◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biometar 120mm/f2.8 (zebra)(PENTACON SIX)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製中望遠レンズ・・・・、
Biometar 120mm/f2.8 (zebra) (PENTACON SIX)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を
始めた13年前からの累計で、当時旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製中望遠レンズ「Biometar
銘シリーズ
」全体での括りで捉えると、累計扱い台数は52本目にあたりますが、その中で
今回扱った「焦点距離120㎜」だけでカウントすると僅か8本目です。つまりその他の
焦点距離80㎜」が圧倒的に多く、今までの扱い本数は44本に達しています(汗)

そもそもマウントが「PENTACON SIXマウント規格」とあまりポピュラーな規格ではない為
マニアックなモデルかと思いきや、意外にも未だに市場も含め人気が高く、気がつけば扱い
本数も自然増していたような状況です(笑)

当方自身もその描写性が琴線に触れまくるタイプなので(笑)、大好きなモデルの中に入っていますが、如何せん市場流通品の個体にはリスクが高い要素があり「絞り羽根開閉異常が起きている個体がとても多い」問題の他「距離環を回すトルクが重く、トルクムラが生じ易い」など
どちらかと言うと光学系の経年劣化進行に伴うコーティング層の薄いクモリなどの問題よりもむしろ駆動系や制御系のトラブルが多かったりします(汗)

これはこのモデルに限った話ではなく、明確に指摘できるのは「この当時の旧東ドイツ時代のCarl Zeiss Jena製、或いはCARL ZEISS JENA DDR製モデルに非常に多い問題」と明言できます(涙)

この点について、よく巷では「旧東ドイツ時代のオールドレンズは造りが悪い/粗雑/低品質」など罵られている始末ですが・・決してそうではありません(笑)

例えばアルミ合金材の切削技術も当時の日本製オールドレンズでさえ、たいして変わらない
レベルであるものの、真に探って捉えるべきはその後の特に1970年代後半辺りからの技術革新で、日本国内での旋盤機の性能が格段に向上した分の恩恵が、即座に当時の日本製オールドレンズに顕著に現れていると考えます。

当時の貿易白書などを追ってみると、その中で日本からの旋盤機の輸出が、特に欧州に対して急激に伸びている点からも、そのような考察が補強されるように考えます。

するとではどうして巷で粗雑品と罵られるハメに陥っているのかと言えば、その根源は「内部構造とその設計に大きな問題点がある」との考えが当方の結論です(汗)

代表的な例で言うなら、まさに今回扱ったモデルの内部構造とその設計に大きな問題を抱えているのが分かりますし、例えばその後の時代でCARL ZEISS JENA DDR時代になって「黒色鏡胴のMCモデル時代」に入っても、その傾向は改善されず別の問題点との関係性で、相変わらずトラブルが多いのが実情です(汗)

←これは実は今現在も市場流通品の個体写真をチェックしただけで「容易に抱えている問題点を把握できてしまう」と言う種明かしを
指摘できてしまいます(笑)

例として「MC FLEKTOGON 35mm/f2.4」や「FLEKTOGON auto 35mm/f2.4 MC」などの「最小絞り値まで絞り羽根が閉じきっている時の写真をチェックすれば良い」ワケです(笑)

非常に多くの個体で「ほぼ閉じきるまで閉じてしまっている (とても小さな六角形の開口部の面積/カタチ/入射光量)」なのが、まるで当たり前の如く一目瞭然です(笑) 特にこの点について整備者ならよ〜く熟知しているハズなのですが、実はその整備者の手によって「このようにごまかしの整備で仕上げている」始末です(汗)

絞り羽根が閉じていく時の開閉角度を微調整する機能をこのモデルは内部に装備しています。ところが経年劣化進行に伴い内部で使っている樹脂製パーツが摩耗していたり、引張式スプリングが弱っていたりとその影響が具体的に現れ「絞り羽根の開閉異常」が起きてしまいます。

そこでそれをごまかす為に「敢えて分かっていながらワザと故意に、閉じすぎの状態まで閉じきってしまうよう仕上げる」為、上の左写真の如く閉じきった正六角形で絞り羽根が閉じます
・・このモデルを検査すれば分かりますが、これは「閉じすぎの状態」であり適切な開閉角度を逸脱しています(汗)

すると正しく『本来の在るべき姿』としての最小絞り値を超過してしまっている為「絞り羽根の沈降現象」が発生し、ご覧のように最小絞り値「f22」の時、絞り羽根が下方向に沈むが
如く落ち込んで閉じきっている状態に陥ります(汗) このようにすることで、摩耗してしまった樹脂製パーツの別の場所を使えるようになり (つまり摩耗していないのでちゃんと最後まで
閉じきってくれる
)、合わせて完全開放から最小絞り値までシッカリ閉じきってくれる動き方に変更できます・・が然し、適切な最小絞り値「f22」を超えてしまい、さらに暗い「f32」まで限りなく近づく閉じ具合に堕ちています(怖)

ちゃんと開閉動作するので、誰も異常だと思わずクレームにもならないワケです(笑) こういうことを公然と平気でヤッてしまう「ごまかしの整備」が横行しており、且つそれをちゃんと確かめもせず告知することなく「正常」を謳いヤフオク!出品され続けるから堪りません(泣)

  ●               

マウント規格「PENTACON SIXマウント」登場の背景を調べていくと、なかなか波乱万丈、且つ悲劇の繰り返しの中で、まさに時代に翻弄された経緯だったことが分かります(涙)

左のロゴは戦前ドイツはDresden市に1919年に創業された「Kamera Werkstätten Guthe & Thorsch (カメラ・ヴァークシュテーテン・グーテ&トーシュ)」の略である「KW」で、和訳すると「グーテ&トーシュカメラ工房」みたいなニュアンスになります(笑)

1920年に折りたたみ式の「PATENT Etui」と言うカメラを発案/発売し、戦前1938年まで製産が続けられた、まさにその後に登場するスプリングカメラやフィールドカメラの始祖的な立ち位置のカメラではないかと思います(汗)  元々は硝子乾板用だったものの120判フィルムにも対応していた優れモノで、
折りたたむと左写真のように、服のポケットに滑り込めるほどに薄くコンパクトに畳めてしまいます。ピント合わせもでき、それこそ今現在最新で開発されたばかりの「薄膜撮像素子」をできるだけ早めに商用化して、デジタルパックの如く、こういうカメラの背面に装着させて復活できる時代が訪れたら、どんなにか楽しいと妄想してしまいます(笑)

1928年には150人を雇用して月産100台の生産能力を発揮しながら、ベルリンは「Bärensteinstraße 30番地」に移転しています。しかし1938年にはユダヤ人迫害に身の危険を感じ、グーテ氏はスイスに、トーシュ氏は米国にそれぞれ逃げます。米国のデトロイトに逃げたトーシュ氏は、知人のCharles A. Noble氏 (ドイツ人) に会社の交換を提案し、自身は米国で写真事業を手かげ、チャールズ氏はドイツに移住しKWを引き継ぎます。

1939年春のライプチヒ見本市でKWは世界初のクィックリターンミラーを内蔵した「Praktiflex」を発売しますが、後のPENTACON
時代に数多く展開していくことになる「PRAKTICAシリーズ」の前身でもあります。
右写真は1940年発売の「M40マウント規格のPraktiflex IVBiotar 5.8cm/f2」です。

ところがドイツ敗戦後、チャールズ氏と息子は旧ソ連軍に逮捕され、息子はシベリアに抑留されます。戦後Dresden市は旧東ドイツに属すると様々な企業が国営企業体系の中に組み入れられ、三度会社は社会主義体制の所轄局VVB傘下に統合されつつも、1956年に中判
フィルムカメラ「PRAKTISIX」発売に漕ぎ着けます。

しかしここにも決して忘れてはならないリアルな現実が顕在し、これら経緯の裏には実は「旧ソ連への戦時賠償としての性格」が強く、西側諸国のように私企業による利潤追求と企業規模の拡大に同格扱いできない厳しさが憑き纏います(涙) そもそもどんなに収益が上がろうとも国が吸い上げ管理し、国民がその配給に授かる体制であることを忘れてはイケマセン(汗)

従ってこれら「PRAKTISIXシリーズ」のトラブルの多さ故も、詰まる処内部構造とその設計の追求に限界が残ったまま生産体制ばかりが重んじられていた背景があります。それは旧東ドイツに残ったCarl Zeiss Jenaも同じで、1970年代にはVVBの格付けまで伸し上がると、PENTACONを配下に従え様々な光学メーカーの吸収合併に余念なく「ベルリンの壁崩壊事件」が勃発した1989年11月時点で、雇用従業員数が4万4千人規模にまで膨れ上がった巨大企業化に変貌していました (その時点でPENTACONすら既に吸収合併していた始末)(汗)

今回扱ったオールドレンズはBiometar 120mm/f2.8 (zebra) (P6)」ですが、すっかり忘却の彼方に追いやられていたものの、何か真四角なフィルムカメラがあったョなぁ〜と思い出し、漁ってみたら歴史の中で1964年に発売された「PRAKTISIX II」が居るではありませんか (時期的にPENTACONロゴです)!(驚)

せっかくなのでオーバーホール/修理が終わったこのモデルを装着して「今一度その勇姿を!」と撮影してみました(笑)・・さすがの貫禄で
あり迫力であり、然し意外にもスパッと収まってしまう佇まいに今更ながらにオドロキです (とっても新鮮)(笑)

ウエストレベルファインダーなので、本当は何か被写体を置けば良かったのですが、真っ白な写りしか見えていません(汗)

マジッに妄想していますが(笑)、本当にこのままデジタルパックでいくらでも撮っては消してと撮影できるような時代になったら、まさにこういう古い時代のフィルムカメラが所狭しと流行って、オールドレンズ界隈まで賑やかに戻れるのにとニヤついたりします(笑)

・・だって、このウエストレベルファインダーに写ったのが撮れるなんて堪りません!

しまったなぁ〜、あともぅ50年後に生まれていれば良かったです(笑) そうしたらオーバーホール/修理のご依頼も、半年先まで予約でいっぱいになるかも知りません(笑)

↑上の図は「Harry Zöllner (ハリー・ツォリナー)」氏が発案した特許出願申請書で、左から順にTessarUS2744446 (1953-02-10)』次にFlektogonCH331579 (1953-12-19)』
そして今回扱ったBiometarGB754701 (1954-12-28)』最後はその後の時代の標準レンズの座を恣にしたPancolarの始祖たるFlexonGB850117 (1958-03-28)』と、まさに歴史的なCarl Zeiss Jenaの主要光学設計群が続きます。

↑実際にそれら代表的なオールドレンズのモデルを、当時の1950年代と言う時代背景から「シルバー鏡胴モデル」になる為、個別にピックアップしてみました(笑)

左端から順に「Tessar 50mm/f2.8 」の絞り環にラインの刻印が付随する「初期型」ですが、次に来る「Flektogon 35mm/f2.8 」までレンズ銘板に「zeissの」刻印が付随する大変珍しい「初期型」で、先ず以て市場に現れることがありません(涙)

上の特許出願申請書の中に記されている構成図で言えば、下側「光学系第5群後玉が2枚の貼り合わせレンズのタイプ」です。しかも実装絞り羽根枚数も左写真の如く「Flektogonの中にあって、唯一無二の14枚絞り」です (左写真は前玉側方向からの撮影)!(驚)

もぅこの左写真を見ただけでモノコーティングが明白で「」なのが納得です(涙)

また「Biometar 80mm/f2.8」をピックアップしていますが、上の特許出願申請書の記載構成図は「一例として挙げただけの100㎜/F1.4」との記述が確認できます。構成図の見方は「図の下側方向が前玉の方向」です。

最後の右端が「Flexson 50mm/f2 Gutta Percha」になり、この後すぐに「Pancolar 50mm/f2 Gutta Percha」或いはゼブラ柄へと転身していきます。

Harry Zöllner (ハリー・ツォリナー)」氏は1912年にドイツは
ニーダーザクセン州ゲッチンゲン市の「Weida (ヴェイダ)」に生まれ
父親の印刷業の傍らJena大学で数学と技術物理学を学び、且つCarl Zeiss Jenaで航空地形学まで学び、1938年までCarl Zeiss Jenaの勤労学生としても在籍していたようです(汗)

後にブラウンシュバイクのVOIGTLÄNDER社に入社し光学電算室長まで登りつめ、1939年には博士号を取得しています。1945年爆撃により生まれ故郷のヴェイダに戻り、Carl Zeiss Jenaにて光学電算室長として責任者に任命されています。その後1953年までにレトロフォーカス型光学系たる「Flektogon 35mm/f2.8」を発案し、Pancolarまで続く一連の光学設計群を発明してきました (2008年Jenaで死去)。
“Reise durch 800 Jahre Stadtgeschichte Weida”より引用

↑すると今回扱ったBiometar 120mm/f2.8 (zebra) (PENTACON SIX)』は、上の特許出願申請書でいう処の左端 Zeiss Ikon在籍時のWilly Walter Merte (ウィリー・ウォルター・メルテ) 氏発案ダブルガウス型光学系US1786916 (1927-09-29)』及び同じくCarl Zeiss Jena在籍時のRobert Richter (ロバート・リヒター) 氏発案TopogonUS2031792 (1933-07-26)』の既存発案案件から、前群側ダブルガウス型から、後群側Topogon型からの流れとして
発案しています (右端の構成図が初期型Biometar 80mm/f2.8)。実際の発案時の申請書が
3つめでUS2968221 (1959-03-17)』です。

そのようにネット上で解説されることが多いですが、実はHarry Zöllner氏の申請書記述を
読み進めると、どちらかと言うと「ダブルガウス型光学系の後群側を、焦点距離に見合う改変として発案」したように受け取れます(汗)・・結果的に前群側ダブルガウス型で後群側がトポゴン型のカタチとして仕上がったと言うのが当方の受け取りです (最初から前群/後群の転用を前提としていなかった発明であり、むしろ収差レベルの問題点と改善内容から新規に発明していったように受け取れる)(汗)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。筐体がデカすぎるので楢材のお盆に並びきりません(汗)

ゼブラ柄モデルの完全解体は今回が初めてなので、とてもありがたい機会を頂きご依頼者様にお礼申し上げます・・ありがとう御座います

↑完全解体した後に当方の手による『磨き研磨』を施し、これから組立工程に入るところです。今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つ「距離環を回すトルクが重くトルクムラが在る」の原因を解説している写真です(汗)

冒頭で解説した「内部構造面での問題点/設計上の問題点」と指摘できるのですが、上の写真は鏡筒を立てて撮影しています (このモデルはフィルター枠まで一体切削で鏡筒が造られています)。写真下方向が前玉側方向の向きですが、鏡筒の外回りにはヘリコイドオス側のネジ山が備わります。

それは別に他の当時の様々な光学メーカーの造りも含め、特に問題になりません (一般的な
設計
)。問題なのは両サイドに突出する「板状の直進キー」です(汗)

これを「鏡筒の一部として切削で用意してしまったのが問題」であり、独立した個別のパーツとして用意しなかった設計の拙さが影響しています(涙)

今回の個体もその影響が既に現れており、両サイドの「直進キー」で左右の間隔に違いが現れています・・右側赤色矢印の空間が適切なのに対して、左側グリーン色の矢印の空間が極僅かに足りず「斜め状に傾いている」状況です (ほんの僅か)(汗)

これを垂直状に戻したいのですが、アルミ合金材の削り出しだけで、且つ既に経年でチカラが影響を与え続けてきた経緯から「手を出せない」状況です(涙)

工具を使って曲げるにしても、パリンと割れないものの「根本に亀裂が入る」懸念が非常に
高いのです (Carl Zeiss Jena製の他のモデルで実際に亀裂が入ってしまったのを経験済み
だから
)(怖)

またこのように片側だけ曲がってしまった原因も明確になっており、経年の中で塗布していたヘリコイドグリースの揮発が進行してしまい「粘性が増してしまった」中で、ムリにそのまま回し続けていた結果、絞り環側からの連携時に一番最初にチカラが及ぶ側の左側が斜めって
しまったと言う流れです(涙)

これは絞り環も、マウント面から飛び出ている絞り連動ピンも、或いは絞りユニット内部への絞り羽根開閉動作伝達も「全てが円周の中の1箇所だけからチカラが及ぶ構造設計」にしているのが、せっかく両サイドに用意して均等にチカラの伝達を目指した設計の「直進キー」だったのに、粘性を増したヘリコイドグリースのせいだけで片側だけに影響が及びます(汗)

例えばこれが「純正のヘリコイドグリースだけ塗られたままなら、まだ耐えられていた」可能性は高いです。過去メンテナンス時の整備時に塗布されたヘリコイドグリースの性質や成分/
添加剤が適合していなければ、余計にその抵抗/負荷/摩擦が片側の「直進キー」だけに集中します(怖)

従って内部の構造面から「距離環のトルクが重くなってきた時に、ムリに回さないほうが良いモデルもある」のが、この当時のオールドレンズの懸念事項の一つです。

残念ながら、今回の個体はこの左側グリーン色の矢印の「直進キー」を垂直状に戻せませんし
もっと言えば、この「直進キー」にダイレクトに接触している「直進キーガイド」のほうも、
その摩耗の程度が左右で異なるので、そこまで勘案すると、単に垂直状に戻せば良いだけの
簡単な話で終わりません(汗)

今回のオーバーホール/修理は、塗布するヘリコイドグリースの性質で対応する以外に方法はなく、仕上がった現状では残念ながら距離環を回すトルクはたいして軽く変わらず、且つトルクムラも残ったままです(汗)

実際に手で掴んでグルリと距離環を回していくと「途中でゴリゴリと抵抗/負荷/摩擦を感じる場所がある」のが指に伝わります(汗)・・その意味では下手すれば「距離環自体が真円を維持していない懸念も少なからず残っている」のもリアルな現実です(汗)

これは例えば落下してしまったり、或いはバッグの中にちゃんと入れていたのに「そのバックごと何処かにぶつけてしまった」時に真円を維持しなくなった可能性も捨てきれません。さらにこの個体の上から何か圧や重量が加わり、距離環が最も外側に位置する関係から影響を受けた可能性も考えられます(泣)

詰まる処、この当時のCarl Zeiss Jena製オールドレンズの多くのモデルで「距離環の裏側が
ヘリコイドオス側のネジ山
」との設計が、そもそも拙いのです(汗) 従ってこの当時のシル
バー鏡胴モデルやゼブラ柄、或いは黒色鏡胴にしても「距離環や基台に目立つ打痕や凹みが
ある個体は手を出さない
」のが、実は無難だったりします(怖)

製造後数十年を経た、四半世紀など当たり前なのがオールドレンズなので、外見上の筐体外装の打痕や凹みなど気にしないと言う人が多いのでしょうが「実はそのような安易な考え方が、そもそも間違っている」のが、このような内部構造から捉えていくと、よ〜く理解できるのではないでしょうか(汗)

↑絞りユニットや光学系前後群が格納される鏡筒です。

↑今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つ「絞り羽根が開放になったまま閉じない」のは「絞り羽根の油染みで粘着を帯びていた」のが原因の一つでしたが、それ以外に「3個の鋼球ボールやアルミ合金材構成パーツも一部が錆びていた」と言う複合的な瑕疵内容です(汗)

従って意外と面倒くさい作業なのですが(汗)「鋼球ボールを研磨して滑らかに戻す作業」を施した次第です(涙)

鋼球ボール格納環
鋼球ボール封入環
鋼球ボール保持環

・・と、要は単に鏡筒最深部の絞りユニット内部で「開閉環と言う絞り羽根を開いたり閉じたりする環/リング/輪っかを回す役目だけの部位」なのが、これらのセットになるものの
それが錆びているだけで実はトラブルに見舞われる要素がこのモデルの別の場所にあったりします(涙)

↑左が「位置決め環」になり右が「開閉環」と言う、絞りユニット内部に組み込まれるパーツです。これら2つの環/リング/輪っかに絞り羽根が挟まり、右側の「開閉環」のグリーン色の矢印で指し示している切り欠き/スリット/溝に開閉アームと言うパーツの先端が入ることで、左右に回転動作が適い絞り羽根が閉じたり開いたりする原理です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑光学系に実装している光学硝子レンズが巨大すぎて、撮影で使っている小物の上に並びきりません(汗) 仕方ないので先ずは光学系前群を撮影しています(笑) 第1群前玉第2群の2枚貼り合わせレンズで、グリーン色の矢印で指し示している方向が前玉露出側方向を意味します。

↑同じ第1群第2群ですが、今度はヒックリ返して裏側を撮影しています。その為グリーン色の矢印の向きが反転しています。

当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければイケナイみたいです(笑)

このように解説しながら掲載し続けることで、いずれ訴訟を起こす際の証拠にしています(笑)

↑絞りユニットを挟んで光学系後群側にあたります。第3群第4群の2つだけと言うとても
シンプルな光学設計です。同様前玉の方向をグリーン色の矢印で指し示しています。

↑同様ヒックリ返して裏面側を撮影しました。

↑ウソを載せていると批判される基になる「光学系第2群の貼り合わせレンズのカタチ」を真横から撮影して明示しました(笑)

ご覧のようにクビレたカタチをしているワケですが、これが意味するのは「当然ながら中腹の絞られた径のサイズしか入射光が透過できない」ものの、最終的に隅々まで入射光が行き渡るよう「屈折率を考慮して設計されている」素晴らしい光学系です・・まさに当時の特許出願
申請書の記述にすら「屈折率は1.60以上を要する」と使用する光学硝子材の種別まで指定
している状況です(汗)

↑やっとのことで「開閉環」の回転機構を組み込めました(汗) ブルー色の矢印で指し示した
位置に鋼球ボールが3個均等配置でセットされています。また前述の切り欠き/スリット/溝も
グリーン色の矢印のように視認できます。

↑そのままヒックリ返して撮影しています。今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つで
ある「絞り羽根が開放のまま閉じてくれない」原因に大きく影響を来していたのがこれら経年
劣化進行に伴う「絞り羽根の油染み」による酸化/腐食/サビなので、例え面倒でも「開閉環
をバラして磨く必要性があります(汗)

↑絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。

←左写真はこの鏡筒内壁や、組み込まれる光学硝子レンズのコバ端に着色されていた「反射防止黒色塗料」を綿棒を使い拭っている時の写真です。

ご覧のようにマジックを塗っていたのがバレバレで、付着するインク成分は「紫色」だったりします(笑)

↑鏡筒裏側の側面に「開閉アーム」をセットしました。ご覧のように 引張式のスプリングが介在しますが、実は当初バラした直後は「左右の引掛けフックがエポキシ系瞬間接着剤で固められていた」ワケで(汗)、そもそもこの引張式スプリングの使い方を全く過去メンテナンス時の整備者が理解していません(汗)

↑何故なら、上の写真解説のとおり「開閉レバー」が操作されることで下部「板状開閉アーム」が左右に首振り運動をする為、その動きに従い「開閉環が回って絞り羽根が開いたり閉じたりする」原理です。

するとこの時にフック部分をエポキシ系瞬間接着剤で固められてしまうと「フックに引っかかっている引張式スプリングの位置が変えられない (接触部分が固定されているため、その分の抵抗/負荷/摩擦が追加で生じてしまう)」が為に、必要以上の応力が生じてしまい、それがこの「開閉アームを伝わっていく」流れに陥り、結果的に経年劣化進行に伴うアルミ合金材の弱まりを促します(涙)

写真右上のように、引っかかっているフックの曲がり部分はフリーで自由になっているべきで
ここが固定されると「開閉レバー」が左右に操作される時、引張式スプリングに対してムリな
チカラが及ぶものの、スプリングなので反発するチカラが生じてしまい、結果的にそのチカラ
がこの「開閉アーム」のほうに伝わり、必要以上に強いチカラで左右に動きます(怖)

すると実装している絞り羽根に油染みが起きて、さらに時が経ち粘性を帯びてきた時、その
チカラによって開放側に格納した時、或るタイミングで固着し「絞り羽根が閉じない現象に
至る
」次第です(涙)

・・こういうのが「原理原則」です(汗)

何でもかんでも固着剤で固めてしまう概念が、リアルな現実としてどのような悪影響を及ぼしていくのか、ご理解頂けるのではないでしょうか???(汗) 確かに瑕疵内容の引き金になったのは「絞り羽根に生じた経年の油染み」ではあるものの、そこに瑕疵に至る進行を促してしまった一因は「過去メンテナンス時の整備者の間違った概念に在る」のだと、思い知るべきですね(涙)

何故なら、適切なチカラが及んでいれば重なり合った絞り羽根に相応の隙間が介在し、油染みが乾いていく状況を生み出していたのかも知れません・・結果、絞り羽根に油染み痕が化学反応で残ってしまうだけで「開閉異常に至らずに済んだ」のかも知れません、分かりませんが。

・・いちいちこじつけるなと批判されますが(笑)、然し決して無視できない要素です(汗)

↑鏡筒の反対側を撮影しました。絞り環と連携する「連携ガイド」には、縦方向の溝が備わります。この「制御環」が鏡筒の外壁をグルッと回るので、絞り環操作に従い位置が変化して「ブルー色の矢印で最小絞り値の停止位置が決まり」且つその時に「最小絞り値で閉じる絞り羽根の角度までオレンジ色の矢印のパーツで決めている」仕組みです。

するとここで「見えてくる原理原則」は(笑)、この最小絞り値の時の停止位置と「絞り環の最小絞り値刻印F22のクリック感がピタリと一致している」のは、至極当たり前の話だったりしますね(笑)

それでは本当にそうなのか簡易検査具で最小絞り値のボケ具合を調べると、確かに「F22」のチャートに到達していると確認できるワケですが(笑)、その時にちゃんと絞り環のクリック感まで合致していているのが味噌だったりします (当たり前の話と皆さんは言いますが)(笑)

どうしてそこまで指摘するのかと言えば、まさに上の写真の如く「それぞれの構成パーツには締付ネジのマチ幅が用意されていてズレた位置で締め付け固定できる設計になっているから」と指摘でき、そういう微調整機能を駆使しながら組み上げていくのがオールドレンズの整備
作業だったりします(笑)

・・みなさんは極々普通にちゃんと仕上がっていないとクレームしてきますが(笑)

さらに言うなら、当方は過去の固着剤も全て剥がしてしまう為(笑)、100%全て自分の感覚と指の感触だけを頼りに逐一調べ尽くし、微調整しまくって「本来在るべき姿」に組み上げていくポリシ~だったりします (んなの、どうでも良い話なのでしょうが)(笑)

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

↑距離環を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと
無限遠が出ません (合焦しません)。

↑さらに鏡筒/ヘリコイドオス側を同様無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で20箇所のネジ込み位置がある為、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります

↑ヒックリ返して「鋼球ボールスプリング」を組み込んで絞り環をセットします。

↑マウント部内部の撮影ですが、絞り連動ピン機構部の構成パーツを全て取り外しています。

↑するとこのマウント部内部の絞り連動ピン機構部には上の写真までのスプリングが介在します。

ここで前のほうで出てきていた 引張式スプリングがあったと思いますが、 反発式スプ
リング
が引張式スプリングです。

スプリングの線径が細かったり太かったり、或いは長かったり短かったり、カタチがあったりと様々ですが、重要なのは「これらのスプリングが使われる箇所で影響を及ぼす必要なチカラの範囲が決まっている」点であり、それを蔑ろにした整備を施せば、やはり経年劣化の進行を促す結末に至ります(怖)

さらに「人の指で掴んで操作するチカラが伝わってくるのがオールドレンズ」との認識のもとに立つなら、これらスプリングのチカラがどんなに大きくても/小さくても「設計者の意図が在って用意され使われているスプリング」であることをキッチリ整備者が認知するべきです。

↑そして今回の個体で「いろいろ操作しても絞り羽根が開ききったままで一切閉じてくれない」瑕疵に至っていたもう一つの要因が、これらの構成パーツの状況です(汗)

これら構成パーツの経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビは当然ながら、しかもここに「ウレアグリース」を塗布していた過去メンテナンス時の整備者の不始末が悪影響に至り、そのような現象に陥っていました(涙)

操作レバー」が前述した鏡筒外壁に張り付く「開閉アームの開閉レバー」を動かす仕組みであり、また「プレビューレバーの爪部分操作レバーを戻す」役目を担い、一方「押し込みフックの微妙なカタチこそが、マウント面から飛び出ている絞り連動ピンを適切なチカラで押し出している」と言う、各部位に適材適所、まるで必要なチカラの伝達と配分の為だけに用意されている構成パーツ達なのです(涙)

従ってこれらの構成パーツに「当方は一切のグリースを塗らず、潤滑油も注入せず、ひたすらに素のまま使い切る」のが、整備上のポリシ~です (当たり前の話ですが)(笑)

・・当方は何一つ特別な事をせず、低レベルの技術スキルだけで仕上げている始末(笑)

なのがご理解頂けると思います(笑)・・そんなレベルなのです(恥)

ちなみに今回の個体で「絞り羽根がどんな操作をしても出てこない」のは、確かに絞り羽根が粘性を帯びて固着していたかも知れませんが、実はその裏側で最も重要な経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビが起きていた場所が・・上の写真オレンジ色の矢印で指し示した回転パーツと軸と言う、あまりにもシンプルな構成パーツだったりします(笑)

・・当方は神経質で執拗なので、徹底的に真犯人を追求し突き止めてしまいます(怖)

その結果今回のご依頼者様お一人様だけですが、戻ってきた現物を手にし「シャコンシャコンと各部位の動きを堪能し愉しんで頂ける」姿が目に浮かびます(笑)

・・たったそれだけの話です(笑)

↑それら構成パーツを組み込んで絶妙な、然し意外にも考え尽くされた動きと構造で適切、且つ必要なチカラが伝えられていく場所です(涙)

この部位の中で「最大限に全てに対して貢献し続けているちっちゃな存在こそが、赤色矢印で指し示した箇所に居る微細な線径の 引張式スプリング」だったりします(笑)

この引張式スプリングの具合が悪くなっただけで、マウント面から飛び出る絞り連動ピンの駆動が影響を受け、結果として「絞り羽根が瞬時に小気味良く開閉動作してくれなくなる」からまさに縁の下の力持ちなのです!(涙)

どんなに表舞台で華やかに色々が振る舞っているとしても、当方はまさに自分を直視しているように感じてしまい「こういう目立たず、そっと静かに隠れた場所で、陽の当たらない処で、
当たり前のことしかしていないモノに注目してしまう
」タチだったりします(涙)

・・まだまだこれから先、何十年間も頑張ってほしいぞッ!(祈)

経年のサビに決して負けるな!」そう願いを込め、優しくそっと大切に触れて想いを伝えた次第です(涙)・・さ・よ・う・な・ら・・次に触れる時は、別の人だから。

↑一番ネックになる「絞り連動ピン」がご覧のように長大な長さで心許なく立っていますが(汗)
ここでポイントになるのがグリーン色のラインで囲った微調整幅だったりします(泣)

このオールドレンズ内部に組み込まれているまでのスプリング達のチカラ加減によって初めて微調整幅が確定し締め付け固定できます(涙)・・それによって「絞り連動ピンの駆動が担保される」ものの、だからこそ瞬時で且つ適切な絞り羽根開閉動作も保証されたのです(涙)

↑光学系後群をやっとセットできました(汗)

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。冒頭解説のとおり、残念ながら距離環を回す
トルクは変わらず、重いままでトルクムラも残り、全く以てご期待に応えられませんでした
・・申し訳ございません!(涙)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑後群側もスカッとクリアで極薄いクモリすら皆無です。赤色矢印で指し示したように、後玉の締付環も遮光環も、さらにマウント部の遮光内壁まで全ての「反射防止黒色塗料」を完全に除去しています(汗)・・従って製産時点の「パープル色のメッキ加工が露わになった」ものの、どうしてパープルではイケナイのでしょうか???(涙)

↑8枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが。重いトルクもトルクムラも改善できていません(涙)・・申し訳ございません!

せめてものお詫びは、ピント合わせの際のピーク/山の前後動で極々軽いチカラだけでピント
合わせできることくらいでしょうか(汗)

途中の写真で赤色矢印で指し示している箇所に飛び出ているツマミは「プレビューレバー」で、このモデルは絞り環操作すると「絞り羽根が即座に閉じていく実絞りに見える」ものの、マウント面から飛び出ている絞り連動ピンが押し込まれると「瞬時に絞り羽根は完全開放まで開き切る」設計です。

そこでフィルムカメラでの使用に際し、シャッターボタン押し下げ前に絞り値を確認したい時
この「プレビューレバー」操作すると、設定絞り値まで絞り羽根が閉じてくれる仕組みです。

↑付属していたフィルターも純正樹脂製被せ式前キャップも、もちろん「P6」樹脂製バヨネット式後キャップも全て洗浄し、経年の手垢などを除去しています。またゼブラ柄のアルミ合金材部分も「光沢研磨」して仕上げたので、少しくらいは美しく輝くように戻ったのかも知れませんが、期待は禁物です(汗)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離120㎜開放F値f2.8被写体までの距離198m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度99m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、100m辺りの被写体にピント合わせしつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の200m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離1.3m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。実測すると被写体 (ミニカーの手前側
ヘッドライトの電球部分
) からの撮像素子面迄の距離は「125cm」でした(汗)

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しています。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。実は今回の個体は「前玉の露出面側蒸着コーティング層に、経年劣化進行に伴う化学反応による極々薄いクモリが生じ始めている」為に、その影響からフード無しで光源からの入射光が入ると「微かにフレアが増えていく」状況ですから、是非ともフードをご用意下さいませ。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。絞り羽根が閉じきっているので「回折現象」の影響が現れ始めています(汗)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

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今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。先日のTriotar含め2本を完全梱包し、昨日クロネコヤマト宅急便にて発送しています。

・・改めて2本共ご期待に沿う事適わず、本当に申し訳ございませんでした。お詫びします。