◎ Schneider – Kreuznach Xenar 50mm/f2.8 silver(M42)
オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。
すべて解体したパーツの全景写真です。
Scbnerer-Kreuznachの「Xenar 50mm/f2.8」は1957年頃からは黒色鏡胴にローレットのアルミ材削り出し部分をクロームメッキでそのまま仕上げた、俗に言う「ゼブラ柄」の筐体が登場します。それ以降非常に多くのモデルバリエーションに分かれますが、内部構造から構成パーツに至るまでまったく異なるのでオーバーホールは大変です。
ところがこの銀色鏡胴のクロームメッキ仕上げの時代は他社と同じような構造でとても整備し易いですね。
ここからは解体したパーツを実際に組み上げていく組立工程写真になります。
まずは絞りユニットと光学系前群を収納する鏡筒です。
とても小さな鏡筒なのですが、ここに15枚もの絞り羽根を組み付けます。
この当時の絞りユニットでは絞り羽根開閉の調整機能を持たせていません。
キレイな円形絞りになっていますね。絞り羽根は以前までは「カーボン仕上げ」でしたが、既に「フッ素加工」を施す技術が確立されていたようです。
次の写真は絞りユニットを組み付けた鏡筒を立ててみました。側面に複数の「穴」が空いていますね。この当時としては珍しく円筒形のシリンダーを溝に板バネを使ってハメ込む方式をやめて、鋼球ボールを板バネで填め込む方式を採用しています。当時としては先進的な構造です。後の時代になると板バネは使われなくなり小さなマイクロバネで鋼球ボールを適度に押し込む方式に変わっていきます。理由は簡単な理由で、そのほうが板バネを固定しバネの強さを調整するよりも、たった一つの小さなスプリングを入れる穴を用意するだけで調整も必要なくなるので、生産性は格段に上がりますね。
鏡筒にプリセット絞り機構部を組み付けます。従来の「無段階絞り」方式だったプリセット絞り機構は、この時点では「クリックストップ」方式を採り入れ容易に希望する絞り値にセットできるように工夫されています。撮影が楽になるのでありがたいですね。
絞り環を組み込んで絞り羽根開閉の確認とプリセット絞り機構の調整を行っておきます。
この当時のモデルまでが、筐体が前群と後群の2つに大きく分かれた構造を採っています。前群はこの状態で完成ですので次は後群を組み上げます。
次の写真はマウント部になりますが距離環のヘリコイド(メス側)が切削されています。このマウント部のみ「梨地銀色仕上げ」になっています。
距離環(ヘリコイド:オス側)を正しいポジションにネジ込みます。ネジ込み位置を間違えると最後に無限遠が正しく出なくなります (無限遠で合焦しない)。
距離環指標値の飾り環を組み付けます。マウント部と指標値の飾り環をワザワザ分けているのにも理由があり、当レンズの「M42」マウント以外のマウントにも対応させる目的で指標値の飾り環を別のパーツとしています。その辺の「理由」なども整備していて理解していないとミスったりしますね。
距離環を組み付けて、これで鏡胴の後群が完成です。後は鏡胴の前群をこの中に差し込んで固定環で固定すれば完成。とても簡単ですね。ちゃんと正しく組み上がっていれば自動的に絞り環の指標刻印と距離環の基準マーカーがピタリと一直線上に並ぶハズです(笑)
光学系前群もとてもキレイになりました。シングルコーティングが美しく輝いています。中玉には微細なコーティングの劣化が中心部付近にあり写真にも写って見えていますね。
こちらは光学兼後群です。コーティングスポットが1点あります。
光に翳すと前玉には複数の微細なヘアラインキズがあり、光学系内はLED光照射でようやく視認可能なレベルの拭きキズや汚れもありますが、いずれもすべて写真への影響はありませんでした。
ここからの3枚の写真は組み上げが完成した状態の写真です。プリセット絞り環の指標値と距離環基準マーカーがピタリと一直線上に並びました・・良かったですね。
距離環のローレット縁に刻み込んである「Edixa-Reflex」の刻印文字の向きが、他の指標値刻印の向きと逆向きなのは気がつかれたでしょうか? カメラボデイにセットした時にレンズ銘板と同じように見えるよう、ワザと向きを変えているのですね。その他の指標値はカメラの方向から覗き込んで見ますからカメラ側を向いています。ちゃんと操作性も含めて拘った意匠デザインなんですね・・。
アルミ材削り出し部分の光沢研磨を施しています。オーバーホールするにしても外観の光沢研磨まで施してくれているところは、そうなかなか存在しないと思います。サンダー掛けしたりすると極端に仕上がってしまうので、一品一品手で研磨しています。正直、手が疲れるので銀鏡胴のモデルはあまりやりたくはないのですが・・。
この「Xenar 50mm/f2.8」は前述の通り、この後に「ゼブラ柄」が登場しさらに「黒色鏡胴」も出てきます。国内はもとより海外オークションでもそれらゼブラ柄と黒色鏡胴の「Xenar 50mm/f2.8」は僅かな本数しか出回っていません (現在は15本ほど)。最近よく見かけるのは「Retina」用のマウントで「deckel (デッケル)」タイプのモデルばかりです。一言にXenarと言ってもモデル数は多いですね。ましてやこのシルバーなXenarの出現数は・・半年に1本か1年に1本かのレベルです。本当はとても貴重なんですよ。
ここからは組み上げが完成した出品賞品の写真になります。希少価値の高い「Xenar 50mm/f2.8 silver」とてもコンパクトです。
前玉には光に翳さないと見えませんがヘアラインキズが複数あり、中玉にもコーティング劣化が中央一に僅かに見受けられます。後玉にはコースポットが1点ありますね。その他光学系内はLED光照射にてようやく視認可能なレベルの極微細な拭きキズや汚れがありますが、そのいずれもすべて写真への影響をありませんでした。
絞り羽根もキレイになり確実に駆動しており、15枚の円形絞りです。
ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用を考えたらとても状態の良い個体ですね。
このように大変状態の良い個体ですが、オーバーホールにより整備済での出品です。
距離環や絞り環の駆動はとても滑らかになり撮影時のピント合わせもし易いですね。