◎ MINOLTA (ミノルタ) MC ROKKOR-PG 50mm/f1.4(MD)

minolta-logo(old2)1カ月ぶりにようやくミノルタのオールドレンズに戻って参りました。様々なマウント種別のオールドレンズを整備しているので時間がかかってしまいます・・。

今現在、当方で最も気に入っている描写性は、何と言ってもこのロッコールレンズです。通称「緑のロッコール」と呼ばれているのは、当時のミノルタが世界で初めて複層コーティングを施した際に考案された「アクロマチックコーティング (AC)」の所以なのですが「淡いエメラルドグリーン」に光り輝く光彩を眺めただけでホッとしてしまいますね・・。

非常に繊細で細いエッジを伴うピント面を構成しますが、エッジの境界は強調されず鋭さをまるで吸収しているかの如く非常に自然なピント面を構成します。アウトフォーカス部の滲み方はそれほどトロトロでもなく、強いて言えば硬めの印象になりますが、何よりもその描写性に惚れ込んでしまいました。

被写体の素材感や材質感を明確に写し込む質感表現能力に優れているのみならず、空気感や距離感と言った立体的な表現性にも長け、そして最大の魅力は何と言っても現場の雰囲気や緊縛感などをリアルに写真に凝縮して閉じ込めてくれるその臨場感溢れる画造りです。

この描写性はライカのレンズに相通ずる描写性なのですが、さすが技術提携していただけあってその血筋がシッカリと普及モデルにまで現れている「拘り」には本当に感心してしまいます。そして、その「拘り」は「モノ造り」への拘りとして内部の構造化や構成パーツ、或いは組み立て手順など様々な部分にまで考え尽くされた要素を汲み取ることができ、一貫したポリシーを明確に感じ取れる貴重な光学メーカーだと感じています。

CanonやNikonの当時のオールドレンズも今までに修理依頼などで何本も扱いましたが、どうしてもその描写性にはなびきませんでした。必然的に出品のために整備する調達モデルにもその気持ちが投影してしまい、いまだにCanonとNikonのオールドレンズには手を出さず仕舞いです・・当分はMINOLTAのオールドレンズの真髄に少しでも迫りたいと思います。


 

オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

RO5014(0924)11やはり部品点数が多く、撮影小道具で使っている楢材のお盆にすべて乗り切りません。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリスの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

ここからは解体したパーツを実際に使って組み上げていく工程の写真です。

RO5014(0924)12まずは絞りユニットや光学系前群を収納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在しています。

RO5014(0924)136枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。このモデルには「絞り羽根開閉幅調整機能」が装備されているのですが、この状態でほぼ確実な調整ができるような仕組みになています。

RO5014(0924)14鏡筒に光学系前後群を組み付けて完成させます。

RO5014(0924)15淡いエメラルドグリーンに光り輝くアクロマチックコーティング (AC) です。前玉 (第1群) の裏面にACコーティングが施されています。その他のレンズには表裏共に通常のマルチコーティングが施されています。このACコーティングがその描写性にライカライクな写りを漂わせている張本人です。

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RO5014(0924)17上の写真 (2枚) は前玉側のカビ除去痕としての極微細な点キズの状態を拡大して写しています。1枚目は特に外周部のコーティングスポットを写しました。2枚目はやはり外周部のコーティングムラ状になっているカビ除去痕を撮影しています。その他極微細な点キズが20点以上あります。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)

カビ除去痕としての極微細な点キズ:前群内20点以上、目立つ点キズ複数、後群内:20点以上、目立つ点キズ複数。コーティング経年劣化:前後群あり、カビ除去痕:あり、カビ:なし。ヘアラインキズ:後群に7mm長の極微細な薄いヘアラインキズ1本と破線上の極微細な薄いヘアラインキズも数本あります。その他:前玉裏面のアクロマチックコーティング面に外周部に1mm大のコーティングスポットと外周附近にコーティングムラ状のスポットが同様あります。光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。

RO5014(0924)18次は光学系後群です。後群も一見するとキレイなのですが、やはりカビ除去痕としての極微細な点キズはあります。

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RO5014(0924)21上の写真 (3枚) のうち、1枚目は第4群の極微細な薄いヘアラインキズを撮影しています。2枚目が外周部の黒っぽい汚れ状の点、3枚目は極微細な点キズの集まりを撮影しましたが、微細すぎて写りませんでした。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズはなかなか容易には発見できないレベルです。

RO5014(0924)22距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

RO5014(0924)23真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた位置までネジ込みます。このモデルでは「無限遠位置調整機能」を壮語しているので大凡のアタリで構いません。上の写真のようにビミョーな隙間が残っているのが正しい状態です。最後までネジ込んでしまうと無限遠は出ません (合焦しません)。

RO5014(0924)24ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で12箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると再度バラしてここまで戻り再調整するハメに陥ります。

RO5014(0924)25すべての連動系パーツを外してベース部分だけにしたマウント部の内部です。当方にて「磨き研磨」が既に終わっています。

RO5014(0924)26真鍮 (黄鋼) 製 (ガンメタル) のマウントを組み付けました。このモデルではマウント部の内部に「隠しネジ」として4本の固定ネジがあります。

RO5014(0924)27各連動系パーツを組み付けた状態の写真です。もちろん各連動系パーツも当方にて「磨き研磨」が終わっており、それぞれが最低限の負荷で連係するようになっています (つまり生産時の環境にほぼ近い状態です)。

RO5014(0924)28基台にマウント部を組み付けました。やはり「隠しネジ」の要領で固定ネジ4本が締め付けられています。ネット上の解説ではこれら2箇所の「隠しネジ」が判らずに違う手順で解体/組み立てしている解説もありますね・・。

RO5014(0924)29直径1mmにも満たないマイクロベアリングとスプリングを組み付けて絞り環をセットします。

RO5014(0924)30絞り環の固定環をセットしてこれで鏡胴はほぼ完成です。

RO5014(0924)31光学系前後群を組み付けた鏡筒をセットして、距離環を仮止めにしたら無限遠位置確認と光軸確認、絞り羽根開閉幅の確認を行えば完成間近です。

 

ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。

RO5014(0924)1淡いエメラルドグリーンに光り輝くアクロマチックコーティングが美しいです。

RO5014(0924)2光学系はとても良い状態を維持した個体です。第2群と第3群の貼り合わせレンズにもバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) が進行しておらず大変クリアです。

RO5014(0924)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が僅かに感じられますが、当方にて一部を着色しています。

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RO5014(0924)7【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)

距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応中古品)

距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

RO5014(0924)8渾身の整備で仕上がりました。ピントの山が大変掴み易いモデルです。距離環の駆動もとても滑らかタッチに仕上がりました。筐体は黒色ですが、当方にて「光沢研磨」を施しているので非常にキレイです (もちろん経年の微細なキズやハガレ、凹みなどは修復できませんからそのままあります)。

RO5014(0924)9光学系後群も大変クリアです。

RO5014(0924)10当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。被写界深度がとても狭いのでピンボケのように見えますが、実際はヘッドライトにしかピントが合わせられませんでした。