◆ Kuribayashi (栗林写真工業) C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
栗林写真工業製標準レンズ・・・・、
C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で37本目にあたりますが前回扱ったのが昨年10月なので久しぶりです。

当方がこのモデルの描写性に魅力を感じて扱い始めたのが2017年からなので、実際には6年間での累計扱い本数が今回の個体で37本目と言う話です。2017年当時には市場流通価格もまだ安くて優に5千円以下で手に入っていた頃でした。その当時はまだ注目されておらず、それこそ当方がまるで「インスタ映え」の如く積極的に扱いを始めて特にヤフオク! 界隈の同業者たる『転売屋/転売ヤー』に高く売れるとの印象を植え込んでしまったのが拙いのです・・現在の 市場流通価格帯は1万円台後半辺りで下手すると2万円を超えても落札されている印象です。

但しそうは言ってもあくまでも当方がヤフオク! に出品する際は必ずオーバーホール済なので、一般的な同業者『転売屋/転売ヤー』がそのまま転売しているのとは多少なりとも違いがあると自負していますが、ところが世知辛い世の中で時には最終的に転売している事になるのは同じなのでオマエだって『転売屋/転売ヤー』だろ・・と指摘してくる人も居るので特に反論せず「はい『転売屋/転売ヤー』の一人です」と申し上げています(笑)

・・まぁ〜どのように受け取られるのかは個人の自由なので(笑)

このモデルの描写性 (ネット上の実写を複数ピックアップして解説しています) や製造元たる 栗林写真工業などを含めた当時の背景などはこちらのC.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』で細かく解説しているので興味がある方はご参照下さいませ。

特に当時としても光学系の構成/設計として4群6枚の一般的な (既に流行っていた) ダブルガウス型構成を採らず、敢えて後群側を「3枚の貼り合わせレンズとして設計してきた意気込み」と言うかこだわりにおそらく当時も今も栗林写真工業 (最後の社名はペトリカメラ) は、
カメラメーカーであって光学 (レンズ) メーカーではないとの認識が 多いのではないかと受け取っていますが、その中にあって「意外にも光学硝子精製技術とその設計能力の高さ」は発売した1959年から優に63年を経ていても
なお、この第3群の3枚貼り合わせレンズはバルサム切れも進行せず多くの個体でキッチリと性能を発揮してそれを維持し続けてくれています (まさにオドロキです)。

・・光学硝子レンズ清掃時にどうしてもそのように感銘を受けます。

特に後玉側方向から光学系の後群側を覗き込むと「第3群の貼り合わせ面たるバルサム剤/接着剤が外周に黄色く光彩を放っている」のが何ともそれを見ただけでとても頼もしく感じてしまうから惚れ込みすぎですョね・・(笑)

今まで扱ってきた37本 (今回の個体含め) の中でこの3枚貼り合わせレンズにバルサム切れが生じていた個体は1本も存在しなかったと記憶しています。その一方で特に旧東西ドイツで製造されたオールドレンズ達、或いはもっと言うなら旧ソ連時代に作られたロシアンレンズなどをチェックすればいくらでもバルサム切れが起きている個体など好きなだけ発見できます(笑)
(しかもその多くが2枚の貼り合わせレンズ)

これが例えばCanonやNikonなど当時の大手の光学メーカー製オールドレンズ達を指してバルサム切れを指摘したところできっと「製産されてから既に半世紀以上経過しているのだから」と逆に仕方がないとまるで擁護するが如く釈明が聞こえてきそうです(笑) 要はそこに「何某かの人情が働く」のも至極自然な人の節理と受け取れます。

旧東西ドイツのオールドレンズ達がダメで当時の国産オールドレンズが讃えられるべきとの捉え方を、同じニッポン人として100%貶すワケにはいきませんね(笑) しかしそれら旧東西ドイツ以前に戦前ドイツや欧州 (英国やフランス他など) の光学メーカーが辿ってきた、或いは成し得た様々な光学技術の実績を決して蔑ろにはできないとの葛藤も残念ながら垣間見える ワケでなかなか奥が深い話しです (初めから日本が世界を牽引してきたのではないとの意味)。

その意味で今でこそ世界を席巻しているのは日本の光学メーカー (技術) ですが、そこに追いつけ追い越せで極めて肉薄してきているのが中国の光学メーカーとその技術なので、今後の30年〜50年に想いを馳せると下手すればかつて欧州が辿った凋落を今度は日本の光学メーカーが味わう時代が到来しないとも決して断言できません。何故なら中国は既に月の裏側に探査機を送っていますし、宇宙への有人飛行まで達成しています。

・・それでもなお栗林写真工業製のこの3枚貼り合わせレンズはひたすらに今も透明です!

この事実を「安堵」と受け取ってしまうのが当方の心の弱さで(笑)、63年の歳月を経ても なおひたすらにクリアであり続けてくれるこの3枚貼り合わせレンズの存在をどんだけ心強く想っているのか・・惚れ込んでしまうと何でもアリなのです(笑)

まぁ〜それはともかく、是非ともご落札頂きましたらきっと後玉側方向からこの光学系第3群の3枚貼り合わせレンズを覗き込んで頂き、外周に極僅かにはみ出して見えている黄色く光彩を放つバルサム剤/接着剤を確かめて (心の支えとして) どうかそこを通過して (透過して) 撮影される写真をご堪能頂きたくお願い申し上げます。

・・所有欲を充たす内容とはそれ程までに人それぞれなのです。

もしも等倍鑑賞してまで画の素晴らしさを追求したければ今ドキなデジタルレンズに勝るモノは無く、そこにオールドレンズの立ち位置は存在しません。従って当方はそのような勢力の 対極にそっと隠れて (できれば目立たずに) 純粋にオールドレンズ達の収差を楽しみたく慈しみを以て接したいと願うだけの者です。

・・とすればこのモデルも決して褒められるべき存在ではありません。

が然し、それこそがオールドレンズ沼の本質なのです!

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

フレア
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑上の写真は今回の個体を完全解体してオーバーホールしている最中に撮った写真です。本体の鏡胴はそのほとんどが仕上がっており残すところ光学系前後群を組み込むだけに工程が進んでいます。

そんな中で上の写真は「光学系後群格納筒」に光学系第4群 (後玉) とその直前に配置される 冒頭でさんざん解説した第3群 (3枚貼り合わせレンズ) を入れ込んだところを撮っています (既に後玉も底部分に組み込み終わっています)。

後玉をキズ付けたくないので硬質ゴム製サック (光学系用の治具) に乗せて撮影しています。

ご覧のように光学系第3群の3枚貼り合わせレンズが裏向きになって (つまり絞りユニット側の面) 写っています。すると格納筒との間に相当な隙間 (空間) がある為、現状のこの状態では第4群 (後玉) も第3群 (3枚貼り合わせレンズ) もガタガタしていて固定されていません。

従ってここから右横に並べて撮影した「締付環」を入れ込んで第3群 (3枚貼り合わせレンズ) を締め付ける事でようやく固定が叶います (グリーンの矢印)。

↑上の写真は一つ前の工程写真で右横に並べていた「締付環」を入れ込んで締め付け固定したところを撮っています。既に光学系第3群 (3枚貼り合わせレンズ) の周りに締付環がネジ込まれてガタつきが消えています。

ところがこのモデルが特殊なのは「さらにもう一つ第3群用の締付環が顕在する設計」なのを解説しています。

光学系後群用格納筒をよ〜く見るとグリーンの矢印で両脇から指し示したように「光学系第3群 (3枚貼り合わせレンズ) の周りにまだ隙間/空間が残っている」のが分かります。

どうしてこのような設計が特殊なのかと解説するなら、たいていのオールドレンズの光学系は「一つの締付環のネジ込みだけで締め付け固定が終わる」ので、敢えてワザワザ2種類の締付環を用意しません (設計しません)。

上の写真右横に並べて撮ったさらにもう一つの (2種類目の) 締付環をよ〜く見ると「ちゃんと隙間を埋めるように突出が備わる」のが分かります。ちなみに一つ前も最初も全て締付環は裏返して格納される側をワザと撮影しています。そうする事でちゃんと隙間/空間に締付環が埋まるようにネジ込む設計になっている事が確認できると思うからです。

実はここがポイントなのです。どうして一般的なオールドレンズはその光学系の締め付け固定 (格納固定を指す) に一つの締付環だけで対応しているのに、このモデルでは「何故2種類用意してきたのか?」と言う点について、過去メンテナンス時の整備者は何一つ配慮していなかったのです。

つまり2つ目の締付環が用意されている事に疑念を抱かなかったワケです。

↑こんな感じで2つの締付環が順にネジ込まれてようやく光学系第3群 (3枚貼り合わせレンズ) がその先に格納されている第4群 (後玉) と共に確実に格納/固定されます。

実は、このモデルのこの光学系後群側はこれら2つの締付環を順にネジ込んでしまうと「最悪光軸ズレを招く懸念も残る」ので、設計者はその光軸ズレを防ぐ意味から敢えて故意に2つめの小さな締付環まで用意したのです。

・・何を言いたいのか???

つまり今回の個体は当初バラす前の実写チェック時点で「ピント面に違和感を感じた」ので「???」となったのです。本来このモデルのピント面は例え開放実写していても相応に鋭さを担保できるのが今までに扱ってきた36本の傾向なのに、どうして今回の個体だけが「何かが違う」とそのピント面の鋭さのみならずコトバで表現できませんでしたが「???」との 違和感だったのです。

普通はもう既に今までの6年間でさんざん36本もこのモデルの個体を扱ってきているので 敢えて簡易検査具を引っ張り出して実写チェック (検査) しませんが、今回は当方が抱いた違和感自体をコトバで表現できなかったので (チョ〜面倒くさいですが) 敢えてバラす前の段階で 簡易検査具で調べたワケです。

簡易検査具でチェックしていくと特にピント面の鋭さも諸元値を示しているように見えますしボケ具合も多少開放実写から次の「f2.8側に寄りすぎ傾向」を確認しましたが (何故なら完全開放時に絞り羽根が僅かに顔出ししすぎているから/原因が見ただけで分かる)、その他歪みなども特に問題無さそうに見え「当方自身の思い込みか」とその違和感を飲み込もうとしたところでようやく見つけました!(驚)

何と画の一部の領域だけに色ズレ (フリンジ状態に近い) が出ていたのです。通常光学設計の影響からエッジにフリンジが憑き纏う場合画の四隅方向でほぼ均等にフリンジが憑き纏いますが (ブル〜パープル色)、今回の個体は2箇所の隅方向にだけフリンジが極僅かに纏わり付いて 残りの2箇所 (全部で四隅だから) 量が少なく視認できないレベルでした。

そこで理解しました・・光学系内のいずれかの群の格納がズレている (斜めっている) と。

そんな事前検査を実施していたのでバラしていく時にこの光学系後群側の格納筒を見てすぐに「2つ目の小さいほうの締付環が斜めっている?」とそのネジ込みの異常に気づいたのです。

それで上の写真撮影を当方のオーバーホール工程の中で解説用として撮影しました。

当初バラした直後は上の写真の内側の (2つめの小さめの) 締付環だけが両サイドでネジ込みの角度が違い明らかにズレていました (ほぼ均等に水平位置で締め付けが終わるのが正しい)。

しかもこの2つめの小さいほうの締付環には「たったの2列しかネジ山がない」のでネジ込みがズレるのは致命的なのです。

従って電子検査機械でも使えば明確にその偏りレベルを数値化できるのでしょうが、当方の目による視認ではどうにも掴めません。極僅かに色付きしているフリンジの存在だけが頼りだった次第です (当方の簡易検査具ではその程度しか確認できない低レベルさです)。

従ってこのブログをご覧の皆様もキッチリと正確さを問うなら是非とも電子検査機械を有するプロのカメラ店様や修理専門会社様宛にオールドレンズの修理をご依頼されるのがお勧めです (当方のようなプロになれなかったド素人は修理などには向かず対象外です)(笑)

・・とよく批判されて指摘されるのでご尤もなお話で御座います(笑)

詰まるところ設計者がワザワザ2つめの小さめな締付環を用意したのは特にこの光学系後群側の光学硝子レンズ格納方法が「最後に締め付ける締付環だけで第3群〜第4群の両方の格納 位置を確定させている設計」を採ったからであり、特にこの2つめの小さめの締付環の存在は「凡そ光軸ズレを防ぐ為の芯出しの目的」とも受け取れそうですが、お話を設計者に聴いた ワケではないので不明です。

もしも仮にそのような「芯出し」目的ではなく単なる隙間を隠す目的の「飾り環/メクラ環」的な用途として存在すると仮定するなら、ならばいっそのこと1つ目の締付環の内側にさらに 隙間を塞ぐよう突出させれば良いだけなので「どうして敢えてワザワザネジ込む必要が生じたのか (しかもたったの2列のネジ山しか用意されていない)」との疑念に立つなら、自ずと「芯出し」以外の何ものでもなく、現実に実際に今回のオーバーホールでちゃんとネジ込んであげればピント面の鋭さが (本来の納得できる写り具合に) 戻ったとも言えます。

逆に言うならもしも仮に「芯出し (光軸ズレを解消した状態にする所為)」まで兼ねるなら自ずとこれら2つの締付環の締め付け方法が変わるので「観察と考察」と共に「原理原則」に則れば自然にどのように処置するのが適切なのかが導かれます。

それは他のオールドレンズでも同じ概念ですが、別に設計諸元書やサービスマニュアルなど 手元に無くても様々な疑念を抱き「観察と考察」から仮説を導き出し「原理原則」に則り組み立て工程、或いはそもそもの工程手順 (順序) さえも疑ってしまえば「何が正しく何が適切ではないのか」は自然に見えてくるワケで(笑)、そこに第三者からあ〜だこ〜だと批判されるべき 要素は微塵もありません (付け入る隙がないという意味)。

たいていの場合で自ら整備した経験がない人達/勢力からSNSなどで批判を受けるので、そも そも処置するオールドレンズの設計諸元書やサービスマニュアルが手元にちゃんとあるプロのカメラ店様や修理専門会社様がいったいどれだけ世の中に (日本以外世界中含めて) 存在する のか考えてみれば明らかに自明の理です(笑) それをあたかも真っ当な理由の如くこじつけて批判しているものの、実のところ全く以て幼稚な論拠としか言いようがありませんね (せい ぜい光学メーカーからの修理認定を受けている整備会社くらいしか顕在しない)。

・・少なくとも当方は自分がオーバーホールした個体の内部状況を100%解説できます。

それら解説は具体的に問題の因果関係を及ぼしている (原因となっている) 構成パーツを確実に特定した上で、且つ説得力のある説明が適うので、例えば医療関係の方々からは「我々の病理解剖にも相通ずる説明でこれ以上無いほどに説得力がある」とまでお褒め頂いているワケで、そのような畑違いの業界のプロの方々 (先生) からのご指摘をいったい批判する人達/勢力は はたしてどのように反論するのか問い正したいくらいです (くだらないのでしませんが)(笑)

例えば今回の個体とは一切関係ありませんが、過去のオーバーホール/修理ご依頼分の個体 (35mm/f2.8のオールドレンズ) で撮影した写真の中に「パープルな点や楕円が浮かび上がって撮られている」と言う現象がありました。その個体を手にして光学系内を覗き込んだりLED光照射しても貼り合わせレンズのバルサム切れしか確認できません (そもそもパープルな点状キズが一つも無い)。

実際光学系をバラしても因果関係になりそうな光学硝子面のキズや欠けなどが発見できないのです (全く以て正常)。

ところが「観察と考察」を進めていくと貼り合わせレンズのバルサム切れの中に「円形状の 小さな剥がれ」が見つかり、且つ締付環や光学硝子レンズ格納筒には相当な「反射防止黒色 塗料」が厚塗り状態でした。

つまりその不具合 (問題) の結末は「過去メンテナンス時に厚塗りされた反射防止黒色塗料の インク成分が飛んでしまい光学硝子面の表面に非常に薄く附着していた」ために「パープル色」なのが辻褄が合い、実際に光学硝子レンズを清掃すればシルボン紙にとても薄く紫色が 残ったのです (シルボン紙とは光学硝子を清掃する際に使う純パルプの専用布面紙)。

さらに問題の貼り合わせレンズのバルサム切れの中に生じていた極小さな円形状の剥がれ箇所が影響して「入射光を集束するのでその円形状のハガレのカタチに倣いインク成分のパープルが写真に反映していた」と判明しました。

実際にバルサム切れを一旦剥がして再接着し、当然ながら光学硝子面もキレイに清掃したら「パープル色の円形状の写り込みが消えた (つまり正常に戻った)」などと言うとても信じられないような問題の実例もありました(笑)

こんな問題は (パープルの写り込みを直してほしいと言うご依頼は) はたしてその改善に設計諸元書やサービスマニュアルが必要なのでしょうか?(笑) 全く必要ありません。そのような問題の因果関係を突き止め改善するのに最も必要なのは「観察と考察」であり、そこから導き出される仮説を基に実際に検証する「原理原則」が必要なだけでした(笑)

オールドレンズとはそのように様々な因果関係が及んで経年劣化に伴い問題を起こしますから凡そその改善に必要になるのは「何がどうしたらどうなるのか?」と言う考察とその積み重ねから生まれる経験値なのではないでしょうかね(笑)・・と当方は考えています。しかし詰まる ところそれでもSNSで批判される如く「プロになれなかったシロウト崩れ」なのは紛れもない事実なので反論できないワケです (そのような言い草は誠にショックでしたが事実なので真摯に受け取るしかありません)(涙)

・・プロに一度も師事していない全く以て10年間ひたすらに独学だけのド素人崩れです。

その意味で『プロ/』とはまさに一目置くべき存在であり、長きに渡る下積み時代を経て蓄積された、且つ師匠から伝授される伝統の技術は全く以て「無形文化財たる所以」であり、日本が世界に誇る『真に誉れ高き存在』なのが明白です・・これは世界中の何人も覆せません

そのように10年間ひたすらに下から上を見上げる立場だとただただ苦しいだけしか残っておらず報われず・・いったい何をしてきたのか嘆かわしい限りです(笑) しかしそれこそが紛れもない現実なので「ごまかしの整備」を批判する立場に居る以上、認めるべきは認めるしかないのが世の中のルールですね(涙)

・・他人を批判すればする程に自身に跳ね返りグサグサと深く刺さるのが節理なのです。

引退の計画もそろそろクライマックスに近づきつつあり、あ〜だこ〜だ偉そうな事を言っていたクセに、実は引っ込む時は如何にも格好悪く恥ずかしく情けない最後なのです (好きなだけ笑って下さいませ)(笑) 負け組が辿るべき道はこういう最後なのでしょう・・(涙)

さて、このブログ最後に載せたオーバーホール後の実写の如く、本来のこのモデルの写りに 戻ってこれで一安心です!(笑)

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はC.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。冒頭解説のとおり何となく「???」だった写りもオーバーホールが終わればこれこそがこのモデルの写り具合と至極納得の描写性に至りました
・・素晴らしいです!(涙)

しかしそうは言ってもこの鏡胴のコンパクトさに合わせてマウント直前に位置しているプリセット絞り環と絞り環の操作性はどうにも褒めようがなくて(笑)、ハッキリ言って使いにくいったらありゃしません。

仕方ないので当方はいつも「プリセット絞り (銀色) と絞り環 (黒色)」の2つを一緒に掴んだ ままクリック感を感じつつ設定絞り値を決めるか、或いは面倒なので一番最初に最小絞り値「f22」までプリセット絞り環をセットしてしまってからテキト〜にボケ味を見て撮影して
います (つまり撮影時操作しているのは黒色の絞り環を回しているだけでどの絞り値で撮れているのかは不明なまま)。

その意味でコンパクトなのも考えようと言う話でこのモデルの操作性の良さはそれほど期待 しないほうが良いと思います。

・・但し距離環を回すトルクだけは軽めに仕上げてあります。

プリセット絞り環側のクリック感も軽めに仕上げていますが、残念ながら設計上の構造から 本格的に軽くできないので仕方ありません。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

但し後玉だけは経年相応の拭きキズが僅かに多めなのとプラスして「カビ除去痕に伴う極薄いクモリが残っている」ので、それはコーティング層の経年劣化とはまた違う為に別枠として 明記しています (写真には影響しないレベル)。

逆に言うなら当方の今までのポリシ〜からして例えオーバーホール後でもその仕上がり (トルクや操作性など) 或いは光学系が酷い場合など、大凡齟齬が酷く残る場合は「100円スタートのオークション形式」でお好きな価格でどうぞと処分しているので、そこまで酷くなければ通常の即決価格になります。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

本当は光学系第1群 (前玉) も経年相応に拭きキズやカビ除去痕が残りますが極薄いクモリは附随していません。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無ですが、前述のとおり後玉表面側 (露出側) だけは経年相応な微細な拭きキズと極薄いクモリが一部に伴うカビ除去痕が多めです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大22mm長数本あり)
(特に後玉のほうが多めです)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に点状カビ除去痕複数に残っています)
(特に後群側中央に泡状カビ除去痕2点あります)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
(前後玉に微細な点状のカビ除去痕が複数あり)
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環や絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正10角形を維持」したまま閉じていきます。

当初バラした直後はポロポロッと1枚の絞り羽根から表裏にプレッシングされているべき「キー」が外れて落下したので、過去メンテナンス時の酷さが伺えます (何故なら単に脱落したその穴に填め込んだだけで固定すらしていないから)。

・・こういう整備を平気で公然と処置するので本当にタチが悪いです

また当初バラす前の時点で完全開放時に「絞り羽根が内側に僅かに閉じすぎ」だったので簡易検査具で調べたところ諸元値「f2.0」よりもどちらかと言うと「f2.8」寄りに近寄った印象だったので絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) を適正値に戻して組み上げてあります。

上の写真が適切な状態での最小絞り値「f22」閉じ具合になります。また表裏で「キー」が脱落していた絞り羽根1枚は手持ちの同型ジャンク品から正常な絞り羽根を転用しました。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正金属製被せ式前キャップ (中古品)

当初バラす前は距離環を回すとツルツルした印象のトルク感だったので (粘性が高いタイプの潤滑油が塗られていたから) 当方では敢えて抵抗/負荷/摩擦を感じるいつもと同じトルク感に変更しています (つまり擦れ感があります)。

当方のオールドレンズする上での嗜好としてツルツルと無機質なトルク感は動画撮影時にはメリットがあるかも知れませんが、オールドレンズとしての使用感で捉えるなら多少の擦れ感を感じたほうが「ピント合わせしている感が増す」との感覚的な話しから敢えてそのように仕上げています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。絞り羽根がほぼ閉じきっているので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。