◎ TAMRON (タムロン) SP 24mm/f2.5 (01BB)《後期型》(AD2)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
TAMRON製超広角レンズ・・・・、
SP 24mm/f2.5《01BB》(AD2)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で僅か3本目にあたりますが、前回の扱いが2017年以来なので5年も経ってしまいました。何しろ光学系に実装の光学硝子レンズが多くて小さいので面倒くさいのと合わせて、バラすのはともかく組み上げていく時の微調整が相当大変なので実は普段は敬遠しているモデルです。

従っておそらく引退前の扱いとして今回が最後になると思われるので、超広角レンズ域がお好きな方や特にTAMRONレンズの発色性がお好みの方は是非ともご検討下さいませ。

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今回扱う焦点域:24mmの超広角レンズはネット上の紹介サイトでは意外にもあまり語られていませんが、実は先行して1976年に欧米向け輸出専用機として登場した「BBAR MULTI C. tamron 24mm/f2.5《CW-24》(AD1)」がありました。

このモデルに採用されていた「ADAPTALL (1)」は初代マウント規格で、TTL開放測光に対応したバヨネットマウント規格で1973年から様々なオールドレンズに採用し1979年まで製産が続いたようです。

後の1979年になると初代版マウント規格の改良版として「ADAPTALL2」が登場し2006年に順次生産打ち切りを発表したようです。今回扱ったモデル「後期型」にあたる「01BB」は同様1989年に発売され2001年に製造終了したようですからマニュアルフォーカスのオールドレンズと言えども相応に近年まで生産され続けてきたとも受け取れます。

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

1976年発売欧米向け輸出専用機

型番:BBAR MULTI C. tamron 24mm/f2.5 CW-24
マウント規格:ADAPTALL (1)
光学系:9群10枚レトロフォーカス型
最短撮影距離:25cm
A/M切替スイッチ:装備

前期型1979年発売

型番:SP 24mm/f2.5 01B
マウント規格:ADAPTALL2
光学系:9群10枚レトロフォーカス型
最短撮影距離:25cm
A/M切替スイッチ:なし

後期型1989年発売

型番:SP 24mm/f2.5 01BB
マウント規格:ADAPTALL2
光学系:9群10枚レトロフォーカス型再設計
最短撮影距離:25cm
A/M切替スイッチ:なし

↑上図はTAMRONが掲示している仕様のページです。

ちなみに欧米輸出専用機モデルのモデル銘にも含まれる「BBAR (Broad Band Anti-Reflection)」の略で和訳するなら「広帯域反射防止」の意になるマルチコーティングを現す ようです。

その後もマルチコーティング化されたモデルとして「01B01BB」と続きますが、実は前玉側方向から光に翳して反射させると「明確にグリーン色の光彩を強く放つ」のは当初の 欧米輸出専用機「CW−24」と今回扱う「01BB」で、どちらかと言うと「前期型」たる「01B」はグリーン色光彩よりもブル〜系のほうが強めに光ります。

そもそもTAMRONはwikiによると工業用プリズム原器やレンズ用原器を開発し生産していると言うので、特に光学技術に関し決して大手光学メーカーにも劣らない素晴らしい技術を有する光学メーカーと認識できます。

例えばカメラボディ側で言えばマイクロフォーサーズ陣営やSONYのα陣営など、概ねアンバーに振れる発色性を主体にして採り入れている光学メーカーですが、その中にあっておそらくは最もアンバーに偏重を大きく寄らせた発色性を採っていると今ドキのデジタルなレンズ群を 見ていても印象を受けますから、ある意味ちゃんと差別化できておりさすがです!

そのクセ、以下の実写をチェックすると一目瞭然ですが決して植物や人肌などはコントラストが高めに現れずにナチュラル派的な指向さえ受ける程に自然に表現できているのが素晴らしい限りです!(驚)

従ってこれはこれで発色性の好みとして支持層がいまだに顕在するのも納得できます。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から順にシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変遷していく様をピックアップしています。確かに超広角レンズ域なので最短撮影距離が25cmと寄れる仕様なのが理解できますが、例えそうだとしても光学系に9群10枚もの光学硝子レンズを詰め込んでこんだけのキレイな輪郭を維持できるシャボン玉ボケを表出できてしまう事にオドロキを感じます。最後の右端はやがて角張った正五角形のボケへと写っていくのが分かります。

二段目
さらにボケの破綻が進むと収差ボケの影響を受けて背景ボケが乱れて粗めに写ります。それでも背景との距離を構築して配慮すれば相応に溶けていく写真も残せるのでなかなかの写真スキルが問われそうです。

三段目
何と言ってもやはりこの段の実写こそがこのモデルの最大の魅力です。84度で写し込んで しまうのはもちろん、それをこれだけ雄大に (歪みの違和感を残さずに) 表現できるところが このモデルのなかなか侮れない要素の一つです。左端の相応にピーカン撮影に至るであろう 景色でもこれだけ写し込んでしまいますし、2枚目の夜景で稲妻を撮っていながら目前のサポテンに施した演出の灯りまで残しつつも実はその背景に薄らと写る周囲の地面の感じまで捉えている「ダイナミックレンジの広さ」もオドロキです。

特に明暗部の中での陰影の表現性に、当然ながら黒潰れの傾向を認めつつもギリギリまで耐え凌いでいる感が好印象に感じられます。波紋を広げるリアル感も相当高いレベルに写っていると当方には頷けます。

四段目
この段は実際にアンバーに強く振っている発色性がどのような色付きを示すのかピックアップしています。すると最初に指摘できるのが「赤色表現の素晴らしさ」ですが、何よりも2枚目のように「色飽和ギリギリでも耐え凌いでいる」写り具合に唸ってしまいます。何故ならちゃんと花弁の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さがそんな中でも視認できるからです。素晴らしい!

五段目
市場価格はまるで二束三文なイメージですが、当時のおーるとして捉えるなら十分なディストーション (歪み制御) を誇ると思います。近距離なら十分なシンメトリーを発揮できて、距離が離れても均整を感じるピラミッド型に集束でき、しかもダイナミックレンジの広さとピント面の鋭さが相まりこれだけのリアル感を示せるのはたいしたものです。逆光耐性も相応に頑張っているほうではないでしょうか。

光学系は9群10枚と言う大変贅沢な光学硝子レンズを配したレトロフォーカス型構成です。右図はその中で初代の欧米向け輸出モデルと「前期型」たる「01B」の光学系構成図で、過去に扱った際にオーバーホールの中で光学系の清掃時に各群を逐一当方の手でデジタルノギスを使い計測したトレース図です。

特に第3群〜第9群までの曲率が異なるのを掴んでいます。

初代の欧米向け輸出専用機と「前期型」たる「01B」が同一の光学設計を採りつつも蒸着するコーティング層の成分配合を変更してきていた「いわゆるコーティングに頼った設計」だったのに対し、今回 扱った「後期型」たる「01BB」では明確に光学系が再設計されて特に第3群〜第9群まで曲率が大きく変化しています。

右図は今回のオーバーホールの際に光学系の清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って各群の光学硝子レンズを逐一計測したトレース図です。

各光学硝子レンズの凹凸までキッチリ計測してあるのでビミョ〜な違いが明確に判明するためモデルバリエーション内での光学設計の相違点を実測値から探し出す事が叶っています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。イザッバラして しまえば内部構造としては理に適ったこの当時のオールドレンズに適う構造化なのが理解できますが、ところが然し、完全解体するまでが大変でそう簡単にはバラせません。

今回の個体はヘリコイドのオスメスネジ山に「白色系グリース」が塗布され、且つ内部の締付ネジの類はありとあらゆる総てに「青色の固着剤」を塗りまくっているので、シロウト整備でこのモデルをバラす事も組み上げていく事も難しいので「プロの仕業」とみています。

ヘリコイドグリースの液化がそれほどまだ進行していないので (然し液化自体は始まっている) 過去メンテナンスから数年内と捉えられます。

それこそ全く必要ない箇所にまで「青色の固着剤」を塗りまくっているので(笑)、おおよそ 何処の整備会社なのかは掴んでいます (意外にも大手です)。例えばCanonやNikonの認定整備会社になっているところではこのように片っ端に「青色の固着剤」を塗りまくったりしていないのを確認済なので(笑)、やはり光学メーカーが関わると基礎認識が全く別モノですね(笑)

なお当初バラす前段階での実写チェックでこのモデルにしては僅かに曖昧な印象のピント面のピークを迎えたので、光学系内のシム環の入り具合、或いは締付環など注意深く調べつつバラしました (原因は判明済)。

↑絞りユニットや光学系前後群が格納される鏡筒です。もちろん光学硝子レンズを格納する特に「前群側の格納筒 (第1群/前玉〜第5群まで格納)」も全く上の鏡筒と同一の「微細な凹凸がある梨地メッキ加工」が施され容易に経年劣化に伴う揮発油成分が流入しないようちゃんと配慮された設計を採っているのが分かります。

ところが上の写真鏡筒の中央後側に位置する「後群側格納筒」の内壁部分がシルバー色で要はメッキ加工されていないのが明確です (ちゃんと見えて写っている)。

このシルバーな内壁になる光学系後群側格納筒には「第6群第9群」までの4枚の光学硝子が格納されます。前群側の5枚の光学硝子格納位置には上の鏡筒と全く同一の「微細な凹凸がある梨地メッキ加工」が施されていたのに、どうして後群側にはその処置が施されなかったのでしょうか?

その理由はたったの一つ・・この後群側はマウント内部に収まらずに外側に露出してくるので「ヘリコイドグリースなどからの経年揮発油成分の侵入が想定されないレベルに留まるから」と指摘できます (実際この後群側格納筒の根元部分から露出している/後玉側方向からの写真を見れば一目瞭然)。

ところが今回の個体をバラしたところこの後群側格納筒の内壁 (アルミ合金材削り出し) は相応に経年劣化が進みアルミ合金材の酸化/腐食/錆びが生じて抵抗/負荷/摩擦を増大させていた ようです。

おそらく過去メンテナンス時にこの内壁部分を一切研磨せずに光学系後群側光学硝子レンズを格納したが為に後群側に配置される「シム環」が適切な位置でセットできずに極僅か (おそらく0.02mm以内か?) に斜めって入っていたようです。

前述のとおり当初バラす前の実写チェック時点でピントのピークの印象画極僅かに甘めだったので、注意深く光学系を解体していくと前群側は確実に適切な位置で格納されていたものの
(締付環の反射防止黒色塗料着色もなし) この後群側格納筒の内壁に残る「酸化/腐食/錆びの 痕跡をグルッと内周でチェックすると直径上でその痕の筋が残っている高さが僅かに異なっていた」のを発見して (実際に高さの相違をデジタルノギスで計測して) 確信を得てその原因と 特定しました。

後群側なので前群側で入射光が処理されてきた分収束位置なので致命的です。

また前述のとおり至る箇所に「青色の固着剤」を塗りまくっているので、その一部が乾く前に移動したのか僅かな影響を来していました。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑こんな感じで5枚の絞り羽根が組み込まれて絞りユニットにセットされます。絞り羽根にプレッシングされている「位置決めキー」が5箇所で刺さり露出しているのが上の写真でも確認できます。従ってこの写真で表側に写っているのは「位置決め環」なのですが、それを締め付け固定する締付ネジ3本がご覧のとおりの真鍮 (黄銅) 製です。

真鍮 (黄銅) 製なので当然ながら磁性反応せずドライバーなどにくっつきません。実はこの「位置決め環」を固定する位置は極僅かなマチが備わり「セットされる絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量)」の微調整機能として装備しています。

それを過去メンテナンス時の整備者はこの締付ネジにタップリと「青色の固着剤」を塗りまくってくれたので、その一部がス〜ッと流れたのか移動したのか不明ですが乾く前に鏡筒に入れ込んでしまったのだと考えます。

その多量に塗られた「青色の固着剤」の一部が筋状に「位置決めキー」1個に及んでしまい摩擦になっていたようです。当初バラしている最中にたまたま絞り羽根が閉じたのですが、その時に見ていて「何だか絞り羽根が1枚だけ遅れて動いている?」ように見えたのです。

そこで鏡筒からこの絞りユニットを取り外す際にその遅れて動いたように見えた絞り羽根の位置を記憶していてひっくり返したら「青色の固着剤」の筋がず〜ッと伸びていたのを発見した次第です。

その状態を撮影すれば良かったものをスッカリ忘れてしまいました。残念。

もちろん当方のオーバーホールでは必要な箇所しか「青色の固着剤」を塗りまくったりしないので上の写真のとおり真鍮 (黄銅) 製締付ネジも固着剤を塗りません。そもそも金属加工会社の社長さんを取材した際にご指摘頂いた内容で、締付ネジを固着する目的なら「ネジ部に塗るのが普通」と伺ったので、もしも仮に締め付け位置を経年でズラしたくないと考え固着剤を塗るならもっと堅い固着剤にしないと意味がありません。

逆に指摘するなら市販されているネジロックたる「青色の固着剤」を位置ズレ防止に塗ったところでパリンと剥がれてズレてしまいますから何の意味も成していません(笑)

そういう事柄も理解せずに「青色の固着剤」を塗りまくっているので笑ってしまうのです。

そしてもっと言うならこの絞りユニットを格納セットするのは最後になるので (このオーバーホール工程ではワザと解説の為に先に撮っている) 実際に実写しつつ各絞り値での絞り幅を 検査して合わせなければ固着できないハズなのです。その点も不明瞭ですね。

↑完成した絞りユニットをひっくり返して前玉側方向から撮影しています。これだけの構成
パーツが絞りユニットに組み込まれています。

すると「制御環」の途中に「なだらかなカーブ」が備わり、その勾配/坂を登りつめた箇所が「開放側」を指し、一方麓部分が「最小絞り値側」なのをグリーンの矢印で示しています。

つまりこの「制御環」が絞り環と連携して動く事で「設定絞り値が伝達されて具体的に絞り 羽根が閉じる角度が決まっている」原理です。

要は「位置決め環に刺さった位置決めキー軸にして開閉環側の移動量が決まるのでその角度 まで絞り羽根が閉じるから設定絞り値で撮影できる」仕組みです(笑)

するとその瞬時に設定絞り値まで絞り羽根が閉じる時の「そのチカラって何処から来てるの?」となれば (そう言う疑念が湧かなければダメですが)(笑)、そこにいつも当ブログでも解説しているように「スプリングと捻りバネの2つの異なる種別の引張バネ類が介在する」と分かり、しかも今回のこのモデルでは「こんなに小っちゃな絞りユニットの中でスプリングと捻りバネが働いている」となればそのチカラが経年劣化で弱ったら「製品寿命」に至ると容易に 妄想できます(怖)

実際上の写真解説のとおり「開閉アーム (ベース)」が操作されると (ブルーの矢印①) そのチカラが伝達されて「なだらかなカーブに金属棒が突き当たる」のでその勾配を基に設定絞り値が決まる次第です (ブルーの矢印②)。

このように多くのオールドレンズで「設定絞り値の決定」と言う要素はもちろん当然ながら「絞り環を回して設定絞り値を撮影者が自分で決めている」ワケですが、その原理とは「絞り羽根が閉じる際の角度詰まるところ角度を変えて動く移動量で決まる」とも言い替えられ、多くの場合で「なだらかなカーブが介在しその麓と頂上で勾配の差を利用して絞り羽根が閉じる移動量を決めている」と分かりますね。

だからこそ一番最初で指摘したように「1枚の絞り羽根だけ閉じる量が違うのではなく動きが一瞬遅い」となればこの絞りユニットの何処かにその因果関係があると見るべきなのです。

このような「原理原則」こそがオールドレンズをオーバーホール/修理する際にその因果関係を追求して改善していく道しるべの一つにも成り得るワケですね。逆に言えば「原理原則」に 則るなら何かのパーツを削ったり曲げたりして「ごまかしの整備」をせずとも当初製産時点に限りなく近づけてあげるだけでその不具合が解消できるのかも知れないのです。

↑こんな感じで完成した絞りユニットが鏡筒最深部に格納されますが、ご覧のようにだいぶ前で解説した「位置決め環側の真鍮 (黄銅) 製締付ネジ」はこの裏側ですから、先に絞り羽根が 閉じる移動量をどうして決められるのか「???」なのがご理解頂けると思います。何故ならまだ光学系前後群を格納して実写する段階ではないのに決められるハズがないのです(笑)

ちなみに上のほうの棒状アーム「制御アーム」が絞り環と連結し、下側の板状パーツ「開閉 レバー」がマウント面から飛び出ている「絞り連動の車輪」の動きに従い操作されて瞬時に 設定絞り値まで絞り羽根が閉じるシステムです。

するとここでも一つ見えてこないと整備者としての資質になりませんが(笑)、この「開閉レバーの長さ鏡筒の繰り出し/収納量」と言う「原理原則」になり、当然ながらマウント面から 飛び出ている「絞り連動の車輪」からの伝達されるチカラがここまで到達しなければ絞り羽根の閉じ具合が足りなくなる話しなのも納得できますね(笑)

↑マウント部や距離環が組み付けられる基台です。

↑アルミ合金材削り出しのヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

すると基台には「制限壁」が備わりそこに距離環の「制限キー」と言うパーツ (赤色矢印) が カチンカチンと突き当たるので無限遠位置と最短撮影距離の位置の両方で突き当て停止する
仕組みです (グリーンの矢印)。

↑ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に 無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

するとグリーンの矢印で解説しているとおりそれぞれ無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で「制限壁」が備わり、ここに距離環がカチンと突き当たって停止する仕組みです。

↑距離環を組み込んで透明窓が備わる指標値環もセットします。

↑鏡胴をひっくり返して鋼球ボール+スプリングを組み込んでから絞り環をセットしたところです。

↑光学系前後群を組み込んで完成した鏡筒を入れ込み、この時に既に「制御アーム」と「開閉レバー」がそれぞれ絞り環とマウント面から飛び出ている「絞り連動の車輪」と連携し終わっています。

当然ながら絞り環との連動も絞り連動の車輪との連係も全て「微調整機能を有する」のでこの時点で確実に仕上げておきます。

↑マウント部のバヨネット爪を締め付け固定する前にメクラを組み込んでおきますが、やはり「マットな微細な凹凸を伴う梨地仕上げのメッキ加工」が施され、経年の揮発油成分の流入を設計者自身からして嫌っているのが明白です。

実際はこの後に光学系が実装された事でようやく「絞り羽根が閉じる角度が微調整できる」ので実写して簡易検査具でチェック後、ようやく全ての組み上げが終了します。無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。何しろ微調整機能が幾つも備わるので分に組み上げていくよりもその微調整で何回もバラしては組み戻していく作業に追われハッキリ言って、
チョ〜面倒くさいモデルです。

そんなワケで普段敬遠していたので今回の作業がこのモデルでは最後になると思います。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

多少前後玉にカビ除去痕やコーティングハガレが残りますが光学系内の透明度を期待して調達したのでその目算どおりでラッキ〜でした。第4群に位置する貼り合わせレンズのバルサム 切れが意外と多いので易いからと安易に手に入れるとコントラスト低下した写真ばかりでガックリ来ます。また前述のように光学系の格納レベルも適切では無い個体が多いようでネットでチェックできる実写を見ているとチラホラとフリンジの量が多かったり収差の影響に偏りが あったりとなかなか手放しで安心できません。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れるエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

前玉の外周に幾つか菌糸状のカビ除去痕が残りますが、その一つが盛大にコーティング層ハガレを招き (既に過去メンテナンス時に剥がれていたようです/当初調達入手時から剥がれていた) 見る角度によりご覧のように明確なキズ様に視認できますが、このまま光学系内を透過してチェックするとキズが付いていないので視認できません (つまりコーティング層ハガレとの判定に至る)。

・・従って撮影する写真には一切影響しません。

逆に指摘するなら例えば円形ボケ/玉ボケの内側に光学硝子レンズに物理的に削れたキズはポツポツと明確に写り込みますが、コーティング層のハガレはキズではないので現れません (視認できない/光を透過するから/キズなら透過できないのでその影が必ず写り込む)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

光学系内にはカビ除去痕として他にも非常に微細な点状で残っているのでパッと見で「微細な塵/」に見えますが点状のカビ除去痕です。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。何しろコーティング層経年劣化によるクモリが多いモデルなので予想が的中して状態の良い光学系を手に入れられ本当にラッキ〜でした。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大8mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に点状カビ除去痕複数に残っています)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
(前後玉に微細な点状のカビ除去痕が複数あり)
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前玉外周に菌糸状のカビ除去痕が数箇所残っており、そのうちの一つにコーティング層侵食したコーティングハガレがあります。パッと見では少々目立つキズのように見えますがコーティング層が剥がれているだけなので手なキズではありません(透過視認カルト見えないから)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根間キレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。もちろん前述した「1枚の絞り羽根の動きが遅い違和感」も解消してあるので瞬時に駆動します。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。
・AD2マウント部のマウントロックピン機構が経年劣化で相当弱っています。できれば変換アダプタの着脱をせずにこのままご使用頂くのが安心です。
(ムリに回すと折れてロック不能に陥ります)
附属K&F CONCEPT製AD2→M42変換アダプタは装着時にバヨネット爪の噛み合わせに少々コツが必要です。噛み合わせ確認後回してロックして下さい。また製品は生産ロットの問題なのか装着時に90度ズレた位置でM42ネジ込みが停止するため当方にて真上に来るよう調整を施してあります。同様お手持ちのM42マウントアダプタに装着時もキツくネジ込むとロックピンが破損しそうですから、外す際も面倒でも変換アダプタを指で保持しながらマウントアダプタを外す方向に回して外してください。キツくネジ込んだり指で変換アダプタを保持せずに回したりするとロックピン破断の懸念があります(事前告知済なのでクレーム対象としません)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『SP 24mm/f2.5《01BB》(AD2)』
AD2→M42変換アダプタ (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正樹脂製スナップ式前キャップ (中古品)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑ADAPTALL2とAD2→M42変換アダプタとはご覧のようにリリースマーカー位置を合わせてバヨネット爪を噛み合わせますが (グリーンの矢印) 変換アダプタ側の製品仕様なのか極僅かにバヨネット爪の噛み合わせ位置が簡単に合いません。ちゃんと3箇所爪が入ったのを確認してから締め付けて下さいませ。またその締め付けの際、或いは取り外す際もできるだけオールドレンズ側マウント部をちゃんと指で保持したまま回して下さいませ。

そうしないとロックピンの軸がプラスチック製で弱っていて折れそうなのでご留意下さいませ。

このモデルのピント面はそのピークがアッと言う間なので距離環を回すトルクを軽く微動できるよう仕上げてあります。またピント面の鋭さは当初バラす前の実写チェック時よりも簡易検査具を使って確実に鋭く戻っています。

なお附属のAD2→M42変換アダプタによりマウント面から飛び出ている絞り連動の車輪は最後まで押し込まれた状態を維持し続けますから、この個体での絞り環操作は「手動絞り方式」になりますが、もしもAD2→M42変換アダプタを外してAD2方式のマウントに付け替えた場合はちゃんと正しく絞り連動の車輪が機能して絞り羽根が正常開閉します。

↑当レンズによる最短撮影距離25cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっていますがまだまだ「回折現象」の影響を最小限に留め凌いでいます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。