◎ Schneider – Kreuznach Xenon 50mm/f1.9 ▽ zebra(exakta)

オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。

今回はすべてのパーツに解体できなかったため、一部を解体しての作業になりました。

現在出品中の当レンズは製造番号から1955年生産の個体です。別に出品中の同型モデル色違い (クロームメッキ仕上げの銀鏡胴) が生産されてから2年後に生産されたことになります。

その間に内部パーツの仕様が変わり従来の真鍮材からアルミ材削り出しへと部材の材質が変わりました。その結果400.5gあった重量が僅か186.5gに低減しだいぶ軽く感じますね。

下の写真は新たにアルミ材削り出しに変わったパーツの写真です。従来の真鍮材でもクロームメッキ仕上げが施されていましたが、このアルミ材削り出しパーツではモスグリーンのメッキ仕上げになっています。例えばこの当時のCarl Zeiss Jenaではライトブルー系のメッキ仕上げとパーブル系のメッキ仕上げ部材を使ったモデルが混在していた時期でもあります。意図的に内部構成パーツのメッキ仕上げ色を差別化していたワケではないでしょうが、このメッキ仕上げ色を確認するのもオーバーホールによる解体時には愉しみのひとつになっていますね。

XE5019z(0122)1118枚もある絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。キレイな円形絞りになっていますね。

XE5019z(0122)12次の写真はヘリコイド(メス側)やマウント部を組み付けるための基台です。手前と奥の2箇所に細長い楕円形上の「穴」が空いています。この部分に「直進キー」と言うネジが入り、距離環を回した「回転するチカラ」を前後動の「直進するチカラ」に変換させる役目を持っています。

XE5019z(0122)13実際に距離環のヘリコイド(メス側)をネジ込みます。この時点で大体の無限遠行きの当たりをつけておきます。このモデルは既に無限遠の調整を考慮した仕組みが用意されています。下の写真で小さな穴が複数等間隔で空いています。この穴のどれか1つに「制限キー」と言うネジをネジ込んで距離環の駆動域を確定します。当時としては先進的ですね。何故ならば、それまでは非常に薄い「環 (輪っか)」を鏡筒に1枚ずつ挟み込んで (挟み込んだ環の厚み分で合焦位置を僅かにズラすため) 一々組み上げて確認していたのですから・・。

XE5019z(0122)14鏡筒を組み込んでヘリコイド(オス側)を正しいポジションでネジ込みます。これをミスると最後にまたバラしてやり直すハメに陥ります。

下の写真では距離環制限キーのネジがストッパーの右側に位置しており距離環を繰り出した状態 (最短撮影距離の位置) になっています。この位置からグルッと一周回すと制限キーのネジはストッパーの反対側 (左側) に来て無限遠位置になります。この約360度の区間が距離環の駆動域にあたります。

XE5019z(0122)15光学系前群を組み上げます。この個体は前玉に目立つキズもなく中玉も良い状態を維持した個体です。

別に出品中のクロームメッキを施した銀鏡胴のモデル (当レンズからは2年ほど前に生産されている個体) と比べると、光学系内のコーティングの仕様が変わっていることが分かります。

銀鏡胴のモデルでは単色のブルー系でしたが当レンズではパーブル系です。共にシングルコーティングではありますが何か仕様変更が成されたのでしょう。

XE5019z(0122)16光学系後群も良い状態を維持しています。清掃でキレイになりました。

この個体はカビやバルサム切れ (貼り合わせレンズを接着している接着剤が経年劣化で剥離し始めて白濁している状態) も生じておらずラッキーです。

XE5019z(0122)17絞り連動機構部の写真です。この方式だけは変えなかったのですね。バネが直接絞り羽根の1枚に連係する方式です。

XE5019z(0122)18バネを外してみるとこのようになっています。絞り羽根の1枚に打ち込まれたとても小さな穴あきシリンダーです。絞り羽根が変形していますね。

絞り羽根自体も非常に薄いので、その絞り羽根に直接バネのチカラを与えて、しかも当レンズでは残りの17枚の絞り羽根を一斉に駆動させるワケですから「絞り羽根の油染み」や最悪「絞り羽根の粘着化」は致命的と言えます。この個体はキレイに清掃され適正なバネのチカラに調整されて本当に幸運な個体ですね(笑)

しかし正直なお話で絞り羽根の駆動が緩慢になっているのを、単なる「絞り羽根の粘り」などと受け取っているととんでもないことに陥ります。この部分が切れたりしたらもうオシマイですよ・・。その途端にこのレンズの寿命は尽きてしまいます (絞り羽根の開閉が制御できない)。

歴史に名を残したトロニエ博士も、このようなメンテナンス性や経年での使用による構成パーツへの負荷を考慮していなかったのでしょうか? それともまさか自ら設計したレンズが半世紀以上を経てもなお愛用されるとは思いも及ばなかったのでしょうか・・。

XE5019z(0122)19マウント部に基台を組み付けます。写真右側に移っているシャーターボタンの直ぐ下に矢印が刻印されています。

この矢印が刻印されているリングを押し込みながら回すことで「自動/手動」絞りの切り替えを行っています。なかなかのギミック感です(笑)

ちゃんと絞り連動機構部が来ていますね。それぞれの部位は単純な構造でも、それが密接に関わって動くように造られている良く考えられた構造です。

XE5019z(0122)20絞り環のある指標値が刻印されたカバーをセットしてだいぶレンズらしくなってきました。この状態で一旦無限遠と光軸確認を行います。

XE5019z(0122)21ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。

あまり出回らない初期の頃の「Xenon 50mm/f1.9 zebra」です。光学系の状態が良い個体は貴重です。

XE5019z(0122)1光学系前群もキレイになりました。中玉もバルサム切れやコーティング劣化もなくキレイですね。

XE5019z(0122)2絞り羽根も清掃でキレイになり確実に駆動しています。

XE5019z(0122)3ここからは鏡胴の写真です。経年の使用感が相応にある個体でしたが一部着色しています。

XE5019z(0122)4 XE5019z(0122)5 XE5019z(0122)6 XE5019z(0122)7たまたま別に出品中のクロームメッキ仕上げ銀鏡胴のモデルと同じタイミングでこのゼブラ柄を出品できました。

その描写をご覧頂ければ「Xenon」の素晴らしさもお分かり頂けるのではないでしょうか。

XE5019z(0122)8 XE5019z(0122)9光学系後群もキレイになりました。状態が良いですね。

XE5019z(0122)10次の写真はワザと別に出品中のクロームメッキ仕上げ銀鏡胴モデルと比較できるように最短撮影距離70cm附近での開放絞り値「F1.9」で撮影した実写です。銀鏡胴のほうは残念ながら光学系の状態が良くないので開放での実写で比較できるようにしました。

XE5019z(0122)22こちらの写真は「F2.8」での実写です。別出品中の銀鏡胴モデルと同一の条件になります。

XE5019z(0122)23