。ブルー色の矢印で指し示している箇所に基準「|」マーカーと位置が合致する爪が備わります。
↑実際に絞り環をネジ込んで (ハメ込んでセットしてではなくて、ネジ込むのがこの当時はもうKONICA製オールドレンズだけだった) 組み込んだ状態を撮っていますが、グリーン色の矢印の箇所には鋼球ボールとスプリングが組み込まれて封入してあるのに対し、オレンジ色の矢印のほうは穴が空いたままです (ブルー色の矢印が基準マーカー位置)(涙)
もうこの状態の写真撮影をしても判明してしまいますが(笑)、既にオーバーホール工程の中で「黄褐色系グリース」をちゃんと塗ってからこの絞り環をネジ込んでいます。ご覧のように上の写真でさえもその塗布したグリースを確認できないほどの微量です(笑)・・たいていの整備でプロのハズなのに「白色系グリース」を塗ったくっている (大量にグリースがはみ出している
状態) なのでしょうが、当方では最低限必要な量しか塗りません(笑)
↑距離環をセットして、この後は完成している鏡筒に光学系前後群を組み込み、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。当初非常に重いトルク感だった距離環を回すチカラも相応に軽く仕上がりました・・但し、ヘリコイドのネジ山が長い分、当方がいつも得意としている軽い操作性には仕上げられません(泣) つまりネジ山数が多い分それ相応の重さを感じるシッカリしたトルク感とでも表現すれば伝わるでしょうか???(泣)
↑光学系の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが、残念ながら第1群の前玉裏面側には「凡そ1/5くらいの面積で薄いクモリが残っている」状況です。これはコーティング層の経年劣化進行に伴い変質してしまった薄いクモリなので、清掃でどうにかできる話ではありません(涙)
なお、当初バラす前の実写確認時点よりも極僅かですが、ピント面の鋭さ感が増しているように印象を受けます。その因果関係は特に過去メンテナンス時の光学系第3群の光学硝子レンズ格納が適切ではなかったように思います。締付環がスルスルと指だけで簡単に回せたので、経年進行に伴い勝手に締付環が緩むことはほぼ有り得ないので、過去メンテナンス時の本締め忘れではないかと思いますが「???」です。
いずれにしても、無限遠位置確認時の実写でも十分にピント面の鋭さ感が増して合わせて易く感じたほどなので、改善していると考えております (あくまでも当方自身の印象なので当てにはなりませんが)(笑)
↑後群側はスカッとクリアで薄いクモリも皆無です。前玉の残っている薄いクモリの領域は写真撮影には全く影響を来さないレベルと判定しています。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。当初ガチガチ感しか感じないクリック感は相応に軽めのクリック感に描写調整してあります・・小気味よいと言うには少々明確なクリック感ながらも、ガチガチ感は消えています。また絞り羽根が閉じる際は「僅かにに歪なカタチに閉じていく」ものの閉じる角度をちゃんと適正化させたあるので、当初バラす前の確認時点のような閉じすぎている具合から改善できています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
ヤフオク!などの出品ページを見ていると「あたかも親切感タップリに無水アルコールを使って清掃している」と他の『転売屋/転売ヤー』との差別化の如く述べている「アホな出品者」が居ますが(笑)、無水アルコールなどで清掃したところで経年の手垢すら除去できません(笑)
・・ちゃんと研究して調べもせずに述べているので笑ってしまいます(笑) まるでバカ丸出し状態!
↑冒頭で写真掲載した「白っぽくメッキハガレに見える実はカビ菌糸の繁殖」も全て、本当にすべて完全除去したので大変キレイです(笑)・・そんなのはとても無水アルコールなど使っても何の役にも立たず(笑)、マジッでそれら菌糸を除去するには「真剣に磨き研磨」する以外に手がありません(泣)
無水アルコールなどでサクッと清掃できるなんて、軽~く考えている時点でバカ丸出し状態です!(笑)・・そう言う低俗な『転売屋/転売ヤー』が多いですね(笑)
↑残ってしまった瑕疵内容は、前玉裏面の1/5領域に残る極薄いクモリと、距離環を回す時のトルクが僅かに重めの印象である点です。
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
オーバーホール/修理ご依頼者様向けにご依頼者様と当方の立場が「50 vs 50」になるよう配慮しての事ですが、とても多くの方々が良心的に受け取って頂ける中、今までの12年間で数人ですが日本語が口語として普通に語れない、おそらく某国人に限ってここぞとばかりに「無償扱い」される方もいらっしゃいます (漢字三文字、或いは漢字とカタカナ表記を合わせて含むお名前様だけで確定判断はできませんが)(笑)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離30cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。本日梱包の上、発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。