◎ SANKYO KOHKI (三協光機) KOMURA 105mm/f2.5《後期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、三協光機製
中望遠レンズ『KOMURA 105mm/f2.5《後期型》(M42)』です。


いつもヤフオク! に出品している「KOMURAシリーズ」は、中望遠レンズの105mm/f3.5ばかりなのですが、今までにオーバーホール/修理ご依頼分で2本この開放f値:f2.5モデルを扱いました。その描写性のポテンシャルにスッカリ魅入られてしまい、この開放f値:f2.5モデルの調達に臨みました。

ところが、1本目をゲットしたところ光学系内第2群に全面に渡るバルサム切れでクモリが発生しており、敢え無くジャンクに堕ちました。意を決して再び1年後に2本目を調達。しかしその2本目も今度は光学系第4群 (後玉) のクモリが除去できず (コーティング層の経年劣化進行) やはりジャンク堕ち(泣)

何と今回が3年間で3本目の挑戦という経緯です・・(笑)
(かわいそうな個体が2本転がったままです)

  ●               ● 

1951年〜1980年まで東京都台東区に存在していた光学メーカー「三協光機」は、当初は下請けとして活動し「Chivanon/Chibanon (チバノン)」のブランド銘で8mm用レンズや引き伸ばしレンズを開発製産していたようです。

その後独自ブランドの「KOMURA−/KOMURANON (コムラー/コムラノン)」で一般向け民生用オールドレンズの他に中判〜大判サイズまで開発しコストパフォーマンスの良さから定評があったようです。

いつも好んで扱っている105mm/f3.5モデルのほうは、光学系が3群3枚のトリプレット型構成なので、背景に意図的なシャボン玉ボケや円形ボケをキレイに表出させた写真が撮れます。またこの当時の三協光機製オールドレンズの特徴的な描写性として「リアル感の凄さ」を感じるので、その要素も併せ持つのが105mm/f3.5の褒めコトバです(笑)

しかし、今回の105mm/f2.5を狙っていた理由はシャボン玉ボケや円形ボケが目的ではなく、むしろ逆にそれら円形ボケが表出しない「滑らかな/特徴的な背景ボケの滲み方」を狙ってのことですから、ある意味105mm/f3.5とは対極的な性格の持ち主ではないかとも考えられます (ボケ味の話)。

また一つには、105mm/f3.5が苦手としている (開放f値の暗さと3枚玉の要素から) ダイナミックレンジの表現性/追従性について、やはり開放f値が明るい分有利になると同時に、光学系の設計から来るポテンシャルをちゃんと表現できている点をメリットと捉えています。

さらに上位格の105mm/f2に手を出さずに今回の105mm/f2.5をチョイスした理由は、さらなる大口径による大型モデルよりもコンパクトで扱い易いながらも、その光学設計の類似性から似たような描写性を期待できる事から「敢えてf2.5モデル」と言う次第です(笑)

・・と何だかんだとこじつけても、詰まるところ「KOMURAシリーズ」の特徴的な表現性に惚れ込んでいるのは間違いないかも知れません(笑)

今回扱う105mm/f2.5は、1958年に先に登場していた105mm/f2.8の後継モデルとして1964年に発売されていますが、実は先代の105mm/f2.8の光学系設計を引き継がずに、上位格モデルとして1960年に発売された105mm/f2からの光学設計を採り入れました。

ここがポイントで、その描写性のポテンシャルには105mm/f2.8とは全く異なるダイナミックレンジの広さに、とても滑らかなアウトフォーカス部の滲み方の傾向に、単なる後継モデルとしての位置付けではなかった事が読み取れると考えています。

つまり中望遠レンズ105mm域の戦略として、フラグシップモデルの105mm/f2に対しその下に今回のモデル105mm/f2.5を配し (f2.8モデルの生産をやめて) 廉価版モデル105mm/f3.5へと繋げる意図が汲み取れます。

それが今回このモデルを扱う (注目した) 理由であり、少々大振りなf2モデルをチョイスせずにコンパクトながら実はフラグシップに匹敵し得る描写性を併せ持つ部分に魅力を感じました。

光学系は4群5枚の拡張エルノスター型構成で、上位のf2モデルと酷似した光学設計を採っていますが、もちろん各群の曲率や厚み/サイズなどは上位格モデルとは異なります。

第2群を1枚追加して (拡張して) 貼り合わせレンズとしたところに収差改善の拘りを感じ、且つ前後群のパワー配置までイジったところが戦略面での意思の表れのように考えます。

ちなみに、コーティング層はモノコーティングなのでアンバー系の光彩ですが、実は各群の裏面側はブル〜のコーティングが蒸着されているので、見る角度によってはブル〜の光彩を放ちます (撮影写真はモノコーティングなのでオート・ホワイト・バランス設定をOFFにすると暖色
寄りになる)。

今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

なお、今回扱うモデルは「後期型」ですが「前期型」は筐体外装の
メッキ塗膜仕上げが梨地仕上げで、且つ刻印文字の意匠も違います。
(左写真は前期型)




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から円形ボケが破綻して背景ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、そもそもシャボン玉ボケなど真円の円形ボケ表出が苦手な傾向です。

二段目
基本的にアウトフォーカス部の滲み方が滑らかで自然に溶けていくのですが、画の周辺域や一部収差の影響が極端に現れるボケ方があり、その印象の乱れたボケ味をワザと集めてみました。これはこれで「効果」として使うつもりなら活かせると思います (イヤミがない)。

三段目
開放f値:3.5モデルと共通する要素ですが、現場の臨場感を写真に写し込む「リアル感」に大変優れているので、それを感じる印象の実写を左から2枚ピックアップしました。また前述のとおり明暗部の幅が非常に広いのでダイナミックレンジの広さが特徴的です (右側2枚)。ライトト〜ンも決して彩度を落とした色合いで染まってしまわずに、ちゃんと陰影を残して表現できているところがさすがです (開放f値:f2と同じメリット)。

四段目
被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力にも長けており、ガラス質や木部、或いは外壁の質感の相違をちゃんと取り込んでいます (左端)。また開放f値:f3.5モデルと同様人物の表現性は相当ポテンシャルが高く、特に開放f値が明るい分シ〜ンを選ばずに使えそうなところがメリットになります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は105mm/f3.5モデルと近似していますが、ヘリコイド (オスメス) の駆動概念 (設計) だけは
全く別モノです。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは鏡胴が二分割方式なので「前部/後部」に分かれ、ヘリコイド (オスメス) は鏡胴「後部」側に配置されています。

↑さて、出てきましたが(笑)、当方が「手裏剣」と呼んでいる特異な方式の絞り羽根です。16枚ある絞り羽根を全て広げて撮影しているので「手裏剣」のようなカタチに見えますが、もちろん実際に組み込まれる際は全ての絞り羽根が重なった状態になります。

左写真は絞り羽根の端部分を拡大撮影していますが、特異な設計概念で絞り羽根を作っています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

特に1950年代〜1960年代の一部の日本の光学メーカーに採用されていた絞り羽根の設計方式で、藤田光学工業や一部は旭光学工業でも使われていた設計です。

つまり一般的に「絞り羽根のキー」は金属製の突起棒をプレッシングの際に打ち込む方式が多いのですが、これらのメーカーでは絞り羽根のキーの位置に「十字型の切り込みを入れてプレッシング時に折り曲げる事で羽根を用意する」設計を採っていました。

十字型の切り込み」を入れるので、折り曲げると「4枚の羽根」ができあがるワケです (左写真)。この羽根を穴に差し込んで外れないようにさらに折り曲げているのが上の「手裏剣」状態であり「位置決め環側」を撮影しています。

一方、反対側の羽根は「開閉環」と言う環 (リング/輪っか) に刺さるので、絞り環が回る事で「開閉環」が回って絞り羽根が開いたり閉じたりしている仕組みです (左写真)。

ここでのポイントは「ちゃんと絞り羽根や環/リング/輪っかを清掃できていること」です。

何を言いたいのか?(笑)

今回の個体も過去メンテナンスが施されており、ヘリコイド (オスメス) には「白色系グリース」が塗られていて既に経年劣化で「濃いグレー状」に変質していましたが、実はこの絞りユニットをその過去メンテナンス時に分解していません(笑)

分解せずに (解体せずに) おそらく綿棒か何かで溶剤で拭いただけの清掃作業だったと考えられます。

経年の間に発生していた「絞り羽根の油染み」が時間が経って粘性を帯びてきた時、この方式の絞り羽根の設計は「絞り羽根同士が互いに噛み易くなる」問題をはらんでいます。

つまりそれぞれの絞り羽根に用意されている「キーとしての役目の羽根」のカタチが必ず一定ではない為に、隣り合う絞り羽根の「特にくの字型で凹んでいる箇所」で互いが噛み易くなります。

実際、今回の個体も16枚中5枚の絞り羽根が互いに噛み合っていたようで「既に変形していた」ワケです。噛み合うとその箇所で絞り羽根が膨れあがるので、その5枚の絞り羽根は水平を維持しなくなり「への字型に膨れている状態」になります。するとその端にある「キーの役目の羽根」が折れる原因になり、1枚でも羽根が折れたら最後「製品寿命」に至るワケです (4枚のうち1枚でも羽根が折れたら刺さっている状態を維持できなくなるので絞り羽根が外れてしまうから)。

何枚の絞り羽根を実装していようが、1枚でも絞り羽根が脱落したらオールドレンズとして
機能しませんョね?(笑)

それゆえ、当方のオーバーホールでは必ずこの方式の絞り羽根でも「広げて (手裏剣状態にして) 1枚ずつ清掃する」ワケです。仮に位置決め環側まで外してしまったら、途端に羽根が折れてしまいます (だから手裏剣状態にしかできない)。

実際清掃したところ、16枚全ての絞り羽根に油じみの汚れが残っており、一部にはサビも発生していましたから相当な年数放置プレイだった事が分かります (もちろん変形していた5枚の絞り羽根も水平に戻した)。

その意味で、この方式の絞り羽根の設計だった場合、ここまで完全解体してちゃんと清掃している整備は少ないです。

↑16枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。ご覧のような「ほぼ真円の円形絞り」で閉じていきます。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。4群5枚の拡張エルノスター型構成なので鏡筒の深さ (長さ) がありますが、写真では分かりにくいですが「極微細な凹凸の梨地仕上げメッキ加工」が鏡筒の全てに施されています。つまり経年の「揮発油成分」を嫌った処置 (防汚加工) です。

↑まずは「絞り環」を組み込みますが、赤色矢印で指し示したようにイモネジ用の「下穴」が2箇所隣接して空いています。このうち1箇所だけが本当の製産時点で用意されていた「下穴」であり、もう1箇所は過去メンテナンス時にドリルで用意された別の下穴です。

すると過去メンテナンス時に組付けをミスってしまったのか(笑)、絞り環の停止位置がズレていた事まで判明してしまいますね。

つまりごまかしのメンテナンスをしていた事がバレてしまったワケです(笑)

↑さらに上に「プリセット絞り機構」をセットします。上の写真を見ると、ちゃんと「イモネジの下穴」が上下で一致しているのは「1箇所だけ」なのが分かります (つまり右側の下穴が過去メンテナンス時にごまかしで用意した穴)。

↑まずは「プリセット絞り環」をセットします。ご覧のとおりイモネジで締め付け固定するワケです。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種

↑さらに「絞り環」側も組み付けて、これで鏡胴「前部」が完成です (後は光学系前後群を組み込むだけの状態)。

↑ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に入ります。マウント部 (指標値環兼ねる) です。

↑真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑さらにアルミ合金材のヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑距離環を本締めで完全固定します。このモデルには「無限遠位置微調整機能」が備わっていないので、ヘリコイド (オスメス) の組み込み位置をミスると後から微調整ができません。また鏡胴「前部」も鏡胴「後部」側にネジ込み式固定なので、鏡胴「前部」のネジ込み位置を変更して無限遠位置の微調整をしようなどと試すと、プリセット絞り環/絞り環の位置がズレてしまい基準「」マーカーと一致しなくなります。

この後は光学系前後群を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

修理広告     DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが完了しました。3年掛かりで2本も (光学系の状態が悪くて) ムダにしましたが(笑)、ようやく3本目の調達でまともな個体にめぐり会えました。市場では105mm/f2は時々見かけるのですが、こちらの105mm/f2.5の流通数は少なめです。

当方の評価では相当なポテンシャルを秘めたモデルと考えますが、コンパクトな筐体サイズとも相まり開放f値:f2.5の明るさが撮影シ〜ンに対する対応能力の高さにも繋がっています。

今までに手に入れた (ジャンク品になってしまった) 2本も同じでしたが、どうしてもこの当時のオールドレンズは距離環を回すトルクが非常に重くなってしまい、とても楽にピント合わせできる状況ではありません。特に今回のモデルは「ピントの山がアッと言う間」なので、ピント合わせの微動がし辛いとなれば、もぅそれだけで持ち出す気持ちが潰えてしまいます。

その意味でオーバーホール済で軽い操作性を実現できた個体は、それだけでも魅力があるかも知れません。そういう事柄が焦点距離:105mm辺りの選択眼の一つになったりします。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。当初手に入れた時は、やはり第3群〜第4群に全面に渡るクモリが生じていたので今回もアウトなのかと一瞬落胆でした。

しかしご覧のとおりLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。第3群のコーティング層に一部経年劣化が残っている為、外から光学系内を覗き込むと端部分に「汚れ/拭き残し/コーティングムラ」のように見えてしまう箇所がありますが、3回清掃しても除去できなかったコーティング層の経年劣化です (従ってクレーム対象としません)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。少々「極微細な気泡」が後群側には多めですが、パッと見で「微細な塵/」の類に見えがちですが「気泡」です。

気泡
光学硝子材精製時に適正な高温度帯を一定時間維持し続けたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として出荷していました。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:8点、目立つ点キズ:6点
後群内:17点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
特に第3群外周の一部にはコーティング層の経年劣化を視認できる汚れ状の箇所があります。
・光学系内には「極微細な気泡」が複数ありますが、この当時は正常品として出荷されていましたので写真にも影響ありません(一部塵/埃に見えます)。
(極微細な点キズは気泡もカウントしています)
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑16枚の絞り羽根もキレイになり「プリセット絞り環/絞り環」共々確実に駆動しています。「プリセット絞り環」の操作は完全なクリック式なので、そのままカチカチと回すだけでOKです。また「絞り環」側は無段階式 (実絞り) です。

絞り羽根が閉じる際は「ほぼ真円の円形絞りを維持したまま」閉じていきます。なお、この当時の絞り羽根は「カーボン仕上げ」なので互いが擦れ合う箇所はご覧のように剥がれて地が見えていたりします。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・このモデルは鏡胴が「前部/後部」二分割式なのでフィルター枠にフィルター/フードなどを強めに装着してしまうと着脱時に鏡胴「前部」が一緒に回ってしまう為ご留意下さいませ(再整備は有料になり往復送料も実費ご負担頂きます/当方整備の問題ではなく設計上の仕様です)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・<B>当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません</B>(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑今回の出品に際し附属品を一緒に撮影しました。本体の他、金属製の純正被せ式前キャップに汎用ネジ込み式樹脂製後キャップ、さらに中古品ですがちゃんと清掃したスカイライト・フィルターに、ステップアップリング (⌀48→⌀55mm) と純正金属製フードです。

特にこのモデルは開放側 (f2.5〜f2.8) 辺りで使う時、光源や逆光でフードが必須になってくるのでありがたいです。金属製の被せ式前キャップはカパカパだったので裏側をテーピングしています (少々キツメなのでフィルターに装着して下さい)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑ここからは念の為に「プリセット絞り機構の操作方法」について解説しておきます。

まず上側が「プリセット絞り環」でありカチカチとクリック感を伴う操作性になっています。その直下が「絞り環」です。この「プリセット絞り環/絞り環」の別を間違えて認識するとプリセット絞り機構の操作方法が頭に入りません(笑)

必ず基準「」マーカーに対する位置合わせで設定絞り値を判断します (グリーンの矢印)。解説では設定絞り値を「f4」にします。

上側の「プリセット絞り環」をブルーの矢印①方向にカチカチとクリック感を伴いつつ回します。

↑基準「」マーカー位置に設定絞り値「f4」が来ました (グリーンの矢印)。

この時、指で掴んで回したのは「プリセット絞り環」側ですから、基準「」マーカーの位置にある「絞り環」側f値は「まだ開放f値:f2.5のまま」です。

ここがポイントで、よくオールドレンズ沼初心者の方々が分からないと言って質問してくる事柄です。絞り羽根が開放f値のままと言うことは、そのまま明るい状態でピント合わせできますョね?

だから「プリセット絞り環/絞り環」の位置を逆に捉えてしまうと、全くプリセット絞り機構の仕組みを理解できないのです。

距離環を回してピント合わせを行いシャッターボタンを押し込む前の段階で「絞り環側をブルーの矢印②方向に回す」一手間を入れます。

つまり「絞り環」側は時計と反対方向に回せば (上の写真で右方向)「絞り羽根が閉じる」だけです。逆に言えば「時計方向に回せば絞り羽根が開く (上の写真左側方向)」ワケです。

すると最初の操作で既に「プリセット絞り値をf4に設定した」からこそ「絞り環が止まる場所まで回しきってしまえば良い」つまりはいちいち絞り環を見ながら操作せずとも最後まで回しきってしまえば自ずと「設定絞り値f4まで絞り羽根が閉じている」状態と言えます。

この操作方法/仕組みが「プリセット絞り機構」です。シャッターボタン押し込み前に「必ず絞り羽根を閉じる操作が一つ入る」ワケですね(笑)

↑シャッターボタンを押し込んで撮影が終わったら、一応念の為に再び開放位置まで「プリセット絞り環/絞り環」の設定を戻します (グリーンの矢印)。

このモデルでは「プリセット絞り環/絞り環」が一緒に操作できるので、両方指で掴んだままブルーの矢印③方向にカチカチと回してしまえば元に戻ります。

↑最初と同じ写真ですが、開放f値:f2.5に「プリセット絞り環/絞り環」一緒に戻りました (グリーンの矢印)。

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この撮影ではフードを装着して撮影しています。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮っていますが、開放f値がf2.5なのでたいして変化しません。

↑さらに回してf値「f4」で撮っています。ピント面もインパクトもガラッと変化してきて、この違いがまた堪りません(笑)

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」ですが、まだ「回折現象」の影響が視認できないレベルです (つまり光学性能が優れている)。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。