◎ TAMRON (タムロン) CONVERTO-TAMRON 135mm/f4.5 zebra 《model #280》(exakta)

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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。

今回オーバーホール/修理を承ったモデルは、1950年に「泰成光学機器製作所」として創業した後、1958年に「TAMRON」の商標登録が完了すると同時に発売したタムロンで初めて生産された記念すべきモデルになります。

今回のご依頼者は、毎月必ずオーバーホール/修理をお申し付け頂く方です・・本当にいつもありがとう御座います! それこそ養って頂いているようなものですね・・感謝しています!

今回のモデルについては、当初お問い合わせ頂いた際に (正直な話) 何を言っているのかチンプンカンプンでした(笑) ネットで調べまくってようやく大凡の概要を掴みましたが、それでもなお「?」状態でした・・当方は基本的に無知ですから(笑)

焦点距離が135mmなので、相応に大柄だとスッカリ思い込んでいたワケですが・・届いた現物を見て「??」になってしまいました(笑) 何と小っちゃな可愛らしいオールドレンズだこと・・しかも、当方の琴線に触れる「ゼブラ柄」・・専用の純正革製ケースから本体を取り出した後に「ウン?」何やらケースがまだ重たいぞ! 革製ケースの蓋部分には、さらにアクセサリ関係が一式入っていました・・おぉ、何と便利な。出てきたのは「コンバーター」や金属製フードなどです・・「えッ? コンバーター?」と言うワケで「???」状態です(笑)

事前にネットで調べまくってもコンバーターが追加できるシステムになっていることを認識していませんでした・・恥ずかしい。本体のマウントが「T2:M37」であることを理解しておらず、さらに、そこに付け足しでコンバーターを追加して焦点距離を「225mm」にしてしまい、その上で「M42」でも「exakta」でも好きなマウントをセットして使えるシステムが完成しているモデルでした。

つまりは、このモデルを発売した時点でTAMRONには既に交換マウントの概念が確立されていたことになります・・後に登場する「ADAPTALL」の仕組みですね。他社光学メーカーでも交換マウント方式のオールドレンズが存在しますが、最もスマートに (コンパクトに) システム化できていたのはTAMRONだけだったのでしょうか?

それも然ることながら、今回のオールドレンズの本当に小っちゃな筐体を見て、思わず笑ってしまいました。焦点距離135mmのオールドレンズならば「このくらいの大きさ」だとスッカリ決めつけていた自分に笑ってしまったのです・・まだまだ修行が足りない未熟者ですね。開放F値「f2.8」のモデルのほうは相応に大柄な筐体なのでフツ〜の135mmです。今回オーバーホールしたモデル『CONVERTO-TAMRON 135mm/f4.5 zebra (exakta)』は他にもOEM生産されており同一システムのままSoligorなどにも出荷されていたようですし、モデル銘も「TWIN-TELE」や「DUO-TAMRON」などが使われていたようです。マウントの種類は相当な数に及んでいます・・。

今回バラしてみると光学系は2群4枚のダブルガウス型でした。焦点距離135mmを、この光学系でやってしまったところもTAMRONの意地が懸かっていたのではないでしょうか。実写してみると、ちゃっちゃな筐体からは想像も付かないくらいにシャープなピント面を構成した端正な画が残せました。海外でもなかなか評価が高いモデルのようです・・Flickriverにてこのモデルの実写を検索してみましたので興味がある方はご覧下さいませ。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回初めてバラしてみると内部の構成パーツは、それほど多くはなく簡単なレベルに見えますが、実はバラすのが一苦労でした。鏡胴が「前部」と「後部」の二分割にもなっておらず、さらにバラす順番をミスると解体できない (つまりは逆に言えば組み立て時にも手順が重要になってくる) モデルでした。

↑焦点距離135mmですが、2群4枚構成のダブルガウス型で設計しているので鏡筒の奥行きが深くなっています。鏡筒の外回りにはヘリコイド (オス側) のネジ山が切削されています。

↑12枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。プリセット絞り機構を装備したモデルですが手動絞り (実絞り) ですから構造は簡素です。

↑この状態で鏡筒を立てて撮影しました・・繰り出し量が多いのでヘリコイドのネジ山が相当に長く続いています。鏡筒の周りにはイモネジが入る「下穴」が用意されているのですが大小で数箇所に見られます・・今回の個体は過去に2〜3回メンテナンスされている痕跡が残っていますが、いずれも固定位置をミスっています。上の写真でオリジナルの (つまり生産時の) 下穴は3箇所だけであり、他の9箇所はすべてミスッて (或いはテキト〜に) 締め付け固定してしまったために付いた「穴」です。

↑順調に組み立て工程が進んでいるように見えますが、実は上の写真はある程度組み上げを進めた後で完成しないことを悟って(笑) 再びバラして組み上げ手順を替えて撮っている写真です。おそらく過去にメンテナンスした人物も同じミスを犯していると思います。訳が分からなくなり仕方なくテキト〜な箇所にプリセット絞り機構部を組み付けてしまったのだと推測します。当初、バラす前のチェック時に絞り環もプリセット絞り環も非常に重い操作性でありクリック感もガチガチを通り越して溝に填っているような印象の感触でした (前後の絞り値に設定変更できるレベルではない)・・すべてはプリセット絞り機構部をテキト〜にセットしてしまったのが原因です。

上の写真の「下穴」でオリジナルは左側の大きめの「下穴」ですが、その右隣にもうひとつドリルを使って「同じ大きさの下穴」を用意していますから、きっと最後の手段だったのでしょう。その他にも散見している「小さめの下穴」は、また別のメンテナンス時に付いてしまったムリに締め付けた箇所の「穴」です・・従って2〜3回メンテナンスが施されていると推察できます。「ベアリング+コイルばね」を内部に組み込んでから「プリセット絞り機構部」をセットしますが、そもそも過去のメンテナンス時にはプリセット絞り環や絞り環の「Ι」マーカー位置をピッタリと合わせる方法が理解できていなかったようです。ガチガチと数箇所でプリセット絞り機構部をムリに固定していた痕跡もありました・・。

↑プリセット絞り環を組み込んでから絞り環をセットすれば良いのですが、この部位の組み立て手順が、このモデルでのハードルになるでしょうか。絞り環が一切固定されていない設計 (オールドレンズでは珍しい) なのですが、如何せんプリセット絞り環のほうも「ベアリング+コイルばね」のチカラが及んでしまい互いに押されるので組み立て手順をミスると「重い操作性」になってしまいます。「原理原則」だけではクリアできない少々難しい組み立て手順でしょうか・・。

↑こちらは指標値環ですが、この下にマウント部がネジ込まれます (つまり下のネジはM37)。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑この状態で鏡筒のヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行えば完成です。マウント部をセットする前の状態ですが筐体サイズを実寸で明記しました・・最大径が48mmしかなく、全長も76mmですから如何に小っちゃいのかご理解頂けると思います (それでも焦点距離135mmです)。上の写真では最短撮影距離の位置まで繰り出していますが全長「76mm」は無限遠位置でのサイズです (撮影をミスりました)。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑時代として、まだモノコーティングの時代になります。上の写真では附属の「ステップアップリング」を装着して撮影しています。

↑光学系内の透明度はピカイチレベルです。後群にカビが発生していましたがキレイに除去できています・・LED光照射でも極薄いクモリすら浮かび上がりません。

↑マウント部は「exakta」のほうを装着して撮影しています。光学系後群もキレイです。

↑12枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感がほとんど感じられない大変キレイに状態をキープした個体ですが当方による「磨きいれ」を施したので落ち着いた光沢感のある美しい仕上がりになっています。距離環や絞り環などのクロームメッキ部分も当方による「光沢研磨」を施したので、さらに眩いほどの光彩を放っています。

↑塗布したヘリコイド・グリースは、絞り環の操作性が決して軽くはないので (重いのではなくシッカリしたと言う印象のトルク感)、それを勘案してワザと「粘性:重め」を塗りました。当初バラした時点では過去のメンテナンス時に「白色系グリース」が塗られており既に「濃いグレー状」にビッチリと粘着化が進んでいましたから「潤滑油」を注入されていると推察します・・それで非常に重いトルク感に陥っていたのだと考えます。現状、距離環を回す際のトルク感は「普通」レベルであり極僅かにトルクムラがあります (再現性が少ない)。また、ヘリコイドのネジ山が既に摩耗しているので距離環を操作した時にネジ山が擦れる感触が一部の箇所であります (違和感にはなりません)。ヘリコイドのネジ山の摩耗状態から今回は「黄褐色系グリース」を塗っていますのでネジ山の状態に神経質になっています (それで擦れる感触を感じる箇所がある)。結果、ピント合わせの際は極軽く微動ができるので、このモデルはピントの山が掴み辛いのでちょうど良いトルク感に仕上がっていると思います。

↑大変珍しい貴重なモデルをご依頼頂き、本当にありがとう御座いました・・なかなかよく考えて設計されているモデルだと感じました。なお、プリセット絞り環のクリック感に関しては、当初よりも「軽い操作性」のクリック感に調整していますから、いちいちプリセット絞り絞り値をセットするよりも、そのまま絞り環ごと指で摘んでプリセット絞り環と一緒に回して頂いたほうが使い易いと思います (つまりクリック感を伴う絞り環操作)。

↑せっかくなので、ご存知ない方のために、このモデルのシステムを説明しておきます。筐体のマウント部直前は「T2:M37」のスクリューマウントになっており、そこに「M42」か「exakta」のマウント部をネジ込んで使えるようになっています。

↑さらに、オプションとして「焦点距離:225mmのコンバーター」が用意されているので、このコンバーターをマウント部にネジ込めば、そのまま「225mm」に変身するワケです・・この場合の開放F値は「f7.7」になりますから、絞り環には「225mm」の時の絞り値が「グリーン色」で刻印されています。コンバーターの光学系は1群2枚構成です。

↑コンバーターをセットすると・・こんな感じです。この状態でも、まだ一般的な焦点距離135mmのオールドレンズよりは全長が短く、当然ながら軽いです。

↑コンバーターをネジ込むので外していたマウント部を、今度はそのままコンバーターの「T2:M37」スクリューマウントにネジ込んで使えるワケです。「M42」も「exakta」も単にネジ込めば良いので、これはこれでシンプルで好ましいです。

↑純正革製ケースは蓋部分にアクセサリー類をまとめて収納できるように作られており、なかなか便利です。金属製フードまで含めて蓋部分に収まってしまいます。

なお、今回「M42」と「exakta」と2本の現物が届きましたが、バラす前のチェックでは「M42」のほうが相当なオーバーインフ状態でしたので、今回のオーバーホールは「exakta」のほうで実施しました。従って距離環指標値も「メートル」表記なので使い易いと思います。

コンバーターに関しては2つともバラして通常の「磨き研磨」などを施し、且つ光学系の清掃も実施しましたので、どちらをお使い頂いても構いません・・コンバーター装着時も無限遠位置は当然ながら変わりません (確認済)。コンバーターの金属製前キャップが片方の個体側でぶかぶかでしたから、テーピングしてきつくしてあります。その他「M42」マウントの個体のほうは一切手を加えていません (届いた時のままです)。

↑当レンズによる最短撮影距離2m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。最短撮影距離で撮っているのでボケ量が少ないですね・・。

↑絞り環を回して設定絞り値を「f5.6」にセットして撮影しています。

↑さらに絞り環を回してF値「f8」で撮りました。

↑絞り値はF値「f11」になっています。

↑F値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。