◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Culminar 85mm/f2.8(L39)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製中望遠レンズ・・・・、
 『Culminar 85mm/f2.8 (L39)』です。


このモデルの扱い数は今回の個体が累計で僅か5本目です。そのうち2本は修理依頼分でしたから実質調達したのは今回が3本目になります。海外オークションebayでもそれほど多く出回らず年間で数本レベルでしょうか。光学系の状態があまり芳しくない個体が多く、特に第1群 (前玉) の貼り合わせレンズに生じるバルサム切れ、或いはコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリなどが問題になります。

よくこのモデルにバルサム切れが生じている場合に「中玉」と記載しているショップがありますが、正しくは貼り合わせレンズが第1群 (前玉) なので中玉ではありませんね (中玉は単なる両凹レンズ/貼り合わせレンズではないのでバルサム切れが発生する要素自体が存在しない)(笑)

残念ながら今回の個体も第1群 (前玉) にコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが大きく円形状に発生しています (LED光照射しないと視認できないレベル)。従って光源を含むシ〜ンや逆光撮影時など、多少フレアの出現率が上がる懸念が高くなりますのでご留意下さいませ。例えるとパッと見では「おぼろ月」のような感じで中心に円形状に非常に薄いクモリが円弧を描いています (本当に薄いのでたぶん探すと思います)。

従ってこのブログでも一番最後のほうにオーバーホール後の実写を各絞り値で撮影して掲載していますが、もともとの光学系コーティングがモノコーティングなので「僅かに低コントラスト気味」なのは絞り羽根の影響 (迷光) もあるのかも知れません。

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旧西ドイツのSteinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) と 言うと、1839年創業の旧ドイツでは老舗の光学メーカーの一つなのでオールドレンズのメーカーと言うイメージが強いですが、実は1948年にフォーカルプレーンシャッター方式のフィルムカメラを2機種発売しています。

右写真はその一つの目測方式のレンズ交換式モデル「Casaca I」で外部ファインダーが装着されている状態の写真です。

一方右写真は同時に発売されていたレンジファインダー方式の「Casca II」になります。

いずれも僅か2,000台を生産しただけで扱いが終了しているので人気がなかったのかも知れません。

ちなみにこの発売当時の1948年時点で既にオプション交換レンズ群のレンズ銘板には「VL」刻印を伴っており、既にコーティング層の蒸着としてモノコーティングが施されていた事が 分かります。

VL」はドイツ語の「Verhinderung von Lichtreflexion」の頭文字を採った略号であり「光反射防止」を意味します。硝子レンズ面のコーティング層のハガレなどをチェックすると「微かに薄いブル〜と薄いパープル」に視認できるので「モノコーティング複層幕コーティング」であり、例えば光学系内の別の硝子レンズに蒸着されている「ブルシアンブル〜単色」なら「シングルコーティング単層膜コーティング」と捉えられます。

同様に例えば旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaの「ZeissのT」もモノコーティングであり「T」は「ティースター」と呼ばれますがマルチコーティングであり、いずれにしても各群の硝子 レンズ表裏面の光反射防止を強化する目的でコーティング層を蒸着して入射光の透過率を上げ解像感やコントラストなどをアップさせる概念ですね (硝子面の反射で片側面だけで必ず4%の入射光が失われるから/つまり表裏で8%の減光)。

例えば分かり易い処で当時の旧東ドイツCarl Zeiss Jena製標準レンズ「Tessar 50mm/f2.8 (silver)」と言うオールドレンズなどは (製造番号36xxxxx番台のみ製産/顕在) 漢字の王ではなくて(笑)「光学系内に入射する光の三原色透過を表す記号」として「厳密に光学硝子レンズ (縦線|) に三原色 () が透過している事を表す」記号として「」刻印をしており、当時のこのようなオールドレンズを指して「アポクロマートレンズ」と呼称していました。
(ドイツ語なのでレンズ銘板に漢字のが刻印されるハズがありませんし、ネット上で真しやかに語られているミスタイプでもありません)(笑)

従ってこのCarl Zeiss Jena製オールドレンズ「Tessar 50mm/f2.8 (silver)」の光学系を光に反射させて覗き込むと「パープルアンバー」の光彩を放つので「パープル」入射光透過率を向上させ、同時に「アンバー」の透過率アップなのだと考えられます。

これは特に入射光 (自然光) は波長 (波動) なので「光の三原色」で総天然色を表現できるとしても、光学系内ではそれぞれの色合いで「周波数が異なる」ために「合焦点がズレる」事から「色ズレの発生」にも至ります。そこでその「色ズレを極限まで控えて一点合焦に最適化させた光学系の設計」を「アポクロマート」処理と称していましたから、必然的に当時のそのようなオールドレンズはより高価な製品だったようです。

ちなみに現在では光の三原色 (色の三原色) はデジタル処理なので「 (RGB)」であり、最近では輝度向上を狙って「 (RGBY)」の光の四原色も採用されています。明るさをアップさせるのに「白色」を強くするとコントラスト低下を招くので (何故なら全ての色を 混色すると黒色になり反対色が白色だからコントラストがハイキーに振れて低下する)、合焦した一点の明るさをアップさせる目的で「」を使っているワケです。

また当時1960年代に入ると光の三原色は「」に優先度が変化して入射光の透過率UPと解像度の向上の為に「」周波数に対してより強力にコーティング層蒸着を改善させて いますが、いずれにしても既に1950年代からして輝度に「」を使う概念が存在していた事に、今ドキのデジタルながらも何かしら新鮮な感覚を覚えたりします(笑)

たかがレンズ銘板に刻印されていた「」を深掘りしただけの話ですが(笑)、それでもこれだけ当時のロマンが広がるので本当にオールドレンズは愉しいです!(笑) その意味では当時のオールドレンズで例えばVOIGTLÄNDER (日本のコシナ製のほう) 製オールドレンズのフィルター枠附近に「」のラインが附随するのは、入射光三原色の優先度 (光学設計) の相違が見てとれるワケで、なかなか奥が深いです (今現在は色のラインが簡素に刻印)(笑)

要は1950年代〜1970年代までは光学硝子レンズの革新的技術向上にもまだ限界があったので「輝度の確保」がある程度必要だったのかも知れませんが、今ドキのデジタル処理では光学 硝子レンズに蒸着されるマルチコーティング層も相当な多層膜に増大しているので、輝度よりも発色性のほうに重点の置き方が変化したのが「たったこれだけのチェックだけで判明する」ので唸ってしまいますね(笑)




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端からキレイな真円で明確なエッジを伴う本格的なシャボン玉ボケの表出が、アウトフォーカス部が滲み始めて溶けて軟らかな表現性の円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。この階調表現の細かさ/グラデーションには本当に唸ってしまいます(笑)

 二段目
さらにその円形ボケが収差の影響を受けて乱れた収差ボケへと変化する様をピックアップしています。いずれにしてもシャボン玉ボケも円形ボケも収差ボケもすべてピント面のインパクトをちゃんと維持したまま変化していくので、こういう部分の要素が旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの欠点とはかけ離れています。

三段目
左端は周辺減光を本当に上手く背景効果として活用してしまった撮影スキルを感じさせる素晴らしい写真です。また2枚目も単なる草花の花瓶刺し写真ではなくコントラストの制御を意識した写真なのでやはり撮影スキルが高い写真です。ピント面のエッジの繊細さにも特徴があるモデルです。

四段目
まず以てオドロキだったのは左端写真で白黒写真ではなくてカラー成分の写真としてこれだけのグラデーションをしっかりキープして吐き出しているところが凄いと感じました (ノッペリした写真に堕ちていないのが凄い)。また開放f値「f2.8」にしては意外にも被写界深度が浅く狭いですね(笑) それは実際絞り環の刻印を見ただけでもある程度事前に予測できますが「最小絞り値f32」まで閉じるのを引っぱっているので、相当被写界深度が狭いのだと推測できるワケです。

光学系は特異な設計で当時のカタログやネット上の掲載をチェック すると必ず右の構成図が掲載されています。

ポイントは3群4枚のテッサー型光学系をひっくり返してような光学設計を採ってきた点になりますが、これは1840年にハンガリー人のJoseph Petzval (ジョセフ・ペッツパール) 博士の発案による「Orthoscope (オルソスコープ) 」光学系の発展系です。

右図がその当時1840年特許のオルソスコープ型光学系です。前群を 透過してきた入射光を後群側で結像させるだけの構成ですが球面収差やコマ収差にプラスしてディストーション (歪み率) の改善まで狙った構成です。

今回オーバーホールの為にバラして光学硝子レンズの清掃の際に各群を当方の手でデジタルノギスを使って計測すると、各群の曲率や厚みさらにはカタチまでが全く異なっていました。

左写真はそのバラしている最中に撮った鏡筒の写真で、光学系第2群が鏡筒にカシメ止めされており、両凹レンズの縁面が横方向で捉えた時に「位置決め環」に非常に近い位置まで迫っている事が分かります。

実際にこの「位置決め環」に16枚の絞り羽根をセットすると完全開放状態でも絞り羽根の縁が光学系第2群の両凹レンズの縁ギリギリまで閉じているようなイメージで塞がります (絞り羽根セット後は隙間が視認できなくなる)。

つまり絞り羽根が光学系第2群の凹面ギリギリまで迫っている (赤色矢印) と言っているワケですが、さらによ〜く観察すると「位置決め環との間に隙間がある」事が分かります。つまり 相当深い隙間で「その中を覗き込んで確認すると斜め状に硝子が落ち込んでいる」事が容易に視認できるので、上の右図のような構成図に至りました。

どうしてネット上の某有名処で解説されている構成図の掲載と異なるのか不明ですが、今回扱った個体は「ライカ判L39ネジ込み式マウント規格」なので、当初発売した「Casca版オプ ション交換レンズ群」が人気がなく捌けなかった事から追加で用意されたモデルなので、光学系が最適化に再設計されていたと考えています。

広く掲載されている構成図では絞り羽根の位置が光学系第2群の両凹レンズと離れている配置なので、それで比較すると分かり易いと考えました (現物は絞り羽根が接触ギリギリの位置 まで近接しています)。

またSNSなどで当方がウソを載せていると非難されるので証拠写真を撮っておきました(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は構成パーツの点数も少なめで基本環 (リング/輪っか) の締め付けで組み上がっていくようなイメージです。但しそうは言っても「ライカ判L39マウント規格」ですから「距離計連動ヘリコイド
(オスメス)」を内包するダブルヘリコイド方式です。

従ってその「距離計連動の概念」を理解している整備者でないとこのモデルは適切な無限遠位置で組み上げることができません。実際今回バラす前の実写チェックでも相当オーバーインフ状態に設定してありましたし、そもそも距離環を回すトルクがとても重すぎてピント合わせ できる状況になく、且つマウント部に遊びが大きいので鏡胴を保持するにもガチャガチャした感じでした(泣)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割方式なので、ヘリコイド (オスメス) と距離圏連動ヘリコイド (オスメス) の2つが、鏡胴
後部」側に配置されています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑16枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。絞り羽根はこの当時の「カーボン仕上げ」なので、既に経年で各絞り羽根同士が擦れ合った為に地が剥き出しになっている箇所が多く存在します。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上部が前玉側方向になります。

↑第1群 (前玉) と第3群 (後玉) までセットした状態を撮りました。ご覧のとおり前玉は相当な曲率を持っており厚みもある貼り合わせレンズです。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

↑絞り環をセットします。ちゃんと基準「●」マーカー位置に開放f値「f2.8」が合致しています (当初バラす前はズレていた)。

実は当初バラす前に実写チェックした際、コントラストが異常に低下した写真だったので光学系を確認すると第1群 (前玉) のクモリを視認しました。バラして硝子レンズを清掃すると経年の揮発油成分附着によるクモリだったようでほぼ除去できたのですが、冒頭解説のとおりLED光照射すると「おぼろ月」になります(笑)

そこで仕方ないのでバルサム切れの対処を実施しましたが、剥がしてみると前玉側の硝子レンズにその「おぼろ月」が既に視認できたので、バルサム切れではなく「コーティング層の経年劣化」と判定しました (再接着しています)。こればかりは硝子研磨して再蒸着しない限り復元できないので諦めました。

↑鏡胴「前部」はこれで完成なのでここからは鏡胴「後部」側の組み立て工程に移ります。マウント部の写真ですが「距離計連動ヘリコイド用のメス側ネジ山」が切削されている真鍮 (黄銅) 製なので、ズッシリと重みを感じますが、このモデルの他の筐体は全てアルミ合金材ばかりなので全体重量は軽めです。

↑鏡筒を繰り出し/収納させる役目のヘリコイド (オス側) に合わせて距離環が回る範囲を指定する役目の「制限環」をセットして、且つ基台の内部には既に「真鍮 (黄銅) 製の距離計連動ヘリコイドのオス側」を組み込んであります。このモデルは全部で21箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

要はこの時点で鏡筒繰り出し/収納用のヘリコイド (オスメス) と距離計連動ヘリコイド (オスメス) の両方について「無限遠位置と最短撮影距離位置の適合化」を済ませてあると言えます。過去メンテナンス時の整備者は特に「距離計連動ヘリコイド (オスメス)」の適合化の概念が理解できていなかったようで適当に締め付け固定してありました(笑) なお鏡筒の繰り出し時 (つまり最短撮影距離位置) では詰まった感じで停止しますが、無限遠位置ではカツンと突き当て停止します (設計上の仕様なので改善できません)。

神経質な人だとこの「詰まった感じの停止」を指摘してくる人が居るので(笑)、困りモノです・・。

この後は完成している鏡胴「前部」をネジ込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。残念ながら前玉の貼り合わせレンズにコーティング層の経年劣化に伴う「おぼろ月」がLED光照射で視認できますが、光源を含む撮影や逆光撮影時以外では写真への影響は無いとみています。

特にこのモデルは今まで4本扱いましたが全て距離環を回すトルクが重めでしたし、今回の個体もとてもピント合わせできる状況ではありませんでしたから、特に「ライカ判L39マウント規格」になるとダブルヘリコイドになる分「白色系グリース」を使っていた場合にはどうしても重くなってしまうようです (今回の個体も過去メンテナンス時に白色系グリース塗布)。

もちろんオーバーホール後の状態はそれはそれはまるでウソのように「抜群に軽い操作性」に改善できていますが、神経質な人が居るので一応念の為に「重めのトルク感」と表記して出品しています(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。冒頭解説のとおり「おぼろ月」の与件を除けばLED光照射でも極薄いクモリが皆無です。光学系前後群の硝子レンズには「大小の微細な気泡」が複数残っています。

気泡
光学硝子材精製時に適正な高温度帯に一定時間維持し続けたことを示す「」と捉えていたので、当時光学メーカーは正常品として出荷していました。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。以下の後群側の写真は組み上がる前の時点で撮影しておいた写真です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細な薄い13mm長のヘアラインキズ数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
前玉(表面側)にコーティング層の経年劣化に伴う微かなクモリがLED光照射で浮き上がります。撮影状況によっては微かにフレアを伴う率が上がる懸念もあります。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは数点しかありません
前玉の状況から光源を含むシーンや逆光撮影時にフレアの出現率が上がる懸念がありますが事前に告知済なのでクレーム対象としません

↑16枚の絞り羽根は経年の油染みも除去できてキレイになりましたが、経年の擦れ痕だけはそのまま残っています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

このモデルはアルミ合金材のアルマイト仕上げなのでその処置も最後に施してありますから、ポツポツとすぐにサビが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・このモデルは回転式鏡筒繰り出し方式の為絞り環も距離環回転と一緒に回りながら繰り出します。その関係で距離環側のトルクを多少重めにワザと設定し、逆に絞り環側は軽くしています。結果ピント合わせ後の絞り環操作が可能になりました!
(ピント合わせした位置が絞り環操作でも微動しにくいトルクにちゃんと調整してあります)

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑マウント部が真鍮 (黄銅) 製なので重みを感じますが、筐体の他の部位は全てアルミ材削り出しなので全体としては軽めです。また今回のオーバーホールも完璧に仕上がったので「距離環を回すトルク感も含め操作性が良い」状態に仕上がっており、故意にワザと距離環側のトルクを「重め」にしてあるのでピント合わせ後に絞り環操作してもピント位置がズレる事はほぼありません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値は「f8」に変わっています。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑f値は「f11」に上がりました。

↑f値「f16」です。

↑f値「f22」での撮影です。だいぶコントラストと共に解像度まで低下してきています (回折 現象)。

↑最小絞り値「f32」での撮影です。