◎ LEITZ CANADA (ライツ・カナダ) SUMMILUX 35mm/f1.4《前期型》(LM)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)
当方は現在、ライカ製オールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を中止していますが、既に今までに扱いがあったモデルだから(2017年に一度扱い) との事で今回特別に承りました。
ご依頼内容は「光学系内の各群に生じているカビの除去」です。距離環を回すトルク感について「現状より軽め」とのご指示ですが,届いた個体のバラす前の事前チェックでは、ハッキリ言って「距離環のトルクは十分に軽い」との当方認識です。
「十分に軽い」と言う表現には実は「経年劣化が進行して塗布されているグリースの油性分が飛び始めている」との意味合いも込めてこのように表現しています。
そうですね・・具体的なトルク感の表現として疑似的に表すなら「ツルツルに近づいている 状態」とでも言いましょうか。決してツルツルまで軽い印象には至らずとも、限りなくそれに近づいていく経過と受け取られます。
どうしてそのような距離環のトルクにこだわるのかと言えば、実はこのモデルは内部に「空転ヘリコイド」部を包括した設計なので、その部位のトルク感と合わせてライカ判なので「距離計連動機構」も備わり、いわゆるダブルヘリコイド方式であり、それら全てを総合的に「軽めのトルク感」に仕上げるというのが,当方にとっては相当難儀で厄介な作業だからです (正直ライカレンズの空転ヘリコイドは触りたくない)。
そして案の定,予想どおりに展開し・・鏡胴「前部」のオーバーホール工程は難なく半日ほどで完了したものの、問題となる鏡胴「後部」のダブルヘリコイド機構は、もぉ〜これでもかと言わんばかりに丸ッと1日半を要し,合計2日間作業になりました(涙)
それで思い知ったのは・・相変わらず技術スキル・・低ッ!!!
だいたいご依頼を受けた時点で「あぁ〜、また落ち込むことになるのか・・」ともぅ既にその時点で凹んでいたのですが,結局まさにそのとおりでした(笑)
光学系は4群7枚の変形ダブルガウス型構成で、特に後群側第3群が3枚の貼り合わせレンズになっていますが、 部分で示したように 内部に「空間」を包括する空気レンズによる収差改善を狙った設計 です。また第1群 (前玉) と第4群 (後玉) の外径が近似しているという屈折率を極めていながら,然し全長の光路長は短いという特異なこだわりの設計です。
従って全て作業が完了し、ご依頼内容「光学系内のカビ除去」に関してはバッチリリ100% レベルで完全除去でき、且つコーティング層への侵食にも至っていなかったので、必然的に カビ除去痕もありません (古い時代のカビ除去痕はそのまま残っています)。
しかし問題の距離環を回すトルク感は「現状より軽め」どころか「重め」に仕上がってしまったので,例によってご請求金額よりご納得頂ける分の金額を減額下さいませ。最大値はご請求金額まで (無償扱い) と致します。
・・・・大変申し訳御座いません。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
光学系内にカビが繁殖していた因果関係は、だいぶ昔に過去メンテナンスが一度施されていますが、その際に塗布された「黄褐色系グリース」の経年劣化に伴う揮発油成分がオールドレンズ内部に廻り,且つ最終的に光学系内にまで浸透してきた時に「界面原理から油性分が留めてしまう湿気/水分に含まれる有機物質を糧として繁殖」したと推察でき、要は光学硝子レンズの外周部分から繁殖を始め,徐々に中心へと菌糸が広がっていく過程だったと考えられます。
実はライカ製オールドレンズの場合、光学硝子レンズを直接/ダイレクトに締付環で締め付け固定せず「間に1枚厚手の紙環をサンドイッチする」設計なので、それで揮発油成分の侵入を防ぎきれない、もっと言えば「カビ菌の胞子も侵入を防げない」のが現実です。
よく光学系内は締付環の硬締めで「ほぼ密封状態に近くなっている」と勝手に信じ込んでいる人が居ますが(笑)、現実はそんなハズがなく、例えば今ドキのデジタルなレンズでも「防塵防滴仕様」だとしても、取扱説明書の注意書きをちゃんと読めば「防水ではない/生活防水でもない」事が分かりますし、さらにその「防塵防滴」のシーリング箇所は「あくまでも光学系周り (或いは昇降機構部) の最低限の部位だけ」なのが附随する図面などをチェックすればすぐに分かります。
要は本当に海面下数メートル以上潜って撮影に使うような「完全防水仕様」のモデルではない限り光学系が密封される事はあり得ないのです。
そして逆に指摘するなら「光学系内と光学硝子レンズの天敵は気圧」である点を肝に銘ずる べきですね(笑)
例として挙げるなら,Carl Zeiss製オールドレンズで (日本のヤシカが製産していた) CONTAX判Distagon 35mm/f1.4 T*などに採用されている「光学系内の昇降部」はまさに気圧差で容易に破壊するので,当方も今までに荷物が届いた時点で「中玉が割れていた」個体を2本も経験しており (気圧差の影響で硝子材の耐性がMAXに至っていた際に輸送の衝撃が加わり破壊を招いた)、それ以来このモデルのオーバーホール/修理は当方自身の調達も含め一切手を付けないようにしています。
その時の破壊の進行状況は「昇降部組み付け光学硝子レンズの外周部から中心部への破壊が 進んだ経緯が推察できる割れ/破壊状況だった」為に、既に光学硝子材の経年劣化進行に伴う 気圧差耐性が極限に到達していたとみています (距離環の回転に伴い内部で独立して回転しながら直進動する仕組みの昇降筒)。
これはたまたま今までに同一モデルで2本もそのような破壊個体を経験したのですが、その時破壊してしまった光学硝子レンズまで同一の群で同じ位置だった事から、光学性能の関係からその硝子材成分に何かしら設計上の配慮があったのではないかとみています。破壊していた 光学硝子レンズは内部で昇降していた昇降筒に格納している「第4群」の平凸レンズであり、2本共同じような破壊の進行状況でした。もちろん製造番号は相応に離れた付番であり、且つ (当方で) 実際にそのような状況が発生した時期も時間的に1年弱離れていますから,単に製産時のロットの因果関係が絡む話とも考えられません。そのような経緯から光学硝子材精製時の含有成分の配合問題とも受け取られます (因果関係はいまだに不明なまま)。
その他にも割れていた個体はありますが、気温差 (夏の高熱/冬の低温) よりも恐ろしいのは「気圧の変化」です!(怖)
そしてその気圧差によって経年で促されるのが「締付環の緩み」なので、確かに固着剤でガッチガチに固めるメリットは期待できますが、たかが固着剤如きで「金属製の締付環の緩みは防げない」のが現実です。何故なら、締付環の材がたいていの場合でアルミ合金材だからです。
そんなワケで、今回の個体のように光学系内に湿気や水分が侵入しにくくなるようワザワザ「紙環 (紙製の環/リング/輪っか)」を間に挟んでサンドイッチすると言う、おそらく数多く 存在する光学メーカーの中でも唯一に匹敵するくらい徹底的な対策を施していたにも関わらず「然しカビは繁盛していた」のが現実ですから、電子防湿庫などで保管していれば安心など との過信は禁物ですね(笑)
ちなみに上の全景写真で絞り羽根 (10枚) のさらに直下に並べた環 (リング/輪っか) の中で、黒色の左端と右端の2つが「紙環」です。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑10枚の絞り羽根を組み込んで最深部に絞りユニットをセットした状態を撮りましたが、実はこのままではまだ絞りユニットは一切固定されておらず「光学系前群格納筒の締め付け固定で代用」させるという設計から、製品開発時点で既に「商品全高とコンパクトさを相当気にしていた」事が伺えます。
何故ならここに絞りユニットの固定環 (リング/輪っか、或いはC型留具) を配置させれば相応に横幅が増し,或いは全高が増大していくのでそれを嫌っていたと捉えています。
なお、一つ前の写真で絞り羽根を写していますが「絞り羽根1枚1枚に白っぽい斑点が残っている」のは、絞り羽根の表裏面に赤サビが相当なレベルで出ていた為で、それら赤サビを除去したので僅かに白っぽく写っています (清掃綿がサビで真っ赤になった)。
従って過去に相当油染みしていた時期があったようです・・。
また上の写真をご覧頂くと絞りユニット内の「開閉環」が一番外側に見えて写っていますが、既に当方の手で「磨き研磨」が終わっています。一部ネジ穴の箇所を見れば一目瞭然ですが、この「開閉環」の金属材は真鍮 (黄銅) 製なのが分かります。
しかしご覧のように「磨き研磨したのに濃いグレー状の色合いになっている」のは「そのような色合いの微細な凹凸がある梨地メッキ加工が施されているから」です。
つまりはちゃんと経年での油染みまで考えて、できるだけ揮発油成分が絞り羽根まで廻らないよう配慮した設計と対策を講じて造っているのがよ〜く分かる例ですね(笑)
さすがのライカ・・です!(驚)
逆に指摘するなら、過去メンテナンス時にこの鏡筒内部にまでグリースを塗って整備していたその整備者の認識が、そもそも製造メーカー/設計者の意に反する仕業なのだと言いたいですね・・!(怒) 「観察と考察」する事で,今実際に自ら処置を施そうとしている作業が「理に適っているのか否か」までハッキリと見えてくるのに、それをしようとしていない整備者だったのが過去メンテナンス時点だと (これだけで) バレてしまいます(笑)
従って、このような真鍮 (黄銅) 製パーツに発生している「極僅かな緑青の痕跡」さえも、当然ながら決して見逃しません!(怒)
↑このままではすぐに絞り羽根がバラけてしまうので光学系第2群の格納筒を「硬締め」で 締め付けてセットしたところです。逆に言うならこの光学系第2群の格納筒裏側は「平滑性が担保されないと絞り環操作が重くなる」ワケで,当初バラした直後に視認したところ「絞り ユニットの開閉環や第2群格納筒の縁に緑青発生」だったので、おそらく過去メンテナンス時にグリースを塗って滑らかにしていた時期があると推測します。
一応当方のオーバーホールでは光学系内にグリースを塗布する事は,何か目的/理由がない限り処置しません。
逆に言えば今回のオーバーホールでは十分当方の「DOH」で平滑になったので,グリースなど塗らずにスムーズに一切の抵抗/負荷/摩擦なく絞り羽根が開閉しています。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上部が前玉側方向になります。鏡筒には横にスリット/切り欠き部分が用意されていますが、実はこのスリット/切り欠きは反対側にも同じ長さ分用意されており「両サイドで絞り環と連結して絞り羽根の開閉を駆動する方式」を採っています。
この当時のライカ判オールドレンズには意外と多い設計であり、その目的とすることは「軽い操作感の絞り環操作と共に軽いクリック感を与えて確実に絞り羽根を開閉させる」のを狙った、やはり独特のこだわり設計です。
従って前述の「絞りユニット内開閉環と光学系第2群格納筒の接触面での平滑性担保」が非常に重要な話になってきて、おそらく過去メンテナンス時には絞り環操作が重すぎたのでグリースを塗っていたのだと推察します (両サイドから2箇所で絞りユニット内の開閉環に連結するから)。
↑そして絞り環を被せる為のベース環をセットします。既に絞りユニット内「開閉環」との連結の為に「開閉キー」と言うシリンダーネジが刺さって連結しています (赤色矢印)。
◉ シリンダーネジ
金属製の円柱 (相応な長さ) にネジ部が備わる特殊ネジ
↑今度はひっくり返してそのまま撮影しました (写真上部が後玉側方向)。
すると絞り環用のベース環がセットされ、且つそれを押さえ込んで保持する役目の「C型留具」が刺さっています。
実はこの部分の設計もライカ判オールドレンズの特徴的な点で、一般的なオールドレンズ (日本製のNikon/Canonも含む) ではこの「C型留具」とその固定/保持対象となるパーツ (ここでは絞り環用ベース環) との間には「マチとなる隙間が極僅かにある」のが普通です (僅か0.5ミリ前後の話) が、ライカ判オールドレンズの多くのモデルで使われている「C型留具」にはマチがありません(笑)
要はマチを用意せずとも確実に刺さって、且つ平滑性まで確保できている設計と、それを裏付ける「切削精度と面取り加工」が保証されているからと言えます。
このような徹底的なこだわりこそが「まさに最終的な製品価格までも裏付けている証」だと,当方では認識しています (つまり内部構造や各構成パーツの仕上がり精度/加工から捉えた価値観という意味)。
ある意味、ご覧のようにC型留具もベース環も必ず頻繁に接触して回転方向での駆動による抵抗/負荷/摩擦が起きている箇所なのに「経年による耐性をちゃんと考慮しているからこそできる設計」なのであって、そこには金属材の成分や表層面のメッキ加工の精度に至るまで「全てが計算し尽くされている証」とも言い替えられると考えます。
何はともあれ、これ程までに徹底的にこだわった設計とそもそもそれを支える「思想/ポリシー」には、本当に脱帽するしかありません!(涙)
それが・・まさにライカなのです!(当方の内部構造と構成パーツの素材や仕上げ方から捉えた個人の感想)(驚)
なお,グリーンの矢印で指し示していますが、前述のC型留具で「両サイドにある絞りユニット内の開閉環との連結用キーに対する適切な応力」が計算済なので(笑)、ここの鋼球ボールは1個で十分だと言う設計者の思いが表れていて、なかなかオモシロイです。しかもここの鋼球ボールがカチカチとクリック感を実現する際の反発力 (クリック感の強さ) を決めているのは「板バネ」なので、当初バラす前のチェック時点で「少々ガチガチの印象のクリック感」だったのが,オーバーホール後の状態では「クンクンと指に伝わる心地良い響きのクリック感」に戻り、絞り環操作だけでも楽しめてしまいます(笑)
要は「板バネを使ったクリック感はスプリングのクリック感とは違う」点をちゃんと真面目に設計して実現した構造だからこその「その仕上がりを忠実に再現させた」次第です(笑) これをコトバで言い表すなら「スプリングはカチカチで板バネはクンクン」と言う感触です(笑)
↑光学系第3群の貼り合わせレンズをセットしたところですが、ここの中心部に盛大で本格的に菌糸を伸ばしているカビが繁殖していました。
↑このモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割方式なので,前の工程で鏡胴「前部」がほとんど完成した為、ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に入ります。
鏡胴「後部」はマウント部とダブルヘリコイド部になります。
冒頭で説明した触りたくない「空転ヘリコイド」部分がこのマウント部の内側に位置します (グリーンの矢印)。また切削されているネジ山は「距離計連動ヘリコイドのメス側」です。
一方上方向にそびえ立つのが「距離環用直進キー」なので、これが距離環のヘリコイド (オス側) に刺さることで、距離環を回すと結果的に鏡筒が繰り出されたり/収納したりする仕組み です。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
↑こちらは前述の「空転ヘリコイド」にハマるもう一方のパーツです。ここにヘリコイド (メス側) が切削されていて、距離環用のヘリコイド (オス側) がネジ込まれるので鏡筒の直進動が 実現できます。
なお一つ前の写真共々、グリーンの矢印で指し示している箇所は「鏡面仕上げ」であり、互いが接触しながら回転駆動する箇所を意味しますから「グリースだけに頼った整備」だとおそらく専用グリースが必要になります。
↑こんな感じで組み込まれて2種類のネジ山が互いに「逆方向で回転していく」のを指し示しています (赤色矢印とブルーの矢印)。実際の動き方はもちろん距離環の回転に伴い最短撮影距離位置の方向に対して「鏡筒の繰り出し」であり,他方無限遠位置方向への回転時には「鏡筒の収納」であって、当然ながら「距離計連動ヘリコイドの繰り出し/収納の動き方も同じ」ですが実はそれを実現しているヘリコイドネジ山の切削方向がご覧のように真逆なのが分かります。
これは互いに同一方向のネジ山で切削していると経年の摩耗でトルクムラが起きる因果関係になり兼ねないと言う金属材の応力が影響する話ではないかと推察しています。
また「直進キー」で今度はマウント部側方向に飛び出ている「距離計連動ヘリコイド用の直進キー」もグリーンの矢印で示しています。写真には写りませんが,L字型で内部に飛び出ていてマウント方向に飛び出しています。
↑指標値環をセットしたところです。ネジ山の切削方向が互いに逆方向のメスネジが備わり、且つグリーンの矢印で指し示した位置に距離環用の「直進キー」が見えていますね (上方向に飛び出ている)。
つまりダブルヘリコイド方式なので、距離環用と距離計連動用の2つの「直進キー」が互いに逆方向で内部に飛び出ているのが原理です。従って「距離環を回すチカラは2つの方向に分かれて伝わるのでトルクの重さが決まる」原理です。
この後は距離感をセットしてから完成している鏡胴「前部」に光学系前後群をセットしてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
↑4年ぶりにこのモデルを扱いましたが、やはり「当方の技術スキルが低すぎ!」という反省しかありません・・(涙)
いろいろ・・申し訳御座いません!
こんなことなら、ハッキリ言ってオーバーホール/修理しないほうが、扱い易いトルクだったとしか言いようがありません!
すべては当方のせいです・・。
確かにヘリコイドグリースを古いグリースから入れ替えるだけで「重めの方向に転じる」のは道理ですが、そうは言っても当方のポリシー「違和感なく撮影に臨める」とはあまりにもかけ離れた結果であって、これを弁明できるハズがあり得ません!
↑せめてもの救いは光学系内の全ての群に生じていたカビが100%完全除去できカビ除去痕すら残っていない点だけです。
・・と言っても救いになっているのは当方自身の話であって、本当に申し訳御座いません!(涙)
光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。
↑光学系後群側も赤丸で示した内側のまさに中心部分にカビが盛大に繁殖していましたが、完璧に除去できました。
ところが残念ながらこの赤丸の外側〜外周に掛けての部分は,貼り合わせレンズのバルサム切れが起きています。既に白濁が始まっているので、さすがにこの貼り合わせレンズは3枚貼り合わせで、且つ空気レンズまで包括しているのでライカサービスや専任会社での再貼り直し作業が必要です (当方には電子検査機械が無いので芯出しができません)。
・・申し訳御座いません。
↑10枚の絞り羽根に相当な領域で発生していた赤サビも完全除去できました。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑冒頭解説のとおり、結果的に「重めのトルク感」に仕上がってしまいましたので、本当に 申し訳御座いません・・。
何一つ弁明できません・・(涙)
丸一日半かかって全部で14回グリースを塗り直したり「鏡面仕上げの磨き研磨再処理」を繰り返すなど、考えられる可能な限りの処置を講じましたが、どうにも軽くできませんでした。
おそらく当方で所有している「黄褐色系グリース」の性質がこのモデルの「空転ヘリコイド」の材に適していないのだと考えますが、どうにもなりません。
↑結局、ご依頼内容の「カビの除去」だけは成し遂げましたが、ご依頼内容ではない部分の「距離感の重いトルク感」並びに「バルサム切れ改善の未処置」さらに最も責めるべきは 「ご期待に反してしまったこと」に対し、本当に心からお詫び申し上げます。
一応ご依頼内容のカビ除去のみ達成しているのでご請求が発生しますが,届いた個体を操作 頂きご確認後に「ご納得頂ける金額の減額」をお知らせ下さいませ。もちろんメールで「無償!」と3文字返信するだけでも構いません・・(涙)
重ね重ね申し訳御座いません・・。
どうかこのブログをご覧頂いていらっしゃる皆様も、是非とも「コイツの技術スキルは低い」とご認識頂きたく、切にお願い申し上げます。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f11」での撮影です。そろそろピント面の解像度が「回折現象」の影響で低下し始めています。ここまでの実写をご覧頂ければ分かりますが、前述したバルサム切れの影響は「一般的な撮影なら影響が少ない」ですが「光源や逆光撮影時にはフレアが相応に多めに出てくる」為に、おそらくコントラストの低下を招くと考えますので、ご留意下さいませ。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。またご期待に反した結果に仕上がりましたこと、改めてお詫び申し上げます。申し訳御座いません・・。