◎ MIRANDA (ミランダカメラ) AUTO MIRANDA 50mm/f1.4《初期型》(MB)

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オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


ついこの前ミランダ製標準レンズ「AUTO MIRANDA 50mm/f1.4 (MB)」をオーバーホール しましたが、今回のオーバーホール/修理では概算見積の際に思い違いしており、同型モデルのつもりで見積もってしまいました。しかし届いた現物を拝見すると異なる世代のタイプで したので、ご請求金額には「構造検討料金」が加算されています。
申し訳御座いません・・。

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この当時のミランダ製オールドレンズは、他社光学メーカーからの供給で賄っていたとの案内がネット上には多く見られ、且つ「世田谷光機」による委託生産品との解説もあります。

しかし「世田谷光機」の沿革を見ていくと、どう考えても前述の解説では辻褄が合いません。「世田谷光機」は1940年に開設されたマミヤ光機製作所の世田谷工場にあたり、1950年に世田谷工場を法人化して「世田谷光機(株)」としマミヤ光機製作所も「マミヤ光機(株)」と法人格に改組しています。1963年にはマミヤ光機は浦和工場を開設し、同時に「世田谷光機」を吸収合併し東京工場としています。さらに翌年1964年に東京工場は閉鎖され浦和工場に移管統合が終わっています。

この沿革から捉えると「世田谷光機」の稼動は実質的に1963年までと考えられるので、その年代が一つの目安になります。

一方、今回扱うミランダカメラ製標準レンズ『AUTO MIRANDA 50mm/f1.4《初期型》(MB)』は、その発売時期がネット上を調べても曖昧な表現でごまかしたまま明確になっていません。

そこでいろいろ調べてみると1966年に発売されたミランダカメラ製の一眼レフ (フィルム) カメラ「SENSOREX」にアクセサリーシューを附随させたモデル「SENSOREX C」の取扱説明書に、今回の標準レンズがセットレンズとして写真掲載されていました。

後にも先にも「SENSOREX C」の取扱説明書にしか載っていません。
(他は全て前回扱った標準レンズに変わっている)

従って具体的な記載は発見できませんでしたが、これらの事実から1966年以降1968年辺りまでの間に登場した標準レンズではないかと推察しています (右写真はSENSOREX C)。

すると前述の「世田谷光機」との関係になりますが、実質的に世田谷光機が閉鎖されている1964年以降に登場した標準レンズと考えられるので、ネット上で案内されている「世田谷光機製」との解説は不適当ではないかと考えられます。

また実装している光学系は、この一眼レフ (フィルム) カメラ「SENSOREX C」から後に登場する「SENSOMAT/SENSOMAT RE」の間だけ「6群8枚」の構成図が取扱説明書に掲載されていますが、その後のモデルは全て前回扱ったモデルの光学系「5群7枚」に変わっています。

↑上の一覧は、前述の「世田谷光機」の状況と合わせてと当時発売されていた一眼レフ (フィルム) カメラのモデル銘、及びその取扱説明書掲載の標準レンズを関連づけて一覧にしました。

すると、1966年に発売されたフィルムカメラ「SENSOREX」以前の取扱説明書には全て「(Soligor) MIRANDA 5cm/f1.9」が載っており、オプション交換レンズ群の中にも「50mm/f1.4」の記載が一切ありません。

また逆に1972年に登場したフィルムカメラ「SENSOREX II」以降は全て「5群7枚」の光学系構成に変わっており、今回扱うモデルと同じ「6群8枚」モデルは消えてしまいました。

↑上の写真は、左側2枚が「AUTOMEX」にセットされていた頃の「Soligor Miranda 5cm/
f1.9
」で製造番号には先頭に「」が附随しています。

また3枚目はフィルムカメラ「MIRANDA T」に同様「Soligor Miranda 5cm/f1.9」ですがシャッターボタン機構が附随しており、且つ製造番号も先頭に「」が附随します。最後の
右端は製造番号に「」が附随したタイプです。
(K:コーワ製造/T:タイカ製造)

これらの事柄から考察すると、今回扱うモデルの光学系「6群8枚」タイプはミランダカメラ 内製モデルなのではないかと考えています。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から円形ボケが破綻して収差ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、光学系の基本がダブルガウス型構成であり、それを拡張している分真円の円形ボケ表出は難しいようですし、すぐにアウトフォーカス部が滲んでしまうので輪郭を残すことも苦手です。

二段目
さらに独特な滲み方をしていくのでトロトロボケに至るとしても背景には収差ボケの要素が多分に見られます。

光学系は当時の取扱説明書に掲載されているので明白ですが、6群8枚の拡張ダブルガウス型構成とでも言うのでしょうか。

今回バラした際の清掃時にデジタルノギスで個別に計測していくと、取扱説明書に掲載されている構成図とは特に光学系後群側のサイズが極僅かに異なりました。

右図は当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。前回扱った標準レンズ「AUTO MIRANDA 50mm/f1.4 (MB)」と似たような設計概念ですが、登場時期としては今回扱うモデルのほうが先発です。

実際にバラしてみると、やはり内部の構造面でも後の時代に登場する同型モデルと比較して洗練されていない要素を多分に含んでおり、特に微調整箇所が相応に含まれているので「組み立て手順の考察」が必要になる設計でした。

ちなみに先日扱ったモデルと「絞り羽根の設計が同一」なのを確認しているので、製造元はこの後に登場する標準レンズと同じとみています。従って今回のモデルが「初期型」の位置付けに当たるのではないでしょうか。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。ご覧のとおり鏡筒外壁にはヘリコイド (オス側) のネジ山が用意されています。

鏡筒の縁には「イモネジの跡」が両サイドに見られますが (赤色矢印)、その跡が3点ずつ残っていますから「1点だけが製産時点」であり過去に2回メンテナンスされていることが分かります。

さらにその過去メンテナンス時にバラした整備者は「原理原則」を理解していなかった為にそのまま外そうとしてしまいグリーンの矢印のようにイモネジが擦れていった痕跡が残っています (何でもかんでも回せば外れると考えていた証拠)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑前の工程で一般的なオールドレンズ同様に簡単に絞りユニットを組み込んでいるように見えてしまいますが(笑)、実はこのモデルは相当厄介な絞りユニットの設計を採っています。

普通絞りユニットの「位置決め環」側は絞り羽根の格納位置を決める意味になるので「位置は固定」なのですが、このモデルでは「位置決め環」の固定位置をズラして微調整するよう設計されています。上の解説はそれを示していますが「イモネジを伴う締付環」が用意されており「位置決め環」はダイレクトにネジ止め固定されていない方式を採っています。

この「位置決め環 (上の写真で見えている環/リング/輪っか)」の裏側に「開閉環」と言う絞り羽根の角度を変更しながら回る環 (リング/輪っか) が入っています。

↑完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をひっくり返して今度は裏側の後玉側方向から撮影しました。

開閉アーム」が1本だけ飛び出ているだけの非常にシンプルな構造なのですが、一般的な普通のオールドレンズとは大きく異なる要素を示しているのがグリーンの矢印です。

光学系後群側の光学硝子レンズ格納筒が鏡筒に締付ネジ (4本) で締め付け固定されているワケですが (グリーンの矢印)、この光学系後群用の格納筒の締め付け如何によっては「光路長ズレ (過不足)」が発生する危険を含んでいます

過去メンテナンスした際の整備者はそれを見逃していました(笑)

当初バラす前の実写チェックで「極僅かに甘いピント面」のように感じたのですが、もちろんこのモデル自体を扱うのが今回初めてですからそれが正常なのかも知れません。しかし光路長ズレが生じている懸念も捨てきれないので記憶しながら作業を進めた次第です。

さらに過去メンテナンス時の整備者が見落としていた要素があり「絞り羽根開閉幅微調整機能」が絞りユニットに備わっている点を全く気がついていません(笑)

従って絞り羽根を見ると明白ですが「互いに閉じすぎて咬んでしまった跡が残っている」ワケです。

↑上の写真は光学系後群用の光学硝子レンズ格納筒が附随する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を左側に並べ、さらに右横に光学系前群用の光学硝子レンズ格納筒を一緒に撮影しています。

するとご覧のとおり2つの格納筒の内部 (内側) にはネジ山が一切無いことが分かります。つまりこのモデルの光学系は前後群共に「落とし込み方式」を採っていることになります。

落とし込み方式」とは、各構成光学硝子レンズをストンと格納筒の中に落とし込んで次々に重ね合わせて最後に「1本の締付環」だけで締め付け固定する方式を言います。

このモデルの光学系は前後群共に「3群ずつ」構成されているワケですが、それらは全て落とし込みだけでセットされることになりますから、ここに「光路長ズレ (過不足)」の懸念が大であると考えられます。

しかし過去メンテナンス者はお構いなしのまま組み上げてしまったようで、当初バラす前のピント面が甘い印象は正しかったようです(笑)

ロシアンレンズではこの「落とし込み方式」は多用されていますが(笑)、日本製オールドレンズに採用しているモデルは久しぶりに見ました。光路長確保が神経質になるので、正直あまり拘わりたくない設計です。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

当初バラした直後は過去メンテナンス時に「白色系グリース」が使われていましたが、よく見かける (使われている) タイプではなく正真正銘の「光学レンズ専用グリース」でした。

逆に言えば現在市場に流通している「白色系グリース」で一般的に手に入るタイプは、本当は光学レンズ専用のグリースではありません(笑) 当方で用意している「白色系グリース」も光学レンズ専用タイプではありません。

逆に「黄褐色系グリース」に関しては光学レンズ専用タイプを調達しているので (グリース会社と相談して決めている)、自ずと仕上がりトルクの質感が全く異なります。その結果が「シットリ感漂うトルク感」であり、当方の独特な感触なので、それを敢えて指定してオーバーホール/修理をご依頼頂く方も最近は非常に多くなりました(笑)

皆さんに言わせると、ヌルヌルッとしたヌメヌメッとしたなどの表現で「シットリしたトルク感」とよく言われますし、ピント合わせ時のス〜ッと位置が決まる感触が「チョ〜気持ちイイ!」と仰る方も多いですね (ありがたいことです)(笑)

まぁ〜そのような感触になるよう、個体別に (ヘリコイドのネジ山の状況により) 粘性をチョイスして塗布しているので必然的な結果ではあります(笑)

↑完成したヘリコイド (オスメス) の状態をひっくり返して裏側 (後玉側) 方向から撮影しました。前述の「過去メンテナンス時に絞り羽根が咬んでしまった」原因が上の解説で、スプリングが「直進キー」の締付ネジの一つに附随しています (赤色矢印)。

このスプリングは「開閉アーム」をガシッと掴んだままになるのですが、ここの工程ではまだスプリングをセットしません (外したままの状態)。これを過去メンテナンス時の整備者は組み付けてしまったので、絞り羽根が最後まで勢い良く閉じてしまい「互いに噛み合ってしまって凹んだ」ワケです。

このように「ただ単にバラして組み戻しているだけの整備」をしている整備者の場合には「原理原則」も一切考えずに、しかも「観察と考察」もできないのでそのような事に陥ってしまいます(笑)

少なくとも使っているヘリコイドグリースが光学レンズ専用タイプなので、シロウト整備ではないことが明白ですから、いったい何をやっているのか甚だ恥ずかしい限りですね(笑)

↑こちらはマウント部の爪部分です。もちろん全て構成パーツを取り外して経年の酸化/腐食/錆びなどを可能な限り除去しています。

↑こちらはマウント部内部のほうを撮影していますが、各構成パーツを既に取り外しており当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。

当初バラした直後は、この内部にまで「白色系グリース」がビッチリ塗られており、既に経年劣化進行から「濃いグレー状」に変質していました。何でもかんでも稼動部にはグリースを塗ったくれば良いと言う浅はかな「グリースに頼った整備」の最たるモノですね(笑)

それでイッパシのプロの整備会社だというのだから恐れ入ってしまいます・・(笑)

↑当方が行うオーバーホールでは、ご覧のとおりこの内部にグリースの類は塗りません(笑)

どうしてなのか???

ちゃんと「観察と考察」すれば一目瞭然ですが、例えばマウント部内部の表裏壁は上の写真でも一部が反射していますが「鏡面仕上げ」です。一方内部にセットされる、例えば「絞り環用連係環 (リング/輪っか)」などは「梨地仕上げ」のメッキ加工が施されています。

鏡面仕上げと梨地」考えれば明白ですね・・(笑)

制御アーム」の途中には「なだらかなカーブ」が用意されており、そこに「絞り環用連係環 (リング/輪っか)」から飛び出ている金属棒がカチンと突き当たるので、その時の「なだらかなカーブ」の勾配 (坂) によって「絞り羽根開閉角度が決まる」仕組みです。

なだらかなカーブ」の麓部分が開放側になり坂を登りつめた頂上部分が最小絞り値側に当たります (ブルーの矢印)。

↑完成したマウント部を基台にセットします。

マウント部を固定する為の固定ネジ (3本) が横方向から締め付け固定するのですが、実は今回の個体をバラそうと3日前に作業に取り掛かりました。

ところがこのマウント部の締付ネジが異常に硬く全く回らず「加熱処置」を3回も繰り返して溶剤を流し込んだりしながらチカラを目一杯入れてドライバーを回して外しました。

がしかし、3日前に作業していた際に右手の手の甲を「ピキッ」とやってしまい、痛みが走って結局3日間作業ができませんでした(涙) もぅ半ばクセになっているのでチカラを入れすぎると手の甲を痛めてしまいます(怖)

かと言ってチカラを入れて回さなければネジ山を舐めてしまい潰すハメに陥りますから、そうなったら大変です (それだけで解体が不可能になるから)。

バラしてみると締付ネジには固着剤がビッチリ塗られていましたが、そもそもおそらく充電ドリルか何かで硬締めで締め付けられたのではないかと推測しています。時々そういうメンテナンスをしている会社があるようで、泣きをみるハメに陥りますね(怖)

使われている締付ネジの種別は「皿頭ネジ」であり真鍮 (黄銅) 製です。どうして真鍮 (黄銅) のネジを使っているのでしょう? もっと言えばどうして「皿頭ネジ」なのでしょうか?

過去メンテナンス者はそんな事はお構いなしで組み上げていますが、この3本の締付ネジの締め付けが固すぎた為に、結局内部に組み込まれている「絞り環用連係環 (リング/輪っか)」が抵抗/負荷/摩擦により一部擦り減っていました。

と言うのも、当初バラす前のチェック時点で「絞り環レバー操作するとトルクムラがある」ことを感じていました。おそらくご依頼者様もご存知ではないかと思います。

その原因は何のことはなく、内部に「白色系グリース」をワザワザ塗りたくっていながら(笑)
締め付けが強すぎた為にマウント部の壁面が撓ってしまい「絞り環用連係環」を圧迫していたワケです。

それ故擦り減ってしまったワケで、経年使用による摩耗の類とは全く別の話です。このようにな〜んにも考えずに「グリースを塗ればスムーズになる」とか「強く締めつければ長年緩まない」など、凡そ整備者の勝手な思い込みや慣例で必要外な所為を行い、却って不具合を招く因果関係を用意してしまっています(笑)

こんなのが実は現実だったりしますし、それにいつも泣かされていますね(笑)
(バラした以上改善できずに残っている不具合に対する不満は当方に向けられるから)

逆に言えば、まさに改善できずに残ってしまった不具合があること自体「当方の低い技術スキルの証」であることを、このブログをご覧頂いている皆さんも是非ご承知置き下さいませ(笑)

↑指標値環をセットして絞り環を組み込みます。四角い窓の中に設定絞り値が表示される粋な仕組みです(笑)

↑マウント部と爪もセットします。

↑ひっくり返して距離環を仮止めした後に光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ご依頼者様のご要望に従い「ちょっと軽めなシットリ感あるトルク」にちゃんと仕上げてあります(笑) なかなかこの「ちょっと軽めな」と言う部分がクセモノで(笑)、人の感じ方はバラバラですから本当に「ちょっと軽め」になっているのか、何度も何度も目を点にしながら恍惚感に浸りつつ、距離環を回して繰り出したり収納したりの動作を繰り返して「無無無の心境の中で」トルク感をチェックします(笑)

自分自身がヨシと納得できなければご依頼者様はもっと納得されませんョね?

それがすべての前提なのだと思っています・・。

↑光学系内の透明度が非常に高い個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

但し、残念ながら第1群 (前玉) 表面側は過去メンテナンス時に剥がしたのであろうコーティング層の劣化によるハガレが、ほぼ全域に渡って生じています。前玉表面側なので直接的な影響はほぼ無いと考えますが、一部の光源や逆光時など特定のシ〜ンではハロの出現率が僅かに上がる懸念は残ります (それでも画像ソフトの自動処理で十分改善するレベル)。

↑上の写真は、今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つ「コバ端がヒビ割れしている」問題の改善処置を作業している最中に撮った写真ですが、撮影するのをスッカリ忘れていたので途中で撮っています。

ちょっとキモイのですが(笑)、まるで皮革のヒビ割れのようにランダムにコバ端の反射防止塗料が割れています。上の貼り合わせレンズは光学系前群側ですが、後群側の貼り合わせレンズを見るとちゃんとキレイに内側は「グレー状」に写っていました。

コバ端を溶剤で剥がす作業をしているワケですが、相当強く何度も擦らないと剥がれないので過去メンテナンス時に塗られているのだと思います。

↑後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無の透明度です。

よく光学系内の光学硝子レンズのコバ端が「真っ黒ではない」点を指摘してクレームしている人が居ます(笑) 例えば光学硝子レンズのコバ端が「グレー色」に見えているだけでマットな漆黒の黒色になっていない事を問題視している人達ですね(笑)

これがどうして問題になるのかと言えば、その人達がクレームしている内容は「迷光」の話です。

迷光
光学系内で必要外の反射により適正な入射光に対して悪影響を及ぼす乱れた反射光

確かに光学硝子レンズのコバ端が真っ黒になっていれば、光学系内を前玉側方向から覗き込んでも後玉側方向から覗いても、真っ黒で気持ちの良いものです(笑)

それは重々承知ですが(笑)、はたして製産している (設計している) 光学メーカー自身はどうなのでしょうか?

以前光学硝子精製会社に伺って相談した際に (洗浄液について相談した)、貴重な機会なのでいろいろ質問事項を用意していったのですが「迷光」に関してはいとも簡単な返答でした(笑)

光学設計時にもちろん「迷光」は想定しているし実際に検知しているが、はたしてカメラを使って一般撮影する場面に於いてどれだけその「迷光」が問題になるのか?

答えは「そんなのを問題視しても意味が無い」のひと言でした(笑)

具体的な例を出してご説明頂きましたが、例えば人工衛星 (その会社は人工衛星用の光学硝子レンズも精製している) に使われる光学系では、確かに「迷光」を問題視して設計しているとのこと。つまりはそのレベルなのだと言う話です(笑)

普段の撮影時に問題視する意味が全く無い話であると仰っていました。

当方も考えてみたところ、確かにそもそも「絞り羽根」自体が真っ黒ではありません(笑) 今まで2,000本以上オールドレンズをオーバーホールしてきましたが、その中で真っ黒な絞り羽根に出逢ったことがありませんね(笑)

ほとんどの場合で「メタリック系」に光って見える絞り羽根ばかりですし、実際光学系内を覗き込むとグレーやメタリックに見えます。はたしてその絞り羽根に当たって反射している光は「迷光」と呼ばないのでしょうか???(笑)

それも「迷光」の一つですョね?(笑)

そしてこの話は実際のニュース記事で確認することができました。先日何かのニュース記事で人工衛星に搭載する光学系に使う反射防止塗料で「99.999%」の確率で迷光を防ぐことができる塗料を開発したとありました。

まさしくこのニュースこそが「迷光が問題になる証」の一種なのではないでしょうか。片や人工衛星の光学系の話で、一方問題視されているのは一般撮影に使うオールドレンズの話です。何か次元が違うように思うのですがねぇ〜(笑)

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動していますが、オーバーホール工程でご案内したとおり過去メンテナンス時に咬んでしまった絞り羽根のキズはそのまま残っています。

また絞り環操作でトルクムラが発生していましたが、その因果関係もオールドレンズ工程の中で解説しました。もちろん現在は全域に渡って均一なトルクで絞り環操作できるよう改善しています。

絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」しながら閉じていきます (僅かに歪なカタチになる)。おそらく絞り羽根に打ち込まれているキーの一部が垂直を維持していないのだと考えますが、分かりません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性中程度軽め」を使い分けて塗布しています。距離環を回すトルクは「普通」人により「軽め」で「全域に渡って完璧に均一」なトルク感です。もちろんご指示のあった「シットリ感漂うトルク」に拘って仕上げています(笑)

↑絞り環の四角い表示窓に設定絞り値が現れますが、このモデルはクリック感が無い「無段階式 (実絞り)」操作です (この後のモデルはクリック感を伴うモデルもある)。

最小絞り値側「f16」だけがどう微調整しても中心に来ませんでした (絞り環のパーツの左右の微調整だけなのでこれ以上改善できず)。

なお、当初バラす前の実写チェック時に感じた「僅かに甘い印象のピント面」もキッチリとピントの山が確実に視認できるよう改善できています。そもそもこのモデルはピントの山がとても掴みにくい印象なので、特に距離環を回すトルクはそれを勘案したトルク調整で仕上げています。

それは当方が実施しているオーバーホールの最大のメリットでもあるのですが、例え同じモデルだとしても個体別の経年劣化は決して同一には至りません。それは当然ですョね? 個体別に経年の経緯が違うワケですから、内部構造が同一で同じ構成パーツを使っているとしても、その経年に於ける酸化/腐食/錆びなど、或いは構成パーツなどの擦り減り/摩耗などは千差万別です。

従って塗布するヘリコイドグリースもその種別や粘性を個体別にチョイスして塗って仕上げているワケで、その前提条件は「あくまでも仕上がった状態に於けるトルクの問題」であるべきであって、塗布するヘリコイドグリースありきの話であってはイケナイのだと、常日頃自ら言い聴かせています。

そしてそれは、その結果として「シットリ感漂うトルク感」として結実しているワケで、ちゃんといろいろな事柄を考え悩みながら、同時に様々な問題に正面から一つずつ立ち向かい、オーバーホール工程の中で地道にコツコツと改善しているだけの話でしかありません(笑)

つまりは偉そうなことを言っていて、実のところやっている事は意外にもたいした内容ではないと言うお粗末さですね(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑上の写真は同梱頂いたマウントアダプタですが、今回の個体が当方では4個目にあたります。やはり今までのマウントアダプタ同様「オーバーインフ量が多すぎて2目盛以上ズレる」現象が出ていました。

おそらくこのマウントアダプタの設計上の仕様だと考えます (4個全て同一なので)。今回も例によっていつもオーバーホール/修理やヤフオク! の落札でお世話になっているご依頼者様だったので、このマウントアダプタの無限遠位置微調整は「サービス扱い」で無料です(笑)

現状ピタリと無限遠位置を合わせてあるので、他のミランダバヨネット・マウントのオールドレンズを装着してもピタリと適合するハズです (つまり2目盛分ズレを戻しています)。

↑当レンズによる最短撮影距離43cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。ギリギリ「回折現象」に堪え凌いでいる感じでしょうか。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡りお待ちセ氏続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。