◎ Meyer – Optik Görlitz Primotar 80mm/f3.5 V silver(exakta)

当レンズは当方での扱いは今回が初めてになります。光学系が3群4枚の典型的なテッサー型構成と言うことから、その外観上の大柄な印象故にパスしていた嫌いがありますが(笑)・・製造メーカーがMeyer-Optikなので、マイヤーらしさをその描写に感じられると判断して、今回手を出してみました。

オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を解説と共に掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

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とにかく「環 (輪っか)」が多いモデルで、ロシアンレンズに匹敵するくらいでしょうか(笑)

ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程の写真になります。まずは絞りユニットと光学系前群を収納する鏡筒です。

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大柄な印象の筐体の大きさに反して、鏡筒はとても小さいです。しかしこれでも本家テッサーのレンズに比べると光学系も径が大きい大玉なので威風堂々とした印象です。

絞り羽根は14枚も装備しているのでキレイな「円形絞り」になります。実際に絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

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次の写真は上の写真の鏡筒に、プリセット絞り機構部のベース環をセットした状態の写真です。プリセット絞り環の「プリセット絞りキー (突出した棒状)」が入るための「溝」が両サイドに刻み込まれた制限環を組み付けてセットしています。

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この状態で鏡筒を立てて写しました。

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プリセット絞り環を組み込みます。プリセット絞り環には鏡胴の基準マーカーに一致した「」刻印があるので、その位置をちゃんと合わせてセットします。

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このモデルではプリセット絞り機構部の「固定」自体をレンズ銘板枠が担っているので、ここでネジ込んで固定します。

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この状態にヘリコイド(オス側)をセットします。

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この状態で鏡胴の「前部」が完成したので、次はマウント部からの「後部」を組み立てていきます。

次の写真がMeyer-Optikのモデルである「証」になる特徴を有するパーツのひとつなのですが、距離環の「回転するチカラ」を鏡筒を前後動させる「直進するチカラ」に変換する役目の「直進キー」と言うパーツを組み付けた状態です。

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この環は距離環をセットするための基台になっています。わざわざ距離環と分けた構造にしているのですが、どうしてそのような面倒でコスト高な構造にしているのかは不明です。

次の写真はその「直進キー」を拡大撮影しました。丸い形状をしているので「ベアリング」と思われるかも知れませんが、実は頭が球状になった円柱です。

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次の写真は別のモデルで撮影した同じMeyer-Optikの「直進キー」の写真です。

このような感じで「直進キー」の円柱の中にバネを仕込ませて、直進キーがバネのチカラで適度に圧力を掛ける仕組みになっています。正直、こんな面倒なパーツにせずとも、ベアリングとバネを使えばいいような気もするのですが・・?! いずれにしても、このようなパーツを使った方式のレンズを生産していたのは、当時Meyer-Optikだけでした。

次は距離環をセットした状態の写真です。

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距離環に「直進キー」をセットする場所を用意すれば良いだけなのに・・何故こんな面倒で部品点数を増やす方法で設計したのでしょうか???

距離環を先ほど組み上がっている鏡胴の「前部」にネジ込みます。このモデルでは組み上げが完成した後に無限遠を調整する機能を装備していないので、この時点でアタリを付けてネジ込みます。ミスれば最後に完成した後、再度バラすハメに陥ります。

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この状態にマウント部をセットしてマウントカバーを組み付ければ完成間近です。「M42」マウントのモデルも発売していたようなので、そのマウント交換を考慮してマウント部は独立した別のパーツにしてありますね。

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光学系前群を組み上げます。

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当レンズは残念ながら前玉のコーティング面にカビが発生しており、そのカビを処置しためにカビ除去痕が外周部に3箇所あります。上の写真で写真上部に白色の汚れのように写っている箇所がカビ除去痕になります。コーティングの剥がれですね。

またこの当時のレンズには多かったのですが、光学系のレンズを生産する際に硝子材の中の空気が高温下で集まってしまった「気泡」が複数あります。硝子材の温度が適正値で一定の時間正しく維持されていたことを証明するものとして、メーカーでは正常品として生産していたようです。

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こちらは前玉の別の側にある気泡です。極微細な点キズも5点目視できますが、このように「気泡」が数点含まれています。

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こちらは光学系後群です。

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外周附近に僅かに大きめのキズがあります。拡大して写してみました。

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後玉にも「気泡」が含まれていました。

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こちらは少々小さめの「気泡」です (後玉)。後玉の気泡の影がその下のレンズに黒色の影として写り込んでいます。

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ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。海外オークションebayでも、あまり頻繁には出回らないワリと希少性の高いモデルですね。

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光学系の清掃によりキレイになりクモリも無くなりました。当初はグリスの余分が揮発してクモリが出ていました。

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当初は絞り羽根にも油染みがあり、さらにそれが粘着化していて相当な負荷が掛かっていたのでキレイに清掃し確実に駆動するようになりました。まだまだ問題なく使えます・・これで安心ですね。

14枚もの絞り羽根によるとてもキレイな「円形絞り」は、シーンによっては大変美しい「玉ボケ (リング状のボケ)」として表現されるのでうれしいですね!

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ここからは鏡胴の写真になります。個人的にどうしてもシルバーな筐体に興味を示し反応してしまうので、必然的にこのように「アルミ材削り出し部分の光沢研磨」を施すハメになります。当初は経年劣化で白濁化して白っぽい色合いの鏡胴でしたから・・とても美しく光り輝く状態に復活できました。なかなかの艶めかしさです・・。しかし光沢研磨の作業中は下手をすると手の平が痙るので・・そんなにチカラを入れてはいないのに、年齢には勝てませんねぇ。

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光学系の各群すべてに、薄紫色に光り輝くシングルコーティングを施したことを意味するredV」がとても誇らしくレンズ銘板に刻印されています。

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光学系後群はだいぶ奥まった位置にあります。

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ここからは、当レンズの光学系に「気泡」やカビ除去痕などがあったので、その写真への影響を考慮して (実際には影響は無いのですが) ワザと各絞り値での写真を撮影したので掲載します。

まずは開放F値「f3.5」です。極僅かですが白色部分にハレが滲んで出ていますね。

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次は絞り環を操作して一目盛ズラしたF値「f4」になります。

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さらに一目盛絞り環を回したF値です。

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F値「f5.6」の写真です。

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次はまた一目盛だけズラした位置になります。

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絞り環の設定F値は「f8」になります。

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次はF値「f11」です。

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F値「f16」になります。

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最後の最小絞り値「f22」ですね。

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次の写真は「気泡」などの影響を確認するために、ワザとスタジオの背景だけを写しました。実際には影響は無いのですが、気にされる方もいらっしゃるようなので・・。

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次の写真は当レンズの状態表示を「美品」としているので、それを示す鏡胴のキズを写しています。経年の使用感が少々残っていますね。このキズまで研磨してしまうとメッキが剥がれてしまい地のアルミ材が出てしまいますので、研磨処置はこの状態で止めています。

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