◎ Meyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) Telefogar 90mm/f3.5(altix)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧東ドイツは
Meyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ・・・・、
『Telefogar 90mm/f3.5 (altix)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回はオーバーホール/修理ご依頼分の個体を仕上げたご報告になりますが、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時の旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ「90mm/f3.5」の括りで捉えると累計で7本目にあたります。前回の扱いが2017年なのでだいぶ前の話です。特に敬遠していたワケではありませんが、マウント規格が「altixマウント」なのでマウントアダプタの流通問題からなかなか手を出し辛いところがあります。
但しひいて言うなら、この当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中で一般的に流通していて「整備する立場」から捉えると、むしろ扱い易い要素があるモデルなのです・・それはこの当時の多くのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズでは「光学系後群側格納筒の固定をイモネジによる3点指示/締め付けで固定する手法を積極的に採っていたから」とも指摘でき、且つ今回扱ったモデルは当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中にあっては珍しく「光学系後群格納筒の固定方法がネジ込み式」だからと言えます。
光学系後群格納筒の固定方法で外周から3点によるイモネジの締め付け固定方式を採った場合その固定位置が適切でなかった時に「光軸ズレや偏心」と言う問題が現れます・・それはイモネジによる締め付けなので、3点からの締め付け量が均等ではなかった場合、或いはイモネジが当たる場所に極僅かなズレが起きた場合、多くの場合で「光軸ズレ/偏心」に至ります。
◉ イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種で、大きく分けるとネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する
Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズで使われるタイプのイモネジは左写真のように先端が尖っているほうになります。
特に光学系後群格納筒の締め付け固定箇所が「くの字型にクビレている設計」の時に、このイモネジの締め付け程度によりクビレ箇所のどの位置にイモネジの先端部分が突き当たり締め付けているのかにより、光学系後群格納筒が上方向に浮き始めたり、逆に下方向に下がったりと3点指示の一部で締め付け箇所のズレが生じます。
もちろん当然ながら3点の締め付け量が異なった場合、そもそも光軸が中心から外れてしまう「光軸ズレ」が起き易くなるのも容易に察しが着きます。或いは前述のように締め付け箇所の角度にズレが生ずれば光学系後群格納筒の収納時に傾きが加わる為に「偏心」と言う光軸の傾きに至る懸念も高くなります。
このような問題からこの当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの整備にあたっては「必ず光軸ズレの検査」が必須作業になり、それが面倒だったりするのです (当方のオーバーホール作業では必ず簡易検査具による検査をしつつ光学系後群格納筒の固定が必須になる)(泣)
従って、もっと言うなら当時Meyer-Optik Görlitzが経営難から1968年に同じ旧東ドイツのCarl Zeiss Jena傘下に吸収合併した後、当時のPENTACON配下として軍門に下った際、今度はPENTACON製オールドレンズの光学系後群格納筒の固定方法さえも、相変わらずイモネジによる3点指示だった事もからも相当なこだわりが強かったように伺えます (PENTACONは基本的に当初フィルムカメラメーカーだったので自社製オールドレンズが存在せず他社からのOEM供給を受ける立場だったから)(泣)
このような問題から当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズや、或いはその後のPENTACON製オールドレンズで「光学系後群格納筒を取り外すと光軸ズレ/偏心の検査が必須になる」との面倒くささが憑き纏います (だから光学系後群格納筒を取り出さない整備が横行している/必ずしも当初より光軸ズレがなかったとは断定しきれないまま整備している)(泣)
それは例えばヤフオク! などを経由して手に入れたそれらオールドレンズ (Meyer-Optik Görlitz製やPENTACON製) の撮影した写り具合が「何となく眠い印象」だったりすれば「光軸ズレ/偏心」が起きている証とも受け取れるからです(泣)
では万が一「光軸ズレ/偏心」が起きるとどのような問題が現れるのかと言えば「ピント面のエッジにフリンジが憑き纏う (光軸ズレ)」或いはピント面の背景の一部のボケ具合が極端に変化する (ピント面とは異なる位置でピントが鋭い方向に変化する:偏心) などの描写性能に対する影響が現れます。
ピント面から離れたアウトフォーカス部分でフリンジ (パープルやブルーの色ズレ) が纏わり付くのは、それは収差の範疇なので多くのオールドレンズで発生しますが、ピント面の直近で起こるフリンジ現象は「光軸ズレ」です(泣) 一番多い例としては「マウント改造」を施したオールドレンズでの実写を観た時にどの写真を観ても「ピント面の近くにフリンジが現れている」場合は間違いなく「光軸ズレ」です(泣)
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
この当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの背景を知ろうと考えた時、特に戦後の旧東ドイツ国内での主要光学メーカーとの関係性から捉えなければ本当の姿が見えてきませんしそもそもどのように消滅し、その技術が後に継承されていったのかまで辿り着けません(泣)
Meyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) は、戦前の旧ドイツで1896年創業の Hugo Meyer & Co., (フーゴ・マイヤー) が前身にあたる老舗の光学メーカーです。戦前には大判サイズの光学製品で、当時のCarl Zeiss Jenaに肩を並べるポジションまで登りつめますが敗戦後に旧東ドイツに含まれ悲劇の運命を辿ることになります。
ドイツは敗戦時に旧ソ連軍と連合国軍によって占領され、国が二つに分断されました。ソ連軍が占領統治したのがドイツ民主共和国 (旧東ドイツ) であり (左図ピンク色)、連合国側であるアメリカ・イギリス・フランスが分割占領統治した国がドイツ連邦共和国 (旧西ドイツ) になります (ブルー色)。
ところがベルリンは旧東ドイツ側に位置しており (左図の緑色の矢印) 旧東ドイツの首都になりました。一方旧西ドイツの首都はボンになるので旧西ドイツ側なのですが、ベルリン自体も連合国側と旧ソ連によって分割統治することが決まりました。
そして後の1961年には「ベルリンの壁」が登場します。意外と「ベルリンの壁」がぐるりとベルリン全体を覆っていたかのように認識している人が多いのではないでしょうか・・。
実際にはベルリンも2つに分断されており、連合国側の管轄地であった「西ベルリン」側が「有刺鉄線と壁」によってグルリと囲まれていたのです。それもそのハズでベルリンが旧東ドイツの中に位置していたことから囲まれていたのは実は「西ベルリン」だったワケですね(笑)
そもそも「ベルリンの壁」が建設されたのは戦後すぐではなく1961年であり、東西ドイツの経済格差がより顕著になってきたことから旧東ドイツから旧西ドイツ側への逃亡者が多くなり敷設された壁だったようです (初期の頃は有刺鉄線のみ)。ちなみに、西ベルリンもアメリカ・イギリス・フランスの3カ国による分割統治になります。
旧東ドイツは社会主義体制ですから「私企業」の概念が存在せず、すべての企業は国に従属した企業体でした。この企業体を指して様々なサイトで「人民公社」と解説されますが、どちらかと言うと「人民公社」は中国のほうが当てはまります。
旧東ドイツでは、敗戦後の初期に於いては「人民所有経営 (Volkseigene Betriebe:VB)」と呼ばれ後に「人民所有企業 (Volkseigener Betrieb:VEB)」に変わります (以降、最小単位の企業体として使われ続けた呼称)。ちなみに旧ソ連も社会主義国家ですが企業体を指して「国営企業」と呼称しています (専門に研究している方の論文を読んで勉強しました)。
要は同じ社会主義体制の国家だとしても、それぞれの国によってその体制や体型の概念などが異なるので、何もかも一緒くたに「人民公社」で括ってしまうにはムリがあると言う専門に 研究している先生の論文でした。ちなみに現在のロシア連邦は社会主義体制よりも全体主義体制を色濃く表しているらしいです (簡単に言ってしまえば当時の社会主義体制のままだと吸い上げた利益配分が階層を跨いでしまい分散する為、特に一部階層に利益を集中させる目的を強くした意味合いで全体主義色が濃くなっている/プーチン大統領政権の主要メンバーに集中)。
上の一覧は、旧東ドイツが敗戦時からスタートした国の社会主義体制確立と同時に様々な産業工業再建のために策定された「計画経済」であり、その中で特にCarl Zeiss Jenaを中心にまとめたのが上の表です。なおこれら「計画産業」はそもそも旧ソ連本国に於いて戦後に執られていた「産業工業5カ年計画」に連動したものであり、5年ごとの計画年度目標が達成困難と判定されると計画年度を変更しており、それに合わせて旧東ドイツ側も更新していますから旧ソ連本国と連携していた体制と指摘できます。
敗戦時からすぐに様々な企業体が分野別にVEBの集合体として国に接収されますが、その中でオールドレンズが関わっていたのは「光学精密機械VVB (局)」です。
(人民所有企業連合:Vereinigung volkseigener Betriebe)
当初は国の直轄管理で分野別に各局隷下で各VEBがバラバラに集められ連合化していましたが社会主義体制の確立に手間取り経済格差が拡大し、1967年にようやく国の産業工業体系図に局から独立した「光学機械製造コンビナート (VVB)」が登場し、そこにとりまとめ役として 初めてCarl Zeiss Jenaの名前が登場します (1966年までの5カ年計画では各局に特定のVEBが指揮権を与えられていなかった/名前を連ねていなかった)。この時点でCarl Zeiss Jenaは既に17企業体 (VEB) を手中に収めており、従業員数は44,000人に上っていましたから、それまでに多くの光学メーカーを吸収合併していたことになります。
また翌年の1968年には州/県を跨いで統括指揮できる「コンビナート令」が公布され、光学機械製造コンビナートVVBではCarl Zeiss Jenaの絶大なる権威が名実共に確立しています。ここで注目すべきは実はCarl Zeiss Jenaではなく「PENTACONのポジショニング」です。この時PENTACONはCarl Zeiss Jenaのすぐ直下に位置付けされているいわゆる大番頭的なポジションにまで登りつめていました。しかしフィルムカメラなどの製産に特化した工場の体制と開発技術しか醸成されておらず、特にオールドレンズの開発/生産に苦慮していました。
長々と当時の時代背景を解説しましたが、ここからが哀しい「Meyer-Optik Görlitzの悲劇の運命」のご案内です。
ドイツ敗戦時に数多くの生き残り光学メーカーが「光学精密機械VVB (局)」に編入されすぐに製産活動を始めますが、運の悪い事にMeyer-Optik Görlitzは「軍用機械工業VEB」に編入されてしまいました (この悲運こそがそもそもの悲劇の始まりになります)。軍用光学製品を開発/製産する傍ら民生用光学製品の開発にも拘りますが、自由が効かず限界を感じついに自社工場をCarl Zeiss Jenaに売却してしまう事で念願の「光学精密機械VVB」編入を実現しました。
まさに水を得た魚の如く光学製品の開発/発売に勢いがつきますが、この時Carl Zeiss Jenaの直下に配属されていたPENTACONが発売するフィルムカメラのセットレンズ供給が義務づけられてしまい (シルバー鏡胴の1950年代後半)、戦前のようにCarl Zeiss Jenaと対等な扱いを受ける状況はついにMeyer-Optik Görlitzには二度と巡ってきませんでした。1964年からCarl Zeiss Jenaによる強いPENTACONへの編入 (つまり吸収合併) 要求を受けながらも拒み続けますが、ついに経営難から1968年にPENTACONに吸収されその長い歴史の幕を閉じてしまいます。
従ってこの1968年がMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズとPENTACON製オールドレンズの境界にあたり、この年を境にしてMeyer-Optik Görlitzが刻印されたレンズ銘板のオールドレンズが市場から姿を消していくワケです。つまりゼブラ柄モデルを発売し始めた時期には既にMeyer-Optik Görlitzは工場の稼働権限すら失っており、Carl Zeiss Jena配下PENTACONとの協業だけにのみ生き存えていたようにも見えます。そしてとうとうオールドレンズの流れが世界規模で大きく黒色鏡胴へと変遷する最中に、Meyer-Optik Görlitzは消えていくことになります (だから市場にはシルバー鏡胴モデルとゼブラ柄しかMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズは存在していない)。
この「1968年PENTACONがMeyer-Optik Görlitzを吸収合併」と言う衝撃的な事件について、その「境界」を実際に検証してみます。
左は1969年にPENTACONから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「PRAKTICA L」の取扱説明書からの抜粋ですが、オプション交換レンズ群はMeyer-Optik Görlitz製とCarl Zeiss Jena製モデルだけで占められています。
さらに同じ1969年の後期に追加で発売された「PRAKTICA LLC」取扱説明書から、同じように交換レンズ群一覧を抜粋しました。Meyer-Optik Görlitz製のモデル銘が消滅してPENTACON製とCarl Zeiss Jena製モデルのみに変わっています。
Meyer-Optik GörlitzがPENTACONに吸収合併したタイミングが1968年なので、その時点で既に製産していた個体がそのままMeyer-Optik Görlitz銘でフィルムカメラにセットされ、吸収合併後の新たな製造出荷分よりPENTACON銘にモデル銘がチェンジしたという逸話もこれで検証できましたね (事実だった事が判明)。
すると今回扱うモデルとは直接関係ありませんが、例えばこの当時の標準レンズ「開放f値:
f1.8」モデルについて検証してみると、前述の時代背景が納得できます (逆に言えばモデルの変遷が時代背景から納得できる)。以下のモデルについて考えてみましょう・・。
① Carl Zeiss Jena製標準レンズ:MC PANCOLAR auto 50mm/f1.8
② PENTACON製標準レンズ:PENTACON auto 50mm/f1.8 MULTI OCATING
①はまさにCarl Zeiss Jenaの内部で開発が進み製品化された「正統進化形標準レンズ」と言えますが、一方②のPENTACON製標準レンズは、そもそもMeyer-Optik Görlitz製標準レンズの「Oreston 50mm/f1.8 zebra」が原型モデルであり、そこから派生していった「亜種」で ある事が分かります (光学設計がPancolarシリーズとは別モノ)。もっと言うなら初期の頃に発売していたPENTACON製「50mm/f1.8」は絞り羽根の回転方向とカタチがそもそも「Orestonシリーズ」そのモノだった事からも分かります。
この時もしも仮にMeyer-Optik Görlitz製標準レンズのほうに着目する (狙っている) のだと すると、市場流通品の中でレンズ銘板の刻印が例え「PENTACON」になっていたとしても「ゼブラ柄なら貴重な1968年〜1969年辺りの個体」なのだと確信が持てますね(笑)
逆に言えばMeyer-Optik Görlitz銘を冠した個体は値が張りますが(笑)、逆狙いでPENTACON製ゼブラ柄の個体を手に入れても「光学系は全くの同一品 (要はレンズ銘板をすげ替えただけだから)」だと断言できるワケです。
このようにオールドレンズと言うのは、この当時の時代背景や歴史に興味が無いのだとしてもある程度の背景を簡単に知っておくことで意外と得をする事にも繋がったりします(笑)
・・まぁ〜それだけロマンが詰まっていると言えるのがオールドレンズの世界ですョね?(笑)
最後にここで「悲劇の光学メーカーMeyer-Optik Görlitz」の締めくくりをご案内致します。1968年に長い歴史の幕を降ろして消滅していった戦前から脈々と続いたMeyer-Optik Görlitzは、たった一人の生き残り技師のおかげで2014年に「再生」します。
高齢の技師を伴い「新生Meyer-Optik Görlitz」が誕生し (スポンサーが付き) 新たな歴史を刻み始めましたが、何と2018年末にCEO (経営責任者) が交通事故で亡くなり、再び破産申請の悲劇を繰り返しました (2019年春に裁判所が認め管財人を附託)。
奇跡がさらに起きました! 2020年三度「新々生Meyer-Optik Görlitz」が再起して (新たなスポンサー企業が付く)、いよいよ元気良く新型モデルの開発/発売をスタートしています (日本ではケンコープロフェショナルイメージングが扱っています)。
・・今度は大丈夫でしょう! 頑張れMeyer-Optik Görlitz!!!
今回扱った『Telefogar 90mm/f3.5 (altix)』に話を戻すと、マウント規格が「altixマウント規格」です。このマウント規格は当時のビューファインダーカメラ「Altix V以降のシリーズ」にて採用されたブリーチロック式スピゴットマウント規格です (リリースキーを孔にあてがい締め付け環を回す事で締め付け固定する方式)。
この時1954年に発売された「Altix Vシリーズ」用に用意されたオプション交換レンズ群には、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズの「Lydith 30mm/f3.5」或いは「Primagon 35mm/f4.5」に「Trioplan 50mm/f2.9」そして今回のモデル「Telefogar 90mm/
f3.5」の4本が揃えられました。
他社光学メーカー品も幾つか揃えられましたがそれほど知名度が高いマウント規格ではないのでマウントアダプタを手に入れて今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼で使うにも少々難儀します(泣) 今回のオーバーホール/修理を承った際に同梱頂いたマウントアダプタが右写真になりますが、市販品ではなく個人の製作によるマウントアダプタのようです (右写真は同梱されていたマウントアダプタを撮影/altix → LMマウントアダプタ)。
↑そもそも「altixマウント規格」のフランジバックが「42.5mm」なので、例えばマウント部のスピゴットマウントの爪をそのまま切削してから昨今有名な「M37 → M42変換リング (上の写真左)」をエポキシ系接着剤を流し込んで接着したり、或いは「exakta → M42変換リング (上の写真右)」をやはり爪を切削した上でイモネジで3点締め付け固定したりが横行しています (実際にヤフオク! でそのような改造を経て出品している)。
上の写真右側の「exakta → M42変換リング」を使ってマウント改造した今回の扱い品と同型品たる「Telefogar 90mm/f3.5 (M42)」をヤフオク! で手に入れた方が「ピント面にパープルフリンジが纏わり付く!」と困窮して問い合わせしてきた事も数件あり、当方にて「光軸ズレ/偏心」を改善してほしいとご依頼を受けましたが、如何せんそう簡単に改善できるような話ではなく「改造した本人のヤフオク! 出品者に問い合わせるべきでは?」とご辞退申し上げた事があります(泣) そもそも他人が改造した内容を当方が知り得るハズもなく、バラせばどうにかなるとの「駆け込み寺」的発想も困ったものです (そのお気持ちは十分分かりますが)(笑)
もっと言うならフランジバックでみた時に「そのままM42マウント化に至らない」点からしてもご納得頂いていなかったようで、相当なオーバーインフ状態なのも直してほしいとご依頼でした(泣) 要は「M42マウントのフランジバック:45.46mm」に近づければ (たかが3mm弱詰めれば良いだけの話) との内容ですが、寸法で捉えれば「僅か3mm程度の高低差」かも知れませんが、ヘリコイドのネジ山数で捉えるとその3mmの高低差は鏡筒位置の高低差なので、相当な長さのネジ山を回す必要があります。
多少のオーバーインフは仕方ないと諦められるか否かはそのオーバーインフ量にもよると思います。例えば今回同梱頂いたお手製マウントアダプタも同様オーバーインフ気味に仕上げられていますが、無限遠位置をチェックすると「距離環刻印距離指標値:30mの0で合焦」なので、人によっては少々オーバーインフ量が多めに感じられます。前述のマウント改造品ではさらにオーバーインフ量が多かったようなので、確かに撮影していていくらオーバーインフとしても気になって仕方なかったのかも知れません(涙)
・・そういうのは人情なのでいったいどこまで突き詰められるかが配慮に至る話し。
もしも使用者の人情を察するなら「ヤフオク! 出品時にちゃんとオーバーインフ量を解説すべき」だと当方は思いますとご返事しました。確かに改造などが一切施されていないオールドレンズなら何とかなるものの、改造となればそもそもマウント規格の話なので前述の「光軸ズレ/偏心」問題ほど厄介な事柄はありません(泣) バラせば何とかなるとの憶測やご期待は、その人情に於いて本当に充分理解できますが、その作業を執り行う者にとってはそれほど簡単な話ではありません (勘弁して下さい)(泣)
・・そのお気持ちが分かるだけに、どんな想いで辞退しているのか察してほしい!(涙)
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
◉ 一段目
左端から円形ボケが破綻して収差ボケへと変化していく様をピックアップしています。中望遠レンズ域のモデルですが円形ボケは収差の影響も多く真円を維持しにくい印象です・・他の当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズに比較するとシャボン玉ボケの表出自体がそもそも難しいようにも見えます。
◉ 二段目
さらに円形ボケが破綻した痕に収差ボケへと繋がっていく様子をピックアップしました。特に二線ボケが醜く酷い特徴でもありませんが、グルグルボケが現れると同時に少々ざわついた印象のボケ味で溶けていきます。焦点距離90mmにしてはもう少し緩やかに滑らかに溶けていってほしいところです(泣)
◉ 三段目
ここではピント面の鋭さと合わせて発色性もチェックしています。発色性の素晴らしさは相当なレベルでなかなか記憶色に訴える発色性ではないかと感心します。これらピックアップした実写は、このモデルの最短撮影距離が「1.5m」なのを勘案すると、相当拡大傾向で撮影しているので、おそらくはエクステンションを介在させて最短撮影距離を短縮して取っていると推察します (従ってその分光量が増してボケ味も素直に変わってくる)。
◉ 四段目
ここでは実写のリアル感や立体感をチェックした左側2枚の白黒写真と、合わせて被写界深度の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さについてもチェックしました (右側2枚)。すると白黒写真でカラー成分が256階調に振り分けられると大変リアル感が増して立体的なインパクトを持ちますが、それが一旦カラー写真に落ち着くと途端に距離感や立体感が失せてしまいます。この傾向は実は当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの多くのモデルで共通項的に当方が感じている印象の特徴なので、このモデルも同じ傾向を掴めます (唯一Primoplanシリーズだけがリアルで立体的な表現性に強い)。その意味では特にコントラストが大きく影響を来すような被写体やシ〜ンで使うと余計にその影響を色濃く表してしまうのかも知れません。
◉ 五段目
その一方でさすが中望遠レンズ域だけあってポートレート撮影は素晴らしいところがあります。このように人肌などコントラストの限られた被写体になると途端に能力を発揮してくるので不思議なオールドレンズです。被写界深度も開放f値「f3.5」にしてはとても浅く出てくるので、これはこれでいろいろ楽しめそうです。特に光源を附随するシ〜ンに於いても印影の残し方がステキです。
◉ 六段目
最後にこの段では陰影の表現性と逆光耐性などをピックアップしています。コントラスト表現が少々苦手な傾向である分、ピ〜カンでの撮影でも相応にまとめ上げてしまうのが上手い使い方だと思います。
光学系は典型的な3群4枚のエルノスター型構成を採っています。右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。
左の当時のバンフレットに掲載されている構成図とほぼ同一なのが分かります。
実写として載せている写真自体が白黒写真なので、やはりこのモデルが登場した1957年当時辺りのフィルム印画紙として捉えるなら、まだまだ民生レベルで主流だったのは白黒写真だったのかも知れません (掲載写真の手前フェンスとの奥行き感がちゃんと現れている)。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は至って簡素でよく考えられた設計を採っています。但し相変わらずのこの当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズに共通する「直進キー」の設計なので、その点を考慮して距離環を回す時のトルク調整を仕上げていく必要があります。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑鏡筒最深部に絞りユニットを組み込んだところです。位置決め環が最初から鏡筒に一体で切削されているので「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量)」を微調整する機能は設計段階から附加されていません (つまり完全開放しなかったり閉じすぎ/開き過ぎなどの個体差が起きない)。但しそもそも開放f値「f3.5」の時点で絞り羽根が顔出ししていて必要とするイメージサークル分閉じている状態で設計されています (必ずそうなる)。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。上の写真上側方向が前玉方向にあたります。赤色矢印で指し示した縦方向に切削されている溝は「絞り値キー」で、絞り環に刻印されている各絞り値の間隔と同じ位置で切削されており、この溝部分に鋼球ボールがカチカチとハマるのでクリック感を実現しています・・銀色で横方向に擦れた痕跡が残っているのはその鋼球ボールが擦れていた経年の摩耗部分ですが、よ〜く観察するとビミョ〜に擦れ痕が二重線になっているのが分かり、過去の一時期のメンテナンスで鋼球ボールの位置がズレていた事がバレてしまいます (製産時点の正しい位置は濃いめに深く削れている銀色の線/上側の摩耗痕が正しい位置)(笑)
↑光学系後群の格納筒もネジ込んでしまいます。赤色矢印で指し示しているように光学系後群格納筒の下部分には締め付け固定用のイモネジの穴などが存在しないので (当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズのモデルの中では大変珍しい話ですが) 単にネジ込むだけの設計になっています。
当時の他社光学メーカーが旧東ドイツに限らず世界中でそのような組み込み方法を採っていたので (日本の光学メーカーも含めて) どうして敢えて当時のMeyer-Optik Görlitzの設計陣が「イモネジによる3点締め付け固定にこだわったのか?」どう考えても不明なままです(笑)
そうすれば「光軸ズレ/偏心」の心配も発生せず製産時点の組み立て工程も簡素化できて「注意するべきは適切な光路長の確保だけ (ピント面の鋭さ)」だったハズなのに、こだわった根拠が分かりません(笑)
↑上の写真は特にオーバーホールの組み立て工程に関係ありませんが(笑)、時々気にしている方がいらっしゃるので撮影しました。このモデルは絞り環の中腹に「丸い穴」が開いています。その穴を真横方向から直視すると実は絞りユニット環内側の内壁、同じ位置に切削されている別の穴が丸見えになります(笑)
そうですね「鋼球ボール+スプリング」を組み込む穴が反対側の内壁に切削されるのですが、その穴を切削するのにドリル刃を貫通させて切削する時のために「ワザワザ敢えて穴を開けている」だけの話です(笑)
・・従って何か部品が欠落して残っている穴ではないので心配する必要がありません(笑)
せっかく完全解体してバラしているなら、このような事柄もちゃんと解説してあげる事で「所有者の所有欲がより満ち足りて心の健康に繋がる」ような話にもなるので、気を効かせました(笑)
↑こんな感じで鋼球ボールが組み込まれた上で絞り環がセットされます (前述の穴が開いているのが分かります)。
↑この後の工程は純粋にヘリコイド群の格納に入るだけなので、本当に簡単な構造です(笑) ヘリコイドオス側に対して「直進キーガイド」と言う溝が両サイドに縦方向に切削され、そこを「尖頭型の直進キー」がスプリングで押されつつ両サイドに入る (ブルーの矢印) ので、そこで距離環を回した時の回転するチカラが鏡筒の繰り出し/収納の直進動に変換される原理です。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
従ってこのような「先が尖った円筒状のパーツを直進キーとして設計していたのは当時のMeyer-Optik Görlitzだけ」と言う話です。何かしらのこだわりがやはり設計者にあったのでしょうか・・?(笑)
↑こんな感じでヘリコイドオス側に対して両サイドに「直進キー」を差し込みつつ「ヘリコイドメス側たる距離環」がネジ込まれます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
逆に言うと「たったの5箇所しかネジ込み位置が用意されていない」ために、冒頭で解説した「オーバーインフ量が多すぎた時の微調整が効かない」話に繋がるので、どうしようもないワケです (改善のしようがない)(泣)
・・作業するのが面倒でイヤだから辞退しているのではなくちゃんと根拠がある(笑)
↑完成している鏡胴「前部」も組み込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にマウント部をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。2017年来の扱いになってしまいましたが、やはり「特異なマウント規格 (altixマウント規格)」である事が大きく影響し、何しろ市販のマウントアダプタが存在しない以上、なかなか手を出せないモデルの一つですね(泣)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。ご多分に漏れず、今回の個体も光学系内の締付環は全てが「反射防止黒色塗料」で塗られまくっていたので、全て溶剤で完全除去しています・・しかしそれでも上の写真をご覧頂ければ明白ですが「迷光騒ぎ」する要素が存在しない事が分かると思います(笑)
・・単に見てくれの良さだけで不必要な着色を施し光路長を逸脱するほうがアホらしい話(笑)
↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。「altixマウント規格」なので、上の写真のように3方向に突出する「スピゴットマウントの爪」の一つにリリースキーの金属棒が飛び出ています。
ヤフオク! などを観ていると売りたいが為に「exaktaマウント」などと銘打って標題を謳う輩が居ますから要注意です(笑) そして冒頭で解説したように確かにこれら3方向のスピゴットマウント用の爪とリリースキーを削り取ってしまえば「内径:37mm」に近づくので冒頭で掲載した写真の「M37 → M42変換リング」或いは「exakta → M42変換リング」を使って「M42マウントに改造」を謳っている場合がありますが (特にヤフオク! で出回っている) 肝心な「光軸ズレ/偏心」に関する解説はその出品ページに一切明記されていません(笑) 酷い場合は改造後の実写写真を載せていながら、その掲載写真で「既にピント面にパープルフリンジが纏わり付いたまま」平気で出品していたりするので、恐れ入ってしまいます。
それでもちゃんと高額価格帯のまま落札されていくので、信用/信頼が高い出品者と言うのはたいしたものです(驚) 当方などは低俗な『転売屋/転売ヤー』なので、そんな写真を載せていたら一発で落札前から大クレームが殺到します!(怖)
↑12枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。ご覧のように当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズに在る意味共通項的に視認できる「グルグルと吸い込まれるような絞り羽根の閉じ方」ですから、この閉じ具合を確認するだけでも「例えレンズ銘板がPENTACON銘でも基はMeyer-Optik Görlitz製のモデル」なのが確認できます (但し後には設計がガラッとPENTACONの設計に変わる)。
ちなみに絞り環操作時のクリック感は当初バラす前のクリック感が少々シッカリしすぎ的な印象だったので「小気味良いクリック感 (然し決して軽すぎない)」に仕上げてあります。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑塗布したヘリコイドグリースはいつもどおり「黄褐色系グリース」で「ヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルク感」に仕上がっており、ピントのピーク/山の前後でピント合わせする際に、掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで前後微動が適います。
このモデルのピントのピーク/山は「まだかまだかとゆっくりピークを迎える」合焦なので、重いトルク感よりは軽めのほうが操作し易いと思いつつも、実はあまり軽すぎると本来の狙っているピントのピーク/山でピタリと合わなかったりするので「相応にシッカリしたトルク感」に仕上げてあります・・こういうモデル別のピントのピーク/山に見合うトルク管理で仕上げられるのもオーバーホールする醍醐味だったりしますね (ご依頼者様お一人様だけの特典ですが)(笑)
なお、筐体の外装で「マットで微細な凹凸を伴う黒色梨地メッキ加工仕上げ」の箇所は、当初バラす前の時点では「経年のカビ/手垢/汚れ」がほぼ全面に渡りビッシリだったので (相当キモイ!)(怖)、オーバーホール工程の中の「磨きいれ」にて「本来のマットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げ」に戻してあります。
個体をチェックすれば一目瞭然ですが、当初の本当に艶消しの状態ではなくなっています・・一見すると艶消しのブラックに見えますが、光に翳してチェックすれば表層面の斑模様が視認できます。その斑模様が何かと言えば「メッキ加工ではなく経年の手垢とそこに生じた塗膜面のカビ」なので、どんだけキモイのかが分かると思います(笑)
多く場合でそのまま使っている人が多いでしょうが、当方は過去に勤めていた家具専門店で「職人仕込み」で表層面のそのような経年の手垢を知っており、その除去方法 (塗膜面やメッキ加工面を痛めずに手垢だけ除去する) も教わっているため処置できる話です (たいした話ではありませんが当方はキモイので必ず処置してしまいます)(笑)
ちなみに筐体外装の刻印の中で白色文字部分や一部の黒色文字は溶剤による洗浄時に脱色してしまいます (この当時の多くのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズにて同じ状況)。そのため当方にて「刻印着色」しています。もちろんその他のアルミ合金材部分もピッカピカに「磨きいれ」にて仕上げてあるので、当初バラす前の状態よりも光沢感はより一層増しています(笑)
↑本革製のMeyer-Optik Görlitzロゴが凹凸で備わる被せ式前キャップが誇らしげでとってもステキです!(涙) 筐体本体の「シルバーとマットブラックによるtwo-toneの組み合わせがドイツ南部の建物の佇まいを偲ばせる」のが、当方はこのモデルの意匠として大好きなんです! (まさにドイツらしい配色でそのセンスが素晴らしい)(涙)
本当に久しぶりにオーバーホールさせて頂き、ご依頼者様にこの場を借りて改めてお礼申し上げます・・ありがとう御座いました!(涙)
なおご報告すべき瑕疵内容は何一つ御座いません。頗る良い状態に仕上がっております。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑当レンズによる最短撮影距離1.5m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f16」での撮影ですが、もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているので「回折現象」の影響が現れ始めており、ピント面の解像度低下が見てとれます。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました・・感謝すると共にお礼申し上げます。
本日ご依頼を賜って仕上げたオールドレンズ3ポンとマウントアダプタを一緒に梱包して上で発送しましたので、お受け取りのほう宜しくお願い申し上げます。ありがとう御座いました!(涙)