◎ LEOTAX CAMERA CO., LTD. (レオタックスカメラ) LEONON 5cm/f2(L39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます

※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
レオタックスカメラ製標準レンズ・・・・、
LEONON 5cm/f2 (L39)』です。


今回初めて扱うオールドレンズですが、ハッキリ言って「超クセ玉」御覚悟召されい!・・と言いたくなってしまうような飛んでもないモデルです (初めての扱いなので試しにポチッとしてしまった)。

ところが、ヤフオク! も含めて市場流通価格を調べてみると二束三文な価格では決して流れて いません・・。

ウ〜ン・・???(笑)

ちょっと理由が今ひとつ掴めませんが、思うにいわゆる「インスタ映え」狙いとも推察できますが、はたしてどれだけの御仁がその夢を叶えていらっしゃるのか「???」・・という想いが決して消えません(笑)

その意味で,ご落札頂く方は十分に御覚悟召されい!・・と言うしか御座いません(笑)

ライカの前身が創設されたのは1849年なので相当な歴史があるワケですが、この「バルナック型ライカ」と言う表現はそもそもフィルム印画紙を使った静止画撮影用の道具を「当時の 映画撮影フィルムに於ける適正露出研究」として自ら開発した「ある意味治具の一つだった」フォーマットである「36 x 24mm」と言うその後のフィルム印画紙の標準化に大きく貢献 してしまったサイズで撮影できる道具を造ってしまったのが発端のようです。

その制作者の名前がOskar Barnack (オスカー・バルナック) なので「バルナック型ライカ」と呼称するらしいです。

なにしろ高級品たるライカモデルの話やオールドレンズに関する知識が皆無なので、今回の アップに際し一生懸命調べている始末です(笑)

そして戦前ドイツでErnst Leitz I (エルンスト・ライツ1世) が入社して前述のバルナックが「Ur Leica (ウル・ライカ)」と呼ばれるレンジファインダーカメラの原型試作品 (僅か2台!) を造ると、その1台をライツ氏に贈呈し後にErnst Leitz II (エルンスト・ライツ2世) が改良を加えて周囲の反対を押し切って1925年に発売したのが「LEICA I (A)」だったらしいです。

ウ〜ン・・当方にとってはフィルムカメラ本体もオールドレンズも高価すぎて手が出ませんがなかなかの背景ストーリーに唸ってしまいます!(笑)

ちなみに「Ur Leica」の「Ur」はドイツ語のほうで (いろいろな言語が顕在するが)「起源や 根源/原点」などを意味するコトバのようですが、当方はドイツ語詳しくないのでよく分かり ません(笑)

パッと見でモンゴルのほうのコトバかと思ったくらいですから恥ずかしい・・(笑)

しかもそのドイツ語発音ときたら、まるでロシア語のような発音で笑ってしまいました (だって戦争で2回もロシア領に攻め入った国なのに)。逆に言うと「ウル」と言う発音にどうしても 聞こえないのですね(笑)

余談はさておき、そんなこんなでドイツ敗戦後に戦時賠償の一環としてドイツ特許権の無効化が世界規模で実施され、ドイツ本国はもちろん当時のヨーロッパからアメリカに至るまで特許権が消滅したので「同じく敗戦国のニッポンも!」戦後のドサクサに紛れつつも「情熱を傾けた救世主」がちゃんと居たワケで・・ (いくさ) に負けどもさすがニッポン人・・と感銘を 受けてしまうほどにひたすらに作り続けてしまったのが「レオタックスカメラ」であって・・とてもかつて存在したカメラメーカーと一言で済ませてしまうにはその情熱が熱すぎる!・・との想いです(涙)

はい、当方は今回の扱いに際し「熱すぎて火傷しました!」レベルです・・(笑)

詳しい背景などは同じように情熱を傾けつつ解説に余念がない素晴らしい方々が既にいらっしゃるので、是非ともそちらをご参照下さいませ。

当方は簡単に今回の火傷の背景を語るのみ・・で留めます(笑)

  ●               




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
ネット検索してしまうとこのようなとてもキレイな シャボン玉ボケや「インスタ映え」まっしぐらな円形ボケが表出するように受け取りがちですが、実はオーバーホール後の実写確認では
(このブログの最後のほうに掲載)、とてもそんなレベルに至らないので「撮影スキルがメチャクチャ必要!」みたいなニュアンスで受け取っていますが,実際はどうなのでしょうか???

撮影スキルと言うか、今に始まった話ではないのですが「撮影センスが皆無」なので・・・、
何とも評価できない現実に苛まれてます (以前勤めていた家具専門店で専務 (社長の奥さん) にインテリア感性皆無!と言われまくったので/しかし実績はちゃんと残した)(笑)

然し一つだけこれらネット上の実写を観るに「真円とも言わずとも円形がちゃんと維持できている」ボケ味に「おぉ〜ッ!」と唸ってしまったのは事実です(笑)

二段目
この段でピックアップした写真が今回のこのモデルの総てを語っているように思います(涙)

要は「残存収差の課題が残りまくったまま発売してしまった!」レベルなのではないかと受け取ってしまいます(笑)

これだけ凄いと言うか「酷い」収差の影響を受けた描写性を「世に出してしまった!」潔さに・・却って感銘を受けた・・くらいです(笑)

発売時期が時期なだけに「後先考えず」だったのか・・(涙)

分かりませんが,少なくともこれだけモノ凄い収差の影響を「遺せるオールドレンズは確かに少ない!」のは間違いないと思うので、あくまでも当方の意見ですが「却って市場流通価格が高めなのがナットク!」みたいな、変な受け取りです(笑)

三段目
ここからこのモデルの「凄さ」を魅せてくれます・・(怖)

これだけ本格的な鋭いピント面のみならず「緊縛感や臨場感ちゃんと写し込んでるじゃん!」みたいな・・そんなある意味「オドロキ感」を表現できてしまっている実写をまざまざと目の当たりにするにつけ「本当なのぉ〜?」と懐疑心がメチャクチャ昂ぶります!(笑)

左側2枚はピント面の発色性がとてもナチュラルで誇張感がない (ある意味全くないョねぇ〜) ような印象を受けつつも、しかし2枚目の「光に照らされたピント面の生々しさ」の凄さは
・・ちょっと他のオールドレンズで感じるには「相応のブランドと価格は覚悟するべし」なのに・・みたいなオドロキで新鮮です!

そして極めつけが右側2枚の人物写真ポートレート撮影です!(驚)

ここで敢えて指摘しますが、このモデルは焦点距離「5cm (50mm)」ですョ?!!!

それでこんだけ生々しくも表情を写し込んでしまうの・・すげぇ〜!

四段目
この段では単なるダイナミックレンジの話ではなく「階調をキッチリ取り込んで表現しまくっている!」要素に着目してピックアップしていますから、決して褒めている話だけではあり ません。

あくまでも「撮影スキルは必須なのかも?」的な疑いの眼差しに尽きることがありません(笑)

特にダイナミックレンジが広すぎるので総てのグラデーションでキッチリ表現しきっており「これって何???」みたいな光学設計です(笑)

さらに指摘するなら3枚目のレンガを画角いっぱいに写した写真で「ディストーション・・はどうしてなの?」と言うくらいに歪みがありません!(驚)

ちょっとこれらの「矛盾でしょ!」みたいな感覚に甚だ戸惑いを隠せず残念ながらこのモデルの描写性として評価できない状況です!(泣)

何から何まで不明なままのモデルですが・・然し実写は間違いなく存在するワケで、ならば 当方のオーバーホールが問題なのかと何度も自らに言い聴かせつつも「ちゃんとやってるじゃん!」しか言えず,何とももどかしい限りです(涙)

・・ごめんなさい!(泣)

光学系は典型的な4群6枚のダブルガウス型構成ですが、最後の後玉 (最後の右端の光学硝子レンズ) の厚みをみると、とても第1群 (前玉)
〜第3群までの屈折率が高い硝子材を使っているようにも見えません (いわゆるド素人的な考察です!)

右図は今回のオーバーホールに際し、完全解体して光学系を清掃した時に各群を当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測したトレース図です。

このトレース図を観ていて思い浮かべましたが「それまで供給してくれていた東京光学製の 5cm/f2モデルに似てない?!」みたいな疑念が湧いてしまい、またまた消化不良でちょっと苦しいかも・・です(泣)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

当方がこだわる「観察と考察」で内部構造と使われている各構成パーツを逐一細かくみていくと、パッと見では一般的なこの当時の似たような手法で設計されていたオールドレンズなどに近い構造だと勝手に判定を下してしまいがちですが、実はこのモデルの設計には相当なムリがあり、且つその影響が光学設計に及んでしまったにもかかわらず「具体的な対処を光学系の 設計側で解消できなかった、ある意味未完成状態のモデル」的な印象を拭えません(泣)

今回のこのオーバーホール工程ではその点についても解説を交えていきたいと思います。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です (前玉側方向から撮影)。すると奥に「絞り羽根が刺さる穴が用意された環/リング/輪っか」が見えていますが「位置決め環」と当方では呼んでいます。

この当時のオールドレンズも含め、或いは後の時代に登場した多くのオールドレンズをみても「位置決め環の固定位置を微調整できる設計」を残した製品が数多く国内外に存在します。

今回のこのモデルも基本的に「位置決め環の微調整が適う設計」を採っているにもかかわらず実は切削/面取り加工の工程を想定した設計をしなかったので「結果的に微調整ができない」状況に至っています。

要は設計者の配慮が足りないままの製品であり、おそらくこのような問題はすぐに改善の対策を執ることも可能だったハズなのですが、残念ながら会社自体にそれだけの時間とコストをかける余裕がない状況だったことが垣間見えます(涙)

この後の工程でも様々な部分にそのような憶測が必要になる場合が出てきますが、それは設計者が手を抜いたりスキルが低かったりといった話では決してなく「そもそも改善していくだけの体力が既に会社自身にもうなかった時期の製品」と言う意味合いで、このような表現と解説を試みています。

是非とも今このブログを読んでいらっしゃる皆様方には、この点を十分汲んで頂き「レオタックスカメラを貶めないよう」ご配慮頂けると、きっと設計者も安心すると思います。

そのような事柄に思いを馳せる努力も当方がこだわる「観察と考察」には重要な要素なので あって、従って冒頭解説に含まれる「その当時の時代背景」なども、これらの思考や考察に 大きく影響を及ぼしています (つまり単にオモシロ可笑しくする為だけに解説しているワケ ではない!)。

逆に言うなら,時代背景やその時点の製造会社、或いは社内的な問題や課題などが既に世に 知れ渡っている (ある意味歴史のひとコマとして) 与件などもできるだけ汲み取って考察して いく事で、より適確な状況が見えてくると言う考え方でもあります。

それらの要素と合わせて「内部構造と使っている構成パーツの把握を進める」点に、今までにない新たな手法で個のオールドレンズに対する別の角度からの考察や評価が期待できると言う当方のポリシーでもあったりします(笑)

観察と考察」・・当方にとっては欠かせないとても大切な作業の一つです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑10枚もある絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。

絞り羽根はこの当時の国内外の多くのオールドレンズに採用されていた「カーボン仕上げ」のタイプになりますが、その基材 (絞り羽根の金属板) に対する成分調整などが上手くできていないようで、カーボンが経年で擦れて剥がれている箇所の輝きが,実は光学系に反射してしまう「迷光」となって相当悪影響を来しているように見えます。

実際このブログの一番最後に掲載しているオーバーホール後の実写をご覧頂ければ、普通ならあり得ないくらいに「フレア三昧」と言う結果です(笑)

当方は普段この「迷光」に対して,以前取材した工業用光学硝子製産会社での聞き取りによりさして重要視していないのですが如何せんこのモデルに関してだけは「おそらく光学設計での改善に課題が残ったまま世に送り出した」製品ではないかとみています。

それくらいに「収差改善とフレア対策」に課題が多すぎるような印象を受けています。

↑完成した鏡筒を今度は立てて撮影しています (写真上が前玉側方向)。すると鏡筒の外回りには絞り環用のベース環がネジ込まれる際に必要なネジ山や、或いは「開閉環」の制御に必要な開口部などが備わりますが (赤色矢印) それ以外にグリーンの矢印で指し示した「隙間/空間」が気になります。

いったい何の為に用意しているのでしょうか???

実はこの点を全く考慮していなかったのが今回のこの個体を過去メンテナンスした整備者の 落ち度とも言い替えられます。

逆に言うならこのような「隙間/空間」に注目しない整備者があまりにも多すぎるとも言え、何も考えずにそのまま組み上げ工程を進めてしまいます(笑)

もっと言うなら、こんな「隙間/空間」の重要性が低いなら、ではどうしてワザワザ切削して まで備えたのですか???

フツ〜に考えたら、単に鏡筒の外回りに「絞り環用ベース環の為のネジ山を切削して用意すれば良いだけ」になりせんか???

ワザワザ敢えて切削して面取り加工まで済ませ、メッキ加工を施して平滑性を与えたのだと すれば「そこには設計者の何某かの意図が隠されているハズ」と・・どうして考えないのですかねぇ〜(笑)

要はそういうレベルの整備者が多いワケです・・!(笑)

↑後から入れても良いのですが、このモデルに関しては逐一検査しつつ工程を進めないと「鋭いピント面に至らない」との当方の判定なので、その「観察と考察」から到達した結論を信じて先に光学系前後群を組み込んでしまいました。

このように工程の組み立て手順を考える際、おそらくは製産時点での工程とは全く異なる手順で今回は組み上げていると容易に推察できるのですが、その根拠は「製産時点にちゃんと治具があったから」であって、後から光学系をセットするにもそれら検査治具を使ってちゃんと 調べて組み込んでいただろうと簡単に推測できるからです。

逆に言うなら、当方にはそんな治具など手元にあるハズもないので(笑)、もっと言うなら検査治具も専用ではない簡易タイプしか所有していない為、ここは工程手順を変更し先に組み込んでいる次第です。

要は手順が違うのか否かをちゃんと理解しつつ進めていると言いたいワケです(笑)

↑さて、いよいよ先の「隙間/空間」との関係性が表れる工程に差し掛かりました。立派な真鍮製フィルター枠 (素晴らしい厚みのクロームメッキが施されている/いや、ここにお金掛けすぎでしょ?!) (笑) をセットしますが、後から入れられないので先に「絞り値キー環/リング/輪っか」と言うパーツをハメ込んでおきます。

すると製産時点以外に過去メンテナンス時に付けられてしまった「イモネジのネジ込み締め 付け痕」がグリーンの矢印で指し示したように縦方向で幾つも残っています。

当然ながら製産時点でイモネジを締め付けて残ってしまった痕跡は「1点だけ」なのは自明の理です。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っている ネジ種 (左写真は一例)

↑絞り環を組み付ける為に必要な「絞り環用ベース環」とカチカチとクリック感を実現する為に溝が刻まれている「絞り値キー環」が正しくセットされて、適切なクリック感と共に正しい絞り値で絞り羽根が開閉できるようになりました。

グリーンの矢印で指し示した位置に「適度な隙間がちゃんとある」ように組み付ける必要性から前述の「隙間/空間」が備わっていたワケで、それを蔑ろにしたまま過去メンテナンス時の整備者はどんどん締め付けて固定していったので、クリック感がガチガチした印象になってしまい、且つ一番重要な「適切な光路長の確保を怠った」が為に「鋭いピント面に至っていない」甘い印象の写り具合だった次第です。

従ってどんだけ「観察と考察」が重要なのかを、実は当方自身は身を以て知っているのでそれにこだわらざるを得ないのです(笑)

↑やっとの事で絞り環をセットできました(笑) 実はこの写真を撮るまでに何度も実写確認しつつ今までの工程の微調整を詰めていったので、上の写真を撮るまでには相当な時間が経過しています(泣)

このモデルは鏡胴が「前部/後部の二分割方式」なので、これで鏡胴「前部」が完成した為ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に移ります。

↑ライカ判スクリューネジの「L39」マウント部ですが、基準「」マーカーが刻印された指標値環も兼ねています。

すると何やら赤色矢印で指し示している箇所に「ポツッとネジが当たって凹んだ箇所がある」のが分かります。

ご覧のようにヘリコイド (オスメス) 用のネジ山が上から下まで備わっているので「そもそも ここにねじ込んで何かを固定してしまうワケがない!」ので (そうしないとヘリコイドが駆動 できないから)、ここにこんな「/痕跡」が残っている事自体「過去メンテナンス時の整備が拙い/不適切だった」ことがバレバレになります(笑)

すると今までの話から見えてくる因果関係は「鏡胴前部の組み上げで光路長をミスり,且つさらにヘリコイドのネジ込みでもミスった」からこそ「本来のピント面に到達していなかった」ことが明白になってしまいました(笑)

きっと・・何十年も前に造られた製品だからこんなもんですョ・・と言われつつ前所有者は悶々としながらこのオールドレンズを使っていたのかも知れません(涙)

ある意味ちゃんと整備できないからこそいつも使う「常套手段/逃げ口上」とも言え,全く以て可哀想な身の上だったオールドレンズです(涙)

↑真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しい位置までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

すると赤色矢印で指し示していますが「制限孔」なる 切り欠き/スリットがヘリコイド (メス側) のネジ山の途中に用意されている切削です。この範囲こそがまさしく「距離環の駆動域に ピタリと合致する」ワケで、従って距離環はこのヘリコイド (メス側) に締付ネジで締め付け 固定される設計なのが自明の理です (グリーンの矢印)。

これらの事柄から一つ前の工程で指摘した「ネジが当たって刺さっていた痕跡」には距離環用の締付ネジが当たっていた事が容易に推察でき、そんな組み立ては「適切とは言えない」のは間違いありませんね(笑)

・・と言うことは過去メンテナンス時に既にヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置をミスっていた事がこれで明白になってしまったと言うお話です(笑)

このようにちゃんと「観察と考察」を進めていけば、何が適切で何が不適切なのかまで明確になってしまい、合わせて過去メンテナンス時のミスなどまで判明し「それを正すだけで本来のあるべき姿での組み上げが適う」と言う・・当方が尻拭いしなさい!・・と言うストーリー
に落ち着く次第です(笑)

↑ここまで工程を進めるのに何と2日が経過してしまいましたが(涙)、やっと最終段階です。

ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置の当たりを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

左写真はオーバーホール工程の一番最初で掲載した完全解体後の全景写真をまた転載しています。

赤色矢印で指し示した位置にヘリコイド (オスメス) がそれぞれ置かれて写っていますが、それぞれのヘリコイド筒が相当長いのが分かると思います。

しかもこのモデルの設計は「距離計連動部分までヘリコイドオス側に兼ねさせてしまったムリな設計」を採りつつ、さらに何と距離環の駆動域までヘリコイド (メス側) に合わせて受け持たせてしまった「一石三鳥」の仕様だった事が判明しました(笑)

さすがにこの当時の「L39マウント規格」のオールドレンズにはあまり採られていない設計方針です。距離環の駆動域、或いは距離計連動機構といずれか一方だけを兼ねさせる設計は確かに顕在しますが、それら一緒くたで造ってしまったのが問題なのです。

残念ながら、これは設計者の配慮が足りなかったとしか言いようがありません(涙)

何故なら、距離環の駆動域がとても短いのでその影響で (急勾配で鏡筒が繰り出したり収納したりするから) その分の入射光制御がとても難しくなってしまった 光学系の設計で対処する時間がもっと必要だった製品という推察が成り立ってしまったのです。

つまり「開発途上ながら世に送り出されてしまったような製品」と言う、まさに当時の設計 担当者にとっては断腸の想いだったオールドレンズなのではないかとの憶測が拭えません(涙)

それもこれも当時の背景を知るにつけ倒産直前で送り出されたモデルなのが大きく影響して いるのかも知れないと・・ロマンを馳せながら仕上がったこのオールドレンズを酒の肴に今宵も・・(笑)

↑距離環を本締め固定してから完成している鏡胴「前部」を組み込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑予想外に2日掛かりのオーバーホールになってしまいましたが、完璧に仕上がりました。ハッキリ言って「撮影スキルの高みに頂く登竜門たるモデル」と言えてしまいそうなくらいに(笑)、飛んでもない「超クセ玉」のLEONON 5cm/f2 (L39)』です。

おそらくジャジャ馬を通り越して闘牛クラスではないかと勝手に判定しています・・(笑)

つまり・・写った写真に唸ることが適うか、いやもしかしたら冷や汗タラタラなのか、心臓が止まらないことを願うしかなさそうです(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。一応当方の最後の判定チャートでは超神経質な人の事を勘案して「極薄いクモリがある」と示していますが、実際は「クモリではなくて非常に微細な点の集合領域」なので、光学硝子単体でチェックすると分かりますが、このように組み込まれて製品化してしまうとちょっと分かりにくい状況です。

またご覧のとおりこのモデルは「絞り羽根が僅かに顔出しした仕様」で開放f値「f2.0」を達していますから,もしも位置決め環の微調整機能がちゃんと備わっていれば完全開放できたのかも知れません。その点については設計者の方針なのか否か今となっては不明なままです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

特に2枚目の写真で明白ですが「絞り羽根が完全開放せずに僅かに飛び出ている/絞り羽根の顔出しと呼ぶ」状況なのが改善できない設計上の仕様です。従ってもしも仮に微調整機能が備わっていれば、もしかしたらこのモデルの光学系は「開放f値f1.8f1.9」近辺を実現して いたのかも知れません。

そのように考える根拠がちゃんとあって、オーバーホール工程の中で指摘していた「絞り羽根の位置決め環を締め付け固定しているイモネジの存在 (鏡筒外周に均等配置で3個)」あるので本来なら絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光通過面積/カタチ) を微調整できたのは間違いありません。

ところがこのモデルが「鏡胴二分割方式」なので、鏡胴の「前部」を鏡胴「後部」に組み込む際、そのイモネジの長さを短くできないくらいに鏡筒の大きさをコンパクトに設計してしまったワケです。

従ってイモネジ箇所を切削してしまうほどに面取り加工した時点で「絞り羽根の開閉幅微調整は適わなくなってしまった」というストーリーが見えてきます。

・・そんなことは設計者が設計段階で配慮すれば済むだけの話・・とは残念ながら言い切れません。何故かと言うと設計段階では必ずしも自社工場での組み立て工程手順まで把握できていない可能性があるからです。

もっと言うなら適切な鏡筒のサイズを逆算していくには、とても小さなイモネジと言えどもその径とネジ部のピッチや長さ、あるいは材質や強度まで詰めなければならず、それらから納期と調達数を勘案していくととても設計変更するには数日というレベルの話にはならないと考えられるからです。

そんな憶測に想いを馳せるのもまたロマンですねぇ〜(笑)

↑光学系後群側の特に後玉外周に前述の極微細な点の集合体が密集しているので、パッと見ではクモリのように見えかねませんが、実は曇っていません(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:8点
後群内:18点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内に複数あり)
(前後群に極微細で薄い3mm長が複数あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(但し後群側にLED光照射で視認可能な微細な点キズや微細で非常に薄い拭きキズなどが複数あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根か閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきますが、もちろん途中では角張ったカタチで閉じる場合もあります。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・絞り値が完全開放の時に光学系内を覗くと極僅かに絞り羽根が顔出ししているように見えますが(実際僅かに顔出ししている)設計上の仕様の為改善できません。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・フィルター枠に極僅かな変形がありフィルター着脱が相当大変です(ネジ山が噛むのを確認してからネジ込む必要あり)。付属のフィルターを装着済みで梱包するので、できれば外さないままご使用頂くのが無難です。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『LEONON 5cm/f2 (L39)』
汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

↑上の写真は既にオーバーホールが完了した状態で撮影していますが、グリーンのラインのように赤色矢印で指し示している絞り値側の基準「」マーカーとマウント側基準「」マーカーが互いに一直線上にピタリと並んでいます。

ところが一般的に現在も市場流通している個体の多くで左写真のように互いの位置がズレたまま組み上がっています (赤色矢印)。

このズレている量は個体別にバラバラなので、要は過去メンテナンス時の整備者のこだわり具合がそのまま現れている因果関係なのでしょうか?!(笑)

少なくともピタリと合致していた個体は知る限りまだ見たことがありません(笑)

ちなみにこの個体をマウントアダプタに装着すると、ちゃんとマウント側基準「」マーカーが真上の位置に来るので・・ならば、ちゃんと絞り値側の基準「」マーカーも一直線に並んで いるのが「心の健康には嬉しい」ハズです(笑)

どうして整備する人は気にならないんですかね・・?
単に当方が神経質すぎるだけなんですかね・・(笑)
・・とまぁ〜、どうでもいい事をツラツラと考えながら、今夜も美味しく (酒の肴になって)
ご馳走様です!

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

上の写真で確かにピント面たる手前側ヘッドライト附近の鋭さは確保できているのが分かるのですが、如何せんその周囲のアウトフォーカス部の乱れ方が相当なレベルです(笑)

これを以てして「光学系設計が未完成のまま」との憶測を呼んでいます・・(涙)

ちなみに当初バラす前の実写チェック時点でのピント面の鋭さと言えば、それはもぉ〜如何にもこの当時のオールドレンズライクな「心持ちピンボケ印象」の写りでしたし、もっと言うならピント合わせしている時のピントの山もよく分からない印象でした。

それがこれだけちゃんとした鋭いピント面に至り、ようやく「これだョなぁ〜」とFlickriverで見た実写との整合性に納得です(笑)

そしてこの次の写真などを観ていくと分かりますが、ピント面と周囲のアウトフォーカス部で「距離が近しい箇所」のリアル感が相当に生々しいと言うか迫力を感じて素晴らしいのです。ある意味それらリアルさとあまりにもかけ離れている周辺部の乱れ方が「そこまで狂ってしまうのか?!」と言う・・想定外のオドロキ感がチョ〜愉しいといった印象です(笑)

その意味で、このモデルは撮影前と撮影後とで写真をある程度想定しつつ撮ったのだとしたら・・それは貴方が素晴らしい撮影スキルを既に持っていることの証なのだと当方は言いたいですね!(驚)

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しました。一段絞っただけで背景の乱れが一気に減りました (消えたワケではないのでまだ一部に残っている)。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。背景紙が左右でピントの鋭さが違うのは背景紙自体の位置がズレているからです (左側の背景紙が奥に向かって引っ込んでしまった/右側が手前側に出てきている)。

↑f値は「f5.6」に変わっています。しかしご覧のようにもうこのf値で「回折現象」が本格的に出ていると言うか、おそらく迷光 (考えられる因果関係は絞り羽根の地が出ている部分の反射) が影響しているのか、或いは光学設計の中でまだまだフレア対策が未完成なのかといった印象です。

従ってこのモデルは「f2〜f4」までがまともな撮影で使える絞り値かも知れませんが、ちょっと深めなフードを装着すればまただいぶ改善できるかも知れません。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑f値は「f8」に到達しましたが、フレアの影響がどんどん大きく現れています。

↑ここまで来るとさすがに一般的なオールドレンズでさえもあまり目にしない光景です(泣) f値は「f11」です。

↑f値「f16」です。何故に絞り値が最小絞り値「f22」まで備えているのかといったところです。

↑最小絞り値「f22」です。解像度も大幅に低下しており、一つ前の「f16」からイキナシこれだけ堕ちるので、これは迷光処理問題よりも「光学設計上の問題」とみています (迷光の影響なら解像度が急に劣化しない)。

それで光学設計が開発途上だったのではないかとの憶測が生まれた次第です(涙)