◎ MIRANDA (ミランダカメラ) AUTO MIRANDA 50mm/f1.4《後期型》(MB)
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オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)
MIRANDAのオールドレンズは、専用の独自バヨネットマウントなので敷居が高く、なかなか扱う機会に恵まれませんでしたが、今回オーバーホール/修理をご依頼頂き大変ありがとう御座います。この場を借りてお礼申し上げます。
ミランダカメラの前身はwikiによると1948年創設のオリオン精機産業有限会社で、1955年発売の一眼レフ (フィルム) カメラ「Miranda T」は、1952年に旭光学工業から自社初として登場の「Asahiflex」に次ぐ国産モデルとの事なので恐れ入ってしまいます。それもその
ハズで、創業者2名は東京帝国大学工学部航空工学科の技術者なので、その造りの素晴らしさにも納得できます。
1957年ミランダカメラ(株)に改称した後、1960年にはファインダーで露出確認が可能な国産初の位置付けになる外光式セレンメーターを内蔵した一眼レフ (フィルム) カメラ「MIRANDA automex」を発売します (右写真はautomex III)。
1966年になるとミラーメーターによるTTL開放測光機能を実現した一眼レフ (フィルム) カメラ「MIRANDA SENSOREX」を発売しますが、その後絞り込み測光機能を附加した「MIRANDA SENSOMAT RE」が登場しています。
(右写真はSENSOREX)
さらにその後1972年に発売したのが、今回オールドレンズの挙動確認の為にワザワザお貸し頂いた一眼レフ (フィルム) カメラ「MIRANDA SENSOREX II」になります。
ありがとう御座います! (とても助かりました)
(右写真は今回ご依頼のオールドレンズとフィルムカメラ)
ミランダカメラはまさに絶頂期を迎えていたワケですが、取引先のAIC (Allied Inpex Corporation) による買収を受け1976年に倒産してしまいますから、何とも皮肉な話です。
当方はカメラ音痴なのですが、その当方が触ってもこのフィルムカメラの完成度の高さに唸ってしまったので本当に惜しい限りです。
今回扱う『AUTO MIRANDA 50mm/f1.4 (MB)』の光学系をネット上で調べると、6群8枚の拡張ダブルガウス型構成とでも呼ぶのでしょうか、対になった貼り合わせダブレットにそれぞれ2枚ずつ追加されている光学系構成図ばかりがヒットします。
さらに当時の取扱説明書をチェックしても一眼レフ (フィルム) カメラ「MIRANDA SENSOREX」或いは「MIRANDA SENSOREX II」共に、間違いなく右図の光学系構成図が掲載されています。
(右図は取扱説明書の掲載図からトレースした構成図)
ところが今回バラしてみると、何と光学系は5群7枚の拡張ダブルガウス型構成でした。前述の2つのフィルムカメラ取扱説明書に載っている標準レンズが間違いなく今回の『AUTO MIRANDA 50mm/f1.4 (MB)』なのですが、光学系の設計が違います (右図は当方計測による構成図)。
それで不思議に思いいろいろ調べてみると、どうやらその後モデルチェンジした「AUTO MIRANDA E 50mm/f1.4 (MB)」の光学系構成図と同一である事が判明しました。
(レンズカタログに印刷されている構成図と100%同一を確認)
さらに調査を進めると製造番号で確認できる事が推察されます。「67xxxxx」と今回の個体「13xxxxx」の相違があり、もしかするとオールドレンズ供給元が別々なのかも知れません。
(8枚玉をまだバラしてないので内部構造が不明なままです)
つまり「AUTO MIRANDA 50mm/f1.4」には製造番号が「67xxxxx」と「13xxxxx」2つの個体が流通していますが、一方「AUTO MIRANDA E 50mm/f1.4」については「13xxxxx」しか確認できませんし、さらに言えば後に登場する「AUTO MIRANDA EC 50mm/f1.4」は製造番号が「25xxxxx」しか確認できていません。おそらく製造番号先頭2桁が暗号化 (供給元の分別) されているように考えます。
今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「正」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしましたが、収差の影響を受けて真円の明確なエッジを伴うシャボン玉ボケの表出は難しいようです。但し、前述のとおり光学系の構成が同一モデルでも不明瞭なので、一概に実写だけで判断できない懸念は残ります。
◉ 二段目
さらに収差ボケでアウトフォーカス部の滲み方が汚くボケる場合もありますが、実写を見ていて受けた印象は明暗部が突然急降下するのか、階調表現に誇張感が憑き纏うように感じました (独特な描写性と受け取りました)。単なる印象の感じ方のレベルですが、一部の写真がまるで絵葉書の写真のように見えてしまいます。但しこれはほとんどの実写がフィルムによる撮影ばかりなのも影響しているかも知れません。ちょっと当方はカメラ音痴なので評価が上手くできません (光学系の知識も非常に疎いので)(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は非常に理に適った設計が成されており、各構成パーツにも特殊性が強い要素が少ないのですが、オーバーホール工程で問題になったのは「微調整」でした。それは例えばマウント部が真鍮製で作られているのですが、そのマウント部が組み付けられる先の基台側は薄い肉厚のアルミ材削り出しパーツですし、マウント部内部の絞り羽根開閉制御機構部に附随するスプリング (引張式コイルばね) の経年劣化など、凡そ神経質な微調整が求められる作業を強いられました。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。光学系の第1群 (前玉) 外径サイズが、この当時の開放f値「f1.4」の焦点距離50mmの標準レンズとしては⌀37.47mmもある大口径なので、必然的に大柄な鏡筒です。
例えば、過日オーバーホールしたCHINONの55mm/f1.4でさえも第1群 (前玉) は⌀39.97mmですから、僅か2.5mmしか差がありません。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を立てて撮影しました (写真上が前玉側方向)。鏡筒下部には絞り羽根をダイレクトに開閉する役目の「開閉アーム」が1本飛び出ているだけのとてもシンプルな設計です。
この工程でのポイントは鏡筒側面から締め付け固定している「イモネジ (3本)」です (グリーンの矢印)。絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) の微調整として意味を成しています。
◉ イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種
↑距離環やマウント部が組み付けられる基台です。アルミ合金材ですが上の写真でこの基台の上部から順に外径サイズがすぼまっていき、マウント部が組み付けられる箇所の肉厚が最も薄い設計です。この与件が後の工程で問題を引き起こします。
↑真鍮製 (黄銅) のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
左写真は完成した基台をひっくり返して、今度は後玉側方向から内部を撮影しています。
両サイドに1本ずつ「直進キー」と言うパーツが締め付け固定される事で、ヘリコイド (オス側) が直進動する仕組みです。また、鏡筒から飛び出ているのは「開閉アーム」1本だけのままなのでシンプルです。
この工程でのポイントは、やはりヘリコイドを回す時のトルク調整です。ヘリコイド (オスメス)、或いは最終的には距離環を回す時のトルクを決めているのはヘリコイドグリースの粘性だと考えている人が多いですが、それは思い込みです。つまりヘリコイドグリースの「粘性:軽め」を使えば必ず軽いトルク感に仕上げられるとは限りません。
逆に言えば「粘性:重め」を使ったほうが軽い操作性に仕上がる事もあるワケで、重要なのはヘリコイド (オスメス) の材質とオスメスのネジ山切削、或いはネジ山の距離などがヘリコイドグリースの粘性に大きく影響してきます。
ところが、皆さんがいつも忘れがちなのが、ヘリコイド (オス側) の内部に収納されている「鏡筒」です。その鏡筒の内部にはさらに「絞りユニット」が格納されています (もちろん光学系前後群もセットされている)。
すると、ヘリコイド (オス側) を繰り出したり収納したりしている時、最終的には「鏡筒/絞りユニット」を繰り出したり収納したりしている事になりますね (光学系が直進動するから撮影距離が変化してもちゃんとピント合焦できる)。
では、その「絞りユニット」の内部にセットされている「絞り羽根の開閉」は、オールドレンズ内部のどの部位からチカラが伝達されるのでしょうか?
「絞り環」やマウント部の「絞り連動ピン/絞り連動レバー」などの動き (設定) に従い絞り羽根が設定絞り値まで閉じたり開いたりしています。
つまり鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」がそれら各部位から伝達されるチカラで操作されるから結果的に絞り羽根が開閉しているワケで、その時距離環を回してピント合わせしている最中でも「開閉アームはガッチリ掴まれたまま」になります。
要はヘリコイド (オスメス) や距離環を回すトルクを決めているのは、単にヘリコイドグリースの粘性だけではなく、それら各部位からの「チカラの伝達」が大きく関わっている話であり、単純にグリースを入れ替えれば必ず軽い操作性に戻るとは限らないのが整備の難しさです。それを (ごまかして) 簡単に仕上げようとするから「潤滑油」を注入する人が絶えません(笑)
この工程では塗布するヘリコイドグリースの種別や粘性を考慮しつつも、実は「直進キー」の微調整が非常に重要になります。
↑さて、登場しましたがズッシリと重みを感じる真鍮製のマウント部です。内部の各構成パーツを全て取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。
↑外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施し組み付けますが、絞り羽根を制御するパーツがこのマウント部内部に集中しています。絞り環を回すことで「なだらかなカーブ」が移動して「カム」が突き当たる箇所の勾配 (坂) が変化する (ブルーの矢印) 事で、絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。
また「プレビューボタン」を装備しているので、ボタン押し込みにより強制的に設定絞り値まで絞り羽根を閉じさせる「絞り込み測光」にも対応した設計です (ブルーの矢印)。さらに絞り羽根の開閉角度が決まった時、同時に「操作爪」によってガッチリ掴まれている「鏡筒から飛び出ている開閉アーム」が操作されて設定絞り値まで絞り羽根が閉じます (ブルーの矢印)。
↑完成したマウント部に絞り環を組み込みます。マウント部には他に「解除ボタン」が用意されていて、MIRANDAフィルムカメラのマウント部に装着後、オールドレンズを取り外す際に押し込むことで外すことが可能になります。
このモデルの絞り環操作は「無段階式 (実絞り)」なのでクリック感がありません。当初バラす前のチェック時点では、この絞り環がスカスカ状態だったので、今回のオーバーホールではワザと故意にトルクを与えて程良い操作性 (スムーズに滑らかに然し相応の抵抗を感じながらヌルヌルッと回せる印象の操作感) に仕上げています。
こう言う細かな配慮ができるのもオーバーホールのメリットと言えます(笑)
なお鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」をガッチリ掴む「操作爪」が明確に写っていますね。このような爪で掴まれたまま鏡筒が繰り出したり収納したりしているワケですから、その抵抗/負荷/摩擦がそのままヘリコイド (オスメス) ひいては距離環を回す時のトルク感として加味されている (伝わっている) 事がご理解頂けるでしょうか。
この「操作爪」の爪部分が開きすぎていると「絞り羽根開閉が機敏に反応しない」現象に至りますし、逆に爪が詰まっていると距離環を回した時に重いトルク感に感じたり、下手するとオールドレンズ内部から「カリカリ音/キーキー音」が聞こえる原因に至ったりします。内部から聞こえる音が必ずしもこの爪のせいとは限りませんが、一因になる事はあり得ます。
ちなみに、このマウント部内部には「捻りバネとスプリング」が附随しますが、今回の個体は残念ながら両方とも経年劣化が進行しており多少弱っています (弱ると絞り羽根の開閉が正しく行われなくなってくる)。
↑完成したマウント部を基台にセットしてから指標値環を組み付けます。
実は、過去メンテナンスが1〜2度施されていたのですが (マーキングで判断できる) 真鍮製のマウント部を締め付ける「締付ネジ」がおそらく機械締めされたのか (充電ドリルを使ったのか) 硬締めが酷くバラす際に外れませんでした。「加熱処置」で外れましたが、その硬締めの影響でマウント部内部の制御系パーツ一部に抵抗/負荷/摩擦が生じていた (つまり動きに抵抗があった) 事で前述の「捻りバネ/スプリング」が弱っていた事を突きとめました。
試しに今回のオーバーホールで同じように強く締めつけると、マウント部内部の構成パーツの動きに抵抗を感じるのを確認しました (真鍮製のマウント部が極僅かに撓むのでその影響から開閉レバーのアームなどが極僅かに浮き上がり抵抗/負荷/摩擦が増大して互いが擦れ合ってしまうから動きが緩慢に至る/その抵抗/負荷/摩擦のチカラの分だけ捻りバネやスプリングに必要以上のチカラが及んでいた為経年劣化が進行した)。
つまり、オールドレンズを整備する際、何でもかんでも締め付けるネジを強くネジ込んだり固着剤を注入したり、およそ将来的に緩まないよう配慮しての処置なのでしょうが、実はそれらは全て「整備者の自己満足」でしかありません(笑)
もっと言うなら、締め付けるネジの「ネジ種別」をちゃんと確認してから締め付け作業をしていません。今回の例で言えば、マウント部を締め付け固定する際に使っているネジ種は「皿頭ネジ」です。ちゃんと受け側もそのように準備されていますから、それがいったいどのような影響を及ぼすのか、或いは強く硬締めしすぎるとどんな結果を招くのか、全く考えずに単純に強く締めつければ安心だと処置しています(笑)
整備者としてお話になりませんね・・(笑)
↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホールが完了しました。レンズ銘板の製造番号の先頭2桁をお見せしようと考えたのですが、2桁目の「3」まで消してしまいました(笑) この個体の製造番号は「13xxxxx」ですが、ネット上で調べると同一モデルで「67xxxxx」が流通していたりしますし「E」付モデルは「25xxxxx」です。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
それは非常に嬉しいのですが、実は残念ながら第3群の貼り合わせレンズに「バルサム切れ」が進行しています(涙)
具体的には全面積の1/4領域が外周部分から三日月状に内側方向に向かってバルサム切れが生じています。辛うじて中心部分とその反対側がまだ進行していなかったので写真への影響はありません。これは過去メンテナンス時 (おそらく5〜6年から10年近く前のメンテナンス時) に塗布されてしまった「白色系グリース」或いはもしかするとその後一度注入されているかも知れない「潤滑油」が影響した結果だと推察できます (潤滑油は既に乾燥しきっていた為に証拠は残っていません)。
何故なら、相当な量で光学系内に非常に薄いクモリが全面に渡って生じていたので、経年の揮発油成分なのだと清掃すればすぐに判ります。
◉ 貼り合わせレンズ
2枚或いは3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群
◉ バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは浮いて反射が生じている状態
↑後玉の表面側、外周附近にもコーティング層の経年劣化がありますがラッキ〜な事にLED光の照射でも極薄いクモリを伴っていませんし、もちろん目立つキズさえありませんから、余計に第3群のバルサム切れが何とも悔しい限りです。
左写真は光学系後群の後玉を拡大撮影しましたがハッキリ言ってこの造りに相当感心してしまいました。
サーフェースが面いちで光学硝子面と格納筒がピタリとキレイに面取りされている後玉と言うのを初めて見ました。まるで一体成形の如くとても美しい仕上がりに本当に感銘を受けましたね。どこの製造元なのか知りたいくらいです・・。
右写真は当初バラした時の (冒頭の完全解体写真から) 抜粋ですが、
ご覧のように光学系後群の格納筒がまるで円筒のままです(笑)
素晴らしい造りです・・。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は最小絞り値に近づくに従って少々歪なカタチになります。既に当初バラした時の時点で、絞り羽根の数枚に油染みが残っていました (少々粘着性有り)。絞り羽根のキーが一部垂直を維持していないのかも知れません。
前述のとおり今回のオーバーホールで適正な締め付け強度で真鍮製のマウント部を基台に締め付け固定しましたが、マウント部内部の「捻りバネ/スプリング」が既に経年劣化で弱ってきているので、最小絞り値側「f16」がギリギリ到達しているレベルです (本当はもう少し閉じると丁度良いくらい)。これ以上閉じさせると今度は開放時に時々絞り羽根が顔出しするので、開放側から微調整していって調整を詰めました。申し訳御座いません・・。
この点、もしもご納得頂けないならばご請求額よりご納得頂ける分の金額を「減額申請」にてご申告の上、減額下さいませ (スミマセン)。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布しています。距離環を回すトルクは「全域に渡り完璧に均一」で「普通」人により「重め」のトルク感です。ピント合わせ時は極軽いチカラだけで微動できるのでだいぶ良い操作性に仕上がっています。特に当初バラす前のトルク感が「無機質な重め」の印象だったのでヌメッとしたシットリ感漂うトルク感に調整済です。
↑マウント部内部の「捻りバネ/スプリング」の問題から「プレビューボタン操作時」や「絞り環操作時」など、ワザとゆっくり操作した時など絞り羽根の動きが緩慢な状況が当初バラす前のチェック時点に確認できましたが、いずれも改善できています。
無限遠位置は、お貸し頂いたフィルムカメラ「MIRANDA SENSOREX II」で確認しつつ微調整しています。
当初バラす前の実写確認で「甘いピント面の印象」でしたが、その原因は光学系各群の「締付環」がバラす際に指の爪で簡単に回せるほどだったのが影響しています (つまり光路長が確保できていなかった)。
今回オーバーホールはキッチリ硬締めしているので「鋭いピント面」に改善できています。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑MIRANDAマウントの事をご存知ない方の為に解説します。ご覧のように爪 (4つ) を有するバヨネットマウントですが、それぞれ「プレビューボタン/ロック解除ボタン/絞り環ツマミ」か用意されています。
↑一方、フィルムカメラボディ側マウント部には「リリースマーカー」の「|」が刻印されているので、その位置にオールドレンズ側マウント部直前にある同じく「リリースマーカー:●」を合致させてハメ込んでからブルーの矢印方向に回すとカチッとロックします。
この時、絞り環のツマミが勝手にフィルムカメラ側の「絞り環連結キー」に刺さるので (クッション性があるのでカチッと勝手に填る) 設定絞り値がフィルムカメラ側に連動して伝達する仕組みになっています (絞り環を回すと一緒にカメラボディ側のツマミも動く)。
なかなかの先進的な設計だと、ここでも感心してしまいました(笑)
今回のオールドレンズを装着するとこんな感じになります。
↑なお、附属品として同梱頂いた「MIRANDA – SONY E マウントアダプタ」のマウント面 vs マウント面 (つまり製品全高) が少々足りない (薄い) 為にオーバーインフ量が多すぎて「2目盛分ズレる」とのご指摘でしたので、マウントアダプタを解体して処置を講じました。
現状、オーバーインフ量は極僅かに改善できています (改造や切削などしていないのでオリジナルにいつでも戻す事が可能です)。
この分の作業料は、いつもオーバーホール/修理をご依頼頂いているお礼の気持ちとして、今回は無償扱いです(笑)
また、やはり附属のプロテクトフィルターも表裏面で非常に薄いクモリが全面に渡って帯びていたので表裏共に清掃しました。
↑当レンズによる最短撮影距離43cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が出始めています。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。