◎ Konishiroku (小西六写真工業) Hexar 50mm/f3.5《沈胴式》(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
小西六写真工業製標準レンズ・・・・、
『Hexar 50mm/f3.5《沈胴式》(L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Украине! Героям слава!
当方がオーバーホールを始めて既に10年が経ちましたが今までの扱いがなく今回が初めてのオールドレンズです (沈胴式)。
しかし実は正直に言うと扱いは今回が3本目なのですが、何と今までの2本はジャンク品に 堕ちてしまいジャンク専用箱の中に転がっています(涙) 従ってちゃんとまともに最後まで 仕上げられた個体数のカウントとして「今回が初めて」と表現しているだけの話です。
ジャンク品に堕ちてしまった個体の1本目はヘリコイド (オスメス) のネジ込みで噛んでしまいいろいろ試しつつやっと分離できたもののとてもピント合わせできるトルクには至らず諦めました。
また2本目がジャンク品に堕ちた理由は光学系前群に過去メンテナンス時に細工が施されていて解体したところおそらく別個体からの転用「ニコイチ」と判定しその甘いピント面からどうにもならないと諦めて転がっている次第です。
その意味でこのモデルは曰く付きの相性が悪いモデルと普段から敬遠していた一つです。
しかしながら光学系が典型的なテッサー型なれどさすがコニカの前身たる小西六写真工業製とあって、いわゆるテッサー型光学系の弱点にも成り得る解像感やコントラスト/色乗りなどが まさにコニカレベルに調整されている設計で「繊細な雰囲気を漂わせながらもここぞと言う処でダイナミック!」みたいな少々得体の知れない魅力に昔から憑かれており(笑)、今回も懲りずに三度目の正直に臨んだワケです。
当初バラす前の個体はピント面がかなり甘く実際にバラしてみるとやはり光学系内に細工が 施されていました。さらに前玉に取り付けられていた古いフィルターが完全固着していて一切外れず「加熱処置」しようが何しようが全く歯が立たない状況でした。
半日がかりでいろいろあ〜だこ〜だ試してようやく外したら、何とフィルター枠は「エポキシ系接着剤」で固められていたと言う飛んでもない個体だったのです。どうりで何をやっても ビクともしなかったのが納得ですが、はたしてちゃんとネジ山が互いに存在するのにどうしてエポキシ系接着剤で固めまくる必要があったのか「???」です。
とにかくフィルター枠径 (ネジ込みのネジ山径) が「⌀ 19mm」なので一度ネジ込むとそう簡単に外すことが適いません (指の腹のほうが大きすぎて確実に掴む事が適わない)。そんなこんなで今回も「ジャンク品専用箱」が常に目の前にチラチラする中での作業となり何とも疲れが 溜まったという感じです(泣)
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コニカの歴史は相当古く、何と明治6年 (1873年) に東京麹町で「米穀商小西屋」を営んでいた6代目杉浦六右衛門が、25歳の時に当時の写真館で撮影した写真に感動し写真材料の扱いを 始めたのが原点です。その後東京日本橋に写真材料と薬種を扱う「小西本店」を開業したのが創設になります。
それから30年後の明治36年 (1903年) 国産初のブランド付カメラ 『チェリー手提用暗函 (6枚の乾板装填式)』国産初の印画紙「さくら 白金タイプ紙」を発売しました (左写真)。
その後大正12年 (1923年) 現在の東京工芸大学の前身「小西写真専門学校」を創設し、昭和11年 (1936年) に「株式会社小西六本店」と 社名変更しています。
さらに戦前の1937年「株式会社小西六」と改称し後の1943年に「小西六写真工業株式会社」として終戦を迎えています。
戦後「KONICA/コニカ」に社名もブランドも統一したのは1987年になり2003年にMINOLTAを子会社化して「コニカミノルタホールディングス」に至りその後の細かい変遷へと拡大縮小など適時進め続けています。
今回扱った『Hexar 50mm/f3.5《沈胴式》(L39)』は本来引き延ばし用レンズとして開発されつつ合わせて1947年にアメリカ輸出向けライカ判レンズシャッター式フィルムカメラの固定 レンズとして実装したのが始まりです。
その後小西六写真工業ではライカ判レンジファインダーカメラを用意しなかったので、当時他社から発売されていたバルナック型ライカ判コピーモデルへのセットレンズ供給に的を絞り1955年にネジ込み式の「L39マウント」規格として発売されたのが今回のモデルです。
(右写真は当時のChiyotaxにセット販売されていた同型品)
光学系は3群4枚の典型的なテッサー型構成で小西六写真工業ではテッサー型光学系を指して「Hexar (ヘキサー)」と命名 していました。
巷ではライカの「Leitz Elmar 50mm/f3.5 (L39)」のデッドコピーなどと語られ続けていますが(笑)、戦後すぐの1948年に制定されていた旧輸出品取締法、合わせて1946年に先行 して制定されていた旧日本輸出規格 (新JES:JIS規格の前身) があるのでデッドコピーしていた場合にはそもそも海外向けの輸出が一切適いません (同法輸出39携帯写真機に拠る)。
そこで今回もう少し深掘りして調べると同じ敗戦国だったドイツは国が戦後に旧東西ドイツに二分された為に戦前〜戦中の特許権が剥奪されてしまいましたが一方連合国軍の中でアメリカ軍にのみ占領統治された事から同じ敗戦国たる日本は米国の趣旨を汲み取り戦前までの特許権についてのみ剥奪を免れたようです (専門研究者1人分の論文しか確認できておらず確認作業はいまだ未完状態)。
逆に言えばそれほど海外特にヨーロッパーの光学メーカーから特許権侵害 (模倣) や製品の意匠模倣などで戦後すぐの時点から訴訟まで起こされていた為に戦後経済の建て直しを急務と据えていた当時の日本政府にとり最も効果的に経済の活力を得る手段のひとつとして「輸出奨励」を掲げていたことからもこれら法改正へと強く舵切りして政府が直接的に産業工業への関与を積極的に行い特に輸出について工業製品に対する世界に向けた信用醸成に努めていた背景が あります。
これは戦後すぐ1945年時点から「アウトサイダー品」と呼ばれていた「いわゆるパクリ品」に対する非常に厳しい締め付け策であり、特に大手光学メーカーの海外向け輸出を保護する意味合いが強かったことが当時の政治家の回顧録などにも出てきたりして浮かび上がります。
例えば旧ソ連製のバルナック型ライカコピーモデル「Zorki (ゾルキー)」を基としてさらに模倣の工夫を重ねたレンジファインダーカメラやそのセットレンズなどの「アウトサイダー品」が市場流通していた背景からもいわゆるデッドコピー温床を断つべくすぐさま法改正に臨み大手光学メーカーの海外向け輸出に戦後経済建て直しの突破口を見出していたことが伺えます。
つまり確かに戦前〜戦中の旧ドイツの特許権剥奪によりその特許権の利用に係る真義は問われずとも戦後の日本に於いて適切に特許登録が適っていた場合にそれを根拠として「模倣品ではない」ことを世界中に知らしめる目的に駆られて政府が関与した「ある一件」がその証拠として今現在も数多く流通し続けています(笑)
実はこのような考察を抱いた背景が当方にはあります。当時流行っていた左写真のシールを皆さんは一度は見たことがあると思います。今でも市場に出回っているオールドレンズの多くの個体に貼られている場合が多いですね。
下手するとこのシールが貼り付けられている事を「安心材料」の一つとして捉えている人も 居るかも知れません。しかしそれは全くの思い込みです(笑)
はたしてこのシールの意味とは???(笑)
◉ JCIA:日本写真機工業会
終戦当時1946年に発足した光学精機工業界写真部会 (当時17社) を前身とし1953年に政府からカメラ産業が重要輸出産業に指定されたことを受け、1954年に部会を独立させて「日本写真機工業会 (JCIA)」としました。任務は日本の世界に於けるカメラ産業の発展、及び写真文化の普及を命題としていました。2000年に団体は解散し「カメラ映像機器工業会 (CIPA)」へと 引き継がれます。
◉ JCII:日本写真機検査協会
輸出品取締法 (1948年制定) により日本工業規格 (JIS) の前身として日本輸出規格 (JES:輸出39携帯写真機) の最低標準規格/梱包規格が制定され、当初輸出業者の自主検査により実施されていましたが品質向上/管理の寄与には程遠く1956年に第三者検査機関として「日本写真機検査協会 (JCII)」が発足し (当初7名)、輸出品取締法から輸出検査法に改訂された1957年を契機に一定水準を満たさなければ輸出できない検査/審査を執り行う機関へと変貌しました。
◉ JMDC:財団法人日本機械デザインセンター
当時海外光学メーカーより意匠 (デザイン) 模倣のクレームや訴訟が多数発生したのを受け製品意匠と輸出価格の適正化 (自主輸出規制) を狙い発足したのが始まりです。輸出品に対するデザイン認定 (意匠審査/認定) 業務の他認定書の発行及び製品個体への認定シール貼付を課していましたが、実際はJMDCからの委託を受けてJCIIが輸出品全数にシール貼付を代行していたようです (製産メーカーにシールが渡り出荷時に貼付済なのを輸出認定時に抜き取り検査して全数検査としていた/輸出認可は事前申請だった為)。
これらのことからこの「PASSED」シールはある一定の品質基準に合致した製品であり、同時に海外意匠を模倣していないことを証明する「証」であったことが分かります。しかし製品の性能機能を厳密に保証する (つまり精度保証する) 目的で貼り付けしていたワケではなく、あくまでもグローバル的な視点から見た最低基準の話であり、さらにそれは輸出品全数に及ぶ個体の「全数検査」を意味するものではないことを理解しなければイケマセン。
つまりこのシールには「何の意味も無い」と考えたほうが良さそうですね(笑) ヤフオク! などを見ていても、時々このシールが張り付いている事をメリットとして謳っている出品者が居ますが、笑ってしまいます。当方などはこのシールが貼り付いていたせいで経年焼けしてしまうので (シールの痕が残る) むしろ厄介だと受け取っています。
このシールの存在こそが当時の日本政府が自ら工業界に関与して日本製品の信憑性とその信用性醸成に躍起になっていた事の表れでもあるとみています。その意味で前述の「エルマーの デッドコピー」と言う認識は残念ながら法的根拠からしても該当しないと断言できます(笑)
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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して収差の影響を受けつつもキレイな円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。そもそも典型的なテッサー型光学系なので円形ボケの表出はどちらかと言うと得意分野です。収差の影響もさして酷くなく歪な円形ボケの現れ方も大人しめな印象です。たださすがテッサー型光学系だけあってトロトロボケに至るのかと言うとなかなか厳しく背景ボケは相応に明確にエッジを残すのである意味それがテッサー型のデメリットでもあるのかも知れません。
◉ 二段目
さらに円形ボケが破綻して純粋な背景ボケへと変わりますがその滲みの境界にエッジの影が残りつつも相応に人の目で見た時の記憶領域のボケ方に近いようなイメージで「適度な距離感を残す」ためにそれが「空気感」のようなリアルな立体感へと繋がります。また合わせてテッサー型光学系の恩恵に授かりピント面の素材感や材質感を残す質感表現能力の高さは折紙付きです。
◉ 三段目
この段ではコントラストとダイナミックレンジをチェックする為にピックアップしました。左側2枚で観ると高いコントラストの印象で合わせてピント面の質感表現能力の高さも手伝いますが右側2枚では逆にダイナミックレンジの広さも高いものの暗部潰れには少々弱い印象です。特に明部での締まりの良さは相当保持できているのが1955年発売と言う年代を感じさせません。
◉ 四段目
この段では左側2枚で被写界深度が相当広めなのをピックアップし右側で光源を含むフレアなどの状況としてピックアップしていますが、いずれもカラー撮影と白黒撮影との比較で並べました。カラー写真を単に白黒化したのではなくちゃんと撮影しているように見えます。そうやって見比べるとカラー成分がグレースケールの256階調にどのように割り振られるのかが多少なりとも掴めてありがたいですね。やはりダイナミックレンジと同じ傾向で明部については相応に耐性が高いですが暗部はストンと潰れます。
光学系は3群4枚の典型的なテッサー型ですが前出の当時のカタログ印刷に掲載されている構成図にほぼ近似するものの実際に今回のオーバーホールで完全解体した後に光学系の清掃時に逐一当方の手でデジタルノギスを使って計測するとビミョ〜に各群の曲率や厚みなどに 僅かな相違がありました。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ご覧のとおり内部構造はとても簡素でパーツ点数まで少ないです。その意味では初心者向けに見えますが「ライカ判の距離計連動の仕組み」さえ知っていればおそらく整備できちゃうでしょう。
もちろんその他の細々した部分の微調整や仕上げ方は根本的に技術スキルが大きく影響してくるので単にバラして掃除してグリース塗って組み上げれば良いと考えるとなかなか難しいかも知れませんね(笑) そんな話しはどんなオールドレンズに対しても言える事なのでこのモデルに限った話しでは決してありません。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する為の鏡筒ですが、このモデルは鏡胴が「前部/後部の二分割式」なので個別に組み上げていけば良いだけです。但しご覧のとおり全ての部位や構成パーツの多くが真鍮 (黄銅) 製なので相応にズッシリとした重みを感じますし、一番のポイントは「黄銅の応力を理解しているかどうか」がその微調整に於いて一番重要です。その応力の影響が現れたら拙い仕様なのか、設計なのか、或いは応力の影響まで考えて設計されている場所なのか?・・このような話しが「原理原則」なので、前述の技術スキルに係る部分と密接に関係しています。
↑取り外していた「位置決め環」を組み込んだところです (赤色矢印)。どうしてこの「位置決め環」をワザワザ取り外していたのかと言えば、それは当初バラす前のチェック時点で既に完全開放していなかったからです。
今回の個体はおそらく過去に最低でも1回はメンテナンスされていますがパーツ点数が少ない分過去メンテナンス時の痕跡を探す事が叶いません。もしかしたら2回整備されているかも知れませんがとにかく絞り羽根の開閉角度の微調整が適切ではないのでバラす前の時点で開放f値「f3.5」にした時に絞り羽根の縁が「ほんの僅か0.7mmくらいの印象で露出していた」ワケです。
それをちゃんと完全開放状態に改善させる為にこの「位置決め環」を一旦外して「磨き研磨」により適切な固定になるよう仕上げて組み戻した次第です。
と言うのも絞り羽根が刺さる為の「位置決め環」ですがバラしている最中に絞り羽根を外そうとしてもガチガチにハマったままで、仕方なく裏からに押して外す必要がある絞り羽根が半数近くありました。
つまり絞り羽根が刺さる先の上の写真で見えている「穴」が経年劣化による酸化/腐食/錆びによって抵抗/負荷/摩擦が増大し絞り羽根がハマったまま外れなかったワケです。
それがどうして拙いのかと言えば「いずれキー脱落の因果関係に至る」ので脱落したらイコール「製品寿命」に至る為にそれを防ぐ延命処置として一旦取り外して「磨き研磨」した次第です。
その意味で何でもかんでもバラバラにして磨けば良い話しではなく (磨いたら拙い場所だってある) ちゃんと解体する理由があるから外しているワケです(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑こんな感じで「カーボン仕上げ」の10枚の絞り羽根が組み込まれて絞りユニットが完成します。もちろん前述のとおり「位置決め環」を正しく適切な位置で固定したので絞り羽根は開放f値の時「ちゃんと100%完全開放する」のは当たり前の話しです(笑)
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。光学系がテッサー型なのでそれほど鏡筒が深い必要がありません。
↑絞り環に鋼球ボールとスプリングを組み込んでからセットします。設定絞り値の目安として基準「●」マーカーがちゃんと刻印されていてクリック感を感じた時にその絞り値と刻印マーカーがピタリと一致します。
こんな話しは至極当たり前の事ですが、実は前述の「位置決め環の固定位置が正しいからこそピタリと一致する」のがまさに「原理原則」です。
↑光学系前後群を格納したところです。基本的にこの状態で鏡胴「前部」の主要部分は完成なのでここから先は鏡胴「後部」の工程に移ります。
↑マウント部ですがこのモデルはライカ判ネジ込み式の「L39マウント規格」なのでヘリコイド (メス側) のネジ山が切削されているにしても「距離計連動を兼ねる」のがそもそもの仕様です。
↑このモデルが「沈胴式」なのでヘリコイド (オスメス) のセットは一つだけで完結してしまいます。ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリをつけた場所までネジ込みます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
合わせてこのヘリコイド (オス側) が「距離計連動ヘリコイドも兼ねる」のでそのチェックも必要になりますが当方にはライカカメラが無いので当初バラす前の位置で設定しています。
ヘリコイド (オス側) の内側には「不織布」が張ってあってこの抵抗/負荷/摩擦によって「沈胴筒のスライド操作に適度な抵抗を与えている」概念です。またさらに内側には「沈胴筒のロック用の爪」まで備わります。
↑このモデルは距離環と基準「▼」マーカーが刻印されている指標値環が互いに一般的なオールドレンズと比べると反対の関係性です。当然ながらヘリコイドのネジ込み位置が適切なので基準「▼」マーカーと∞刻印とがピタリと一致するのも当然の話です。
↑合わせて「沈胴筒」をセットしたところですがやはり「赤色矢印刻印」もちゃんと基準「▼」マーカー近くに現れますね(笑)
この後は完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。3度目の正直ではありませんが(笑)、ようやくちゃんと適切に仕上がりました。前玉の枠にエポキシ系接着剤で接着されていたフィルターも外すことができてキレイにエポキシ系接着剤も除去できご覧の仕上がりです。フィルターが装着されていたままだった分前玉の経年によるキズなどの被害は少なめです。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。ハッキリ言って「スカッとクリア!」です(笑)
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側もスカッとクリアですが後玉表面に極微細な薄いヘアラインキズや点キズが僅かに残っています。但しLED光照射で視認できる極薄いクモリなどは皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:10点
後群内:15点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後群内にカビ除去痕僅かに残っています)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(特に後群内極微細な薄い6mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞り」で閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・回転式ヘリコイド駆動なので距離環を回していくと一緒に絞り環側も回っていきます。ピント合わせ後に絞り環操作するとクリック感を伴う仕様のため相応にチカラが及び容易にピント位置がズレてしまいます。撮影時は先に設定絞り値を決めてからピント合わせするか、ピント合わせ後に絞り環操作する際は距離環が動かないよう保持する必要があります。
・距離計連動ヘリコイド設定は当初バラす前の位置で設定してあります。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・距離環のツマミには無限遠位置でのロック機構が備わりますが極僅かにツマミ側台座が曲がっている為に僅かに引っ掛かり感を感じる事があります。板状の台座スペースに余裕がないので変形を正せずにそのままにしてあります(事前に告知済なのでクレーム対象としません)。
・附属品の樹脂製被せ式前キャップは既にフィルター装着済でその分で僅かに突出するので一般的な汎用樹脂製スナップ式前キャップの装着が適いません。その為あくまでも代用として(輸送保護的に)被せ式のキャップを附属させているだけです(実用性は少々心許ない印象)のでご留意下さいませ。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① marumi製UVフィルター (新品)
② 本体『Hexar 50mm/f3.5《沈胴式》(L39)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
↑上の写真はひっくり返して後玉が上方向で撮影していますが「沈胴筒を格納した状態」になります (赤色矢印)。
↑この時の「距離計連動ヘリコイドから先の突出:5.58㍉」になるので沈胴筒格納時にカメラボディ側マウント部内部への干渉などご確認下さいませ。
↑また前玉直前にあるフィルター枠はご覧のようにネジ切り/ネジ山3列程度なので冒頭のカタログ仕様のとおり「⌀ 19mm」のフィルターを使います。3列のネジ山なのでフィルター径が小さい分、指で掴む事すら難しく一度ネジ込むとなかなか外せません。
逆にネジ込む際はキッチリ最後までネジ込まないと装着したままの状態で使用中に少しずつ回ってしまい突然外れる懸念も残るので「フィルターを装着した状態で梱包し発送」します。その場合最後までネジ込むので外すのは難しいです。
なおこのモデルはヘリコイド回転式駆動なので距離環のツマミを保持して回していくと絞り環側も一緒に回転してしまいます。従ってピント合わせの後に絞り環操作するとアッと言う間にピント位置がズレてしまうので「先に設定絞り値をセット」してからピント合わせする使い方をお勧め致します。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しました。開放f値が「f3.5」なのであまり変化がありませんがピント面が僅かに引き締まる印象です。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。「回折現象」の影響が現れピント面の解像度低下や背景のお城の模型のコントラスト低下も僅かに進んでいます。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
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《 事 後 談 》
一度ご落札頂きましたが当方のミスにより大変なご迷惑をお掛けしてしまい最終的に返品になり全額ご返金させて頂きましたので今回再出品になります。
当方がオーバーホール工程に於いて完全解体した後最後に無限遠位置確認として実写確認してから最終的に鏡筒を固定するイモネジを締め付ける際に一度机上で転がしてしまい、正しい位置で固定したつもりになっていましたが現実はズレていました。
さらに体調の関係から一度そのまま休んでしまい翌日無限遠位置の実写確認するのを完全に失念してしまい出品した為に「無限遠がでていない個体」に陥っていたのです。
ご落札頂きお届けしたところそのご指摘を受けて再調整として戻りましたが、今度は再び当方自身がご落札者様の確認環境を勘違いして受け取ってしまいムリヤリ無限遠位置を合わせてしまった為に再度ご迷惑をお掛けしてしまいました。
結果前回返品キャンセルに至りましたが、再出品にあたり再びバラしてオーバーホールをもう一度やり直して今回は正しく無限遠位置の確認と共にマウントアダプタ装着の上に実写確認し無限遠位置を視認しています。
なお、どうしてもこのモデルの距離環ツマミ部分のロック機構遊び (極僅かな0.8mm程の遊び) から極僅かにオーバーインフ状態に設定しています。この改善はできませんのでご留意下さいませ。