◎ KOBORI (小堀製作所) ROBOTAR MC 28mm/f2.8《小堀製作所製》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


レンズ銘板をパッと見た時の一番最初の印象は「ロボター???」とどうしてもその名前に 目が釘付けになってしまうほどに強烈なブランド銘を与えられたいったいどこの国のどの会社の製品なのかが「」のオールドレンズです(笑)

・・と言っても実はこのモデルの扱いは焦点距離「35mm/f2.8」のほうも含め2014年来から複数の個体を捌いており(笑)、当方にとってはよく知れたモデルの一つでもあります。

この小堀製作所製ROBOTARシリーズには何故か標準レンズが存在せず広角域のモデルが2種類だけ供給されていた当時にしてはとても控え目なオールドレンズです。

しかし35mmも含めバラしてみると相当にシッカリした造りで下手な光学メーカー製オールドレンズよりも、むしろCanonやNikon、MINOLTAなど一流光学メーカーに匹敵する光学系設計
/製造技術に加えて、鏡胴の構造設計に対する徹底的な合理化まで考え尽くされたオールドレンズを世に送り出せる会社なのが十分に分かります。

・・その意味で無名ブランド品と食ってかかると飛んでもない見当違いです。

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創業者の小堀明治氏が東京浅草の橋場町で時計部品を製造する『小堀製作所』を創業したのが1925年 (大正14年) なので相当な老舗です。大中小名や財閥、大地主が所有する「古代時計」を修理する技術があったとの事で驚いてしまいます。自らは修理に専念しつつも弟子達のために部品の製造も手掛けていたようです。

小堀家は三男6女に恵まれ戦時中暗号通信士として中国は南京に派遣されていた長兄小堀芳朗氏が敗戦後やっとの事で復員すると、1953年 (昭和28年) に「株式会社小堀製作所」に改組し当初はライターの部品などを造っていたようです。

一方その後の小堀製作所の命運を背負いつつも今回のこのモデル「ROBOTARシリーズ」の ストーリーで主人公たる三男の小堀雄久氏は昭和27年に東京大学に入学し卒業後に興国人絹 パルプ(株)に入社します (後の「興人」で人絹/じんけんはレーヨンのこと)。興人では様々な 開発により特許を登録したようです。

その後昭和36年に興人を退社しいよいよ小堀製作所に入社して常務取締役として陣頭指揮を 執り始めます・・まさに時来たるといった印象です。

その当時既にキヤノンの第1号協力工場のポジショニングに位置していた小堀製作所では、 キヤノンが使いこなせずに持て余していた冷間鍛造機 (加熱せず常温でプレッシングする機械 設備/当時の価格で数千万する) を使いこなしキヤノンの工程を1/3まで短縮化した実績すら挙げてしまったというからオドロキです!(驚)

他方防衛庁の監査にも合格してしまい昭和火薬 (後の日本工機) とも協力して防衛庁に関わる 取引にまで食い込んだとの事です。例えば国境線監視撮影の装置として双眼カメラを開発製造し、双眼部には「Teflex」を使い光学レンズに「Tefnon」とそれぞれ商標登録にも繋がったワケです。

さらに幾度となく訪米や欧州にまで飛び回り様々な分野の機械部品受注により多角化が進みつつも、基幹となる技術をシッカリと研鑽し続けキヤノンからの「硝子には手を出すな!」と言うプレッシャーを乗り越え、ついには1979年に光学硝子のポリッシング (研磨) やコーティング機械の導入も進みいよいよ光学レンズ製品の開発製産を軌道に乗せました。

それに合わせ販路確保として「丸敬産業」を創設し (販売元) AFズームレンズなどの「TEFNONシリーズ」を手掛けるようになっていったようです。

パナソニックとの取引関係も構築され、或いは米国のVivitar社 (ビビター) 製品群の受注など手掛けつつも他にも香港やシンガポールにオーストラリア、スウェーデン、ドイツ、英国と取引先がどんどん増えていったようです。

そして今回当方が最も感銘を受けたのは「深追いせずに潔く決別する勇気の強さ」です!(驚)

取引先のキヤノンによる株式買い取り話や防衛庁からの受注案件などをスパッと断り、或いは丸敬産業によるTEFNONモデルの展開も採算性が悪いとなればやはりスパッと切る!

限られた資産を最大限に有効活用する分野や製品に集約させる時間の早さとその決断力の鋭さに本当に感銘を受けました・・!

今もなお248名の少数精鋭 (2018年現在) ながらも東京都大田区の本社ビルの他に茨城工場と山形工場を擁しつつ、決して多角経営に走らず根幹技術の研鑽に努め様々な光学製品や機械加工製品に治具まで展開する一貫したその基本姿勢が本当に素晴らしいと感じます。

ここまでの説明で参考にさせて頂いた内容は公益財団法人「小堀雄久学生等支援会」理事長のページに拠ります。今ドキ困窮学生の為に学業を断念することがないよう私財を投じて4万円/月額を支援すると言うその精神性に本当に涙が出ます。素晴らしい方でいらっしゃいます!

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して滲んで溶けていく様をピックアップしています。例えば 焦点距離として中望遠レンズ域の100mmクラスなら表出する円形ボケは相当大きく写りますが、標準レンズ域の50mmになるとだいぶ小さく写ります。さらに広角域でこれだけシッカリと円形ボケが表出するのはたいした性能だと思いますね。

二段目
前の一段目でもそうですが、まずこのモデルの描写を観ていて感じるのは非常に被写体色に忠実な発色性だと言う点です。下手にコントラストを乗せたりダイナミックレンジの偏りもなくあくまでも忠実な発色性に見えます。また合わせて「艶出しがとても上手い」印象を抱いたので、光沢感のあるシ〜ンの表現性がステキとなると、単にダイナミックレンジが広いだけの話でもなさそうです。右側2枚の写真はまさにカラー写真と白黒写真との表現性の違いを同じシ〜ンで捉えられますが、これだけ臨場感タップリに残せるなら無名ブランド品とバカにできないと思います。

三段目
被写界深度はそれほど浅くなく (狭くなく) 自然な印象を受けますが被写体の材質感や素材感をキッチリ写し込む質感表現能力に優れていると感じます。砂の粒子感も違和感なく強調され、雪景色も美しいグラデーションを残せています。白黒写真での表現性もパースペクティブが悪くないので (それだけで) 広角域28mmでも十分捉えられるのが分かります。

光学系は典型的な5群5枚のレトロフォーカス型構成です。右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時に全ての群の光学硝子を逐一当方の手でデジタルノギスを使って計測して起こしたトレース図です。

すると絞り羽根を挟んで4群4枚の 部分は3群4枚のエルマー型 光学系構成を基本成分としながらも第3群を分割させて2枚の凸メニスカスにしたスピーディック型構成を採っているように見えます。さらに前玉側に極端な曲率で凹メニスカスを配置しレトロ化することで十分に鋭いピント面を確保できています。

特にコーティング層を見ると第2群の前玉側はグリーン色に対し裏面に濃いパープルを蒸着し且つ後群側は裏面側にブル〜を乗せているのが結果的にコントラストに偏らない自然な発色性を実現しているのでしょうか。第3群も表裏アンバー色でコーティング層を蒸着してちゃんと整えていますから、よくも簡素な5群のレトロフォーカス型構成でこれだけの性能を実現していると感心してしまいます。

ちなみによくネット上で語られる「オールドレンズらしいピントが甘い写り」と言う表現で「レトロフォーカス型光学系」を解説しているパターンが多いですが、それは違います。

これは1950年に世界で初めて広角域専用設計の光学系を開発したフランス屈指の老舗光学メーカー「P. ANGÈNIEUX PARIS」社が登録した特許で「レトロ (後退)」と「フォーカス (焦点)」を合体させた造語になり、バックフォーカスを稼ぐ必要性から基本成分の光学構成の前に焦点をずらす目的で1〜2枚の光学硝子レンズを直前追加配置した概念を指します。

と言うのも戦前〜戦後まで当時の主流はまだレンジファインダーカメラだったのでリーフシャッターを装備した一眼 (フィルム) カメラはバックフォーカスが短く十分に標準レンズ域の光学設計のままで広角域まで対応できていたからです (広角域専用の光学設計が必要なかった)。

ところが戦後すぐに現れたクィックリターンミラーボックスを装備した本格的な一眼レフ (フィルム) カメラの普及に伴い、それまでのバックフォーカスが短い光学設計では広角レンズ域に対応できなかったのです。

フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば撮像素子面) までの距離

バックフォーカス
光学レンズの後玉端から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス 一眼ならば撮像素子面) までの距離

そこでバックフォーカスを長く採った広角レンズ域の専用光学設計として開発されたのが当時の「レトロフォーカス型構成」だったのです。従って「如何にもオールドレンズライクな古めかしい印象の低コントラストな写り方」をイメージする「レトロ感覚的認識」とは全く異なる設計概念を表す光学系のコトバが「レトロフォーカス」である事を正しく認識するべきと考えます。

一般的に6〜7枚の光学硝子レンズ構成で設計してくるところをいくらマルチコーティングだとしても僅か5枚だけで到達させてしまったところに小堀製作所の確かな光学技術を感じず にはおれません。

↑上の写真 (4枚) は、一番左が原型モデルたる「TEFNON H/D-MC WIDE ANGLE 28mm
/f2.8
」で国内で流通していたタイプです。またその次からの3枚は海外向けの輸出専用モデルで「KOBORON MC WIDE ANGLE 28mm/f2.8 (M42)」ですが、よ〜く見ると「マウント部にちゃんと絞り連動ピンを備えている」のが分かります。

そして決定的な写真が一番右端の写真でクリック (タップ) すると拡大写真で見られるように してあります。

今も市場流通している数多くのオールドレンズに左写真のようなシールが貼り付けられている事が多いのですが、下手するとこのシールが 貼り付けられている事を「安心材料」の一つとして捉えている人や まるで検査にパスしたかの如く謳うヤフオク! の出品者も居るからたまりません(笑) しかしそれは全くの思い込みです(笑)

はたしてこのシールの意味とは???(笑)

戦後日本の光学機械工業は飛躍的に発展しますが、そうは言っても戦争で工業界の全ての分野に渡って疲弊してしまった国内市場がすぐに活況を帯びることにはなりません。そこで海外 輸出にまずは弾みを付けることで国内市場の景況感も向上してくると考えるのは自然です。 日本の光学メーカーは挙って海外製オールドレンズの模倣を始めますが、戦後の輸出品の中には大手光学メーカー以外のアウトサイダー品も流れていました (いわゆるパクリ品)。結果海外光学製品メーカーからのクレームが起き (一部訴訟あり)、その品質に於いて政府を挙げて対応したのがこのシール登場の背景です (つまり政府が業界に直接関与した背景があるシールとも言える)。

JCIA:日本写真機工業会
終戦当時1946年に発足した光学精機工業界写真部会 (当時17社) を前身とし1953年に政府からカメラ産業が重要輸出産業に指定されたことを受け、1954年に部会を独立させて「日本写真機工業会 (JCIA)」としました。任務は日本の世界に於けるカメラ産業の発展、及び写真文化の普及を命題としていました。2000年に団体は解散し「カメラ映像機器工業会 (CIPA)」へと引き継がれます。

JCII:日本写真機検査協会
輸出品取締法 (1948年制定) により日本工業規格 (JIS) の前身として日本輸出規格 (JES輸出39携帯写真機) の最低標準規格/梱包規格が制定され、当初輸出業者の自主検査により実施されていましたが品質向上/管理の寄与には程遠く1956年に第三者検査機関として「日本写真機検査協会 (JCII)」が発足し (当初7名)、輸出品取締法から輸出検査法に改訂された1957年を契機に一定水準を満たさなければ輸出できない検査/審査を執り行う機関へと変貌しました。

JMDC:財団法人日本機械デザインセンター
当時海外光学メーカーより意匠 (デザイン) 模倣のクレームや訴訟が多数発生したのを受け製品意匠と輸出価格の適正化 (自主輸出規制) を狙い発足したのが始まりです。輸出品に対するデザイン認定 (意匠審査/認定) 業務の他認定書の発行及び製品個体への認定シール貼付を課していましたが、実際はJMDCからの委託を受けてJCIIが輸出品全数にシール貼付を代行していたようです (製産メーカーにシールが渡り出荷時に貼付済なのを輸出認定時に抜き取り検査して全数検査としていた/輸出認可は事前申請だった為)。

これらのことからこの「PASSED」シールはある一定の品質基準に合致した製品であり、同時に海外意匠を模倣していないことを証明する「」であったことが分かります。しかし製品の性能機能を厳密に保証する (つまり精度保証する) 目的で貼り付けしていたワケではなく、あくまでもグローバル的な視点から見た最低基準の話であり、さらにそれは輸出品全数に及ぶ個体の「全数検査」を意味するものではないことを理解しなければイケマセン

つまりこのシールには「何の意味も無い」と考えたほうが良さそうですね(笑)
しかしこのシールには一つだけとてもありがたい情報が印刷されています

上の写真をもう一度拡大して見ると右端に小さく「72」の数字が印刷されています。つまりこの個体は「1972年に海外輸出された個体である」事が判明します。しかし今回扱う「ROBOTARシリーズ」も含め「TEFNONシリーズ」も製造番号先頭2桁を製造年度と解説しているサイトが数多く顕在しますが、上の写真で検証するなら「製造番号876392」なので1987年の製産個体と捉えられます。

ところがシールの年度は「1972年」の貼付を示すので未来の製造番号を刻印していた事になり話がおかしくなります(笑)

従って当方では製造番号先頭2桁は小堀製作所が使っていた何かの暗号を表す符番ではないかとみています (つまり製産年度の2桁ではない!)。

その検証になるような写真が左写真で、当方が 以前処分した一眼レフ (フィルム) カメラに「ROBOTAR刻印が無い無刻印個体」の28mm/
f2.8をくっつけてヤフオク! で処分した時の写真です。

するとこの個体の製造番号は「210527」なので「2021年?!」え?今年作ったの?!
・・みたいな笑い話になってしまいますね(笑)

↑上の写真は当方が過去に扱った「ROBOTAR MC 35mm/f2.8 (M42)」からの転用写真ですが、距離環のローレット (滑り止め) がラバー製のタイプです。

最短撮影距離が40cmなのが分かりますが、然し光学系の設計が今回扱う28mmのモデルとはとても近似しているのが分かります。同様マウント部も同じで「M42マウント規格」ながら やはり絞り連動ピンを装備しないタイプで作っています。

すると光学系前群の光学硝子レンズ格納筒をエンジニアリング・プラスチック製で起こしてきた狙いが正に現れており「前群だけを入れ替えて後群側の曲率をイジるだけで対応できた」とも推定できそうなとても合理的な手法の設計を採っていた事が分かります。

実際に以下オーバーホール工程の中でこの光学系前群の硝子レンズ格納筒がエンジニアリング・
プラスチック製である事を解説していますから、どうして肝心な光学硝子レンズ格納筒の前群側を金属製にしなかったのかと言う話で「そもそも発想の根本からして次元が違う」事が明白です。要は金属製かエンジニアリング・プラスチック製かの選択は「決して材のコストばかりが肝要ではない」ことの裏付けとも言え、パーツの材質や設計だけに頼ってコスト管理せずに「真に利益を圧迫するのは工程管理のほう」と正に本質を見極めていた設計陣の鋭さを垣間 見た印象を覚えました。

素晴らしい会社です・・!(涙)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は非常に合理的に考え尽くされた設計で構成パーツ点数からみても点数を少なくする工夫があったと感じられる印象で、富岡光学や栗林写真工業、或いは東京光学などとは全く異なる、いえどちらかと言うとやはりCanonやNikon、或いはMINOLTAの当時のオールドレンズに匹敵する洗練された (垢抜けした) 設計概念を感じる造りです。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、まずこの鏡筒の造りからして「一流光学メーカー」の素養を感じさせる設計です。アルミ合金材の削り出しですが上の写真で黒っぽい部分は「マットな梨地仕上げのとても微細なメッキ加工」が施され容易に経年の揮発油成分が廻らないようちゃんと配慮しています (だからこそまさにCanon/Nikon/MINOLTAクラスの設計と同一レベル)。

もうこの鏡筒を見ただけで無名ブランド品などと罵ることができない次元の違いを感じさせます。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

さらに驚いたのは「絞り羽根のカタチが表裏反転で両用の設計」を採っている為、既に絞り羽根のカタチだけで右回り/左回りどちらにも対応できるよう考えられています。このようなカタチを採った絞り羽根の設計はやはり大手光学メーカー製のオールドレンズでしか見たことがありません。

従って上の左写真で「開閉キー位置決めキー」を説明していますが、このモデルでの話であって別のOEMモデルならひっくり返して逆回転する絞り羽根の使い方が適うワケで、結果的に絞り環が反転したタイプをセットすることがそれだけで適います!(驚)

このような設計手法は富岡光学製オールドレンズにもないのである程度のモデルを造り慣れている光学メーカーである事がこれだけでも判明してしまいます!(驚)

だからこそ当初小堀製作所がキヤノンの第1協力工場として指定されキヤノン向け製品の開発/製造をしていた事実にも納得できてしまいますが、後にはキヤノンからのプレッシャーにより最盛期の1/4以下まで受注が低下していた流れをみると決別したのも道理というものです。

何を隠そう当方もその昔キヤノン販売 (小売業界に属するほう) と取引していましたが、当時は小売のヤクザとまで俗に陰口を囁かれていたくらいなのでやはり相当なプレッシャーを受け 苦しい時代があったのを覚えています(涙) 従ってそんな与件からも当方はあまりCanon製品を好きになれません (あのロゴマークに拒絶反応がある)(笑)

冒頭でお話した小堀理事長のキヤノンとの決別にも至極納得できる想いが強いのは間違いありませんね(涙)

当方が今まで使ってきたデジカメ一眼/ミラーレス一眼のカメラボディは、NikonからスタートしてOLYMPUSを経てPanasonicや富士フイルム、或いはPENTAXを使い現在のSONYに辿り着きましたが、その中で唯一Canon製品だけ使っていない理由がまさにそのような背景があったからでもあります(笑)

↑5枚しかない絞り羽根を組み込んで鏡筒最深部に絞りユニットをセットしましたが、上の写真解説のとおり見えている環/リング/輪っかは「位置決め環」で絞り羽根が刺さる位置を決めています (上の写真で刺さって見えている絞り羽根のキーが位置決めキーと言う話になる)。

ところが驚いたことにこの位置決め環は何とエンジニアリング・プラスチック製なのです!(驚)

しかも相当硬質なエンジニアリング・プラスチック材を使っているのでネジが効きますし静電気対策もシッカリ講じられていて塵/埃が容易に吸いつきません。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上側が前玉側方向になります。鏡筒の外回りは「ヘリコイド (オス側) のネジ山」で切削されており、さらに両サイドに「直進キーガイド」と言う溝が備わっています。

この「直進キーガイド」にも過去メンテナンス時に「白色系グリース」が塗られてしまい何の意味も成さないのでそのまま残っていましたが、実はご覧のとおりこの「直進キーガイド」の溝部分にまで油性分を嫌う狙いで「マットな梨地仕上げメッキ加工」が施されているワケで、このブログで当方が何度も何度も指摘しているとおり「直進キーとそのガイド/溝部分にはグリースは必要ない」事が設計段階で配慮している事になり、より明確になりました!(驚)

例えばNikonのオールドレンズなどもこのように「直進キーガイド」部分に梨地仕上げメッキ加工を施しているモデルが多く顕在します。

↑鏡筒をひっくり返して今度は後玉側方向を撮りました。鏡筒からは「開閉アーム」が飛び出ていて、それを円弧を描いたカタチの「操作アーム」が押し込めるよう動く仕組みです (赤色矢印)。

一方この工程でのポイントはグリーンの矢印で指し示しているスプリング (のチカラ) と「制御キー」の存在です。この後の工程で写真を撮っていますがこのスプリングのチカラにより「常に絞り羽根が閉じるチカラ」を及ぼしています。

↑鏡筒の裏側を少しだけ回してヘッの部分を撮りました。前述の「操作アーム」が写っていますが、このアームに押すチカラを与えているのがグリーンの矢印で指し示した「捻りバネ」であり、このチカラによって「常時絞り羽根を開こうとするチカラ」が及んでいます。

だからこそ前の工程でもポイントだと説明しました。

スプリングのチカラが相当強いチカラで「常に絞り羽根を閉じる」のに対抗するチカラが実は貧弱な「柔らかく細い捻りバネ」なのです。

これはたいていの自動絞り方式を採用したこの当時のオールドレンズで、内部の鏡筒裏側なのかマウント部なのかその配置場所は別としても「必ず絞り羽根を閉じるチカラと開くチカラのバランスの中で自動絞りが実現する」仕組みを採っています。

パッとシロウト的に考えると「閉じるチカラも開くチカラも同じチカラでないとバランスが崩れる」と考えがちです(笑)

つまり両方ともスプリングを使うか、或いは両方とも捻りバネにするか、同じチカラで作用するバネ類を用意すると考えがちです。

ところがオールドレンズ内部のチカラの伝達経路を考えると、ダイレクトにバネ類のチカラが及ぶ箇所があっても、もう一方は別の部位からのチカラが伝わってきて絞り羽根の開閉に対抗するので「一方がスプリングなら他方はたいていの場合で捻りバネ」と異なる種別の反発力/引張力を用意するワケです。

この問題を全く理解していない整備者があまりにも多すぎるので、オールドレンズを完全解体でバラしていくと「バネを曲げたり変形させたり」或いは「スプリングを伸ばしたり短く切ったり」など過去メンテナンス時に強制的に処置を加えてチカラのバランスを変えている事が多いです。

それは経年劣化の進行に伴う各部位の酸化/腐食/錆びの程度が悪化しているために、製産時点のチカラのバランスを維持できなくなっているからに他なりません。

例えば今回の個体に関して言えば過去メンテナンス時にこの「操作アーム」にビッチリ「白色系グリース」が塗られていたので酸化/腐食/錆びが進行していました。今回のオーバーホールでは仕方ないので「操作アームを磨いてサビ取りした」ワケで(笑)、過去メンテナンス時のごまかしを尻拭いしているのは当方みたいな話です(笑)

↑絞り羽根開閉を司る制御機構を完成させる為に「制御キー」なる切り欠きが備わる金属板を「操作アーム」にセットしました (赤色矢印)。すると金属製の突出棒が制御キーのその切り欠き部分を行ったり来たりするようになるので、その動きに従い先端部が「開閉アームを押したり離したりする」動き方をします (ブルーの矢印)。つまりその動きにより絞り羽根が閉じたり開いたりするワケです。

上の写真の状態では「制御キーの最小絞り値側に金属棒が来ているので開閉アームから離れて絞り羽根が閉じきっている状態」になっているのが分かります。

一方「制御キーの反対側」に金属棒が来ると操作アームが開閉アームを押し込むので (ブルーの矢印の動き方) 絞り羽根が完全開放状態に開きます。

↑「制御キー」を動かして実際に絞り羽根が完全開放した時の状態で撮影しました (グリーンの矢印のように金属棒が反対側の切り欠き部分に来ているから)。

するとこの部位で絞り羽根の開閉動作を制御しているのが分かりますが、過去メンテナンス時にここに「白色系グリース」を塗ったくってくれました(笑)

ところが最初のほうの工程で説明したとおりこの鏡筒の黒っぽい部分 (ダークグレーの箇所) は揮発油成分が流れないようにワザと「マットな梨地仕上げのメッキ加工が施されている」ワケで、設計者が油分を嫌っているのがとてもよく分かります。

どうしてそんな部位に過去メンテナンス時の整備者は「白色系グリース」を塗ったくったのでしょうか???

こういう部分にいつも当方が言っている「観察と考察」が全くできていないと何度も説明しています。

過去メンテナンス時の整備者はこのオールドレンズの設計者の意図を台無しにしてまで油性分を嫌う箇所に「白色系グリース」を塗りまくったワケです!(笑)

はたしてそのような整備が整備と言えるのでしょうか???

製産時点ではワザワザ敢えてコストを掛けてまで「マットな梨地仕上げ」に処置したのに本当にロクな事をしません。

↑鏡筒周りはこれで完成したのでここからはヘリコイドの組み立て工程に入ります。距離環やマウント部が組み付けられる基台です。

↑その基台をひっくり返して裏側を撮影しました。赤色矢印で指し示している箇所に汚れのようなモノが写っていますが、これらは汚れではなく「隙間/空間」でアルミ合金材を生成した時に混ざってしまった不純物の箇所に隙間ができてしまったのです。

どの構成パーツにも影響を来さないので別の基台を使わずにそのまま組み上げてしまっています(笑) また圧がかかる場所でもないので問題視せず使ってしまったのが分かります。

↑無限遠位置のアタリを付けた場所までヘリコイド (メス側) をネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

基台には一部に「制限壁」なる壁が備わり、ここに距離環のキーがカチンカチンと突き当たるので無限遠位置で停止したり最短撮影距離の位置で突き当て停止したりします。

ところがこの基台には反対側にもっと短い「制限壁」まで用意されていて、おそらく焦点距離35mmのモデルと共通パーツとした設計にしているのではないかと考えています。

↑鏡筒の外回りに切削されているヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みました。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

すると一つ前の工程で説明していた「別の制限壁」が写っています。しかしこのモデルではこの短いほうの制限壁は使いません (赤色矢印)。従って別モデルとの共通パーツとして標準化まで考慮しつつ合理的な設計を採っているのがこれだけで分かります。

↑鏡筒の裏側を撮っていますが、先の工程で既に制御部は完成している為、ここでは「両サイドに直進キーが刺さった」ことを示しています (赤色矢印)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑基準「●」マーカーが刻印されている指標値環をセットします。

↑鋼球ボールを組み込んでから絞り環をセットしました。ご覧のように絞り環から飛び出ている赤色矢印で指し示した「連係アーム」が鏡筒裏側の「制御キーに刺さり」絞り環を回して設定絞り値にするとそれに伴いブルーの矢印のように「操作アームから飛び出ている金属棒が動く」ので絞り羽根が開いたり閉じたりする原理です。

↑マウント部を被せました。今まで解説したように絞り羽根開閉機構部にはスプリングと捻りバネによる「自動絞り方式」が既に備わっているので、このマウント部に絞り連動ピンさえあれば自動絞りのモデルにもなる事が分かりますね(笑)

↑距離環を仮止めでセットしましたが、この距離環もやはりエンジニアリング・プラスチック製です。ローレット (滑り止め) 部分は一体成形で造られています (ラバー製ではない)。

↑そしてオドロキのパーツがこの「光学系前群格納筒」で、何とやはりエンジニアリング・プラスチック製なのです!(驚)

他の部位のパーツをエンジニアリング・プラスチック製にするならまだ理解できますが、肝心な光学硝子レンズを格納する筒にエンジニアリング・プラスチック材を使うと言う太っ腹です(笑)

冒頭で解説したとおりやはり非常に硬い素材なので単なるコスト削減の話ではなくちゃんと 光学性能を維持できるつもりで敢えて材を金属にしていないことが推測できます。

要は冒頭で解説した「35mm/f2.8」との標準化パーツとして考えていた事が推測でき、敢えて金属材を選択せずにエンジニアリング・プラスチック製の格納筒を採ったことで工程管理が 簡素化され (工程が短縮化され) 然し重要な光学硝子レンズの格納位置確保という精度面はキッチリクリアすると言う一石二鳥的な発想が根本にあったことを伺わせます。

詰まるところ「妥協と言うコトバが設計陣には無かった」と言うレベルの話で、当初の諸元値をキープしながらもどうしたらもっと利益を圧迫しない手法で設計できるかに果敢に取り組んでいた事の証のような新鮮さを覚えました!(涙)

フツ〜なら逆をやってしまい光学硝子レンズ格納筒は金属製ながら他はエンジニアリング・プラスチック製に徹すると言うオールドレンズなど数多く見てきましたが(笑)、小堀製作所の設計概念は根本からして別次元なのがこれだけで判りました!(驚)

ちなみに似たような設計概念を持っていた当時の光学メーカーと言えば一番先に思い浮かぶのはKONICAやMINOLTA、或いはCanonにNikonとやはり一流光学メーカーばかりなのが納得です!(笑) いずれの会社のオールドレンズにも逆転発想の材の使い方が顕在しコスト管理面での考え方が別モノです。

↑ひっくり返して光学系第2群をセットしたところを撮りました。ご覧のように光学系第2群の光学硝子をハメ込むと「バヨネット式押さえ環で締め付けるだけ」と言う簡素な固定方法ですが、実はこの第2群を入れ込むのが相当キツキツで容易にズレない設計なのが分かります (同様に前玉も簡単には入らない)。

要は一番最初にバラす時も全く取り出せず、且つ清掃後に組み込む時も全く格納できない「工夫を施さなければ容易に光学硝子レンズを着脱できない」設計でちゃんと作られているからこそ、エンジニアリング・プラスチック製の格納筒にしても何ら問題が起きないワケです。

一方後群側の格納筒はそのまま鏡筒からの延長なので金属筒であり、光学系内の入射光が集束する役目となれば組み込む光学硝子レンズの曲率を少しだけ微調整して設計するだけで別モデルにも対応できる次第で「ここに前群側をエンジニアリング・プラスチック製で設計してきた理由が含まれている」ワケです。

光学系前後群をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前に距離環を回してみると明らかに「白色系グリースによる経年劣化」を感じましたが、完全解体すると既に鏡筒内部やマウント部内部が揮発油成分でヒタヒタ状態でした。

しかし驚いたことに絞りユニット内には経年の揮発油成分が一切廻っておらず前述した鏡筒内外に処置された「マットな梨地仕上げメッキ加工」の効果が絶大であったことがこれだけでも間違いありません!(驚)

実際溶剤で経年の揮発油成分を除去しようと洗浄すると、これら「マットな梨地仕上げメッキ加工」が施された箇所だけは溶剤を弾くので、たかが金属材表層面のメッキ加工だと言ってもちゃんと設計者の意図通りに機能し役目を果たしているのがそのような現象をチェックした だけで判ります!(驚)

観察と考察』することでこういう部分に「設計者の意図」を見出せるワケで、それを掴んでしまえば自ずとどのようなグリースの塗布がベストなのか導かれると言うものです。

従ってよくヤフオク! で信用/信頼が厚い出品者が指摘しているようなオールドレンズの整備者を貶す表現として、当時のサービスマニュアルが手元に無いにもかかわらず正しい組み立て 工程など分かるハズがないと述べていますが、それはまさしく「自ら一度も整備したことが ないド素人感覚」としか言いようがありません(笑)

もっと言うなら『観察と考察』ができず『原理原則』も知らないようなどうしようもない整備者は「単にバラして逆手順で組み上げているだけ」と指摘できますが、それらを逐一チェックして『本来あるべき姿』を掴める技術スキルを持つ整備者なら、そんなサービスマニュアルなど手元に無くても正しく適切な微調整を経て組み上げる事が適います。

そもそも製造メーカーでない限りサービスマニュアルが手元にあるハズがなく(笑)、ひいて言うなら組み立て工程で使う専用治具や検査用治具も一切所有していないのは当然のことであり、そんな要素を指摘してくる時点で甚だ整備という作業を全く理解していないド素人レベルの 戯言でしかありませんね・・要は当方と同じ低俗な『転売屋/転売ヤー』でしかありません(笑)

そういう出品者が幅を利かせているのがヤフオク! だったりもするので恥ずかしい限りです(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。

上の写真を見ただけではまさか光学硝子レンズがエンジニアリング・プラスチック材の格納筒にセットされているとは気づきませんが、確実に光学硝子レンズが格納されるよう敢えて格納しにくい (格納工程時に必ず工夫が必要な) 設計を採っているワケで、そこにもこのエンジニア リング・プラスチック材を使うことでコストに見合う「設計者の意図」が見出せるワケで素晴らしい概念だと思います。

↑光学系後群側はコストで妥協せずちゃんと鏡筒から続く金属材で「マットな梨地仕上げメッキ加工」を処置し光学系後群を収めています。

前群同様LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑5枚の両用使いが可能な高機能な絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際はご覧のように「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていくのがとても気持ち良いです(笑)

上の写真を見るとようやく分かりますがグリーン色のコーティング層が蒸着されているのがその光彩をチェックすることで分かります。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑距離環も金属製ではなくエンジニアリング・プラスチック製ですが、とても質の良い仕上がりなのでチープ感など微塵もありません!(驚)

塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使いシッカリしたトルク感に仕上げていますが、ピントの山が掴み辛いのでピント合わせ地の微動が軽い操作性でできるよう仕上げています (当初の劣化したツルツルした感覚は排除しました)。

距離環のローレット (滑り止め) 部分が一体成形なのでご覧のようにとても高品質な仕上がりに見えます。

↑国内では「TEFNON H/D-MC WIDE ANGLE 28mm/f2.8」モデルが流通し、海外輸出専用モデルは「KOBORON MC WIDE ANGLE 28mm/f2.8」としても、この「ROBOTAR MC 28mm/f2.8 (M42)」の海外市場での出現率は相応に少なめで希少です。

↑距離環が無限遠位置「∞」の時、ご覧のように後玉端が僅かに突出するので (グリーンの矢印)、この状態で下置きすると後玉の中央に当てキズを付けかねませんからご留意下さいませ。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状態ですがご覧のようにいまだ「回折現象」の影響を感じません。素晴らしい描写性です。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。