♦ P. ANGENIEUX PARIS (アンジェニュー) RETROFOCUS TYPE R11 28mm/f3.5《後期型−II》(exakta)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、フランスは
P. ANGENIEUX PARIS製広角レンズ・・・・、
『RETROFOCUS TYPE R11 28mm/f3.5《後期型−II》(exakta)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のP. ANGENIEUX PARIS製広角レンズ域「24㎜~35㎜」辺りで捉えると23本目にあたりますが、今回扱った「28㎜」だけでカウントすると僅か
12本目です。
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜りま
した事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
・・前回扱ったのが2018年だったので、実に6年ぶりと言う状況です(汗)
特に敬遠しているワケではありませんが、光学設計が6群6枚のレトロフォーカス型光学系とのことで、当然ながら光学系第1群前玉から第6群後玉に至るまでの各群の光路長合わせが
「P. ANGENIEUX PARIS製オールドレンズの場合ネジ込み式の各群格納手法」との設計から、とても面倒極まりない話に成らざるを得ません(汗)
さらに、その各群ネジ込みは「ネジ込み位置を固定する目的でイモネジを締め付け固定する」念の入れ用という設計ですから、これら6つの群のネジ込み位置を細かく検査していかなければ「最終的な光路長確保の適正化ができない=鋭いピント面を確保できない」ワケで、それが当方のような低い技術スキルの整備者にすれば面倒くさい話と言う次第です(笑)
今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は「距離環を回すトルクが異常に重すぎるのを改善してほしい」でしたが、当初バラす前の実写確認ではピント面の鋭さ感について「???」と成らざるを得ない、少々甘い印象を伴う写り具合でした(汗)
その時点で「あぁ〜、やはりそうか」と既にバラす前段階で落胆気味だった感じです(汗)
それはバラす前の実写確認時点で「6つの群に対し、個別にネジ込み位置を調べ上げていく
作業が発生する」ことが確定してしまった点に於いて、落胆する以外のなにものでもないからです・・チョ〜面倒くさい!(涙)
当然ながら、バラしていく際は6つの群のネジ込み位置について「ネジ山に残っているイモネジを締め付けた痕」を逐一チェックしていくワケですが、イモネジで締め付け固定するのは「光学系第1群前玉〜第3群まで」の話で、第4群と第5群〜第6群の3つについてはイモネジが直接には介在しません(汗)
特に光学系後群側に位置する第5群〜第6群の格納位置を判定するのに「いちいち組み上げて実写確認するしか手がない」のが面倒なのです(涙)
その意味で、後でオーバーホール工程を解説しますが、本来の組み立て手順で言うなら「このモデルは鏡胴が前部と後部の二分割方式」と言う、典型的な構造なので、ヘリコイド群は鏡胴「後部」側に配置されているものの、実写確認の為に「先ずは最初に鏡胴後部側を組み立てる必要性が在る」組み立て手順に成らざるを得ません(汗)・・そうしないと6つの群の光学系で光路長が適正化されたのか否か確認できないからです(涙)
するとリアルな現実の「作業工程」の話として妄想するなら、1つの群の光学系で固定位置が適切か否かを調べる時「適切な固定位置の僅かに先まで回った時」と「ピタリの位置」の他「極僅かにネジ込みが足りない時」の3箇所でのネジ込み位置で、そのピント面の鋭さ感を
必ず調べる必要が起きます(汗)
適切な光路長としてパッと考えると「ピタリの位置が分かればそれだけで十分じゃないか」と思われるでしょうが、違います(汗)・・「ネジ込み式なのでその前後を調べない限り本当に
ピタリの位置なのかを確証できない」から、必ず都度前後に微動させた位置で組み立ててから実写確認して、初めて「あぁ〜、本当にピタリだったんだ!」との納得に到達する次第です(笑)
ちょうど皆様が距離環を回してピント合わせしている時に「ピントのピーク/山の前後動を行いつつ鋭いピント面を探しているその操作」と同じような話になるワケです(汗)・・その「おぉッ! ここが一番鋭いぞ!」と言うピントのピーク/山の位置を確定させない限り光学系のネジ込みは完了しません(汗)
・・だから面倒くさくて手を出したくないのがホンネ!(笑)
では製産時点に本当にそんな工程を経てこれらP. ANGENIEUX PARIS製オールドレンズ達が出荷されていたのかと言えば、実はちゃんと専用の治具が各工程に用意されていて「一つの群の光学系をネジ込んだだけで、チャートの写し込みでピタリの位置が確定できるようになっていた」ハズであり、そんな最後まで組み立てて実写確認せずとも各工程でキッチリ光路長合わせできていたハズなのです(涙)
・・何と羨ましい環境だことか!(涙)
おそらくは単に製品を梱包する直前に、検査の意味だけで実写確認してチャートを写し込んで調べていただけでしょう(涙)・・いいなぁ〜!(涙)
↑上の図は、今回扱った「レトロフォーカス型光学系」についての特許出願申請書を調べた時の状況で、左から順に時系列的に並べています (左端が一番古い時代の特許出願申請)。
❶ US1955590:1930年7月12日特許出願申請
発案者:Taylor-Hobson社Horace William Lee
❷ US2341385:1941年11月6日特許出願申請
発案者:EASTMAN KODAK CO.社Rudolf Kingslake & Paul W. Stevens
❸ US2649022:1950年2月17日特許出願申請
発案者:Pierre Angénieux
❹ US2696758:1950年2月17日特許出願申請
発案者:Pierre Angénieux
なかなか「レトロフォーカス型光学系」についての正しい捉え方ができておらず、真に申し訳ないところですが(汗)、何しろ当方は『極度のカメラ音痴』で (フィルムカメラのことを、その
歴史も踏まえて何も知らない) 上にさらに「光学知識が皆無」と共に「写真スキルまで皆無」なので、あ~だこ~だ語れる資格すらありませんが(汗)、それでもこのブログを掲載するのにいろいろネット上を漁って勉強していくと、少なからず見えてくるモノもあったりします(笑)
「レトロフォーカス型光学系」について語る時に、その当時に登場した時代背景まで知らなければ、なかなか正しい捉え方に到達し得ないとの反省があったりします(汗)・・特にこの言葉尻が余計に複雑化の一因にもなっています(汗)
「レトロフォーカス」とは「rétro (後退する)」と「focus (焦点)」がくっついた当時のフランス語の造語であり、1950年に世界で初めてフランスは老舗の光学メーカーP. ANGENIEUX PARIS社から特許出願申請された時に「そのモデル銘を表す商標登録」として同時に申請されたのが最初になります。
さらにその後に世界規模でこの広角レンズ域の設計概念が各国の光学メーカーに取り入れられていった背景から「P. ANGENIEUX PARIS社が自社の登録商標であるにもかかわらず、他社の使用を黙認し続けた」が為に現代にまで及んでいます。
従って、先ず一番最初に押さえるべきは「レトロフォーカス」と言うコトバは「古い時代の
甘い印象に映るピント面を指すコトバではない」点をシッカリ認識する必要があります(汗)
特にこの点について、今ドキのプロの写真家でさえも、オールドレンズの描写性に対し「恣意的に特定の方向性に偏重した印象操作を植え付けようと謀る人達/勢力が在る」ことを知覚するべきです(汗)・・例えば今ドキなデジタルなレンズと比較して、如何にも古い時代の描写の如く「ハイキーに仕上げた写真 (特にコントラストが低めの印象に写った写真) ばかりを大量生産するプロの写真家」や敢えてピント面の鋭さ感を欠いたような写りの写真を載せて紹介するちょっと前の「インスタ映え」ヨロシク紹介サイトなど、もっと言えば今現在も「まるで光輪だけがオールドレンズの魅力」の如くゴーストやフレアばかりを取り上げる人達/勢力など、決してそれだけが魅力ではないにもかかわらず、そこまで「丁寧に言及して紹介しようと試みない」安直にサクッと指示を得ようとする考え方の人達/勢力に、相当な嫌気を覚えます(怒)
嗜好の範疇で捉えるなら、それらは個人の自由だと面と向かって言ってきますが(笑)、例えば「円形ボケにだって様々な表現性やカタチに写りが在る」のに、如何にもサクッと紹介しよう試みるから「世界規模で玉ボケだけがbokehのコトバに同格扱いされてしまった」と言う今現在進行形たる「眼の前に在る危機」すらリアルな現実に至っています。
そもそも日本語で言う処の「ボケ」とは、単なる滲んで映るボケ具合だけを指さず、いわゆる「ツッコミ」でさえもボケと言うコトバの表現性に「むしろ日本語としての真の魅力が隠れている」のに、それを台無しにしてしまう人達/勢力が居て、リアルな現実にその勢いがハンパない点に極度の戸惑いを隠せません(涙)
そう言う「世界規模で起きているジャパンブーム」をこの時とばかりに活用すべく、昨今のSNS活用でヨロシク的に支持を得ようとする「安直な人間性」に、正直とても大きな脅威を感じてやみません (下手すれば収益に繋がるから流行るのも速い)(怖)
・・この点については3人居る子供達に、相当厳しく言い伝えている処で御座いまする(怖)
「せっかく素晴らしい日本語を、お前達の世代で台無しにしてしまう方向性だけは、決して
擁護しないでほしい」と、常日頃訴え続けています(涙)・・今ドキのネット環境とは、そのような危険すらいくらでも日常茶飯時期に転がっているのだと言いたい気持ちです(涙)
話がそれましたが、このように「レトロフォーカス型光学系」は、決して甘い印象の写りだけしか残せない光学設計ではなく、まさに今回のオーバーホール/修理ご依頼分で仕上げた「本来在るべき姿」として組み上げた時、このブログの最後に掲載している各絞り値に拠るミニスタジオでの実写をチェックすれば「どんだけ鋭いピント面を吐き出すのか?!!!」を理解できると思います(笑)
しかしそれをリアルな現実のモノにするには「都合12回の組み直し作業」があったからこそのピント面の鋭さ感なのであって、決してサクッとこれだけの写りが担保できる話ではない事を・・是非とも皆様には知って頂きたいと願うばかりです(涙)
その意味で、実際の処、手元にあるオールドレンズも「もしかしたら整備すればもっと鋭い
ピント面に改善できるのかも知れない」との淡い期待を込めるだけで、またひとしおに慈しむ想いが増すのかも知れませんョ(涙)
「レトロフォーカス」のコトバの意味合いが理解できると、今度は次なる疑念が湧くべきです
・・はたして、どうして焦点を後退させる必要性があったのか???(笑)
そもそも戦前〜戦中に至るまで、当時巷で最も勢力を伸ばし世界規模で多くの人達に愛用されていたのは「一眼 (レフ) フィルムカメラではなくてレンジファインダーカメラだった」ことを知るべきです。そこにはレンズの固定式/交換式の別なくレンジファインダーカメラが未だ主流であり続け、この時「広角レンズ域の光学設計は標準レンズ域の光学設計の延伸だけで対応できていた」点を知らずして「レトロフォーカスの必要性を語れない」とも指摘できるくらい
です(汗)
ところが戦後になるとクイックリターンミラーを装備した一眼 (レフ) フィルムカメラへと主流が移行するものの「フィルム印画紙の前にミラーが居る」ことから、その分の距離を光学設計でカバーし、レンジファインダーカメラで当たり前だったフィルム印画紙直前まで後玉が迫り出している環境が仇となり「クイックリターンミラーを考慮した焦点の結像」距離が必須になり、特に広角レンズ域に於いてそれを実現する光学設計が確立していませんでした(汗)
サクッと簡単に述べてしまうとこんな感じですが、そこから「レトロフォーカス型光学系」の登場が希求されていた背景が窺えます。
実際上の特許出願申請書を見ても、確かに1930年時点で英国はTaylor-Hobson社Horace William Lee (ホレス・ウィリアム・リー) 氏によって開発されていたものの、バックフォーカスが長くとてもクイックリターンミラー装備の一眼 (レフ) フィルムカメラに転用できる発案ではありませんでした (❶ US1955590)(汗)
さらに1941年になると米国はニューヨークのKodakにて3群4枚のテッサー型光学系を
基本とした広角レンズ域をカバーする設計が発案されるものの、こちらも逆にバックフォーカスが短すぎてとてもクイックリターンミラーをカバーできる状況ではありませんでした(汗)
(❷ US2341385)
従って、フィルム印画紙直前に配されているクイックリターンミラーを避けて結像できる広角レンズ域専用の光学設計としての発案は、1950年の世界初P. ANGENIEUX PARIS社による特許出願申請を待つ必要があったのです (❸ US2649022)(汗)
「レトロフォーカス」の言葉尻とその登場背景を知れば、それこそ時代が希求していた発案だったことが十分に理解できると思います(涙)
なお1950年時点で登場したP. ANGENIEUX PARIS社の「RETROFOCUS型モデル」製品群には「35mm/f2.5 (TYPE R1)」と今回扱った「28mm/f3.5 (TYPE R11)」の2つの特許出願申請書が同一日時で申請されています (❹ US2696758)。
右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
色付した光学系第3群〜第6群までを基本設計として、その前方
配置で光学系第1群前玉の「両凸レンズ」を配置し、直後に第2群の「凹メニスカス」をセットすることで焦点を後退させています。
パッと見では 色付した光学系の基本成分は絞りユニットを挟んで「3群3枚のトリプレット型光学系」のように見えますが、するとその直前に居る光学系第3群の「両凸レンズの存在」が不明ですし、そもそも特許出願申請書にトリプレットを基本成分にしている記述が一切ありません(汗) もっと言えば3枚玉トリプレットなら「両凹レンズ」の次に絞りユニットが配置されるのが一般的なので、やはりこの「レトロフォーカス型光学系」の基本成分は「第3群〜第6群の一式4群4枚で捉えるべき」と考えるものの、はたしてそれが何型なのか「???」
です(笑)
そこでフッと思い出したのが「大御所様の一人である無一居」様で述べられていた解説が大変役に立ちます(涙)・・それは光学レンズ設計士にとって「何型」と言うこだわりには一切囚われないとの下りが、真に真髄を捉えておりさすがだと感心します(涙) こういうサイトこそが本当に役に立つのだと改めて感じ入りますね(涙)
《モデルバリエーション》
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元値の要素を示しています。
前期型:1953年発売
絞り環操作:無段階式 (実絞り)
絞り環/距離環ローレット (滑り止め):平目模様/細かい凹凸ジャギー
絞り環操作:無段階式 (実絞り)
絞り環/距離環ローレット (滑り止め):平目模様/大まかな凹凸
絞り環操作:プリセット絞り方式
絞り環/距離環ローレット (滑り止め):平目模様/大まかな凹凸
↑上の写真は今回のオーバーホール/修理ご依頼分で届いた個体から取り出した光学系第1群前玉〜第6群後玉を順に並べた写真で、赤色文字の第1群前玉〜第4群までが「光学系前群」にあたります。一方ブルー色の文字で示した第5群〜第6群後玉は「光学系後群」であり、それぞれグリーン色の矢印で指し示している方向が「前玉の露出面側方向を表す」次第です (従って後群側は絞りユニットを挟んで向きが逆転している)。
↑前回扱った2018年時点での個体でも全く同じ状況だったのですが、光学系第4群と第5群にご覧のとおり「風の谷ナウシカの腐海の森」に出てくるカビ菌糸の如く、ワサワサと本当に気持ち悪いくらいにキモイカビ菌が繁殖しまくりです(汗)
同じ場所に同じようにカビ菌が繁殖している時点で「絞りユニットを挟んで菌糸が繁殖する環境が整う」と捉えるなら、それは「絞り羽根の油染みの放置プレイから始まった揮発油成分に拠る水分の界面原理」によって引き寄せられ、水分に含まれる有機物を糧にして菌糸が繁殖しているとみるのが適切な印象です(汗)
逆に言うなら、絞りユニットを挟んだこれら光学系第4群と第5群以外の群で一切カビ菌が
繁殖し得ない要素として考察すれは、自ずと見えてきそうな気がします(汗)
↑当方で用意している「光学硝子レンズ用カビ除去専用薬剤」を使い、バッサリと全ての菌糸を完全除去したところです(汗)・・このようにキレイに完全除去できるので、ホントありがたい限りです(涙)
もちろん巷で流行っている「カビキラー」やその他の化学薬剤などによる洗浄は、光学硝子レンズの特に蒸着コーティング層に対してオソロシク危険性が高いので使用など厳禁極まりない話です (ネット上解説で使っている人も居ますが)(笑)・・何だかんだ言っても蒸着しているコーティング層すら「鉱物」なので、それこそ新型コロナウイルスで厚労省が詳説している「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」を読めば一目瞭然ですし(怖)、実際に当方でも今までに何本も蒸着コーティング層に異変/異常が現れていた個体など数多く見てきています(涙)
なお上の写真で左端は光学系第4群で「光学系前群に含まれる」ものの、中央と右端は光学系第5群と6群で「光学系後群」側です。するとここに1つ目の「当初バラす前の実写確認時点でピント面を甘くしていた要因の一つ」が明白になり「中央の第5群の黄銅材格納筒に経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びがそのまま放置プレイだった」事が判明し、正しく適切な位置で右端の第6群後玉格納筒の内側に入っていなかった事が分かります(汗)
逆に言うなら光学系第6群後玉の格納筒が「アルミ合金材削り出し」で用意されていたのを知って、納得できた次第です(笑)・・ワザワザ黄銅材どうしにせず、金属材を違えて設計してきた時点で「互いの格納に対する配慮」の現れなのが歴然であり、当然ながら今回のオーバーホール/修理工程の中でピッカピカに「磨き研磨」して、確実に格納した次第です(笑)
上の写真を撮影した時は、まだ「磨き研磨」する前段階なので、中央の光学系第5群黄銅材の格納筒は「焦げ茶色のまま」だったりします(笑)
ちなみに「294」のマーキングは当方が施したのではなく、おそらく製産時点にマーキングされた「製産時点のライン/ロットで使用するパーツ構成番号 (一まとまりの括り)」の目安ではないかとみています。
↑またこちらも当初バラし初めて取り出した直後の光学系第3群格納筒ですが (写真下側方向が前玉側方向の向き)、赤色矢印で指し示しているとおり、過去メンテナンス時にムリヤリネジ込んでネジ山が削れてしまった跡が一目瞭然です(涙)
↑オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上の全景写真で並んでいる光学系第5群の黄銅材格納筒をチェックすれば分かりますが「磨き研磨」によりピッカピカに磨かれているものの黄金色ではないのが分かります。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑上の写真の「位置決め環 (左)」に絞り羽根の「位置決めキー」を刺し、その上から「開閉環 (右)」を被せて「開閉キー」が入れば絞りユニットの完成です。
↑正しくセットされれば、ご覧のように最小絞り値「f22」までキレイに10枚の絞り羽根が閉じます。
↑完成した絞りユニットを立てて撮影しました。写真上方向が前玉側の方向にあたります。すると「位置決め環」の側面に鏡筒に入った時点で均等配置で3方向からイモネジで締め付け固定される時の「下穴」が赤色矢印で指し示したように用意してあります。
ところが実際にはグリーン色の矢印で指し示したように「もう一つ別の位置でイモネジで締め付け固定していた跡が残っている (3箇所あり)」ので、適切ではない位置で絞り羽根がセットされていた事が分かります。
↑どうしてそんな位置でセットしていて分からなかったのかと言えば、上の写真のとおり「絞り環連携孔」と言う切り欠き/スリット/開口部が相応の長さで用意されているので、別の位置でも組み込めてしまっていた事が分かります (正しい位置は上の写真グリーン色の矢印で指し示しているイモネジの位置)。
またブルー色の矢印で指し示したとおり、光学系第3群の格納筒をネジ込む際にネジ山が削れてしまっているのが分かります。ネジ込んだ光学系第3群の格納筒はオレンジ色の矢印の箇所のイモネジで締め付け固定されますから、この時点で正しい光路長を確保できていないと「既に光学系第3群で狂ってしまう」のが分かります。
↑その一方、光学系第3群格納筒の先には次の第4群 (左横) がグリーン色の矢印のようにネジ込まれるものの、ここにはイモネジが介在せずにカニ目溝で最後までキッチリネジ込めば良いので「光路長は適正にセットできる」ことが判明します。
然し前述のとおり、この第3群格納筒自体がイモネジでによる締め付け固定なので、一つ前の工程のオレンジ色の矢印で指し示したイモネジの締め付け固定が適切ではないと「光学系第3群〜第4群の2つが狂う」と言う結末に至ります(怖)
ちなみにイモネジとは左写真のようにネジ頭が存在せず、ネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種でネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。
大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。
↑こんな感じで光学系第3群〜第4群が鏡筒にセットされ、オレンジ色の矢印で指し示したようにイモネジで締め付け固定されます。
この時、当初バラした段階で既に縦線でマーキングが施してあったので、過去メンテナンス時に記されていたのが分かります (鏡筒と格納筒とを跨ぐように縦線でマーキングしてある)。これによりイモネジ手による締め付け固定の位置がズレたのか否か明確になると言うものですが、実は「そもそもこのマーキングの位置で光路長が正しいのかは冒頭解説のとおり未だ不明なまま」としか指摘できず、最終的に最後まで組み上げてから実写確認して調べる以外方法がありません(汗)
従って、先ずはマーキング位置のとおり組み上げて最後に実写確認しつつ調べていくしかありません (但しここのオレンジ色の矢印位置でのイモネジの締め付け痕は、1つしか残っていなかったので製産時点を維持しているとの推測が適う)(汗)
↑さらに工程を進めて今度は光学系第2群格納筒をネジ込んだところです。ところがこの第2群のネジ込みの際にイモネジの締め付け痕が僅かにズレてネジ山に残っていたので、この第2群の光路長が狂っている懸念が捨てきれません(汗)
↑さらにいよいよ光学系第1群前玉の格納筒をネジ込んでイモネジで締め付け固定したところを撮影していますが、然しここでもやはりイモネジの締め付け痕がズレて残っており、最終的に「第1群と第2群の2つで光路長が狂っている懸念が高い」との憶測に到達せざるを得ません(涙)
↑ヒックリ返して、今度は鏡筒後部に光学系第5群〜第6群の「光学系後群」側をセットしたところです。オレンジ色の矢印で指し示していますが、上の写真では光学系第3群〜第4群の格納位置を締め付け固定する❶のイモネジと、さらに光学系第2群を締め付け固定する❷ のイモネジの2つが見えています (この他に前玉用のイモネジも3つめとして存在する)。
上の写真をよ〜く見ると分かりますが、実は❷のイモネジのマーキング (縦線) が僅かにズレているのが分かります。実際光学系第2群格納筒をネジ込んでいくと、このように僅かにズレた位置までネジ込めるのです (つまり光路長が狂っていた懸念が残る)(汗)
その一方で❶のイモネジの箇所にはズレていた痕跡が残っていないので「製産時点を維持」と考えられるワケです。
↑光学系第1群〜第6群までの光学系が全てセットされたので、ここからは鏡胴「前部」の組立工程に入ります。「プリセット絞り環 (左)」と「絞り環 (右)」の2つになますが、プロの写真家の中にもこの把握を間違えて「逆に覚えている人が居る」ので笑ってしまいます(笑)
左右のどちらが「プリセット絞り環で絞り環なのか???」は、特に決まっている話ではなくモデル別に、或いはオールドレンズ別にバラバラですが「そもそも撮影時のカラダの動きに沿っているのがこれらプリセット絞り方式の仕組み/原理」なので暗記する必要すらあり得ませんね(笑)
・・それを理解していないから真逆の解説を平気でしているプロの写真家が居たりします(笑)
なお、グリーン色の矢印で指し示している箇所には、当初バラした直後に過去メンテナンス時のグリースがそのまま、全く使われていない状態のままビッチリ残っていたので、過去メンテナンス時の整備者も「原理原則」を理解していません (本来この部位は互いに接触しないのでグリースを塗る必要が無い)(笑)
↑プリセット絞り環と絞り環を組み込んだところです。「絞り環」がブルー色の矢印のようにクッション性を持つので「プリセット絞り値のセット」の時だけ操作すれば良い仕組みです。また「制限キー」が備わり、刻印絞り値「f3.5〜f22の間だけで絞り環が回るように設計されている」のが明白です(笑)
このように全てには「原理原則」があり、どうでも良い設計などで造られていることは無いので、その道理に従って組み上げていけば良いだけの話で、オールドレンズの整備などは至極簡単な内容ばかりです(笑)
↑鏡胴「前部」が完成したので、ここからは鏡胴「後部」の組立工程に移りますが、鏡胴「後部」は基本的に多くのオールドレンズで「ヘリコイド群の塊」でしかありませんから、これも至極簡単な話ですね(笑)
❶ ヘリコイドオス側
❷ ヘリコイドメス側
❸ マウント部 (exaktaマウント規格)
❹ 指標値環 (基準|マーカー刻印あり)
❺ 距離環ローレット (滑り止め)
↑今回扱った個体で厄介だったのが上の写真で赤色矢印で指し示している箇所と、グリーン色の矢印の箇所と2箇所に「直進キーをネジ込めるように下穴が用意されていた」点です(汗)
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
するとこれだけの距離で互いが離れているので、この位置をミスるだけで十分にアンダーインフ状態に陥り、無限遠合焦しなくなります(汗)
↑マウント部には「制限壁」と言う突出した壁が備わり、その端の一方が「無限遠位置 (グリーン色の矢印)」になり、その反対側が「最短撮影距離の位置 (ブルー色の矢印)」と言う話で、そこにヘリコイドメス側にネジ込んだ「制限キーと呼ぶネジの頭がカチンと音が聞こえて突き当て停止する」為、無限遠位置や反対側の最短撮影距離位置で距離環が停止する原理ですね(笑)
またその際、オレンジ色の矢印で指し示している1箇所だけに「直進キー」と言うネジが入り、距離環を回す「回転するチカラ」が「直進動に瞬時に変換される (つまり加えたチカラの向きが変わる)」ので、その結果として鏡筒が繰り出されたり/格納したりする原理です(笑)
・・オールドレンズは何一つ難しい原理など働いていません(笑)
但し、当方の技術スキルは低いのでマニュアルフォーカスレンズしか対応できず、ズームレンズはバラせません(笑)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。最終的に光路長が狂っていたであろう光学系第1群前玉と第2群に後群側の第5群の3箇所を適正に仕上げることで、結果的に12回も組み直すハメに陥りましたが「非常にに鋭いピント面にやはりちゃんと仕上がった」とのご報告が適います(涙)・・当初バラす前の実写確認時のあの甘い写り具合がまるでウソのようです(笑)
これは当初バラす前と組み上がり後の実写確認時とで、簡易検査具を使いチャート撮影している時に解像度の相違を視認できるだけに限らず、もっと簡素に明確に指摘するなら、無限遠位置の確認の為に相応の距離で遠景を写している時「カメラのピーキング機能」を使い確認していれば一目瞭然です。
当初バラす前の実写確認時の無限遠合焦している被写体に映るピーキングの状況に比べて、組み上がり後の実写で被写体を拡大した時に、明確にそのピーキング領域の増大と濃さの違いを知るからです。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化進行に伴う極薄いクモリすら皆無です。
一つ前の前玉の写真のとおり、明確なヘアラインキズが多いですが、これは前玉の露出面側に残る「経年の拭きキズ」がその多くを占めており、前玉裏面側〜後玉露出面側に至るまで、光学系内はスカッとクリアです。但し、特に光学系第2群に微細な点キズが多目に残っているので、光に翳して光学系内を調べれば「微細な塵/埃が少々多目に残っているように見える」ものの、実はそれは当初バラす前の確認時点とさほど変化していません (つまり3回の清掃でも除去できなかったので微細な点キズだと判定できる)(汗)
一般的に二酸化炭素 (CO2) は水分に溶け込むことが分かっており、詳しくは「ガラスと水の反応について (柳沢文孝著)」或いは「ガラスの破壊における水分の効果 (松岡純著)」などからも知ることができます。当方にて「点キズ」と明記している内容は、これらCO2を介在して光学硝子レンズの内外に於いてクラックしていく要素を広義的に述べています。
従って今回扱った個体については、特に光学系第1群前玉と第2群の2つの群に残る微細な点キズが、残念ながら経年並みとの印象です (物理的に光学硝子材に残るキズなので清掃でどうにか改善できる次元の話ではありません)(汗)
↑今回の個体はむしろ後群側の状態が良かったので (スカッとクリア)、前玉のヘアラインキズの状況すらその影響が最低限のレベルに留まります(涙)
従ってオークションなどでオールドレンズを入手する際も、このように前玉側方向から光学系内を覗き込んだ時の掲載写真と、合わせて後群側からの状況も同時に確認しない限り、何ら光学系の状態を確かめたことには成り得ません(笑)
当然ながら、その際に対象となるオールドレンズの光学系構成くらいは把握していなければ、そもそも貼り合わせレンズの存在とその状況すら確認できません(笑)・・もっと言えば「一言にクモリ」と言っても、様々なクモリの状況が在るので、はたしてそのクモリがどんなクモリで「何処の群の表裏面に起きているのか否か」に従って、写真への影響などガラッと変わるので、それをコトバで解説するのは先ず以て不可能です(笑)
従ってヤフオク!の出品者が頻繁に出品ページで使っている謳い文句の一つ「視認性に問題ありません」などと言う表現は、全く以て何を指して述べているのか意味不明なコトバであり、本来「謳い文句」にすらなっていないと捉えるべきです (むしろこのコトバを使っていたらその出品者が出品している個体は手に入れないほうが良いくらいのレベルの話)(笑)
↑何しろ絞り羽根が小径なので小さいながら「カーボン仕上げ」で表層面がザラザラしている為に、ご覧のように経年劣化進行に伴い互いが擦れて剥がれ落ちてしまったカーボンの領域は「メタリックグレーの地が現れている」次第です。
よくこの絞り羽根がキレイな状況をメリットとして明記しているヤフオク!の出品者が居ますが(笑)、マウント部のスレ痕などの多少を述べている次元と全く同じ話で「その目的と役目を見失っている表現」としか言いようがなく、全く以て恥ずかしい限りです(恥)
マウント部も絞り羽根もそれぞれにその存在価値としての目的と役目が在るのに、それを逸脱した表現を使って「あたかもメリットの如く表記する意地汚さ」は、まさに常套手段としか言いようがなく低俗です(笑)
今回の個体に実装している10枚の絞り羽根は何しろ小さいので、10枚全てのカタチを正しつつ/整えつつ組み込んでいる為「真円を維持した円形絞りに戻った」とのご報告が適います。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し「製品寿命の短命化を促す」結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない『磨き研磨』により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる『完全解体を前提とした製品寿命の延命化』が最終目的です(笑)
もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)
実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)
その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施す『DOH』そのものなのです(笑)
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、当初バラす前の確認時点で「異常に重いトルク感」だったのが古いヘリコイドグリースの劣化だけではなく「おそらく落下か何かしていてマウント部のネジ山が真円を維持しきっていない」或いは「下手すれば過去メンテナンス時の整備者がマウント部に備わる制限壁にムリなチカラを加えて曲げている」それら応力の影響でトルクが重くなり、一部にはトルクムラさえ起きている状況です(汗)
これはマウント部を前玉側の方向から覗き込んだ時に「外周の隙間の空き具合」をチェックする事で真円ではない事を確認しています(汗)・・真円を維持しきっているのなら全周で隙間が同じように空くべきですが、トルクが重く変化する箇所と、軽い箇所とでその隙間が違うことから真円を維持していないと判定を下しています(汗)
残念ながら、当方には「真円度を検査する機械設備がない」ので明確なことは分かりませんが
仕方ないので叩き込みを行い真円に近い状態まで戻しつつトルクムラを抑えています (完全には戻せません)(汗)
従って当初バラす前の状況に比較すれば、相応に改善できており異常な重さのトルクだったのがだいぶ軽く変わったものの「当方の感覚からすればまだまだ重いトルク感の範疇」との判定です・・申し訳ございません(汗)
↑当初バラす前の時点では「絞り羽根が閉じすぎていた」ものの正して組み込んでいます。また光学系第1群前玉〜第6群後玉までの光路長を12回の組み直しの中で適正化していったので、現状鋭いピント面に戻っていますし、当初バラす前の実写確認時点で極僅かなアンダーインフだった状況は改善できており、ピタリと無限遠位置の合焦が適っています (当たり前ですが)(汗)
無限遠位置 (当初バラす前の位置から改善/ほぼピタリの状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:28㎜、開放F値:f3.5、被写体までの距離:9m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:5m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、5m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の10m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭です(笑)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。本日キッチリ梱包しクロネコヤマト宅急便にてご返送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。