〓 Meyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) Trioplan 100mm/f2.8《後期型−II》(exakta)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧東ドイツは
Meyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ・・・・、
Trioplan 100mm/f2.8《後期型−II》(exakta)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を
始めた13年前からの累計で、当時の旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ「100mm/f2.8」の括りで捉えると17本目にあたりますが、今回扱った個体「後期型−II」だけでカウントすると僅か4本目です。

【 モデルバリエーション】
初期型−I

筐体のほとんどが真鍮 (黄鋼) で作られているのでズッシリと重みが
あります。
光学系は3群全てが真鍮製/ブラス製格納筒にモールド一体成型で造られています。

初期型−II

当初発売されていた真鍮 (黄鋼) 製モデルからアルミ合金材に変わり、筐体外装の意匠も一部が変更されていますが、最短撮影距離:1.2mのままなので、光学系硝子レンズの格納方法の設計は変わっている
ものの、光学設計自体に変化はないようです。

前期型

絞り環の刻印絞り値の真上にだけ「●」ドット刻印があるタイプですが、市場に出回る率が相当少ないモデルです。

中期型

市場に出回る率が高いのがこちらのタイプで、絞り環の刻印絞り値は上部に「●」ドット刻印を伴い、且つ絞り値の間にも「●」ドットが
入っています。

後期型−I

絞り環の刻印絞り値に付随していた上側の「●」ドット刻印が消えて、各絞り値の間の刻印だけに変わっています。またマウント部直前の
基準「」マーカーは左右の囲みラインが消えています。

後期型−II

外見上は一つ前の「後期型−I」との区別が全く分かりません。しかしバラしてみると、光学系後群の固定がイモネジ (3本) による締め付け固定に変わりました。従って「後期型−I」までは後玉が締付環による締め付け固定なので、光路長の適正化と共に光軸ズレを防ぐ意味で楽だったとも言えます。

モデルバリエーションの中で肝心な真鍮製/ブラス製の「初期型−I」の存在を明示し忘れていたので、上記のとおりモデルバリエーションを更新しました。

この光学系後群の固定方法について逆に指摘するなら、後の1968年以降にMeyer-Optik Görlitzが同じく旧東ドイツのPENTACON (ペンタコン/ペンタゴンではありません)(笑) に
吸収合併された際、それ以降のPENTACON銘モデルの多くが「後群側の固定がイモネジ3本による締め付け固定に変わり、特に過去メンテナンス時による光軸ズレの懸念が高くなってしまった」とも言い替えられます。

そしてここから推察できる当時の背景は、PENTACONがオールドレンズなどの光学メーカーではなくて「カメラメーカー」だった点が明らかになり、それまで自社製オールドレンズの開発/設計に苦慮していたが為に、吸収合併したMeyer-Optik Görlitz社の設計陣を活用していった (当然ながら工場設備の転用も含む) との推測が成り立ちます。

この推測の補強材料を挙げるなら、1968年の秋以降に登場してくるPENTACON銘モデルの多くが「絞り羽根の設計と回転方向がMeyer-Optik Görlitz製モデルのそのままだった」点
からも伺えます。

以下の写真と解説は当時のPENTACON製標準レンズ「PENTACON auto 50mm/f1.8 (モノ
コーティングのモデル)」と「PENTACON auto 50mm/f1.8 MULTI COATING」を例にしていますが、他の多くのモデルで同じ状況だったことをオーバーホールなどで確認済です。
下記にそれぞれの絞り羽根の形状と向きの相違を示します。

Meyer-Optik Görlitz モデルと同一のカタチと制御方法
光学系のコーティング種別:モノコーティング
絞り羽根枚数:6枚
形状と絞り羽根の回転方向:L字型、右回り
キーの配置:片面に2個

PENTACONのカタチと新たな設計での制御方法
光学系のコーティング種別:マルチコーティング
絞り羽根枚数:6枚
形状と絞り羽根の回転方向:円弧型左回り
キーの配置:両面に1個ずつ

これらの検証から当初はMeyer-Optik Görlitz銘からPENTACON銘へとモデル名を変更しつつ筐体外装などの意匠を黒色鏡胴へと変遷させていった流れが見えてきますが、実はもっと細かく調べると「PENTACON製モデルの光学設計がマルチコーティング化されたタイミングで内部設計も大きく変化した」ことが完全解体などで分かっていますから、詰る処そのタイミングで吸収合併したMeyer-Optik Görlitz社の設計技師が篩いにかけられていったのではないかとの憶測まで現れます・・何故なら、1968年以降にさらに同じ旧東ドイツのCarl Zeiss Jena DDR (当時は最後にDDRが付随している時期) に吸収合併していった数多くの光学メーカーからの設計技師達も、同じように篩いにかけられまとめられていったと考えられるからです。

確かに戦前から続く/継承してきたCarl Zeiss Jenaではありますが、そもそも国が旧東ドイツと言う旧ソビエト連邦統治に依る「産業工業5カ年計画」体制の中に総てが組み入れられていた時代であった点まで汲みする必要があり、その中で「全体主義」の概念からすれば吸収合併していった数多くの光学メーカー設計技師達は、当然ながら必要性の有無の篩にあってしまった事が伺えます・・これを考え始めるとまたロマンが広がってしまいます(涙)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はTrioplan 100mm/f2.8《後期型−II》(exakta)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。実は一番最初の梱包箱から取り出して、バラすまえに念の為に実写確認したところ「無限遠位置で全くピントが合わない状況」で、どんなに最短撮影距離の方向に距離環を回していっても鋭いピント面に変化しませんでした。

ご依頼者様は普段ライカ製M11でお使いのようなので、一緒に同梱頂いた「exakta – LMマウントアダプタ」から、当方所有ミラーレス一眼SONY製α7IIに装着する為に「LM – SONY E
マウントアダプタ
」をダブルで装着しての実写確認作業です。

それでそんな「意味不明な???なピント面」となれば、ライカカメラで問題なく使えていたであろう事からして「当方所有マウントアダプタの何かが悪い/おかしい」としか考えられず、取っ替え引っ替えマウントアダプタをガチャガチャと装着替えするハメに陥りました。

当然ながら日本製のRayqual製マウントアダプタにも登場してもらいましたが、すると「ピント面の乱れ方が変化する」のが判明しました。そこで今度は試しに当方所有「exakta – SONY Eマウントアダプタ」にダイレクトに装着すると「同様ピント面は乱れたままながらも、またもや写り具合が変化した」次第で・・要はマウントアダプタ3個で3様にピント面の写り具合が変化してしまい「マウントアダプタ=???!!!」みたいな変な話に陥りました!(驚)

これにはさすがにオドロキしか残りません!(涙)・・3つのマウントアダプタそれぞれで「厳密なフランジバックにズレが生じている (つまりフランジバックの設計がそれぞれで異なる)」との現実にブチ当たり「???どころの騒ぎではなくなった!」始末です(笑)

第一、そもそもの実写確認による描写性が「全くピント合焦していない状況」からして、基準となるモノが一切存在しない現実に遭遇してしまったワケです(笑)

・・まるで三流以下のSF映画を撮影している気持ちです!(汗)

こうなると、もぉ~3個のどのマウントアダプタに信用をおいて良いのか「???」です(汗)
・・となれば、逆に考えて「どうしてピント面が???なのか」を突き止めない限りオーバーホール作業の進めようがありません(汗)

そこで仕方なく、とにかくバラし始めることにしました。普段のオーバーホール作業では必ずバラす前に一度実写確認して「どんなピント面なのか? 鋭さはどうなのか? どんなピントのピーク/山を迎えるのか?」などなど確認しますが、それらの情報が全くゼロのままスタート
するしかありません(泣)

それでバラしてみたら何の事はなく、右構成図の 色着色した光学系第3群後玉がイケナイのが判明しました!(驚)

このモデルの光学系は3群3枚の典型的なトリプレット型光学系の設計です。右構成図は以前オーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子
レンズを計測したトレース図です。

・・何と何と、後玉の向きが逆に入っていました!!!(驚) つまり凸平の順で入っていた!

確かに光学系内の構成枚数が多くなる広角レンズ域のモデルだったりすると、稀に光学系の任意の群の向きが逆に入っている事がありますが、さすがに「そもそも3枚しかガラスレンズが存在しないトリプレット型」で向きを違えるなど、正直初めての経験でした(笑)

いくら何でもそんな事は当然ながら想定する由もないので(笑)、取っ替え引っ替え3個のマウントアダプタと戯れてしまった1時間半を返してくれ~ぇ!と言いたいところです(笑)

ちなみに本当にイケナイのは過去メンテナンス時の整備者で、後玉の向きを反対に格納したのが拙いのですが・・(笑)

まぁ~逆に言えば、おかげでこれら3個のマウントアダプタのフランジバックが微妙にズレている仕様の設計である事が判明したので、それはそれで発見には至りました(笑)

・・ちなみにexaktaマウント規格のフランジバック:44.7㎜です。

するとフランジバック計算から「44.7㎜18㎜26.7㎜」それに対して・・・・、
※「18㎜はSONY Eマウント規格のフランジバック
exakta – LMマウントアダプタ (K&F CONCEPT製/中国製):16.88㎜
LM – NEXマウントアダプタ (K&F CONCEPT製/中国製):9.68㎜
exakta – NEXマウントアダプタ (K&F CONCEPT製/中国製):26.61㎜
exakta – NEXマウントアダプタ (Rayqual製/日本製):26.63㎜
のダブル装着時 (K&F CONCEPT製/中国製):26.56㎜

上のように、今回実写確認時に調べたのはの3つの実写確認だったので、三つ巴で「???」が増大していった次第です(笑)

ちゃんと無限遠位置で合焦してさえいてくれれば、単にこれらフランジバックの僅かな誤差分は「全てオーバーインフ方向へのズレに至るだけの話」なので、例えば無限遠位置の刻印たる「∞」の右側の◯で合焦するのか、それよりもオーバーインフ量が増えて∞と、一つ手前の
距離指標値たる30刻印との中間で合うのか・・そう言う類の話にしかならず、そうであれば大騒ぎにはなりませんでした (すぐにマウントアダプタ設計のフランジバック仕様の問題と判明していた)(涙)

確かに当方の技術スキルも低くて酷いですが(汗)、さすがに3枚玉で3枚目を逆に入れるのは
・・無しにしましょうョ! (全く以て笑い話です)(笑)

↑上の写真は以前扱った個体のオーバーホール時の写真からの転載です (今回扱った個体ではない/しかし同じ後期型−IIではある)。

このモデルは鏡胴が「前部/後部の二分割式」の構造ですが、鏡胴「前部」の基準環から上部分は「単にヘリコイドオス側にネジ込まれているだけ」です。逆に言うなら、上の写真で写真上方向が前玉側なので「基準環黒帯の前玉までが鏡胴前部」一式と言うことになります。

すると単に反時計方向に回してネジ込みを外せば良いだけの話なのですが (反対に回せばゴロッと前部が脱落するから)、問題なのは「おそらく製産時点に機械締めで硬締めしてある」と
考えられます(泣)

もっと言うなら「凡そ人力では逆方向に回せるモノではない」ので(泣)、仕方なく治具を使って回す事に陥ります。

↑上の写真は既に鏡胴「前部」を反時計方向に回して取り外し、さらに黒帯部分の光学系前群格納筒を取り外し「鏡筒周りだけが残っている状態」の写真です。

すると赤色矢印で指し示している箇所に「開閉キー」と呼ぶ「シリンダーネジ」が刺さっています。

まさに左写真の特殊ネジが刺さっているワケですが、この特殊ネジは鏡筒内部に組み込まれている「絞りユニット内の開閉環」と上の写真に写っている外装のオレンジ色の矢印絞り環」とを連結する約目です。

問題になるのはこの「シリンダーネジのネジ部の軸部分が僅か1㎜弱の径しか無い」のが、
チョ〜超コワイのです!(怖)

・・どうしてなのか???

実は、グリーン色の矢印で指し示している箇所に用意されているネジ山が前出のヘリコイドオス側のネジ山にネジ込まれており、前述のとおり「機械締で硬締め」なので、およぞ人力では回せません (外せない)。

すると仕方ないので、治具を使って反時計方向に強制的にムリヤリ回して外しますが、その時「ブルー色の矢印で指し示している鏡筒にはカニ目溝が用意されていない」為に、専用の治具を使うにも「絞り環まで一緒に反時計方向に廻ってしまう」のです!(怖)

この時どのような動き方が起きているのかと言えば「シリンダーネジの駆動範囲が開放側最小絞り値側の間だけ」である為に、絞り環をどんどん回していくと途中でシリンダーネジが駆動範囲限界に到達し「絞り環の回転が止まる」ので、そこで初めてヘリコイドオス側のネジ山と反対方向にチカラが及びます・・つまり外せる事になります。

・・すると皆さんは「単にネジ山同士だから回し切って外せばいいじゃん!」と言います(泣)

↑上の写真は運良く回すことが叶い、絞り環 (オレンジ色の矢印) と鏡筒 (ブルー色の矢印) をバラせた状態を撮っています。

すると鏡筒最深部に絞りユニットが組み込まれていて、そこに入っている「開閉環 (シルバーな部分)」に用意されているネジ穴に赤色矢印で指し示しているシリンダーネジがネジ込まれ、且つ合わせてグリーン色の矢印で指し示しているように右隣の絞り環の溝に刺さって「互いが連結する」原理です。

従って「絞り環を回すと鏡筒最深部の絞りユニットにセットされている絞り羽根が開閉動作する」原理ですね(笑)

・・何を言いたいのか???

つまりこの絞り環を回していくと途中でシリンダーネジ開閉キーが開口部の端に到達してしまい (ちょうど開放側に当たる位置) 突き当て停止してしまいます。

だからこそここで初めてヘリコイドオス側のネジ山からこの鏡筒を反時計方向に回して外せるワケですが、この時硬締めされている鏡筒のネジ山を「めいっぱいのチカラで回しているそのチカラがシリンダーネジの軸部分に一極集中している状態」なのが怖いのです!(怖)

下手すれば耐えられずに「シリンダーネジの軸部分でパンッと折れてしまう」からです!(怖)・・それはそうです、僅か1㎜弱の径しかない軸部分に「エイッ!」と最大のチカラをかけて回している最中ですから、そのチカラ全てが軸に一極集中するのは当然の話しです。

・・実際に今までに2本の個体で折れてしまっている!(涙)

この「開閉キー (シリンダーネジ)」が折れてしまうと、当然ながら「鏡筒最深部に組み込まれている絞りユニット内の開閉環と絞り環が連結されていない状態」なので、どんなに絞り環を回しても「絞り羽根は一切動かない/開閉動作しない」状況に至り「製品寿命」を迎えます(怖)

長々と解説してきましたが、当方が2021年に2本目に折ってしまった個体で懲りてしまったので、それ以来このモデルのオーバーホール/修理受付をご辞退し続けてきたのです。

ところがどうしても整備してほしい・・との事で、今年に入って1本ヤッてしまったのが間違いで、再び折ってしまい3本目になりました(涙)

今回も恐る恐る作業に臨みましたが、無事にバラす事が適いました(怖)・・ハッキリ言って、やはりこのモデルのオーバーホール/修理は全てご辞退申し上げます・・とても怖くて
やってられません!(怖)

↑オーバーホール/修理が終わった状態の解説に戻ります。非常に光学系内の透明度が高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

光学系第2群のコーティング層に一部外周付近に集中して、コーティング層のヘアラインキズ/微細な線上剥がれが複数残っています。また一部には点状のカビ除去痕が残っています。

↑光学系後群も正しく適切な向きで組み込み、合わせて簡易検査具を使い光軸確認しつつイモネジ3本で締め付け固定しています。

↑15枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環や絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます。絞り羽根は表裏面で相当なレベルで油染み痕が残っており、だいぶ汚れていましたがとてもキレイになっています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、距離環を回すトルクは「重め」人により「普通」レベルに仕上がっています。当方独自のヌメヌメっとしたシットリ感漂うトルク感に仕上げており、特にこのモデルのピント面が鋭く瞬時にピーク/山を迎えるので、それを考慮してトルク管理しています (前後微動が楽です)。

なお、当初バラす前の時点では「筐体外装には相当に深い引っ搔きキズ」が相当数ありましたが、その多くを「磨き入れ」によりほぼ消滅状態まで磨き上げてあります・・ご覧のとおりピッカピカですが、一部のキズは深すぎて僅かに痕跡が残っています。

↑プリセット絞り環や絞り環の操作性も、そもそも設計上で無段階式 (実絞り) の操作性なので、スカスカ感に堕ちないよう配慮して、むしろトルクを与えて仕上げてあります。

その一方で、プリセット絞り環のプリセット絞り値設定操作時は、ガチャガチャ感が少なくなるよういずれの操作性も考慮しながら組み上げました。

基準「」マーカーも上下位置でピタリと縦方向に合致していますが、僅かにオーバーインフの無限遠位置で仕上げています。これ以上ピタリと構造面から合わせられませんので申し訳ございません (このモデルはヘリコイドオスメスのネジ込み位置でしか微調整できません)。

他には例えばシム環を挟んで無限遠位置調整する手もありますが、残念ながら上の位置にある基準「」マーカーがズレてしまうので、それもできません (鏡胴前部が完全なネジ込み固定方式の為)。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離1.1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているので、そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き2本目の作業に移ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。