◆ ZOMZ (ザゴルスキ光学機械工場) ЮПИТЕР-3 (JUPITER-3) 50mm/f1.5(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、旧ソ連は
ZOMZ製標準レンズ・・・・、
『ZOMZ ЮПИТЕР-3 (JUPITER-3) 50mm/f1.5 (L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時の旧ソビエト連邦製標準レンズ「JUPITER-3 50mm/
f1.5」の括りで捉えると27本目にあたりますが、今回扱ったZOMZ製モデルだけでカウントすると僅か7本目と言う状況です。
当方では旧ソビエト連邦時代に出回っていたオールドレンズ群を指して「ロシアンレンズ」と呼称していますが、それには理由があり、特に戦後敗戦国のドイツから戦後賠償として接収したCarl Zeiss Jena製オールドレンズ群の設計図面や資材、或いは工場機械設備などを当時在籍していた技師まで含めて本国に移送しており、それら接収された技師の中には1950年代まで本国ドイツに帰還できなかった人も居るようです。
従って戦前〜戦中はCarl Zeiss Jena製オールドレンズと言う歴然とした「ドイツ製のオールドレンズ」の歴史とその発展が残っているものの、戦後にそれらモデルの一部がコピーされたり模倣されながら、旧ソビエト連邦製モデルとして名を変えて発展していった経緯から、その特殊性を強調するが如く本家とは異なる別系統で進化発展していったオールドレンズ群との意味合いから「ロシアンレンズ」との括りで呼称しています。
さらに同様に米軍に接収されたCarl Zeiss Jenaの設計図面や権利書に技師達も居り、それらが今度は旧西ドイツの「oberkochen (オーバーコッヘン)」市で「Carl Zeiss」として戦後さらに別系統で発展していったワケで、戦前ドイツのCarl Zeiss Jenaの系統樹が分かれていった背景まで勘案すると、他の国の光学メーカーが製産していったオールドレンズ群とは全く異なる方向性を持つ点に於いて、その特殊性に配慮する必要があります。
すると旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaのオールドレンズ群も戦後に再び発展を続けていったので最終的に敗戦時の時点から捉えれば3つの系統で分かれていったと言う他に類を見ない流れと指摘できます。
その意味では例えば「Tessar」を挙げても、戦前Carl Zeiss Jena製Tessarなのか、戦後Jena製個体なのか、或いはoberkochenモデルなのか、ひいて言うならロシアンレンズのほうの
モデルなのか・・似たような光学設計を採りながらもその系統樹は全く別になる話です(笑)
今回扱った「JUPITER-3 50mm/f1.5」も基を正せば、戦前ドイツはCarl Zeiss Jena製標準レンズ「Sonnar 5cm/f1.5」が出発点であり、当時のレンジファインダーカメラ「CONTAX
シリーズ」向け製品だったモデルのコピーとして模倣されていったロシアンレンズの一つです。
それら当時の背景などについては、以前扱った『ZORKI ZK 5cm/
f1.5 Π《初期型:耳付》(L39)』のページで詳しく解説しているので、興味関心がある方はご参照下さいませ。
特に敗戦時に旧ソ連軍に接収されたCarl Zeiss Jenaの光学硝子資材を使って作られた「いわゆる再製産品」みたいなオールドレンズなのかどうかなど、なかなか奥が深いストーリーだったりします(笑)
(右写真はまんまコピーモデルの写真で絞り環に耳/ツマミが附随します)
↑上の写真は、今現在当方がこれらロシアンレンズの「JUPITER-3シリーズ」を完全解体してオーバーホール工程を進める中で、それら接収されたCarl Zeiss Jenaの資材たる光学硝子レンズを使った光学系を実装している個体なのか否かについて「その判定基準の一つとして参考にしている構成パーツの仕様に関する内容」です。
写真掲載している構成パーツとしては「JUPITER-3の中から取りだした構成パーツの一部」であり、左側から「基台」の写真2枚と「ヘリコイドメス側」の写真2枚 (右側) であり、それぞれ別個体から取り出した構成パーツです。
この中で「基台」についてはグリーンの矢印で指し示している「制限壁」の位置と、その直下の切り欠き/スリットたる「直進キーガイド (赤色矢印)」とが互いに同軸ライン上に配置しているのか、或いは角度がズレた位置での配置なのかについて、その仕様の相違を判定基準の一つとしています。
同様に右側2枚の写真たる「ヘリコイドメス側」も、敗戦時のCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子材を使っているのか否かの判定基準として「ヘリコイドメス側のネジ山数:5列なのか6列なのか???」について、それぞれ捉えています (赤色矢印)。
これらについて具体的に例を挙げるなら「接収したCarl Zeiss Jenaの光学硝子材を使っている個体の場合」は「基台の制限壁と直進キーガイドが同軸ライン上に位置」し、且つ「ヘリコイドメス側のネジ山数は5列しかない」場合に接収資材を使って精製した光学硝子材による「まんまコピーモデルのZORKI版ZKモデル」との判定を下しています。
その理由は「ヘリコイドメス側のネジ山数が1列少ないと、その分急勾配で鏡筒を繰り出す必要がある」からで、必然的に光学設計を変更しなければ鏡筒の繰り出し/収納時の光学性能が変わってしまうからです (そうしないと無限遠位置と最短撮影距離位置だけが仕様上の正しい設計で、他の実距離で撮られる写真はまるで設計から逸脱したデタラメの話に至ってしまい、そんな事はあり得ないからです)。
しかし、その場合に「距離環の回転域を決めている制御系の相違」として「基台側の仕様の違い」を判定基準としていますが、この点については残念ながら「何でもアリのロシアンレンズの世界」が影響して、いわゆる「ニコイチ/サンコイチ」と言う別個体から一部構成パーツを転用して組み立てている個体が数多く市場流通してしまっている問題が憑き纏います(泣)
例えば、製造年度 (レンズ銘板の製造番号先頭2桁が製造年度を表す) が「1951年製造」なのに、基台の制限壁が同軸ライン上に配置していない個体が顕在していました。必然的に鏡筒の繰り出し/収納の制御の位置異なるので「距離環や絞り環などの固定位置は下穴をドリルで開けて用意して変更していた」個体だったりします (つまりイモネジを締め付け固定する下穴の数が製産時点よりも3箇所、6箇所と複数多くなってしまっている個体という意味)(笑)
さらにもっと厄介なのが「そもそもレンズ銘板は好きなだけ転用できる」が為に「本当にその個体は1951年製造なのか???」との疑心暗鬼に陥りかねません(涙)
つまり光学系の状態が良い別個体からの転用品に「51xxxx」のレンズ銘板を付け替えて高値でオークションに流通させている個体など、ザラに存在するからです(怖)
・・もぉ〜そこまで行くと、いったい何を信用して良いのか本当に迷うしかありません(涙)
そんな状況なのが、特に海外オークションのebayだったりするので、お国柄もあるのでしょうが「何でもアリのロシアンレンズの世界」はそのような背景の中で今現在も市場流通している状況なので「せめて完全解体してオーバーホール工程を進める中で藁にもすがる想い」として前述のような仕様の違いを内部構成パーツの一部に見出そうとしている次第です(笑)
・・何とも笑い話にしかならないような本当に恥ずかしい状況です(汗)
↑ちなみに上の光学系構成図は、確かに今回扱った「JUPITER-3 50mm/f1.5」の光学系構成図ですが、左端から順に「プロトタイプ (量産化されず)」の光学系構成図に、中央が「まんまコピーモデルのいわゆる再製産品みたいな話のZORKI版ZKモデル」の構成図に、今回扱ったモデルも (おそらく) 含まれるはずの、ロシア産光学硝子資材で精製された再設計モデルの構成図です (右端)。
まぁ〜当然ながらオリジナルな個体が欲しければ「戦前Carl Zeiss Jena製CONTAX版Sonnar 5cm/f1.5」を入手すれば良い話ですが(笑)、そこにロシアンレンズたる「JUPITER-3シリーズ」を介在させるから、こう言う厄介な話に至ります(笑)
・・詰まる処、ロシアンレンズは最初から最後まで本当に悩ましいです!(涙)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『ЮПИТЕР-3 (JUPITER-3) 5cm/f1.5 Π《1955年製》(L39)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからは完璧なオーバーホール/修理がが完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました・・届いた箱から取り出した時の個体の状況からすると「まるで別人」みたいな印象の仕上がり状況です(笑) それらの内容について解説していきます。
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ 絞り環を回すと引っ掛かりや擦れ感にトルクムラを僅かに感じる (ご依頼内容)。
❷ 無限遠位置を実写確認すると僅かにアンダーインフ状態にしか見えない。
❸ 距離環を回すとやはり擦れ感やトルクムラを感じる箇所がある。
❹ 筐体外装のクロームメッキが何となくギラギラした感じに見える。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❺ 白色系グリースが塗布されているがさらに古い黄褐色系グリースも残っている
❻ これでもかと厚塗りで反射防止黒色塗料が筐体パーツにまで着色されている。
❼ その影響から光学系の光学硝子レンズ格納位置が適切ではなくなっている。
・・とまぁ〜挙げるとこんな感じです(泣) ご依頼内容は絞り環の操作性に関する内容だけでしたが (上記の❶だけ)、まぁ〜それはそれ「何でもアリのロシアンレンズ」ですから(笑)、こんなもんです。
↑上の写真は当初バラし始めた時に気になって撮影しておいた写真です。赤色矢印で指し示したように、筐体外装パーツの内側に何カ所か「246III」のマーキングが施されていますが、これは当然ながら当方が刻んだ内容ではありません(笑)、さらに言うなら「製造番号の刻印とも違う」次第です。
さらに「距離環」を取り外したら内部はご覧のように「アルミ合金材の削れカス」が附着していました (グリーンの矢印)。これのせいで何となく距離環を回した時に擦れ感を感じていたのかも知れませんが、当初の状況を目視できていたワケではないので「???」なままです(汗)
↑さらに解体を進めてヘリコイド群のオスメスと共に鏡筒と基台を取り外して並べて撮影しました・・まだ溶剤を使って洗浄する前の状態です。
ヘリコイドオス側の上に鏡筒を乗せて撮っており、真ん中にヘリコイドメス側、右端に基台です (赤色文字)。
ヘリコイドのオスメスのネジ山をご覧頂ければ分かりますが「白色系グリースが塗られていて既に経年に拠りグレー状に変質している状態」です(泣)
ところがグリーンの矢印で指し示したようにヘリコイドのオスメス両方のネジ山には「古い時代の黄褐色系グリースも一部に残ったまま」なので、これは日本国内の整備会社でもいまだに執られ続けている「グリースの補充」と言う、本来基剤も添加剤も全く異なるハズの「黄褐色系グリースと白色系グリースとを混ぜて使っている」結果の状況です(涙)
成分や配合が異なるグリースを混ぜて使ってしまうなど・・信じられないと思うかも知れませんが、実は「潤滑剤の括りで捉えれば黄褐色系グリースも白色系グリースも同じ潤滑剤」との概念から、そのような所為を平気で行っているらしく、本当に恐れ入ってしまいます (日本国内の或る整備会社の整備者の話)(笑)
古い時代に塗布されていた「黄褐色系グリース」が経年で油成分が飛んでしまい「スカスカになりつつある時」にバラして、新たに「白色系グリースをその上から塗り足した」からこのようになっています。
グリースの成分はもちろん、基剤も添加剤も全く異なるので、古い「黄褐色系グリース」は硬質化してきて、新たに塗られた「白色系グリース」により外へ外へと追い出され固まります
・・だから端のほうに古い黄褐色系グリースだけが寄って固まっている次第です(汗)
また当初塗布した際は「ちゃんと白色の白色系グリース」だったものの、ヘリコイドネジ山のオスメスがアルミ合金材なので「経年でその摩耗粉が混じってグレー状に変質してしまった」のが分かります。
逆に言うなら「白色系グリースよりももっと古い時代の黄褐色系グリースのほうが、むしろ褐色系の色合いを残したままであり、その当時はアルミ合金材は摩耗していなかった」ことの「まさに証拠」としてこの状況に至っているのがご理解頂けると思います。
もしも異議が在る人がいらっしゃるなら、どうして黄褐色系グリースの色合いがそのまま残りどうして白色系グリースのほうだけがグレー色に変質しているのかについて、ちゃんと道理を掲示して説明して頂きたいです(笑)
ちなみに、これら「変質してしまったグレー状のモノ」を真新しい無色透明な溶剤に浸けると「サラサラとした微細なアルミ合金材の粉」なのが下に沈下して溜まるので分かります (外に出して指でジョリジョリやれば金属粉なのも分かる)(笑)
また鏡筒を見ると、ブルーの矢印で指し示した部分には「黄褐色系グリース」がそのまま残っており (相当古い時代と推測) 且つ既に油成分が飛んでいて、ほとんど固形化しているような感じです(汗)
さらにオレンジ色矢印で指し示している箇所は「反射防止黒色塗料」を使い、おそらく「白色系グリース」を塗布した過去のメンテナンス時の同じタイミングで「執拗に厚塗り」されています(泣)・・オレンジ色矢印で指し示している箇所とそのすぐ直下の部分まで含めて着色されていました (つまり2段になっている箇所が丸ごと着色)。
↑こちらは当初バラし始めた時に取り出した光学系第2群と第3群の貼り合わせレンズです。
グリーンの矢印で指し示した箇所に、やはり「反射防止黒色塗料」が厚塗りされていたので「光学系格納筒」から、これら光学硝子レンズを取り出すことができず (シッカリハマりきっていた為に抜き出すことができない状況) 加熱処置して取り出した次第です(泣)
特に光学系第3群の貼り合わせレンズは、光学硝子レンズのコバ端のに残っているラインから「締付環で締め付け固定していた位置が極僅かにズレており (おそらく隙間が在った) そのズレ分で格納筒との接触部分が痕として残っていた」次第です。
従って、これが影響して当初バラし始める前の実写チェック時点に「無限遠位置のピントが相当甘い印象に見えていた」理由ではないかとみています・・つまりアンダーインフだったと指摘できます(涙)
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す
◉ バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態
◉ ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態
◉ アンダーインフ
無限遠合焦しない状態を指し、距離環距離指標値の∞位置に到達するまで一度も無限遠合焦せず、且つ∞位置でも相変わらず無限遠合焦していない状態を現す。一度も無限遠合焦しないので遠景写真が全てピンボケになる。
◉ オーバーインフ
距離環距離指標値の∞刻印に到達する前の時点で一度無限遠合焦し、その位置から再び∞刻印に向かうにつれてボケ始める状態を指す。一度は無限遠合焦しているのでその位置で撮影すれば遠景のピントがちゃんと合焦している。
↑こちらはやはりバラしている最中に撮ったレンズ銘板の写真です。レンズ銘板まで着色されていたので、それが分かるようにわざと故意に半分だけ磨いて撮影しています(笑)・・赤色矢印の箇所が着色されている当初の状態のままで、一方グリーンの矢印で指し示している箇所は既に当方が「磨き研磨」した後なので「製産時点のメッキ加工が露わになっている」状態です。
別にレンズ銘板は光学硝子レンズに大きく影響を来しませんが、使用しているウチにこの着色したインク成分がどのように光学硝子レンズに影響を来すのかは「???」なままです(怖)
・・従って全て「厚塗りされた反射防止黒色塗料」を溶剤で除去して (溶剤で剥がれます) 本来の製産時点のメッキ塗色 (濃い緑色) に戻した次第です。
・・当方が勝手にヤッている内容なので気に入らない場合はご請求額から減額下さいませ。
↑こちらもバラしている最中の撮影です (ヘリコイドは洗浄済です)。ヘリコイドオス側の内側に鏡筒がネジ込まれる設計なのですが、ご覧のように「鏡筒の後群側の端部分は距離計連動ヘリコイドの縁から外には飛び出ない」設計です (ブルーの矢印)。
グリーンの矢印で指し示している箇所が「距離計連動ヘリコイド」になります。
つまりこの鏡筒の後群側格納筒の外壁部分は、オールドレンズが組み上がった後でも一切外には露出せず露わにならない部位なのがこの写真から分かると思います (内部にネジ込まれたままで稼動部ではないから)。
↑今度はヘリコイドオス側の内側にネジ込まれていた鏡筒を取り出して、ヘリコイドオス側の左横に並べて撮影しました。赤色矢印で指し示している箇所がやはり「執拗に結構な厚塗りで反射防止黒色塗料を着色」しています(涙)
一つ前の写真のところで説明したとおり「この鏡筒の後群側の縁部分は距離計連動ヘリコイドから外側に飛び出ない」のに・・いったいどうしてこの場所を反射防止黒色塗料で厚塗りする必要があるのでしょうか???
しかも前述のように光学系後群の第3群貼り合わせレンズは、そのコバ端にまで厚塗りで反射防止黒色塗料が塗られていた為に、その着色の厚み分が格納筒の内壁に干渉してしまい「確実に最後までストンと落とし込むことができない状況だった」次第です (途中で格納していた痕跡が残っていたので判明した)(泣)
上の写真赤色矢印のように、製産時点でちゃんと「濃い緑色」にメッキ加工されているのに、そこにワザワザ敢えて「反射防止黒色塗料」を塗ったくっている始末です (だから着色した塗料同士が干渉し合い最後まで格納できていなかった)(泣)
特にご依頼内容だった「絞り環の操作性の悪さ」は上の写真下側の赤色矢印で指し示している反射防止黒色塗料の厚塗り分が干渉してしまい、擦れ感や引っ掛かりなどに至っていました (固形化してしまった古い黄褐色系グリースの塊が数箇所に残っていた為そこで引っかかっていたように見える)。
このように、これら「反射防止黒色塗料」を執拗に塗りまくる所為は、過去メンテナンス時の整備者の「自己満足大会」以外の何ものでもなく、そもそも製産時点に本当に反射防止の必要性があるなら「そのように黒色のメッキ加工を施していたハズ」なのに、不必要な箇所にまで執拗に塗りまくります。
例えば今回の個体で言うなら、光学系第3群の貼り合わせレンズ (後玉) の締付環は、ちゃんと濃いグレー色のマットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工で仕上げられていて、設計時点から反射防止の対処が施されているのです(泣)・・それにもかかわらず、過去メンテナンス時には
その締付環まで「反射防止黒色塗料で厚塗り」されている始末です。どうして製産時点の濃いグレー色のメッキ加工ではイケナイのでしょうか??? どうして何でもかんでもマットな黒色でなければダメなのですか???
・・誰か当方にその理由を根拠を教えて頂きたいです (是非知りたいです)(涙)
むしろそこまで「何もかも光学系内に関わる場所は全て真っ黒でなければイケナイ!」と言うのなら「ではどうして絞り羽根はメタリックグレーそのままなのか???」どうして漆黒の黒色にメッキ加工されていないのか、誰かその根拠を、道理をどうか当方に教えて下さい!(涙)
これらの過去メンテナンス時の整備者の所為は「全てが組み上がった時の見てくれの良さ」の追求であり、その根本は「購入する顧客の執拗な迷光騒ぎに効果絶大だから」と言う問題が纏わり付いているのです(涙)
要は顧客が/ユーザー側が「光学系内は真っ黒になっているのが好ましい」或いは「マウント側方向でカメラボディのマウント側に見える箇所も真っ黒になっているのが安心」など・・「凡そオールドレンズを使う側の迷光を防ぎたいと望む迷信信仰」・・に応える所為として、過去メンテナンス時の整備者が好んで「反射防止黒色塗料を塗りまくる」次第です(泣)
それは反射防止黒色塗料を塗ったほうが「確実に売れ易くなる」となれば、その処置を講ずるほうになびくのはある意味人情でもあります。しかしそのせいで (製産時点に全く執られていなかった所為のせいで) 結果的にアンダーインフ状態に陥っていたり、ピント面の鋭さ感が足りなかったり、もっと言えば今回の個体のように「操作性の悪さに繋がる結果」に至っていたとなれば・・いったい何のために過去に整備していたのか???・・と言う話に尽きないと当方は強く申し上げたいですね(泣)
・・光学系内の迷光に執拗にこだわるのはマジッでやめてほしい!!!(涙)
製産時点で執られていなかった事柄に執拗にこだわるのは、本当にどうかやめていただきたいです(涙) そのせいで結果的に今後50年後にまで残るオールドレンズの個体数が圧倒的に減ってしまう現実に・・マジッでどうか気づいて頂きたいです!!!(涙)
ちなみにグリーンの矢印で指し示しているのは「シム環」と言ってアルミ合金材の単なる環/リング/輪っかですが「無限遠位置の微調整用に挟んである」役目です。この「シム環」が挟まれたままヘリコイドオス側の内側にネジ込まれます (従ってこのシム環の厚み分が無限遠の微調整の役目になる設計概念)。
↑今度は鏡筒だけを撮影していますが、赤色矢印で指し示している箇所の厚塗りされた反射防止黒色塗料を一生懸命、ゴシゴシゴシゴシと剥がしている最中です(泣)・・特に上の赤色矢印で指し示している箇所が剥がれているので分かり易いでしょうか (絞り環側はまだ剥がしていない)???
・・この作業だけで2時間かかったので、マジッでロクな事をしません!(怒)
↑こちらもバラしている最中の撮影です。取り外した距離環を撮っていますが、赤色矢印で指し示しているように実は「ブライトフィニッシュの塗料」で厚塗りされています(泣)
上の写真はワザと故意に当方が擦ってその着色した塗料が分かるようにしたところです(泣)
・・マジッでチョ〜面倒くさい!(怒)
↑こちらも同様バラしている最中の撮影ですが、マウント部です。赤色矢印の箇所だけ擦って違いが分かるようにわざと故意に施しています(笑)・・グリーンの矢印で指し示している部分はまだ擦ったりしていないので、当初届いた時のままの状態で「ギラギラした印象の輝き」で、よ〜く見ると「本当に微細な凹凸があってその分ギラギラと反射している」感じです(泣)
これは特に最近のロシアンレンズで「海外オークションebay」などで横行している処置ですが
筐体外装パーツを一旦バラして磨いた後に「ブライトフィニッシュの塗料」を着色してピッカピカの光彩を放つ状態に仕上げて販売しています(泣)
ところが時間が経ったり、或いは指で触って操作していたりすると「このように表層面に微細な凹凸状が現れてギラギラしてくる」ワケです(泣)
今回のオーバーホール/修理ご依頼者様お一人様だけが分かると思いますが、当方がこの後の
オーバーホール工程で処置した「磨き研磨」により、特に筐体外装の光沢感はちゃんと「材たるアルミ合金材本来の金属の輝き」でその光彩を放っています。
よ〜く見れば明白ですが、アルミ合金材の金属質は「横方向に (まるで繊維状に) 金属質が現れる」ので、光沢研磨すると「そのままの状態で眩い光彩を放って光る」のが本来の「製品としての光沢感」です。
これは以前取材した金属加工会社の社長さんにちゃんとお話しを伺い、どのような状態なのかまで検証したので理解できているのです (その場でアルミ合金材を光沢研磨してどう変化するのかを実験した)(笑)
その手法自体は当方が昔家具専門店で職人から直伝で伝授した磨き技法そのままであり、まさか家具職人のワザが金属加工会社のワザと同一だったとは正直オドロキでした(笑)・・社長さんも、職人ならヤル事は同じだねと仰っていました (要は金属材の事を知っているかどうかの話)(笑)
そんな次第で、今回のオーバーホール/修理に於いてはご依頼内容に全く含まれていませんでしたが、当方の勝手な判断でこれら過去メンテナンス時に着色されたであろう「ブライトフィニッシュの塗料」を全て完全除去し、本来製産時点に輝いていたであろう「アルミ合金材の光沢感」に戻しています。但しローレット (滑り止め) 部分のジャギーのギザギザは磨くことができないので、そのままになっています(泣)
然し当方が勝手にヤッてしまった事ですので、もしもお気に召さない場合は前述同様「ご請求金額より減額」下さいませ(泣)
↑最後に前述の「シム環」です (赤色矢印)。結局、当初アンダーインフ状態で無限遠位置のピントが合っていないのは、この「シム環の厚みが厚すぎた」為であり (グリーンの矢印)、当方が知っている限り「JUPITER-3シリーズ」で間に挟んであるシム環とは厚みが違うように見えます・・適切な厚みに処置を施し、鋭いピント面に至る無限遠合焦に戻した次第です。
↑仕上がったオールドレンズの説明に戻ります。光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。赤色矢印で指し示しているのは、当初バラす前の実写チェック時点で「光学硝子レンズのコバ端が着色されていなかった為に白っぽく見えていた箇所」です。
余計な箇所をさんざん厚塗りしたクセに、肝心なこういう箇所は塗っていなかったので(笑)、当方にて着色しています。
↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。赤色矢印で指し示しているとおり、当初反射防止黒色塗料で塗られていた「締付環」も溶剤でゴシゴシ除去しました(泣)・・近い将来的なインク成分のコーティング層への悪影響が怖いので (コーティング層が変質すると光学硝子研磨して一旦剥がしてから再蒸着しないと除去できないから) 執拗に除去している次第です。
↑13枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。当初感じられた絞り環の引っ掛かり感や擦れ感にトルクムラなどは全て消えています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑筐体外装のアルミ合金材を「光沢研磨」したので、ご覧のとおり本来の金属質の光彩に戻っています(笑)・・赤色矢印で指し示した箇所も冒頭解説のとおり「溶剤で全て剥がした」ので製産当時の「濃い緑色のメッキ塗色」に戻っています (黒色ではありません)・・当方が勝手にヤッてしまったので、お気に召さない場合は減額下さいませ (スミマセン!)。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、このモデルのピントのピーク/山は、まだかまだかと徐々に鋭くなっていって、しかもピントのピーク/山がなかなか明確に現れません(汗) 従って距離環を回すトルクはそのようなこのモデルのピント合焦のクセを考慮して「軽めながらも敢えてシッカリしたトルクを与えてある」仕上がりに至っています。
いわゆる「白色系グリース」の♯30番や♯10番などを塗布した「ツルツルしたトルク感の印象」とは全く次元が異なり、当方が仕上げる距離環の操作性は、ヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)
↑絞り環側の基準「●」マーカーと共に筐体側の基準「▲」マーカーも、当然ながら縦方向で位置合わせてしてあります (グリーンのライン)。
↑附属品で「L39 → LM変換リング」を同梱頂いたので、当方にて日本製の「Rayqual製LM → SαE マウントアダプタ」に装着して、冒頭の説明通り「無限遠位置合わせを実施」し、適切な状態に戻しています。
なお全く関係ありませんが、附属で装着されていたフィルターも光学硝子面を表裏面で清掃工程を経て仕上げています (ちゃんと5種類の薬剤を使って光学清掃してあります)(汗)
以上、ご依頼内容は前述の問題点❶だけでしたが、結局絞り環にしろ距離環にしろ、擦れ感やトルクムラなどは過去メンテナンス時に厚塗りで着色してしまったのが大きく影響していると判定を下しました。然しながら当方の勝手な判断で処置を施して仕上げてしまいましたので(泣)、お気に召さない要素については以下のとおり減額下さいませ (申し訳御座いません!)。
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置から変更/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f16」ですが、もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。