◎ OLD DELFT (オールドデルフト) ALFINAR 38mm/f3.5(alpa)

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ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
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今回が初めての扱いになりますが、オランダはOLD DELFT (オールドデルフト) 製広角レンズ『ALFINAR 38mm/f3.5 (alpa)』です。そもそもネット上を探してもこのモデルの実写がほとんど見つけられないのですが、僅かに発見した実写を見ると何だか眠そうな写りで、いわゆるこの当時のオールドレンズらしい「フレアが強めの低コントラストな写り」です。

光学系は広角レンズ域のモデルながらも3群4枚の典型的なテッサー型 構成を実装しており、光学系第1群 (前玉) の外径サイズは、僅か⌀12.83mmしかないと言うとても小さな光学系です。

ネット上を探してもこのモデルの構成図が見つけられませんが、右図は今回バラした時の光学系の清掃時に1枚ずつ当方の手でデジタルノギスを使い計測したトレース図です (当方の計測なので信憑性が低い)。但しそうは言ってもせめて外径サイズくらいは信じてもらえるでしょうか(笑)

すると確かにこのモデルが登場した時代背景を考えるに、戦前戦後でまだレンジファインダーカメラが主流だった時に、敢えてバックフォーカスが長い一眼レフ (フィルム) カメラ用の広角レンズ域のモデルとして光学系の設計に挑んできたところに、OLD DELFTの意地が見え隠れ しているように思えてなりません。

どうしてそのような印象を持つのかと言えば、この当時バックフォーカスを稼いだ本格的な 広角レンズ域専用光学系がまだ開発されていなかったからなのです。

フランスのP.Angenieux Paris社が世界で初めて広角レンズ域専用の 光学系設計を開発して実装したのが「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/
f2.5」であり発売は1950年になります。右図はその光学系構成図ですが、 部分が基本成分になりやはり3群4枚のエルマー型構成を採用しています。そしてその直前にバックフォーカスを稼ぐ目的から2枚の光学レンズを配置して焦点を制御しています。

逆に言うなら「RETROFOCUS (レトロフォーカス)」は「RETRO (後退) FOCUS (焦点)」の 造語として商標登録されたので、まさにバックフォーカスを稼いだ広角レンズ域専用の光学系設計なのです。つまりバックフォーカスを稼ぐ手段をまだ持ち合わせていなかったからこそ、標準レンズ域の3群4枚テッサー型構成のまま極限まで焦点距離を延伸させたから「焦点距離38mm」の設計が限界だったワケで (35mmまで延伸できなかった) 同時に「開放f値f3.5」が精一杯だったのではないでしょうか。

ある意味最新のレトロフォーカス型光学系に一矢報いるべく、まさにエルマー型光学系最後の挑戦だったとも言えそうです。

直前に2枚も前方配置させてしまったレトロフォーカス型光学系は収差と解像度の制御に課題を残しましたが、一方既に完成の域に到達していたテッサー型ならではの高解像度とピント面の鋭さが、図らずも評価を違える結果となり好評を得た事は容易に察しが付きます。

そのように踏まえつつこのモデルを今一度眺めると、ようやく「そうだったのかぁ〜!」と 感心しきりであり(笑)、またより一層の愛着が湧いてくると言うものです。オールドレンズは その背後に隠れているロマンを紐解くことで楽しみは倍増していきますね(笑)

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ALPAはスイスのボー州バレーグで1918年に創業したPignons S.A. (ピニオン) と言う時計部品メーカーが前身にあたり、1944年発売のALPA REFLEX I型から続く一眼レフ (フィルム) カメラのシリーズ銘です。初期はウエストレベルファインダーを装備しながらも分類上は レンジファインダーカメラでありマウント規格が異なります。一般的に「ALPAマウント」と言うと後に登場した「ALPA ALNEA mod.4」以降に採用されたマウント規格になります。

OLD DELFTはオランダのデルフト市で1939年創業の光学メーカーになり、初期は創設者Oscar van Leer (オスカー・ファン・リール) 氏の名前からVan Leers Optisch Industrieと呼ばれ登記上は「De Oude Delft」ですが、一般的に「OLD DELFT」の通称になっているようです。

1939年から1975年まで「OLD DELFT」で民生向け一眼レフカメラ用オールドレンズの開発/製産を続けましたが、1990年には合弁して民生向けカメラ製品市場から撤退し「Delft Imaging Systems」と 社名変更し医療機器の開発/製造を行う会社として今も現存しています (右写真は当時の工場/光学硝子レンズ切削工程)。

従って1939年〜1975年間に発売されたオールドレンズが「OLD DELFT」社の製品になり、一部はALPAにも供給していましたが
初期の頃はマウント規格が異なるので「ALPA ALNEA mod.4」以降とは互換性がありません。1951年に発売された「初期型」は同じ3群4枚のテッサー型光学系ながらも「ALFINAR 3.5cm/f3.5」と仕様が違います (右写真)。

↑今回扱った個体のマウントは上の写真左になり「一体型 (切削)」ですが、一般的に市場流通している「ALPAマウント」と言うと右側写真になり「爪の締付固定方式」を採っています。

ネット上のサンプル写真 (個体の写真) でこの「マウントの爪」の確認をしていてフッと気が 付きました! 何と製造番号が本来のシリアル値に則っていないのです。おそらく下3桁だけは少なくともシリアル値になっているとしても、頭の3桁は暗号化されています。つまり製造番号の前後で「初期型」のマウントが登場したり、上の写真左右の違いが混在しています。

すると今回の個体のマウントを見た時に「いったいどっちが古い時代の製産分なのョ?!」とちょっとイラッとしました(笑) 結論を言えば、そもそも「初期型」のマウント規格が別モノだとしても「爪と一体で切削していた」部分に共通点を見出せるので、ここは一つ心の健康の為に (年寄りには胃の消化が悪いのは良くないので)「古い時代の製産は左側の一体型の爪」としました(笑)

ALPA ALNEAシリーズ」向けとして供給された今回の扱いモデル『ALFINAR 38mm/f3.5 (alpa)』は、その鋭いピント面から当時から評価が高かったオールドレンズのようですが、僅か604本しか製産されなかった為に現在の市場流通価格も高価なまま推移しているようですね。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。そもそも製品自体がコンパクトで薄いパンケーキレンズなので(笑)、構成パーツ点数自体が少なめです。しかし 内部構造としては簡素ながらも注意点が多く「微調整の必要性」から整備者向けと言えます。(シロウト整備だと最大限のピント面に仕上げられない)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは鏡胴「前部/後部」の二分割式なので、ヘリコイド (オス側) は鏡胴「後部」に配されています。相当こだわりのある「本格的な重厚なメッキ加工」が施されており、当方が行う「DOH」で「磨き研磨」しても全くビクともしません (メッキ塗膜面が研磨で容易に擦り減らない)(笑) 素晴らしいです・・!

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑10枚のカーボン仕上げの絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。ご覧のようにとても薄くて小さな絞りユニットです。

↑上の写真はこの絞りユニットを前後に挟む光学系を並べた写真で、左端が第1群 (前玉) に なり右端が第3群 (後玉) です。

実は当初バラす前の実写チェックで強力なフレアと共に低コントラストな写りだった ワケですが、同時に「甘いピント面」でとても3群4枚のテッサー型光学系とは言い難い印象を受けました。

その原因が上の写真で、絞りユニットまで含めて光学系が「鏡筒内への落とし込み/積み重ね 方式」だったのです。このような方式を好んで採用していたのがロシアンレンズですが(笑)、 本来の鋭いピント面を確保するには相応の処置が必要になります。
(だからシロウト整備ではムリ)

↑既に当方の手による「磨き研磨」が終わった状態で積み重ねて撮ったのが上の写真です。真鍮 (黄銅) 製の光学硝子レンズ格納筒に光学硝子が1枚ずつ一体成形されていますが「積み重ね方式」は光路長確保が必須になります。

ところが過去メンテナンス時の整備者は、この各群に「反射防止塗料の着色」をやってくれました(笑) 結果、そのインク成分が経年により飛んでしまい、光学硝子レンズの表面に「非常に薄い膜 (クモリ)」になって附着していました。さらに悪いことに塗布した塗膜のせいで各群の落とし込みに抵抗/負荷/摩擦が生じてしまい「適切な状態で積み重なっていなかった」つまり「光路長不足」に陥り「甘いピント面」だったのです。

そこで各群全てを「磨き研磨」した次第ですね。全く以てロクなことをしません(笑)

いわゆる「迷光」を気にして反射防止塗料を塗りまくるのですが(笑)、それは単なる「整備者の思い込み」であり、むしろ悪影響を来しています。どうしても塗布したいなら「ちゃんと光路長確保してほしい」と言いたいですね!(怒) 何といまだにこのような思い込みで反射防止塗膜の着色にこだわる整備者が後を絶たないので本当に困ったものです(笑)

当方のオーバーホールでは必要最低限の「反射防止塗膜着色」しか実施しないので、上の写真のとおり確実に各群が重なり合っており、且つその結果としてこのページ最後の実写のとおり「テッサー型本来の鋭いピント面」に至っています (当初バラす前の実写チェック時とは雲泥の差)(笑)

もぅ今は承っていませんがヤフオク! で自ら整備しているプロの写真家から落札したオールドレンズが今までに11本も当方宛オーバーホール/修理依頼が来ました(笑) その中にロシアン レンズが何本も含まれているのですが、まさに同じ「積み上げ方式」を採っているモデルなので「光路長不足」が起きており「ちゃんと本来の鋭いピント面に戻した」ワケです。

全く以て面倒くさくて仕方ありません・・!(怒)

そもそも「ピントが甘い」など当方の責任ではないのですが、その整備したプロの写真家宛に依頼しても断られるのか、或いは信用できなくなってしまったのか当方宛オーバーホール/修理依頼が巡ってきたと言う経緯です (他人が整備した尻ぬぐいは腹が立つので、今はもう受付を止めました)(笑) それら11本のオールドレンズはたかだか数ヶ月〜2年弱の経過で起きている話ですから、いったい何の為に整備してヤフオク! に出品しているのか「???」と同時に やはり腹が立ちますね!(怒)

少なくとも当方がオーバーホールしたオールドレンズは、今のところ「7年」までは自ら回収して整備後の経年劣化状況を確認済です (滅多に整備した個体が出回りませんが)。取り敢えず「5年」までは塗布した「黄褐色系グリース」も経年劣化進行に伴い揮発油成分が内部に廻っていないことを確認しています。さすがに「7年」経過すると揮発油成分が確認できたので、今現在はそれに対応した「黄褐色系グリース」に一部変更しています (7年前に使っていたグリースと変えていると言う意味)。当方がオーバーホールを始めて既に9年が経過したので、また折りを見て回収していきたいと思います。

このように整備しきりで放置プレイではなく(笑)、ちゃんと自らの方針とポリシーに沿う結果になっているのかの「検証」にも努めている次第ですが、それは取りも直さず皆様からの評価が「低い技術スキル」とのご指摘なので (SNSでそう批判されている) 真摯に受け止めその因果関係を突きとめたい一心で回収している次第です。

もうすぐオーバーホールを始めて10年が経過するワケで、そろそろちょっと焦りが出始めていますね(笑) 10年経ってもいまだに「低い技術スキルのくせに」と罵られ続けているなら潔く自らの実力を受け入れて、引退を考えたほうが良いかも知れませんね(笑)

↑まずは光学系後群を落とし込んでからご覧のように「絞りユニット」を落とし込みます。ストンストンと落とし込んで、何の抵抗/負荷/摩擦も感じずに積み重ねられなければ適切な光路長確保に繋がりません。

↑確実に積み重ねができたので光学系前群もセットして光学系を仕上げます。

↑ひっくり返して (下側が前玉側方向) ここから絞り環の組み込み工程に入ります。

↑そもそも「無段階式 (実絞り)」の絞り環なのでいたって簡単な工程ですが、実は赤色矢印のように段差が用意されていて「絞り環が固まらないよう配慮されている」点に気が付くかどうかが整備者のスキルになります。

何故なら、ご覧のように絞り環のベース環は「アルミ合金材」だからです。一方鏡筒も含めて絞り環は「厚手のメッキ加工」ですから、ここに「マチ」を用意しないと「カジリ付」が起きて絞り環がいずれ固着してしまいます (メッキ塗膜が削れてしまう)。

その為にワザワザ (ちゃんと配慮して)「段差」を設けているので「設計者の意図をちゃんと 汲み取ったのかどうか」がこのような「観察と考察」で試されるワケです(笑)

・・と言うワケで、残念ながらオーバーホール/修理ご依頼内容の一つ「絞り環が少しガタついているように感じる」のは設計上の仕様ですから改善できません。申し訳御座いません・・。

↑鏡胴「前部」が仕上がったので、ここからは鏡胴「後部」ですが、いたって簡素な設計です(笑)

↑単に距離環 (ヘリコイド:オス側) がネジ込まれるだけの話ですが、実はOLD DELFTはここにも細かな配慮を施して設計しており「ヘリコイドネジ山のカジリ付防止策」をちゃんと採っていました。どうしてそのような配慮で設計する必要があるのかと言えば「距離環の回転域が半周に限定されるのでチカラの伝達で摩耗が生じ易いから」と言う話になります。

つまり「同一材金属による接触面の摩耗度合い」をちゃんと見据えた設計を採っているワケでこれが例えばロシアンレンズになると「そんなことお構いなし」だったりします(笑) こう言う部分にもALPAへの供給に価するポリシーを持つ光学メーカーなのか否かがちゃんと現れて いると当方は受け取っています (もちろんLeicaにも供給していたくらいなので)。

この後は完成している鏡胴「前部」を組み付けてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑なかなか市場に出回らない稀少品であり、同時にオランダ屈指の光学メーカーたる意地を見せつけられたような気持ちになる、とても小っちゃな光学系のパンケーキレンズですが、これこそがまさに『ALFINAR 38mm/f3.5 (alpa)』なのだと言わんばかりに自己主張する、なかなか整備し甲斐のあるオールドレンズです。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが、次の整備にはもう耐えられないレベルまでコーティング層の経年劣化が進行しており「極僅かにコーティング層に薄クモリが起き始めている」状況です。各群にはこの当時のオールドレンズらしく「ブルシアンブル〜」のコーティングが蒸着されています。

↑貼り合わせレンズである光学系後群もバルサム剤がちゃんと耐え凌いでくれるのでまだまだ透明感を以て頑張っています! もちろん各群全ての「反射防止塗膜」を一旦除去してから「最低限レベル」で再度塗布しているので「迷光」処理も一応済んでいます。その分「鋭いピント面」にはちゃんと改善できたので、是非ともご活用頂きたいです!

↑10枚の絞り羽根は「真円を維持した円形絞り」ですが、この当時のオールドレンズらしく「カーボン仕上げ」であり、既に真っ赤っかに赤サビが生じていました。それら錆びついたカーボンを落としてしまったので表面に油染み痕が残っていますが気にしません(笑)

よく経年の油染み痕を気にして指摘している人が居ますが、はたしてそれをキレイにする為に「研磨」してしまったら「キー脱落」の懸念が高くなるので「本来の目的である入射光の遮光制御」さえ確実に機能していれば「ヨシとする」のが当方のポリシーです。どうしてもこだわりたいなら「カーボン仕上げ加工できる整備会社」に依頼するべきでしょう (そんな処置をしてくれるのは聞いたことがありませんが)(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑当初バラす前の時点ではヘリコイドには「白色系グリース」が塗られていたので、既に経年劣化進行から「濃いグレー状」に変質していましたし、もちろんトルクムラも酷かったです。

今回のオーバーホールで塗布したのは「黄褐色系グリース」で「普通」人により「重め」の印象のトルク感に仕上がっています。残念ながら既に摩耗しているネジ山があるので (設計者が配慮した微調整を過去メンテナンス時の整備者が気づいておらず何も調整されていなかったので一部ネジ山が摩耗してしまった)、一部に抵抗を感じる箇所が残っています。

申し訳御座いません・・。

もしもご納得頂けない場合はご請求金額よりご納得頂ける分の金額を減額下さいませ。減額頂ける最大値は「ご請求額まで (つまり無償扱い)」とし弁償などは対応できません (スミマセン)。

↑ご依頼内容の一つであった距離環を回すトルクが重い点については、前述のとおり一部にトルクムラを残しながらも、実用面で違和感を感じないレベルまで軽く仕上がったのではないかと思います (これ以上軽くするには微調整を外す必要が起きるのでムリです)。

またご指摘があった「ひん曲がったツマミ部分」は専用の治具を作って叩き込んで対応しました (そのまま叩くとツマミが破損するので/ツマミを外せない為)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑「専用A」の純正前キャップが附属しますが、少々堅めの印象だったので極僅かに楽に着脱できるよう微調整を施しました (決して軽いワケではありません/軽すぎない)。

こう言う部分の細かい微調整ができるのもオーバーホールの強みだったりしますね(笑)

なお、同梱頂きましたマウントアダプタ (KIPON製とノーブランド) の距離計連動機構は、ご指示に従い取り外し「単なるマウントアダプタの状態」にしてあるので、装着してライカLMマウント化しても変わらずに快適な操作性でご使用頂けます。

ノーブランドのマウントアダプタもKIPON製と全く同じ仕様の造りですが、そもそも距離計連動機構の設計概念がダメです。クッション性を持たせた意図の設計ですが、3箇所のうちに中心部にのみ柱を入れて、その他2箇所をスプリングのままで代用している為、オールドレンズを装着した時、斜めッてしまいそれが抵抗/負荷/摩擦を増大し距離環を回せなくなる一因に至っています。

どうしてもクッション性を持たせたいなら「大きな螺旋バネ」を使って可能な限り面全体が 均質にクッションするよう配慮した設計にして、柱部分は単なる金属棒を打ち込むだけではなく「伸縮筒」と言う内外筒の組み合わせで対応させれば、何処にマウント面の突き出しが位置していても均一にクッションしてくれるハズです。さすが某国人は「更なる技術革新」にあまり興味関心が無くどちらかと言うとパクるほうと儲け話には目の色を変えたりしますね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

この当時のオールドレンズらしいと言ってしまえばそれで終わってしまいますが(笑)、ご覧のように「ちょっとフレア気味」に写るのは蒸着しているコーティング層「ブルシアンブル〜」だからであり、まさにシングルコーティングそのモノです。コーティング層の経年劣化が進行している分、少々強めにフレアが出てしまいます。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮っていますが、開放f値が「f3.5」なのでたいして変化しません(笑)

↑さらに回してf値「f5.6」での撮影です。

↑f値は「f8」に上がりました。

↑f値「f11」です。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。如何ですか? これだけ鋭いピント面になれば「なるほどテッサーだ!」とちょっと感慨深く思ったりしますね (そう思うのは当方だけですか!)(笑) この当時のちょっと前まで主流だった3枚玉トリプレット型光学系になると、背景のエッジが細くなるので立体感が出にくくなり少々ノッペリした印象に堕ちてきますから、これはやはりこだわりのOLD DELFTをちゃんと評価してあげないとダメだと思いましたね。よくぞここまで頑張ってテッサーで38mmを仕上げたものだ!(笑)

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。