◎ P. Sarabèr Goslar (ピーター・サルヴィール・ゴスラー) FINON 45mm/f2.8 ST(finette)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
P. Sarabèr Goslar製標準レンズ・・・・、
P. Sarabèr Goslar FINON 45mm/f2.8 ST (finette)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で捉えても初めての扱いです。

そもそも今回このモデルを扱う気持ちになった理由が「動機が不純」だったりして(笑)、たまたま海外オークションebayでこのモデルの出品を見つけて (勝手に表示されるお勧め商品広告) シルバー鏡胴で小さめに見えるのに「あれ? 小っちゃいのにどうして三脚座ついてるの?」と純粋な疑問が湧きました。

それで取り敢えず (全く知らないブランドだし一度も見たことないし)(笑)、ネットで実写を見てみようとの気持ちに至りさっそくチェックしました・・すると僅か20枚ちょっとのその実写を見た途端に「あれ? これってもしかしてSTAEBLE OPTIKの写りじゃねぇ〜?」とまるでオールドレンズの総てを熟知しているが如く大それた印象を抱いて、そのまま一気に調べ始めたのがスタート地点だったのです(笑)

詰まるところ「極度のカメラ音痴」で「光学知識に疎く」さらに「オールドレンズ整備者界隈の風下にも居られない」と言う低い技術スキルなのに、あ〜だこ〜だ言いたい放題・・みたいなスタンスだから、滅法そこいら中で/SNSなどで/有名処サイトで誹謗中傷の嵐に曝され続けているクセに「偉そうに実写観ただけで製造元を判定するんじゃねぇ〜」とのご指摘を受けそうな所為に及ぶからダメなのです (いつまで経っても懲りない)(笑)

ところが調べたらホントに「STEABLE OPTIK製」なのが判明してしまいオドロキしかありません!(驚) 例えばオールドレンズの外観などを観て、そこから製造元を判定下すなどは一般的に執られている所為ですが、さすがに「写真センスすらない!」当方がその実写を観ただけで製造元を言い当てられるワケがありません!(笑)

光学系の構成だけはその推測が大ハズレでしたが (3枚玉トリプレットと推測)(笑)、それはこのモデルの仕様を全く知らない時点での「単なる憶測レベルの話」との言い訳三昧です(笑)

然し、間違いなくそれら実写を観るにつけ「シュテーブル・オプティック (STAEBLE OPTIK)」のほんのりと画全体に「青味成分を感じるスッキリした写り」でありながら「ピント面の鋭さは相当」なのに「アウトフォーカス部の収差が酷い」と何だかよく分かんない写りに実は惚れ込んでいます (要は光学知識ないからそういう印象/感想を真面目に抱いている始末)(笑)

それでやったやったぁ〜と喜び勇んでさらに調査を進めると「仕様を把握して口が開いたままポカ〜ン!」・・何と最短撮影距離22cmまで寄れる標準レンズではありませんか!(驚)

これがレンズ銘板に「MACRO (ドイツ語ならMAKRO)」なんかあしらっていたらもちろん納得ですが、マクロレンズを匂わせるような表記は鏡胴の何処にも一切なし! 海外オークションebayで「FINON銘検索」かけていくと本家本元のOEM原型モデルたるSTAEBLE OPTIK製STAEBLE-FINON -S- 45mm/f2.8」がヒットしますが、その出品ページ掲載写真を観ていて「これいったい何回距離環が回るの?」とまた別の疑問が湧き上がります(笑)

それで調べると今度は「えッ? 2周も回るの?」と再び口が開きっぱなし(笑) この小っちゃな筐体サイズのいったい何処にそんだけ繰り出すヘリコイドが収まっているのでしょうか? 実際今回扱ってみると完成したこのモデルは「凡そ三周弱の繰り出し/収納量で距離環が回る」と言う、本当にグリグリ回るオールドレンズでした(笑) そもそも一般的にオールドレンズで距離環が二周回る時点で大変珍しいのですが、それが三周近く回るとなると、どう考えても内部構造が知りたくなります・・だから「動機が不純」なのです(笑)

・・と既にこの時点でもぅ120%の勢いで扱いたい気持ちがフツフツと!(笑)

決して銘玉の類ではありませんし (むしろ無名の駄目玉クラス)、その存在すら誰にも認められなさそうな、まるで陰鬱な日影でしか生き残れなかったようなオールドレンズなのに・・なんでそのシルバーな輝きがそんなに眩しいの?!(涙)

シルバー鏡胴から必然的に製造された時期は1950年代〜1960年代と察しが着き、もしかしたら「黎明期のマクロレンズ一族」の家系の一人かと期待に胸を膨らませつつも、計算すると「最大撮影倍率0.4倍」でハーフマクロにさえ及ばないとガックシ(汗)

・・このオールドレンズを設計した人はいったい何をヤリたかったのか?

と中途半端な製品の存在にアレもコレもと「???」ばかり増やされて、ちょっとのっけから機嫌が悪い(笑) これがバシッと1/2倍撮影のハーフマクロで最短撮影距離が22cmならゾクゾクしてきて、その繰り出し量の多さから小っちゃな筐体サイズに内部構造を知りたい気持ちが爆発寸前なのですが、如何せん「何一つ納得できないまんま」なのがカチンと来る。

と悶々している日々を送っているうちに気がつけば「あ゙ッ! マジッで小っちゃい!」とまさに手にしているワケで・・手に入れてしまったのです(笑) それこそ筐体の大きさは旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製シルバー鏡胴の・・まるでテッサーそのモノの大きさ感!(驚)

よせば良いのに、よりによってSTAEBLE OPTIK製オールドレンズとなれば内部構造が簡素ながらも「だからこそむしろその設計概念がチョ〜難しい」のは既に体験済だったハズ(泣) 何とか仕上げて完成したものの、確かに二度と扱いたくない気持ちしか残っていないというほどの「チョ〜高難度な設計概念」・・と言うか、どうしてもう少し合理的に造ろう/設計しようと考えなかったのかと、ただただ恨めしいばかりです(笑)

英語圏やドイツ語圏の大変熱心なマニアのサイトで詳説されているものの、その注目度の高さの矛先が「レンジファインダーカメラ本体の仕様」である事に辿り着き・・初めてこのオールドレンズの目的と言うか役目を知り得たような感じです(涙)

なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

  ●               

今回扱ったこのモデルを設計/開発したのは1899年にオランダはSaarland (ザールランド) で生まれた生粋のオランダ人「Peter Sarabèr (ピーター・サルヴィール)」です。この人の名前はちゃんとオランダ語での発音を聞かないと「グレイグアクセント è を正しく反映した名前として記されていない」と少々ネット上の表記に不満です。

第二次世界大戦前に電気技師として働いていたPeter Sarabèr氏は、ナチスドイツにオランダが占領されるとそのスキルを買われて徴兵され、1940年には戦時中ドイツのドレスデンに拠点を置くKorelle-Werke KG (コレル工場) に勤務しました。

戦時中にドイツ人の妻と結婚したPeter Sarabèr氏は戦後もそのままドイツ中北部に位置するニーダーザクセン州の都市Goslar (ゴスラー) に住み続け自分の会社を創設します。

1948年にはVOIGTLÄNDER社の元技術者Helmut Finke (ヘルムト
・フィンケ) 氏の協力の下「Finette (フィネッテ)」と言うレンジファインダーカメラを開発/発売します。

実は実装している固定絞りの「Finar 4.3cm/f6.3」は当初の生産ロットでは「Fenar銘」を刻印していたようですが、この原語は「ランタン材」を表す要素も含まれるようなので、もしかすると光学硝子材を意識したモデル銘を冠していたのかも知れません (但しネット上の何処にも光学硝子材にランタン材を含有していた記述はなし)。

すぐ後に右写真のようにレンジファインダーカメラボディ側モデル銘「Finette」に因んで「Finar銘」へと変移します。

1949年当時、第1次世界大戦時にドイツ陸軍の兵舎として使われていたGoslar大聖堂の建物に移転して「Finetta-WERK Goslar KG」と社名変更しています。
(右写真は第1次世界大戦前の頃のGoslar大聖堂と背後の兵舎)

その後暫く「Finetteシリーズ」はモデルバリエーションを蓄積していきます。1949年には筐体を流用しつつも「FINETTA I」を発売し、さらに実装レンズも「Achromat Finar 4.3cm
/f5.6
」へと固定絞り値を明るく採ってきます。1950年には「FINETTA III」とさらに進化し開放f値「f4f22」を実現した「Anastigmat FINETAR 4.3cm/f4」へと変わりました
・・シリーズの拡張は1952年発売の「Finetta Super」まで続きます。

そして今回扱う標準レンズをセットレンズ化してくる1953年登場の「Finetta 99」が用意され、合わせて翌年1954年には「Finetta 88」も併売され製産台数も10万台を優に超える規模にまで登りつめますが、どのような経緯か不明ながらも1957年2月に会社は倒産しその後既に製産していた部品を使い製品出荷を続けながらもついに1957年11月には工場も操業停止を余儀なくされ終焉を迎えます(涙)

なお、この絶頂期にはアメリカ向けにも輸出されておりモデル銘を「Ditto 99」としていました。右写真は今回扱ったP. Sarabèr Goslar FINON 45mm/f2.8 ST (finette)』を装着したアメリカ版「Ditto 99」の写真です。

本国旧西ドイツで生産されていた「Finetta 99」との相違はモデル銘だけで仕様の違いもないようです。

↑ネット上の解説サイトではこのアメリカ版「Ditto 99」の説明が多いですが、いろいろ調べてみると当時イタリアにまで支店を創設して輸出に励んでいたようです。上はせっかくなので当時のイタリアでの広告を基にそれらしく和訳したモノです(笑)

↑こちらが基の広告で1954年8月に開催されたミラノ国際見本市で、100ページにまとめて頒布されたカタログ誌 (₤120) の5ページにチョロッと小さく載っていた当時の広告です。内容はイタリア語なので和訳してそれらしくコラージュしたのが一つ前になります(笑)

このレンジファインダーカメラは右端に位置する特大のノブをどんどん回して「ゼンマイ仕掛けでフィルムチャージしていく」手法を執り、ちょうど「robot製連射カメラ」と似たような設計概念です。設定により撮影時は1回のシャッターボタン押し下げで15〜20フレーム分を一気に連続撮影するようです。しかも最速のシャッタースピードで1/1000秒を実現しているので、当時のレベルで捉えるなら相当ハイスペックなレンジファインダーカメラだったようにみえます。

このレンジファインダーカメラ側ボデイが相当肉厚を持つものの、その連射時の反動を考慮し「三脚に取り付けて撮影する想定で三脚座が必要だった」点に思い至りました(笑)

さらに「このオールドレンズ一本で22cm〜無限遠まで」とのキャッチフレーズを観て、如何にもズームレンズ的発想の謳い文句ながら実際はズーム機能を持たない「単焦点」である以上まだ世の中にズームレンズが知れ渡っていなかった時代の製品として捉えれば「このような大袈裟なキャッチフレーズも納得」と言う話です(笑)

然しそうは言ってもセットしている標準レンズで「ミクロまで対応」と言うのはさすがに受け入れられません (ミクロ領域まで撮れたらマジッで凄い)(笑)

ちなみにズームレンズが登場するのもこの時代の話で、彼のHeinz Kilfitt (ハインツ・キルフィット) 氏が開発/設計したズームレンズVOIGTLÄNDER製ZOOMAR 36-82mm/f2.8」の1959年世界初の発売を待つ必要がありました。

当方では既にこのモデルもバラしていますが(笑)、この当時で既に「f2.8通し」の光学設計を採り、且つ大口径のアポクロマートレンズとしてご覧のような「3本の金属製支柱を介して直進する機構」の異彩を放つズームレンズとして世に送り出しています(驚)

そして彼のHeinz Kilfitt氏の会社・・旧西ドイツのKilfitt München (キルフィット・ミュンヘン) ・・から1968年に「ZOOMAR MÜNCHEN MACRO ZOOMAR 50-125mm/f4」として世に送り出され、奇しくもこの年70歳を迎えたHeinz Kilfitt氏は社を勇退し米国人のFrank G. Back博士に譲ります・・20世紀最大の科学者と称せられる現代物理学の父たるAlbert Einstein (アルバート・アインシュタイン) 博士の友人でもあり、二人は挙ってHeinz Kilfitt氏が世に送り出す光学製品に関心が強く、特に氏が開発した光学顕微鏡の存在は二人の研究には欠かせない工業製品だったようです。

  ●               


↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
何しろネット上での実写が見つかりません(汗) 同じ焦点距離「45mm/f2.8」でもFINON銘ではないFINETAR銘モデルはまた別モノなので参考にならないからです。もう既にこれら4枚の写真を観て「STAEBLE OPTIKの青色成分の影響」を感じ取れます。このナチュラルな仕上がりの中にもスッキリと鮮やかなグリーンの色合い表現が独特な印象です。光学系が3群4枚のテッサー型構成ですが、例えば当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製テッサーのようなコッテリ系のギラギラした写りではなく、ご覧のような繊細なエッジ表現ながらピント面の鋭さを残す写りに好感が持てます。

二段目
それは左端の写真の緻密感の印象が、そのまま2枚目の被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さまで繋がっているのが分かるからです。金属材の質感表現に凄みを感じますが、実は左端写真のピント面と同類の繊細感と緊迫感が漂っています。それは3枚目の岩石の写真にも共通的に指摘できますが、おそらく撮影者は「この岩が蛇の頭に見える」として撮ったのでしょうが、僅かに被写界深度の狭さ感が残っています。その一方で右端の写真は「まさに開放f値f2.8の被写界深度」と指摘できます。

これら実写を観ただけで「STAEBLE OPTIK製」の憶測を強くした点に我ながらオドロキでしたが(笑)、画全体に漂う優しさやアウトフォーカス部の収差など当時のSTAEBLE OPTIK製オールドレンズにまるで共通項的に現れるニュアンスに惚れ込んでいるからなのかも知れません。

光学系は典型的な3群4枚のテッサー型ですが、ネット上で確認できるこのモデルの光学系構成図は左図のカット図でしか確認できません。

しかしよ〜く観察すると例えば前玉が非球面レンズの如く真円の弧を描いていない点に気づきます(笑) どうしてこのような図になるのかよく分かりません。

今回のオーバーホールでこのモデルを完全解体しこのカット図と比較していくと、その内部構造や具体的な実際の構成パーツとの相違を幾つか指摘できます。おそらく当初パテント登録時の説明書きから引用した図ではないかと当方ではみています (つまり実際の量産品のカット図ではない)。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

確かに典型的な3群4枚のテッサー型なれど、一つ前のカット図に示されている光学系とはまるでカタチが違います。例えば光学系第1群の前玉裏面はどのように計測しても「凸状ではない平レンズ」であり同様に第3群貼り合わせレンズもその裏面は「凹ではない平レンズ」なのが判明しています。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ご覧のように内部構造はとても簡素で/簡易で構成するパーツ点数も少なめです。例えば同じ旧西ドイツのSchneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) やISCO-GÖTTINGEN (イスコ・ゲッチンゲン) 或いはA.Schacht Ulm (シャハトウルム) Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) など、どういうワケか各社内部構造の設計概念が近似していて「あらゆる箇所に締付環が介在し、且つ全ての構成パーツに必ずイモネジによる締め付け固定を伴う」と、それこそまるで互いに真似し合っているかのようにさえみえるほどです(笑)

確かに部位別に細かい箇所の設計は全く異なるものの「締付環とイモネジで微調整していく考え方」はまるで旧西ドイツ光学メーカーのルールのようにどの会社も同じです。それが円筒形を基本とするオールドレンズの宿命なのだとすれば、では何故日本の光学メーカーはそのような「締付環とイモネジ」に頼った設計を模倣する際に引き継がなかったのでしょうか?

もちろん1950年代には数多くのオールドレンズで似たような設計概念が採用されていた時期があった反面、1960年代を越えるとそのような設計は影を潜め、より合理的で効率の良い設計へと変遷していきます。販売規模に頼ることなく構造面や工程数の削減など、考え得るあらゆる面でより収益を増やす方向性で切磋琢磨し続けていた光学メーカーだけが今もなお生き残ったのかも知れません。

そのような意味合いで捉えようとするなら上の写真のとおりまるで「初心者向け」みたく受け取られても文句言えないほどに簡素な造りです(笑)

しかし、このモデルが「チョ〜高難度」なのはその構造ではなく/構成パーツ点数の少なさではなく「まさに設計概念」であり、設計者の意図を汲み取らない限り仕上げられない難しいモデルでした(涙)

・・ちょっと懲りてしまい今回の扱いが最初で最後の予定です(涙)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒で、黄鋼材で切削されている小っちゃな大きさです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

一応実際の絞り羽根の動きから「開閉キー/位置決めキー」を決めて左上写真に示しましたが、ハッキリ言ってこのモデルの絞り羽根は「両面使い」なので表裏で同一でありキーの特定が決まっていません(笑)

つまり絞り羽根の組み込み時に表裏でミスることがありません。それはそれで組み込む際に楽なように考えられますが、この絞り羽根の最大のポイントは「キーの役目はプレッシングで凹凸させているだけ」という簡素な概念で、これが組み立て工程で非常に大変な話しに至ります(泣)

実際、今回のオーバーホール工程でもこれら9枚の絞り羽根を組み込む際に一般的な作業は一切受け付けず、特殊な方法で組み込んでいくしか手がありませんでした(涙)

・・おかけで絞り羽根の組み込みだけで2時間を費やすハメに!(涙)

↑上の写真はこのモデルの絞りユニットを構成する「位置決め環と開閉環」です。「開閉環側に開閉アームが突出」するものの (赤色矢印)「押さえ込み板」なる板が3箇所に均等配置で備わります (グリーンの矢印)。

この設計概念が最悪で、この組み込み方法と制御方法により2時間もかけてたった9枚の絞り羽根と格闘していた次第です(涙)

↑実際に9枚の絞り羽根を組み込んで絞りユニットを完成させた時の写真です。ちゃんと外側に1本「開閉アーム」が飛び出ています (赤色矢印)。

↑今度はその完成した絞りユニットをひっくり返して撮影しました。ご覧のようにちゃんと「押さえ込み板」が曲がって位置決め環をガシッと押さえ込んでいますが、実は絞り羽根の開閉動作は「開閉環がブルーの矢印の範囲内で回転するから絞り羽根が開閉する」仕組みです。

つまり前述の「押さえ込み板」を目一杯折り曲げてガシッと位置決め環を押さえ込んでしまうと「絞り羽根の開閉動作ができない!」ワケで、それならと緩く押さえ込むと「今度は絞り羽根が容易に脱落してしまい咬んでしまう」とんでもない設計です(涙)

基本的に絞り羽根は開放側では互いが重なり合う時の「表裏にプレッシングされているキーへの負荷が最も低い」ワケで、それは互いが格納/収納されている状態なので開閉環側にも位置決め環側にも共に重なり合っている絞り羽根の枚数分だけしか表裏のキーの負担になりません。多くの場合で開放側で重なり合う絞り羽根の数とその面積は「限りなく最小値」なので負荷が低いワケです。

その一方で最小絞り値側では互いの絞り羽根が重なり合う枚数は最大値に至り、且つ重なり合う面積は変化していくものの表裏のキーへの負荷は最大値を執ります。何故なら絞り羽根の角度を変更するチカラが及んでいるからで、互いが円弧状に回転しながら重なり合いつつ表裏のキーで角度の変更のチカラが及ぶ時「最小絞り値側が最も負担が大きい」ので、この時に「キーの脱落」が起き易いと考えられます。

従って例えば「絞り羽根の油染みを放置プレイ」し続けると、その界面原理から互いが重なり合う時「最小値側方向で絞り羽根が互いに膨れあがる現象」が起き重なり合う絞り羽根同士で癒着するチカラが限界に至ると「キーが外れる/脱落する/絞り羽根が切れる」などの具体的な不具合となります。

例えば絞り環操作時に特に抵抗/負荷/摩擦を感じないからと絞り羽根の油染みを放置し続けると、抵抗/負荷/摩擦を指で感じていないのにある日突然絞り羽根が動かなくなり、或いは歪なカタチで閉じていくなどの症状に至ります。

話が長くなりましたが、そのような経年の状況に鑑みるに「このようなプレッシングに拠る突起をキーの代用に据える」設計概念が全く以て適していない事が判ります。

さらにこのモデルのような「位置決め環側と開閉環側を押さえ込む手法」はその絞り羽根制御に於いてもムリが残るので、このオールドレンズの設計概念は「好ましくない」と結論づけるしかありません(泣)

結局、キッチリ押さえ込んでもダメで緩くしてもダメと2時間を費やしてようやく絞りユニットが完成した次第です(涙)

↑全く以て恨めしい写真ですが(笑)、絞りユニットが鏡筒最深部に組み込まれました。

↑この状態で鏡筒を立てて撮影しています。上の写真上方が前玉側方向にあたります。すると鏡筒側面の切り欠き部分に「開閉アーム」がちゃんと絞りユニットから飛び出ており「絞り環と連係できるようになっている」のが分かります。

合わせて鏡筒には垂直状に両サイドのスリット/切り欠きが用意されており、そこを「直進キー」と言うパーツが行ったり来たりするので (グリーンの矢印) 距離環を回すことでこの鏡筒が繰り出されたり/収納したりする原理です。

その際使うのが鏡筒外周に備わるヘリコイド (オス側) ネジ山です (赤色矢印)。しかし上の写真の該当箇所をみると「内筒」と言う文字が附随します。

・・このモデルは疑似的にダブルヘリコイド駆動を採り入れた変わった構造なのです!(驚)

↑上の写真は絞り環用のベース環で、ここに絞り環がイモネジで締め付け固定されます (上の写真右側赤色矢印)。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種でネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在

イモネジで絞り環が締め付け固定されるので「どの位置でも絞り環を締め付け固定できる」のは確かに間違いない話ですが、どの位置でも良くない設計が成されています(笑)

さらに今回扱った個体は当初バラす前のチェック時点で絞り環のクリック感がぎこちない印象だったのですが、その原因が判明しました。

上の写真でグリーンの矢印で指し示している「押さえ棒」が両サイドに刺さりますが、片側が過去メンテナンス時に外されたようでスカスカ状態です(泣)

エポキシ系接着剤などを使い接着しても良いのですが、実はこのモデルの「クリック感実現方法」が問題で、ベアリングの鋼球が入る穴が両サイドに備わるものの「スプリングが存在しない」のです!(驚)

つまり何と「絞り値キー環」を銅板で用意する事でスプリングが存在せずともクッションの役割を兼ねて (軟らかいので撓むから) 反応するのを利用してクリック感にしています(驚)

絞り値キー環」に空いている幾つかの穴は「f2.8f16」までの6段分/6個であり、且つその押さえ棒が行ったり来たりする通過域を溝としてカッティングしてあります。

するとここで明確になるのは「ベアリングからの圧を受けつつもこの円形銅板は浮き上がることを想定し、その反面でクリック感を確実にする必要性から必要最小限の隙間を介在させている」という厄介極まりない設計なのです(泣)

↑ベアリングを両サイドの入れ込んでから (グリーンの矢印) 円形銅板を被せて押さえ棒で固定しましたが、赤色矢印で指し示した領域で軽く動かないとダメです(泣) しかしここでも「軽くするとクリック感は消え、強くするとクリック感を感じるものの絞り羽根への負担はさらに増大する」のが明白なので、今回のオーバーホールでは残念ながら「絞りユニットの押さえ板の寿命から (折り曲げている箇所で破断する) 敢えてクリック感を無視」した仕上げ方をしています(涙)

絞り値によってはクリック感を感じますが「ほぼ無段階式 (実絞り) 」のような操作性で、且つ「ザリザリとした操作感」なのが実はこのような銅板の反発感を利用した理由です(涙)

・・これは設計概念から金属材の耐用と照らし合わせてもどうにも改善のしようがない(涙)

↑絞り環用のベース環をセットしました。

↑光学系前群格納筒をセットします。この格納筒にはレンズ銘板の他最深部に「光学系第2群の光学硝子レンズ」がモールド成形されています。

↑立派な絞り環を組み込んだところです。前述のように3方向から均等配置でイモネジによる締め付け固定でセットされますが、ご覧のように「絞り値の直上に基準 マーカーが刻まれている」ので、任意の位置で固定できません(笑)

↑ようやく前の工程で鏡胴「前部」が完成したのでここからは鏡胴「後部」の組み立てに移ります。パッと見で簡単に見えますが、これがどうしてど〜して・・もう二度と触りたくないですね(涙)

一般的なオールドレンズは距離環やマウント部が組み付けられる「基台」があるので、上の写真でも「基台」としていますが要はマウント部です(笑)

しかしマウント部なのに「基台」と表記せざるを得なかった理由がちゃんとあり「ダブルヘリコイド方式の駆動で鏡筒を繰り出し/収納する」くせに、ヘリコイドは「内外の4つの筒で揃っていない」ワケです(泣)

つまり「内筒/外筒」の関係性のネジ山が互いに切削されているのに、ヘリコイド筒は2つだけと言う「???」な設計なのです。

これが相当ヤバかったです。上の写真を見ても分かりますが「鏡筒外周にヘリコイドオス側が既に存在していた」のに「もう一つヘリコイドオス側が存在する」からダブルヘリコイド方式と断定できます。

ところが互いのメス側ネジ山はマウント部内壁と「何と鏡筒内壁」に用意されていたので、フツ〜に考えたら「鏡筒の繰り出し時に距離環と一緒に回転していく?」と受け取りがちですが (つまり回転式ヘリコイド駆動方式)、このモデルの鏡筒は「直進式」です (そもそも鏡筒の両サイドに直進動方向で切り欠き/スリットが備わるから間違いない)。

ここがポイントで内外ヘリコイドで互いにネジ山方向が逆になっていて、さらにそのヘリコイド回転を停止させる「制御環」の役目も2つの機能を兼ねていると言うとんでもない設計でした(涙)

この設計概念に気づき理解するのにほぼ丸一日かかったほどです・・もぉ〜イヤです!(涙)

何故なら、無限遠位置の把握と最短撮影距離の把握にヘリコイドのネジ山の向きが逆と言う要素が加わると、とんでもなく大変だからです(涙) 例えば一般的に無限遠位置では「最も鏡筒が収納されている状態/カメラボディ側撮像素子面に最も近い位置/フィルム印画紙に最も近い位置」まで鏡筒が降りてきている/収納されているワケですが、この時ヘリコイドのネジ山が互いに逆だと「距離環はむしろ繰り出されて最も突出している状態」を意味します。

さんざん組み直しつつヘリコイドのネジ込みと外しを何回も何回もやっていると、そのうちどっちがどっちだか分からなくなってきます(笑)

ちなみに上の写真「直進キー環」が刺さる事で距離環を回す回転するチカラが「直進動のチカラに即座に変換される」ので繰り出し/収納が実現しますから、鏡筒両サイドに存在した切り欠き/スリットたる「直進キーガイド」の長さ分が繰り出し/収納量と一致する話です。

そんな点まで考慮しつつヘリコイドのネジ山を変更していくと、例えば内筒側は全部で6箇所のネジ込み位置が存在し、合わせて外筒側は全部で8箇所となれば・・時間ばかりが過ぎつつタダタダひたすらに恍惚に陥るだけ(笑)、みたいな作業です(笑)

↑内筒側のヘリコイドメス側をセットした状態を撮っていますが、このままこの上から鏡筒をネジ込めば良い話ではありません(笑) ちゃんとヘリコイド筒が内外で2セット存在しないにしても、その設計概念だけはダブルヘリコイド駆動なのがこのモデルなので(泣)「互いにネジ込みつつも無限遠位置と最短撮影距離位置の両端でピタリと合致させる必要がある」のがネジ山の向きが互いに異なる場合の難しさです(涙)

↑しかもとんでもないパーツが介在していて、それを写しています(涙) この「制限環」の役目は「ヘリコイド筒が脱落するのを防ぐ/合わせて最短撮影距離位置を決定する/さらに無限遠位置も決める」と言う三つ巴の役目を担っています (赤色矢印)。

ハッキリ言ってこの点に気づけるのか否かがこのモデルをベストな状態で組み上げられるか否かの分かれ道と言っても過言ではありません(涙)

するとこのモデルは「無限遠位置でカツンと音が聞こえて突き当て停止する」ものの、何と「最短撮影距離位置ではヘリコイドのネジ山が終端に到達し詰まった感じで停止する」ので、例えば仮に最短撮影距離位置側で強く回しすぎてチカラを加えると「ネジ山が咬んでしまい回らなくなる」と言う設計です。

本来なら無限遠位置も最短撮影距離位置も両端でちゃんとカツンと音が聞こえて気持ち良く停止するのがフツ〜の設計なのに、それをしていないのです(泣)

↑一応距離環を組み込むとこんな感じですが、実際のオーバーホール工程では完成している鏡筒側も同時にネジ込みつつ組み上げる必要があります。するとこのモデルはグリグリとひたすらに距離環が回り続けるのでネジ山をひとつ違えるだけで大騒動です(笑) どんだけの回数組み直し作業をしたのか忘れてしまうほどに、何度も何度もグリグリ、グリグリやったので(笑)、スッカリ「最短撮影距離22cm」の有難味も、もぉ〜お腹いっぱいみたいな話しに至ってオーバーホール作業を終えました(笑)

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑このように完成した姿を拝めるのか否か、本当に不安でいっぱいでしたが何とか組み上げられました (当方の技術スキルは低いのでそんなレベルなのです)(笑)

↑せめてもの救いは光学系内の透明度が非常に高い点です。コーティング層の経年劣化が酷いので前玉なども含め一部に「コーティング剥がれ」が起きていますが、その反面LED光照射で確認しても経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

開放時に一部の絞り羽根が極僅かに顔出ししていますが、これは「押さえ込む方式による誤差分」でキッチリと押さえ込みができない為に、どうしても絞り羽根の顔出しが起きます(泣)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。特に前玉表面側に経年劣化に伴うコーティング剥がれが起きていますが、クモリは一切附随しておらず「スカッとクリア」なのがラッキ〜でした(涙)

↑光学系後群側のほうも透明度が高くLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:16点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:15点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大3mm長複数あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前玉に経年劣化に伴うコーティング剥がれが相応にありますが写真に影響しません)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
・無限遠位置は1目盛分のオーバーインフ設定にて仕上げています(改善不可)。

↑9枚の絞り羽根もキレイになりましたが絞り環操作は本来クリック感を伴う設計ながら過去メンテナンス時の所為からほぼクリック感が消失状態で「実絞りの操作性で且つ擦れ感を伴う」現状です。内部パーツの問題なのでこれ以上の改善はできません (事前告知済なのでクレーム対象としません)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡りほぼ均一」です。
距離環を回していると時々僅かな抵抗/負荷を感じる事がありますが塗布したヘリコイドグリースの影響なので回しているうちに改善します。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。
・附属のマウントアダプタはSONY Eマウント規格なので装着対象はSONY製デジカメ一眼/ミラーレス一眼に限定されます。また3本の締付ネジでオールドレンズ本体を締付固定しているので着脱が可能ですが、装着時はハマッているだけなので芯出し/色ズレなど含め確認が必要です。できるだけ外さずにそのままご使用頂く事をお勧めします。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『P. Sarabèr Goslar FINON 45mm/f2.8 ST (finette)』
K&F CONCEPT製マウントアダプタ (自作マウントアダプタ/新品)
汎用樹脂製SONY Eマウント後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

SONY Eマウント規格の自作マウントアダプタは「エポキシ系接着剤など使わずに環/リング/輪っかだけの締め付けだけで組み上げている」ため光軸ズレや偏心などは起きませんが、肝心なオールドレンズ側マウントが単にハマッているだけになる為、それを3本の締付ネジで締め付けているに過ぎず、一度外すと水平出し/芯出し/光軸確認が必要になります。

・・可能な限り外さずにご使用頂く事をお勧めします。

また3本の締付ネジは相手がアルミ合金材なのでネジ山が摩耗し易く、頻繁に締め付けを行ったり強めにネジ込むとバカになってから回りする原因になります。ご留意下さいませ。

↑オールドレンズ側のマウント側にはこのモデルのマウント規格が「ハメ込んでフィルムカメラ側で締め付け固定するスピゴット式マウント規格」の為、ご覧のようなリリースキーが入る切り欠きが備わります (赤色矢印)。

↑レンジファインダーカメラ「Finetta 99」のスピゴット式マウント部を一緒に写すとこんな感じです。リリースキーが備わるのでグリーンの矢印のように互いに合わせて装着します。

↑その後にロック用ツマミ (赤色矢印) をブルーの矢印❶方向にスライドさせると、マウント部内部のロックアームが内部に収納され隠れるので (ブルーの矢印❷) オールドレンズ側マウント部の「」が入って、ツマミから指を離すとそのロックアームが入り固定される仕組みです。

↑撮影に使ったレンジファインダーカメラ本体はご覧のように「アメリカ向け輸出のDitto 99」です。仕様などは全て「Finetta 99」と同一です。

↑本来装着していたのはご覧のような標準レンズで「DITTAR 45mm/f2.8」です。

↑マウント部の両端のツマミを操作して標準レンズを取り外すとご覧のようにゴロンと外れます(笑) オールドレンズ側マウント部にはスピゴット式マウントたる「」が用意されているのが分かります (赤色矢印)。

↑実はこの標準レンズは「Finetta 99」が登場する以前の「Finetteシリーズ」で使っていたマウント規格で「M36 x ピッチ1mm」なので、そのネジ込み式マウント規格を「Finetta 99」のスピゴット式マウント規格に変換するアダプタだったのです!(驚)

↑右側の変換アダプタをひっくり返すと裏側はこんな感じです。リリースキーが入る切り欠きが備わり、且つスピゴット式たる「」も周囲に用意されているのが分かります。従ってこの変換アダプタがあれば「Finetteシリーズ」のネジ込み式オールドレンズ達が全てスピゴット式マウントとして転用できる話になりありがたいのです!(涙)

↑当方は基本的に「エポキシ系接着剤の使用を嫌う」ので(笑)、可能な限りオールドレンズ側も「オリジナルな状態をキープ」するスタンスです。従ってK&F CONCEPT製マウントアダプタを流用しつつも環/リング/輪っかのネジ込みだけで自作しています。

締付ネジ」を3本用意しましたが (赤色矢印)、何しろ軟らかいアルミ合金材での締め付けなので、頻繁に締め付けたり強く締めつけると容易にネジ山が摩耗して使いモノにならなくなります。すると1箇所でも締付ネジの効力が消失するとオールドレンズの固定が適わなくなるので「可能な限り外さずにご使用頂く」事をお勧めします。

↑実際に自作マウントアダプタを装着するとこんな感じですし、ご落札後の金峰寺もこの状態のまま梱包します。

またネット上を調べるとこのスピゴット式たる「Finettaマウント規格」のフランジバックが間違った数値で案内されています。その数値を参考にして自作したのかは不明ですが、海外オークションebayで入手できる「Finetta用マウントアダプタ」はフランジバックが合致しておらず無限遠が出ません(泣)

正しくは「Finettaのフランジバック40mm」なので、そこからの計算としてSONY Eマウント規格分「フランジバック18mm」を差し引いた「残り22mm」として自作マウントアダプタを容易しました。

結果、全ての環/リング/輪っかを組み合わせると/ネジ込むと、最終的にオールドレンズ側マウント面〜SONY Eマウント面の距離実測値が「39.85mm」に至ったので「フランジバック40mm」説が補強された印象です(笑)

・・但し信用/信頼が皆無な当方の話なので当てにしないようご注意下さいませ(笑)

↑後玉側方向から覗くとこんな感じです。オールドレンズ側単体でマウント部を見るとあまりにも突出量が多いので「カメラボディ内で干渉する」としか見えませんが(笑)、実際はフランジバックの関係からご覧のように「マウントアダプタ内部で完結している」ので干渉する率は低いと思いますが調べたワケではないので不明です。

・・SONY Eマウント規格のデジカメ一眼/ミラーレス一眼での装着は問題が起きません。

なお、オールドレンズ側筐体にネジ止めされている「三脚座」は2本の締付ネジを外してしまっても問題はありません (但し締付ネジの穴だけは丸見えですが)。もしも何処かに干渉して邪魔なら取り外しても大丈夫ですし、もちろんちゃんと三脚座として使ってもオールドレンズ側は何もトラブルが起きません。

さらに附属のSONY E用マウントアダプタは確かに「M39→SONY Eマウントアダプタ」を流用していますが、このオールドレンズのマウント部を「M39/L39」に変換したワケではありません。フランジバックの計算上ちょうど流用できたので新品を購入して使っただけの話です。

↑ここからはこのモデルの距離環を回していくとどんだけ繰り出すのかを撮っていきます(笑) 上の赤色矢印グリーンラインのとおり、上から順に「絞り値用基準 マーカー」に距離環の無限遠位置「」合わせて鏡胴基準「」マーカーの全てが一直線上にキレイに並び、且つK&F CONCEPT製自作マウントアダプタの「M39−NEX」の中央ハイフン辺りに一致するよう組み付けてあります。

それではこの無限遠位置から距離環を回し始めて繰り出していきます。

↑先ずは一周目が回ったところでの撮影です。刻印の真ん中にが刻印されているのが基準「」マーカーに合致しました。距離環に刻印されている距離指標値は、この個体では「フィート刻印」で無限遠位置からスタートしています。上の写真でグリーンの矢印で指し示したところが「2フィートを超えたところで凡そ60cm」です。その先は赤色刻印に距離指標値が変わってインチ刻印に変わり「22”」なので「55cm」ほどになります。

・・ここから今度は二周目を回します。

↑二周目が回って再び刻印が基準「」マーカーと合致します。グリーンの矢印のとおり刻印距離指標値は「12”」なので、凡そ30cmほどです。

・・さらに三周目を回します。

↑三周目が回り再び刻印が基準「」マーカーに合致する直前で繰り出しが停止します。この時無限遠位置側とは違って「詰まった感じで停止する」のは設計上の仕様です。逆に無限遠位置側はカツンと音が聞こえて突き当て停止します (内部の制限環にキーが突き当たって停止しているから)。

すると最短撮影距離位置ではその内部の同じ「制限環」によってヘリコイドの繰り出しが詰まるから「カチンと音が聞こえる突き当て停止にならない」ワケで、その点を以て「設計上の仕様」と申し上げている次第です (従ってクレーム対象としません/改善できません)。

上の写真でグリーンの矢印で指し示している箇所が詰まって停止した位置ですが、実測すると被写体からの距離は「まさに22cm」でした。

但しこのモデルに於けるスペック上の「最短撮影距離22cm」とは、その後の多くのオールドレンズで言う処の撮像面と被写体との距離ではなくて「被写体とフィルター枠端までの距離」になります。当方が愛用している旧西ドイツのKilfitt München製マクロレンズ「Makro-Kilar D 4cm/f2.8」でも最短撮影距離の5cmは、やはりフィルター枠端迄の計算です。

以上、オーバーホール工程の解説と共にこのモデルのオーバーホール後の状況やポイントなどを解説しました。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離22cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。撮影時の明るさの設定をミスっているのでミニカーが白飛びしています。

↑f値は「f8」まで上がっています。白飛びがハレーション状態に至っています(笑)

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。まだまだ行けそうで「回折現象」の影響をほとんど感じません。白飛び部分を見ると分かりますが、やはり青色成分が影響しています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。