◎ Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAREX B-Planar 50mm/f2 “Blitz”(CRX)

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ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
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Zeiss Ikonから1959年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX」シリーズ向けの追加発売オプション交換レンズ群と して「フラッシュマチック」装備モデル『Blitz』が1967年から供給 されました。

ストロボのガイドナンバーをセットすると撮影距離に見合う絞り羽根開閉を完全自動で行う画期的なシステムとして当時開発されました。

撮影の際はピント合わせにだけ集中し、美しい写真撮影の為に必要とする光量など面倒くさい計算を全て省いた素晴らしい開発ですが、当初の最短撮影距離30cmからは後退してしまい「38cm」に変わりました。

その結果、当初の仕様だった最短撮影距離「30cm」タイプのモデル (シルバー鏡胴モデルと後に黒色鏡胴モデルが追加発売) の光学系と 必然的に変わることになります。

右図は当初の仕様たる最短撮影距離「30cm」の場合の光学設計を トレースした図で当方の手によるデジタルノギスでの計測に基づく 構成図になります。

最短撮影距離が「38cm」に仕様変更した “Blitz” モデルの標準レンズ「B-Planar 50mm/f2.0」の構成図は右図になり、やはり以前に
オーバーホールした際、取り出した光学硝子を当方の手でデジタル ノギスで逐一計測してトレースした図です。

光学系の第3群〜第4群の曲率や外径サイズなどが再設計されたのだと受け取っていたワケですが、何と今回バラした同型モデル (つまり
同じ”Blitz“) の光学系はガラッと変わっていたのです!(驚)

今回の個体から取り出した光学硝子レンズをデジタルノギスで逐一 計測してトレースした構成図が右図です。

仕様上は何の変更も無く最短撮影距離「38cm」のままであり、特に光学系を再設計しなければならない理由が全くありません。意味不明な話なのですが一つだけ言える事は「製造番号494xxxx」なので、おそらく最後のほうに製産/出荷されていた個体なのではないかと考えています。

当方がまたこのような情報をブログに載せると必ずSNSでウソを平気で載せていると騒がれるので、今回もまた証拠写真を何枚か撮っておきました (当方は信用/信頼が皆無なので)(笑)

↑光学系の第1群 (前玉) から順に第5群の後玉までを並べています。特に第1群〜第2群の「光学系前群」側はそのサイズや曲率からおそらく設計変更されていないとみていますが、絞りユニットを挟んだ「光学系後群」側である第3群〜第5群までが上の写真のとおりガラッと変わっているワケです。

光学系後群側の格納筒の底部分 (つまり絞りユニット直後の位置) には光学系第3群が一体成形で既に入ったままで設計されています。さらにその上から「シム環」と言うスペーサーのような環 (リング/輪っか) が入って、その次にやはり一体成形されている第4群が入って最後の後玉へと繋がります。

↑上の写真はその第4群ですが真鍮 (黄鋼) 製の格納筒に最初から一体成形です。ところがこの 真鍮 (黄鋼) 製の格納筒は丸ごと「光学系後群の格納筒の中にストンと落下する」格納方法です。前述の「シム環」の上に単に乗っているだけの配置になりますが、当初バラした直後は赤色矢印の箇所が経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びにより赤茶色に変質していました。光学系後群側の格納筒の中でストンと入っているだけなので、敢えて「磨き研磨」の処置を施しちゃんと適切な位置に入るようにしました (もちろん最後は反射防止塗料で真っ黒に仕上げています)。

↑シム環も同じように経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びして変質していたので、特に赤色矢印の箇所は互いに第3群と第4群と接地箇所でもあるので「磨き研磨」の上で確実に適切な光路長確保できるよう処置しました。

↑上の写真は絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒を前玉側方向から撮影していますが、特に赤色矢印の箇所の「壁部分がやはり酸化/腐食/錆びして必要外の抵抗/負荷/摩擦が増大」していた為、やはりアルミ材削り出しの内壁部分を「磨き研磨」して平滑性を取り戻しました。

↑一つ前の写真で鏡筒の内壁を2時間がかりで「磨き研磨」した根本的な理由が上の写真です。光学系第2群の貼り合わせレンズですが、赤色矢印の箇所が特にクリティカルになっていて「鏡筒に確実に格納されていなかった」事が判明したからです。

つまりこれら過去メンテナンス時に塗られた「反射防止黒色塗料」の厚みが格納筒の内壁の酸化/腐食/錆びによりクリティカルが増してちゃんと適切な位置で格納されていなかったワケです。

どうしてこれに気がついたのかと言えば、もちろん当方にはそれら光学系を透過してきた入射光を検査する「電子検査設備」がありませんし、そもそもそのデータがありませんから適切な状況なのか否か判断のしようがありません。

↑しかし本来のこのモデルの描写性能と何よりも「ピント面の合焦の仕方」或いは「ピント面の鋭さ」は他の個体を今までに扱ってきた分、一応皆さんよりは数多く知っているつもりです(笑)

単に知っているつもりだけ」でこういう判断をしてその処置を行っているのかと、そのいい加減さを指摘されるなら残念ながら反論の余地は全くありません (全く以て仰るとおりだからです)(笑)

そのような非科学的な根拠だけで処置している事を問題視される方は、是非とも当方がオーバーホール済てヤフオク! に出品しているオールドレンズなどは絶対にご落札頂かぬようお願い申し上げます。

今回の個体で言えば、一度鏡筒を「加熱処置」して何とかこの光学系第2群「貼り合わせレンズ」を取り出した後に清掃して再びセットしようとすると、どうしても赤色矢印の箇所で抵抗/負荷/摩擦が増大して適切な位置まで入りませんでした。

それこそ両手の親指で目一杯押し込んで「バチッ」と言う大きな音がして入るかどうかと言うようなレベルの話です(笑) 逆に言うとそのくらいにクリティカルな状況まで鏡筒内壁が酸化/腐食/錆びしてしまい、且つ硝子レンズ側も経年で何度も何度も黒色塗料を塗られまくッてしまったと言うのが経緯でしょうか。

仕方ないので、硝子レンズ側はご覧のとおり何度も塗られていた反射防止の黒色塗料を全て拭い去ってから着色し、且つ鏡筒の内壁側も「磨き研磨」した次第です。

↑また上の写真は基台の内側を撮影していますが、グリーンの矢印のようにその内側に「制御環」が入ります。ところがこの「制御環」の外径サイズが基台の内径よりも小さいので「そのままでは貫通して落下してしまう」設計です(笑)

↑つまり「制御環」が貫通して落下せずにちゃんと留まって「絞り羽根の開閉動作をしてくれる」のは、上の写真のとおり「隙間にセットされたベアリング達 (赤色矢印)」が居てくれるからであり(笑)、もっと言うなら「外径⌀2.1㍉のシルバーベアリング」と「外径⌀1.82㍉の褐色ベアリング」の2種類のベアリングがあって、それぞれが滑らかに動いてくれるからスムーズなのだと言えます。

今回の個体は一部のベアリング達に経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びが生じていたので、これも完全解体して「シルバーベアリング24個」と「褐色ベアリング48個」共に錆取り処置を講じて平滑性を担保しました。

しかし当初バラした直後は、やはり過去メンテナンス時にこれらベアリングはランダムに入れられていたので、残念ながらその影響がヘリコイド (オスメス) のネジ山摩耗に現れてしまいました。この「制御環」が鏡筒からの「開閉アーム」によって連結したまま距離環操作で内部で直進動している為、その分の摩耗がネジ山に起きているのだと考えますがネジ山のどの箇所なのかは不明です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりましたが、残念ながら前述のとおりヘリコイド (オスメス) のイブに摩耗の影響が現れていた為、重度のトルクムラが発生しています。

↑前述の光学系の処置によって「本来のこのモデルのピント面の鋭さ」に完璧に戻り、且つ「ピントの山のピーク」にもバッチリ戻っています。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体で、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。残念ながら「ヘアラインキズや拭きキズ」などが経年相応で多めです (写真には影響しませんが)。

↑絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形ボケを維持」したまま閉じていきますが、途中は開口部がギザギザになります。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」で距離環を回すトルクは「重め」人により「普通」程度です。しかし前述のとおり特に距離環を固定していた固定環やイモネジなどがデタラメに使われていた為にその影響が出てしまい「距離環の0.8〜∞」で重度のトルクムラが発生し、特に異常な重さに至ります。

約5時間ほどこの改善に頑張りましたが、申し訳御座いません諦めました。本来の仕様とは異なるイモネジが使われていたようで内部で破断していたりした為、そもそも解体できず、逆に組み上げ時に使えなくなり別のイモネジを代替させていたりしますが適切に固定できていません。その影響がトルクに現れています。

申し訳御座いません・・。

後キャップはせめてのお詫びとしてサービス品です。またご指示にあった鏡胴の書き込み部分は着色しましたが「元々ポーチで打ち込まれている刻み」なのでキレイに着色できません。申し訳御座いません・・。

↑せっかく描写性能が鋭く戻せたのに何とも申し訳ない気持ちでいっぱいです!(泣) このような事情から代金の請求は「無償扱い」になっていますので、ご勘弁下さいませ。

↑当レンズによる最短撮影距離38cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮っています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。お詫び申し上げます。このたびのオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。