〓 OLYMPUS (オリンパス光学) G.Zuiko Auto-S 40mm/f1.4《前期型》(PEN-F)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
OLYMPUS製標準レンズ・・・・、
G.Zuiko Auto-S 40mm/f1.4《前期型》(PEN-F)』です。


当方でのこのモデルの扱い数は今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体が累計で5本目にあたり、前回出品した2018年から3年ぶりです。特に敬遠しているモデルではありませんが市場流通品の多く、或いはネット上での解説を見てもいずれも絞り羽根の油染みや光学系内のクモリなど問題を抱えている個体が多い印象です。

実際今回扱った個体も調達して手元に届いた時点で既に絞り羽根の油染みによる緩慢な動きと光学系内の薄いクモリが影響して少々低コントラストな写りに至っていました。

特に絞り羽根の動きが緩慢な症状については「このモデルの持病」の如く語っているサイトが多いですが、それは見当違いで決して内部構造面や設計の問題でそのような症状が起きている話ではありません。

絞り羽根の動きを緩慢にしてしまう最大の原因は「過去メンテナンス時に鏡筒内部に塗られてしまったグリースのせい」と言え、決してOLYMPUSの設計が拙かったワケではありません!

まずこの点をここでハッキリしておきたいと思います

確かに鏡筒内部の特に絞りユニット直前は「制御系機構部が3階層に分かれて密集して格納 している設計」を採っているが為に、それら制御系機構部の各構成パーツが滑らかに動く必要が高いワケですが、製産時点で「それら制御系機構部にグリースを塗っていない」にもかかわらず過去メンテナンス時の整備者がグリースを塗ったくるので経年で油染みが起き、且つ制御系の各構成パーツに酸化/腐食/錆びが生じ「結果的に絞り羽根の動きが緩慢に至る」のが因果関係です。

・・もう一度言います! 決してOLYMPUSの設計が悪いのではありません

もっと言うなら、当方が今まで10年間で整備してきたこの当時のOLYMPUS製オールドレンズは累計で100本を越えていますが、実にそのうちの80%以上の個体で過去メンテナンス時に「鏡筒内部の制御系機構部にグリースが塗られている状況」と言えます (当方のデータベース記録から集計)。

もちろんOLYMPUSの設計陣が制御系機構部を鏡筒内部に格納してまで「製品全高/全幅をできるだけコンパクトに収めたかった」のは間違いない事実ですが、かと言って製産時点でそれら制御系機構部にグリースを塗っていないのに「過去メンテナンス時に安易にグリースを塗ってしまった整備者が悪い」のであって決してOLYMPUSの設計陣のせいではありませんね!

・・当方はそのように断言したいです

実際今回のオーバーホールでも全ての部位を完全解体してから当方の手で「磨き研磨」しDOHを施せば、100%間違いなくグリースなど塗らずとも確実に正しい動きで完璧に 機能します。

そのような努力を怠り安易な気持ちで「グリースに頼った整備」をし続ける整備者がいまだに横行している為にどんどん製品寿命を縮めるような状況に至っています。

・・悪いのは整備者です

それをOLYMPUSの設計のせいにしている人達/勢力がいるのがそもそも間違った考察だと当方は訴えたいですね! OLYMPUSの設計陣にとっては全く以て濡れ衣みたいな話であり、汚名を拭いたい想いでいっぱいです。

だいたいそもそもこれら鏡筒内部の制御系機構部が複雑で微調整した箇所までバラしたくないなどと勝手な言い分で完全解体せずに済ませている整備者が居るからダメなのです!

そんな無責任な言い分で臨むなら、むしろ整備しないでくれたほうが個体の寿命を縮めずに 済むワケで、全く以て本末転倒な話になっています。

そして何よりもこれだけ小さなコンパクト性を追求しつつもキッチリと光学性能を妥協せずに組み込み、且つ様々な制御系パーツを絞りユニット直前の僅かなスペースにちゃんと格納してしまったOLYMPUS設計陣の技術力と情熱を当方は評価したいです!

持病などと貶す以前にむしろそういう要素を褒め称えたらどうなんでしょうか

なお今回扱った個体は絞り環に「TTLナンバー刻印が無い」タイプで当方ではそれを以て「前期型」と位置付けしています。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はG.Zuiko Auto-S 40mm/f1.4《前期型》(PEN-F)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前のチェック時点で緩慢な動きをしていた絞り羽根の開閉動作、或いはマウント部から飛び出ている絞り連動レバーからの連係動作も、またプレビューレバーによる押し込み動作での絞り羽根開閉も俊敏な動きに戻りました。

もちろん冒頭解説のとおり鏡筒内部やマウント部内部さえもグリースを塗っておらず本来あるべき工程を経て組み上げています。

当初バラす前の実写チェックでも光学系内の絞りユニットを挟んだ前後の光学硝子にうっすらと生じていた全面に渡るクモリのせいで僅かにコントラスト低下を招いていましたが、それももキレイに除去でき「スカッとクリア」になり本来の描写性能を発揮できるようになったと思います。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング総計年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後群側もスカッとクリアで極薄いクモリがありません。極僅かに外周附近に非常に薄いクモリを伴うカビ除去痕が散見するのみです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:19点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
(前後群内に微かな8mm長前後が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・後玉外周にカビ除去痕が僅かに残っており、一部は非常に薄いクモリを伴います(写真に影響なし)。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持したまま」閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡ってほぼ均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・距離環を回すトルクは0.7m前後で僅かに重くなる箇所があります。

【外観の状態】<(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『G.Zuiko Auto-S 40mm/f1.4《前期型》(PEN-F)』
 純正樹脂製バヨネット式後キャップ (中古品)
純正金属製被せ式前キャップ (中古品)

残念ながら距離環を回すときのトルク感には「距離指標値1m前後で急に重くなる」トルクムラが僅かに残っており、直進キーやガイドの溝などチェックしてもその因果関係が掴めないので、おそらくヘリコイド (オスメス) のネジ山が経年で腐食していた影響が残っているのかも知れません。

いろいろ試しましたが玄奘のトルク感がせいいっぱいでした (それでもだいぶ改善できている)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離35cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状態なので「回折現象」の影響が現れ解像度の低下が認められます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。