〓 Carl Zeiss (カールツァイス) 凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Carl Zeiss製標準レンズ・・・・、
凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)』です。


つい先日も同じモデルをオーバーホール済でヤフオク! 出品して「即決価格89,500円」で ご落札頂きました・・ありがとう御座いました!

今回扱った個体もそうですが昨年の後半に手に入れた個体を続けて出品しています。今回扱う個体で手持ち在庫が無くなるので次に手に入るまでおそらく半年はかかると思います。

最近の海外オークションebayのこのモデルに関する傾向をみていると似たように光学系に多少の懸念が残る個体が凡そ5万円台後半辺りで流通しており (残念ながら流通価格は高騰傾向)、光学系に問題を抱えていないと思しき個体の流通価格帯はだいたい8万円台10万円台とみています。

当方のオーバーホール対価として価格を設定するなら「高難度モデル」である点を鑑みてもだいたい2万円3万円の作業対価に匹敵するので光学系がキレイな個体でオーバーホール済の価格として設定するなら「即決価格89,500円」は適価と仰る方々が結構居て本当にあり がたい想いでいっぱいです!(涙)

今回扱った個体は当初バラす前の実写チェック時点で「明らかに光路長が狂っていると思しきとても甘いピント面」に堕ちていたので、バラす前の時点で既に「締付環などの反射防止塗料の厚塗りが原因」と容易に推測できていました。

・・と言うのもこのモデルのピントの山は「急にスパッと合焦する」ピントのピークなので、それが緩やかに (と言うか不明瞭に) ピントのピークに達するとなればそのような因果関係が 疑われ「本来はもっと鋭く瞬時に合焦するピークのハズ!」と推察できました。

バラしたところやはり推察どおり「締付環や格納筒の内壁に厚塗りされていた反射防止塗料が抵抗/負荷/摩擦となり光学硝子レンズが適切な格納位置でセットされていなかった」とその 因果関係が考えられます。

実際にオーバーホール作業を行いそれら因果関係を確認しつつ適切に光学硝子レンズ格納筒にセットできれば「自ずと本来の鋭いピントのピークを迎えるようになる」のは自明の理なので(笑)、そのとおり工程を進めれば良いだけです。

そのような推測のもと仕上がったのが今回出品する個体ですので、十分に鋭いピント面で撮影できる仕上がりに達し、且つ距離環を回すトルク感は肝心な「ピントの山の前後動」で非常に軽い操作性を実現し、且つクリック感がない「無段階式 (実絞り)」の絞り環操作も確実で遊びが無くキッチリ組み込みされているので気持ち良く操作頂けます(笑)

実際このモデルの扱いは今までの10年間での累計数は23本目にあたり、その中で「スカッとクリア」だった光学系の個体数だけでカウントすると今回が6本目です (カウント数には過去に扱ったオーバーホール/修理ご依頼分も含まれている)。

結構光学系のコーティング層が経年劣化進行に伴いカビ除去痕や拭きキズなどの影響からコーティング層剥離が進んでしまった個体も数多く出回っているので、カビ除去や汚れ等が清掃でキレイになると期待すると裏切られる結末に至ることも多いですね(涙)

その意味でなかなかオークションなどに掲載されている写真だけでは判定が難しいことも多いですが、それでも数多く整備していると大凡の「写真写り」が経験値内に入るのでそれら海外オークションebayなどの掲載写真をチェックしてもだいたい現物に近い状況把握が叶います。

そんな目安を頼りに調達していますが(笑)、流通価格帯だけはどうにもならず高騰傾向はコントロールできません(涙)

ちなみに今現在ヤフオク! で流通している同型モデル「M42マウント規格」品の出品の中で その出品ページに「光学系内に気泡なし」と謳われていますが、当方が今まで扱ってきた個体数23本の中で「光学系内の光学硝子に気泡の存在を視認した個体数はゼロ」です(笑)
おそらくこのモデルが登場した時期 (1960年代後半〜) の (しかも旧西ドイツの光学メーカーで) 光学硝子レンズに「気泡」が存在していたモデル数は相当少なくなっていたとみています (せいぜい1950年代前半までの話か?)。

また同一の出品者の出品ページには「絞り環のクリック感もカチカチと小気味良い!」と謳われていますが、残念ながら当方はまだまだ未熟でそのようなクリック感を伴う同型モデル品の存在を知らないのが正直なところです(泣) 何とも恥ずかしい話ですがこのモデルでマウント規格の種別に関係なく「M42ICAREXマウント規格も」共にクリック感がある個体を 当方は今まで扱った経験がありません(泣)

残念ながら今回出品しているこの個体も「絞り環にはクリック感がなく無段階式 (実絞り)」ですから、クリック感があるモデルをお探しの方はちゃんと動作確認済を謳っているそちらの 出品者様出品個体をご落札頂くのがお勧めです

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)』の ページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。今回の個体は見解に比べると具体的な光学系内の「カビ除去痕や点キズ」がより明確に視認できてしまいますが、その一方で光学系内に残っている例えば後玉の微細な点キズは少なめなので、まぁ〜良し悪しの印象は似た者同士的な感じと受け取っています(笑)

そんなワケで今回の個体も光学系第2群の締付環に厚塗りされていた「反射防止黒色塗料」をちゃんと溶剤で完全除去して組み込んでいますから上の写真を見ると確かに「艶消しブラックではない艶消し梨地仕上げのダークグレー」ですが、逆に言うならそれが製産時点の状況とも言え (メッキ加工は溶剤に溶けず剥がれないから) それを嫌う方は是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様に依頼して「反射防止黒色塗料で着色されている個体」を手に入れるのが良いと思います(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。今回扱った個体はクモリよりもむしろカビの発生が過去にあったようでその「カビ除去痕」が残っています (既に過去メンテナンス時に清掃し除去 されている)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。同様やはりカビ除去痕が点キズ状に、或いはコーティング層のハガレとして残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:14点
後群内:18点、目立つ点キズ:14点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前群内に複数あり)
(前群内に極微細で薄い6mm長ヘアラインキズあり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(但し後玉を光に翳すと外周附近に微細な点キズが密集している箇所があります(写真に影響なし)。
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10まいの絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・距離環操作時には極僅かに前後動のガタつきがありますが内部パーツ(直進キー)の経年摩耗がが原因なので改善できません。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・このモデルの絞り環操作時にはクリック感がなく無段階式の実絞り方式になります(仕様なので改善できません)。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・フィルター枠外回りのクロームメッキ部分に一部経年のヘアラインキズの箇所があります。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
本体『凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正樹脂製バヨネット式前キャップ (中古品)

↑ヤフオク! 出品ページにも記載していますが「別途2,000円加算」頂ければ上の写真のように「ステップアップリング他」も合わせて追加で附属し同梱します。

別途ヤフオク! かんたん決済確認画面で送料欄に2,000円加算頂いた時の附属品一覧です。
※上の写真はこの前に出品した個体からの転用写真なので純正前キャップが違います。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
本体『凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正樹脂製バヨネット式前キャップ (中古品)

marumi製MC-Nフィルター (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
汎用金属製⌀52mm径ステップアップリング (新品/加工済)

↑「別途2,000円加算」頂いた場合に追加で附属するステップアップリングは上の写真のように当方でバヨネット式フィルター枠部分に填め込んで梱包します (外す場合はマイナスドライバーなどを使いこじ開けないと外れません)。

これは不意にフィルター枠やご落札者様が用意されたフードなど脱落しないようにする目的で敢えてワザと「硬締め」でハマるように仕上げているからです。

するとこのステップアップリングの⌀52mm径で市販の様々なアクセサリがそのまま転用でき ますから楽です (MCフィルターと前キャップは既に附属されます)。また純正のバヨネット式樹脂製前キャップも附属したままになります。

距離環を回すと極僅かに左右方向で微細なガタつきを感じますが (ピント合わせに支障を感じるガタつきとは異なる) 内部パーツ「直進キー」が既に経年摩耗している為、一度擦り減ってしまった金属材は元に戻せないので改善のしようがありません。

↑念の為に当方所有マウントアダプタに装着したところを撮影しました。あくまでも当方の認識では「マウントアダプタとの相性問題は当方の責任範疇ではない」との認識ですが、クレームしてくる人が居るので事前に調べている次第です(笑)

赤色矢印で指し示している箇所に隙間があるのはマウントアダプタ側の仕様でオールドレンズ側マウント面に「1㍉弱の突出がある」為に隙間ができますがちゃんと最後までオールドレンズがネジ込まれます。

この時の絞り羽根の開閉動作もちゃんとチェックしました。絞り環を回して最小絞り値「f16」まで絞り羽根が閉じきります。

つまり絞り羽根の開閉異常は一切起きません。左写真は絞り環を回して最小絞り値「f16」にセットした時の絞り羽根の閉じ具合で、正しく「f16」まで閉じているのを簡易検査具を使い確認済です。

↑こちらは今度は日本製のマウントアダプタでRayqual製品になります。同様オールドレンズ側マウント面に「1㍉弱」の隙間が空きますが、これもマウントアダプタの仕様で突出した設計だからです (赤色矢印)。

この時同様に絞り環を回して最小絞り値「f16」にセットすると、残念ながら絞り羽根は「f8で閉じるのをやめてしまう」為、左写真のように完璧な正五角形で閉じているにしても「f11f16」まで閉じない
絞り羽根の開閉異常」が起きてしまいます。

これはマウントアダプタ内側の「ピン押し底面の深さが5.92㍉」で深すぎるからです。

実は今回のモデル凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)』には絞り連動ピンの仕様が2種類顕在し「絞り連動ピンの突出する長さが異なる」設計なのでこのような問題が起きます。

絞り連動ピンの頭に丸い傘が附随するタイプは日本製Rayqualのマウントアダプタに装着してもその傘の厚み分で長さが確保されている為ちゃんと最小絞り値「f16」まで閉じますが、今回の個体の設計は異なる為このような現象が起きます。

↑このように指摘するとまたSNSで当方がウソの言い訳を言っていると批判されるので証拠写真を載せました(笑) 上の写真 (2枚) は1枚目が今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体の絞り連動ピンを撮っており、2枚目が以前扱った個体からの転用写真ですが「絞り連動ピンの頭に傘のような広がりが附随するタイプ」であるのが分かると思います (2枚目は今回ヤフオク! 出品している個体ではありません)。

従って例えば上のほうのK&F CONCEPT製マウントアダプタにしても「ピン押し底面は平面側をセットして頂く」使い方がベストです。

他方もしも手持ちの凹Ultronの絞り連動ピンが傘付タイプならK&F CONCEPT製マウントアダプタのピン押し底面は「凹面を上に向けてセット」して頂くのが正常に絞り羽根を開閉できる確率が高くなるワケで (必ずしも改善するとは限りませんが)、ここに「ピン押し底面の深さがたかが0.49㍉違うだけでも本当にありがたい!」と言う話の現実的な事象が現れていると 思いますね(笑) 少なくともピン押し底面の深さが変更できるマウントアダプタはこの製品しか存在しないのでトラブル対処として考えればまた選択肢が多くなるワケで、中国製だからと
(或いは日本製がベストなのだと) 貶すばかりが脳ではないと思ったりもします(笑)

この問題については「補足解説」で詳しく解説しており『◎ 解説:M42マウントアダプタのピン押し底面について』をご参照下さいませ。ピン押し底面の使い方を変更するやり方をちゃんと解説しています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑絞り値はf値「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状態ですが、それでもまだ「回折現象」の影響が感じられません。素晴らしい描写性能です!

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。