◎ mamiya (マミヤ光機) AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (black)《後期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、マミヤ光機製
標準レンズ・・・・・・、
AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (black)《後期型》(M42)』です。



1960年代後半になると、海外輸出モデルまで含めたこの当時富岡光学が供給していたOEM
モデルは数多く存在し、特に焦点距離:55mm/開放f値:f1.2モデルならばレンズ銘板に
TOMIOKA」銘を伴うダブルネームモデルがあります。

上に列挙したモデルは全てレンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴うダブルネームのモデルですが、その仕様は一様に同じになり (右記参照)、最後のヤシカ製「DS-M (右下)」モデルだけが
マルチコーティングで他はモノコーティングです。

ダブルネームモデル
レンズ銘板に発売元メーカー名の他に製造元メーカー名まで附随して表記したモデル

ところが開放f値:f1.4のモデルになると少なく「AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」しか思い浮かびません 。
(右写真は過去に扱った個体からの転載写真)

そこで今回いろいろ調べてみると思い違いと共に見落としていた点に気がつきました。

TOMIOKA」銘をレンズ銘板に刻印したダブルネームのモデルが一番最初に登場したことは間違いないのですが、その先入観に囚われチノン製一眼レフ (フィルム) カメラの登場時期とは一致していない点を見落としていたのです。

具体的に言うと、チノンが自社初の一眼レフ (フィルム) カメラを発売したのは1972年であり「CHINON M-1」でした (左写真)。しかし この時セットレンズとして用意した標準レンズは「TOMIOKA」銘を
レンズ銘板に伴わない開放f値「f1.4/f1.7」の2機種だったのです。

つまりTOMIOKA」銘をレンズ銘板に伴うダブルネームのモデルはそれ以前に標準レンズ単体だけで供給されていたことになります

たいていのカメラメーカーは、自社初の一眼レフ (フィルム) カメラには当時のフラグシップ
モデルたる標準レンズをセットしていたのだという先入観が働き思い違いしていたワケです。

ではその「TOMIOKA」銘をレンズ銘板に伴うダブルネームモデルを供給していた時期には、はたしてチノンは何を作っていたのか?・・という疑問が湧きました。それは「8ミリシネ
カメラ」の開発/製産が主体であり、凡そ1960年から1972年の一眼レフ (フィルム) カメラ「M-1」登場まで作り続けていたようです。一眼レフ (フィルム) カメラの参入は後発だった
ワケですね (当方はカメラ音痴なのでダメです)(笑)

ここで初めて今回扱うマミヤ光機製標準レンズの発売タイミングと「TOMIOKA」銘をレンズ銘板に伴うダブルネームモデルの登場時期がようやく時間軸で一致しました。

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前述の「TOMIOKA」銘をレンズ銘板に伴うダブルネームモデル登場時期との時間軸の一致がどうしてそんなに問題になるのか?

それは、内部構造と使っている構成パーツも含めた設計概念、或いは具体的な仕様 (カタチ) が問題になってくるからです。

すると今回の話で言えば、そもそも「TOMIOKA」銘をレンズ銘板に伴うダブルネームモデルは、その内部構造と構成パーツに於いて「初期型」の特徴を明確に指摘できます。一方チノンが一眼レフ (フィルム) カメラを発売してきた際にセットしてきた標準レンズ群は、その内部 構造と構成パーツから「中期型後期型」になります。

今回扱うマミヤ光機製標準レンズは当時のマミヤ製モデルとしては「後期型」に当てはまりますが、実はその当時に流通していた富岡光学製OEMモデルの範疇で捉えると「中期型」の内部構造と構成パーツに分類されてしまうのです。

ここで初めてマミヤ光機が扱っていたレンズ群と他社光学メーカーのレンズ群に於ける内部構造と構成パーツを基にした時間のズレが明確になった次第です。

上の一覧でその時間軸を前提にまとめましたが、今回扱うマミヤ製標準レンズは当時のチノン製標準レンズ群の「初期型中期型」を跨いだ内部構造と構成パーツの設計だったことになるワケで、この点が当方にとっては納得できるか否かの大きな問題になってしまったワケです。

何故なら内部構造や構成パーツは契約台数の問題から多少の時間的なズレが生じるとしても、各光学メーカー向け供給されていた富岡光学製OEMモデルはある任意の時期で全て同一の設計だったハズだからです

例えば工場の製産ラインの中で新旧混在させて並行生産するタイミングは、極一部の限定した期間だけだと考えられます。モデルチェンジして内部構造や構成パーツが代替し設計が変わっていく中で、いつまでも旧型機種のラインを維持しつつ並行生産するメリットはよほどでない限り大きくないと考えるからに他なりません (契約台数が消化できていない場合は継続して
旧型製品のラインを維持し製産し続けるしかない場合もある)。

つまり逆の言い方をすれば当時のこれら富岡光学製OEMモデルは、筐体外観で捉えた場合に様々な相違点があるとしても、バラした時に「内部構造と構成パーツが一致したら同一時期の製産モデル」としか考えられないからです (製産する立場から捉えた理に適う考え方の一例)。

それは以前お世話になった金属加工会社長のお話からも伺え、筐体外装の意匠や距離環/絞り環等の配置や仕様 (短い/長い) 或いは回転方向などは、その製産時点でどうにでも容易に指向先顧客別に細かく随時変更できるが、コアとなる基本設計部分は容易に変更できないという点です。もちろんこの事はひいては内部構造と構成パーツが一致したら、それは同一の製造元と判定できるとも言える内容です。

何を言いたいのか?

つまり今回扱うマミヤ光機製標準レンズ『AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (black)《後期型》(M42)』は、マミヤでは「後期型」ながらも当時世間に流通していたであろう富岡光学製OEMモデルで踏まえると「まさにTOMIOKA銘を伴う初期型〜中期型の特徴を持つ」からに他なりません。逆の言い方をすれば、レンズ銘板に「TOMIOKA」の刻印が無いだけの違いしか存在しないレベルと言えるのです

下手すれば「AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」が存在していたかも 知れないタイミングだったのだと言いたいワケです。その辺の解説を後のオーバーホール工程の中でご案内していきたいと思います。

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前置きが長くなってしまいましたが、これらの前提をシッカリ認識できていないと単なる他の (後に登場した) 富岡光学製OEMモデルと一緒くたにされてしまうと危惧したからです。

そして、実はこれらの事柄に疑念を抱いたり見落としに気がついたそもそもの発端は「描写性の相違」を発見してしまったからに他なりません。レンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴うモデルの画造りと、その後に登場した富岡光学製OEMモデルの描写とは「明らかに傾向が異なる」からなのですが、その「初期型たる画造り」の要素を今回のマミヤ光機製標準レンズに見てしまったのが全ての始まりでした (当初は疑念だけだったがバラして内部構造と構成パーツを確認して確信に至った)(笑)





上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して溶けてしまい単なる円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。このシャボン玉ボケ〜円形ボケだけで捉えても、当時の富岡光学製OEM
初期型中期型」と「後期型」の描写性について特徴的な相違点があります。「初期型中期型」はシャボン玉ボケのエッジがすぐに滲んでしまうので明確に表出しませんが「後期型」はハッキリクッキリと輪郭が出てきます。

二段目
ここでは特に背景の乱れた (ある意味汚い) 収差ボケだけを集めています。収差の影響を受けてゴチャゴチャと背景が滲んでしまうワケですが、実は「後期型」モデルの多くはこれら収差ボケがだいぶ改善されていて大人しく変わっています。従ってこれら収差ボケを単に「汚い」だけで片付けてしまうなら「後期型」のほうがその人には向いている話になりますが、逆に敢えて「特殊効果的に活用する」のであれば、この収差ボケはむしろ「オールドレンズの味」的な要素になったりします。

三段目
この段が決定的な「初期型中期型」の特徴なのですが、ピント面のエッジが非常に細く繊細で境界が狭いので、そのピント面のエッジを目立たせる撮影ができるシ〜ンもあれば (左端1枚目)、逆にアウトフォーカス部の滲みを却って「効果」として使ってしまう、それこそ今ドキのインスタ映え的な感覚の撮影ができるのが、その次からの2枚目以降の実写です。これが「後期型」になると苦手になってきます (このような独特な滲み方をしなくなっている)。従って、この実写を見て「まるで開放f値f1.2のようだ」と感じた次第です (何故ならこのモデルは開放f値:f1.4だから)。

特に今回の個体を実写してみて、その傾向をより強く感じ取りました。このアウトフォーカス部の溶け方はAUTO RIKENONシリーズなど当時の「中期型」と比べても一種マミヤの特徴的な描写のように感じます

四段目
ここでも後に登場する「後期型」とは異なる特性を見せます。明暗部の耐性が高いのでダイナミックレンジが広く、ビミョ〜なイントネーションの違いをちゃんと写し出してくれる部分がオドロキです。意外と「後期型」ではこの陰影の付け方が簡素化された写り方になっています。

五段目
この被写界深度の狭さがそれこそ「まるでf1.2」の話なのですが(笑)、かと言っておそらくこれら実写の撮影者が撮影しているその時点では、それほど難しくせずに簡単にピント面を捉えて撮っていると考えられます。被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に大変優れ、ダイナミックレンジが広い分ビミョ〜なグラデーションにも対応可能なのですが、開放f値「f1.4」モデルの他社標準レンズで捉えても、なかなかこれだけリアルで生々しい人物写真を撮れるモデルは、意外とそれほど多くありません。つまりはダイナミックレンジが広い証なのですが、単にそれだけではなくピント面のエッジの要素を微細に捉えて残すポテンシャルを持っているからこその「ポートレート撮影」ではないかと考えています。

1966年にマミヤ光機から初めて発売された「M42マウント」の一眼レフ (フィルム) カメラが「1000TL/500TL」になり、セット用標準レンズとして「AUTO MAMIYA-SEKORシリーズ」が用意されました (左写真は1000TL)。

パッと見で見落としがちですが、実はレンズ銘板のモデル銘が一般的に現在市場で流通しているタイプとは異なります。つまり「MAMIYA-SEKOR」表記であり「mamiya/sekor」ではありません。これがこの当時のマミヤ製オプション交換レンズ群の中で「初期型/後期型」の最も見分けやすい特徴です。「後期型」が「mamiya/
sekor
」ですね。

この時の取扱説明書をチェックすると、用意されていたセット用標準レンズ群は「f1.4/f1.8/f2.0」の3種類で「f1.2」が存在しないことになります。

この時の標準レンズ群は全てマミヤ製モデルとしては「初期型」になります。

カタログに記載されている図からトレースした構成図が右図で、5群7枚のビオター/クセノター型になりCARL ZEISSのPlanarシリーズと同一の
光学系構成に分類されます。


一方右図は今回扱った「後期型」モデルの構成図になり、同じ5群7枚
ビオター/クセノター型構成ながらも第1群 (前玉) から厚みも曲率も設計が変わっており再設計していたことが分かります。

特に最後の第5群 (後玉) を見ると、当初「初期型」では両凸レンズだったのが「後期型」は凸平レンズに代わり露出側が平坦になっています。

なお、当方が「富岡光学製」と判定している基準の内部構造と構成パーツの要素が3点あり、いずれか1点、或いは複数合致した時に判定しています。

M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)。
内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)。
内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)。

今回扱う『AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (black)《後期型》(M42)』では、これら判定基準全てが当てはまります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。パラせば一目瞭然ですが、内部構造と使われている構成パーツのカタチも仕様も、ほぼこの当時に製産されていたであろう他の富岡光学製OEMモデルと同一です。

 

↑上の写真は左側が「AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」で右側が「AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)」であり、共にレンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴う個体の全景写真です。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

 

↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」ですが「f1.2」モデルでは光学系の専有面積 (容積) が足りずに鏡筒まで切削してギリギリの設計で用意していたことが分かります。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

 

↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」ですが「f1.2」モデルでは光学系の専有面積 (容積) の関係から入射光制御に6枚の絞り羽根だけでは足りずに「絞り羽根枚数8枚」に仕様変更していることが分かります (もちろんその分光学系の外径サイズ/鏡筒外径共に大きい)。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (後玉側) 方向から撮影しました。ご覧のように「開閉アーム」が1本だけ飛び出ているという簡素な状況です。

このスプリングが非常に線径が細く引張率が低いので (引っ張るチカラが弱いので) 経年劣化で弱ってしまうと「絞り羽根開閉異常」を来します。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しましたが (上側が前玉側方向)、解説のとおり鏡筒の端部分に「絞り羽根開閉幅微調整キー」なる真鍮 (黄鋼) 製の小さな円盤がネジ止めされています。しかし、その円盤とネジの位置関係をよ〜く観察すると「ネジが中心から外れた位置にある」ことが分かります。つまり円盤はグリーンの矢印のとおりネジを緩めることで「左右に微動して位置を微調整できる」設計であることが分かります。

 

↑同じ角度の写真を撮っていませんでしたが、鏡筒の端部分に同じ「微調整キー」が備わっていることが分かります。同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。もちろん鏡筒の裏側から飛び出ている「開閉アーム」が1本用意されていて、且つスプリングが細いのも同じです。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。基台の側面には幾つかのネジ穴が集中的に並べて用意されていますが「無限遠位置微調整用の穴」になり、ここに「無限遠位置微調整キー」が後からセットされます。

 

↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」ですが「f1.4」モデルは同一の設計ながら「f1.2」モデルは異なります。この違いは「f1.4」モデルがCHINONに於ける「中期型」であり「f1.2」モデルは「初期型」だからです。

そして「初期型」を示す決定的な設計概念の相違点は後ほど出てきます。

↑真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

基台の側面に前述の「無限遠位置微調整キー (制限キー)」をネジ止めしてあります。上の写真向かって右端が「無限遠位置側」になり左端が「最短撮影距離位置側」です。ここにヘリコイド (メス側) に用意されている「制限壁」と言う壁の出っ張り部分がカチンと突き当たるので、それぞれ無限遠位置/最短撮影距離位置で突き当て停止する仕組みですね。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けて正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ヘリコイド (オス側) の内側には (内部には) 鏡筒がストンと落とし込まれて入りますが、その際に鏡筒の位置を確定させる目的を兼ねて「切り込み/スリット」が用意されており、そこに前述の鏡筒の端部分にネジ止めした円盤「絞り羽根開閉幅微調整キー」が入ります。

左写真はその鏡筒が入る時の様子を解説しています (グリーンの矢印で円盤の入り方を示している)。

↑こんな感じで鏡筒がヘリコイド (オス側) の内側にセットされます。ここで前述の「絞り羽根開閉幅微調整キー」のネジを緩めて円盤を左右に振ることで鏡筒の位置調整が実現できる「設計概念」を採っていることが「富岡光学製の証」の一つです (判定基準の)。

 

↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。

↑こちらはマウント部内部間写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。当初バラした際は過去メンテナンス時に塗布されてしまった「白色系グリース」により「濃いグレー状」に変質しており、一部に経年の酸化/腐食/錆びが生じていました。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施してセットしますが、必要以上のグリース塗布を避けています (必要外なグリースの塗布は再び経年劣化に拠る酸化/腐食/錆びを招くだけだから)。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれたチカラの分だけカムが反応してチカラを伝達し () 先端部に用意されている「操作爪」を動かします ()。すると「操作爪」がガシッと掴んで離さないのが、前述の鏡筒から飛び出ているたった1本の「開閉アーム」ですね。

つまりマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれたそのタイミングで瞬時に「操作爪」が「開閉アーム」を操作して設定絞り値まで勢い良く絞り羽根を閉じてくれる仕組みです。

この時重要なのは「マウント目から飛び出ている絞り連動ピンが押し込まれたチカラの分だけしか伝わらない」点です。このことをちゃんと認識していないオールドレンズ使いの方々が非常に多いですね。つまりフィルムカメラに装着するならトラブルに見舞われることも少ないですが (カメラのモデルの相違があるので皆無ではない)、特に今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着する際に「マウントアダプタとの相性問題」が必ず憑き纏います

具体的には「絞り連動ピン」を押し込む為にマウントアダプタ側に用意されている「ピン押し底面の深さ」が製品によってバラバラだからです (M42マウント自体の規格ではないから/マウントアダプタは近年出てきた製品だから/M42マウント規格策定時に存在しなかった概念だから)。

この「マウントアダプタとの相性問題」を理由にすると、オーバーホール/修理ご依頼者様の中には「整備の不具合の言い訳を言っている」と受け取る方が多いのも現実です (もう最近は面倒くさいので無償扱いにしてひたすらに謝ってしまいますが)(笑)

一体どれ程の方々がこれらマウントアダプタ側の問題点を、ちゃんと認識して使っているのでしょうか?(笑) フィルムカメラ全盛時代、つまりはオールドレンズが製産されていた当時には「マウントアダプタは存在せず絞り連動ピンを最後まで押し切ってしまう事は想定されていなかった」点に誰も頷こうとしません(笑)

まッ、当方の逃げ口上との認識で構いません・・(笑)

なお、グリーンの矢印で指し示した箇所にカムが突き当たってしまうと動かなくなり「絞り羽根開閉異常」を来しますが、フィルムカメラへの装着時は問題なくてもやはりマウントアダプタ経由の時にたまに発生している現象です (つまり絞り連動ピンが最後まで押し切られることを想定していない設計だから突き当たって動かなくなることがある)。

 

↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。ほぼ両方とも同じ設計概念なのですが、ここで「初期型」だけが採用していた決定的な構造の相違点をご案内します。

左写真は開放f値「f1.2」モデルで採用されている「A/M切り替えスイッチの切り替え動作設計概念」を最も明確に表しているパーツを撮った写真です。
このパーツ (設計概念) は「初期型」だけで使われており、設計の問題点から以降仕様が変わってしまったパーツでもあります。何と「棒バネ」の跳ね返るチカラだけで「自動/手動」の絞り羽根開閉動作を変更する仕組みを採っていたのです(笑)

従ってこの「棒バネ」のカタチが少しでも変形すると (狂うと) 「A/Mスイッチ」の切り替え動作で正しく絞り羽根の動きが変わってくれません。しかし実際には経年劣化による酸化/腐食/錆びなどで「棒バネ自体が弱ってしまう」現象が近年増えており、特に「TOMIOKA」銘をレンズ銘板に伴う個体などでは改善できないことが多くなってきました。それ程この「棒バネ」のカタチ (角度/向き/アール) が極僅かでも変化するとアウトです (非常に神経質で厄介)(怖)

バラせば一目瞭然ですが、この「棒バネ」による切り替え方式を採っていれば富岡光学製の「初期型」である事は100%間違いありません (ウソだと思うならTOMINONなどをバラせば
分かりますが元に戻せるかどうかはヤバいですョ)(笑)

ちなみに、この「棒バネ」方式による「A/M切り替え方式」を採ってしまったモデルは、これら「初期型」の富岡光学製OEM全てに共通項目ですから、例えば「A/Mスイッチを装備したYASHICA製モデル」にも採用されています。その最たるモデルが「AUTO YASHINON-DXシリーズ」であり、やはりこの「棒バネ」を使っている為、これらのモデルで「A/M切り替え動作不良」或いは「絞り羽根開閉異常」が発生していた個体の場合、大方この「棒バネ」を過去メンテナンス時にイジられているので改善しないことが多いです。この「棒バネ」だけと丸一日がかりで戯れたこともあるので(笑)、ハッキリ言って当方は拘わりたくないです (断言しちゃいます)!

↑完成したマウント部を基台にセットします。

↑絞り環をセットしたところです。絞り環には裏側に「絞り値キー」と言う「」が用意されていて、そこにベアリングがカチカチと填ることでクリック感を実現しています。ところがこの当時の富岡光学製OEMモデルではそのベアリングを「スイッチ環側」に用意してしまった為に、この「スイッチ環の固定位置」をミスると、途端に「絞り環のクリック感と絞り値がチグハグでどの絞り値に閉じているのか分からない」などと言う不具合に見舞われます。

例えば絞り環を設定絞り値「f8」にセットしたいと回した時、もしも「スイッチ環」の固定位置をミスっていれば「f8のクリック感なのかf11のクリック感なのかが分からない」と言う現象にブチ当たります(笑)いちいち絞り羽根の閉じ具合をチェックして「f8/f11」を判断したりしている始末です。

従って、この方式の設計を採った場合「スイッチ環」側の固定位置に神経を遣う必要が発生します。ベアリングとスプリングは「スイッチ環」のグリーンの矢印の麓箇所にセットされますが製産時の工程として考えれば非常にムダな人件費を食っているだけの富岡光学らしい「意味不明な設計」の一つですね(笑)

実際この当時の他社光学メーカーでは既に簡素なクリック方式を採っており、ベアリング (或いはスプリング) は上の写真オレンジ色矢印の位置に組み込んでしまい、ベアリングの位置とクリック感の位置がズレないように考慮されていました。

 

↑要は「富岡光学の意味不明な設計」の一つであり(笑) 冒頭「判定基準の」になりますが、同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。

↑このように「スイッチ環」がマウント面にセットされますが、その際「横方向からイモネジ3本による均等締め付け固定」なのが富岡光学製である「」であり (グリーンの矢印)、同時に唯一外部から判定できる基準でもあり、冒頭の「判定基準の」になります (但し一部のM42マウントモデルは別の設計を採っている)。

 

↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。以前は「絞り環用固定環」とか「カバー」と呼称していましたが、よくよく考えたらこの「スイッチ環」の固定位置もミスると絞り環のクリック感がチグハグになるのと同じように「A/Mスイッチ」操作時のカチッと感じる抵抗感がズレます。

それはつまり「イモネジ (3本)」を使って締め付け固定しているからなのですが、逆に言えば「イモネジを使う箇所は要微調整箇所」とも言えるワケで、一般的な締付ネジで多い「皿頭ネジ/鍋頭ネジ」が使われていた場合に単に締め付け固定するだけで良い話なのとは、イモネジの場合は状況が全く違います。そして一番重要な点は「イモネジの締め付け方法」をミスるとたいていの場合不具合に繋がります (つまり単に締め付けるだけの話で済まない)(笑)

こういう要素が「観察と考察」でどれだけ細かくチェックしつつバラして、そして組み上げているのか問われる話であり、同時に「原理原則」に則った整備ができない人 (多いパターンはグリースに頼った整備) が仕上げた個体の場合には、早ければ1年長くても5〜6年以内には何かしら不都合が表れ始めます (当方の整備品は6年前まで経年状況の確認ができています)。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種

↑指標値環をやはりイモネジ (3本) で締め付け固定して距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑市場ではほとんど見かけない珍しいマミヤ光機製標準レンズ『AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (black)《後期型》(M42)』です。特にこの当時の「富岡光学製55mm/f1.4モデル」を手に入れようと考えると、最も要注意なのが「後玉の状態」です。

例えば当時の東京光学製標準レンズ「RE,Auto-Topcorシリーズ」或いは「RE GNシリーズ」でも同じですが、後玉に極薄いクモリや汚れが残っていたらまず除去できません。またパッと見の写真で綺麗な状態に見えても順光目視で見えない薄いクモリや汚れは「LED光照射で明確に浮き上がる」ワケで、それが実際に現実面でどのような結果に結びつくのかは「コントラストの低下/解像度不足」に陥ったりします。

従って、光学系後群「特に後玉」の状況把握は必須です。

残念ながらレンズ銘板や鏡胴の一部には前オーナーによるケガキの書き込み (手書き) で「ベルト用/調整用」などの刻み込みがそれぞれあります。しかし光学系の状態は「飛んでもなくスカッとクリア」なので、魅力大だと思います。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体で、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

パッと見で光に翳して角度を変えて覗き込むと「清掃時の拭き残し」のように見えてしまうのですが、コーティング層の一部には経年劣化によるコーティング層の傷みが残っています (まさしく拭き残しのように見える)。もちろん3回清掃しても除去できなかったのでクレーム対象としません

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無ですが、ご覧のとおり驚異的に綺麗な状態を維持した後玉 (表面) です。後玉表面が縞模様に写っているのは撮影で使っているミニスタジオのスクリーンの写り込みですから現物には一切ありません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:9点、目立つ点キズ:4点
後群内:17点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズ有り)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・前玉中央に非常に微かな擦りキズが3mm長であります。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根も絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」したまま閉じていきます (f11までは正六角形ですが最小絞り値f16でご覧のように僅かに歪に閉じます)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に 均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・レンズ銘板に2箇所と距離環に1箇所、前オーナーによるケガキによる手書きの刻み込みがあります。

↑当初調達して届いた際は、とても使える状況ではなく「距離環が固着していて全く使えない状態」でした。またレンズ銘板と鏡胴の一部に刻み込まれている「ケガキの手書き」部分 (計3箇所) も、油性マジックで塗りつぶして目立たないように処置されており、然し出品ページには一切案内が無く前オーナーによる塗りつぶしではないことが明白です。つまり当方と同じ「転売屋/転売ヤー」たる出品者が油性マジックで塗りつぶしたのを隠して出品していたワケです。

そのまま目立たないよう油性マジックのままでもキレイなのですが、当方はむしろ「将来的な光学系の状態」のほうが気になるので、油性マジックのインキ成分がコーティング層に乗ってしまうのを嫌って今回のオーバーホールでは敢えて油性マジックを除去しています。油性マジックはよく使われる常套手段ですが、以前のオーバーホール/修理でもあったように (こちらのページ) インキ成分のせいで飛んでもないことに陥っていた方がいらっしゃいますから(涙)、禁じ手でもあります。

完璧なオーバーホールが終わっています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑それぞれ3箇所あるケガキによる手書きでの刻み込み部分を赤色矢印で指し示しました (当方は隠して出品したりしません)。一応着色しましたが浅すぎるのですぐにとれてしまいました。

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」にセットして撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮っています。

↑f値は「f4」に変わりました。

↑f値「f5.6」になっています。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりましたが、これだけ絞り羽根が閉じていてもまだ「回折現象」の影響が顕著に出ていませんから、相当な光学性能のポテンシャルです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。