〓 OLYMPUS (オリンパス光学工業) OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm/f1.2《後期型》(OM)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


オーバーホール/修理のご依頼分ですが、落下してしまった時にフィルターが変形してしまい、外そうとした時にフィルター枠部分まで一緒に回って外れてしまったと言う症状です。また その際、フィルター枠部分を戻したのですが、今度は絞り環操作と絞り羽根の開閉異常が起きてしまい、その修復のご依頼です。

普段、オーバーホール/修理ご依頼分に関してはこのブログページで解説などしないのですが、今回の作業では内部構成パーツの一部が変形しており、その説明がなかなか写真を見ないと 理解できないと考え、今回はブログ掲載としました。

従って、時間が経ちましたらこのページは削除しますのでご留意下さいませ

↑今回修理の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm/f1.2《後期型》(OM)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

左写真は鏡筒内最深部にセットされた絞りユニットと絞り環を連結 させて「設定絞り値を伝達する役目の絞り環連係アーム」です。

赤色矢印で指し示したとおり、弧を描いた部位が曲がってしまい
水平状態を維持していません (赤色矢印の差分が曲がっている量)。

こらの左写真も同じく鏡筒内最深部にセットされている絞りユニットで使っているパーツで「絞り羽根制御アーム」です。

同様、板状の「制御アーム」が赤色矢印で示したような垂直の状態 から曲がっていて斜め状に変形しています。またこの円形パーツは 平らな状態が正しいのですが変形により撓んでいます。

さらにこちらはマウント部直前にセットされる「絞り羽根開閉アーム」になりますが、やはりアーム部分が曲がっており本来の正しいカタチと傾きを維持していません。

特に赤色矢印の箇所から (根元から) 曲がっている分、破断する寸前の状態なのでだいぶ危険な状況です (この根元部分が折れたら絞り羽根は一切開閉しなくなる/つまり開放状態のまま一切閉じなくなる)。

従って、落下により変形してしまったフィルターを外そうとして回した際に「フィルター枠 部分まで一緒に回って外れてしまった」ワケですが、その時にフィルター枠部分に附随した 部位「直下に位置する絞り環の制御系」に関わる上記のパーツ、特にアーム部分が大きく変形してしまったのが「絞り羽根開閉異常」の主因になります。

ところが実はさらにその因果関係が存在し、結果的に主因はこれら内部パーツの変形ですが、そもそもこれらパーツを変形させてしまった「チカラが及んだ原因」が全く別にあったのです。

↑上の写真は、既にオーバーホール作業が進行し終盤を迎えている状況で解説用に撮影しています。光学系「前群用格納筒」がネジ込まれている状態を撮っていますが、光学系第1群 (前玉) と第2群の2枚の硝子レンズだけはまだ外れたままです。

するとこの「前群用の格納筒」は解説の通り赤色矢印の「イモネジ」4本で鏡筒に締め付け 固定される設計を採っていますが、グリーンの矢印で指し示したように本来4本のイモネジが必要なのに「1本しか使っていない/締め付けしていない」状況です。

つまり「グリーンの矢印で指し示したイモネジ用の穴にネジ込むハズのイモネジ3本が欠品 状態」になります。

従って光学系前群の格納筒がフィルター枠部分にネジ込まれている関係から変形してしまったフィルターを外そうとして回したチカラだけで (イモネジが1本しか刺さっていなかったから 回すチカラに耐えられずに) この格納筒まで一緒に回り、且つ必然的にフィルター枠部分も 一緒に回ってしまった次第です。

すると直下に位置する「絞り環との連係の役目のパーツ/アームが変形」してしまい、その
(本来伝達されないハズのチカラ) が鏡筒最深部にセットされている絞りユニットにまで伝わり「制御アームが斜め状に曲がり」同時にマウント部直前にセットされていた「開閉アームまで曲がってしまった」のが前述の掲載写真で解説した3つの変形パーツの話です。

つまりもちろん落下がフィルター変形の原因ですが、フィルター枠部分まで回ってしまった 原因はその落下とは関係がなく「過去メンテナンス時のイモネジ欠品」が主因になります。

グリーンの矢印で指し示した他の3つのイモネジがちゃんと締め付け固定されていれば、おそらくフィルター枠部分は回らなかったと推測できます。その場合確かに変形してしまった
フィルターを外すことができませんが、少なくとも「絞り羽根開閉異常」には至らなかったと考えられます。

残念ながらこのイモネジは特殊径なので当方に手持ちがありませんから、バラす前の状態と 同じになりますが赤色矢印の「1本のイモネジだけで締め付け固定」のままです。

↑上の写真は一つ前の写真で組み込んであった「光学系前群格納筒」を外して絞りユニットが見える状態で撮った写真です。すると前述の変形した「絞り環連係アーム」が刺さっている ワケですが、当初バラした直後はグリーンの矢印の箇所全てが変形していました。

そして絞りユニットに附随する「制御アーム環」の板状アーム部分までチカラが及んでしまい曲がってしまったワケですね。

↑上の写真もオーバーホール工程の途中で撮った写真ですが、絞り羽根を開閉する際に回転している「絞り羽根開閉環」を止めている「C型留具」を右横に並べて撮影しました (赤色矢印)。

↑実際にこの「C型留具」をセットするとこんな感じで「開閉環の上に被さるように固定される」ワケですが、当初バラした直後はグリーンの矢印の箇所に「エポキシ系接着剤でC型留具を接着固定」してありました。

上の写真は当方がオーバーホール工程を進めている最中の撮影ですが、当方ではこの「C型 留具」を固着させません。

どうしてなのか???

もしもこの「C型留具」が外れないように確実に固定させる必要があるなら「ネジを使って 締め付け固定する設計にしていたハズ」だからです。どうしてそのように断言できるので
しょうか???(笑)

そもそも留具を使って外れないようにしている「絞り羽根開閉環」と言う環 (リング/輪っか) は、よ〜く観察すると「梨地仕上げメッキ塗装」が施されていて「経年の揮発油成分の影響を受けないよう配慮した設計」なのが分かります。

つまり「スルスルと無抵抗で回る状態を維持」させる目的でワザワザ「梨地仕上げメッキ塗装」しているワケです。さらにそれを固定する「C型留具」は「一緒に回ってしまっても良いように敢えて固定しない」設計を採っている為グリーンの矢印箇所で固定していないのです。

それを過去メンテナンス時の整備者は「留具の類は何でもかんでも固着させる」流儀だったようで(笑)、ここにエポキシ系接着剤を付けて一切留具が動かないようにしてしまったワケです。

何を言いたいのか???

経年の揮発油成分が既に附着していて「粘性を帯びていた為に絞り羽根開閉環の動きが重くなっていた」ワケです。本来「C型留具」も一緒に動く事でできるだけ絞り羽根の開閉時に抵抗/負荷/摩擦を与えないよう配慮した設計だったのに「過去メンテナンス時に整備者が余計な処置を講じた為に逆効果になった」次第です(笑)

実はオールドレンズをバラしてオーバーホールしていると、このように「過去メンテナンス時の整備者による自己満足大会」で全く必要ない処置が講じられている事が多く、それが仇となって不具合をより助長する因果関係に至っていたりします(笑)

要は「稼動部の留具としてのC型環」なのか「純粋に固定させたいだけのC型環」なのかの 違いを、整備者がちゃんと理解しているのか否かが問題なワケであり、それは「観察と考察」でより具体的になってくるし「原理原則」がそこには必ず及んでいるハズなのです(笑)

今回の個体で言えば「C型留具を固定する必要があればネジ止めする設計だったハズ」なのです。もっと言えば「ではどうして絞り羽根開閉環をワザワザ梨地仕上げメッキ塗装にしたのか???」と言う要素に対して「過去メンテナンス時の整備者は全く気がついていない」ワケで(笑)、現実的な話今現在もこのように本来あるべき姿で整備しない整備会社が顕在するのです (本来必要ない処置を相変わらず処置している会社が顕在している/確認済)

しかもその整備会社が意外と有名処だったりするので始末が悪いワケです(笑)

今回の個体は当初距離環を回すトルクが重く感じたのでヘリコイド (オスメス) を解体したところ「白色系グリース」が塗られていましたが「まだ新しいので数年内の整備」と推察できます。過去メンテナンスと言ってもそんなに何年も経っていないと考えられますが、あらゆる 箇所のネジ類などに「緑色の固着剤」が多く使われているので最近の話です

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初発生していた「絞り羽根開閉異常」は完璧に100%修復完了しているのでちゃんと駆動しています。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

当初バラしていった時に光学系内の各群は「過去メンテナンス時に硬締めしていない状態」だったので少々甘い締め付け具合に感じました。

↑光学系後群側も同様締め付けが甘い印象だったので、今回のオーバーホール工程ではキッチリ各群を硬締めしています。その結果当初よりほんの僅かですが「ピントの山がより明確になった」印象です。

↑絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い距離環を回すトルク感は「普通」人によって「重め」の印象ですが、当初よりは「軽め」に仕上げています。

但し、残念ながら冒頭で解説した「変形してしまったパーツ」のカタチの復元が正しいカタチに至っていないのか、正確な原因は不明ですがおそらく「復元のカタチが適切ではない為に各パーツの連係で抵抗/負荷/摩擦が増大している箇所がある」ようです。

と言うのも絞り環の設定絞り値を「開放f値f1.2」にセットしている時だけ「距離環のトルクが重い」状況に至りますが、設定絞り値を「f2f16」まで動かすと「距離環のトルクが軽くなる」現象が生じています。

この開放時だけトルクが重くなる原因を調べる為に最終的に13回組み直しを実施しつつ原因箇所を探索しましたが丸ッと2日間作業したにもかかわらず残念ながら判明しませんでした。申し訳御座いません・・。

結局絞りユニット直前の「絞り環連係アーム」から始まってマウント部直前に位置する「絞り羽根開閉アーム」まで、全てを逐一完全解体しては連係箇所を調べつつ13回も組み直して少しずつパーツの微調整を実施しましたが、問題箇所が判明せず諦めて14回目で組み上げ終了しています。

従って設定絞り値を「f2f16」にセットしていれば軽い操作性でピント合わせもできますが「f1.2」だと少々重いです (当初バラす前と同じくらいの重さ)。

↑取り敢えず変形したフィルターも変形箇所を可能な限り正しましたが完全には復元できていません。これ以上復元しようとすると硝子が割れる懸念があるので諦めました (一応注意しな がらネジ込めるようになっています)。

なお大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい「督促メール」が着信した為、今回は「無償扱い」としておりご請求は発生していません。

とても遅くなってしまい本当に申し訳御座いませんでした。
お詫び申し上げます・・。

一晩明けて・・昨夜寝ている間の夢の中で「14回目の挑戦」をしていたようで(笑)、冒頭の3つの変形パーツを今一度逐一チェックしていました(笑) そこで距離環のトルクが開放時だけ重くなる原因は「やはり1番最初の絞り環連係アームのカタチが問題」と言う結論に達し、夢の中で再びバラして取り出し「カタチをもう一度整える作業を実施」してこれでいいだろうと言うところで最後の組み上げをしているところで目が覚めました!(笑)
(カタチを整える時に一つだけやっていない修復があった事が夢の中で見えた・・)

当方には意外と多い話なのですが(笑)、寝ている間の夢の中でちゃんと続きの作業まで進められているので、結構目が覚めた翌日にその「夢の中の処置」をやってみると意外や意外、ちゃんと正しく動くようになったりします (何度もあります)(笑) まさに目から鱗みたいな話ですが、要は技術スキルが低いので実際のオーバーホール工程の中で気がつく事ができていない ワケですョ(笑) そんなレベルのお話しです!

今回の個体も「正夢」だったようで、一応開放f値「f1.2」でも距離環のトルクが重くならずに軽いまま回せるようになりました!(笑) そうは言ってもこれ以上は軽く仕上げられないので申し訳御座いません・・。このモデルはピントの山がアッと言う間なので、本当はもう少し 軽いトルク感に仕上がると断然使い勝手が良くなるのですがね・・スミマセン (当初バラす前のトルク感よりは軽く仕上がっています)(泣)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮影しました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」にあがりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いません。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。

なお、今回の個体の変形してしまったフィルターや距離環のトルクなど再調整は大変申し訳御座いませんが今後ご辞退申し上げます。当方の技術スキルが低いのでまたご迷惑/ご不満をお掛けしかねず今後はプロのカメラ店様や修理専門会社様宛ご依頼下さいませ