◎ Heinz Kilfitt München (ハインツ・キルフィット・ミュンヘン) Makro-Kilar 4cm/f2.8 D ・・・ (silver)《後期型》(arri ST)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Heinz Kilfitt München製マクロレンズ・・・・、
Makro-Kilar 4cm/f2.8 D (silver)《後期型》(arri ST)』です。


久しぶりに愛用モデルたる当時世界初のマクロレンズと世界中を席巻し、今もなお熱烈なファンが世界中に顕在する憧れのモデルのオーバーホールを行いました。

最初に少々本件の内容とは離れますが、今月に入ってほぼ2週間近くパソコンの調子が悪くなり、しまいにはハードディスクまで壊れるという非常事態 (当方にとっては) 宣言状態で、タダでさえこのコロナ禍の折で落札されずに収入が途絶えているのにとんでもない事件です!(怒)

実は以前にも似たような状況に至り大変貴重なオーバーホール作業を記録した写真やデータなどがスッ飛んでしまい、泣くにも泣けない事件を2回も乗り越えているのに相変わらず「学習能力が低い」為に、今回3回目の悲劇を迎えました(泣)

何しろ今までに扱ったオーバーホール作業時に撮影してきた膨大な写真データ (凡そ7万枚) とその記録データ (凡そ3万ページ) は命よりも大切なワケで(笑)、それら資産が残っているからこそたいていのオールドレンズ作業や修理時に100%レベルで対処できている次第です。

従って当方は例え自宅が火事になったとしても「身一つで逃げちゃダメ!」を信条としており(笑)、何はあっても「ディスクを鷲掴みにして逃げろ!」が火事場の訓練での避難方法です(笑)

さすがに歳を取ると今までは苦にならなかった修復作業に辟易してしまい(涙)、今度こそは 自動バックアップとして「RAID10 (1+0)」を導入するべく計画を決心しました!(努)

先立つモノがまだ手元に無いので (ハイ、お金のことです) 、取り敢えず計画だけですが一般的な「RAID 1 (ミラーリング)」ではなくて、速度を落とさずに完璧なデータ保全を目指して「RAID 10」の導入です。保全が最優先なので仕様は「1+0」を選択する予定です (当方は動画撮影しないので0+1でなくて良い)。

そんなこんなで直近でメール連絡しなければイケナイ方々にもいろいろタイムリーなご案内ができず、大変申し訳御座いませんでした。お詫びします・・(涙)

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さて本題の本件ですが、実は2018年に遙か遠くアメリカはワシントンDCからこの「Makro-Kilarシリーズ」のオーバーホールをご依頼頂いた4本の中で「最後期型」モデルたる「タイプA」にどうやらバルサム切れが発生したようで、その対処を今回ご依頼頂きました。

Makro-Kilarシリーズ」で焦点距離40mmは光学系に3群4枚のエルマー型構成を採って いるので、バルサム切れしたのは第3群の後玉と言う話になります。

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは 反射が生じている状態

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

例えばヤフオク! などに出品しているオールドレンズを見ていても、貼り合わせレンズと思しき箇所に「リング状に虹が反射している」状況を発見したりします (もちろん出品者はバルサム 切れを一切告知していない)(笑)

ニュートンリング (ニュートン環)
互いに接触している2枚の凸平レンズに生じる同心円状の複数のリングが視認できる状況

パッと見で光学系内に「虹色にリング状が視認」できたら「既にバルサム剤が剥離して浮いてしまった状態」であるのがほぼ間違いありません。かと言って剥離していなければ良いのかというと「逆に酷いクモリが生じてしまい写真が低コントラスト化する」ので、それはそれで 結局のところ堪ったものではありませんね(泣)

従って貼り合わせレンズはバルサム切れしていないのが当然ながら正常なので「光学系内が スカッとクリア!」なのがチョ〜気持ちいいに越したことはありません(笑)

そこで今回のこの個体を扱うに際し「出品ページ掲載の実写を見るとコントラスト低下を招いている」のが明らかであり、然し出品者はこの点に一切言及せず出品し続けていました。

するとこの因果関係で予測できる問題は・・・・、

コーティング層経年劣化に伴うクモリの発生
第3群の貼り合わせレンズバルサム切れ

・・とこの2つしか考えられません(怖) 最悪コーティング層の経年劣化ならどうにも対処できませんが (コーティング層を一旦剥がして再蒸着が必要だから/硝子研磨が必要)、バルサム 切れなら一旦剥がして再接着すればOKです。

そこで修理のご依頼を頂いたワシントンDCからの出戻り個体に対する「ブッツケ本番」が少々躊躇われるので(笑)、その本場移行前の「再接着」実地訓練として今回の出品個体調達に及んだ次第です(笑)

イザッ手元に届くと予想したとおり「第3群に極僅かなバルサム切れ発生状態」なのが分かりおそらくは出品者も認識できていなかったと推察されます (もしも認知していたら悪質な出品とも言える)。

さらにワシントンDCからの出戻り品も間違いなくバルサム切れ (相当酷い状況) なので、ここで2本の「マクロキラー」でバルサム切れ対処を処置した次第です。

ちなみに「貼り合わせレンズに対する最も過酷な状況」で多くの方に指摘される与件としては「高温多湿」など硝子材に対する温度の「高温 (夏場)/低温 (冬場)」を挙げる方が非常に多いですが、この中で「湿気分」に関しては光学硝子材には何ら影響が起きません (水没などはまた別の話)。

一般的に人の居住空間に於ける「湿気分」で考察するなら何ら光学硝子材に影響を与えませんが、他方空気中に浮遊するカビ菌糸/胞子の類はその水分 (内の有機物) を糧として菌糸を伸ばすので「カビの発生」という与件で捉えるなら光学硝子材には脅威になります。

然し光学硝子材が最も恐ろしい環境は「気圧」なので、多くの方々が勝手に思い違いしている「高温/低温」の温度帯ではなく、それに伴い生じる「気圧差」により光学硝子材に負担が かかる事から「破断/破壊」が進みます。

特に貼り合わせレンズについてはその貼り合わせ面のバルサム剤も「気圧差」で光学硝子材の膨張/収縮により容易に剥離が進行するので、決して温度や湿気ではない点をご認識頂くべきかと考えます (何故なら光学硝子材の成分は全て同一ではないから膨張/収縮度も個別に異なる)。

そしてもっと言うなら「製産時点で光学硝子材を締め付けている締付環に塗られるのは粘性がある固着剤」であって、過去メンテナンス時に塗布されまくっている「硬化タイプの固着剤」ではない事を知るべきです (膨張で緩み収縮で元に戻る為に粘性が必須)。
いずれの話も過去に取材した工業用光学硝子製造会社の取材で得た知識です

この点からしても「光学硝子材の天敵は気圧に拠る膨張/収縮」なのだと肝に銘ずるべきですね・・世の中の整備屋さん!(笑)

なお、そのワシントンDCからの出戻り品に関する指摘事項をこのブログの一番最後にまとめてご案内しますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます (今回の出品個体とは一切関連性がありません)。

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【モデル・バリエーション】※それぞれのタイプ別はレンズ銘板の中に刻印されている

(1) 撮影倍率で分ける場合 (全2分類)
1/2倍撮影 (ハーフマクロ)
タイプタイプの2種類

鏡胴が一段だけで繰り出し/収納するタイプ
回転式ヘリコイド駆動のシングルヘリコイド
(タイプのみ二段階のダブルヘリコイド駆動)

1:1倍撮影 (等倍マクロ)
タイプのみ

鏡胴が二段で繰り出し/収納するタイプ
回転式ヘリコイド駆動のダブルヘリコイド

(2) 開放f値で分ける場合 (全2分類)
開放f値f3.5 (1955年発売モデル)
タイプタイプの2種類

ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は角張った印象のモデル

 

開放f値f2.8 (1958年発売モデル)
タイプタイプ、及びタイプの3種類

ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は丸まったイメージ

  

(3) 筐体の厚みで分ける場合 (全3分類)
最も厚みがあるタイプ (1955年発売モデル)
タイプタイプの2種類

ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は丸まったイメージ

厚みが中程度のタイプ (1958年発売モデル)
タイプタイプの2種類

ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は丸まったイメージ

厚みが最も薄いタイプ (1960年発売モデル)
タイプのみ

ヘリコイド繰り出しが二段階 (但し1/2倍撮影)
筐体外装の意匠は丸まったイメージ

 

・・とこんな感じで少々複雑です。特に最後に登場した「タイプA」のハーフマクロは非常に出荷本数が少ないので滅多に市場に現れません(泣)

またこのモデルに限っての話ですが「最短撮影距離」とはレンズ銘板から被写体までの実距離を意味し、一般的なオールドレンズに於ける「撮像面と被写体との距離」ではありません。

逆に言うなら筐体サイズはもとより最短撮影距離の位置まで繰り出すと、優に5cmをオーバーしている為「最短撮影距離5cm」は成り立ちませんョね?!(笑)

光学系は典型的な3群4枚の単なるエルマー型ですが(笑)、実は
アポクロマートレンズ」なのでこのブログの最後に掲載している
オーバーホール後の実写をご覧頂いても分かるとおり「色ズレ」が ありません!

光学系内に入射してくる光を厳密に「三原色」に分けて、それぞれで適切な角度で結像するよう「光学硝子レンズの成分を調整している」オールドレンズが当時「アポクロマートレンズ」と呼ばれ、非常に 高額だったようです。

例えば現代では総天然色を表現するために使う「色の三原色」はデジタル処理で表現される為「」であり、要は「レッド/グリーン/ブルー」を基本としていますが、最近では「四原色」として「」としています。

どうして「イエロー」を混ぜたのかご存知でしょうか???(笑)

輝度を上げて明るくしたいと考えるなら、パッと考えて「ホワイト」が必要だと考えますが、実は白色を加算してもコントラストは逆に低下して霧がかかったような写り方になってしまいます。そこで画全体を明るくしつつもコントラストも維持させる概念として「」を附加したのが最近の4Kや8Kの概念ですね(笑)

従って光学レンズの世界では必ずしも「」の順序になる必要が無く、その光学メーカーやモデルの設計思想として追求する色バランスから優先順位を変えて設計すれば良い話です。

実際今回扱う「Makro-Kilarシリーズ」も当初は「」とレンズ銘板に刻印されているアポクロマート表記が「」だったワケですが、今回の「後期型」では「」と「」と刻印が変化して「入射光制御の優先順位が途中から変化した」事が明白です。

必然的に各成分で波長が異なるので結像する際の色ズレを修正する事を設計時点で考えるなら自ずと使うべき光学硝子材の成分も変化していったと推察できます。

ちなみに絵の具で実験すると分かりますが、全ての色を混ぜ合わせると「黒色」になるので、その反対色が「白色」で画の明るさの高低で白色が使えない理由もこれで納得できますね。

なお、前述の右側光学系構成図で 色部分の第1群 (前玉) には「アポクロマート処理」に対応する目的でちゃんと「パープルブルー」のコーティング層が蒸着されており、外見上もレンズ銘板に「」刻印が無い場合で違いが分かりますし、似たような話で例えば旧東ドイツや 戦前ドイツのCarl Zeiss Jena製オールドレンズの中に「レンズ銘板に刻印がある」モデルが極僅かにありますが (シルバー鏡胴時代のテッサーなどに多い)、これは真しやかにネット上で語られているミスタイプではなく(笑)、正しくは「色の三原色を厳密に適合させたアポクロ マートレンズ」を表す刻印です (3波長の色成分がガラスレンズを透過するのを指す刻印)。

たまたま漢字に「」がありますが(笑)、ドイツである以上いつの時代だとしてもレンズ銘板に漢字を刻印しませんね(笑)「」の縦線が光学硝子を指すワケです。

そして今回のモデルで言うならレンズ銘板の「Makro-Kilar」と「Makro-」だけが赤色刻印なのは、コーティング層の蒸着を表しモノコーティングの複層膜蒸着を意味し、当時の「」や「」などと同格です (シングルコーティングの単層膜ではないので注意)。逆に多層膜蒸着はマルチコーティングなので、この当時の発展経緯を知らないとなかなか掴みにくい話です。

《Carl Zeiss Jena (戦前〜戦後) コーティング技術の発展》
1934年ノンコーティング (反射防止塗膜の蒸着無し)
1935年〜:シングルコーティング (反射防止単層膜塗膜の蒸着)
1939年〜:モノコーティング (反射防止複層膜塗膜の蒸着:T)
1972年〜:マルチコーティング (反射防止多層膜塗膜の蒸着:T*)
※ 世界初の薄膜複層膜蒸着技術開発は1958年のMINOLTAによるアクロマチックコーティング
が最初でありモノコーティングとは異なる/当時のライカがMINOLTAと技術提携
※ それぞれドイツ国内に於ける最初の特許登録年を列記/国外登録年はまた別

このMINOLTAが1958年に世界初の技術として開発した「アクロマチックコーティング (AC) 」は「薄膜蒸着技術」を指し、単なるモノコーティングの話とは全く別次元の技術です。

これをよく一緒くたにして語っているサイトがありますが、ならばどうして時の王者でもあったライカMINOLTAに技術提携を望んだのでしょうか???

要はシングルコーティング/モノコーティング/マルチコーティングの別なく、全ての蒸着コーティング層の上に「まるで薬味の如く追加でサラッと蒸着できる薄膜蒸着技術」だからこそ、光学設計の中で特に透過率を制御したい波長の要素に限定してサラッと蒸着できる事が肝要 なのです。

逆に言うなら、市場の期待値に見合う入射光制御に特に利便性が高い技術であって、例えば クッキリハッキリのコントラスト高めが流行っていればそのようになるよう仕向ければ良いですし、数年で流れが変化してナチュラル指向が強くなってきたら蒸着する波長色を変更すれば「基になるコーティング層はそのまま」でも微調整が叶う話しで、これほど製造側にとって ありがたい技術はありません!

たかがコーティング層だと考えても、このような当時の時代背景と共に知り得ることで、またよりいっそう手持ちのオールドレンズに対する愛着が湧くというモノですね(笑)

 

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はMakro-Kilar 4cm/f2.8 《後期型》(M42)のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。ネット上やオークションなどを見ていると「フード付」と記載されることが多いですが、そもそも「僅か3㍉」しか突出しないフードを付けて いったい何の意味があるのでしょうか???(笑)

パッと見だけでそのように思い込むから本当に恥ずかしい限りです・・(笑)

これは英語圏で「Front Bezel」と呼称される「フィルター装着カバー」のような意味合いで当方では単に「ベゼル」と呼んでいます。

これは開発設計者のHeinz Kilfitt (ハインツ・キルフィット) 自身が「前玉直前でのフィルター装着」しか認めなかった事で附属品が必要になってしまった「フィルター装着用の道具」で あって、ちゃんとカチャッとハメ込み式の構造を採っています (ちゃんと設計されている)。

このベゼルに装着できるフィルターは「外径⌀30mm/厚み:4mm」の填め込みタイプなので、一般的なネジ山が存在するフィルターはセットできません。

このフィルターの厚みが「4㍉」を越えると、今度は前玉直前の鏡筒枠部分に当たってしまい「ベゼル自体が装着不可能に陥る」ので、フィルターの外径と共に厚みも重要な要素です。

日本国内では見つけられませんが海外オークションebayでもなかなか出回りません。もちろん市販流通品には存在しません。

仕方ないので (せっかく貴重なベゼルがあるのに) 当方にて自作しました。使ったのは・・HAKUBA⌀28mm径のMCフィルターです。この製品がちょうど外径サイズが「⌀30mm」なのでピタリとハマるのですが、問題は厚みがネジ部まで含めると優に倍なので、製品仕様のままでは使えません。

そこで切削して「フィルターの前枠側を切削した (ネジ部を残した)」ので、使おうと思えば他のオールドレンズで⌀28mm径のネジ山にも転用可能です(笑)

しかもマルチコーティングが施されているフィルターなので、これはこれでありがたいですョ
ね?(笑) 従って上の写真でもマルチコーティングが反射して光っているのでグリーン色みたく写っています (もちろん硝子材は無色透明)。

このベゼルの着脱方法は最後のほうで解説します。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

冒頭解説のとおり、当初手元に届いた時点で既に第3群の貼り合わせレンズにバルサム切れが生じており、白濁が進行していたので極僅かにクモリがありました。

一旦貼り合わせレンズを剥がし再接着した為ご覧のようにスカッとクリアに戻っています(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

前玉表面には経年並みの拭きキズなどが多少残っていますが順光目視で視認できるほどの酷いヘアラインキズはありません。

↑光学系後群と言っても後玉が貼り合わせレンズの為、それしか入っていませんがバルサム切れを解消したので (一旦剥がして再接着) 現在はスカッとクリアに戻っています(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

貼り合わせレンズの絞りユニット側面に多少本当に微細な拭きキズが多めなので、LED光照射で光学系内を覗き込むとパッと見で曇っているようにも見えますが、ちゃんと凝視すれば微細なヘアラインキズなのが分かります。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:18点、目立つ点キズ:14点
後群内:17点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(中玉に複数あり)
(どちらかと言うと経年並みの拭きキズです)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(中玉に経年相応な拭キズが相当多くあります)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
(第3群貼り合わせレンズ一旦剥離し再接着済)
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり3回清掃しても除去できない為、拡大撮影で「気泡」との判定をしています。
一部は一見すると極微細な「塵/埃」に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷をしていた為クレーム対象としません)。また「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。

↑10枚のフッ素加工が施されている絞り羽根もキレイになり絞り環→プリセット絞り環ともども確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・設計(仕様)上2段階での回転式ヘリコイド駆動になる為、繰り出し/収納時に一段目と二段目との連係でトルクに抵抗を感じますが、これはネジ山が噛み合ったり開放された時の感触なので改善する事が原理上不可能です(クレーム対象としません)。また回転式ヘリコイド駆動なので距離環の繰り出し/収納時に絞り環も一緒に回っていく仕様です。
・プリセット絞り機構を絞り環の箇所に装備しています。設定されたプリセット絞り値と開放との間は無段階式(実絞り)ですが、プリセット絞り値の設定は軽い感触のクリック感を伴います。
・このモデルは最短撮影距離「5cm」ですが、この諸元値はオールドレンズレンズ銘板からの距離を表す表現になっています。
・附属のarri ST→LMマウントアダプタは仕様上確実にarri STマウント部に固定されずオールドレンズに直進方向でのガタつきが発生します。
この原因はマウントアダプタ内部のロックピンの形状が円筒の為、マウント部のV字溝に確実にロックしないからです。そのガタつきを解消する目的でテーピングしています(剥がせます)。
着脱時に多少キツメになるようワザと故意に微調整しており、また一部が浮いて剥がれますが都度指で押さえつけて下さい。これらは全てクッション性を考慮してワザと仕上げている為です(クッション性が消失するとガタつきが再び発生する)。このガタつきは単なる印象の話ではなく直進方向で起きるガタつきなので「ピント面のズレ」に至る因果関係となりピンボケ写真増大の一因になる事からの対処です
・附属のマクロヘリコイド付マウントアダプタでマクロヘリコイド操作にて最大でさらに「1cm」最短撮影距離が短縮しますが(つまり4cmになる)
それよりもそもそも被写体に近いので光量を増やし解像度を上げる/ボケ具合をもっと増やす狙いで処置し附属しています。マクロヘリコイドを操作しなければ諸元値のまま維持になります。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品使い自作)
本体Makro-Kilar 4cm/f2.8 D (silver)《後期型》(arri ST)』
社外品樹脂製被せ式後キャップ (中古品代用)
社外品樹脂製被せ式前キャップ (中古品代用)
arri ST→LMマウントアダプタ (新品)
LM→SONY E マクロヘリコイド付マウントアダプタ (新品)
汎用樹脂製SONY Eマウント後キャップ (新品)

今回の個体でいろいろ大変な想いをしてしまったのは、実は調達時の出品者自身もおそらく 認知していなかったであろう「マウント部が切削されている個体だった」点です。

また無限遠位置が狂っていて僅かにアンダーインフ状態に陥っており、装着するマウントアダプタによっては誤差が出ていたと考えられます。

まぁ〜、前述のバルサム切れもあり本当にいろいろ悩まされる個体でした・・(涙)

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ここからは今回のオーバーホール済でヤフオク! 出品する個体に関する使い方などをご存知 ない方の為に説明していきます。

↑上の写真は距離環のヘリコイドを無限遠位置まで戻してカツンと突き当て停止した状態を 撮っていますが、グリーンのラインで示したようにプリセット絞り環側の基準「」マーカーや絞り環の「」合わせて鏡胴の基準「」マーカーと全てが合致しています (赤色矢印)。

↑まずここからはこのモデルのプリセット絞り機構の操作方法を解説します。よくこのモデルや他のオールドレンズでも「プリセット絞り環と絞り環の配置を間違えて認識している人」が プロの写真家でも居ますが(笑)、これを逆に認識すると自らも説明ができず「カラダで覚えているだけ」みたいな話になってしまいます(笑)

このマクロレンズは「プリセット絞り方式」を採っている設計なので「事前に絞り値を設定する手順」が必要になります。これは「撮影時に開放〜どの絞り値まで使う予定なのか」を考え絞り羽根を何処まで閉じるようにセットするのかという作業を「プリセット絞りを設定する」と言います。

最大で最小絞り値「f22」まて閉じて撮影する可能性があるなら全ての範囲を回せるように
セットしますし「f11までしか閉じない」と考えるなら開放f値「f2.8〜f11」までしか絞り環が回らないように設定するのを「プリセット絞りをセットする」と言うワケです。

するとこのモデルは「絞り値が刻印されている環/リング/輪っかがプリセット絞り環」でありその直下のギザギザローレット (滑り止め) の環/リング/輪っかが「絞り環」です (赤色矢印)。

絞り環」のほうが薄い環/リング/輪っかなのが分かりますね。

上の写真では現在開放f値「f2.8に固定の設定」にセットしてあるので、絞り環はこの位置から一切回りません (つまり開放撮影でしか撮らない場合にこのようにセットする)。

この時一番上のプリセット絞り環赤色矢印が指している箇所は開放f値「f2.8」を指しています。さらに直下「絞り環」の基準「」マーカーも合致しています (グリーンの矢印)。そして 合わせて距離環側の基準「」マーカーも同じ位置で (ブルーの矢印)、全てが合致しているので「f2.8から動かない」と断言できるワケです (いちいちイジらなくても分かる)。

ここで仮に「f5.6まで閉じるようにプリセット絞りを設定する」とします。

グリーンの矢印で指し示している「絞り環」側の基準「」マーカーを指で保持しながら、その直上「プリセット絞り環」のほうをブルーの矢印①方向に回してクリック感を感じつつ動かします。

↑するとカチカチと僅かなクリック感を感じながら「プリセット絞り環だけが回ってf5.6をに合わせた」状態が上の写真です。グリーンの矢印で指し示している「絞り環側の」の位置にちゃんと設定絞り値 (プリセット絞り値)「f5.6」が重なっています。さらに距離環側の「」までも重なったままなので (ブルーの矢印)「絞り羽根がf5.6まで閉じている状態」なのが光学系内を覗き込まなくても分かります。

このように三つ巴で重なってくると絞り羽根が閉じているのか開いているのかが分かる仕組みです。

さて、撮影時にピント合わせする際、暗いままではピント面が分かりにくいので一旦絞り羽根を開いて「開放状態でピント合わせしたい」のが普通一般的な使い方です。

従ってプリセット絞り値を設定する為に一度閉じた絞り羽根を「開放まで開く」為に「絞り環と直上のプリセット絞り環を共に指で保持してブルーの矢印②方向に回す」と絞り羽根が開放に開きます。

要はプリセット絞り値を設定する時だけ絞り値が刻印されている側を回すワケですが (プリセット絞り環を回す)、設定が終わったら「絞り環を回すだけで両方とも一緒に動く」ので「開放f2.8〜設定絞り値まで無段階で実絞りで動く」と言う仕組みです。

↑上の写真は撮影時シャッターボタンを押す際、ピント合わせしている状態を想定した写真です。ピント合わせ時は開放「f2.8」でピント合わせしたいからちゃんとブルーの矢印の距離環側基準「」マーカーに合致しています (つまり絞り羽根が完全開放しているのが分かる)。

この時プリセット絞り値をチェックするとちゃんと「絞り環側」が設定したプリセット絞り値の「f5.6」に重なっているのが分かりますから、プリセット絞り値が見ただけで分かりますね (グリーンの矢印)(笑)

従って距離環側基準「」マーカー (ブルーの矢印) に合致しているのが「現在の絞り羽根の開き具合」であり、一方設定したプリセット絞り値は絞り環側「」で確認でき、且つ「f2.8〜f5.6の間で絞り環を回すと絞り羽根が閉じたり開いたりする」ワケで、この時プリセット絞り環も一緒に動くので単に「回すだけ」の話です。

いよいよ撮影でシャッターボタンを押すとなったら「絞り羽根を閉じるのでブルーの矢印③ 方向に回す」とちゃんとセットした絞り値で絞り羽根が閉じて撮影できます。

↑上の写真がまさにシャッターボタンを押し下げた時の状態を撮りました。また全てが重なっているので「f5.6に絞り羽根が閉じている」のが覗き込んで確認せずとも分かります(笑)

ここで撮影が終わって再び完全開放状態にプリセット絞り値を戻すのは逆の手順になります。

絞り環側」を指で保持したまま (グリーンの矢印) 直上の「プリセット絞り環f5.6だけを ブルーの矢印④方向に動かす」と絞り羽根が開放に戻ってプリセット絞り値の設定も元に戻ります。

↑一番最初の状態に戻ったワケですが、全てが合致しているので「絞り羽根が完全開放状態」なのが覗き込まずとも分かりますし「f2.8位置のまま動かない」のも当然です。

このようにそれぞれの刻印の意味をちゃんと理解していれば動作に見合う説明が叶いますし,逆にそのカラダの動きは (操作は) 撮影手順と全く乖離していません(笑)

全く以て自然な動き方です・・(笑)

従って「プリセット絞り環」と「絞り環」さらに互いの基準「」マーカーの位置関係さえ掴んでいれば何も難しい操作ではありませんし、撮影のたびにいちいち光学系内を覗き込んで絞り羽根の状態をチェックする必要もありませんね(笑)

↑上の写真は距離環を回して繰り出した時の操作感を解説しています。マウント部直前に基準「」マーカーの白線があります。

繰り出す前の無限遠位置ではこの白線に距離環の「∞」刻印がピタリと合っていました。

距離環を回していくとクルクルと絞り環やプリセット絞り環まで一緒に回転していく「回転式ヘリコイド駆動方式」のマクロレンズです。

左側に「ヘリコイド」と記入していますが、ブルーの矢印が一段目のヘリコイドでグリーンの矢印が二段目になり距離環の内部に隠れているのが最後三段目のヘリコイド (赤色矢印) です。

このモデルはダブルヘリコイドの設計なので、ヘリコイド (オスメス) が2セット存在し、それぞれが繰り出しの途中で牽引していく動き方なので「距離環を回していくと途中からガクンと抵抗を感じるトルクに変わる」ワケです。

従って最後に掲載している判定チャートには「トルクムラがある」ように 着色して明示していますが、実はこの事を指しているので、現実的にはトルクムラも無く「本当は全域に渡って均一なトルク感」だが、途中で次のヘリコイドを牽引して回していく必要がある為それを勘案した表示にしています。

なおブルーの矢印でマウント部直前の領域を囲っていますが、この個体は「過去メンテナンス時に改造されている」個体です。

残念ながら調達時の出品者はこの点を一切告知しておらず、当方も手元に届いてから初めて 気がつきました (もう少し配慮がほしいですね)(涙)

↑当方が過去にオーバーホールした同型モデルで、且つ同じ「arri STマウント規格」のMakro-Kilarからの転載写真です。

するとグリーンの矢印で囲った領域が切削されて短くなっているのが分かります。ちょうど マウント部直前に刻印されているパテント表記部分がそっくり切り取られています。

一つ前の写真でオレンジ色矢印で指し示していますが、距離環を回しきってカツンと突き当て停止してもオレンジ色矢印①で指し示している最短撮影距離の刻印「0.05」に至りません。

そこまで回りきらずに「0.06を越えた辺り」で止まってしまいます (オレンジ色矢印②)。

これには騙されましたねぇ〜(涙)

それでおかしいと考えてマウント部を外したら案の定「マウント部を切削していた」のが判明した次第です。それで上の写真と比較したところ、ちょうどパテント刻印表記部分がそっくり消失していました。

どうしてマウント部を切削した事を断言できるのかと言えば「Makro-Kilarシリーズ」は全てのタイプでヘリコイドの両端まで含め「濃い紫色でメッキ加工されている」のを完全解体して把握しているからです (メッキ加工で焼付塗装なので溶剤で溶けません)。

ところが今回の個体のマウント部は銀色にアルミ合金材が剥き出しだったので「あッ!コイツ削り取られているじゃん!」と分かった次第です。ちゃんと面取り加工まで施しているので 切削技術面からプロの仕業だと推測できます。

調達時は全ての角度からの写真を出品者が掲載していなかったので、当方は全く以て気が付きませんでした(涙)

日本人と言えどもこういう酷いことを平気でする出品者も居るワケです・・(涙)

従って今回のオーバーホールではちゃんと最短撮影距離「5cm」の実写距離になるようヘリコイドのネジ込み位置を変更して組み上げました。距離環は「0.06越えで停止」しますが、撮影距離はちゃんと「5cm」になっています。

これはマウント規格が「arri STマウント」だからあり得る話なのです

映画撮影用の「Arriflex (アリフレックス)」なので、装着するレンズは必ずしも無限遠が必要とは限らないワケです。撮影に合わせて近距離専用に限定した撮影ができるようマウント部を加工して使うなど、当時は至極当たり前の話だったのです。

実際今回の個体はプリセット絞り環のクリック感すら殆ど感じないレベルで「鋼球ボールが 欠品か?!」と覚悟しましたが、単に鋼球ボールのスプリングが短く切られていただけでした (つまりクリック感を消失させた処置)。

その意味でシネレンズは全く以て原理原則が通用しなかったりするので怖いですね(怖)

ちなみに上のブラツクバージョンに使っている「arri STマウント」はアルミ合金材アルマイト仕上げですが、今回の個体はクロームメッキ加工されています (やはり焼き付けなので溶剤で溶けない/剥がれない)。

この当時の映画撮影用機材はたいていのオールドレンズで「クロームメッキで滑るのを嫌う」ため、今回の個体は「過去に故意にワザとクロームメッキ加工を施して高級感を出そうとした意図を感じられる」と受け取っています。

従ってこのマウント部は映画撮影機材として供給していた現物ではなく、映画撮影から離れた個人的な用途 (普通の一般的なオールドレンズとしての使い方) を想定して用意されていたマウント部であると推察でき、決して映画撮影機材としてこのままの状態で使われていたワケではないと考えられます。

要はオールドレンズ本体の個体自体は既に映画撮影用としてマウント部が切削されていたモノであり、且つおそらくアルミ合金材てはなく真鍮 (黄銅) か鉄製マウント部だったモノを (重量があるので) 過去メンテナンス時にマウント部にクロームメッキを施して市場に売り出した経緯が浮かび上がってきます。

これらの背景推測は憶測ではなく、実際に完全解体して切削箇所を確認し、且つマウント部も極僅かに切削して短めに作られている点からして「撮影距離を限定した撮影で使われていた」事が容易に伺えるからです。

当方はこのようなシネマレンズ (シネレンズ) の扱いに慣れていないので手に取るまで気が付くことができませんでしたが、せめて前オーナーは「arri STマウント製品」を入手して使っていた時期がある程度あったのだとすれば、もう少し出品処分する際に配慮しても良いのではないかと、少々不満げです(泣)

逆に言うならシネレンズはこのようにいい加減とは言いませんが,然し本来の「原理原則」から逸脱した使用方法も「」としていた業界なのであって要注意です。

↑冒頭で解説したベゼルを外したところを撮りました。ちゃんとHAKUBA製MCフィルターが ハマッています(笑)

また後キャップが存在しない為、社外品ですが旭光学工業のTakumarシリーズ用M42ネジ込み式後キャップを代用品にして「被せ式」として填め込んでいます。少々キツメですが後玉の 当てキズが怖いのですぐに外れないよう敢えてキツメにしました。

↑ベゼルは前玉の直前にグリーンの矢印で指し示した箇所にダボが飛び出ていて、カチャッと填め込む方式で装着します。赤色矢印の箇所がダボにハマります。

また赤色矢印の露出域として囲った部分がレンズ銘板の先に飛び出ます。

↑実際にベゼルをハメ込むとこんな感じに飛び出ますから、外す際はちょっと指が掛かる量が狭くてやりにくいです。強く押し込んでもちゃんとカチャッと音が聞こえてハマるようダボ側の反発を調整してあります。また外す際もそんなにチカラが必要にならないよう,然し容易に外れて落下しないよう配慮して仕上げています。

↑マウント部の「arri STマウント」の解説です (赤色矢印)。グリーンの矢印で指し示した箇所に「V字溝」が備わり、そこにマウントアダプタ側の内側突起が入ります。また鏡胴側の基準「」マーカー位置に四角いカタチの切り欠きがあり、そこにマウントアダプタ側のリリースキー (板状) が入るようになります (ブルーの矢印)。

↑こんな感じでグリーンの矢印で指し示したように「V字溝」があるのに、実はマウントアダ プタ側の突起棒はその先端部が単なる円筒なのです。

↑上の写真はマウントアダプタ内側の円筒の金属製突起棒を写していますが「V字溝」にカタチが合わないのでテーピングを施さないとガタつきが発生してしまい、ピントがズレまくりになり使いにくくて仕方ありません。

撮影する際に前玉方向と後玉方向の向きで (直進方向で) 極僅かな「おそらく0.5mm前後」のガタつき/遊びが出てしまうので、オールドレンズ側の距離環を回しているタイミングによっては「ピント面が変わる」ために写真を撮ってチェックしてみたら「ピンボケ写真大量生産!」みたいな話です(涙)

誰でもすぐに分かると思いますが、この点も出品者は気が利かず何も言及しておらず売りッ放しみたいな感じです(涙)

どうしてそこまで言うのかと言えば、実は「arri STマウント規格」のデジカメ一眼/ミラーレス一眼カメラ向けマウントアダプタがおそらくこのKIPON製品しか出回っていないからです。

すると今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼で使うなら必ずKIPON製マウントアダプタを使っていたハズであり、既に分かっていた問題とも考えられるのです。

これはオールドレンズ側が悪いのではなく (確実にロックさせるにはV字溝が適しているから) あくまでもマウントアダプタ側の設計がダメなのです (さすが中国製!)。

この金属製突起棒をV字型に削る事も考えましたが、下手に削ってV字の角度に合わないと、もっと酷いガタつきになり兼ねないのでやめました。

代わりにご覧のようなとても汚くて申し訳御座いませんが、テーピングを施しています。

↑マウントアダプタをオールドレンズ側方向から見た写真です。グリーンの矢印で指し示した 位置にロック用の突起棒が飛び出ています。マウントアダプタ両サイドにあるバネ式の金具を押し込むとロックピンが赤色矢印方向に動くので解除されてマウントアダプタが外れます。

またリリースキーの板状はブルーの矢印で指し示した箇所に1つだけありますから、純粋に基準「|」マーカーに合わせてハメ込んでいくとV字溝にロックピンがハマるのですが、少しバネを押したほうが入り易いようです (マウントアダプタの設計上の仕様なので改善できず)。

なおテーピングを施した撓みがワザと故意に飛び出るように仕上げています。これはこの撓みがクッション性となって効果を発揮する為で、ガタつきを解消しシッカリ固定してくれます。

逆に言うならこの汚い撓みが無くなると再びガタつきが起きます。従って使っているうちに テープが浮いて剥がれてきますが、そのまま「軽く」貼り付けて下さいませ。テキト〜に撓んでいるのがクッション性効果になります。

↑附属品のマクロヘリコイド付マウントアダプタはロック解除ツマミが備わるので、その位置 までマクロヘリコイドのローレット (滑り止め) を動かす (ブルーの矢印①) と全体が5㍉分繰り出します (ブルーの矢印②)。

↑やはりマウントアダプタ同士にリリースマーカーが「」刻印されているので,その位置を 合わせてハメ込んで回せばカチッとロックされます。外す際はツマミをブルーの矢印方向に 押しながら回せば外れます。

↑こんな感じでロックされるのでツマミをブルーの矢印方向に押し下げながら回せば外れる 次第です。

↑上の写真 (2枚) は、マクロヘリコイドを動かした時の全体の繰り出しを撮っています。マクロヘリコイドをツマミ方向に回すと (ブルーの矢印①) 全体が5㍉分繰り出し (ブルーの矢印②) 戻せば (ブルーの矢印③) 元の状態に戻ります (ブルーの矢印④)。

↑距離環を最短撮影距離位置まで回しきってカツンと突き当て停止した状態です。鏡胴の基準「」マーカーに対して到達している指標は「0.06」を越えた辺りですが、本来の「0.05」には到達しません (グリーンの矢印)。

これはマウント部を切削してしまったのが原因なので改善のしようがありません (当方はちゃんと告知しているのでクレーム対象としません)。また赤色矢印で指し示した箇所にラバー製 ローレット (滑り止め) のハガレ箇所があり接着しています。

どうしてそのように断言できるのかもちゃんと根拠があります(笑)

距離環を回して突き当て停止した時、無限遠位置側の「」刻印がちゃんと基準「」マーカーとピタリと合致するようヘリコイドのネジ込み位置を適合化させているので、前述のヘリコイド外筒を一部切削してしまった関係から (ちょうどパテント刻印部分を切り取った) その長さ分のヘリコイド駆動 (ネジ山を回っていく長さ) が「足りなくなっている/消失している」から
・・・・「自ずと最短撮影距離の0.05まで到達しない」のは、ちょっと考えれば自明の理ですョね???(笑)
※しかし撮影時の実距離は最短撮影距離を5cmに合わせてある/∞刻印も合致

このように当方が明言/断言している場合にはちゃんとそれらの根拠があるワケです。

以前医療関係者の方に褒められメチャクチャ嬉しかった事がありました!(涙)
その方に指摘されたのは「私達の病理解剖に相通ずるところがあるから説得力が違う」と述べられ、このコロナ禍の折、現場で日々奮闘していらっしゃる プロの方に褒められたのが何よりも励みになりました!(涙)

ありがとう御座います・・!!!(涙)


まさに完全解体する事で各部位と使っている各構成パーツ、さらには全てのバネ類や締付ネジに至るまでありとあらゆる総てを事細かくチェックしていく中で「チカラ伝達経路への影響」を「観察と考察」により掴み、同時に「原理原則」から導き出される「本来あるべき姿」が 明白になり、当方がこだわる「DOH」により適うワケで、御言葉を頂戴したそのままなのだと信じているからなのです(涙)

本当にありがたい事です・・・・(涙)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離5cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。

なお上の写真 (2枚) は1枚目がオリジナルな仕様状態でマクロヘリコイドを操作していない状態での撮影です。2枚目はマクロヘリコイドを回しきって「5㍉分繰り出し」での撮影です。

最短撮影距離が「4cm」に縮まりましたが(笑)、それが目的ではなく「入射光量とボケ具合の増大を狙った」次第です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。1枚目が仕様上のオリジナルで2枚目がマクロヘリコイド操作時です。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。1枚目諸元値のまま、2枚目繰り出し時です。

↑f値は「f8」に上がっています。この辺りからボケ量の具合が変わってくるのが分かります。

↑f値「f11」です。2枚目の繰り出し時がボケ量が多く変わってきているのが分かります。

↑f値「f16」になりました。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているのでオリジナルの状態だとそろそろ「回折現象」の影響からコントラストが堕ち始めていますが,繰り出しの2枚目は まだイジできています。

・・これが狙いですね(笑)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。オリジナルでは既に解像度まで堕ちていますが繰り出し時はもう少しマシな感じでしょうか。然し絞り羽根はもう閉じきっています。

  ●               

ここから冒頭で解説しました「ワシントンDCからの修理依頼品」についてご案内します。

まず光学系内の第3群は完全にバルサム切れでしたので取り出していますが、その際格納筒が引っ張り出せなかったのでヘリコイドを一部外しています。

またどういうワケかマウント部の固定位置がズレていたので、その兼ね合いもあり今一度ヘリコイドのネジ込み位置を変更して無限遠位置を僅かなオーバーインフ状態に戻しています (当初バラす前の時点で極僅かなアンダーインフ状態)。

ちょっと原因が分かりませんが、マウント部の締付位置がズレていたので一度外れかかった のでしょうか?

また光学系内は第2群の絞りユニット直下に「北斗七星のようなカタチでカビが発生」していた為、除去しましたがおそらく「結露していた時期がある」とみています。コーティング層に影響が現れている為、次に結露が続くとまたカビ除去の必要が起き、合わせてコーティング層が剥がれる懸念が高くなりそうです。

また第3群のバルサム切れはやはり「気圧差」だと考えられるので (もう既に一部が剥がれていた)、バルサム剤の限界が来ていたのかも知れません。

さらにマウントアダプタ側のテーピングも今一度剥がして貼り直ししました。

以上になります。