◎ Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAREX Sonnar 135mm/f4 (black)(CRX)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回が初めての扱いになりますが、戦後の旧西ドイツはCarl Zeiss (oberkochen:オーバー コッヘン) 製中望遠レンズCONTAREX Sonnar 135mm/f4 (black) (CRX)』です。

CONTAREX版」なので、Carl Zeissが同じく旧西ドイツのZeiss Ikonが1959年に発売していた「CONTAREX (I型)」向けセットレンズやオプション交換レンズ群を供給していたオールドレンズの中の一つです (右写真はCONTAREX I型)。

この一眼レフ (フィルム) カメラは巷で呼ばれる俗称があり「Bullseye (ブルズアイ)」の愛称と共に、今もなお憧れの的であり続ける僅か
約32,000台しか製産されなかったカメラです。

当時からして非常に高額だったので、とても庶民的とは呼べそうもありませんが、その実力は相当なレベルだったようです。

大きな円形窓が軍艦部に備わりますが、絞り羽根開閉動作とシャッタースピードの両方に連動する世界初のクィックリターン式ミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラですね。この 円形窓を指して「Bullseye」と呼ばれますがセレン光電池式連動露出計であり、この俗称の 由来は「bulls (雄牛) のeye (目) を射貫く」から来ており「射る的」転じて最近では軍事用語でもある「攻撃目標地点 (ブルズアイ)」に至っています (攻撃目標を無線などで傍受されても 分からないようする暗号として使われた)。

1959年の発売と同時に用意されたオプション交換レンズ群は実に多彩で、焦点距離21mm から何と1,000mmまで揃っていたので、本気度が違いますね(笑) とは言いつつも、現実的な話しとして非常に高価なフィルムカメラだっので、はたしてこれらオプション交換レンズ群を揃えられた人が世界中でいったいどれだけ居るのかと考えてしまいます(笑)

上の引用は一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX (I型)」の取扱説明書から抜粋した今回 扱うモデルの描写に関する説明部分です。

すると中望遠レンズのモデルとしてもう一つ「CONTAREX OLYMPIA-SONNAR 135mm/f2.8 (CRX)」が載っており、興味を そそられるネーミングです (右写真)。

そうですね「OLYMPIA」からオリンピック開催にちなんで用意されたモデルである事を示唆しますが、戦後の旧西ドイツ側の話なので戦前ナチス政権時代の1936年に開催された第11回夏期ベルリンオリンピックではなくて、1972年旧西ドイツ側のほうのベルリンで開催された第20回夏期ミュンヘンオリンピックが該当します (戦後の各国占領統治で旧東西ドイツだけではなくベルリン市も 東西に分断されていたから/有名なベルリンの壁は旧西ドイツ側の分断地域を囲っていた壁を 指し一部の地域に限定して1961年から敷設されていた壁)。

従って前述の取扱説明書引用を見てすぐに思い浮かべたのが戦前ドイツのCarl Zeiss Jenaが1936年開催の第11回夏期ベルリンオリンピックに向けて,政府の要請を受けて積極的に開発/製産したOlympia-Sonnar 180mm/f2.8《前期型》(exakta)」の存在です。

どうして焦点距離が180mmと長いモデルを政府が要請してきたのかと言えば、それは一にも二にも当時のナチス政権がオリンピックの映像をプロパガンダとして活用する政府監修の映画を製作する為だったからでもあり、その意味で単なる民生品としての登場よりも現実は当時のナチス政権と工業技術力を国内外にアピールする象徴的な映画での活用が目的だったとも考えられます。

そして実際にこの「OlympiaSonnar」をオーバーホールし終わってから実写すると、とても1936年に造られたとは思えないほどに非常にリアルな描写で、焦点距離180mmの長さでも これだけ臨場感溢れる写りを残す事に新鮮なオドロキを感じ、同時に戦前ドイツの工業力は 確かに脅威だったのかも知れないと改めて感心した次第です。

どうりで戦前に当時ソ連がCarl Zeiss Jenaの名だたる銘玉を狙っていたのが一発で理解できてしまいました。特に長焦点距離での緻密さや鋭さ、或いはコントラストやダイナミックレンジの広さなどは特に当時の軍事面で射爆照準器などの精度向上に対して重要な要素であり、合わせて航空機による偵察撮影にも大きな貢献が期待できたと考えられ、民生よりもむしろ軍事面の課題だったのかも知れません。

そんなモデルの過去オーバーホール体験とその写りの考察から、今回は特に「OLYMPIASONNAR」の文字を見てすぐにそのリアルさに想いを馳せてしまい、大きな期待と共にオー バーホールに臨んだ次第です。

なお今回扱ったのは「OLYMPIA」ではなく格下の開放f値「f4モデル」ですから、そこまでの期待をするのも酷かと思いつつも、flickriver.comなどで両方の実写を調べてみて考えが一発で逆転してしまいました!(笑)

何と「OLYMPIA」よりも今回の開放f値「f4モデル」のほうがよりリアルで緻密に魅せる画の印象を受けたからです。逆に言うなら「OLYMPIA」にそれほど高い評価を抱けなかったとも言えます。

ある意味当方の琴線に触れまくったのがCONTAREX Sonnar 135mm/f4 (black) (CRX)』だったとも言い替えられると感じています。

↑上の写真は今回扱うモデルCONTAREX Sonnar 135mm/f4 (black) (CRX)』のモデル・ バリエーションで左端のシルバー鏡胴モデルが一番最初に登場した1958年発売のタイプです。また前述の「OLYMPIA」モデルはその後の1964年時点で発売されており、合わせて今回の 格下モデル「f4」も同時に登場したとみています。

なお今回扱う鏡胴が完全なブラックバージョン (上の写真右端) は相当珍しく海外オークションebayでも滅多に現れない超稀少品です (上の写真は全てネットから引用)。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端2枚の実写では背景ボケをピックアップしましたが、そもそも爆発的な人気モデルではないので実写自体が少なめです。もう少し円形ボケや背景ボケなどを活かした実写があれば良かったのですが、開放f値「f4」からキレイな円形ボケが苦手なのだと考えると,実はそうでもありません(笑) ちゃんと意識的に狙えばそういうシ〜ンで美しい円形ボケも表出できるハズなので、おそらく撮影者の好みがたまたまなかったのかも知れません。

また右側2枚はピント面の鋭さ以上に「距離感や空気感」まで漂わせたとてもリアルな表現性に着目してピックアップしています。開放f値「f4」ながらもご覧のとおり被写界深度が相応に狭いので、パッと考えるとリアル感よりも撮った感のほうが増してしまう写りになると考えてしまうのですが、実は非常にバランス良くまとめられている光学系の設計である事を感じさせるとても良い例ではないかと思います。

もちろん被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さはご覧のとおりです。灰皿などの陶器の感じも本当に光加減が良く出ていて素晴らしいです (写っている煙の感じから匂いまで漂ってきそうです)。当方はこういうリアルな写りに即座に反応してしまいます!(笑)

二段目
ここでは開放f値「f4」のクセに、一丁前を飛び越して大幅にダイナミックレンジが広い写りである点をピックアップしました。このようなライトな感覚/ハイキ〜な感じに堕ちてしまいそうな (今ドキのインスタ映えするような) シ〜ンなのに,ご覧のようにキッチリとグラデーションを残しつつも階調の変化が留められていて素晴らしい写りです。単にハイキ〜にコントラストを低く写すよりも、このようにダイナミックレンジの広さを最大限に活用して主題のインパクトを込めている写し方に好感が持てます。

当方は基本的にハイキ〜な写りだけがオールドレンズの表現性とは認識していないので、どんなにプロの写真家だとしてもそのような「印象操作」でオールドレンズを決めてかかる写真家には「断固抵抗!」する派です(笑)

・・ッて言うか、プロの写真家ならもっと別の角度からオールドレンズを表現してほしいと 思いますね(笑)

三段目
ダイナミックレンジの広さとして今度は暗部の状況を、特にこの時代のオールドレンズの多くのモデルで黒潰れが多い事から敢えてピックアップしました。開放f値「f4」でもこれだけ階調幅を滑らかに写せると言う点に改めてオドロキです。

また右端のライトを写した写真を見るとこのモデルの光学系の設計の素晴らしさが分かりますが、全くフレアが出ずに、しかもちゃんと電球部分さえも白飛びせずに残せている事にやはりビックリでした!(驚)

これらの実写からもこのモデルの開放f値が「f4」だからと撮影する前に食ってかかるのは「むしろ自分の思い込みがイケナイ」と改めて反省した次第です。とにかく素晴らしいモデルです・・(泣)

光学系は3群4枚の簡素なゾナー型ですが、おそらく相当熟考して 設計された光学系なのではないかと、単純にこのカタチだけから感銘を受けたような感じです。

右図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時に 当方の手によりデジタルノギスを使って逐一計測したトレース図
になります。従ってネット上や当時の取扱説明書に掲載されている構成図のトレースとは少々異なります。

すると第1群は一見すると平凸レンズのように見えますが、実は裏面側が本当に極僅かに凹んでいる「凸メニスカス」でした (凹み度は僅か0.56mm)。また後玉も同じく「凸メニスカス」なので、第2群の貼り合わせレンズだけでよくもこれだけの写りを仕上げてしまったと本当に感銘を受けました・・(涙)

素晴らしいモデルです!!!
惚れ込んでしまいました・・(笑)

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↑上の写真はネット上の同型モデルを使って解説用に用意した写真で今回オーバーホールした 個体ではありません。ところが赤色矢印で指し示した箇所に「隙間/空間」が空いていて、このモデルと言うか、全てのCONTAREX版オールドレンズを解体しようとすると「レンズ銘板直前にあるギザギザの刻印がある締付環」を取り外す必要があります。

この締付環を取り外さない限りフィルター枠の部位も光学系前群も、ひいてはヘリコイド (オスメス) も取り外すことが100%不可能です! さすがにマウント部だけはバラせますが全てのモデルで「それで終わり」になってしまい、その他一切解体できません!

ところが今まで扱ってきたCONTAREX版モデルの中で上の写真のような「隙間/空間」が空いている個体に出くわしませんでした。どう考えてもこのように空ける必要性が全く思い付きません。何方かご存知の方がいらしたら、是非ご教授下さいませ。

ちなみに最初は過去メンテナンス時にこの締付環をネジ込む際にちゃんとネジ込み位置を調べつつネジ込まずに、ムリにネジ込んでしまいネジ山が噛んでしまったのかと考えました。

と言うのも全くどうにもビクともせずに全く動かないのです (完璧に固着していた)。

それでそのように推察したのですが、何気なくネット上写真の同型モデルを見ていて「あれ? コイツにも隙間あるじゃん?!」と、どの個体写真をチェックしても必ず隙間が空いている 事実を知りました!(驚)

どうして隙間が必要なんでしょ・・???
さすがに全く思い付きません・・(泣)

ちなみにレンズ銘板もキッチリと最後までネジ込むので外れる懸念は非常に少ないのですが、ご覧のようにフィルター枠のネジ山自体が締付環の奥に見えている状況なので・・ウ〜ン、 後味悪いョなぁ〜という感じです(笑)

もっと言うなら、例えば標準レンズ域のモデルなどは同じように締付環が存在しますが、もっと肉厚なので同じパーツを転用している話ではありません。ちゃんと今回のこのモデル専用に用意されている締付環なのです。

フィルター枠のネジ山がまだ残っているのに、何故に途中で締め付けられなくなるような設計にしたのでしょうか???

・・と言うワケで、とにかく解体したければ何がなんでもこの「締付環を外す!」事が大前提になります。

そして衝撃な写真が左写真です・・!(涙)

実は今回の個体を梱包箱から取り出して手に取ると、前玉に2cm弱くらいのたいそうなヘアラインキズが入っているのがすぐに目に着きました。

そういう個体なのだと受け留めて作業に取り掛かりましたが、まずは締付環を外さなければ先に 進みません。

そこで専用治具を使い締付環を外そうとチカラを入れている最中に「ピシッ!」と言う小さな音が聞こえたように思いました。

それが左写真です・・(涙)

そうなんです・・前玉に割れが入ってしまいました・・と言うか、当初あったヘアラインキズだと思い込んでいた箇所から繋がって (広がって) 弧を描いてカーブした割れが入りました。

要は当初ヘアラインキズと思っていたのが既に割れだったように思いますが、まさか割れて いると思いも及ばずに作業してしまいました。

チカラを加えたのが締付環なのに、隙間が空いている先のレンズ銘板で締め付け固定されて いる前玉に割れが入る意味が分かりません (どうやってチカラが伝わったのか???)。

少なくとも隙間が空いているのでレンズ銘板の先の前玉にダイレクトに回して外そうとした チカラが伝わるハズがありません (実際一切触れていないので)。

それで考えを変えてヘアラインキズだと思っていたのは実は既にヒビ割れしていたのかと考えた次第です。ご依頼者様の指示内容書には前玉のヘアラインキズについて一切記載なく、ご依頼のメールにもありませんでした。

もしも輸送時の衝撃などでヒビ割れが既に入っていたのだとすると「衝撃よりも圧力」と考えられるので、既に経年劣化進行に伴い前玉の硝子材が弱っていたと推察します。

すると考えられる因果関係は締付環を外そうと反時計方向で専用治具を使いチカラを加えた時に、そのチカラの応力がフィルター枠に伝わり、その圧力で前玉が膨張するか何かして割れが広がったと考えるしか思い当たりません (真鍮 (黄銅) 製のフィルター枠が僅かに撓った)。

理由や因果関係はともあれ、前玉にこんな割れが入っていたのでは「撮影道具にならない!」のは間違いない事実なので、急きょ代替品を手に入れ前玉を転用させて頂きました (つまり オーバーホール後に入っている前玉は本来の個体とは別個体からの転用です)。

最初のヘアラインキズ時点で写真撮影していれば良かったのですが、まさか割れだとは考えていなかったので撮っていません。後から円形状に弧を描いて広がった割れは「確かに当方が チカラを入れて生じたと推定できる」ので半分は当方の仕業とも覚悟しましたが、どうしても最初のヘアラインキズが気になって仕方ありません。

そこでご提案なのですが、もしもご理解頂けるなら代替品の調達価格の半分をご負担頂けると助かります (半額分は当方が負担します)。ご検討下さいませ。もちろんご納得頂けなければ 全額当方で負担致します。

申し訳御座いません・・。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。マウント部の構造は他のCONTAREX版各モデルと当然ながら同一ですが、実はその他の部位の構造は全く別モノで、今回の扱いが初めてだった分当初どうやってバラしていけば良いのか「???」でした。

と言うのもご依頼内容が「ヘリコイドの固着」で距離環が全く動かない状況だったのです。

しかも冒頭解説のとおり「締付環が回らない/外せない」となると、頭のほうから解体できません (普通はそれでもうアウト!)。仕方ないのでマウント部のほうからバラしていきますが、そもそもヘリコイドも固着しているので「マウント部だけ外して後はどうすんの?!」状態 です(笑)

こう言う時に内部構造を知っているモデルなら (つまり今までに扱いがあるモデル) 考えていくことも適いますが、残念ながら今回の個体は初めての扱いなので「???」変わらず・・(涙)

よくもまぁ〜上の写真までバラす事ができたと、本当に感無量ってな感じです(笑)

少なくとも距離環とローレット部分の構造と原理は推測できたのですが、実際はバラそうにも距離環は「指標値だけしか外れない」ので、それから前玉方向に向かった大きな円筒鏡胴が 丸ごと空転するだけで外れません(笑)

そんな事は当然ながら事前に予測していたので、問題はネジも何も見えないのに (しかもヘリ コイド固着してるし) どうやってバラしていくか・・です!(笑)

逆に言うなら、前のほうからバラしていくなら (レンズ銘板のほうからバラしていくなら) 過去メンテナンス時の状況まで含め「当初の状態をチェックしながらバラしていける」ので、例え初めての扱いだとしても何も恐れる事はありません(笑)

ところが逆にマウント部のほうからバラすとなると「全ての固定箇所や微調整箇所は一切不明なままになる」ので、純粋に完全解体できただけで「どの位置で固定されていたのか」などの情報は「ゼロ〜ぉ!」と言う状況で組み上げていくしかない事を覚悟する必要があります。

従って前からダメでも後からバラしていく事は叶うのですが、その組み立て工程には「原理 原則に則って組み上げられるか否か」が重要になり、誰でも必ずしも前後どちらからバラしても組み上げられるとは限りませんね(笑)

その意味でバラす事を「単なる解体」と認識している整備者は、いつまで経っても「原理原則」を掴むことはできません(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群が格納される鏡筒です。長焦点距離のモデルなので光学設計からしてご覧のように長〜いサイズです。

↑一つ前の写真は前玉側方向から撮っていますが、上の写真は今度は後玉側方向からの撮影です。CONTAREX版モデルの多くのオールドレンズでこのように「後玉側方向から絞りユニットにアクセス」が多い設計です。上の写真で見えている穴は絞り羽根の「位置決めキー」が刺さる穴ですから、全部で9個備わります。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑こんな感じで絞り羽根がセットされます。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。すると長〜い鏡筒の下のほうに「開閉キー」が飛び出ていてブルーの矢印のように動くよう設計されています。

要は絞り羽根の開閉動作と言う話ですね(笑)

↑鏡筒には残り光学系前後群をセットするだけなので、今度は鏡胴のほうに工程を移します。上の写真はマウント部や距離環が組み付けられる基台を撮っていますが、マウント部側方向から撮影しています。

すると赤色矢印で解説しているとおり「直進キーガイド」と言う長〜い「縦方向の溝」が両 サイドに切削されており、またシルバーに光り輝いている円形状の鋼球ボールがセットされるべき孔/溝も用意してあります。この鋼球ボールの箇所には後から絞り羽根の開閉を司るパーツがセットされます。

さてグリーンの矢印で指し示しているこの基台の内側/内壁部分なのですが、実は当初バラした直後はここに「反射防止黒色塗料」がビッチリ厚塗りされていました。

どうして過去メンテナンス時に塗ったことが分かるのか (逆に言うなら生産時点の着色ではないと断言できるのか) と言えば、それは「溶剤ですぐに溶けるから」と言えます。

そうなのです。製産時点に設計上の仕様として着色するならメッキを被せるので溶剤なんかで一切溶けません!(笑) 従って過去メンテナンス時に整備者の思い込みで「真っ黒クロスケにしたほうが良い」と処置した事がバレバレなのです(笑)

今回の個体で言うなら、ここに着色されていた「反射防止黒色塗料」のインク成分が何とヘリコイド (オスメス) のネジ山に飛んでしまい「ヘリコイドをバラしたら手もグリースも真っ黒」と言う、ちょっと今までにあまり体験しない状況に陥りました(笑)

普通一般的に「白色系グリースの経年劣化で濃いグレー状」になるとしても「真っ黒」なグリースは普通使いません(笑)

ましてや今回の個体の古いグリースは「微かに芳香を帯びている」グリースが塗られていたので、過去メンテナンスは海外の整備者だった事がバレます (海外ではたいていの場合でグリースに芳香が混ぜられている)(笑)

体臭を気にする人種が多いのが海外なので (日本人には疎いですが) 海外では香水は当たり前ですから、何か個人輸入しても梱包材まで香りがありますね(笑)

なお鋼球ボールが入る箇所は既に当方の手により「鏡面仕上げ」が終わっているので平滑性を担保できています。また「直進キーガイド」の箇所まで「反射防止黒色塗料」が塗られていたので、さすがに笑ってしまいました!(笑)

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑実際に鋼球ボールをセットして「開閉アーム (環/リング/輪っか)」を組み込んだところです。基台には両サイドに「直進キーガイド」の溝が備わります (赤色矢印)。

するとご覧のとおり鋼球ボールは2種類使っていて「シルバーの大きめな鋼球ボール24個 (グリーンの矢印)」に「褐色の小さめな鋼球ボール48個 (オレンジ色矢印)」をセットするので「必然的にシルバー球とシルバー球の間に褐色球が2個入る」数量なのが歴然です(笑)

今までにオーバーホールした個体で言うと,約半数の個体で「デタラメに鋼球ボールが入っている」のでこの開閉アーム (環/リング/輪っか) を回してみると違和感を感じたりします(笑)

今回の個体は綺麗にちゃんと入っていたので、おそらく一度も解体していないのではないでしょうか???

一応経年のサビなどチェックしたいので、完全解体して鋼球ボールを組み込み「バッチリ平滑性を確保」しました(笑)

ちなみにブルーの矢印で指し示していますが、この基台側鋼球ボール用の孔と開閉アーム環とは互いに外径が違うので、鋼球ボールを介在させないと「貫通して落ちてしまう」ワケで(笑)要は開閉アーム環が宙に浮いた状態で鋼球ボールを入れていく必要があります。しかもサイズが異なる2種類の鋼球ボールをちゃんと順番に入れないと「回転ムラ」が起きるので面倒くさくてもキッチリ仕上げるしかありません!(笑)

↑完成した基台に今度はマウント部を組み付けました。CONTAREX版モデルの場合、マウント部には必ず「絞り操作環/リング/輪っか」が存在します。逆に言うならCONTAREX版モデルには「絞り環が存在しない」と言えますね。

絞り環操作は一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREXボディのほうで行う」仕様です。

とは言っても実際に絞り羽根の開閉動作が必要なのでブルーの矢印のように「操作環が回転する領域が必ず在る」ワケです。そしてこのCONTAREXモデルはどのモデルも全てマウント部にこのような「斜め状に立ち上がる絞り操作環/リング/輪っか」が存在しますが、この「斜め状に傾いたカタチ」の理由がちゃんとあって、マウント部のリリースマーカー「」を互いに合致させてから締めると「バチンッ!」と言うとても大きな音がして,その時に初めて一眼レフ
(フィルム) カメラボディ側マウント部に備わる「絞り連動機構部の爪と噛み合う」仕組みなのです。

するとこのような仕様をコトバとして皆様に分かり易く言い替えると「この絞り操作環は板 バネ方式の噛み合わせ仕様を採っている」ので装着時に「大きなバチンッ!音」が必ず聞こえてくる次第です。

こういう話をちゃんと載せてネット上で解説して頂ける方が少ないので、知らずして手に入れると最初の装着時にこの盛大な音を聞いて心臓が止まるかも知れませんね(笑)

以前だいぶ前ですが、このCONTAREX版モデルの標準レンズのオーバーホール/修理を受けた際に、マウント部にハマらないと言う症状の個体がありましたが「板バネ方式を知らずに何と固定ネジを外して平坦に戻した」方がいらして、ご依頼者様共々メールで笑ったのを覚えて います (貶す意味ではなくお互いに”いやぁこれ分かんないョねぇ〜”と言う話です)。

↑マウント部までセットした状態で基台を立てて撮影しました。ちゃんと長〜い「開閉アーム」が飛び出ています。このアームに先の工程で鏡筒から飛び出ていた「開閉キー」が刺さって、距離環の回転と共に鏡筒が繰り出されて/収納されて行ったり来たりする仕組みです。

従って「距離環を回す時のトルクに大きく影響するのがこの開閉アームの平滑性」なので、面倒くさくても一生懸命72個の鋼球ボールと戯れた次第です (何故なら繰り出し/収納の距離が長いのでできるだけ抵抗/負荷/摩擦を低減しておきたいから)(笑)

ちなみに72個の鋼球ボールと「戯れる」と表現したのは、まさに鋼球ボール達に遊ばれて いる感覚に堕ちるからで(笑)、鋼球ボールを組み込んでいるうちに先に入れた鋼球ボールが 反対側にコロコロと転がっていき落下していくと言う「同道巡りを1〜2時間繰り返す」からです。

ちゃんと広いテーブルで作業していれば良いのですが、そんな広い部屋ではないので転がって落ちた鋼球ボールは床の上をさらに転がって行き、そのたびにいちいち床の上を這いずり回って探しに行く始末で、よりによって床材と似たような褐色の鋼球ボールの場合には本当に見つかりません!(泣)

ウ〜ン・・今日もいっぱい遊ばれたョなぁ〜、疲れた・・」という感じです(笑)

↑さて、ここから過去メンテナンス時の整備者の「勘違い」を解説していきます。上の写真には「直進キー環/リング/輪っか」を一緒に写しており、その環/リング/輪っかには両サイドに「直進キー」が飛び出ているのが分かります (グリーンの矢印)。

パッと見ですぐに理解できますが、この飛び出ている「直進キー」が赤色矢印で指し示している「直進キーガイドの溝部分をスライドしていく」ので、鏡筒が繰り出されたり/収納したりの原理になりますね。

さらに言うなら「ちゃんと開閉アームが入るべきスリット/切り欠きまで用意されている」のもこれで分かります。

↑上の写真 (2枚) は、前述の「直進キー環/リング/輪っか」のセット方法を写しています。「両サイドに飛び出ている直進キーは前玉側方向に飛び出るのか後玉側方向に飛び出るのか」のセット方法です (グリーンの矢印)。

過去メンテナンス時の整備者はこの向きを間違えていました(笑)

上の写真はいずれも前玉側方向から見て写している状態です。こんな事はちゃんと考えれば すぐに分かる話なのに「バラした時の手順で組み上げる」からこんなミスを犯します(笑)

逆に言うならこの向きをミスッただけで当然ながらヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置は変化しますし、もっと言うなら「無限遠が出なくなる」ので意外とポイントみたいな話です(笑)

↑バッチリ組み上げられていよいよ距離環用のローレット (滑り止め) をセットしました。後からセットできないので (つまり空転状態で組み込む) ここの工程で先に入れておきます。

↑いよいよヘリコイド (オスメス) の組み込み工程に差し掛かりました。特にヘリコイド (オス側) が長いのがよ〜く分かりますね(笑)

従ってこのモデルの「距離環を回すトルクが重くなる」のはある意味必然とも言えますが (だって長いから!)(笑)、実は当方の「DOH」でちゃんと「磨き研磨」を施しているので、グリース無しでもスルスルと気持ち良く回転してしまいます(笑)

どんだけスルスルと回転するのかをコトバで表すと「ヘリコイドオス側をネジ込んだ後に指を離すとヘリコイドオス側が自重だけで勝手に回転しながらネジ込まれてしまい最後にカンッと音が聞こえて一番下まで到達してしまう」と言う表現になります。実際にそうやって一度遊んでみたので分かる話なのです(笑) 「DOH恐るべし!」・・ですね!(笑)

さすがにトルクを一切感じないと「却って違和感に至る」ので、ここは敢えてグリースを塗ってトルクを与えるような話です(笑)

ちなみにグリーンの矢印で指し示した2箇所は当初バラす前の時点で噛んでいたヘリコイドの固着箇所です。バラした際に「ササクレ」ができていたので、ちゃんとキレイに削って滑らかになるよう「磨き研磨」しました。

それで端っこのほうにできていた「ササクレ」なので「あぁ〜、直進キーの向き間違えたのか」と言うか、全く考えずに組み上げてしまったんだと思います!(笑)

それにしてもさすがに噛んでいたヘリコイド (オスメス) をそもそもバラすのが大変です!(泣)

何故なら下手にチカラ任せに回せばもっと酷い状況に至りますし、どうしたら最も無理なく 解体できるか考える必要がありますね (方法は幾つかある)(笑)

↑こんな感じでヘリコイド (オスメス) がネジ込まれて、もちろん無限遠位置の当たりを付けた正しいポジションでネジ込んでいるので、ちゃんと無限遠位置までバッチリです(笑)

と言うのもグリーンの矢印で指し示しているとおり「制限壁」が備わるので、カチンカチンと無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で突き当て停止する必要があるので、ヘリコイドのネジ込み位置で決まってしまう話だからです。

従ってヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置をミスると無限遠合焦しない話になりますね(笑)

これをよく勘違いしている整備者がいますが、距離環の距離指標値が上の写真のように外せるモデルなら「∞刻印が何処に来ても微調整できる」と考えている整備者です。

確かに距離指標値をいくらでもズラせるのでピタリと基準「」マーカーに「」刻印を合わせられます。

ところがその時「では制限壁がちゃんとカチンと突き当て停止している位置なのか?」となると、このように「制限壁」が備わる場合、必ずしもそうなるとは限りません。

そこで希に無限遠位置なり最短撮影距離位置なりでカチンと突き当て停止せずに詰まった感じで止まる個体が現れますが、はたしてそれが「制限壁」の問題なのか否かは構造次第と言う話です。

↑ようやく「らしく」なりました(笑) この後は光学系前後群を鏡筒に組み込んでから鏡筒をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました!(笑) 当初ヘリコイドが噛んでいた固着状態だったのがまるでウソのようです!(笑)

って言うか、このモデルでこんだけスルスルとシットリしたトルク感で滑らかに操作できる 距離環と言うのは、なかなか出回らないと思いますね(笑)

要はそれほどのいつもと同じ「当方独特のトルク感」でちゃんと仕上がっています。

ましてやこのモデルの描写性ときたら・・本当に溜息交じりなくらいでスッカリ惚れ込んで しまいましたね!(笑)

↑前玉の事件がありましたが、ご覧のとおり光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した 個体で、もちろんLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

マジッでスカッとクリアです!(笑)

↑後玉もクリアでキズも無くて、もちろん絞り操作環の動きもとても滑らかです。前述の「直進キー環/リング/輪っか」が見えますが、この環/リング/輪っかまで「反射防止黒色塗料」を塗りまくっていましたから、そりゃあ〜重いトルクに至りますョ!(笑)

まさに何でもかんでも中は真っ黒クロスケが良いと言うバカな思考回路しか持たない整備者 です!(笑)

そもそも製産時点で、いやもっと言うなら設計時に黒色着色していない箇所にどうして塗る 必要があるのでしょうか???(笑)

いつも言いますが、そこまで「迷光」を気にするならまず先に「絞り羽根を塗れョ!」と言いたいですね・・(笑)

撮影時のほとんど最小絞り値ばかりで撮影するならまだしも (そんな事はまずあり得ない)(笑)相応に絞るにしてもメタリックな絞り羽根に当たって反射した入射光がどうして「迷光には ならない!」と断言できるのか答えてほしいですね!(怒)

さんざん等倍チェックなんかして光学性能を逐一指摘して「迷光」云々わめいていて、肝心な絞り羽根の話を一切しないと言うのはどうしても納得できませんね!(笑)

整備者はともかく、そういう人達の勢力が意外にも多いワケで・・笑ってしまいます!(笑)

↑絞り羽根がこんなふうにキラキラと光るのにどうして「迷光」に至らないんですかね???(笑)

9枚ある絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます (もちろん途中は正九角形になる)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い全域で完璧に均一なトルクを維持し、且つ「普通〜重め」程度のトルク感で、特にピント合わせ時の微動は「メッチャ軽い!」印象に仕上げてあります。

どうしてかと言うと「このモデルのピントの山が一瞬でアッと言う間!」だからです。マジッにスパッと合焦したかと思うと極僅かにチカラを加えた程度でもうボケ始めますから、合焦した瞬間は何だか自分が「デジタル合焦」したかのような錯覚に囚われるくらいに「チョ〜気持ちいい!」ですね(笑)

ご覧のとおり距離環のローレット (滑り止め) にある3個のイモネジのうち、1個が既にマイナスの切り込みが削れていて外せなかったのでドリル穴開けして解体しています。

それで考えるに・・おそらく一度組み上げたにもかかわらずヘリコイドのネジ込み位置がおかしいと (無限遠合焦しないから) 考えてもう一度外そうと試みたのに外れず、チカラ任せで距離環を回しているウチにヘリコイドが噛んだのだと考えます。

↑前玉破損事件が痛いですが・・(涙)、取り敢えず完璧な仕上がりです! 市場には滅多に出回らない完全なる黒色鏡胴モデルなので、いろいろありましたが使うのが楽しみになるくらいに操作性と言い写り具合と言い完璧な仕上がりに至りました!(涙)

下手にOLYMPIA-SONNARにこだわるよりも、むしろ当方はこちらの格下モデルのほうに 相当興味関心が沸きました!(笑) 実際海外オークションebayを見ていても流通価格が逆転 している場合があるので、多くのユーザーも同じように感じているのかも知れませんね(笑)

実際に撮影する場面で考えると、確かに海外のほうが土地が広いので中望遠レンズ域のモデルでこのような焦点距離135mmなどと言うのは「ある意味ポートレートレンズとして必要な焦点域」とも言えるのですが、国土が狭いニッポンになると話は別で(笑)、意外と135mmは興味がある人にしか流れません。ところが「中望遠域ではなく望遠域」として捉えると、実はこの「焦点距離135mm」はニッポンに限定した話でとても使い出がある焦点域とも受け取れます・・要はモノは考えようと言う話ですね!(笑)

その意味で言うならヤフオク! などを観ていても焦点距離:135mmのオールドレンズは、それこそ一般的には二束三文な価格でしか流通しませんが、相応に描写性能や何かしらの希少価値が高いモデルに関してはもっと評価するべきと考えますね。

さらに今回のこの個体に限って言及するなら、ご覧のように基台部分が経年の日焼けで茶褐色に色落ちしているのが「何とも年代の味を感じてステキ!」と・・要はある事無いこと全て 気に入ってしまうのが如何に惚れ込んだのかと言うお話です!(笑)

まさに青春で味わった「一目惚れ」のような・・ッて青春時代は根性モノばかりテレビ観て いたよなぁ〜(笑)

いずれにしてもこのモデルで「鏡胴のブラックとブラウンの二色使い」なんていう個体はありませんから (ただでさえ出回らないモデルだし) 本当に希少価値の高い個体ではないかと,仕上がったこのモデルをマジマジと眺めて暫し酒の肴になってもらいました!(笑)

当方は基本CONTAREX大好き人間なので、ご馳走様でした・・!!(涙)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1.2m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f5.6」で撮影しています。如何ですか?・・このリアル感!(驚) 素晴らしいです!!!

↑さらに回してf値「f8」で撮っています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値は「f16」に上がっていますが、それでもまだ背景には一部にボケが残っているから驚きです。

↑f値「f22」になりました。まだまだ「回折現象」の影響が見えません!(驚)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑f値「f32」での撮影です。さすがに被写体のミニカーの解像度が僅かに落ち始めて「回折
現象
」の影響が現れ始めています。

↑最小絞り値「f45」での撮影です。もうスッカリ解像度が低下しまくってますが,仕様上この最小絞り値と共に一つ前の「f32」も想定外の写りなので気にする必要がありません!(笑)
光学設計上は最小絞り値「f22」の仕様ですから・・。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい返答に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。