〓 Schneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) Xenar 5cm/f2.8《戦前型:S2.8》(exakta)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Schneider-Kreuznach製標準レンズ・・・・、
Xenar 5cm/f2.8《戦前型:S2.8》(exakta)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

《期待をよそに・・涙》
「S2.8」刻印が鏡胴にある個体と言うのは相応に価値があると踏んでいたのですが、意外にも人気がなくてガックシです(笑) あ〜だこ〜だ思い入れがあり昨年末に目一杯オーバーホールしましたが、認められなければ意味すらありません(笑)

宜しければお好きな価格でご検討下さいませ・・。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で当時の旧西ドイツはSchneider-Kreuznach製標準レンズ「Xenar 50mm/f2.8シリーズ」の括りで捉えると累計で25本目にあたりますが、今回扱った個体「戦前型」且つ「S2.8刻印」だけでカウントすると僅か2本目です。

この鏡胴に2箇所 (絞り環と距離環) に「S2.8刻印」が在る個体となると手に入れたいと思って市場を探しても、いつも必ず出回っているようなオールドレンズではありません。年間で捉えても1〜2本レベルなので必然的にその中から「光学系の状態が良い個体」を選りすぐって手に入れようとすると、いったい何年かかるのかと言う話です。

特に今回の個体のようにその製造番号から「戦前1937年の5月に出荷された個体」となれば世界大戦を生き残った個体とも言え、どんだけ幸運で希少で誉れ高いのかと、ただただその佇まいを眺めているだけでも十分に愉しめてしまいそうなくらい価値を感じるところです。

もっと言うなら今まさにロシア軍によるウクライナ侵攻/侵略のさなかとなれば、先日扱った戦後旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製中望遠レンズMC BIOMETAR 80mm/f2.8《後期型》(P6)」が、ウクライナのザボリージャ州直上に位置するドニプロから届いたオールドレンズを出品したので、どんだけ戦禍の下をくぐり抜けて手に入れられるのかその尊さを単なる価値として評価できないほどに感じ入ったところです。

オールドレンズだからこそそのモデルに纏わる時代背景が憑きものですが、プラスして戦禍を潜ってきた個体となれば現在よりも先の大戦時のほうがもっと悲惨な状況下だったのではないかと余計に重きを感じます。

今回扱った個体のマウント規格が「exaktaマウント」である事から、或いは製造番号から判明する「1937年5月の製産/出荷個体」からも2年後にはドイツ軍によるポーランド侵攻が始まり世界大戦へと発展していった背景があります。その時今回のこの個体は「Ihagee Dresden製フィルムカメラKine EXAKTAシリーズ (1936年発売)」としてドイツ海軍に供給されていた事実を鑑みても、よくぞ85年間も生き存えてきたものだと関心を越えてオドロキにさえ至ります。

ちなみにドイツ陸軍には「Leitz/Leica」が供給され、ドイツ空軍には「RoBoT」そしてドイツ海軍が前述のとおり「Kine EXAKTA」ですが、あくまでも装備品としての供給で現実は将校や下士官、或いは役職者が所有するフィルムカメラやレンジファインダーカメラなどが当然ながら混在していた事が当時の日記や文献などを紐解くと垣間見えてくるので一概には括れないようです。

例えば仮に戦前ドイツ海軍のUボート潜水艦に装備品として支給/供与されたフィルムカメラ「Kine EXAKTA」に装着していた標準レンズであれば、そのUボートの大戦全期間での建造が1,131隻であるのに対し、敗戦時に生き残っていたのは僅か282隻であり (損耗率75%)、その乗員の「死傷率63% (捕虜まで勘案すると73%)」と大戦時ドイツ軍の陸海空軍3軍の中で捉えても最も損耗率が高かったワケで、そのように考えると「むしろ海底の藻屑になっているexaktaマウントの標準レンズのほうが圧倒的に多い」事に気づかざるを得ません(涙)

・・この個体は僅か3割しか生き残らなかったうちの一つなのか?!(涙)

かどうかは分かりませんが、そんな感慨に浸りたくなるのも人情ではないでしょうか。

巷では「exaktaマウント」はそれほど人気が高いマウント規格ではありませんが、現実には意外にも趣のある特異なモデルが数多く設計され当時出回っていたとも言え、なかなかオモシロイ存在だったりしますし、もっと言えばそのギミック感がまた楽しみの一つだったりします。

光学系は4群5枚の変形エルノスター型構成ですが、戦中戦後をみても標準レンズ域のオールドレンズの中で捉えた時、そのモデル銘たる「Xenar (クセナー)」銘は「3群4枚のテッサー型構成に冠するモデル銘」が中心的存在だったハズなので「Xenar銘」を冠する4群5枚構成はどちらかと言うとその後主流になった「Xenon (クセノン)」銘のほうが適合するようにもみえます。

しかし実際に当時の広告などにも数多く見られるように「Xenon銘」で登場していたのは間違いがなく、その意味では発売初期の頃の話とも受け取れそうです。

ちなみに左の広告抜粋は当時戦後にまだ主流であり続けていたドイツKodak製レンジファインダーカメラ「Retinaシリーズ」のリーフシャッター式フィルムカメラに戦後1949年頃からSchneider-Kreuznachから供給されていた標準レンズではないかと推察できます (戦前戦中はXenar 50mm/f3.5が主流)。 しかし現実には戦後すぐの混乱期に残っていた部品から組み上げられて発売されていたりもするようなので、数が多すぎて背景や経緯などはよく分かりません。

今回扱った個体もオーバーホールのために完全解体して実装光学系を取り出してみると右図の前回扱った時と同じ設計の光学系が現れました (4群5枚変形エルノスター型構成)。各群の曲率や厚みにカタチなど、ビミョ〜に光学系がちゃんと再設計されている事が分かります。

従って「戦前型S2.8」としての光学系構成図は右図である事がより強く補強できたとも言い替えられそうです (一つ前の構成図はRetinaシリーズ向け標準レンズの光学系構成図と受け取れる)。

↑上の写真はオーバーホールで今回の個体を完全解体した後に「DOH」してから組み立てている途中の写真です。光学系は「前群第1群〜第3群」で「後群第4群」なのが前述の光学系構成図で分かります (赤色色文字)。

また鏡筒には「絞り羽根の位置決めキー用の穴」が予め切削されて用意してあるので、そこに絞り羽根が刺さった上から「開閉環で開閉キーを押さえ込む」手法なのがこれらの構成パーツで分かります (C型環で開閉環を押さえ込んで固定する手法)。

ところが今回の個体を当初バラす前に実写確認すると「ピント面がな〜んとなく甘い印象」だったので、すぐにピ〜ンと来てバラした時に即判明しました。

上の写真でグリーンの矢印で指し示した箇所には「過去メンテナンス時に着色された反射防止黒色塗料」が相当厚みをもって塗布されていました。

実はこれらグリーンの矢印で指し示した箇所は「互いに接触する箇所」でもあるので、ここに反射防止黒色塗料を厚塗りされると「光学系の第1群〜第4群までの光路長が少しずつ伸びてしまう」と言う問題に直面します。

例えば第1群〜第4群でも横方向の着色なら前後方向の光路長に影響を来しませんが「前後方向で着色してしまった塗料の厚み分は光路長にモロ影響する」のが誰が考えても自明の理なのに、いつもながら過去メンテナンス時に着色しまくっています(笑)

さらに当初調達時に判明していた「前玉に拭きキズやクモリがある」のは、まさにそのインク成分がシングルコーティング層に反応してしまい頑固に附着していた「前玉全面に渡る薄いクモリ」なのが判った次第です。

単に光学硝子レンズ面を光学清掃しただけでは全く除去できず、前玉裏面だけで1時間を要する処置の工程に至り、甚だカチンと来ます(涙)

確かにこのようなオールドレンズとなれば製産されてから数十年〜半世紀以上経ているなど当たり前の話ですが、しかし現実問題として「毎回毎回苦しむのは過去メンテナンス時に不必要に着色された反射防止黒色塗料の除去作業」なのです。

逆に言うなら「過去メンテナンス時に塗布した反射防止黒色塗料は溶剤で溶ける」ものの、その一方で製産時点に焼付塗装やメッキ処理されている箇所は「溶剤で何度擦っても一切除去できない」ので、どうして製産時点で必要なかった箇所にまで反射防止黒色塗料を塗りまくるのか「その根拠に疑問しか存在しない」としか言いようがありません。

例えば上の写真で第1群裏面側の光学硝子レンズの周りや第4群のやはり内部などはどんなに溶剤で拭っても一切除去できません。ところがグリーンの矢印の箇所に着色されていた反射防止黒色塗料は溶剤で溶けるのですが、何回も塗られたようで相当な厚みがあり何度も何度も溶剤で拭う必要があります (だから除去するだけで1時間もかかってしまう)。

・・詰まるところ着色除去で1時間にクモリ除去で1時間の計2時間の作業!(怒)

このような現実にイラッと来ない理由などあり得ませんね。どうして過去メンテナンス時の不始末を当方が正さなければイケナイのか、本当にいつも腹立たしく思います。

もっと言うなら今回の個体は珍しく「白色系グリースが塗られていない」まさに「黄褐色系グリースだけ」だったワケで、当方の持論たる「当時使っていたのは黄褐色系グリースのハズ」と言う考えが再び補強された感じです(笑)

それは裏を返せば数十年前の過去メンテナンスでさえもこのように反射防止黒色塗料を塗りまくっていたのが歴然であり、おそらくは現地ドイツ界隈での整備者の手による仕業と推察できますが、その整備作業をいまだに日本の整備者さえも真似し続けているワケで、本当に腹立たしい限りです(泣)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

なおヤフオク! 出品ページで製造番号から1938年製産個体との記載が残ってしまいました。前回の出品ページを訂正するの忘れました。
正しくは「1937年製」です。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はXenar 5cm/f2.8《戦前型:S2.8》(exakta)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。

何しろこの年末で引越しなければならず「その資金稼ぎ」目当てでもぉ〜、一心不乱に作業しました (不純な動機でスミマセン)!(笑)

前述の光学系 (特に前玉) はまさに「スカッとクリア!」に変化したので、これが「83年前のモノ」と言われてもいったい誰が納得するでしょうか?!・・くらいの勢いです(笑)

当然ながらこの時代となれば光学硝子レンズの内部に「気泡」が含まれています。

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射してもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

但し何しろ1937年時点のシングルコーティング層蒸着なので、そもそも白黒写真撮影が前提の光学設計である点からして「カラー成分の入射光に対して脆弱」とも受け取れそうなくらいにその写りはフレア爆発状態です(笑)

《Carl Zeiss Jena (戦前〜戦後) コーティング技術の発展》
1934年ノンコーティング (反射防止塗膜の蒸着無し)
1935年〜:シングルコーティング (反射防止単層膜塗膜の蒸着)
1939年〜:モノコーティング (反射防止複層膜塗膜の蒸着:T)
1972年〜:マルチコーティング (反射防止多層膜塗膜の蒸着:T*)
※ 世界初の薄膜複層膜蒸着技術開発は1958年のMINOLTAによるアクロマチックコーティング
が最初でありモノコーティングとは異なる/当時のライカがMINOLTAと技術提携
※ それぞれドイツ国内に於ける最初の特許登録年を列記/国外登録年はまた別

このMINOLTAが1958年に世界初の技術として開発した「アクロマチックコーティング (AC) 」は「薄膜蒸着技術」を指し、単なるモノコーティングの話とは全く別次元の技術です。

従って特にこれら戦前〜戦中のオールドレンズに対して「ノンコーティング」と謳っているネット上サイトが圧倒的に多いですが、現実に光学硝子レンズ表層面をチェックすると (後で拡大撮影した写真が出てきますが) 非常に薄くコーティング層が蒸着されているのがちゃんと分かります (光に反射させると表層面の色付きが視認できる/ノンコーティングは視認できない)。

例えば戦後の1945年以降に製産されたオールドレンズで仮にシングルコーティング層が蒸着されていたとしても (多くの場合ブル〜系) 戦前1935年当時のコーティング層蒸着成分とその技術とは全く別モノなので、単に「シングルコーティング」のコトバだけを弄んでも意味がありません(笑) もちろん同年代としてもコーティング層蒸着成分はどんな資料 (鉱物) を使っているのか千差万別なので、それらを一括りにして考察する事が適いません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側だけが2枚の光学硝子レンズを接着した貼り合わせレンズですが、前群同様に「スカッとクリア!」です(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

1枚目の写真からして後玉表層面にパッと見で「清掃時の拭き残し」の如く汚れているように写っていますが(笑)、実はこれはシングルコーティング層表層面の経年劣化を現しています (従って何度清掃してもこのように残ります)。

するとこれを見た時「どうしてノンコーティングと言えるのか?」と思ってしまいます(笑) パープルっぽく見えているのが下層なのかブル〜が下層なのかは全く不明ですが、その鉱物の蒸着で経年劣化に伴い薄くなっているのが分かります。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大2mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に点状カビ除去痕複数残っています)
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
但し戦前に製産された個体のため光学硝子レンズに蒸着されているコーティング層は1935年開発されたばかりのシングルコーティング層で且つ当時の白黒写真のみを想定した光学設計だったとも推定でき経年劣化進行まで勘案すると撮影写真は凡そフレア気味で低いコントラストです。事前告知済なのでクレーム対象としません。ちなみに戦前ドイツのノンコーティングの時期は1934年までの話です。

↑14枚の絞り羽根もキレイになり絞り環も度も確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

実は前述の過去メンテナンス時に於ける反射防止黒色塗料の着色以外に「絞り環操作がガッチガチに重い」問題が当初バラす前の時点でありました。その因果関係は過去メンテナンス時に前述の「開閉環とC型環が着色されていた」のも原因の一つでしたが、一番影響していたのは「絞り環構成パーツの固定箇所がズレていた」点です。

いわゆる「当初バラした時の逆手順で組み上げれば良い」としか考えていなかった過去メンテナンス時の整備者だったのがこれでバレます(笑)

例えばギザギザのジャギーが備わるローレット (滑り止め) の絞り環は、いったいどの深さまで入れば適切なのか? 或いは絞り環の駆動域は何処から何処までが適切なのか? 各絞り値での絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) は適切なのか? 開放f値「f2.8」の時どの位置に絞り羽根が顔出ししているのが正しいのか?

凡そこれらの事柄について何一つちゃんと考察して微調整していないのがバラしてみれば白日の下に曝されてしまいます(笑) マジッで何一つこの過去メンテナンス時の整備者は考えていませんでした(笑)

従って今回のオーバーホールでは前述した因果関係の一つ一つが当初バラす前の位置とは異なっており、それぞれちゃんと調べて確認しつつ微調整を施した次第です。細かい話ですがこういう部分にも「観察と考察」が必ず介在し、合わせて「原理原則」から適切な位置での固定などが適う次第です。別に手元にサービスマニュアルなど一切無くても、例えば開閉環の駆動域にしても絞り環が入る深さにしても「適切な位置が必ず在るのがそもそもの設計」なのは至極真っ当な話です (何一つ特別な話をしていません)(笑)

それを製造メーカーでもないのに分かるハズがないなどと指摘する人達が居ますが(笑)、そんなのは当方に限った話ではなくて今現在の日本国内の何処の整備会社でも同じ前提であって、もっと言うなら世界中何処にもそんなサービスマニュアルを揃えている整備会社などありません(笑)

日本で言うならせいぜいNikonやCanonの専属認定整備会社くらいの話で、それ以外の大手整備会社でさえ当時のサービスマニュアルなど所有していません。

そのような批判を言う人達は「ではそのサービスマニュアルはいったいどうやって製造メーカーから入手できたのか?」と逆質しても全く答えられません(笑) サービスマニュアル無しのままテキト〜にバラした時の逆手順で単に組み立てているだけと言いますが「ならばどうして不適切なのを突き止められるのか?」と問うても返答できません。

逆に言えば「どうして適切と断言できるのか?」と質問しても答えられないのです。要はそこに「原理原則」が必ず存在する事を一切知らない人達が外野であ〜だこ〜だ騒いでいるだけの話で失笑モノです(笑)

今回のオーバーホールでは前述の幾つかの要素について適切な位置で微調整を施し固定したので本来の製産時点の状態に戻っています。

しかし残念ながら既に「絞り羽根にプレッシングされているキーが弱っている」状況で、そもそも当初バラす前の時点で「絞り環操作が異常に重すぎる」点について前オーナーが放置プレイだったので、その因果関係 (反射防止黒色塗料を塗りまくりだった) から絞り羽根の打ち込まれている「位置決めキーと開閉キーが相当弱っていて脱落寸前まで来ている」点に於いて「それに配慮したオーバーホール工程を経て仕上げた」のでまだまだ使えますが、おそらく今回のオーバーホールがこの個体での「製品寿命が到来して命尽きる」最後の作業でしょう。

・・その意味で手に入れられて本当に良かったと安堵しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)
・絞り環操作は無段階式(実絞り)です(クリック感はありません)。また内部構造上開放f値「f2.8」の相当左側まで回りますが最小絞り値「f16」側はピタリの位置です。特に最小絞り値側は14枚の絞り羽根が互いに重なり合うため僅かに詰まった印象で停止しますが無段階式(実絞り)の場合では構造上から来る設計上の問題です(改善できず)。なお絞り環を回すと開放f値「f2.8」の位置で実装光学系の最小径にピタリと合致した位置に絞り羽根が顔出ししてくる設計です。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属品の汎用樹脂製バヨネット式後キャップは市販の3Dプリンター出力製品なので相応の仕上がりです。締付が硬めで極僅かしかバヨネットしていない印象です。輸送用保護程度とご認識下さい。

当初バラす前のチェック時点で距離環を回した時「前オーナーはスムーズと表現」していましたが、現実には或る特定領域だけカクンと抵抗/負荷/摩擦を感じて僅かに重くなる「トルクムラが生じていた」状況でした。

・・もちろんトルクムラを解消し全域で均一なトルクに戻しています。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
本体『Xenar 5cm/f2.8《戦前型:S2.8》(exakta)』
汎用樹脂製バヨネット式後キャップ (3Dプリンタ出力品/新品)

後キャップは前述のとおり少々キツくて硬めです。バヨネット爪部分がちゃんと咬んでいない状態なのであくまでも「輸送用保護キャップ」程度の認識です。

なお今回の個体は前回と比べて1年前に製産された「1937年5月の製産/出荷個体」ですが、実は光学系前群の第1群 (前玉) の仕上がりが極僅かに異なっていて、且つ前玉の格納筒は「外側が黒色塗装」です (前回個体は1938年製ですがシルバークロームメッキ加工)。

ここだけメッキ加工を変更してもさほど全体の意匠に特徴的な要素には至らないので変更した理由などよく分かりません。

また前玉直前の「黒色の遮光環部分」にネジ切りがあるように見えますが、実は全ての凹凸が全く一律に水平状態なので「ネジ切りではない/ネジ山ではない」ので、ここにフィルターをネジ込もうとしてもちゃんと入りません。単に臼状にすぼまっているだけの「遮光環」でしかありませんから、フィルターやフードをセットするには「内径:⌀ 32mmの被せ式」である必要があります。今回剥げまくっていたので着色しましたが被せた時点で剥がれると思います (焼付塗装できないから)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離75cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

そもそもこの個体が市場投入されていた時期に使われていたのは白黒フィルムとの前提から今回はグレースケールにもしてみました。フレアの感じが変化するので、やはり白黒撮影を中心的に考慮して光学設計していたのではないかとみています。

総天然色のカラー成分も「256階調しかないグレースケールの世界」に割り振られるとまた違った写り具合に至り、これはこれで美しいモノです。

・・要は「S2.8」の魅惑に惑わされているからまるで周りが見えていない!(笑)

恋は盲目とはよく言ったものです(笑)

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。もう相応に絞り羽根が閉じてきているのでピント面の解像度が低下し始めています (焦点移動)。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。

本年も残すところ僅か3週間あまり・・。
皆様もどうぞよいお年をお迎え下さいませ。

オミクロン株にインフルエンザとダブルパンチで脅威ですが、年末年始でハメを外しすぎずにどうぞご自愛下さいませ。

また来年お目にかかりましょう・・。