◎ CHIYODA KOGAKU (千代田光学精工) SUPER ROKKOR 5cm/f1.8(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
千代田光学精工製標準レンズ・・・・、
『SUPER ROKKOR 5cm/f1.8 (L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Украине! Героям слава!
当方がオーバーホールを始めてからの10年間で今回扱った個体が僅か3本目と言う非常に 少ない扱い数で、且つ前回の整備が2016年だったので6年も経ってしまいました。
2016年に扱った際にまだ「原理原則」の習得が浅すぎて内部構造の把握とその駆動原理、合わせてその微調整との整合性が結びつかずに3日掛かりで何とか仕上げられたというある 意味トラウマが残っていた為に普段から敬遠していたモデルの一つです(笑)
はたして6年が経った分ちゃんと技術スキルが向上し今回のオーバーホールを難なくクリアして完璧に仕上げられるのかどうかの自らの確認の意味も込めて臨んだ次第です。
MINOLTAの前身は相当古く昭和3年 (1928年) に創業者の田嶋一雄 (たしまかずお) 氏が 来日したドイツ人カメラ技術者のビリー・ノイマン氏と共同で「日独写真機商店」を創設したのが始まりになります (もう1人工場責任者のドイツ人が別に居た)。1931年に「モルタ 合資会社」に組織改編し1933年から「Minoltaブランド」を採用し始めて1937年に「千代田光学精工」としたようです (wikiより)。
戦後間もない1947年に発売された「Minolta−35 A」から始まるシリーズは1958年までシリーズの展開/発売が続きますが当初は「24x32mm判」のサイズを採り後の1952年に発売された「Minolta−35 F」では「24x33mm判」を採用し1953年に右写真のモデル「Minolta−35 II」が登場します。
この時のセットレンズは相変わらず「Chiyoko SUPER ROKKOR © 45mm/f2.8 (L39)」が主体でしたが翌年には「SUPER ROKKOR 50mm/f2 (L39)」が追加されているようです。
さらに1958年に巻き上げノブがレバーに変わりようやくライカ判と同一のフルサイズ「24x36mm判」を採用しますがシリーズと しては最終型になり終焉します。
カメラボディ側の発売時期、タイミングは1958年と納得できるのですが実はセットレンズが相変わらず「Chiyoko SUPER ROKKOR © 45mm/f2.8 (L39)」或いは「SUPER ROKKOR 50mm/f2 (L39)」としていたようで今回のモデル『SUPER ROKKOR 5cm/f1.8 (L39)』の発売タイミングが確定できません。
また同じ年である1958年には合わせてミノルタ初の一眼レフ (フィルム) カメラ「SR−2」が登場し装着するオールドレンズのマウント部規格をバヨネットマウント「SRマウント」としやはり初めて半自動絞り方式を採り入れてきています。オールドレンズ側の名称も「AUTO ROKKOR」銘を名乗り世界で初めて「複層膜コーティング蒸着」を実現したグリーン色の光彩を放つ『アクロマチックコーティング (AC) 層』を採用し巷で「緑のロッコール」と俗に呼ばれました。
実はこの『アクロマチックコーティング (AC) 層』の登場 タイミングとその認識に於いて非常に多くのサイトで扱い方に齟齬が残りなかなか一筋縄には結論づけられず正しく語られていません(泣)
そもそも当時のミノルタのカタログに明確に「世界初のアクロマチックコーティング層開発」と明記されていたのが大きな齟齬へと繋がっていきます。
左の写真はその当時のカタログの解説ページだけを抜粋して載せています。
【Carl Zeiss Jena (戦前〜戦後) コーティング技術の発展】
〜1934年:ノンコーティング (反射防止塗膜の蒸着無し)
1935年〜:シングルコーティング (反射防止単層膜塗膜の蒸着)
1939年〜:モノコーティング (反射防止複層膜塗膜の蒸着:T)※
1972年〜:マルチコーティング (反射防止多層膜塗膜の蒸着:T*)
※ 世界初の薄膜複層膜蒸着技術開発は1958年のMINOLTAによる
アクロマチックコーティング (AC)
上の解説は戦前ドイツ及び戦後の旧東ドイツ側Carl Zeiss Jenaに於けるコーティング層のパテントと合わせて旧西ドイツ側Carl Zeissのコーティング層パテントから捉えたコーティング層蒸着技術の発展を列記しています。
但し戦前ドイツのパテントは敗戦によりその権利を剥奪されているのであくまでも技術の開発時期とそのパテント登録時期を示す目安として羅列に留めています。
今もなおネット上での解説で様々に記載され続けていますが旧東西ドイツの各光学メーカーによるパテント登録はともかくCarl Zeiss Jenaからの系譜として調べた結果が上の羅列に至りました (米国での特許登録時期はまた別)。
まずはコーティング層蒸着のその意義を認識していないと単なるコトバ遊びになってしまいます(笑) 光学硝子レンズに入射光が透過する時その片面界面で「必ず4%分の反射が起きる」ので光学硝子レンズ1枚を入射光が透過すると表裏で合計「8%分が反射する」原理に至り、入射光は92%に減衰してしまいます。さらに複数枚の光学硝子レンズが光学系を構成する ならその枚数分の減衰に至り「解像度低下やコントラスト低下など様々な影響が現れる」のでその反射を防ぐ必要に駆られて開発が進んだのが「コーティング層蒸着の必要性」です。
つまりカラー成分 (被写体は総天然色だから) を光学硝子レンズに透過させる時、片面の光学 硝子界面に「カラー成分の色合いでコーティング層を蒸着させる事で反射を防ぎ透過率を上げられる」考え方がそもそもコーティング層蒸着の概念です。
従って上記から1934年時点ではコーティング層蒸着技術が存在せず「ノンコーティング」時代だった事が分かります。
また1935年シングルコーティング層蒸着が開発されたので一般的にオールドレンズの光学硝子レンズを光に反射させた時に「プルシアンブル〜の光彩を放つ」場合に「単層膜蒸着」でコーティングを施した事になるのでこの点をシッカリ認識する必要があります。逆に言うならどうして放つ光彩がブル〜なのかと言えば入射光の透過率を向上させてフィルム印画紙まで できるだけ入射光を減衰させずに到達させる必要性から一番先に減衰してしまう「青色成分側の確保」に迫られていたからとも推察できます。
例えば1936年の第11回国際オリンピックが戦前ドイツのベルリンで開催されましたが 国威発揚の意味もありナチス政権側から強い厳命を受けて急きょ開発されたのが焦点距離180mmの望遠レンズ「Olympia Sonnar 180mm/f2.8」モデルになります。
シングルコーティング層の技術はまさにこれに合わせて開発されたような話になります (実際国策映画として撮影に使われオリンピツク映画が完成している)。
さらにそれ以上に軍部からの要請も強く特に爆撃機に搭載される射爆照準器の精緻さが求められたのもその裏側にありシングルコーティング層蒸着技術はまさに時代の要求から生まれた ような話になっています。当然ながら敵対国でも軍部がその技術を狙っていたのは自明の理で今も昔も変わりません。
そしてまさに第二次世界大戦直前になると1939年にいよいよモノコーティング蒸着技術が開発されます。複層膜コーティング蒸着技術であって「zeissのT」がまさにそれを示すレンズ銘板の刻印です。
まずこの認識が重要で多くのネット上サイトで「zeissのT」をシングルコーティング層の 蒸着と解説していますがパテントを調べると正しくは複層膜です。当方では便宜上間違い易いので単層膜シングルコーティングに対し複層膜を指してモノコーティングと呼称しています。
さらに多層膜のマルチコーティング蒸着技術は旧西ドイツ側の「T*」が1972年にパテ ント登録されています。
するとここでMINOLTAがカタログに記載していた「世界初のアクロマチックコーティング」について既に戦前ドイツで1939年に複層膜たるモノコーティングが開発されており辻褄が合いません (敗戦国ドイツの特許権剥奪を指して世界初と謳っているのでは決してありません)。そんなあくどい考え方を日本の光学メーカはしませんね(笑)
この点で複層膜たるモノコーティングに関する捉え方に齟齬が生まれ間違った解説が横行しています。
正しくはMINOLTA開発の「アクロマチックコーティング (AC) 層」は「薄膜蒸着技術による 複層膜コーティング」を指し全く別概念なのをちゃんと知るべきです。
つまりライカでさえもこの技術に飛びついて技術提携を切望した理由がちゃんとあるワケで、そんなモノコーティングの技術など既に数多くの光学メーカーが世界中で活用しています(笑) 蒸着する先は裸の光学硝子レンズではなくシングルコーティング/モノコーティング/マルチ コーティングの別なくあらゆる既存蒸着コーティング層に対してその上に追加で薄膜蒸着する技術を指します。
もっと端的な表現をするなら商品戦略や設計上の要求から「まるで薬味のように」必要とされるカラー成分の薄膜蒸着が適うので必ずしも「緑のロッコール」たるグリーン成分だけとは限りません。確かにMINOLTAで当時多用されたのはグリーン成分が多かったワケですが、例えば技術提携したライカで蒸着されていたのは別の色合いだったりしますからそれぞれの要求に従い追加で薄膜蒸着が適っていたとみるべきです。
従って確かに2層の厚みで薄膜蒸着できるとしてもそれは必ずしもグリーン成分だけとは限らず相対的に「複層薄膜蒸着技術」と捉えるのが正しい概念とも言い替えられます。
さらに詳しく調べると「アクロマチックコーティング層」開発者の千代田光学精工堺工場に 在籍していた技術者「西野 久」氏の特許登録を確認するとこれらの話の辻褄がピタリと適合します。
登録は昭和32年12月14日に受理されており (つまり1957年)、achromatic coating (二層色消し反射防止膜) は光学硝子レンズの屈折率が低いほうの光学硝子面に使用し特に単層膜に蒸着すると有効性が高いと記載されていました (UDC771.355/.356「写真レンズに対するAchromatic Coatingについて」より)。
するとここが大きなヒントになりました。そもそも「アクロマチックコーティング (AC) 層」の特許登録が1957年12月である事から翌年1958年の製品発売しか適わない話になり1957年時点での製品化には間に合っていないと推察できます。
何を言いたいのか???(笑)
今回扱うモデル『SUPER ROKKOR 5cm/f1.8 (L39)』の発売時期がwikiを観ると1957年か1958年と両方記載がありますが、正しくは1957年でありアクロマチックコーティングが蒸着される前のモデルと推察できます。もちろんMINOLTAのカタログで昭和33年と謳っているので1958年が「アクロマチックコーティング (AC) 層」の元年と受け取られます。実際今で言う経産省の意匠登録記録に第145387号として昭和33年にアクロマチックコーティング (2層) を施したAUTO ROKKORレンズが登録されているので間違いありません(笑)
ここに来てようやく今回扱うモデル『SUPER ROKKOR 5cm/f1.8 (L39)』発売時期を正しく1957年と確定できた次第です(笑)
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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケと変化しつつも収差の影響を盛大に受けている様子が確認できる実写を特徴的と受け取りピックアップしました。特に光学系が5群6枚のウルトロン型構成なので相応に真円でのシャボン玉ボケや円形ボケ表出が難しい傾向が推測できるものの、実際はなかなか頑張っていてキレイな円形ボケをちゃんと表出できている処がさすがです。
また右側2枚の如く収差の影響は緩やかではなくとても大きくある意味クセのある収差ボケに至り、これがこれで実はとても魅力的な背景ボケを構成してくれるので「吐き出して見ない限りは予測できない楽しさ」が相当強いモデルです。
◉ 二段目
さらにその収差ボケの影響度合いを探っていますがこの段では敢えて「グルグルボケ」をピックアップしています。例えば4群6枚の典型的なダブルガウス型構成ならこのようにグルグルボケが盛大に現れるのも納得できますがウルトロン型構成でのこのグルグルボケの存在はなかなかオドロキです。しかも単なるグルグルボケではなく一段目同様に弾ける収差が纏わり付くのが本当になかなか魅力的です。
ハッキリ言ってこの弾ける要素の収差が現れるオールドレンズはあまり記憶がありません。
◉ 三段目
ここでは明暗部の耐性とダイナミックレンジをチェックする目的でピックアップしています。残念ながら暗部の耐性はそれほど好ましくなくストンと黒潰れするのでコントラストが高い発色性になる分とてもキッチリカッチリした印象のインパクトを残します。
一方明部についてはとんでもなく耐性が高くしかもちゃんと階調を残したグラデーションとして吐き出すのがまたオドロキです。明るい方向にダイナミックレンジが広がっているこのような特性のオールドレンズは当時のモデルとして考えた時ちょっと珍しい/少ないような気がします。
相当な実力とみています・・(驚)
◉ 四段目
ここでは動物毛や人物に被写界深度と逆光耐性をチェックする目的でピックアップしました。特に珍しい兆候を見つけられませんがやはり暗部の耐性が高いので砂浜のグラデーションがとてもステキに映っています。
光学系は5群6枚のいわゆるウルトロン型構成ですがカタログや取扱説明書に載っていた構成図とは少々異なります。
右図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃で逐一当方の手でデジタルノギスを使って計測したトレース図になります。
例えば第1群の厚み/曲率も違いますし第2群のカタチに相違があり第4群の貼り合わせレンズも全く別モノでした (つまりこの構成図は一切拡散しておらずネット上には載っていません)。
もちろん各群との間隔も光学硝子レンズ格納筒の段差をちゃんと計測して合わせたトレース図に仕上げてあるので意外にも間隔が空いている群があったりしますがこれはこれで設計者の 狙いがありそのように設計されているのだと指摘できます。
例えば一般的には絞りユニットの絞り羽根の配置は中心に偏る事が多いのですがこのモデルの場合は (おそらく時期的/時代的にまだ新種光学硝子の普及が進んでいなかったタイミングなので) 後群側に偏り直前に至っていますからそれだけでも珍しいです。
確かにどうでも良い話しに聞こえますが(笑)、その背景や事実 (計測値は事実) を知るとこれがまたロマンスを掻き立てる要素にもなったりして晩酌が進むと言うものです(笑)
・・オールドレンズは本当に愉しいですね!(笑)
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す
◉ バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
このモデルは鏡胴が「前部/後部に分かれるに分割方式」を採っています。内部構造は非常に理に適った造りで1957年 (昭和32年) の設計としてもまるでNikonやCanon/OLYMPUSなどと同格の「光学メーカーの造りと仕上げ方」と言え、例えば当時の東京光学やペトリカメラ、或いは三協光機などのいわゆる「機械屋的な造り/仕上げ方」とは別次元です。それは黄銅製 パーツなどの切削レベルや面取り加工をチェックしただけでもう歴然とするので明らかに光学メーカーの造りは別次元です。
また特にこのMINOLTA製オールドレンズは黄銅製パーツやアルミ合金材パーツなどメッキ加工の仕上げ方一つとってもちゃんと目的や意味がある仕上げ方をしているので「特に適切な微調整や締め付け」など細心に至るまで注意を払わないと仕上がり具合がガラッと変わりますから初心者向けにはなり得ません。
逆に言うならオールドレンズと言うのは単に内部構造の簡素/複雑だけで決まらず、合わせて 組み立て工程の手順や微調整範囲など極僅かな加減でチカラの伝達レベルが変化するのでその点に気配りできる整備者なのか否かが最も重要な話になります。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、ご覧のようにアルミ合金材の削り出しで用意され表層面はアルマイト処理により酸化/腐食/錆びに対処できるよう施されています。写真ではまず伝えられませんが面取り処理が完璧に施されているのでこのままの状態で例えばティッシュペーパーで一周拭っても全く切れたり裂けたりしません。
逆に指摘するなら他の黄銅製パーツは経年による酸化/腐食/錆びでバラして直後は「焦茶色」に変質していますがアルマイト処理したアルミ合金材のパーツは上の写真のままを維持していますからちゃんとアルマイト処理により経年に対処できていた事が分かります。
このような要素を確認するだけでも「観察と考察」によりパーツの仕上げ方や特に「経年劣化に備える方針で設計していた事」が伺えその点に於いて光学メーカーの配慮「企業姿勢」などが伝わってくると言うものです。もちろん他のNikonやCanonにOLYMPUS、或いはKONICAなど幾つもの国内光学メーカーに通ずる概念の一つとも言えると考えています (このような事柄に対する努力の一つ一つが当時からMADE IN JAPANの品質に信頼を蓄積していったのだと 考えます)。
要は経年で酸化/腐食/錆びを積もらせるのではなくどれだけ「信頼」を蓄積できるのかの地道な努力こそが世界に認められるための最短距離だと当時から確信していた証拠のように見え、特に最近の大企業の不正やデータ捏造など今まで先達が努力してきた蓄積を自ら破壊してしまう行為に染まりつつある事にニッポンの将来に何某かの危惧を抱いています。
↑上の写真は鏡筒最深部に「位置決め環」という絞り羽根が刺さる穴を備える環/リング/輪っかをセットしたところです。実は今回の個体は当初バラす前のチェック段階で絞り羽根の開閉角度が狂ったまま仕上げられており「開放状態にすると極僅かに絞り羽根の縁が見えている状態」でした。つまり絞り羽根が閉じすぎている設定のまま過去メンテナンス時に組み上げられてしまったようです。
しかし今回完全解体してバラしていったところこの「位置決め環を固定していた痕跡」が2箇所しか存在しなかったので1箇所は製産時点としてももう1箇所は過去メンテナンス時の固定箇所と推測できます。逆に言うならその固定箇所がズレているからこそ見てすぐに2箇所だと分かるワケで過去メンテナンス時にミスっていた事が判明します。
さらに他の部位には3箇所締め付けていた箇所の痕跡があったりするので今回の個体は過去に「2回別のタイミングでメンテナンスが施されている」と推測が成り立ちます。
この指摘事項をもっと詳しく解説するなら、本来過去に2回実施された (時間軸で互いが全く別の整備者による) 整備の中で少なくとも1回はこの「位置決め環を外さずにそのまま使ってしまった」事が確実ですし、もっと言うならそれは「一番最後に施された整備時点だった」 からこそ今回の個体が当初バラす前の時点で絞り羽根の開閉角度が不適切だったと断言でき ます。その根拠は鏡筒と位置決め環の造り (設計) などから整合性を探っていけば自ずと絞り羽根の開閉角度の適切な範囲が導き出されて明確になるので「開放時に完全開放していたハズ」との結論に至ります。つまり設計上完全開放して開ききる設計にしていたのか否かは逐一調べれば事前に知らずとも明らかになるのが「チカラの伝達レベルや切削範囲とその連携位置との整合性などから自ずと明確になる」のが道理であり、そこに齟齬が生まれたら製品として組み上がらないのです(笑)
ところがこのような事柄をちゃんと細かく真摯に向き合い整備していないのが今現在も横行している整備であって整備会社でもあるのだとこのブログで何度も何度も指摘しているのです。
だからこそサービスマニュアルなどに頼らずとも「本来あるべき姿が分かる」のが当たり前であって「各部位との連係とチカラの伝達」しか存在しないのがこのような「単焦点のオールドレンズ」の宿命なのです (だから当方はズームレンズやAFレンズを扱えない)。
逆に言うなら当方自身の弱点としてまさに「根拠を以て認識しているからできないモノはできない」と明言しているワケで、単に面倒くさいとか苦手とかの感覚的な話しだけで扱い品種を限定している話では全くありません (そういう感覚的な話しだけで批判するのがナンセンスな理由)!(笑)
このように「観察と考察」を逐一丁寧にあらゆる箇所で実施していく事で「過去の個々のメンテナンス時にどのように整備されたのか?」を例えばイモネジを締め付けた締め付け痕等の「腐食の度合いの確認」により同じ位置のまま組み上げてしまったのかどうかの判定が適う ワケで、決して単なる憶測だけで過去の整備回数を指摘しているワケではありません。但し もちろん人の目で見ただけでは確定できない腐食度合いもあるので必ずしも確定要素とは言い難いですが、少なくとも締め付け箇所の「銀色の輝き度合い」はその締め付けられていたネジ種の相違と共に締め付け強度からして容易に判定できます。
このような話しは当方が以前取材した金属加工会社の社長さんが (お忙しい中を割いて) 事細かくご教授頂いたので多くの課題となっていた事象に対して説明が成り立つワケで、もちろん 実際の金属加工作業は当方には不明ですがその結果との整合性はある程度認識が進みました。
そのような知識を基にちゃんと細かく「観察と考察」を積み上げていけば自ずと過去の所為がまるで走馬灯のように浮かび上がってくるワケであり「整備者のごまかしは必ずバレる!」と表現できる次第です(笑)
その結果の印象は・・よくも好きなだけごまかしているなと言う率直な想いです!(笑)
医療関係のプロの方に当方のこのような思考回路や姿勢が「私達の病理解剖にも相通ずるのでとても説得力がある」とお褒め頂き、これほど誉れに思う事はないと言うくらいに本当に涙が浮かんできたのを今もハッキリ覚えています・・ありがとう御座います!(涙)
当方がヤッているこのような事など全く以て人の命には一切関わらない話しなのにこのような超長文のブログをご高覧頂きコメントまでお寄せ頂けるなど・・本当にどんなに平伏しても 感謝申し上げられないくらいの想いです!(涙)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑10枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部に正しくセットしたところです。今回のオーバーホールでは正しい開閉角度で絞り羽根がセットされました(笑)
逆に言うなら単にバラしてグリースを塗って組み上げるだけなら、はたして「どうして過去 メンテナンス時のパーツ固定箇所が正しいと判定したのか?」の根拠がないままに組み上げている事になり説得力を全く伴いません(笑)
・・そのような整備が横行している事の一つの事例みたいなお話です(笑)
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。当時の開放f値として考えると「f1.8」はまだまだ多くなく、せいぜい流通していたのは「f2」あたりが中心だったでしょうか。そのような時代背景まで考えると意外にもこの鏡筒の深さが浅いように見えます (但し当時にしては大口径である事は間違いない)。
鏡筒側面には絞り環と連結して絞り羽根が閉じたり開いたりするチカラを伝達する「開閉孔」と言うスリット/切り欠きがツナ割ります (赤色矢印)。またグリーンの矢印で指し示している 箇所に1箇所あるネジ穴の意味が理解できている必要があります。このネジ穴の意味が分からないと絞り羽根の開閉角度微調整に対する根拠すら無いままにテキト〜に仕上げていっている事がバレバレになります(笑)
このようにたかがネジ穴一つにもどうしてその位置に存在するのかの「設計者の意図」が必ず在るワケで必要ない処置など施されているハズがありません。その意味で他のモデルとの共通パーツだから使わないネジ穴があったりするのかの判定も必要になってきますし、もっと疑いの眼差しで捉えるなら「過去メンテナンス時の整備者のごまかし」なのかと言う疑念も必ず 必要です。
逆に言うなら「ごまかしは必ずバレる」ワケで(笑)、それは他の部位とのチカラの伝達レベルで考察していけば自ずと道理が成り立たず逐一チェックしていけば必ず「製産時点の位置が正しいのは自明の理」に帰結し過去メンテナンス時のごまかし所為でその箇所に固定されていたなどが判明してしまいます(笑)
だからこそ「観察と考察」が必ず必要なのでありそれがきちっと行われれば「自然に全てが整合性ある中で辻褄が合いつつ仕上げられていくのは当然な話」に至ります。だからこそサービスマニュアルなど手元に無くてもちゃんと間違い無い場所で (正しい位置で) でパーツを固定する事が適い不自然だったり辻褄が合わないような仕上がりに至らないワケです (もしも辻褄が合わなければその理由が必ず説明できるのが当たり前の話)。
もっと言うなら「どうしてピタリと位置が合わないのか分からないが組み上がるとこうなる」などと言う理由を公然と言っている整備者/整備会社が居る時点でもうダメなのだと言えますね(笑) それを当方の自信過剰で批判ばかりしていると指摘するならちゃんと自ら理に適う整備を行い自らが体験してから何某かの根拠を以て公正明大に批判するのが筋ではないのかと言いたいですね!(笑)
↑アルミ合金材削り出しでブライトアルマイト処理が施されたフィルター枠をセットします。さらにその直下に絞り環用のベース環 (黄銅製) を組み込んだところです。このベース環の中には既に鋼球ボールが組み込まれていてカチカチとクリック感できるよう処置してあります。
このクリック感が適う理由は溝が切削されていてそこに鋼球ボールがハマるのでカチカチのクリック感に至りますが、その鋼球ボールに反発力を与えているのは「スプリングではなくて 板バネ」なのでその板バネの微調整を怠るとクリック感がガチガチになります。
今回の個体は当初バラす前のチェック時点でそのガチガチのクリック感に至っていたので過去メンテナンス時に整備者が微調整を怠っていた事まで分かってしまいます(笑)
逆に指摘するならどうして微調整機能が備えられていると断言できるのかと言えば「板バネを固定する締め付けネジが2本存在し片側は真円の丸穴だがもう一方は楕円の穴」なので板バネの膨らみイコール「クリック感の強さ」を微調整できるようネジ穴のカタチが左右で異なるのだと「ちゃんと設計者の意図を汲み取れる」ワケで、そういう部分に「観察と考察」が必要なのであってそれを怠るから「違和感を抱く操作性に至る」話なのだと言っています(笑)
上の写真では再びグリーンの矢印で指し示して一つ存在するネジ穴を指しています。
↑絞り環用ベース環に絞り環をセットしたところです。すると上の写真で絞り環直上に「●」の黒色刻印があって絞り値に対する「基準マーカー」を意味しますが、ご覧のように「f値1.8と f値2の距離が短く確保できない為に8の位置でマーカーが一致する」設計なのが分かります。
例えばこれが開放f値「f1.8」の次が「f2.8」であればそれぞれのマーカー位置はちゃんと数値刻印の中心でピタリと合致して見た目も納得なのですが(笑)、残念ながらこのモデルの設計者は「f1.8→f2→f2.8・・」としたので「1.8の中心にマーカーが一致しなくなってしまった」とちゃんと理解できます (逆に言うならf1.8刻印を左側に少しズラしてラインで示せば良かったのかも知れません)。
そしてこのような解説ができるその根拠が前の工程から何度か指摘してきたグリーンの矢印で指し示していたネジ穴の存在意義であって「そこから導き出した根拠に基づく判定としてf1.8刻印の中央にマーカーが来ないのを設計者が知っていたと結論付けできる」ワケです。
このように一つ一つの事柄に疑念を抱きその根拠をちゃんと探る事で設計者が妥協していたのかこだわらなかったのかまで判明するので「設計者の意図が見えてくる」次第です。もちろん当方の頭などは設計者に適う話ではないのであくまでも「観察と考察」から導き出しているだけの話です(笑)
↑光学系前後群を組み込んでしまいます。これで鏡胴の「前部」が完成したのでここから先の 工程では鏡胴「後部」側に入ります。
↑真鍮 (黄銅) 製のズッシリと重みを感じるマウント部ですが内側に切削されているネジ山は「距離計連動ヘリコイドのメス側」です。マウント規格がライカ判スクリューネジ規格の「L39」だからです。
↑上のパーツは「直進キー環」と言って距離環を回した時のチカラの方向性を変換する役目を担っています。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
↑こんな感じでマウント部内側に「直進キー環」を組み込みます。
↑この状態でひっくり返してマウント部側方向から撮影しました。ちゃんと内側に「直進キー」が見えていますね (赤色矢印)。するとこの「直進キー環」がマウント部にネジで締め付け固定される (4箇所) のが分かります。
↑やはり黄銅製の「距離計連動ヘリコイド (オス側)」を無限遠位置のアタリをつけた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
すると一つ前のマウント部内側に切削されて備わっていた「距離計連動ヘリコイド (メス側)」のネジ山数に比べて「オス側のネジ山数が異常に長い」のが分かります。
ここがこのモデルの難関と言うかネジ込み位置の難しさで6年前の2016年時点では当方の技術スキルがまだ低かった時期なので難儀してしまい3日掛かりのオーバーホール作業だったワケです(笑)
さらにこのモデルの設計の素晴らしさは「内側に鏡面仕上げを施した事」であって (グリーンの矢印) この点に過去メンテナンス時の整備者は全く気づいていませんでした。前述のとおり過去メンテナンスは製産後に2回実施されていますが、そのいずれの整備者もこの「鏡面仕上げを一切戻さずに潤滑油の注入でごまかしていた」事が完全解体する事で判明してしまいます(笑)
それこの黄銅製パーツの「鏡面仕上げの箇所だけに緑青が生じていた事実」から過去に「潤滑油」が注入されていた事実に至ります。これは金属加工会社の取材でその根拠として判定できると社長さんが教えてくれました (本当にありがたいです!)(涙)
逆に指摘するなら粘性があるグリースと潤滑油とでは「同じ潤滑剤の一種」と括られてもその経年に於ける結果には自ずと相違があられる事を掴めば (知識として知れば) その理由が判明し「経年に対する処置」を施す事で再び鏡面仕上げに戻す必要性を掴めるワケです。
よく当方に対してサービスマニュアルも手元に無いくせに勝手に自分の考えを決めつけて押しつけていると言われますが(笑)、実はこんな根拠を基に「観察と考察」を進めているワケで その結果が「適切な仕上がりに至る」だけの話です。
一方この「距離計連動ヘリコイド (オス側)」には上部の円形部分の側面に「均等に3箇所のネジ穴が存在する」のを赤色矢印で指し示しています。この下穴が単なる穴なら「イモネジを締め付ける為の下穴」と判定できますが今回のこの個体は「ネジ切りされている」のが実は最大のポイントになります。
逆に言うならこの下穴がネジ切りされているが為に「ヘリコイドのネジ込み位置で難儀した」のが6年前の話であって(笑)、当方自身がこの下穴のネジ切りの意味をまだ理解できていなかった技術スキルの低さ故と今は指摘できます。
たかがネジ穴のネジ切り如きにそんな根拠を当てはめているのは単に辻褄合わせしているだけの話しで自分の解説を正当化しようとしているだけ・・とまた批判されるのですが(笑)、その整合性をちゃんとここから解説していきます・・本当にあ〜言えばこう言うみたいな話しで 面倒くさくて仕方ありません(笑)
この下穴は「距離環を締め付け固定するネジのネジ穴」なのでこのモデルでは「無限遠位置の微調整機能が備わっていない時代のモデル」と指摘できます。確かに発売が1957年と冒頭で結論づけましたから凡そその当時は多かった設計とも言い替えられます。
つまりこのモデルのオーバーホール時には「必ずヘリコイドのネジ込み位置でしか無限遠位置を微調整できない」話に至り、もしも仮にどうしても無限遠位置の微調整が必要になってしまったら「組み上げる途中で薄い金属板のリングや紙を使って鏡胴前部の格納位置をズラして微調整する」手法しか対処できなかった時代のオールドレンズと言えます。
要は鏡胴「前部」をできるだけ深く格納しておいてから仕上がった時点でいちいち無限遠位置の確認を行い、その都度鏡胴「前部と後部の間に環状のリング/輪っかを挟み込んでその厚みで互いの距離を離していく処置」により無限遠位置を適正化するしか手がありません。
ところがそれは「あくまでも設計を逸脱したごまかしの一つ」の対処方法なのだと認識するべきです。何故ならこの製品の中に構成パーツの一つとしてそのような環/リング/輪っかが存在しないので「そもそも設計者がそれを想定していなかった」事が判明します。
つまり「ヘリコイドのネジ込み位置だけでしか調整しないイコールそれは光学系の描写性能を最優先していた証」と受け取れるので、単純に何でもかんでも環/リング/輪っかを鏡胴「前部/後部」の間に挟み込んで調整してしまえば良いと結論づけるのは浅はかです。
もっと言うなら「光学系の結像位置が変化するのは設計者が狙っていた描写性能から逸脱してしまう」事をシッカリと認識するべきです。
この話を最も極端に例として示すなら、例えば今ドキの市場流通しているヘリコイド付マウントアダプタやそれこそヘリコイドだけの製品を使って「超近接撮影」している時の状況がまさに当てはまります。
↑上の写真は今現在市場流通している製品を例としてピックアップしましたが、左側がエクス テンションチューブのセットで近接撮影したい時にこれら環/リング/輪っかをネジ込んで複数介在させる事で製品本来の最短撮影距離から近接撮影が叶います。
同様右側はヘリコイド付マウントアダプタでローレット (滑り止め) を回していくと互いに前後方向でグリグリと繰り出したり収納したりしてやはり最短撮影距離を寄り近接に撮影できるよう工夫する道具です。
この両者のアクセサリーを介在させて撮影している場合は必然的に「無限遠位置がズレてしまい無限遠撮影できない状態」に陥るのであくまでもオールドレンズ仕様上の最短撮影距離からさらに近接して撮りたい時に使う道具の話です。
そしてこの時のポイントは「オールドレンズの最短撮影距離位置での撮影描写のままさらに 近接できている事ではない事を認識する必要がある」と言えます。
だからこそ「本来の描写性能から逸脱した写り方」である事を必ず認識する必要があり必ず しも誰しもが同じ写り方で写真撮影できるとは限らないのです (その写真撮影時の近接距離を確認しないと不明なまま)。
逆の表現をするならオールドレンズの仕様上の最短撮影距離位置での写り方は誰が撮っても同じ写りになりますがこれらアクセサリーを介在させた時の写りは千差万別と言えます。
その意味で前述の工夫/ごまかしたる「鏡胴の前後に何かを挟んで無限遠位置を微調整する手法」はあくまでもその厚みが非常に薄いので撮られた写真を見てもなかなか判別できないとして一つのヤリ方と考えられますが、基本的にそれは「設計者の意図から逸脱した写り方」で ある点は覆せないと認識するべきです。
それゆえ今回のオールドレンズに関しては設計者の確かな意図が汲み取れるのでちゃんと正しい適切なヘリコイドのネジ込み位置を調べた上で仕上げた次第です。
前述のネジ穴のネジ切り如き云々の話は・・このような根拠に基づくワケですね(笑) これらの根拠はいちいちバラしている中で時間を掛けて「観察と考察」している話しではなく (そんな時間かけていたら何日もかかる) 瞬時に「観察と考察」できている次第で、要はカラダに染み着いているワケです(笑)
もっと言うならそのくらいでなければ「とても初めてバラすような難しい構造や微調整が必要なオールドレンズに挑戦できない」ワケで、それは少しでも整備経験があるなら痛いほど理解していると思います(笑)
確かにAFレンズに比べれば本当に簡素な構造なのは間違いありませんが、だからこそ「各部位との連係とチカラの伝達レベル」は逃げようがない現実なのです。
↑少し前の工程で「鏡面仕上げ」を説明したところがありますが上の写真でその理由が分かります。このモデルには「空転ヘリコイド」が組み込まれているワケで (赤色矢印) だからこそネジ山を備えた2組のヘリコイドセットが必要ないのです。
鏡筒を繰り出したり格納したりする目的の「ピント合わせに必要なヘリコイドセット」の他にもう一つ「距離計連動ヘリコイドのセット」が必ず必要なのがこのライカ判ネジ込み式マウント規格「L39」ですが、すると2つのヘリコイドセットが必要になりどんどん製品全高/全長が伸びてしまい大型になります。
それをできるだけコンパクトに収めたい意志が働きこのような「空転ヘリコイド」を介在させた設計を採っています。
従ってこのモデルの距離環を回す時のトルクを決定づけてしまう最大のポイントなのが「この空転ヘリコイド部分の平滑性確保」なので過去メンテナンス時の整備者は2回とも「潤滑油の注入でごまかした」ワケです(笑)
当方はそんな「潤滑油」に頼るごまかしをヨシとしないので(笑)、ちゃんと「鏡面仕上げを復活させた上で/平滑性を確保した上で」むしろスカスカになってピント合わせの際に違和感に至らないよう「グリースを塗布して粘性を与えている」くらいで何でもかんでも軽ければ良いとはならず「心地良く操作できて100%撮影に没頭できる」のが当たり前ではないかと考えています(笑)
従ってこの後に登場する数多くのMINOLTA製オールドレンズもその多くが「1箇所だけの直進キー」で設計されているので (空転ヘリコイドの介在は別として) 特に距離環を回す時のトルク管理が難しい特徴があります (グリーンの矢印)。
逆に言うなら他社製オールドレンズの多くが両サイドに1本ずつ「直進キー」を用意した設計が多くこのように1箇所に集中的にチカラの変換が及ばないよう配慮していますが、逆にMINOLTAはこだりりがあったようです。
黄銅製のヘリコイド部分が回転すると (ブルーの矢印①) その回転するチカラが「直進キー」により「直進するチカラに変換されて」伝わるので繰り出したり収納した利が実現できます (ブルーの矢印②)。
↑今度は横向きにして距離計連動ヘリコイドの繰り出し状態を見えるよう撮影しました。最終的に黄銅製ヘリコイド部分が回転すると (ブルーの矢印①) それに従い空転ヘリコイド (赤色矢印) でチカラが変換されて (ブルーの矢印②) 合わせて/連動して距離計連動ヘリコイド側 (赤色矢印) も繰り出したり収納したりする動きをするので (ブルーの矢印③) ライカカメラでのファインダーでピント合わせが適うと言うお箸なです(笑)
逆に指摘するなら単にピント合わせしたいが為に距離環を回しているだけなのですが、その時の「内部のチカラの伝達経路」はこんな感じで伝わっている次第で、且つそれこそが「距離環を回すトルクの重い/ちょうど良い/軽すぎなどの感覚に至る」ワケです。
だとすれば単にグリースの粘性だけに頼って整備すると最近の傾向として必然的に緩やかになり易い特徴を持つ「白色系グリース」に頼りがちですが、一方このオールドレンズが設計され製産されていた時代に想定されていたグリースは「黄褐色系グリースだけだった」点に配慮を示さないからこそ早ければ1年で揮発油成分が廻り始め、遅くても数年で鏡筒まで液化してきます (絞り羽根の油染みに至る)。
それこそが当方が「黄褐色系グリース」にこだわって整備している根拠です。設計者が設計時点で想定していなかったグリースを使いたくないだけの話です(笑)
たったそれだけの話ですがそこに根拠が無いとか自信過剰だとかあ〜だこ〜だ批判に結びつけたくなる勢力が居るようですね(笑)
↑敢えてこだわりを以てブライト処理が施された梨地仕上げのメッキ加工で仕上がっている指標値環をセットします (とても美しい輝きです!)。
↑ようやく距離環を締め付け固定しますが前述のとおり無限遠位置の微調整機能が装備されていないのでこの距離環はネジ込み式のネジで本締めするしかありません (つまりヘリコイドネジ込み位置がズレていて無限遠位置が狂うならもう一度バラしてヤリ直しになる)(笑)
この後は完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。このモデルのピント面は距離環を回してピント合わせしている時に「スパッと瞬時にピントが合う」特徴があるので (つまりピントの山がとても明確) 必然的に距離環を回すトルク感の感触が重要な要素になってきます。撮影時にいちいち違和感を感じているとそれだけで「使い辛い」と考えるようになってしまいますね(涙)
そのような要素もオールドレンズには重要だと当方では認識しているので必ずトルク管理に於いて「使う人の立場で微調整していく」ポリシ〜です。然しそうは言っても人の感覚の話なので千差万別であり特に当方の活躍の場がヤフオク! のようなど〜しようもないオークションにしか存在しない現実を考えると「出品者個人の感覚/主観」と執拗に注意書きしたくなるのは人情ですが(笑)、それにこだわっていたら「では新品の今ドキのデジタルなレンズはどうやってトルクを決めているのか?」と言う疑念が湧いてきます(笑)
するともしかしたら「きっと誰しもが許容範囲内と感じる何某かのトルク感の感じ方があるハズ」と考えたくなるのは人情ではないでしょうか?(笑)
当方が基準にしているトルク感とはそういう考え方に立って「重い/普通/軽い」の3つのトルク感に絞ってヤフオク! の出品ページで必ず明記しているワケです。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが当初バラす前のチェック時点では前玉も内部にも相応に汚れやクモリが生じておりとても「欠けや割れなどなし」との一文だけで済ましてしまうには少々落札者に対する配慮が無い出品者だなと印象を受けました。
要は掲載写真の枚数も少なくしかもキレイに写る角度で恣意的に撮影した写真を載せており、且つ光学系内の状況も肝心な要素について該当しないコトバを敢えて使い続けている点に於いて「1円スタートなのだから文句言うな!」的なポリシ〜が見え隠れしていて唸ってしまいます(笑)
もちろんこれらの話はあくまでも出品者の自由ですが・・ね(笑)
今回の個体は残念ながら前玉の表面側コーティング層に経年劣化に伴うコーティングのクラックが発生しており、前玉を視認する角度によってはそれらクラックが微細な点状として/粒々として明確に視認できます。
実はこれら光学系の問題を数多く抱えているのがこのモデルに手を出したくなかった最大の与件です。コーティング層の経年劣化がそろそろ限界値に到達しているとみています (とても多くの個体で何かしら顕在しています)。但しそれはマジッに見る角度でガラッと変わるのでおそらくコーティング層蒸着時に使われている金属成分の配合の問題だと考えられますが、それは実は設計者にとり「光学系や描写性能に追求したい意図」に拘ればこだわるほど経年劣化の影響が早く現れる結果に至るので「そのような葛藤の中で設計されてきたモデル」との推測も成り立ち・・なかなかのロマンに感じ入ります(笑)
その意味で完全解体してバラした後に「観察と考察」を以て臨み「原理原則」との関係性から導き出された「設計者の意図や葛藤に意地」などが逐一そのオールドレンズ/個体のロマンとしてまた愉しめる事こそが今ドキのデジタルなレンズには叶わない/存在し得ない楽しみの一つとも受け取れます(笑)
・・楽しいですね!(笑)
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
1枚目はわざと故意に前述の「経年劣化に伴うコーティング層クラックの状況 (見え方)」を敢えて大袈裟に映るよう工夫して撮影しています。こんな感じでポツポツと粒々状に微細な点状のクラックが無数に浮かび上がりますが、それは見る角度によって見えたり見えなかったりしますから「コーティング層の蒸着層がクラックしているワケで決して物理的なキズではない」と明言できます (2枚目の写真では同じ位置をチェックしても全く視認できない)。
逆に指摘するならもしも物理的に光学硝子レンズ自体にキズが入っているならどのような角度で覗き込んでも必ず視認できます。それこそがキズなのかコーティング層のハガレやクラックなのかの判定基準ですから「シロウトなので詳細は不明」などと出品ページに公然と明記している出品者は「単にクレームを避ける為の逃げ口上」と言い切れますね(笑)
なぜならいったい人間の目で見て「見える/見えない/視認できる/視認できない」の相違に はたして「シロウトなのか玄人なのかの違いが影響するのか?」と問い正したいです。
するとそう言われた時に「それをキズと判定するのか汚れと判定するのか或いはカビなのかの判定はシロウトには難しい」と言ってきますが、そのような判定をするべきと指摘しているのではなく(笑)「光学系内に何か見えている事は明白なのかスカッとクリアなのかの違いは人の目で見て容易に判断できる」と指摘しているのであって「決して判定しろと言っていない!」ワケです(笑)
その意味で光学系内が「スカッとクリアで何もありません!」と表記されていた出品のオールドレンズが手元に届いて何か視認できた時に「それは個人の主観」と言う逃げ方はどう考えても成り立ちませんね(笑)
それこそが当方の出品ページで極微細な点キズの数を逐一記載している根拠であってどんなにスカッとクリアに見えていても経年劣化に於けるCO2溶解に伴う光学硝子材侵食は防げないので (これは工業用硝子製造会社での取材でご教授頂きました) 明記している次第です。
そのような点状のキズが複数あるのに光学系内が「スカッとクリア!」と明記しているのは辻褄が合わないと受け取るのではなくて「ちゃんとその点キズの根拠をCO2溶解と明記している」点に於いて (或いは一部は気泡も含まれると明記している場合もある) イコールの話にならないワケで、そこにいったい物理的な根拠と個人の主観との一致点が介在するのか否かと問い正したいです(笑)
今回の個体は残念ながらそのように前玉の表面側だけにコーティング層のクラックが無数に残っています。
またそれは2枚目の写真でその言い分が真正である事をまさに示しており「見る角度に違いで見えたり見えなかったりしている」のが明白で物理的な光学硝子面のキズではないと指摘できます (このような状況を以てコーティング層なのか硝子面なのかの判定が適うと知りました)。
この2枚目のような写真だけを出品ページに掲載されてしまえばどう考えても落札した個体の状況は正しく伝わっていないと言える次第で、まもなく来月になればヤフオク! のルールも改定されてこのような出品者の行為自体を「ルール違反」として指摘できるようになります。
つまり当然ながら許容範囲がありますが落札者に事実を伝えようとしているのかどうかは自ずとヤフオク! 側の判断で裁定できる与件が固まりつつあります。
↑光学系後群側もスカッとクリアなままでLED光照射でも極薄いクモリが皆無です。光学系前群も前玉の粒々を除外すれば同様極薄いクモリが皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:11点、目立つ点キズ:8点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前玉表面にカビ除去痕複数残っています)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内極微細な薄い4mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません。
・前玉表面のコーティング層経年劣化進行に伴いコーティング層にクラックが生じており一見すると無数に点状/粒状の汚れ/微細なキズに見えますが拡大するとクラックなのが分かります。一般的な撮影時の影響は少ないと推測しますが、光源を含むシ〜ンや逆光撮影時には僅かにフレアやフレア出現率が上がる懸念が残ります。また特に円形ボケ表出時には微細な影が内側に含まれる事も予想できますがそれほど目立って視認できないと考えます(焦点距離50mmの為)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。当初バラす前のチェック時点では絞り環のクリック感がガチガチした印象だったので軽い操作性になるよう板バネを微調整済です。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら均等に閉じていきます (途中で多少絞り羽根の角度により角張った印象に至ります)。
なお「絞り羽根に生じている擦れ」はそもそも絞り羽根が互いに擦れあって開閉する原理なので当方では一切関知していません。もしもこの点を気にされるなら掲載写真を見ればスレがある事をちゃんと分かるよう写しているのでそれを判断に落札しなければ良いだけです。
時に当方と同じ同業者たる『転売屋/転売ヤー』の中にたまに出品個体の絞り羽根の擦れが少ない事をメリットとしてあたかも希少なように出品ページに記載して価格を吊り上げていますが(笑)、そんなのは「原理原則」からして何の価値にも至りません(笑)
それ希少と価値に指摘するなら「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量)」まで適切なのか否かをちゃんと検査して出品するべきですね!(笑)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① marumi製MC-UVフィルター (新品)
② 本体『SUPER ROKKOR 5cm/f1.8 (L39)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式L39後キャップ (新品)
④ 純正樹脂製被せ式前キャップ (中古品)
冒頭解説のとおりこのモデルのピントの山は突然瞬時に「スパッと合焦する」特徴があるので少々軽めの印象で距離環を回すトルク感を微調整して仕上げています。また距離計連動ヘリコイドの設定は当初位置のままで仕上げました。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑絞り環を回して設定絞り値を「f2」にセットして撮影していますがそもそも開放f値が「f1.8」なのでほとんど変化が視認できません(笑)
↑f値「f8」です。このf値くらいまでがこのモデルでの最高の描写特性でこの後には「回折現象」の影響が少しずつ増してきます。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
↑f値「f11」での撮影です。ミニカーの背景のお城模型の入口辺りに「回折現象」の影響画が現れ始めています。
↑f値「f16」です。本格的に「回折現象」の影響が現れ始めて背景のコントラスト低下と極僅かですがピント面の解像度も堕ち始めています。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。完全に「回折現象」の影響が出て解像度低下とコントラスト低下の両方が明確です。それでも当初バラす前の実写チェック時に感じた「ちょっとピントが甘いかな?」感がちゃんと光学硝子レンズ格納筒の硬締めが緩んでいた理由から (おそらく過去メンテナンス時に指で締め付けていた) 極僅かですが鋭いピント面に復活しました(笑)