◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) FUJINON 50mm/f1.4《初期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
FUJICA製標準レンズ・・・・、
FUJINON 50mm/f1.4《初期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で当時のFUJICA製標準レンズ「50mm/f1.4」の括りで捉えると累計で23本目にあたりますが今回扱った個体「初期型」だけでカウントすると僅か6本目です。

そもそもこのモデルバリエーション「初期型後期型」の括りで10年間で23本しか扱っていない時点で「普段敬遠していたモデル」だった事がバレバレです (オールドレンズの総扱い 本数は優に3,000本を超えている)(笑)

どうして敬遠しているのかと言えば「完全解体できないから」と言えます。固着が酷すぎて 光学系前群の光学硝子レンズ格納筒を回して外す事ができません。どう言うワケか「初期型後期型」の別に関係なく78%の確率でバラせないのです (当方データベース記録から)。

光学系前群を外せなければ絞りユニットにアクセスできず特殊な方法で絞り羽根の油染みなど洗浄するハメに陥ります。ましてや光学系前群格納筒の中に配置されているのは第1群 (前玉)
〜第3群までの3枚なので光学系の清掃にも大きく影響を来します。

そんな理由で今まで敬遠していましたが実は1年半前に当方の設備を一部更新したので扱える (完全解体できる) 可能性が上がったにもかかわらずスッカリ忘却の彼方に追いやられていた モデルでもあります(笑)

以下にモデルバリエーションなど解説しますが特に今回この「初期型」を扱った最大の理由は「今ドキのインスタ映えに映えるモデルの一つ」だからです。もっと適確に指摘するならこのモデルの後に登場したマルチコーティング化された「前期型後期型」たる「EBC FUJINONシリーズ」の描写性とは「対極に位置する写り」を期待できるとも言い替えられそうです。

EBC FUJINONシリーズ」がコントラストを高めに採ってきて賑やかで鮮やかな発色性に 合わせて鋭いピント面の解像度を狙った光学設計に方向転換したのに対し、この「初期型」は明らかに栄えあるFUJINONシリーズの中にあって「代表的なオールドレンズライクな写り」と当方では評価しています。

もちろんこの「初期型」もピント面の解像度の高さは相当なレベルですし何よりもピント面のエッジが太めに現れる傾向があり、それでいて画全体に繊細感まで傾倒させない独特な優しい雰囲気を醸し出している特徴にいまだに魅了されます。画全体的な繊細感とピント面のインパクトとのバランスを上手くまとめ上げてしまったCarl Zeiss製標準レンズとはまた異なる指向性を感じられるオールドレンズとして当方には好きな写りのタイプですね(笑)

来年夏の引退/撤退を見据えて478銘柄もある今までに扱ったオールドレンズの中から 何をチョイスするか楽しみながらあ〜だこ〜だ考えていますがハッと思い出して今回扱う決心に至りました(笑) 然し今回扱うにもバラす作業はせっかく設備を更新したのにやはり一筋縄にはいかず何しろ光学硝子レンズ格納筒のネジ込み部分全周に渡り固着剤が流し込まれているので先ず以て人力では本当にムリです(涙)

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↑当時富士フイルムが「M42マウント規格」を採用した一眼レフ (フィルム) カメラを初めて 発売したのが1970年で「ST701」からスタートしますが (上写真左)、1972年の「ST801」発売に合わせ「M42マウント規格を踏襲しつつも開放測光機能を付加した独自マウント規格」を採った為に従来広く巷で「Pマウント」と呼称されていた「PRAKTICA (プラクチカ) ネジ 込み式マウント規格 (つまりM42マウント規格のこと)」或いは単に当時の旭光学工業製の「PENTAXネジ込み式マウント規格」といずれも頭文字「」をとって呼んでいたところに その完全互換性から逸脱しています。逆に言うなら既に1970年時点で世界規模で「M42マウント規格」が陳腐化していたとも指摘でき、日本でも「バヨネットマウント規格への移行期」に瀕していた時期とも受け取れます。

バヨネットマウント
レンズ側マウント部の爪とカメラボディ側マウント部の爪が互いに噛み合いロックする方式

ちなみに当時富士フイルムは1978年発売の一眼レフ (フィルム) カメラ「ST605II」が実質的に「最後のM42マウント規格モデル」になり翌年1979年から「AXバヨネットマウント規格」へと移行しています。然し既に時遅く事業性の低下からついに1985年に戦後1947年から培ってきた一眼レフ (フィルム) カメラの開発/製産から撤退してしまいました(涙) 次に富士フイルムが光学製品の歴史に再び舞い戻りあたかもまるで降臨の如くデジカメ一眼/ミラーレス一眼たる栄光の「FUJIFILM Xシリーズ」再起を図った2011年を待つ必要がありました。そして今現在はむしろ光学製品に特化せずに世界規模で医療の分野に於いてその存在感と貢献を示す企業に生まれ変わり、本当にニッポン人としてこれほど誇り高い想いはありません (最近の有名処は新型コロナウイルス治療薬のアビガンなど)!(涙)

・・まさにフィルム印画紙の技術革新から医療まで一貫した世界への貢献に涙モノです!(涙)

それは海外の多くの国では医療の進歩と共にあからさまに「生物化学兵器」の研究も日進月歩なのであってその土壌が戦後顕在しない日本に於いてよくもここまで活躍を続けていると感慨深い想いが込み上げてくるからホロホロ来てしまいます (基本毎晩の晩酌で酔いが進むと涙もろい)(笑) その意味では医療機器で世界シェアの7割を握っているオリンパスとはまた異なる指向で是非とも世界に名だたる医薬品開発の企業として日本の医療分野の一角を担って頂き たいものです (何処ぞの不正データ云々でジェネリック医薬品に危機を及ぼしている薬事企業とは違うぞ)・・頑張れ富士フイルム!

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型:1970年発売 (ST701用)

コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:無
距離環ローレット:金属製
レンズ銘板:金属製

前期型1972年発売 (ST801用)

コーティング:マルチコーティングEBC
開放測光用の爪:
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

後期型1974年発売 (ST901用)

コーティング:マルチコーティング「EBC
開放測光用の爪:有
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

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上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端からこのモデルのシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。そもそも標準レンズなので大変美しい大きめのシャボン玉ボケを表出できる事に改めてオドロキを感じました!(驚) しかもその表出するシャボン玉ボケのエッジの細さ!(驚) 繊細で且つ真円で写し込めるその能力とはいったいどんな光学設計思想なのでしょうか?!

・・ハッキリ言って巷でシャボン玉ボケで騒ぐ旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズにまるで匹敵レベルです。

さらに2枚目の写真では人肌感の清々しさをちゃんと表現できてしまっている標準レンズだと言う点でオドロキなのです (中望遠レンズなら納得だが)。しかもその背景にシャボン玉ボケがこれだけ美しくざわめきながらも女性を惹き立たせてしまう写りに本当に溜息です (シャボン玉ボケが決して煩く感じないのが凄い)(涙)

次の3枚目ではありふれたリングボケに堕ちずにこれだけエッジ表現にインパクトを与えられるのがちょっと初めて観たような感覚です。極めつけは最後の右端で多少ハイキ〜に向けて撮っていそうながらもその割にちゃんと消えゆくシャボン玉ボケ (円形ボケ) を残しつつもピント面の鮮やかさと素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さを存分に発揮できているところにさすがと感銘を受けます。

二段目
左端から今度は円形ボケが破綻しつつも収差の影響を色濃く受けて残しつつ溶けていく様を ピックアップしています。収差の影響がそれほどつよく現れないようにも見えまだまだ探求したくなる一瞬です (おそらく撮影時はその収差の度合いが刻々と変化しているハズなのでその愉しみと言ったら本当に堪らない)。

三段目
ここがこのモデル「初期型」のまさに醍醐味の一つでこれだけライトト〜ンに触れながら確実にシッカリとその階調/グラデーションを残しているところがもぅ両手挙げ状態です!(笑)

普通陽だまりの表現性はこのように生々しく写真に残すのが難しいと思います (もっと平面的なノッペリした写りに至る)。この立体的な空気感の感覚を伴う表現性とはいったい何ぞやと 問い詰めたくなります(笑)

次の2枚目と3枚目はまさに壁面の素材感/材質感を留めた質感表現能力の高さをそのグラ デーションの中に閉じ込められている点でビックリしました(笑) そして最後の右端の写真ではやはり陽だまりと影との陰影表現に立体感を伴う点で前述の左端の写真との共通項を見出してしまいました(涙)

・・あぁ〜素晴らしい!!!(涙)

四段目
左側2枚を観るとやはりこの当時の他のオールドレンズ同様暗部のダイナミックレンジは狭くて苦手です。そしてやはり特徴的なのが次の3枚目の「紅色表現」と共に葉っぱのグリーンのコントラストがまるで自然そのままなのが素晴らしい。それは最後の右端の写真からも決してコントラストを高く振っていないのが分かります。このようなシッカリと色乗りしながらも決してそれをインパクトとして残してしまわない「ナチュラル感」の中に居るような錯覚を伴う写り方が本当に大きな魅力です。

五段目
左端写真で分かりますが相応の被写界深度が狭いです。しかし逆に指摘するなら後に登場する「EBC FUJINONシリーズ」の「まるで紙一枚の被写界深度」と言う驚異的な薄さ/狭さに比べたらまだまだ扱い易いでしょうか(笑) 逆光耐性は下手にコントラスト低下を招かずなかなか頑張っていると思います。

光学系は右図のとおり6群7枚の拡張ダブルガウス型構成です。今回のオーバーホールに際し完全解体したところで光学系の清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測したトレース図です。

すると 部分の光学硝子レンズには「酸化トリウム」を含有した
いわゆる俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」です。

光学系の第3群の無色の光学硝子レンズには「酸化トリウム」を含有していません。また第1群 (前玉) 〜第2群と第5群は共に凸メニスカスになり第6群 (後玉) は内側 (内部側) の曲率がほぼ平坦に近い両凸レンズです (平凸レンズではありません)。

実際当初バラす前の時点で既に経年に拠り「ブラウニング現象」が生じ「赤褐色化」していたので24時間のUV光の照射にて半減程度まで今回のオーバーホールでは改善させています。

 アトムレンズ (放射線レンズ)
光学硝子材に酸化トリウムを含有 (10%〜30%代) させて屈折率の向上 (20%代) を狙った光学硝子レンズ

ブラウニング現象
物質の経年変化に拠り褐色に着色し褐変 (かっぺん) する現象を指す (食品や光学硝子レンズ等)

黄変化 (おうへんか)
光学で言う処の黄変化とは光学硝子レンズの経年変化に拠る変質で褐色に色付く現象を指す

↑上の写真 (2枚) は「酸化トリウム」を含有している群だけを取り出してUV光の照射を施す前 (左写真) と照射後 (右写真) を並べています。特に左上の黒色格納筒に一体成形されているのが光学系第4群の貼り合わせレンズなので2つの光学硝子レンズが接着されている分少々色濃く変質しています。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤/バルサム剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

写真で撮ると特にUV光の照射後の写真 (右側) が無色透明に写ってしまいますが現物はとても薄い色合いで「黄変化」しているのが残っているので第1群 (前玉) 〜第6群 (後玉) まで全てを光学系内にセットすると相応に黄色っぽく見えます。また当初バラした直後 (つまりUV光照射する前の時点) 各群でその色付きの濃さが異なる理由は不明ですが、単純に光学硝子の厚みの相違なのかも知れません。

ちなみにオーバーホールが終わって仕上がった後に光学系の放射線量を計測すると前玉直前で「8.68μ㏜/h」になり後玉直下では「22.24μ㏜/h」なのでまさに「酸化トリウム含有のアトムレンズ (放射線レンズ)」なのが分かります。この数値を外部被曝量として脅威に感じるか否かは自由ですが(笑)、単位がマイクロシーベルト (μ㏜/h) なのでミリシーベルト (m㏜/h) ではない分どうかなと思います。そもそも撮影時だけの話でありタダでさえ屋外に長時間居るだけでも被曝しているのを考えればどうしてそんなに大騒ぎするのかと思います(笑)

ちなみに写真撮影への影響度として考えた時にやはり前述同様「プロの写真家」が今ドキの デジカメ一眼/ミラーレス一眼で使う場合カメラボディ側のオート・ホワイト・バランス設定 (AWB設定) で適切なホワイトバランスに自動設定してしまえば色付きの影響度が適正化されるので何も心配する必要がないと案内していますが、当方は違うと考えます。

そもそもオールドレンズの光学系内に光が入射してきた時に「オールドレンズ内部でAWBに より適正化されるのではない」ことから結果的に光学硝子レンズの「黄変化」はコントラストにより強く影響が現れるためAWB設定で例えホワイトバランスが適正化されてもコントラストまで適正化されていないと考えています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。冒頭解説のとおり1年半前に設備を更新したのでようやく完全解体が適いました(涙) 特に当方のポリシ〜たる『DOH』からすれば完全解体が大前提なので「バラせるところだけバラします」という思考回路がありません(笑)

完全解体してオールドレンズ内部の経年劣化たる酸化/腐食/錆びを徹底的に排除してしまいます。すると最終的に仕上がるオールドレンズは「その内部は必要最小限のグリースしか塗布されていない状態で組み上がる」事こそがこれから先にその個体が全うするであろう製品寿命を心置きなく発揮してもらえる為の環境作りの一つでもあります(笑)

従って作業がし易くてトルク調整が容易な「白色系グリース」はこれらオールドレンズが製産されていた当時にはおそらく存在し得なかっただろうとの考察から「まさに製産時点に使われていたであろう黄褐色系グリースにこだわって塗布する」からこそこれから先の再び訪れる 経年劣化や最悪「潤滑油」が注入されようともヘリコイドの固着に至らずにできるだけ製品 寿命を延ばす『延命処置の一環』とも言い替えられます。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイドオス側) です。鏡筒の大きさが 写真ではピンと来ませんが例えば光学系第1群 (前玉) の外径サイズは「⌀ 37.97mm」と 大口径でありさらに第6群 (後玉) でさえ「⌀ 32.47mm」なので立派な大きさです(笑)

絞り環を回すとことで「制御環」が連動して回り絞り羽根の開閉角度が決まるので、マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれることで絞り羽根の「開閉キー」が瞬時に移動して「位置決めキーを軸にして絞り羽根の角度が変化する (つまり開閉する)」のが絞り羽根開閉の原理です。

また絞り羽根の開閉制御を司る「チカラの伝達」手法として「アーム」が用意されており、
開閉アーム/制御アーム」の2種類により具体的な絞り羽根開閉動作を実現しています。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

開閉アーム
マウント面絞り連動ピン (レバー) が押し込まれると連動して動き勢いよく絞り羽根を開閉する

制御アーム
絞り環と連係して設定絞り値 (絞り羽根の開閉角度) を絞りユニットに伝達する役目のアーム

↑パーツが黒っぽくて材質感など詳細がハッキリしないのでワザと故意に露出オーバー気味に 撮影しています。

《絞りユニットの構成パーツ》
絞りユニットの格納ケース
位置決め環
開閉環
制御環

・・とこの4つの構成パーツに前出の絞り羽根6枚が仕込まれて絞りユニットが完成します。すると上の写真で特にの絞りユニット格納ケースが内外で平滑仕上げを採っているのが分かります。その一方で残りののパーツには全面に渡り「マットな梨地仕上げメッキ加工」が施されているのでとても微細な凹凸の表層面です。

・・何を言いたいのか???

絞りユニットの内部に経年の揮発油成分が侵入する事を嫌っている設計がちゃんと事前に施されていると分かります。それは当然ながら「絞り羽根の油染み防御策の一つ」ですね(笑)

しかしそうは言ってもご覧のとおり絞りユニットの格納ケースは決して密封できるような構造ではないので隙間だらけである分どうしても経年の揮発油成分侵入に耐性が低いです。するとではどうして金属表層面に微細な凹凸を施した「梨地仕上げのメッキ加工を施す」のかその 理由は「揮発油成分の流動性をくい止める」との推測が成り立ちそうです。

つまりここがポイントで「決して製産時点の内部状況の必要性から微細な凹凸の梨地仕上げ メッキ加工を施していない」事であり、それは何年かの後に経年で生じてしまったオールド レンズ内部の揮発油成分に対する事前対策と考えられます。

・・だからこそ当方のポリシ〜『DOH』にこだわり徹底的に経年の酸化/腐食/錆びを排除する事で内部の構成パーツを本来の製産時点まで可能な限り戻し、且つオールドレンズ内部に塗布するグリースを必要最低限に留める方策こそが「設計者の意図に倣っている」次第です。

その意味で何でもかんでもグリースを塗ったくって平滑性を保っているつもりになっている まるで「整備者の自己満足大会の如くグリースに頼った整備」がそもそも製産時点の大前提 から逸脱してしまくっている事にそろそろ多くの整備者が気づくべきですね(笑)

↑絞りユニットが完成したところです。

↑完成した絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。

↑この状態で今度はひっくり返して後玉側の方向から裏側を撮影しました。すると鏡筒内部の絞りユニットから飛び出てきている2本の金属製アーム (棒状) がありそれぞれ「開閉アーム/制御アーム」に分かれます (赤色矢印)。

また鏡筒外周はヘリコイド (オス側) のネジ山が切削され、且つその途中両サイドに「直進キーガイド」と言う「直進キー」が刺さって上下動する「/ガイド」が備わっています。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが内部に配置される各構成パーツは既に外してあり当方の手による「磨き研磨」が既に処置済です。

するとこのマウント部内部にまで過去メンテナンス時にビッチリと「白色系グリース」が塗られていましたが(笑)、その影響から経年で酸化/腐食/錆びが進行していました。

するとよくお問い合わせ頂きますが「どうして油成分であるハズの揮発油成分が原因で経年の酸化/腐食/錆びが起きるのか?」或いは「揮発油成分は水分ではない!」などと当方をまるで貶めるが如く指摘を受けますが(笑)、揮発油成分が直接金属材の酸化/腐食/錆びを促しているもっと端的に言うなら揮発油成分のせいで錆びているワケではありませんね(笑)

そうではなくて「揮発油成分の界面原理から空気中の水分が引き寄せ留められる為に金属材の酸化/腐食/錆びが促される」ワケで、仮にもしもオールドレンズが真空状態に長年保管され 続けているなら金属材の酸化/腐食/錆びの程度は相当低くなると思います (決してゼロには ならない)。

従って上の写真で言えば各構成パーツがダイレクトに接触していた箇所の酸化/腐食/錆びは レベルが低いものの赤色矢印で指し示した基台と接触する箇所の剥き出しのアルミ合金材部分は相当にサビが出ていました。

どうしてその箇所だけメッキ加工が施されていないのか? どうして基台との接触箇所なのに平滑処理が必要なのか?・・が見えてこないとこのように過去メンテナンス時の間違った整備が影響してオールドレンズの製品寿命はどんどん短くなっていきます(泣)

・・いったい何のために整備しているのか?(笑)

↑取り外していた各構成パーツもやはり「磨き研磨」を施してからセットします。当初バラした直後はそれぞれの構成パーツに過去メンテナンス時に塗られた「白色系グリース」と共に揮発油成分がヒタヒタと広がり当然ながら錆びも出ていました。

今回の整備では制御爪の環/リング/輪っかの箇所しかグリースを塗りません。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) そのチカラが伝わり絞りユニットから飛び出ている開閉アームをガシッと掴んで離さない「開閉爪」が その絞り連動ピンが押し込まれた時のチカラの大きさの分だけ移動します (ブルーの矢印②)。

↑完成したマウント部をひっくり返してマウント面を見せて撮影しています。

↑ベアリングを仕込んでから絞り環を組み込み「飾り環」をネジ込んで絞り環を固定します。
(赤色矢印)

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑黄鋼製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後 までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ちなみに上の写真のヘリコイド (オスメス) にはもう既に「黄褐色系グリース」が塗布済です(笑) ほぼ写真で見る限り塗布したグリースが分からないレベルだと思いますが そんな量で十分なのです。ところがたいていの場合で過去メンテナンス時に塗布されているグリースの量は如何にも塗ったぞみたいに相当な多さで塗りつけてありますね(笑)

・・その多くが経年の揮発油成分を生ずる因果関係です(笑)

↑ここで再びひっくり返して裏側を撮影しました。ちゃんと絞りユニットから飛び出てきている「開閉アーム/制御アーム」の2本の金属棒が突き出ていて、さらにヘリコイド (オスメス) の両サイドには「直進キー」と言うパーツが既にそのガイドに刺さっています。

過去メンテナンス時にはほぼ間違いなく100%に近い率でこの「直進キーガイド」にまで グリースが塗られていますがそもそも「直進キーが接触する箇所が何処なのか?」をちゃんと認識できていないのでそれら塗られた「白色系グリース」の多くはそのまま無意味に残っています(笑)

つまり「直進キーは平面で接触しスライドしていない」のであってそれを整備者の思い込みだけで「直進キーガイドの平面部分にグリースを塗ったくっている」からこそ経年で全く使っていないグリースの状態を維持しています(笑)

すると前述したとおり絞りユニットは経年の揮発油成分の流入を極力防ぎたいが為にワザワザ「マットな梨地仕上げのメッキ加工」を施しているのにそのすぐ近くの「直進キーガイド」にタップリとグリースが残ったままと言う状況です(笑)

・・どうしてここに矛盾を感じないのですかねぇ〜(笑)

もっと言うなら原理的に「直進キーとそのガイド部分に距離環を回した時のチカラが保持されると結果的に回すトルクは抵抗/負荷/摩擦が増大して重くなる」と言うのがそもそも過去メンテナンス時の整備者は全く理解していません(笑)

つまり「直進キーと直進キーガイド部分には一切チカラが保持されずに即座に変換して伝達されていってしまう」からこそ当方の「磨き研磨」により一切グリースを塗らずともとても軽い操作性が実現できているワケです(笑)

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑完成しているマウント部を基台にセットします。この時「均等配置」でマウント部を締め付け固定する「締付ネジが3本ある」そのネジの種別も過去メンテナンス時の整備者は注目して いないので(笑)、こんな箇所に固着剤など注入してしまいます(笑)

逆に言うならこの締付ネジのネジ種の意味を理解していれば固着剤の類が一切必要ないのが 明白です(笑) そしてそれは前述したマウント部内部の赤色矢印で指し示したアルミ合金材が 剥き出しの平滑面の話と大きく関係性が強いワケですが、やはり理解していません(笑)

こういうオールドレンズ内部の構造や各構成パーツ或いは使われているネジ種やスプリングにバネ類などちゃんと「観察と考察」ができていないから余計な一切必要ない固着剤など注入したり塗布するべきではない箇所にまでグリースを塗ったくって仕上げてしまいます(笑)

・・結果製品寿命がさらに短くなり何の為に整備したのか問われる話です(笑)

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を格納し無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。とても使いやすい「軽い」操作性に仕上がり、然しそれでいて絞り環のクリック感は確かな手応えを指に感じつつも決してガチガチ感に至らず ある意味小気味良いと言うコトバそのままのようにも感じます(笑)鏡筒の繰り出しや収納動作も大変滑らかでまさにイジるだけでも楽しめてしまいそうです(笑)

・・と褒めちぎりすぎですね!(笑)

まぁ〜フツ〜に仕上がっている程度の話です。何しろ当方にしてみれば前回の扱いが2018年なのでさすがに4年ぶりというところで適切に仕上がったのが本当に嬉しいワケでただただそれだけで舞い上がっています (それほど完全解体が適わないモデルの代表のような話だから)(笑)

↑光学系内のこれでもかと言わんばかりに透明度が高い状態を維持しており当然ながらLED光 照射してもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリなど皆無です。

・・まさに「スカッとクリア」そのコトバのままです。

特に今回の個体は当初バラす前に写真を撮っておこうかと考えましたがあまりにもキモイのでやめました(笑) それほどに光学系内のカビ繁殖は酷く一部は菌糸状に本格的に広がっていたのでさすがに撮る気持ちがなくなりました(笑)

それがこの状態ですからまるで奇跡のようにしか思えません!(驚) 多少ポツポツと点状に シミのように残っている箇所が実は盛大に繁殖していたカビ菌の芯部分だったりします。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もとても重要な貼り合わせレンズが配されていますがご覧のようにやはり前群 同様「スカッとクリア」です。当然ながらLED光照射で極薄いクモリすら皆無です。

冒頭解説のとおり光学系内のほとんどの群で「酸化トリウム含有に伴う茶褐色化」たるブラウニング現象が起きていましたが半減程度まで改善済です。従ってその影響から光学系内を透過する入射光は極僅かにコントラストに影響が及び高めの描写特性に至ります。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:18点、目立つ点キズ:13点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かなカビ除去痕が計6箇所あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い8mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学硝子材に酸化トリウムを含有している為経年のブラウニング現象により「赤褐色化」していましたが24時間UV光照射で半減程度まで改善させています。デジカメ一眼/ミラーレス一眼のAWB設定でホワイトバランス調整して下さい。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。

絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。しかも最小絞り値「f16」の時の閉じ具合が上の写真のようにまるで閉じきり状態ですから如何に「酸化トリウム含有の恩恵が高い」のかをこれだけでも味わう事ができます(笑)

何故ならフツ〜一般的にオールドレンズでこれだけ閉じきると最小絞り値での描写は相当解像度が低下してコントラストにも大きく影響を来すのが当然だからです。

その意味で捉えるならネット上であまり良い評価を得ていないのがこの「初期型」なのですが当方はむしろ諸手を挙げてお勧めしたいです!(涙) 当方はInstagramしていないので普段からあまり強く言いませんが(笑)、まるで「インスタ映え狙い」の如く使えてしまう本当に撮影するのが愉しくて仕方なくなるようなオールドレンズの逸本と評価しています!(笑)

・・当方にとっては「後期型」たる「EBC FUJINONシリーズ」よりもまさに自分の琴線に 触れまくりの大好きなモデルです! もぉ〜カラダ中ゾワゾワとくすぐったくて仕方ない
くらいです!(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『FUJINON 50mm/f1.4《初期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

距離環を回すトルクを「軽め」に仕上げましたがそれには理由があって「このモデルのピントのピークが突然急にスパッと合焦する」からです。その意味でジックリとピント合わせするにも毎度ながらその潔すぎるまでにスパッと合う瞬間が「チョ〜気持ちいい!」という話です。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

ちなみにピントを合わせたのは本当にミニカーの手前側ヘッドライトのまさに電球の中心みたいな話で(笑)、そのくらいにちゃんと鋭く視認できているのですが上の写真を見る限りまるでピンボケ写真です(笑) さすがにこの感覚は前述のイキナシピタッと合焦する心地よさと共にどんだけ鋭いのかと言うのがさすがに現物を使わない限りご理解頂けないでしょう。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。一つ前の開放f値「f1.4」でもまるで 背景はゾワゾワと然し何気に優しく収差の影響が現れているのがこのモデルらしい印象です。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮影しています。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」に替わりました。

↑f値「f8」です。ミニカーの後ろにあるお城の模型で一番左端にある開口部 (洞窟のような穴部分) の影が真っ黒になっているのが分かると思いますが、他のオールドレンズなどのページに載っているやはり最後の実写と比べると全く以てこのモデルが暗部の耐性が苦手なのだと理解できます。それくらいにストンと堕ちてしまうので多少撮影スキルが試されるモデルとも言えそうです。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。ようやく「回折現象」の影響が如実に現れ始めて解像度の低下が分かりますが前述のとおり絞り羽根はどんだけ閉じきっているんだと言う状態ですからむしろ褒めてあげるべきなのでしょうか?(笑)

・・そんな慈しむ想いが絶えない何とも愛らしいモデルの逸本です(涙) 是非ご検討あれ