◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biometar 120mm/f2.8 Gutta Percha(exakta)

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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様や一般の方々へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。
写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり無料で掲載しています。
(オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


Biometar (ビオメター) と言うモデルは、そもそも当時中判 (6×6判) フォーマットのフィルムカメラ向けに用意されていた交換レンズ群の一つで、PRAKTISIX (プラクチシックス) 或いはPENTACON SIX (ペンタコン・シックス) マウントとして1958年に開発されたのがスタート地点になります。

ところが当時、本来中判用だったハズのBiometarを逆の発想でexaktaやM42マウントに作り替えて出荷を始めました。今回扱うモデルがまさしくその逆パターンたる「exaktaマウント」モデルになります。

中判フォーマットは120フィルムや220フィルムを使う6×4.5cm判、6×6cm判、6×7cm判、6×8cm判、6×9cm判、6×12cm判、6×17cm判など各種フォーマットが存在しPENTACON
SIX (P6) のフランジバックに関しては74.1mmになります。
一方一般的な135mmフィルム (35mm幅) を使うフィルムカメラ (いわゆるフルサイズ) で使う時、特に今回のexaktaマウントとして転用しようとするとフランジバックが44.7mmですから「差分:29.4mm」分光路長を確保しなければ使えません。

従って、純粋なBiometar 120mm/f2.8の鏡胴をその分延長して (長くして) 用意された製品が今回のモデルと言うことになります。それ故バカデカイ鏡胴のサイズに至っているワケですが問題なのは純粋な中判用Biometarの絞り羽根開閉が、当時のCarl Zeiss Jena製オールドレンズの中にあって逆の動き方をしている点です。それを既に知っていたので今回オーバーホール/修理の作業前に箱を開封して現物を見た時、マウント種別が「exakta」であるのを知ってドン引きだったりしたのが正直なところです (てっきりP6マウントだと思い込んでいた)(笑)

案の定、作業を始めると取っ掛かりで「えッ?! バラし方分かんねぇ〜!」
1日掛かりで何とかバラして組み立て工程に入ると「えッ?! 組み立て方分かんねぇ〜!」
結局、丸2日掛かりで奮闘するハメに陥りました(笑)

当方の技術スキルの低さをイヤと言うほど思い知らされた2日間だったことを申し添えておきます・・(笑)
ちょっともぅお腹いっぱいなので、このモデルは今回が最初で最後にしようかな・・。

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【モデルバリエーション】

前期型−I (1958年発売)

アルミ鏡胴の距離環にエンボス加工を施したGutta Percha (グッタペルカ/ガタパーチャ) を巻いたモデルで、写真はPENTACON SIX (P6) マウントです。
※コーティング:モノコーティング


前期型−I

同じく距離環にGutta Perchaを巻いた黒色鏡胴タイプなのでバリエーションとしては単なる色違いなので同一としています (同様にP6マウント)。
※コーティング:モノコーティング


前期型−II (1962年発売)

従来のGutta Percha巻に追加で「突起」をあしらったモデルが黒色 鏡胴のみ追加発売されます (写真はP6マウント)。
従ってこの時期はシルバー鏡胴モデルも含め全部で3種類のタイプを併売していました。
※コーティング:モノコーティング

中期型 (1965年発売)

世界規模でゼブラ柄が流行ったために追加発売されたタイプ(写真はP6マウント)。
この段階で全部で4種類のタイプが併売されていたとみています。
※コーティング:モノコーティング

後期型 (1974年発売〜1981年製産終了)

おそらくこの時点で光学系が再設計されており、内部構造も大きく 変更されています。
※コーティング:マルチコーティング

製造番号を基に調べていくと1965年以降の個体にもGutta Percha巻が存在するので併売していたと考えています。
なお「Gutta Percha」は一部サイトで「革」と案内していますが皮革ではなくマレーシア原産のアカテツ科樹木から採取できる樹脂材で今で言う処の「ゴム材」です。硬化してしまうためどちらかと言うとプラスティック材に近いイメージですが「革」に似せたエンボス加工や突起をあしらっていただけで決して「革」ではありませんね(笑)

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「円形ボケ・エッジ・ライトト〜ン・発色」で、下段左端に移って「リアル感・動物毛・被写界深度・逆光」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

ピント面のエッジが中庸的なのですが非常に明確に出てくるので円形ボケもシャボン玉ボケに近い状態まで表出させることができます。ピント面のエッジの明確さは上段左端2枚目のタンポポの写真でお分かり頂けると思います。

ところが発色性となると面白みがあり3枚目のようなライトト〜ンになるかと思いきや4枚目のような色乗りの良さまで表現できます。下段左端1枚目を見ても非常にリアル感タップリな写真ですが発色性はナチュラル的な印象で、決してコッテリ系に仕上がってしまうワケではありません。

そもそも中判向けモデルですからイメージサークルが大きい分、その中心付近の一番美味しいところ (収差が少ない領域) だけを使って撮影できるのがフルサイズのカメラで撮影した時の メリットでしょうか。なかなかのポテンシャルを持っています・・。

光学系はネット上の解説などを見ると、おそらくすべて焦点距離:80mmのBiometar光学系構成図をそのまま使ってしまっていると考えます。今回バラして清掃した際にスケッチしたイメージ図が右構成図ですが4群5枚のビオメター型です。後群成分にトポゴンを持ってきている設計思想はそのまま焦点距離:80mmから引き継いでいますね。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
筐体がバカデカイのでご覧のとおり撮影で使っている小道具の楢材のお盆に並び切りません。

バラしてしまえば何のことはなく内部構造はシンプルで簡単な構造化をしています。しかし、上の写真は丸一日がかりで解体作業をやってようやく撮影したワケですから、先ずすぐには 解体の方法が分かりませんでした。

と言うのも、前玉側からバラしていくことができず、かと言ってマウント部からバラすにもexakta特有のシャッターボタン機構部を解体してしまうのは非常に勇気がいります。

当方はexaktaマウントのオールドレンズを数多く解体しているのでシャッターボタン機構部の構造は既に熟知しています。ところが冒頭解説のとおり、今回のモデルは中判向けBiometar ですから絞り羽根の開閉が逆の動きをしています。つまりexaktaマウントのシャッターボタン機構部の構造も今回が初めての解体と言うことになります。

単にバラしていけば構造も自ずと判明する・・と考えるのはシロウト考えです(笑) 絞り羽根開閉機構とその連係動作 (シャッターボタンからの連係) をどのようにやっているのか確認しながらバラしていきたいのに、実は内部を見ることが一切できなかったのです。

本当に単にバラしてしまうことしかできないことが分かるのに丸一日必要だったワケです。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

↑8枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。絞り羽根には既に油染みが生じており相当な赤サビが発生していたので1枚ずつ「サビ取り」を実施しています。

完成した鏡筒をひっくり返して撮影しました (写真下側が前玉方向です)。文章の初めに 工程の目安としてマーキングを附しています。その理由は後ほど出てきます。

鏡筒にはご覧のとおり外側にヘリコイド (オス側) が切削されています。しかしここで問題なのは「直進キー」になります。ご覧のとおり「直進キー」がアルミ合金材削り出しで一体で用意されているのが問題なのです。

一般的にオールドレンズの場合、前玉側方向からバラそうとした時、フィルター枠を保持したまま反時計方向に回して外そうとしてしまいます。今回のモデルはそれをやった途端に「直進キー破断」と言う結末を迎えイキナシ製品寿命に至ります。

何でもかんでもフィルター枠を回せば解体できると考えるととんでもないことに陥ります(笑)

↑解体で一日目を費やしてしまったので疲れていたのか(笑)、ヘリコイドのネジ込み工程の撮影を忘れてしまいました。既にヘリコイド (オスメス) をネジ込んだ状態です。

基台に対して距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。さらに鏡筒 (ヘリコイド
:オス側) を同様に無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。当モデルは全部で17箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず
(合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

今回のオーバーホール/修理ご依頼は「ヘリコイドが重い/繰り出しと収納でトルクの違いも ある」と言う内容でした。バラしてみると古いグリースは「白色系グリース」が使われており且つそこに後から「潤滑油」が注入されていたようです。白色系グリースの化学反応に拠り 粘着性を帯びてしまい重いトルク感に至っていたのが判明しました。

ちなみに注入された「潤滑油」は一般的なタイプなので (日本で有名な呉工業製CRC 5-56ではない) 海外でメンテナンスされたのではないかと推測します。

↑絞りユニット内部まで刺さって絞り羽根の開閉をダイレクトに執り行っている「開閉アーム」をセットします。

ここまでの工程で簡単に進んでいるように見えますが(笑)、実はこの「開閉アーム」がセットされた状態では鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を取り外すことができません (回して外していくと途中で開閉アームが当たって止まってしまう)。

従って、上の写真の状態に鏡胴カバーなどを全て外して取り去り「開閉アーム」の固定ネジを外さなければ解体できなかったことになります。ところがこの部位を覆っている (見えなくしている) 鏡胴カバー類が外せなかった為大変だったワケです (つまりヘリコイドも抜けない)。

↑ベアリングを組み込んでから絞り環を組み付けます。

↑まず最初の (必ずBiometarには存在する) 鏡胴カバーである「延長筒」が上の写真です。

開閉カム」と言うパーツがグリーンの矢印の穴に刺さりますが、この「開閉カム」を「磨き研磨」して平滑性を確保したにも拘わらず、肝心な「穴 (スリーブ/筒)」のほうが錆びついていて抵抗/負荷/摩擦があります。この「開閉カム」がスルスルと滑らかに動かない限り絞り羽根の開閉が緩慢になってしまいます (当初バラす前僅かに絞り羽根の戻りが緩慢だった)。

↑延長筒に「開閉カム」を組み付けてから今度は「マウント部延長筒」をセットします。これはマウントがexaktaなので、フランジバック調整のために差分の「29.4mm」をここで伸ばしているワケですね。

ところがここにも「伝達棒」なるパーツが介在しています。この「伝達棒」が存在することで全てが大変になってしまいました。

↑こんな感じで伝達棒」がシャッターボタン押し下げ時のチカラを絞り羽根のほうに伝達していきます

シャッターボタンが押し込まれると同時に「伝達棒」が押し込まれ ()、その押し込み量の分だけ「開閉カム」が移動します ()。するとそれに連動して「開閉機構部の爪」が動いて絞り羽根を絞り環で設定した絞り値まで開閉させます ()。

つまりシャッターボタンがマウント部の付け根に位置しているので、そのチカラを延長筒2本分貫通させて伝達している仕組みと言うワケです。

ところが問題点が幾つかあります。

① exaktaマウントなのでシャッターボタンの押し込み量は一定。
M42マウントなどの絞り連動ピンの場合には絞り連動ピンの押し込み量に従ってチカラが伝達されますが、今回のexaktaマウントはシャッターボタンが押されても押し込み量は一定の仕組みです (シャッターボタンだから押し込む量は可変ではない/押すか押さないかだけ)。

② 決まった一定の押し込み量だけで絞り羽根の開閉が正しく行われる必要がある。
と言うことは決まった押し込み量で絞りユニットまでチカラが正しく伝達されなければ「絞り羽根の開閉異常」が発生する。

③ それは「伝達棒」と「開閉カム」の長さで決まる。
つまり「伝達棒」の突出量が正しくなければ絞り羽根の開閉が正しく行われない。

↑「伝達棒」はグリグリと「開閉カム」にネジ込まれる設計なので、赤色矢印のとおり「伝達棒」の突出量が適正でなければ絞り羽根が開放にならない、或いは正しい絞り値まで閉じない
・・などの問題が発生します。つまり「伝達棒」が飛び出ていてもダメで引っ込みすぎていてもダメと言うことです。

↑シャッターボタン機構部内部を撮影しました。ここに前述の「伝達棒」が関わってきます。

↑「伝達棒」はマウント部用の延長筒に刺さりますが、その前に最初の延長筒を固定しなければイケマセン。

ご覧のとおり鏡胴はマウント方向に向かって「すぼまっている」カタチをしています。ネジで固定するにも後から締め付けできません。仕方なく一度組み上げた「伝達棒」を外してから 最初の延長筒をネジ止めしました (ドライバーが垂直に入らないから)。

↑マウント部用延長筒もキレイにセットできました。さてマウント部を組み付けようとしたら「何と光学系が後からセットできない!」(驚)

結局、マーキングした工程まで逆戻りです。まるでモノポリーの世界!(泣)

↑光学系第2群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群) を撮りました。ご覧のように中腹がえぐられた独特なカタチをしています。

この第2群のカタチがネット上の解説には一切出てきませんから、全て間違った構成図だったと言うことになります (おそらく焦点距離:80mmをそのまま使った確信犯ではないか)。

↑再びマーキングの工程まで解体してから光学系前後群を組み付け、また組み上げてようやくここまで来ました(笑) 結局マウント部の延長筒をセットすると「光学系後群用遮光環」をセットできないので、ここで先にセットします。

↑やっとさっきの工程に近い処まで来ました。この後鏡胴カバーをセットするのですが、何と正しく入ってくれません (さっきは被せられたのに)。

何度試してもカバーを入れられません。そこで調べると固定ネジに「0.3mm」ほどのマチがあるのを発見しました。このマチのせいでカバーが当たってしまい入ってくれません。全部で 5個ある固定ネジを緩めてはマチを調整してカバーの組付けを試す作業を延々と十数回続け、ようやくセット完了(笑)

↑ところが上の写真のように「伝達棒」と内部の「開閉カム」との連係 (ネジ込み) が遮光環のせいで見えません。実は「伝達棒」をグリグリとネジ込むと内部で開閉カムが当たってしまい動かなくなってしまうので、指で開閉カムを保持しつつ「伝達棒」をネジ込みたいのですが、できないワケです!(泣)

この状態で (見えないまま/指を入れられないまま) ネジ込むと途中で開閉カムが当たって停止してしまい絞り羽根が開閉しなくなります。再びマーキングまで戻って完全解体してから 固まってしまった開閉カムを外して再び組み上げて・・を繰り返します。

↑仕方なく、そのままシャッターボタンの組み立てに入りました。大きなスプリングがシャッターボタンの内部にセットされます。

↑「伝達棒」は「伝達板」にネジ止めされシャッターボタンの動きに伴い「切替キー」が左右に動いてチカラが伝達される仕組みです。

ところが今度は伝達板が引っ掛かってしまい絞り羽根が開閉してくれません。つまり「伝達棒」の突出量が適正ではないのです。

結局、ここから地獄の「再びバラす」←→「組み立てる」を繰り返す作業でマーキングまで戻ること12回!(泣)

たかが「伝達棒」が飛び出る長さを調べるために地獄を味わいました・・(笑)

↑12回目にしてようやく適正な「伝達棒」突出量を把握でき、絞り羽根がシャッターボタン動作で正しく動くようになりました。

嬉しくなってマウント部をセットし無限遠位置を確認したら・・何と無限遠が出ない (合焦しない)! 上の写真は13回目にバラした後に仮組み上げして無限遠位置を確認している最中の写真です。この状態で無限遠が出ない (合焦しない) ので、またバラして組み立ててをプラス
5回実施してようやく完成です。

無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットして仕上がりました。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑結局、バラすこと18回で仕上がりました・・(泣)

もぅ今回が最初で最後にしたいと言う気持ちになった理由がお分かり頂いたでしょうか?(笑)

今回扱ってみて考えたのですが、このモデルは本来の中判向けBiometarを本当に単にexakta (或いはM42) マウント用に「急場凌ぎで設計した」ような商品でした。つまりマウント部用 延長筒の固定方法にしろ (ネジのマチがありすぎ) シャッターボタンとのチカラの伝達経路にしろ (設計が雑すぎ) あまりにも取って付けたような安易な設計であり、これは製産時でさえも 簡単には仕上がらなかった (調整の難しさがあった) のではないかと思います。

翻って考えてみると、中判向けに開発したものの思いのほか在庫が残ってしまい仕方なく販路拡大策としてexakta/M42マウント向けの供給を考えついたのではないかと踏んでいます。

↑光学系内は当初は貼り合わせレンズ中心部に大きなカビが発生しており、且つ後群側も全面に渡るクモリがありバラす前の実写チェックでは大幅なコントラスト低下を招いていました。

ヘアラインキズや経年のCO2溶解に拠る極微細な点キズはそのまま残っていますが、当初からすれば驚異的な透明度に仕上がっています。後玉外周附近にコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリがありますが外周なのでギリギリ写真には影響しないレベルです。

光学系内の「硝子研磨」を施したので追加料金が加算されます。申し訳御座いません・・。

↑問題のシャッターボタン機構部も適正な動作になり、チカラの伝達もキッチリ行われるので正しく絞り羽根も開閉します。

↑シャッターボタンの自動/手動切替も小気味良く、確実に駆動しており絞り羽根の開閉も適正です。

ここからは鏡胴の写真になりますが当方による「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

↑塗布したヘリコイドグリースは黄褐色系グリースを使い「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗っています。距離環を回すトルク感は「全域に渡り完璧に均一」でトルクは「重め」に仕上がっています。

ヘリコイドのネジ山が細かくて長い (ネジ山数が多い) のでトルクを軽くすることはできません。しかし、最優先としてピント合わせ時の極軽いチカラによる微動がちゃんとできるよう調整したので撮影時に違和感を抱くことはありません

またご依頼時にご指摘があったローレット (滑り止め) の樹脂材は剥がしていません。理由は過去メンテナンス時に接着剤で接着されているのが判明したため敢えて剥がしていません。これを剥がすとボロボロになってしまい二度と使えなくなるのでこのままにしています。

↑光学系第2群の貼り合わせレンズからバルサムがはみ出ており、その影響で格納位置が僅かにズレていました。はみ出ていたバルサムを除去して確実に組み込んだので当初よりもピント面が鋭く改善しています (実写頂ければご確認頂ける相違です)。もちろん光学系内の透明度も大変クリアになりました (前述のLED光照射による後玉外周附近の薄いクモリは残っています)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

以下の問題についてはもしもご納得頂けない場合はご請求額より必要額分減額下さいませ
(いずれも当方の認識では改善できないと判断した部分です)

距離環ローレット (滑り止め) を剥がさずそのままにしている点。
ボロボロになってしまうので敢えて外していません
距離環を回すトルク感が「重め」に仕上がっている点。
ネジ山設計の問題なので当方ではこれ以上軽くできません。
後玉外周に薄いクモリが残っている点。
機械設備が無いのでこれ以上硝子研磨できません。

以上、減額される場合は「減額申請」をお願い申し上げます

↑当レンズによる最短撮影距離1.3m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定OFFです。

↑絞り環を回してf値「f4」に設定して撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値「f8」で撮っています。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール時ご依頼、誠にありがとう御座いました。大変長い期間お待たせしてしまい本当に申し訳御座いませんでした。