〓 GAF (ガフ) AUTO GAF 55mm/f1.7《富岡光学製:前期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
アメリカ向け輸出モデルGAF製標準レンズ・・・・、
 『AUTO GAF 55mm/f1.7《富岡光学製:前期型》(M42)』です。


標題のとおりこのモデルは当時の『富岡光学製OEM』モデルの一つで、国内ではCHINONを 筆頭に海外輸出向けOEM製品として当時のヨーロッパやアメリカに指向先ブランド銘で製産/輸出されていたオールドレンズです。

従って数多く顕在するそれら同一の原型モデルから派生しているOEM製品全体として捉えると今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体が累計で36本目にあたり、その中で同一のブランド銘「GAFモデル」になると3本目という状況です。

GAFは現存するアメリカの住宅設備 (屋根材の) 会社ですが、写真機材に限定すると元々は1841年にニューヨークで創業した写真用品 (印画紙) メーカーE.&HT Anthony Co.が発祥になります。
その後1902年にアメリカのAnsco社に買収され、さらに1928年にはドイツ資本会社であるAgfa Ansco社としてアメリカで統合されています。しかし第二次大戦によりドイツ資産の凍結/接収に伴いニュージャージー州の住宅設備屋根材製造会社であるGeneral Aniline&Film社に営業権が移譲され、戦後の1967年より写真機材販売部門の自社製品ブランドとして使用され始めました。この時点で従前の写真フィルムの生産から撤退し (生産工場の売却)、自社では開発生産を行わないOEM製品に頼った写真機材の販売をスタートさせています。

GAFブランドのOEM写真機材として特に一眼レフ (フィルム) カメラでは、日本のCHINON製品に目を付け、1972年にCHINON製フィルムカメラ「CHINON M-1」が発売されるとさっそく自社向けOEMモデル「GAF L-17」を皮切りに輸出供給の契約を取りつけスタートします。

CHINON製品を原型モデルとして派生したOEM輸出製品の一つではありますが、この「GAF ブランド」で括るとモデル・バリエーションは「前期型/中期型/後期型」と3タイプに分かれ、今回扱う個体は「前期型」になります。

このモデルの詳細はAUTO GAF 55mm/f1.7《富岡光学製:前期型》(M42)』で解説して いるので、その時代背景から描写性など興味がある方はご参照下さいませ。

ちなみに現在海外オークションebayでこのモデルを探すとヒットする確率が高いのは、むしろ原型モデルたる「AUTO CHINON 55mm/f1.7《富岡光学製:前期型》(M42)」ばかりだったりするので、意外にもすぐに手に入るOEMモデルではありません (年間で数本レベル)。

またこれら富岡光学製OEMモデルの「55mm/f1.7シリーズ」は、ほぼ筐体外装の特徴が同じで変化していったのは距離環のローレット (滑り止め) だったりします。逆に言えばレンズ銘板をすげ替えただけの印象も拭えないほど筐体意匠が近似したまま輸出が続きました。

数多くの派生型OEMモデルをオーバーホールしているので、内部構造や使用パーツなどの変遷も100%把握していますが「前期型後期型」に至り終息していく中で、構造もパーツも ほとんど変化がなく「一時期に集中的に」海外向けOEM生産を続けていた事が窺えます。

そしてそれらの派生型OEMモデルの中でレンズ銘板の刻印に「GAF」と赤色刻印していたモノコーティングモデルになると、実は今回扱うこのモデルしか存在しないと言う結果です。但しすぐ後の時代に登場するマルチコーティング化されたタイプは蒸着したコーティング層の変化に準じてレンズ銘板に刻印されるカラーリングも変遷していっているのが分かります。

そんなこんなで当方の認識の中では赤色刻印モノコーティングモデルがステキだとの単なる印象的な要素からこの「GAFモデル」を気に入っていたりしますが(笑)、意外にも (特に輸出 指向先のアメリカで) 流通している個体の現状はそれほど良くなく、光学系内のカビ発生や コーティング層経年劣化に伴うクモリなど、なかなかおいそれと手に入れられないハイリスクモデルの一つでもあります(怖)

特にこのモデルに共通的に必ずチェックする必要がある「後玉の状況」が確認できない個体はもうそれだけでアウトです(涙) 何故かと言えば後玉が僅かに (0.6㍉) 突出している為、距離環が無限遠位置の状態で置いたりするとあっと言う間に当てキズや擦りキズが付いてしまうからです(怖)

オールドレンズを手に入れる際は、そう言う要素なども必ずチェックが必要なので、なかなか掲載写真だけで判定できなかったりします。実際このブログのメインメニュー内でご案内している見たて依頼受付フォームでも特に海外オークションebayに出品中のオールドレンズに関し、徐々にご依頼が増えており皆様が苦労していらっしゃるのが分かります。

当然ながら当方がご依頼を承った出品掲載ページを観たところで「掲載写真」はご依頼者様と同じ写真を観ているに過ぎませんが(笑)、実は完全解体してオーバーホールしている立場だからこそ「そのモデルで要注意な箇所がある」或いは「光学系内を画像処理すると見えてくる事実があったりする」のも、要は当方が常日頃オーバーホールしている中で得ている、例えば光学系内の写真への写り方などがあったりするので、第三者がパッと見で判定できない「事実」を掴めると言うメリットがあり、実際にポチッと落札する前に確認事項を知る術にも至っていたりします (出品者に事前確認する質問が見えてくるから)。

詰まるところ「整備者の立場から観た場合の見る角度が違う」要素があったりするので、ご依頼頂いた方には「決して安くない買物だけに助かった!」と数多くお褒め頂いている次第で、何かしらお役に立てるなら誠に栄誉な話で御座います!

そんなワケで、今回の個体もカビ発生状況やクモリなど事前に出品ページ掲載写真をチェックしつつ「自らの体験値」を基に出品者とやり取りした結果から判定を下して調達し得た個体と言えます。

皆様も興味関心が高いオールドレンズについて、然し出品ページ掲載写真を見るとなかなか 疑心暗鬼の塊でウ〜ンと唸っている間に一声お声掛け頂ければ、また悶々とする時間も短くて済むかも知れませんね!(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はAUTO GAF 55mm/f1.7《富岡光学製:前期型》(M42)のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ご覧のようにレンズ銘板がCHINON銘だったらその まま通用してしまうくらいに筐体外装の意匠はどのモデルも同じです。

この『富岡光学製OEMモデル』の一番最初のモデル「初期型」はマウント面がシルバー環だったのでパッと見ですぐに分かります (もちろんイモネジで横方向から締め付けている特徴は 同じまま)。

その後現れたのが今回の「前期型」で距離環ローレット (滑り止め) に「合皮」を使っていて、皮革柄に凹凸があるエンボス加工です。次に登場したのがラバー製ローレット (滑り止め) に 変わった「中期型」で最後の「後期型」もラバー製ながら銀枠飾り環が距離環から消えて黒色筐体に近づいていきます。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

特に『富岡光学製OEMモデル』の近年の傾向として「光学系内の劣化が限界に到達している」個体が増えているので、カビの繁殖が多く、且つコーティング層の経年劣化に伴う薄いクモリも除去できず、なかなか厳しい状況です。

そんな中で今回扱った個体はスカッとクリアで本当に気持ちいいです(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無なので、この「55mm/f1.7シリーズ」ではある意味貴重品です(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:14点、目立つ点キズ:9点
後群内:17点、目立つ点キズ:10点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
(前後群内に微かな2mm長前後が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)

↑6枚の絞り羽根もキレイになりAA/M切替スイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したままとじていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・A/M切替スイッチの操作性を軽めに微調整しています(当初硬すぎて切り替えできず)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体AUTO GAF 55mm/f1.7《富岡光学製:前期型》(M42)
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正樹脂製スナップ式前キャップ (中古品)

距離環の合皮製ローレット (滑り止め) は既に経年劣化の影響でモロくなっており、過去メンテナンス時におそらく紙テープタイプの両面テープを貼られてしまい、化学反応から癒着した為今回のオーバーホールで剥がしました。

その際合皮の基部まで一緒に溶けてしまったので、少々薄く劣化しています。また一部には 裂けや切れが生じていますが、接着しています。

距離環やフィルター枠など銀枠飾り環の部分もちゃんと「磨き研磨」を施したので、眩いほどにピッカピカです!(笑)

筐体外装の光沢まで含め、そういう要素が逐一「所有欲を充たす内容」になり、操作性の良さと共に光学系内の透明度がまた嬉しいと思います。

距離環を回すトルクは僅かに「重め」の傾向です。この因果関係は過去メンテナンス時に塗布されてしまった白色系グリースの経年劣化に伴うアルミ合金材への浸透でネジ山のサビが進行していた為に、今回本来製産時点で使われていたハズの「黄褐色系グリース」に戻しましたが影響を受けています (黄褐色系グリースはネジ山の状態に神経質なので)。

もちろん同じように今回に再び「白色系グリース」を塗布すればツルツルとした軽い操作性に仕上がったハズですが、再び1年〜2年内に揮発油成分がオールドレンズ内部に廻り、当然ながらすぐに絞り羽根の油染みに至り、特にマウント部内部の捻りバネとスプリングの劣化が 進んでしまい「絞り羽根開閉異常を次の整備時点で防げなくなる」因果関係になる為、敢えて当方では「白色系グリースは絶対に使わない」主義を通しています。

↑前述した後玉の突出状態を拡大撮影しました。ご覧のとおり「0.6㍉」後玉が飛び出ているので、このまま無限遠位置まで距離環を廻した状態で置いたりすると当てキズが付きますからご留意下さいませ。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはハレーション気味だったりします。

↑地堀間を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。さすがに絞り羽根がほぼ閉じきっている状態なのでピント面のコントラスト低下が僅かに現れ、且つ解像度も堕ち始める「回折現象」の影響が現れて います。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。