◆ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Cassar S 50mm/f2.8(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製標準レンズ・・・・、
Cassar S 50mm/f2.8 (M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

冒頭で大変申し訳御座いませんが、この場を借りて年賀状をお送り頂いた皆様にお礼申し上げます。ありがとう御座います。中には大のお気に入りのオールドレンズを写真に撮って年賀状に仕上げられた方も居り、とてもホッカリした想いになりました。本年も夏までは精一杯オーバーホール作業を進めていく所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

何だかんだ言って毎回旧西ドイツはSteinheil München製オールドレンズを出品すると人気が無くて閉口しますが、そうは言っても当方自身がこの写り具合に魅力を感じているので、光学系の状態が良い個体を見つけるとついつい扱ってしまいます(笑) そもそも日本では、と言うか日本人にとって旧西ドイツ時代のSteinheil München製オールドレンズに対する興味関心がとても薄いようで、いつ何度となく出品しても相変わらず人気の無さだけは確実みたいな話です(笑)

しかし当方には同じ旧西ドイツとしてもSchneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) などとはまた別格な独特な表現性の写りにいまだに魅了され続けている始末です(笑) だいたいそもそも当方は写真センスが皆無なので (昔勤めていた家具専門店でも社長夫人にインテリアセンス皆無と怒鳴られて叱られまくりだったし) やはり何と言いましょうか、そう言う方面の芸術性に対する機敏な反応がゴッソリ丸ごと欠落している「欠陥人間」なのだと思います。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた11年前からの累計でマウント規格が「M42マウント規格」の「Cassar S 50mm/f2.8」だけでカウントすると累計で僅か5本目ですが、その中で鏡胴固定環がちゃんと外せて完全解体できた個体数だけで捉えると僅か3本しかありません (つまり今までに2本が全くバラせなかった)。

いえ、正確に述べるなら今回の個体も当初は鏡胴固定環が全く回せずに解体できなかったので正しくは今までに5本扱ってその中の3本がバラせなかった事になります。今回は仕方なく鏡胴固定環を1箇所切削してバラしたのでオーバーホールできました。

たまたま鏡胴固定環の締め付けが硬かった個体だったのかも知れませんが、11年間で硬かった個体だけに当たっていたとも考えられず、ネジ山部分をチェックしてみると確かにネジ山がだいぶ深く切削されているようにも見えますがよく分かりません。

特にこのモデルは鏡胴が「前部/後部」と分かれる二分割方式で設計されていますが、一般的なこの当時の同じ二分割方式のオールドレンズとは異なり、絞り環も距離環も鏡胴固定環を外さない限り填まったまま一切解体できない特異な設計である為に厄介な話になります。しかも絞り環は一切ネジ止めされずに単に接着されているだけと言うあり得ない設計なので、内部構造を知らない人がムリに外そうとして絞り環を強く回してしまうと接着が剥がれて空転するだけに陥ります (相変わらず絞り環を外せないまま空転するだけになる)。

さらに距離環側もイモネジを外しても外せないので結局鏡胴固定環を回さない限り何一つバラせないオールドレンズと言えます。ちなみに鏡胴固定環はマウント方向から見た時に後玉の周囲に見えている円形の締付環でちゃんとカニ目溝が備わりますが、まずカニ目レンチで回そうにもビクともしません。加熱処置しようが溶剤を流し込もうが何をしても一切回らないので、例えば経年で絞り羽根に油じみが起きていたり、ヘリコイドグリースの入れ替えもできず何とも厄介な設計です。

さらに近年このモデルの光学系は僅か3枚のトリプレット型なのに、凡そ前後群のコーティング層経年劣化が進行してしまい「極薄いクモリが発生」している個体が多くなりつつあります。その意味で今回の個体はコーティング層経年劣化進行が軽度で相応にクリアな状態を維持できていたのが唯一の救いといったところです (つまりこのモデルにしては珍しくスカッとクリアな部類に入る)。

多少オールドレンズに詳しい人なら皆知っていますが、今でこそ有名になってしまった「真円で繊細なエッジのシャボン玉ボケ」となればこの3群3枚トリプレット型の特異とするところですが、それで有名処となれば旧東ドイツ時代のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズに多くみられる特徴とも言えます。

たまたま旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitzの光学設計が何か特徴的な光学要素を狙って光学設計していた中で、その派生として偶然シャボン玉ボケの表出が現れたとも考えられますが (つまりシャボン玉ボケ表出を狙っていたワケではないと言う意味)、今回扱ったSteinheil München製標準レンズでも同じ3群3枚トリプレット型構成で「真円で繊細なエッジのシャボン玉ボケ」表出が適うとなれば、これはもう「3枚玉トリプレット型光学系構成の一つの特徴」みたいな話に辿り着くのかも知れません。

但し何度も指摘しますがこれらオールドレンズが開発されて生産されていた当時は「シャボン玉ボケはあくまでも単なる収差の一つ」でしかなく、合わせてそれら収差を排除していく方向で光学設計の研究が進んでいったことをシッカリ認知しておく必要があります。

つまり現在のデジカメ一眼/ミラーレス一眼になって初めて注目され脚光を浴びたのが「シャボン玉ボケ」であり、それをオールドレンズの味として捉えるなら詰まるところ「オールドレンズに於ける収差を邪魔者として扱わずに、むしろ楽しむべき要素の一つに置き替えてしまった」点に於いて当時と現在とで解釈が対極化していることも踏まえるべきと思います。

逆に指摘するなら究極的にそれら当時のオールドレンズに散見する様々な諸収差を徹底的に排除したいなら「今ドキなデジタルなレンズを使って撮影すれば良い」のであって、何もオールドレンズの描写性について等倍鑑賞して隅から隅まで徹底的に検査し尽くして性能判定を下す事に「少なからず違和感を覚えている派」なのが当方です(笑)

合わせてそこに例えば自分の親や親戚/友人などの思い出が纏わり付く道具なのだとすれば、そのように数十年〜1世紀近い時間の流れの中でいにしえの時を刻んできたオールドレンズに対して致命的な優劣を決定づけさせる事に、やはり当方は人情として許せない想いがあったりします。

例えば自分の祖父が大切に使っていたオールドレンズが巷で貶されているとなれば、それを知ってもなお良い感情を抱く人は相当少ないとも考えられ、そのように長い時間の中での関わりを共有している道具なのがオールドレンズとの立場に立ち返るなら、せめて性能評価で徹底的な判定を下す事に抵抗感を覚えます。

・・そのような道具なのがオールドレンズではないかと最近強く感じる次第です。

この話は実は当方がオーバーホール/修理のご依頼を賜ったモデルに関していろいろ様々な角度からこのブログで述べていったところ、そのご依頼者様から後日メールが届き「祖父が大切に使っていたオールドレンズだったので、ネット上では描写性能についての低評価しか見かけない中でとても心温まる想いに至り感謝しています」との経緯を教えて頂き、オールドレンズにはそのような背景も共有するのだと肝に銘じた事がありました。

従って例え巷での評価が低くとも、そのオールドレンズを触ったり眺めたりするだけでもかつての想い出が蘇り、さらに撮影に使う事でその慈しみもより深まるものなのだと・・そこには人情が必ず介在する・・からこそのオールドレンズなのではないでしょうか。等倍鑑賞や様々な検査を経たとしても、できれば決定的な印象を与えてしまうような致命的な表現を回避してネット上にアップして頂ければ、きっとそれらに附随する人情にも逃げ道が残されるものと思います。

・・そんな事を今年一番最初に手掛けたこの個体のオーバーホール作業で考えていました。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変化していく様をピックアップしています。本家本元たる旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの標準レンズでもなかなかこれだけ美しい「真円で繊細なシャボン玉ボケ表出」が適うモデルは限られてきます。特にこのモデル「Cassar S 50mm/f2.8 (M42)」の当時のポジショニングからしてセット用標準レンズの「ある意味廉価版格付 (的)」な立ち位置となれば、そんなオールドレンズでこれだけ美しいシャボン玉ボケの表出が適うのは何とも嬉しい限りです。

前回の扱いから凡そ2年が経ってしまいましたが、その間に特に「真円のシャボン玉ボケ」について実写が増えてきている点からしても特に日本以外の海外でのSteinheil München製オールドレンズに対する評価/認識が上がってきているのではないかと期待しています・・残念ながら相変わらず日本ではSteinheil München製オールドレンズの知名度も人気も全く上がらずに底辺を彷徨っている印象です(涙)

例えば仮に同じ旧西ドイツ側の光学メーカーSchneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) がその表現性に於いて発色性というカラーリングで魅せるなら、こちらの同じ旧西ドイツに属するSteinheil München製オールドレンズは「繊細感の中に魅せる発色性」とでも言いましょうか、その違いを対比として味わうのもまた愉しい限りです。

確かに廉価版の格付なのかも知れませんが、それにしては意外にも3枚玉トリプレット光学系が吐き出す鋭さは相当なレベルで、特に3群4枚のテッサー型光学系の写り方と比較すると個人的にはこちらの3枚玉のほうが観ていてそのピント面の鋭さに違和感を感じないナチュラルな安心感が好みです。

二段目
さらに円形ボケに収差の影響が如実に表れて崩れ乱れていく様をピックアップしました。次第に溶けて消えていく円形ボケはそのエッジが繊細だからこそ素直に見えて相変わらずピント面のインパクトを留めている写り方として十分活用できるのが分かります。旧東ドイツ側のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの如くパキッとしたシャボン玉ボケの写りで明確なエッジ表現に偏らず、むしろこのように細く繊細なエッジを伴う描写性ならアウトフォーカス部の滲み方にもクセがなくスッキリ溶けていってくれるのがとてもありがたいです。

三段目
ここでさらに収差の影響が色濃く表れて今度はピント面にたいする「背景効果」としての活躍に繋がっていく実写をピックアップしました。いわゆる背景がガチャガチャと、或いはワサワサと煩い写りに堕ちずに「何とかピント面を惹き立たせるべく背景効果としてギリギリ機能してくれている」的なところを狙って撮ったのか否かは別としても、そのような要素すら感じてしまうほどに上手くシ〜ンを捉えている実写です。従って収差だからと貶さずに「敢えてそれを活用してしまう」のもあり・・ではないでしょうか。

四段目
ここではこのモデルのダイナミックレンジ (明暗部の広がり/対応能力) を観るつもりでピックアップしました。中国の高速鉄道の写真での陰影のバランスや、その次の夜更け前の一瞬を撮った写真など、どの程度ちゃんとグラデーション表現が適っているのかを観ています。またそれらが白黒写真になると「カラー成分の256階調への振り分け」から、それが例えフィルム印画紙だとしても、或いは今ドキのデジタルな撮像素子だとしても「強制的に256階調に振り分けてしまうそのカラー成分の変化の違い」から捉えるのもまた一つの楽しみです。

要はカラー写真なら明確な色の違いとして映ってしまう中でのインパクトとしての印象に至りますが、それに対して白黒写真ではそのカラー成分の振り分けで「単なる色の相違ではないグラデーションの変化として落ち着いてしまう要素」がまた別の角度から愉しめると述べています。従って同じシ〜ンでも白黒写真で撮る事によりその印象がガラッと変わるので試してみる価値があると考えます。

五段目
ここでは発色性のクセを観ようとしてピックアップしています。どちらかと言うと鮮やかに振れる印象の発色性で、然し色飽和せずにギリギリ頑張っているところが廉価版のくせにさすがです(笑) その一方で一番右端の写真で分かりますがピント面の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さは並程度なのが消化不良的な感じです。

六段目
人物撮影も取り敢えず無難にこなせますがポートレート撮影もできる範疇には残念ながら入りにくいかも知れません。不思議なもので植物や花などは十分に質感を表現できているのに人肌になると今一つの感が強いです。但し同じ印象が旧東ドイツ側のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズ達 (同じ3枚玉トリプレット型光学系のモデル達) にもまるで当てはまるので、もしかしたらある意味3枚玉光学系の限界なのかも知れませんがよく分かりません。開放f値「f2.8」なので被写界深度もそれほど狭く/薄くありませんが、意外にも逆光耐性は優れていてすぐにフレア気味に堕ちたりしないようですからたいしたモノです (ちょっと今回改めて評価してしまいました)。

ここまでの解説でさんざん3枚玉トリプレット型光学系と解説してきましたが、今回の個体を完全解体したあとに取り出した光学系の清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測してトレースした構成図が右図です。

ネット上でこのモデルの光学系構成図として掲載されている図とは少々違いますが、然しそうは言っても逐一ちゃんと計測してあるのでほぼ現物に近いトレース図に至っていると思います。

ちなみに光学系第1群 (前玉) は、ネット上の多くの構成図で両凸レンズですが、現物は裏面側が極僅かに凹んでいる凸メニスカスでした。一方第3群 (後玉) もネット上ではやはり両凸レンズとして描かれていますが、実際は平凸レンズだったので入射光の透過として考えるなら後玉の外径サイズが僅かに小さめなのも納得できた次第です。

当然な話と言えばまさにそのとおりですが、実際にバラして光学系の各光学硝子レンズを取り出した上で逐一計測すれば、このように全ての辻褄がバッチリ合って十分に納得できるといったところです(笑)

従って今回はこのモデルCassar S 50mm/f2.8 (M42)』を再評価するべく今一度実写を調べた上でいろいろと感想を述べてみました。

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はCassar S 50mm/f2.8 (M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。このモデルにしては珍しく光学系内にクモリが全くない個体でラッキ〜でした・・と言っても11年間で僅か5本目の扱いでしかないですが、逆に言えばそれほど調達時に光学系の状態が悪くてなかなか手を出せなかったモデルとも言い替えられます (先ず間違いなく光学系コーティング層の経年劣化が酷い個体が多いから)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。光学系内の前後群で括るとどちらかと言えば後群側の特に後玉裏面側に「パッと見で塵/埃に見えてしまう非常に微細な点キズ」が多めですが、言われなければそうとは気づかないかも知れません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

特に前玉の中央付近に1点見える「汚れ状の点」は実際はカビ除去痕です。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。前述のとおり特に後玉裏面側に非常に微細な点キズが複数残っており「パッと見で微細な塵/」に見えますが何回清掃しても除去できません (もちろん写真には一切影響なし/玉ボケでさえその内側に写り込みません)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

以下の案内はオーバーホール後の光学系の状態について気になる部分を述べており、且つ特に光学系内の状態は個別の光学硝子レンズをオーバーホール工程の中で取り出して清掃した際に確認した事項を逐一隠さず告知しています。

従って実際にオーバーホールが終わり仕上がっている状態はそれら各群の光学硝子レンズは全てが鏡筒内に組み込まれているため、具体的なキズの数など数えられない場合があります (つまり現物の光学系内を覗き込んでも以下告知した数をカウントできないと言う意味)。あくまでも参考程度に捉えてください。

時々ご落札者様からヤフオク! 出品ページ記載の数ほど点キズを数えられないとのご指摘を頂きますが (告知よりももっと光学系内がキレイという意味合い)、あくまでも光学硝子レンズ単体で清掃時にカウントした時の数値なので、それら光学系が組み込まれた状態では視認できない事も多いです。

・・その意味で多くの場合以下告知の数よりも相当少ないのが仕上がっている現状です。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大2mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に点状カビ除去痕複数残っています)
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑12枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。筐体のアルマイト仕上げのアルミ合金材も「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。
・絞り環操作は無段階式(実絞り)です(クリック感はありません)。
・このモデルは回転式ヘリコイド駆動なので距離環を回すとそれに合わせて絞り環まで回転していきます。従って距離環でピント合わせ後に絞り環の操作を行うとせっかく合焦させたピント位置がズレます。絞り値を決めてからピント合わせする撮影方法をお勧めします。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・フィルター枠に1箇所打痕が残っておりその修復痕が両サイドに残っています(叩き込み修復)。現状それをさらに真円に近い状態まで叩き込んで修復を仕上げています。フィルターネジ込み時はネジ山が噛むのを確認してから回して下さい。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『Cassar S 50mm/f2.8 (M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

このモデルのピントの山/ピークはゆっくり少しずつ合焦していくので/分かりにくいので、距離環を回す時のトルクを僅かに「軽め」に仕上げています。それにより合焦の前後で微動するのも苦にならず、もちろん違和感など感じずにストレスなく気持ち良く操作頂けるよう配慮して微調整済/仕上げています。

また絞り環側操作はクリック感がない無段階式 (実絞り) ですが、回転式ヘリコイド駆動の設計から距離環と一緒に絞り環側まで回っていく為、敢えて軽めの仕上がりにしています (ちゃんとグリースを塗布していますがそれでもスカスカ感が強めです)。

できれば先に絞り値を決めてからピント合わせする使い方で撮影されるのがお勧めです。

たかが3枚玉とよく小馬鹿にされますが(涙)、意外にもシッカリ写ってくれ、しかもピント面の鋭さに違和感を感じない「人の瞳で観たがままの鋭さ感」と言う繊細な中にもインパクトを込めた写り方がある意味旧西ドイツはSteinheil München製オールドレンズの特色のようにも感じています。

・・是非味わってみて下さいませ。なかなかステキな写りです!

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離90cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。最短撮影距離が「90cm」なのでミニスタジオ内の被写体が丸ごと写ってしまいあまりピント面前後でのボケ味を見出せません。また被写体にたいして斜め上方向より撮っているため前後感 (ボケ具合) も斜め方向で変化しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めており、ピント面の解像度が低下し後方へと移る「焦点移動」が起きています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。