◎ Meyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) Trioplan 50mm/f2.9《後期型》(exakta)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツの
Meyer-Optik Görlitz製標準レンズ・・・・、
Trioplan 50mm/f2.9《後期型》(exakta)』です。


今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する『Trioplan 50mm/f2.9《後期型》(exakta)』は当方の累計扱い数は21本目になりますが、その中で「exaktaマウント」となると「10本目」です。今まで扱った個体の中で非常に光学系の状態が良い場合に「即決価格39,500円」と
している為、今回も同価格での出品になります (いずれもその価格でご落札頂いています)。

巷で今ドキふうの「インスタ映え」する写真が撮れるオールドレンズとして、いの一番に挙げられるモデルと言えば、何と言っても旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズではないでしょぅか。

【インスタ映え】
写真投稿SNSインスタグラムに写真を載せた時、キレイで (ステキに) 映える
美しい (感動的な) 写真などが注目されて「いいね!」を獲得し易いことを
含めた形容的な表現

そのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中で大変美しくて大きな「シャボン玉ボケ」を表出させた写真を撮りたいと考えたら、被写体との距離が必要になってくるので中望遠レンズの「Trioplan 100mm/f2.8」辺りが必要になってきます。しかしこのモデルの市場流通価格は現在6万円〜10万円辺りに集中しているので、おいそれと手を出す価格ではありません(泣)

そこで標準レンズ辺りが狙い目になってくるのですが、焦点距離:50mmですから自ずと表出する「シャボン玉ボケ」は小振りのサイズになってきます。例えばAPS-C機ならばフルサイズに比べて撮影できる画角が小さくなるので、焦点距離としては1.5倍の「75mm」辺りに換算され、パッと見で大きくなったようにも見えます。同じようにマイクロフォーサーズ機ならば2倍の「100mm」なのでだいぶ大きい印象になります。

↑カメラボディ側の撮像素子 (イメージセンサー) のサイズから、フルサイズ機 (36 x 24mm) とAPS-C機 (23.6 x 15.8mm) に4/3機 (17.3 x 13mm) の場合の撮像素子サイズを表して
いますが、APS-C機はフルサイズ機の43%の面積にあたり、焦点距離換算すると「約1.5倍 (Canonは1.6倍)」になり、4/3機は「2倍」ですね (白色の円をシャボン玉ボケに見たてて合成しています)。

実際のシ〜ンの撮影できるサイズで考えると、APS-C機での撮影時はご覧のように撮影できる範囲が (面積が) 減っている事になりますから、撮れる範囲が減ったのにこの「約1.5倍」の意味がピ〜ンと来ないと仰る方が居ます。ご尤もなお話で、これは数学的に考えてしまうとなかなかピ〜ンと来ませんが(笑)、カメラのレンズとして考えると上のAPS-C機で撮影できる範囲は、フルサイズ機の撮影画角に対して「拡大されている画角」の範囲に当たるので「焦点距離が増えた (より望遠側にシフトした)」事になります。従って、望遠側で撮影したかのように拡大されて撮られる事になる結果から「約1.5倍の画角」つまり標準レンズで言えば焦点距離換算で「75mm」で撮影したかのようなシ〜ンの切り取り方になる事を指して言います (4/3機は2倍なので100mm)。

するとフルサイズ機で撮った時の「シャボン玉ボケの大きさ」は画全体のイメージからすると標準レンズの場合は小振りに見えてしまいますが、それをマイクロフォーサーズ機で撮ると画角がだいぶ小さく切り取られるので、狙った被写体に附随する「シャボン玉ボケ」は見かけ上大きくなったような印象を与えます。
(上の写真でシャボン玉ボケに見たてた白色円が大きく附随しているから)

実際に写真をパッと見た時に「これはマイクロフォーサーズ機で撮った写真だ」と見分けられる人は居ませんから(笑)、実写などを見た時に大きく「シャボン玉ボケ」が写っているように感じてしまうワケです (だから標準レンズでも有利になると言う表現になる)。

但しこれは撮像素子の大きさの違いから捉えた話なので、切り取られる画角が小さい領域になるとしても「焦点距離として写っている被写体はそのまま」である点を忘れないようにしないとイケマセン。つまり「切り取りサイズと画角の関係」を混同してしまうとまた上手くありませんね(笑)

例えば標準レンズではなく広角レンズで撮影していた場合、仮に建物が斜め状に傾いて遠近感が強く出ているシ〜ンだったりしたとき、そのままで切り取られていくので「本来の焦点距離が異なるオールドレンズでの撮影とは違う」点を忘れないようにしなければ変な写真になってしまいますね (仮に28mmでの撮影ならマイクロフォーサーズ機は56mmクラスの換算なので建物が斜め状のままだと標準レンズの見え方とは違うと言う意味)(笑)

それは単に切り取っているだけ (クロップしているだけ) なので、本当の意味で拡大撮影している話ではありませんから、あくまでも「見かけ上」の話と言えます。

↑上の写真 (3枚) は、前述の写真から各撮像素子に記録されたと仮定した時の画像を合成しています。一番上の1枚目からフルサイズ機にAPS-C機、そしてマイクロフォーサーズ機の場合ですが、全て被写体との距離は同一のままであり、表出している「シャボン玉ボケ」も同じ
大きさのまま何も変わりません (上の写真では合成なのでシャボン玉ボケを白色の円に見たてている)。

すると同じ大きさの写真 (900×600サイズ) ですが、見かけ上だんだん大きなシャボン玉ボケになったように見えまていますね (上の写真は画像ソフトで加工しただけなので解像度が変わってしまっていますが実際は変わりません)(笑)

なお、最近のヤフオク! などでMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの廉価版モデル (例えばDomiplanなど) に「ヘリコイド付マウントアダプタ (別名マクロアダプタ)」をセットにして「Trioplanに匹敵するバブルボケ」など謳って出品している人が居ますが(笑)、確かにヘリコイドの繰り出しにより近接撮影になるので円形ボケが大きく写りますが、決して同じエッジ (輪郭) のまま円形ボケが写るワケではありません (たいていの場合エッジはより不鮮明に崩れる) し、根本的にその装着しているオールドレンズの光学性能から逸脱した近接撮影になるので、特に「収差」のレベルが変わってきます。つまり例えば装着しているのが標準レンズだった時に、素の状態で写っているままの描写でより大きな円形ボケに至る話にはなりません。

初心者相手にそのような詐欺まがいの謳い文句で出品している人が居るので要注意です。
(もしもその理屈が通るならヘリコイド付マウントアダプタが大ヒットしているハズ)

  ●               ● 

当時、Meyer-Optik Görlitzでは同じ旧東ドイツのIhagee Dresden製フィルムカメラ「Kine EXAKTA」用交換レンズ群標準レンズ域のモデルとして・・、

・Primoplan 5.8cm/f1.9 :4群5枚プリモプラン型光学系構成
・Makro Plasmat 5cm/f2.7:5群6枚マクロプラズマート型光学系構成
・Primotar 5.4cm/f3.5:3群4枚テッサー型光学系構成
・Weitwinkel Doppel Anastigmat 4cm/f4.5:4群4枚アナスチグマート型光学系構成

・・などが存在していました。

一方Trioplanのほうの歴史はさらに遡り、1893年にHarold Dennis Taylor (ハロルド・デニス・テイラー) 氏によって設計された、Cooke社の3群3枚Triplet (トリプレット) 型光学系構成のパテントに基づいて設計された「Anastigmat Trioplan 10cm/f6.8」が1916年に初めて登場したのがスタート地点になります。この中で標準レンズ域の焦点距離50mmとして捉えると光学系を再設計して組み込んだ「Trioplan 5cm/f2.8」がシネレンズのCマウントとして登場したのが最初になります。

何と一番最初の標準レンズ域Trioplanは、Cマウントながらも開放f値が「f2.8」だったのですね。その後に登場する一眼レフ用の標準レンズは開放f値が「f2.9」に再設計されています。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型−I (1942年発売)/初期型-II (1946年発売:左写真)
絞り羽根枚数:14枚
絞り環駆動方式:手動絞り (実絞り)
最短撮影距離:75cm
筐体/構成パーツ:総アルミ合金製
コーティング:シングルコーティング/モノコーティング
フィルター径:⌀ 29.5mm (?)

前期型 (1952年発売)
絞り羽根枚数:12枚
絞り環駆動方式:手動絞り (実絞り)
最短撮影距離:60cm
筐体/構成パーツ:総アルミ合金製
コーティング:モノコーティング V
フィルター径:⌀ 30.5mm

中期型 (1957年発売)
絞り羽根枚数:12枚
絞り環駆動方式:クリック式
最短撮影距離:60cm
筐体/構成パーツ:総アルミ合金製
コーティング:モノコーティング V
フィルター径:⌀ 35.5mm

後期型 (1963年発売)
絞り羽根枚数:12枚
絞り環駆動方式:クリック式
最短撮影距離:60cm
筐体/構成パーツ:総アルミ合金製
コーティング:モノコーティング V無し
フィルター径:⌀ 35.5mm

今回出品するのは「後期型」にあたり、従来レンズ銘板に刻印されていたモノコーティングを示す「V」刻印が省かれるようになってから製産された個体です。





上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。前述のとおり中望遠レンズ「Trioplan 100mm/f2.8」と比較してしまうと、どうしてもシャボン玉ボケの大きさ自体が標準レンズなのでどうしても小振りになりますが、そうは言っても「同じTrioplanシリーズ」なので、ちゃんとご覧のようにとてもキレイな「繊細で明確なエッジを伴うシャボン玉ボケ」が表出します。

この円形ボケを単に「バブルボケ」と一括りにしてしまうと他のオールドレンズとの差別化が不明瞭になります。真円で繊細、且つ明確なエッジを伴う「シャボン玉ボケ」表出が可能なのはMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの特権ですね(笑)

二段目
円形ボケは今度は玉ボケやリングボケに代わりながら収差の影響を受けて滲んで溶けつつ背景ボケへと変わっていきます。

三段目
さらに収差ボケとしての性格がより強く出てきて、光学系が3群3枚のトリプレット型であるにも拘わらず、何と「グルグルボケもどき」まで現れる始末ですから(笑)、これがMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの凄さです。背景ボケはトロトロボケへと変わっていきます。

四段目
この段の実写が今回初めて見つけた「新たな領域を示す特徴的な表現性」だと当方は感心しているのですが、前述のようにマイクロフォーサーズ機で撮影してしまった写真をピックアップしました。決してマクロレンズではないのにまるでマクロレンズの如く美しく背景が溶けていたり、或いは前ボケだったりと印象的な写真を残しています。

五段目
左端の写真のように、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズのほかのシリーズにも相通じる特性なのですが、やはりダイナミックレンジが狭いので陰影や明暗部の粘りがありません (ストンと急に黒潰れ/白飛びしてしまう)。これがMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの唯一の欠点です。従って次の写真のように乾板の質感表現が後もう一歩の所で到達していません。

光学系は3群3枚のトリプレット型で、俗に言う「3枚玉」ですが、よく
ネット上で掲載されている光学系構成図は一般的なトリプレット型構成を載せている事が多く右図になります。

しかし実際に現物をバラして各群の大きさやカタチをデジタルノギスで
計測すると全く異なる構成図に至ります。

右図が現物の光学硝子レンズから計測したトレース図になります。

特に第2群のカタチが全く違っていて自ずと第1群 (前玉) や第3群 (後玉) の曲率までその影響を受けて変わってきます。

またそのように言うとウソを掲載しているとSNSで批判の的になるので(笑)、証拠写真としてバラした際に撮影した第2群の写真を載せておきます。赤色矢印の箇所が斜め状なのが分かりますね。

従って第3群 (後玉) の外径も変わってきますし、もちろん曲率も違うワケです。

↑上の写真 (4枚) は「Trioplan 50mm/f2.9」のマウント種別の違いを解説している写真です。左端から「M42/exakta/Altix/改造品」になります。
(グリーンの矢印は真上の方向)

M42マウント:迫り出した丘部分が附随し「制限キー」が外せる
exaktaマウント:爪 (3枚) に対して「リリースキー」が別に用意されている
Altixマウント:爪 (3枚) の一つの上に「リリースキー」がある
改造品:M42マウントのネジ部が上に被さるので「制限キー」を外せない

これらマウント種別を載せた理由は「偽って出品している場合がある」のを回避する為に皆様にご案内しています。

例えば「Altixマウント」をexaktaと偽って出品している事が時々ありますし、ちゃんと出品していても「Altixマウント」はマウントアダプタの入手が面倒ですからあまりポピュラーとも言えませんね。

さらに問題なのが海外オークションebayで最近非常に多く出回っている「改造品」であり、一部の個体が日本のヤフオク! でも流れており「改造品である事を隠して出品している」非常に悪質な出品者が居ます。

具体的には最も安く手に入る「Altixマウント」のマウント面を切削してしまい、そこに「M42変換リング」をエポキシ系接着剤で接着している場合です。上の写真では左端が「純正のM42マウント」であり「丘のように迫り出している部分がある」と同時に、最も判別しやすい「制限キーの状態」をチェックすると良いでしょう。

正規の「M42マウント」の個体はこの「制限キー (プラスネジ)」を回して外せます。一方右端の「改造品」はネジ部が「二重」に重なっていて (グリーンの矢印)、且つ「制限キーの上に被さっている為に回して外せない」のが明白です (赤色矢印)。

これら「改造品」が問題なのは、このエポキシ系接着剤で接着されているネジ部の環 (リング/輪っか) が容易に剥がれる点です。エポキシ系接着剤は垂直方向には非常に頑固に固着しますが水平方向の「せん断性」には弱く、実際当方でも今までに扱った改造品は全てマウントアダプタにムリヤリ強くネジ込むと簡単に接着したネジ部だけがポロッと外れました

ネジ部の環 (リング/輪っか) の裏側には乳白色の固形物が附着しているのでエポキシ系接着剤で接着した事が明白です。上の写真右端でオレンジ色矢印で指し示している箇所は、その外れてしまう問題を防ぐ意味から当方が処置を講じた事を指して示しています。

このような「改造品」が低価格 (だいたい2万円前後) で出回っており、本来の正規の「M42マウント」の個体が3万円〜6万円あたりで推移している為チャンスと見て狙っているワケですね (当方もハマッてしまいました)(笑) なお「改造品」の場合のネジ部は上の写真のようなシルバー環だったり黒色だったりしますが、全て「二重」になっています (制限キーも外せない)。

何故なら、この「制限キー」を外さないとヘリコイド (オスメス) を解体できないのです。逆に言えば製産時点でこのような固定方法を採れるワケがありません (どうやってネジをネジ込んだのか?)(笑) 後からネジ部だけを接着しない限り不可能です。

距離環 (ヘリコイド:メス側) の内側に無限遠位置と最短撮影距離位置の2ヶ所で「停止キー」と言う金属棒が突出しているので、この「制限キーがその金属棒に突き当たることでカチンカチンと両端で停止します。従ってヘリコイド (オスメス) を回して外そうと考えた時に、この「制限キー」を外してしまう事で突き当たらなくなるので外せるようになると言う道理ですから「制限キーすら外せない」と言う設計はどう考えてもあり得ませんね(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は簡素で構成パーツ点数も大変少ないですが、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズには入手する際に注意しなければイケナイ点が大きく2つあります。

今回の個体は某カメラ店より入手しましたが、当初届いた個体を実写チェックすると「甘いピント面」でした。また距離環を回すトルクも決してスムーズとは言い難いトルクムラがある状態です (カメラ店なのにこのような状態で平気で販売している)。

入手する際は「当方はカメラ店なのでご安心下さい」と謳っていましたが、はたしてこのような状態の個体を流しているのかと思うと、カメラ店なのに哀しいところがありますね(泣)

SNSなどを見ると当方はアマチュア整備している輩と言われており「技術スキルが低く信用/信頼が皆無」なワケですが(笑)、そのような当方でさえちゃんと正直にオールドレンズの状態を細かく明記してヤフオク! 出品しているつもりです。

【Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズの注意点】
光学系後群のイモネジ固定 (光軸ズレがないか否か)
距離環を回すした時のトルクムラとトルク感 (重い/軽い)

この当時のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの仕上がり状態は、凡そこの2点に集約されるのではないでしょうか。だからこそ「検査具を使ったチェックが重要」なのだとも言えますね(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割なので、ヘリコイド (オス側) は鏡胴「後部」側に配置されています。

光学系の第1群 (前玉) 径が「僅か⌀17.53mm」しかないので本当に小っちゃな鏡筒です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑12枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上側が前玉方向で下が後玉側方向です。鏡筒には「絞り値キー」と言う「」が各絞り値の間隔で切削されています (シルバーに削れているのは経年で鋼球ボールが接触していた箇所だから)。

↑鋼球ボールとスプリングを組み込んで絞り環をセットします。

↑鏡胴「前部」を仕上げるので、ここで光学系前後群を組み付けていく事になります。まずは第1群 (前玉) と第2群ですね。

↑光学系前群は3枚玉なのでこれで終わりなので、今度は第3群 (後玉) の組み込みになりますが、ここが前述のMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの最大の難関になります。

鏡筒には「イモネジ用の穴」が3ヶ所用意されており (赤色矢印) 光学系第3群 (後玉) は、グリーンの矢印のようにストンと鏡筒の中に落とし込んでイモネジで締め付け固定します。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種

従ってイモネジの締付具合をミスると、今回の個体のように「甘いピント面」の写り方に堕ちてしまうワケですね(怖)

↑光学系第3群 (後玉) をイモネジ固定でセットしました (赤色矢印)。実際はこの第3群の固定方法にはコツがあり、その手法で締め付け固定していかないとなかなか適切な光路長確保に至りませんし、もっと言えば3枚玉である以上「第1群第2群の格納位置」さえも問題になってきます。それらヒントはちゃんと設計段階で考慮されている話しなので「観察と考察」をキッチリ行える整備者は容易に気がつきますね(笑)

↑レンズ銘板を兼ねるフィルター枠をセットして鏡胴「前部」の完成です。

↑鏡胴「後部」の組み立て工程に移りますが、ヘリコイド (オスメス) しかないので簡素です。

↑マウント部の内側には両サイドに大きな穴が空いており、そこに上の解説の「直進キー」が刺さります (グリーンの矢印)。

他社光学メーカーとは大きく異なるMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの多くのモデルで採用している「直進キー」の特徴があり、ご覧のように先が尖った「尖頭筒」にスプリングを附随して押し込む圧を掛けたままヘリコイド (オス側) を駆動する設計概念を採っていました。

スプリングと言っても指で押し潰す事ができるほどの柔らかさではなく、ほとんど潰れないほど硬い、どちらかと言うと「コイル」と言ったほうが適切なほどです。

↑距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑ここにヘリコイド (オス側) がネジ込まれますが、上の解説のとおりヘリコイド (オス側) の両サイドには「V字孔」が備わっており、そこに前述の「直進キー」の尖った頭が刺さってスライドしていく事になります。この時にスプリングの圧が加わる事で均質なトルク感を実現している設計概念なので、やはり「原理原則」を理解している整備者でないとなかなか軽いトルク感で仕上げる事ができません。

今回の個体は既に過去メンテナンスが施されており「白色系グリース」が塗布されていましたが「濃いグレー状」に変質しており、とてもピント合わせできるような軽いトルク感ではありませんでした (それでも平気でカメラ店は扱っている)。

↑ヘリコイド (オス側) を既にネジ込み終わった状態を写していますが、ご覧のようにちゃんと「直進キー」の頭が見えています。

今回の個体は過去メンテナンス時に「白色系グリース」を塗る事でトルクが重くなるのを防いでいますが、おそらくメンテナンスしてから数年内であるにも拘わらず、既に「濃いグレー状」に変質して重いトルク感に陥っていましたから「その時点だけ軽ければ良い」と言うまさに「グリースに頼った整備」の最たるモノです。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で3箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。この後は完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。レンズ銘板からモノコーティングを示す「」刻印が省かれてしまった「後期型」の『Trioplan 50mm/f2.9《後期型》(exakta)』です。レンズ銘板に含まれている△の内側に1を配ったマークは「1st Quality」を示す「一級品/最高級品」のような意味合いになります。

↑光学系内の透明度がとんでもなくスカッとクリアで(笑)、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。今回の個体はこの当時の常である「気泡」の混入も非常に少ないです。

気泡
光学硝子材精製時に一定の時間適切な高温度帯を維持し続けた「」として「気泡」を捉えており「正常品」として出荷していました (写真への影響なし)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側 (と言っても後玉の1枚だけですが) もLED光照射で極薄いクモリすら皆無の状態です。光学系は第1群〜第3群までとんでもなく透明で、且つ極微細な点キズも少なめな状態を維持した個体です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:14点、目立つ点キズ:9点
後群内:17点、目立つ点キズ:12点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑12枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に真円に近い円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑当方がアマチュア整備レベル止まりなのは、まさにそのとおりなので特に反論しませんが(笑)、それでも自分自身でちゃんと納得できる状態まで微調整に拘って仕上げていますから、今までに当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品した個体をご落札頂いた方々は既にご存知ですし、もちろんオーバーホール/修理を承った方々もよく知っていらっしゃいますね(笑) 確かに「技術スキルが低く信用/信頼が皆無」なのも、そもそも修行中の身の上なのでそのとおりです (但しプロに師事した事がない独学なので決して個人レベルを超える事はあり得ない)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

如何でしょうか、これだけピント面の鋭さが確保されれば (実際数多く扱ってきてこの鋭さがこのモデルの特徴ですが) 確かに3枚玉のトリプレット型ですが、決して侮れないのではないでしょうか。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」に変わっています。極僅かですが「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。