〓 FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
FUJICA製標準レンズ・・・・、
『EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時のFUJICA製標準レンズ「50mm/f1.4」の括りで捉えると累計で25本目にあたりますが、今回扱った個体「後期型」だけでカウントすると意外にも僅か2本目の扱いです。決して敬遠していたワケではなく、ず〜ッと死角に入っていて今まで扱うのを見逃していた次第です(笑)
特にこのモデルの場合バリエーションで言う処の「初期型〜前期型」は光学系内の光学硝子レンズに「酸化トリウム」を含有したアトムレンズ (放射線レンズ) なので、パッと見ですぐに分かるレベルで「光学系内が黄変化している」個体が圧倒的に多いです。
光学硝子材の成分に「酸化トリウム」を配合する事で屈折率を最大で20%代まで上げられる (1.22%) 事を狙った処置で、世界的にも当時流行りました。しかしブラウニング現象の問題と共に新種硝子が開発され使用環境が整った事から1970年代に入るとやはり世界規模で光学硝子レンズへの「酸化トリウム」含有は廃れてしまい、特に今回扱った「後期型」が登場した1974年時点では光学硝子レンズへの「酸化トリウム」配合をやめています (従って黄変化が起きない)。
ところがその一方で現在の市場を見えていると「後期型のタイプで光学系の状態が良い個体を手に入れるのが難しい」状況で、多くの個体でカビの発生やコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが生じ、光学硝子レンズを清掃しても除去できない場合が多いので「特に後期型に関しては光学系の状態が良いと確信を得なければ手を出せない」のが扱うのをより難しくしています。
◉ アトムレンズ (放射線レンズ)
光学硝子材に酸化トリウムを含有 (10%〜30%代) させて屈折率の向上 (20%代) を狙った光学硝子レンズ
◉ ブラウニング現象
物質の経年変化に拠り褐色に着色し褐変 (かっぺん) する現象を指す (食品や光学硝子レンズ等)
◉ 黄変化 (おうへんか)
光学で言う処の黄変化とは光学硝子レンズの経年変化に拠る変質で褐色に色付く現象を指す
↑上の写真 (2枚) は「酸化トリウム」を含有している群だけを取り出してUV光の照射を施す前 (左写真) と照射後 (右写真) を並べています。特に左上の黒色格納筒に一体成形されているのが光学系第4群の貼り合わせレンズなので、2つの光学硝子レンズが接着されている分少々色濃く変質してしまいます (これら光学硝子材の赤褐色化は今回の個体ではなく、以前オーバーホールした初期型からの転載写真ですからご注意下さいませ)。
するとご覧のようにUV光の照射により半減程度まで黄変化を改善でき、且つ今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着して撮影に使うなら「オート・ホワイト・バランス (AWB)」設定により黄色っぽい写真が撮られてしまうのを防ぐ事が適います。
ところが多くの場合でネット上の解説を観ていても触れませんが、AWBで発色性の制御が適うとしても「コントラストへの影響は一切改善しない」事からアトムレンズ (放射線レンズ)が吐き出す写真はどちらかと言うと「コントラストが強めに写る傾向が強い」と指摘できます。
これは光学系内を透過してきた入射光の色バランスをAWBで改善できても、光学硝子レンズの黄変化が残っていたり、そもそも光学硝子材への「酸化トリウム」含有に拠り屈折率が変化している点から考えても、入射光のコントラストの振り分け方/影響はAWBでは一切改善できない話になるのは自明の理です。
この事からコントラストへの影響 (濃いめのコントラストに写る) 点を嫌うなら、必然的に「光学硝子材に酸化トリウムを含有していない後期型を狙うしかない」話に到達するので、最近ではこの「後期型狙い」も増える傾向にあるようです。
逆に「初期型」の収差が多く残っているモデルバリエーションのほうを狙うのも「EBC (Electron Beam Coating)」化される前の、いわゆるモノコーティング時代の写りを狙うとの意味合いに於いて、或いは欲張って「初期型と後期型を手に入れる」のもアリではないかとの考察にも繋がりますね (要は前期型に対する魅力が半減する話)(笑)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。この「後期型」も必ずいつでも市場に出回っていますが、光学系の状態までちゃんとチェックして手に入れようと考えるとなかなか難しかったりします(泣) 特にカビの発生は多目のほうなので (さらに光学系前群のカビ発生率のほうが高い)、それを避けるようになるとなかなか手に入れられません。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。もちろん前述の様にカビも発生していなかった個体を手に入れているので、カビ除去痕の残留もありません。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側もスカッとクリアでLED光照射でも極薄いクモリが皆無です。残念ながら微細な点キズは光学系前群よりもこの後群のほうが多めに残っており、且つ僅かに目立つ印象の点キズが数点あります (写真には一切影響せず)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:18点、目立つ点キズ:13点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大13mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(後群内に少々目立つ点キズ数点あります)
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
↑上の写真解説のとおり「開放測光用の爪」がマウント面から飛び出ています (グリーンの矢印)。当時のFUJICA製フィルムカメラ「ST-801/901/AZ/1」などに装着すると開放測光機能がご使用頂けます。
もしもマウントアダプタ (ピン押し底面タイプ) 経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着される場合は、ご使用になられるマウントアダプタによってはマウント面の「開放測光用の爪」が当たって擦れるので/最後までネジ込めないので切削する必要があります。
申し訳御座いませんが切削はご落札者様自身で行って下さいませ (当方では切削しません)。
またK&F CONCEPT製のマウントアダプタをご使用頂ければ/手に入れればこの「開放測光用の爪」を回避するので干渉せずに正常使用が可能ですからご検討下さいませ。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。
・マウント部内部の捻りバネの経年劣化進行に伴い僅かに弱っている為鏡筒から飛び出ているアームを掴んでいる爪が擦れて「カリカリ音」が聞こえてくる事があります(特にマウントアダプタに装着すると聞こえてきます)。捻りバネの経年劣化が原因なのでこれ以上改善できません。また当問題で将来的に不具合を起こす因果関係に至ることはありません。
・マウント面に「開放測光用の爪」が1mmほど突出しています。装着するマウントアダプタによって干渉し最後までネジ込めない場合があります。その場合はK&F CONCEPT製マウントアダプタを別途お買い求め頂ければ(市販されています)干渉を避けられ最後までネジ込めます(日本製のRayqual製のマウントアダプタでも干渉を避けられます)。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
❶ HAKUBA製MCレンズガード (新品)
❷ 本体『EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)』
❸ 純正樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (中古品)
❹ 汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
このモデルはピント面のピーク/山がアッと言う間に訪れるので「距離環を回すトルクは軽め」に仕上げてあります。ピントのピーク/山前後で微動させる際は、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけで前後動が適うので扱い易いと思います。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f11」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じきっていますが、まだまだ「回折現象」の影響を感じません。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。