◆ Ernst Leitz Wetzlar (エルンスト・ライツ・ヴェッツラー) Summar 5cm/f2《沈胴式》(L39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


このモデルの扱いは2年前に初めて扱ったきりで今回の個体が累計で僅か2本目と言う状況です。まず初めにこの場を借りて当方のような低い技術スキルの整備者にこのような貴重なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を頂き心から感謝申し上げます。

ありがとう御座います・・。

このモデルの背景や解説、或いはオーバーホール工程の話などは2年前に扱った時のページがあるのでそちらをご参照下さいませ・・Summar 5cm/f2《沈胴式》(L39)になります。

また「沈胴式」なので鏡胴の半分以上が距離環の内部にストンと収まってしまう (格納) タイプです。さらに装備している絞り環は黎明期の「大陸式絞り値」を採っているので一般的に普及した国際絞り値の「f2 < f2.8 < f4 < f5.6 < f8 < f11 < f16」(開放f値f2で最小絞り値f16) とは異なり「f2 < f2.2 < f3.2 < f4.5 < f6.3 < f9 < f12.5」(開放f値f2で最小絞り値f12.5) になっています (F値の解説wikiページ)。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はSummar 5cm/f2《沈胴式》(L39)のページをご参照下さいませ。

ちなみに各構成パーツの中で真鍮 (黄銅) 製の部分は当初バラした直後は経年劣化に伴い酸化/腐食/錆びが生じていて「焦茶色」ですから、当方の「磨き研磨」たる「DOH」により黄金色に光り輝いています。これはそもそもピカピカにする目的で施しているワケではなく(笑)、経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びを可能な限り排除して「限りなく製産時点の状態に各構成パーツを戻す」のが信義です。

その結果必要外の「グリースに頼った整備」を排除でき「本来あるべき姿」で微調整が適い オーバーホールが完結する次第です。SNSなどで当方のこの考え方を貶している人達/勢力が ありますが(笑)、ならばどうすれば良いのか合わせて掲示できていないのが恥ずかしい限り ですね(笑) 貶すならそれに見合う (納得できる) 要素を示すべきであって単に貶しているだけの単細胞です(笑)

要は自らはこだわりの整備をした事が全くないド素人が騒いでいるだけで失笑です・・(笑)

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑まず先にこのモデルの事を知らない方向けに改めて解説しておくと、ご覧のように絞り羽根がセットされるべき絞りユニットは「平坦ではなく歪曲したカタチ」の設計です。

上の写真は2年前に扱った時のオーバーホール工程写真から転載しています。右側の鏡筒最深部に絞り羽根に打ち込まれている「位置決めキー」が刺さる穴が12箇所備わり、合わせて 左側に並べて撮っている「開閉環」側にも「開閉キー」が絞り環操作に合わせて行ったり来たりスライドするための溝/ガイド/切り欠きが12箇所あります。

左写真は同様に2年前に撮った写真からの転載です。

このモデルは「歪曲型絞り羽根」が組み込まれており、且つAタイプのカタチとBタイプの2種類の形状をセットにして開閉動作が行われる設計を採り「正六角形のカタチで閉じていく」仕組みです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑こちらの写真も過去からの転載です。ご覧のように12枚もの枚数がセットされる絞り羽根は最小絞り値「f12.5」まで閉じていくと開口部のカタチが「正六角形」になっていくのが分かります。

合わせて上の解説のとおり (赤色矢印) 絞り羽根が閉じていくに従い徐々に膨れあがり最小絞り値「f12.5」まで閉じきるとご覧のようなドーム状に迫り上がった (まるでカメレオンの目のような) 状態に至ります。

このモデルの光学系は典型的な4群6枚のダブルガウス型構成ですが右図のように第2群の貼り合わせレンズと第3群の貼り合わせレンズの間に絞り羽根が位置するものの「歪曲しているので曲がったカタチになっている」のが分かります。

今回の個体がまだ当方での扱い数として累計で僅か2台目なので確かな事を把握できていないので今回の個体の光学硝子は敢えてデジタルノギスで計測していません。

しかし で着色した第3群の貼り合わせレンズの特に絞りユニット側方向の突出形状/カタチが違うような印象を持ちました。

↑ここからは今回扱った個体の撮影写真に変わります。既に沈胴筒含めた鏡胴部分と右側に 並べて撮っている光学系後群の光学硝子などが組み込まれている状態です (もちろん光学系 前群もセットされ絞り羽根も実装済/左側鏡胴)。

ここでグリーンの矢印で指し示した光学系後群側の第3群貼り合わせレンズの絞りユニット側方向突出量が多く見えるのと、その形状/カタチが前述の光学系構成図とは違うように見えてしまいます。前回扱った2年前の個体のほうがもう少し緩やかな角度で突出していたように記憶しています。

赤色矢印のように光学系後群側の格納筒が沈胴筒の内部にスポッとハマる設計です。また絞り環を回す時の設定絞り値目安としてグリーンの矢印で指し示している「●ドット」が刻印されています。

↑こんな感じで光学系後群側の格納筒が沈胴鏡胴内部にハマります。赤色矢印で指し示しているとおりちゃんと隙間が空かないようにピタリとセットされました。

↑ここで絞り環を回して最小絞り値まで順に絞り羽根を閉じていくと・・「???グリーンの矢印で指し示しているとおり「何と絞り羽根はf3.2を越えた辺りで完全固着して全く動かなくなってしまった」次第です!(驚)

実は今回の個体は当初バラす前のチェック時点で既に絞り環が完全固着しており「開放のまま全く動かない状況」だったのです。

実際に完全解体して (冒頭の写真) みると確かに絞り環が入る箇所には過去メンテナンス時にグリースが塗られており、且つおそらく「絞り羽根にまで潤滑油を垂らしている」状況のように把握しました。

このモデルの絞り羽根は「カーボン仕上げの表層面」ですが既に赤サビが出ていました。

初日はそれが因果関係だと思い込んで作業を進めました・・(笑)

↑何しろ絞り羽根が「歪曲型」なので12枚もある絞り羽根をAタイプとBタイプで重ね合わせつつ絞りユニットに組み込んでいくと「だいたい残り3枚のところで先に入れた絞り羽根のキーが浮いてしまい外れる」ので、一旦バラして再び最初から絞り羽根の組み込み作業をやり直します(笑)

実は2年前のオーバーホール時も「歪曲型絞り羽根の組み込み作業で都合4時間も費やした」ワケで、今回は前回と違いコツをちゃんと学習しているだろうからと食ってかかったら「何と5時間がかりの作業!」とほぼ2日目は「絞り羽根とのお戯れ」だけで終わってしまい、もう一日必要になると言う始末で・・何をやっているんだ?! な〜んにも学習できていないじゃないか!・・と「自らの技術スキルの低さ」を思い知った次第です(涙)

そして上の写真を撮影したのがまさにその3日目の話なのですが(笑)、赤色矢印で指し示したとおり「光学系後群側の格納筒を最後までキッチリハメ込まずに凡そ0.6mmほど隙間を残して絞り環操作するとちゃんと最小絞り値まで閉じる」事を発見しました!(驚)

グリーンの矢印で指し示したとおり絞り環が最小絞り値「f12.5」まで閉じています。

逆に言うなら、この上の写真を撮影する前に都合3回鏡胴の仕上げをやっていて、その都度 (まだ気が付く前だったから) 光学系後群側の格納筒をキッチリ入れると「また再び絞り羽根が固着してしまいいちいちそのたびに完全解体して絞りユニットへの絞り羽根組み込み作業からリスタート」を繰り返していたワケです(涙)

上の写真は3回組み上げ直しても相変わらず絞り羽根が固着するので「ここで初めてウン? もしかして第3群の貼り合わせレンズの縁が絞り羽根に当たってる???」と気づいた次第
です(涙)

そもそも1回目にちゃんと組み上げたのに絞り環を回したら再び固着した時点で「疑いの眼差しを向ける」事をしていれば、すぐに気が付いたものを「このような状況が当方の技術スキルが如何に低いのかを物語るまさに証拠」と言えるのです・・(涙)

そんなワケで上の写真のように光学系後群側の格納筒を隙間を空けたままセットしたらよう やく問題なく適切なトルク感で「絞り環の開閉操作が叶う」ようになりました(涙)

本当に恥ずかしい・・(汗)

これでよくもオーバーホール/修理ご依頼などと偉そうな事を言ってご依頼を受け付けている ものだと冷や汗タラタラです・・(泣)
(現状オーバーホール/修理のご依頼は技術スキルが低すぎるので受け付けをやめています)

ちなみに最初気づく前に3回も組み直していた最中、絞り環を回して固着する際「f3.2を越えた辺りで固着する」理由は絞り羽根を閉じていくと互いが重なり合う箇所が「開口部の中心部に集中していく」為にその応力がそれぞれ「キー側に戻る」から「開閉キーと位置決めキー」の両端にチカラが及ぶものの、光学系前群のネジ込み位置は変わらないので結果的に第3群側の「裏側つまり位置決めキー側に集中する」から一斉に外れていく原理です。

要は絞り環を回して「f3.2」に近づくに従い「位置決めキーが順に浮き上がって外れていく」から互いが噛み合うという動き方です。このような話が「原理原則」であって、どうして固着するのか、或いはどうして外れるのかの因果関係を突き止めない限り今回扱った個体の不具合/問題点は全く改善できなかったからこそ「過去メンテナンス時には固着したまま平気で仕上げていた」ワケですね(笑)

逆に指摘するなら当方も同じ穴の狢だったワケです (3回組み直すまで気づかなかった)!(笑)

本当に恥ずかしい・・(恥)

↑3日目もそろそろ深夜に及び朝から掛かりっきりだった『Summar 5cm/f2《沈胴式》(L39)がようやく仕上がりました(涙)

↑当初バラす前の時点では光学系内に汚れやカビの発生、或いは薄いクモリなどが僅かにありましたが現状「スカッとクリア!」に戻りました (但し前玉表面には経年相応にコーティング層経年劣化に伴う薄いクモリが残っています)。

一応光学硝子レンズの特に貼り合わせレンズ部分はコバ端が相当白っぽく浮きまくっていたので一旦剥がして再着色しました。

↑光学系後群側も透明度が高い状態を維持していますが、やはり問題の光学系第3群の貼り合わせレンズは中心部がコーティング層経年劣化により極僅かですが薄いクモリが残っています。

↑12枚の絞り羽根も当初生じていた赤サビをキレイに除去したのでちゃんと正しく機能していますし、前述のとおり絞り羽根の固着原因/因果関係を掴んだので現状は「敢えてスカスカ感にならないようトルクを与えて絞り環操作できるよう仕上げてある」次第です。もちろんちゃんと「磨き研磨」を施してあるので絞りユニット内部の絞り羽根が接する箇所には「過去メンテナンス時のような潤滑油を垂らしたりしていません」から、再び絞り羽根が油染みに陥るには相当な年数が必要と考えられます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑距離環を回すトルク感は少々重めの設定ですが当初バラす前とほぼ変わっていないハズです。なお赤色矢印で指し示した箇所のイモネジが他の2個とは違う長さだったので過去メンテナンス時に代用されたイモネジと考えネジ込むのをやめています (マイナスの切り込み自体が片側破断している)。商品に同梱しておきます。

↑2年前に別個体の整備をした時よりリもさらに時間を要する結末に至り・・本当に穴があったら入りたいくらいに恥ずかしさで一杯になりました(笑)

しかも絞り羽根の組み込みはさらに時間が掛かっており、そもそも当初から発生していた「絞り羽根固着の因果関係にすぐに気づけなかった」点が反省してもしきれない想いです・・(涙)

どんだけスキル低いんだョ!・・と言うお話です(笑) どうか笑ってやって下さいませ。

ちなみに上の写真でレンズ銘板部分のフィルター枠にあるジャギー部分を保持したまま沈胴操作やマウントアダプタなどとの着脱を行うと「光学系前群が必要以上にネジ込まれてしまい再び絞り羽根が固着する」ので、できればあまり保持せずにご使用頂くほうが良いと思います。

その意味でせっかくの沈胴式なのにそれを十分堪能するほどに楽しめないのが何とも歯がゆいと言うか、改善できなかった当方が悪いのです・・本当に申し訳御座いません!(泣)

逆に言うならどう考えても光学系後群側の特に第3群の貼り合わせレンズ突出が多すぎて絞り羽根に干渉する (当たってしまう) と言う設計はあり得ないので、残念ながらこの個体は「過去メンテナンス時にニコイチされている」とみています。

そのように考えないと絞り羽根に当たって固着してしまう説明ができませんが確かな事は不明なままです。

光学系前群から続く沈胴筒までの部位を他の製造番号が離れている個体から転用したのか、或いは光学系後群の特に第3群貼り合わせレンズだけを転用したのか、正確な事は分かりませんが当方の推測では後者だと考えています。

その根拠は第4群の後玉も僅か半周しかネジ込めない状況だったので、設計上用意されている後玉用のネジ山の量に比べると「明らかに浅い」ワケで「第3群貼り合わせレンズを転用したのではないか」とみています。

そんなこんなで仕方ないので (当初バラす前の実写チェック時点でも甘い印象のピント面だったが) 今一度鋭いピント面に至るよう光路長を調べて組み込み完了しています (以下のオーバーホール後の実写のとおりピント面が改善されています)。

せめて当方がオーバーホール/修理した事で貢献できた点はたったその程度で・・凡そ多くの 改善が成されないままと言う状況です(涙)

本当に申し訳御座いません・・。

もちろん今までどおりご納得頂けない場合はご請求額よりご納得頂ける分の金額を差し引き下さいませ。最大値は「無償扱い」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません。

・・重ね重ねお詫び申し上げます。スミマセン・・(涙)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f3.2」で撮りました。

↑f値は「f4.5」に上がっています。

↑f値「f6.3」になりました。

↑f値「f9」です。

↑最小絞り値「f12.5」での撮影です。既に「回折現象」の影響からピント面の解像度がだいぶ低下しています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまった上にこのような状況に至り、本当に申し訳御座いません。お詫び申し上げます。