◎ LEITZ WETZLAR (ライツ / ライカ) ELMARIT-R 28mm/f2.8《3カム》(LR)
前回出品したCANADA LEITZの「SUMMICRON-R 50mm/f2 (LR)」はアッと言う間にご落札頂きました (ウォッチ数たったの7人)。ありがとう御座います。今回が2本目になりますが、引き続きライカのレンズを出品します。
今回の個体はドイツ製になり「前期型」のフードを内蔵していないモデルになります。前期型ではアンバー色のコーティングが多いようですが今回はパープル色のコーティングが施されています。製造番号から1987年に生産の3,110本の中のひとつのようです。
バラしてみると、前回のCANADA LEITZの製品と同一の構成パーツが一部含まれていました。前回は「LENS MADE IN CANADA」と鏡胴に刻印してありましたし、今回もちゃんと「LENS MADE IN GERMANY」とあります。果たしてドイツ工場からカナダまで輸出していたのか? 逆なのか? よく判りませんが、全く同一と言うのはどちらかが供給していたと考えられます (普通は現地生産ならば、設計が同じでも部材の色合いや金属質の違いなどがあります)。
今回の個体は光学系前群の第2群〜絞りユニットまでが解体できなかったため、清掃などができていませんが非常にクリアでキレイな状態を維持していたのでラッキーでした。筐体は経年相応のキズやハガレなどがあるので当方の判定でも「美品」レベルですが、光学系内は非常にクリアです。
オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載しています。
一部を除いて解体したパーツの全景写真です。
構成パーツの中で「固定環」には全て接する部分に「マット仕上げ (梨地加工)」が施されており、経年の揮発油分による「緩み」を未然に防ぐよう配慮されています。
構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。
光学系前群の前玉は外れたのですが、第2群〜絞りユニットまでが解体できず (つまり第2群が外れなかった) そのまま清掃して前玉を組み付けています。絞りユニットも絞り羽根も大変キレイな状態を維持していたので、特に問題はありません。
上の写真 (2枚) は1枚目が前玉の極微細なヘアラインキズ1本と近辺の極微細な点キズを拡大撮影しています。2枚目は極微細な点キズの状態を撮っています。
【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:9点、目立つ点キズ:3点
後群内:6点、目立つ点キズ:3点
コーティング経年劣化:前後群なし
カビ除去痕:なし、カビ:なし
ヘアラインキズ:前後群に極微細数本あり。
・その他:バルサム切れ無し。前玉には極微細な引っ掻きキズが2点あります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。
鏡筒の裏側に「手書きの刻み込み:7614631」とありますが、当方で刻み込んだのではありません。恐らく生産時に刻まれたものと思われます。前回のCANADA LEITZの個体には、このような手書き刻み込みはありませんでした。
光学系後群にも極微細な点キズが数点あります。上の写真は角度に拠っては「反射して」明確に浮かび上がる「極微細な薄いヘアラインキズ:1本」をワザと浮かび上がらせて誇張的に撮影しています。目視ではなかなか見つけられないレベルです。
光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズは容易にはなかなか発見できないレベルです。
これらの極微細な点キズは「塵や埃」と言っている方が非常に多いですが、実際にはカビが発生していた箇所の「芯」や「枝」だったり、或いはコーティングの劣化で浮き上がっているコーティング層の点だったりします。当方の整備では、光学系はLED光照射の下で清掃しているので「塵や埃」の類はそれほど多くは残留していません (クリーンルームではないので皆無ではありませんが)。
真鍮製のヘリコイド (メス側) をセットします。実はこのメス側ヘリコイドはネジ込み式で組み込むのではなく「フリー」でグルグルと回転する方式を採っています。ネジ込み式にしなかった理由は・・筐体の全長を短く抑えたいからですね。鏡胴の繰り出し量が相応にあるので、恐らくネジ込み式にしてしまったらさらに1cmほどは長い鏡胴のサイズになっていたと思われます。コンパクトにしたかったのでしょう・・構成パーツの構造化にも、注意して観察しているとこのような背景が浮かび上がります。
ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けたポジションでネジ込みます。このモデルでは「無限遠位置調整機能」が装備されているので大凡のアタリで構いません。ネジ込み位置は全部で9箇所ありますが、前述のようにヘリコイド (メス側) がフリー環なので、無限遠位置の調整はいくらでも可能ですからとても楽です。
この状態でひっくり返して撮影しました。ここからはマウント部に向かって組み上げを進め鏡胴を完成させていきます。
基台の内部に絞り環との連係機構部を組み付けます。この部分の構成パーツが、前回の「CANADA LEITZ」製品と全く同一のパーツでした。今回の当レンズはドイツのライツ工場ですから、カナダとどちらかが供給していたものと推測できます。
絞り環をセットします。
マウント部を組み付けます。同時に「1カム」と「2カム」も内部にセットしており、既に用意されている「3カム」と合わせて3つのカムが揃います。
光学系を組み付けてある鏡筒を組み込んでセットします。この時は、もちろん絞り連動系の噛み合わせもキッチリ行い、絞り環操作で絞り羽根の開閉状態を確認しておきます。この後無限遠位置確認、光軸確認、絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行えば、完成間近です。
上の写真 (2枚) は鏡胴のハガレやスレなどの経年のキズの状態を拡大撮影しています。
上の写真 (2枚) は附属している純正の前後キャップのうち、前キャップを撮影しています。残念ながらヒビ割れが入っており、接着していますがヒビ割れは修まっていません。キャップとしての機能は問題ありません (勝手に外れたり落ちたりしません)。
ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。
パープル色の光彩を放つ美しいコーティングが施された「前期型」の「ELMARIT-R 28mm/f2.8」です。
LED光照射では光学系前後群に極微細な薄いヘアラインキズが1本ずつ浮かび上がりますが、とてもクリアな状態を維持した個体です。LED光を照射しても内部のクモリなどもありません。
今回はバラすことができませんでしたが、絞り羽根もキレイで確実に駆動しています。
ここからは鏡胴の写真になります。経年相応の使用感が感じられる鏡胴ですが酷いキズなどは全くありません。
【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「美 品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・附属の純正前後キャップのうち前キャップはヒビが入っており接着しています (現状実用に支障はありません)。
バラす前は僅かにヘリコイドがスルスル状態でしたから、オーバーホールによって操作性は大幅に改善されました。
内部の構成パーツは、ヘリコイドも含めてすべて当方にて「磨き研磨」を施しているので、ほぼ生産時の環境に近づいた状態に戻っています。また、使用したヘリコイドグリースは、距離環を回す際は「僅かに重め」なのにピント合わせをする時は「とても軽いチカラ」でス〜ッと吸いつくように微妙なピント合わせができることを最優先した粘性を選択しています。過去に落札されたオールドレンズやオーバーホール/修理を承ったオールドレンズなど、その後「このトルク感がクセになる」「ピント合わせを意識させないシットリした動き」などとお褒めを頂き、ありがたいことに「リピーター」になって頂いている方々も最近は多く、感謝の念に堪えません・・ありがとう御座います。
当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。このモデルはフードを装着したほうが良いのですが、上の実写ではフードを装着していません。それでもこれだけの描写をしますから、ライカのレンズは素晴らしいですね・・本当に目に毒です。
被写体の材質感や素材感など写し込む「質感表現能力」があり、空気感や距離感までも感じさせる「立体感」の描写性に優れ、場の雰囲気や緊迫感などを閉じ込めてくれる「臨場感」タップリの画造りには感心してしまいます。最短撮影距離30cmでもこれだけのボケ味を表現してくれますから、撮影が楽しくなることは請け合いです。実はミニカーは樹脂製 (プラスティック製) なのですが、バンパー部分の銀色塗色と隣のライターの金属部との質感の相違が見て取れます・・光沢感や硬質感などガラスや金属質、或いは植物の葉っぱの肉厚感など、キッチリと画の中に写し込んでくれるのは、さすがですね・・。
附属品は前に掲載の純正前後キャップの他に、以下の純正金属製フードと純正ケースもあります。写真掲載を忘れていました。